JP2018202822A - シート及び積層体 - Google Patents

シート及び積層体 Download PDF

Info

Publication number
JP2018202822A
JP2018202822A JP2017114071A JP2017114071A JP2018202822A JP 2018202822 A JP2018202822 A JP 2018202822A JP 2017114071 A JP2017114071 A JP 2017114071A JP 2017114071 A JP2017114071 A JP 2017114071A JP 2018202822 A JP2018202822 A JP 2018202822A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
region
sheet
mass
resin
fibrous cellulose
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017114071A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7005950B2 (ja
Inventor
速雄 伏見
Hayao Fushimi
速雄 伏見
寛一 砂川
Kanichi Sunakawa
寛一 砂川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Oji Holdings Corp
Original Assignee
Oji Holdings Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Oji Holdings Corp filed Critical Oji Holdings Corp
Priority to JP2017114071A priority Critical patent/JP7005950B2/ja
Publication of JP2018202822A publication Critical patent/JP2018202822A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7005950B2 publication Critical patent/JP7005950B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Paper (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、シート製造時の歩留が良好であり、かつ耐カール性と寸法安定性に優れたシートを提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース及び第1樹脂を含む第1領域と、第1領域の少なくとも一方の面側に配され、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース及び第2樹脂を含む第2領域と、を有し、第1領域における繊維状セルロースの含有率(質量%)をC1とし、第2領域における繊維状セルロースの含有率(質量%)をC2とした場合、C1>C2であるシートに関する。【選択図】図1

Description

本発明は、シート及び積層体に関する。具体的には、本発明は、微細繊維状セルロースを含むシート及び積層体に関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10μm以上50μm以下の繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。また、このような微細繊維状セルロースから構成されるシートや、微細繊維状セルロース含有シートと樹脂を含む複合シートが開発されている。微細繊維状セルロースを含有するシートや複合シートにおいては、繊維同士の接点が著しく増加することから、引張強度等が大きく向上することが知られている。また、繊維幅が可視光の波長より短くなることで、透明度が大きく向上することも知られている。
例えば、特許文献1には、カチオン性基を有するセルロース繊維に解繊処理を施して得られる微細繊維状セルロースが開示されており、微細繊維状セルロースを含むシート上に樹脂溶液を塗布し、硬化させることで得られる複合シートが開示されている。また、特許文献2には、微細繊維状セルロースとマトリックス樹脂を含有する複合シートが開示されている。ここでは、複合シートは、法線方向において、微細繊維状セルロースを含有する部分と、微細繊維状セルロースを含有しない部分を有している。
特開2015−071848号公報 特開2015−017184号公報
微細繊維状セルロース含有シートを製造する際には、微細繊維状セルロース含有スラリーを基材上に塗工した後に加熱乾燥を行う場合がある。このような工程では、基材から微細繊維状セルロース含有シートが意図せず剥がれたり、シワや割れが発生することで、微細繊維状セルロース含有シート製造時の歩留が低下することが懸念された。また、製造された微細繊維状セルロース含有シートにカールが発生したり、シートの寸法安定性が劣ることが懸念された。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、微細繊維状セルロース含有シート製造時の歩留が良好であり、かつ耐カール性と寸法安定性に優れた微細繊維状セルロース含有シートを提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、微細繊維状セルロースと樹脂を含む第1領域と、微細繊維状セルロースと樹脂を含む第2領域を有するシートにおいて、第1領域における繊維状セルロースの含有率を第2領域における繊維状セルロースの含有率よりも高くすることで、製造時の歩留が良好であり、かつ耐カール性と寸法安定性に優れたシートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース及び第1樹脂を含む第1領域と、第1領域の少なくとも一方の面側に配され、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース及び第2樹脂を含む第2領域と、を有し、第1領域における繊維状セルロースの含有率(質量%)をC1とし、第2領域における繊維状セルロースの含有率(質量%)をC2とした場合、C1>C2であるシート。
[2] 第1領域における繊維状セルロースの密度が、第1領域の厚み方向の少なくとも一部において略均一である[1]に記載のシート。
[3] 第2領域における繊維状セルロースの密度が、第2領域の厚み方向の少なくとも一部において略均一である[1]又は[2]に記載のシート。
[4] 第1樹脂と第2樹脂が、同種の樹脂である[1]〜[3]のいずれかに記載のシート。
[5] 第1樹脂と第2樹脂が、異種の樹脂である[1]〜[3]のいずれかに記載のシート。
[6] 第1領域における繊維状セルロースの含有率は、第1領域の全質量に対して、51質量%以上である[1]〜[5]のいずれかに記載のシート。
[7] 第2領域における繊維状セルロースの含有率は、第2領域の全質量に対して、49質量%以下である[1]〜[6]のいずれかに記載のシート。
[8] 第1領域における繊維状セルロースの含有率(質量%)をC1とし、第2領域における繊維状セルロースの含有率(質量%)をC2とした場合、C1/C2≧1.3である[1]〜[7]のいずれかに記載のシート。
[9] 第1領域における繊維状セルロース及び第2領域における繊維状セルロースは、アニオン性基を有する[1]〜[8]のいずれかに記載のシート。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載のシートと、シートの少なくとも一方の面側に配される樹脂層と、を有する積層体。
本発明によれば、シート製造時の歩留を向上させることができる。さらに、本発明によれば、耐カール性と寸法安定性に優れたシートを得ることができる。
図1は、シートの構造を説明する断面図である。 図2は、シートの耐カール性を評価する際の方法を説明する図である。 図3は、リン酸基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。 図4は、カルボキシル基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。 図5は、積層体の構造を説明する断面図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(シート)
本発明は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース及び第1樹脂を含む第1領域と、第1領域の少なくとも一方の面側に配され、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース及び第2樹脂を含む第2領域と、を有するシートに関する。ここで、第1領域における繊維状セルロースの含有率(質量%)をC1とし、第2領域における繊維状セルロースの含有率(質量%)をC2とした場合、C1>C2である。なお、本明細書においては、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを、微細繊維状セルロースと呼ぶこともある。
図1は、本発明のシートの構成の一例を説明する図である。図1に示されるように、シート10は、第1領域10aと第2領域10bを有する。第1領域10aと第2領域10bの間には他の層が存在していてもよいが、本実施形態においては、第1領域10aと第2領域10bは、隣接した層であることが好ましく、第1領域10a上には第2領域10bが直接積層していることが好ましい。なお、第1領域10aと第2領域10bが隣接した層である場合、第1領域10aと第2領域10bの境界面は明確であってもよく、明確でなくてもよい。第1領域10aと第2領域10bの境界面が明確ではない場合、第1領域10aを構成する成分の一部と第2領域10bを構成する成分の一部が境界付近で混じり合っていてもよい。この場合、第1領域10aと第2領域10bの間には、第1領域10aを構成する成分の一部と第2領域10bを構成する成分の一部が混在した中間領域が存在してもよい。なお、このような場合、第1領域10aは、第1領域10aの端辺から中間領域の厚み方向の中央線までの領域とし、第2領域10bは、第2領域10bの端辺から中間領域の厚み方向の中央線までの領域とする。
本発明のシートは、上記構成を有するため、シート製造時の歩留を向上させることができる。また、本発明のシートは、耐カール性と寸法安定性に優れている。本明細書において、シート製造時の歩留が良好であることは、シートの製造時にシワや割れの発生が抑制され、その結果、欠陥のないシートを製造ロスなく生産できることを意味する。また、耐カール性は、製造されたシートに発生するカールの度合いにより評価することができ、寸法安定性は、高温領域における線熱膨張係数を測定することで評価することができる。
耐カール性を評価する際には、まず、シートを幅5mm×長さ80mmの試験片に切り出し、図2に示すように、試験片50の一方の短辺を含む端部を幅20mm×長さ30mm×高さ20mmの磁石2個(磁石55)で支持し(磁石55から長さ50mmの試験片50が露出する)、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、水平な台の上に試験片50の長さ方向が台に対して垂直になるように静置する。そして、この際のカール曲率を測定する。具体的には、図2におけるΔxとΔyの値を測定し、下記の式(1)に従って、カール曲率Cを算出する。
式(1):C=2Δy/(Δx2+Δy2
算出したカール曲率Cは、5m-1未満であることが好ましく、1m-1未満であることがより好ましい。
寸法安定性を評価する際には、まず、シートを幅3mm×長さ30mmに切り出し、これを、熱機械分析装置にセットして、引張モードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下で室温から180℃まで5℃/分で昇温、180℃から25℃まで5℃/分で降温、25℃から180℃まで5℃/分で昇温した際の2度目の昇温時の100℃から150℃の測定値から線熱膨張係数を求める。なお、熱機械分析装置としては、例えば、日立ハイテク社製、TMA7100を用いることができる。算出された線熱膨張係数は30ppm/℃未満であることが好ましく、20ppm/℃未満であることがより好ましい。
第1領域における微細繊維状セルロースの含有率(質量%)をC1とし、第2領域における微細繊維状セルロースの含有率(質量%)をC2とした場合、C1>C2であればよく、すなわち、C1/C2>1.0であればよい。さらに、C1/C2≧1.1であることが好ましく、C1/C2≧1.3であることがより好ましく、C1/C2≧1.5であることがさらに好ましい。なお、第1領域における微細繊維状セルロースの含有率C1は、第1領域の全質量に対する微細繊維状セルロースの質量の割合であり、第2領域における微細繊維状セルロースの含有率C2は、第2領域の全質量に対する微細繊維状セルロースの質量の割合である。
各領域の微細繊維状セルロースの含有率は、以下の方法で測定する。すなわち、シートの各領域の表面からウルトラミクロトームなどの装置で各領域を切削する。この際、切削して得る断片が第一領域と第二領域の境界付近を含まないよう切削を行う。次いで、切削後の断片を十分に乾燥させたのちに、切削後の断片の質量W0を測定する。その後、セルロースの溶剤にシートを24時間浸漬し、微細繊維状セルロースを溶剤中に溶解させる。セルロースの溶剤としては、例えば、塩酸、硫酸などの酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ、ピリジン/クロラールの混合物、ジメチルホルムアミド/四酸化二窒素の混合物などの有機溶媒などを使用でき、各領域中の樹脂を溶解しないものを適宜選択することができる。浸漬後のシートを引き上げ、十分に乾燥させた後に質量W1を測定し、下記の式に従って微細繊維状セルロースの含有率を算出する。
(式) 微細繊維状セルロースの含有率C=100×(W0−W1)/W0
なお、第1領域における微細繊維状セルロースの含有率C1は、第1領域の形成に用いられる組成物(スラリー)中の全固形分質量に対する微細繊維状セルロースの質量の割合と同一であり、第2領域における微細繊維状セルロースの含有率C2は、第2領域の形成に用いられる組成物(スラリー)中の全固形分質量に対する微細繊維状セルロースの質量の割合と同一である。本発明においては、C1/C2を上記範囲とすることにより、シート製造時の歩留を向上させることができ、かつ耐カール性と寸法安定性に優れたシートを得ることができる。
第1領域における第1樹脂の含有率(質量%)をD1とし、第2領域における第2樹脂の含有率(質量%)をD2とした場合、D1<D2であることが好ましく、すなわち、D1/D2<1.0であることが好ましい。さらに、D1/D2≦0.9であることがより好ましく、D1/D2≦0.8であることがさらに好ましく、D1/D2≦0.7であることが特に好ましい。なお、第1領域における第1樹脂の含有率D1は、第1領域の全質量に対する第1樹脂の質量の割合であり、第2領域における第2樹脂の含有率D2は、第2領域の全質量に対する第2樹脂の質量の割合である。
各領域の樹脂の含有率は、以下の方法で測定する。すなわち、シートの各領域の表面からウルトラミクロトームなどの装置で各領域を切削する。この際、切削して得る断片が第一領域と第二領域の境界付近を含まないよう切削を行う。次いで、切削後の断片を十分に乾燥させたのちに、切削後の断片の質量W0を測定する。その後、樹脂の溶剤にシートを24時間浸漬し、樹脂を溶剤中に溶解させる。ここで、樹脂の溶剤としては、例えば、樹脂がポリビニルアルコールの場合、エチレングリコール、グリセリン、アセトアミド、ジメチルアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどを使用でき、各領域中の微細繊維状セルロースを溶解しないものを適宜選択することができる。浸漬後のシートを引き上げ、十分に乾燥させた後に質量W2を測定し、下記の式に従って樹脂の含有率を算出する。
(式) 樹脂の含有率D=100×(W0−W2)/W0
なお、第1領域における第1樹脂の含有率D1は、第1領域の形成に用いられる組成物(スラリー)中の全固形分質量に対する第1樹脂の質量の割合と同一であり、第2領域における第2樹脂の含有率D2は、第2領域の形成に用いられる組成物(スラリー)中の全固形分質量に対する第2樹脂の質量の割合と同一である。本発明においては、D1/D2を上記範囲とすることにより、シート製造時の歩留を向上させやすくなり、かつ耐カール性と寸法安定性に優れたシートが得られやすくなる。
なお、第1領域は微細繊維状セルロースと第1樹脂からなる領域であってもよく、第2領域は微細繊維状セルロースと第2樹脂からなる領域であってもよい。この場合、各領域における微細繊維状セルロースの含有率と、樹脂(第1樹脂又は第2樹脂)の含有率は以下の式により算出される。
微細繊維状セルロースの含有率(質量%)=微細繊維状セルロースの質量/(微細繊維状セルロースの質量+樹脂の質量)×100
樹脂の含有率(質量%)=樹脂の質量/(微細繊維状セルロースの質量+樹脂の質量)×100
第1領域における微細繊維状セルロースの含有率は、第1領域の全質量に対して、51質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。また、第1領域における微細繊維状セルロースの含有率は、第1領域の全質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。第1領域における微細繊維状セルロースの含有率を上記範囲内とすることにより、シート製造時の歩留を向上させやすくなり、かつ耐カール性と寸法安定性に優れたシートが得られやすくなる。
第1領域における第1樹脂の含有率は、第1領域の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、第1領域における第1樹脂の含有率は、第1領域の全質量に対して、49質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。第1領域における第1樹脂の含有率を上記範囲内とすることにより、シート製造時の歩留を向上させやすくなり、かつ耐カール性と寸法安定性に優れたシートが得られやすくなる。
第2領域における微細繊維状セルロースの含有率は、第2領域の全質量に対して、49質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以下であることが一層好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。また、第2領域における微細繊維状セルロースの含有率は、第2領域の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。第2領域における微細繊維状セルロースの含有率を上記範囲内とすることにより、シート製造時の歩留を向上させやすくなり、かつ耐カール性と寸法安定性に優れたシートが得られやすくなる。
第2領域における第2樹脂の含有率は、第2領域の全質量に対して、51質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが一層好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。また、第2領域における第2樹脂の含有率は、第2領域の全質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。第2領域における第2樹脂の含有率を上記範囲内とすることにより、シート製造時の歩留を向上させやすくなり、かつ耐カール性と寸法安定性に優れたシートが得られやすくなる。
シート全体における微細繊維状セルロースの含有率は、シートの全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、シート全体における微細繊維状セルロースの含有率は、シートの全質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
シート全体における樹脂の含有率(第1樹脂と第2樹脂の合計含有率)は、シートの全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。また、シート全体における樹脂の含有率は、シートの全質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。シート全体における微細繊維状セルロースの含有率及び樹脂の含有率を上記範囲内とすることにより、シート強度を高めることができ、耐カール性と寸法安定性に優れたシートが得られやすくなる。
本実施形態において、第1領域における微細繊維状セルロースの密度は、第1領域の厚み方向の少なくとも一部において略均一である。また、第2領域における微細繊維状セルロースの密度は、第2領域の厚み方向の少なくとも一部において略均一である。なお、第1領域10aと第2領域10bの境界面が明確である場合、第1領域における微細繊維状セルロースの密度は、第1領域の厚み方向の全領域において略均一であることが好ましく、第2領域における微細繊維状セルロースの密度は、第2領域の厚み方向の全領域において略均一であることが好ましい。また、第1領域10aと第2領域10bの境界面が明確ではなく、第1領域10aと第2領域10bの間に、第1領域10aを構成する成分の一部が第2領域10bを構成する成分の一部が混在した中間領域が存在する場合、中間領域を除く各領域において微細繊維状セルロースの密度が略均一であることが好ましい。
ここで、各領域において微細繊維状セルロースの密度が厚み方向の少なくとも一部において略均一である状態とは、下記領域(a)〜(c)に含まれる微細繊維状セルロースの濃度を測定した場合に、2領域間の繊維濃度比が2未満である状態をいう。すなわち、どの2領域の濃度を比較しても2倍以上の差がでない状態をいう。なお、以下では、各領域における厚み方向の少なくとも一部の領域をX領域として説明する。
(a)X領域における厚み方向の一方の端面からX領域の全体の厚みの10%までの領域
(b)X領域における厚み方向の他方の端面からX領域の全体の厚みの10%までの領域
(c)X領域における厚み方向の中心面からX領域の全体の厚みの±5%(合計10%)の領域
第1領域の厚みは、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることが特に好ましい。第1領域の厚みは、1000μm以下であることが好ましい。
また、第2領域の厚みは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。第2領域の厚みは、500μm以下であることが好ましい。
第1領域の厚み及び第2領域の厚みを測定する際には、シートの厚み方向の断面が露出するように、ウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって切り出し、当該断面を光学顕微鏡で観察することで測定を行う。本明細書においては、当該断面に存在する10点の各領域の厚みの平均値を、各領域の厚みとする。
第1領域の厚みをPとし、第2領域の厚みをQとした場合、P>Qであることが好ましく、P>1.5×Qであることがより好ましく、P>2.0×Qであることがさらに好ましい。第1領域の厚みと第2領域の厚みを上記条件とすることにより、シート製造時の歩留を向上させやすくなり、かつ耐カール性と寸法安定性に優れたシートが得られやすくなる。
(微細繊維状セルロース)
本発明のシートにおいて、第1領域と第2領域はそれぞれ繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース(微細繊維状セルロース)を含む。
微細繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましい。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択される。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、より好ましくは2nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの電子顕微鏡観察による繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の微細繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。微細繊維状セルロースの平均繊維幅はこのように読み取った繊維幅の平均値である。
微細繊維状セルロースの繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上800μm以下がさらに好ましく、0.1μm以上600μm以下が特に好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制でき、また微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることができる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、TEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造をとっていることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。この場合、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースは、イオン性官能基を有するものであることが好ましく、イオン性官能基はアニオン性基であることが好ましい。すなわち、第1領域における微細繊維状セルロース及び第2領域における微細繊維状セルロースは、アニオン性基を有するものであることが好ましい。このようなアニオン性基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある)、及び、スルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基及びカルボキシル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることが特に好ましい。
リン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であっても、非イオン性置換基であってもよい。
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
Figure 2018202822
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を表す(ただし、a=b×mである);αおよびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化試薬」又は「化合物A」という)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化試薬は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、繊維原料のスラリーにリン酸化試薬の粉末や水溶液を添加してもよい。
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」という)の存在下で行ってもよい。
化合物Aを化合物Bの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、繊維原料のスラリーに化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態の繊維原料に化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。繊維原料の形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
本実施態様で使用する化合物Aは、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。
リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましい。リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。化合物Aの水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は特に限定されないが、化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。繊維原料に対するリン原子の添加量が100質量%を超えると、収率向上の効果は頭打ちとなり、使用する化合物Aのコストが上昇する。一方、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、1−エチル尿素などが挙げられる。
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、150℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
加熱処理の際、化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間において、繊維原料を静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aが繊維原料表面に移動する。そのため、繊維原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、繊維表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥による繊維原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状の繊維原料を用いるか、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練又は攪拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもでき、軸比の高い微細繊維を得ることができる。
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるが繊維原料スラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リン酸基の含有量(リン酸基の導入量)は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり、0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましい。また、リン酸基の含有量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リン酸基の含有量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。なお、本明細書において、微細繊維状セルロースが有するリン酸基の含有量(リン酸基の導入量)は、後述するように微細繊維状セルロースが有するリン酸基の強酸性基量と等しい。
リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。具体的には、解繊処理工程により微細化を行い、得られた微細繊維状セルロース含有スラリーをイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定することができる。
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図3に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。すなわち、3つの領域が現れる。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。すなわち、図3に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えば良いが、複数回繰り返すこともできる。この場合、より多くのリン酸基が導入されるので好ましい。
<カルボキシル基の導入工程>
本発明においては、微細繊維状セルロースがカルボキシル基を有するものである場合、たとえば繊維原料にTEMPO酸化処理などの酸化処理を施すことや、カルボン酸由来の基を有する化合物、その誘導体、またはその酸無水物もしくはその誘導体によって処理することで、カルボキシル基を導入することができる。
カルボキシル基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等のトリカルボン酸化合物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
カルボキシル基の導入量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましい。また、カルボキシル基の含有量は、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。
カルボキシル基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図4に示した曲線を与える。図4に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
<アルカリ処理>
微細繊維状セルロースを製造する場合、リン酸基導入工程やカルボキシル基導入工程といったイオン性置換基導入工程と、後述する解繊処理工程との間にアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、イオン性置換基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、イオン性置換基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、イオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済みイオン性置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
<解繊処理工程>
イオン性置換基導入繊維は、解繊処理工程で解繊処理される。解繊処理工程では、通常、解繊処理装置を用いて、繊維を解繊処理して、微細繊維状セルロース含有スラリーを得るが、処理装置、処理方法は、特に限定されない。
解繊処理装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミルなどを使用できる。あるいは、解繊処理装置としては、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできる。解繊処理装置は、上記に限定されるものではない。好ましい解繊処理方法としては、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミの心配が少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーが挙げられる。
解繊処理の際には、繊維原料を水と有機溶媒を単独または組み合わせて希釈してスラリー状にすることが好ましいが、特に限定されない。分散媒としては、水の他に、極性有機溶剤を使用することができる。好ましい極性有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられるが、特に限定されない。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、またはt−ブチルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。分散媒は1種であってもよいし、2種以上でもよい。また、分散媒中に繊維原料以外の固形分、例えば水素結合性のある尿素などを含んでも構わない。
本発明では、微細繊維状セルロースを濃縮、乾燥させた後に解繊処理を行ってもよい。この場合、濃縮、乾燥の方法は特に限定されないが、例えば、微細繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加する方法、一般に用いられる脱水機、プレス、乾燥機を用いる方法等が挙げられる。また、公知の方法、例えばWO2014/024876、WO2012/107642、およびWO2013/121086に記載された方法を用いることができる。また、濃縮した微細繊維状セルロースをシート化してもよい。該シートを粉砕して解繊処理を行うこともできる。
微細繊維状セルロースを粉砕する際に粉砕に用いる装置としては、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーターなど、湿式粉砕する装置等を使用することもできるが特に限定されない。
(樹脂)
本発明のシートにおいて、第1領域は第1樹脂を含み、第2領域は第2樹脂を含む。第1樹脂及び第2樹脂は、それぞれ親水性樹脂であることが好ましい。親水性樹脂としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体などを挙げることができる。中でも、親水性樹脂は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、変性ポリビニルアルコール(変性PVA)及びポリエチレンオキサイド(PEO)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリビニルアルコール(PVA)であることがより好ましい。
第1樹脂及び第2樹脂としては、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂及びシリコン系樹脂等のエマルジョン;上記した樹脂を構成するモノマーの共重合体のエマルジョン;上記した樹脂のエマルジョンの混合体を使用することもできる。
第1樹脂及び第2樹脂の重量平均分子量は、それぞれ5万以上800万以下であることが好ましく、10万以上500万以下であることがより好ましい。
本実施形態において、第1樹脂と第2樹脂は、同種の樹脂であってもよく、異種の樹脂であってもよい。第1樹脂と第2樹脂が同種の樹脂である場合、第1領域と第2領域の層間密着性を効果的に高めることができる。これにより、シート全体の強度を高めることもできる。一方、第1樹脂と第2樹脂が異種の樹脂である場合、シートの各表面の物性をそれぞれ異なる物性とすることもできる。
(任意成分)
本発明のシートにおいて、第1領域は微細繊維状セルロースと第1樹脂からなる領域であってもよく、第2領域は微細繊維状セルロースと第2樹脂からなる領域であってもよいが、各領域は微細繊維状セルロースと樹脂以外に任意成分をさらに含んでいてもよい。
任意成分としては、例えば、有機イオンを挙げることができる。有機イオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオンやテトラアルキルホスホニウムイオンを挙げることができる。テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、オクチルジメチルエチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルエチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムイオン、トリブチルベンジルアンモニウムイオンが挙げられる。テトラアルキルホスホニウムイオンとしては、例えばテトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラプロピルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、およびラウリルトリメチルホスホニウムイオンが挙げられる。また、有機イオンとして、テトラプロピルオニウムイオン、テトラブチルオニウムイオン、特にテトラn−プロピルオニウムイオン、テトラn−ブチルオニウムイオンなども挙げることができる。
さらに各領域は、任意成分として、カップリング剤、無機層状化合物、無機化合物、レベリング剤、消泡剤、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、紫外線防御剤、染料、顔料、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤等を含有してもよい。
各領域に含まれる任意成分の含有量は、各領域に含まれる微細繊維状セルロース100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。任意成分の含有量を上記範囲内とすることにより、耐カール性と寸法安定性の高いシートを形成することができる。
(シートの製造方法)
本発明のシートの製造方法は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース及び第2樹脂を含む第2領域を形成する工程と、第2領域の少なくとも一方の面側に、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース及び第1樹脂を含む第1領域を形成する工程と、を含む。第2領域を形成する工程では、第2領域形成用組成物(以下、組成物もしくはスラリーともいう)を基材上に塗工する工程又は、第2領域形成用組成物を抄紙する工程を含むことが好ましい。中でも、第2領域を形成する工程は第2領域形成用組成物を基材上に塗工する工程を含むことが好ましい。また、第1領域を形成する工程では、第1領域形成用組成物(以下、組成物もしくはスラリーともいう)を第2領域上に塗工する工程又は、第1領域形成用組成物を第2領域上で抄紙する工程を含む。中でも、第1領域を形成する工程では、第1領域形成用組成物を第2領域上に塗工する工程を含むことが好ましい。なお、本発明のシートの製造方法においては、第1領域を形成した後に、第2領域を第1領域上に積層することでシートを形成してもよい。
本発明のシートの製造方法において用いる第1領域形成用組成物中の繊維状セルロースの含有率(質量%)をC11とし、第2領域形成用組成物中の繊維状セルロースの含有率(質量%)をC12とした場合、C11>C12であればよく、すなわち、C11/C12>1.0であればよい。さらに、C11/C12≧1.1であることが好ましく、C11/C12≧1.3であることがより好ましく、C11/C12≧1.5であることがさらに好ましい。
<塗工工程>
塗工工程は、組成物(スラリー)を基材上に塗工し、これを乾燥することにより、シート(第1領域もしくは第2領域)を得る工程である。第2領域を形成する工程においては、たとえば第2領域形成用組成物を基材上に塗工する。また、第1領域を形成する工程においては、たとえば第1領域形成用組成物を、基材上に設けられた第2領域上に塗工する。塗工装置と長尺の基材を用いることで、シートを連続的に生産することができる。塗工するスラリーの濃度は特に限定されないが、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。
塗工工程で用いる基材の材質は、特に限定されないが、組成物(スラリー)に対する濡れ性が高いものの方が乾燥時のシートの収縮等を抑制することができて良いが、乾燥後に形成されたシートが容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂製のフィルムや板または金属製のフィルムや板が好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂のフィルムや板、アルミ、亜鉛、銅、鉄板の金属のフィルムや板、および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレスのフィルムや板、真ちゅうのフィルムや板等を用いることができる。
塗工工程において、組成物(スラリー)の粘度が低く、基材上で展開してしまう場合、所定の厚み、坪量の微細繊維状セルロース含有シートを得るため、基材上に堰止用の枠を固定して使用してもよい。堰止用の枠の質は特に限定されないが、乾燥後に付着するシートの端部が容易に剥離できるものを選択することが好ましい。中でも樹脂製のフィルムや板または金属製のフィルムや板を成形したものが好ましいが、特に限定されない。例えばアクリル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂のフィルムや板、アルミ、亜鉛、銅、鉄等の金属のフィルムや板、および、それらの表面を酸化処理したもの、ステンレスのフィルムや板、真ちゅうのフィルムや板等を成形したもの用いることができる。
組成物(スラリー)を塗工する塗工機としては、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。厚みをより均一にできることから、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーターが好ましい。
塗工温度は特に限定されないが、20℃以上45℃以下であることが好ましく、25℃以上40℃以下であることがより好ましく、27℃以上35℃以下であることがさらに好ましい。塗工温度が上記下限値以上であれば、組成物(スラリー)を容易に塗工でき、上記上限値以下であれば、塗工中の分散媒の揮発を抑制できる。
塗工工程においては、シートの仕上がり坪量が10g/m2以上100g/m2以下になるようにスラリーを塗工することが好ましい。坪量が上記範囲内となるように塗工することで、強度に優れたシートが得られる。
各領域を形成する工程は、基材上に塗工した組成物(スラリー)を乾燥させる工程を含むことが好ましい。乾燥方法としては、特に限定されないが、非接触の乾燥方法でも、シートを拘束しながら乾燥する方法の何れでもよく、これらを組み合わせてもよい。
非接触の乾燥方法としては、特に限定されないが、熱風、赤外線、遠赤外線または近赤外線により加熱して乾燥する方法(加熱乾燥法)、真空にして乾燥する方法(真空乾燥法)を適用することができる。加熱乾燥法と真空乾燥法を組み合わせてもよいが、通常は、加熱乾燥法が適用される。赤外線、遠赤外線または近赤外線による乾燥は、赤外線装置、遠赤外線装置または近赤外線装置を用いて行うことができるが、特に限定されない。加熱乾燥法における加熱温度は特に限定されないが、20℃以上120℃以下とすることが好ましく、25℃以上105℃以下とすることがより好ましい。加熱温度を上記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができ、上記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制及び微細繊維状セルロースが熱によって変色することを抑制できる。
第1領域を形成する工程では、第1領域形成用組成物を上述した方法と同様の方法で基材上に塗工して得られた第1領域を、第2領域上に積層してもよい。この場合、第1領域と第2領域の積層は乾燥工程の前に行い、積層した状態で乾燥を行うことで各領域の接合を行ってもよく、第1領域と第2領域を接着層等を介して接合してもよい。第1領域と第2領域の間に接着層が設けられる場合は、接着層を構成する接着剤として、例えば、アクリル樹脂を挙げることができる。また、接着剤としては、例えば、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂や、SBR、NBR等のゴム系エマルジョンなどを用いることもできる。
第1領域を形成する工程では、第1領域形成用組成物を第2領域上に塗工する工程を含むことが好ましい。この場合、第2領域となるシート上に第1領域形成用組成物を塗工し、乾燥することで第2領域及び第1領域を有するシートが形成される。第1領域形成用組成物の粘度が低く、第2領域となるシート上で展開してしまう場合、所定の厚み、坪量の第1領域を得るため、第2領域となるシート上に堰止用の枠を固定して使用してもよい。
なお、第1領域及び第2領域を有するシートは、基材から剥離してから、巻き取ることができる。あるいは、シートと基材とを積層したまま巻き取って、シートの使用直前にシートを基材から剥離してもよい。また、基材を剥離することなく、積層体の一部として基材が含まれたものを使用してもよい。
<抄紙工程>
各領域を形成する工程は、組成物(スラリー)を抄紙する工程を含んでもよい。抄紙工程で抄紙機としては、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。抄紙工程では、手抄き等公知の抄紙を行ってもよい。
抄紙工程では、組成物(スラリー)をワイヤー上で濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、プレス、乾燥することでシートを得る。また、第1領域を抄紙工程により第2領域上に形成する場合は、第1領域形成用組成物をワイヤー上に形成された第2領域上で濾過、脱水して湿紙状態のシートを得た後、プレス、乾燥することでシートを得る。スラリーの濃度は特に限定されないが、0.05質量%以上5質量%以下が好ましい。スラリーを濾過、脱水する場合、濾過時の濾布としては特に限定されないが、微細繊維状セルロースは通過せず、かつ濾過速度が遅くなりすぎないことが重要である。このような濾布としては特に限定されないが、有機ポリマーからなるシート、織物、多孔膜が好ましい。有機ポリマーとしては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような非セルロース系の有機ポリマーが好ましい。具体的には孔径0.1μm以上20μm以下、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1μm以上20μm以下、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられるが、特に限定されない。
組成物(スラリー)から各領域を製造する方法としては、特に限定されないが、例えばWO2011/013567に記載の製造装置を用いる方法等が挙げられる。この製造装置は、微細繊維状セルロースを含むスラリーを無端ベルトの上面に吐出し、吐出されたスラリーから分散媒を搾水してウェブを生成する搾水セクションと、ウェブを乾燥させて繊維シートを生成する乾燥セクションとを備えている。搾水セクションから乾燥セクションにかけて無端ベルトが配設され、搾水セクションで生成されたウェブが無端ベルトに載置されたまま乾燥セクションに搬送される。
本発明において使用できる脱水方法としては特に限定されないが、紙の製造で通常に使用している脱水方法が挙げられ、長網、円網、傾斜ワイヤーなどで脱水した後、ロールプレスで脱水する方法が好ましい。また、乾燥方法としては特に限定されないが、紙の製造で用いられている方法が挙げられ、例えば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、近赤外線ヒーター、赤外線ヒーターなどの方法が好ましい。
また、本実施形態においては、第1領域及び第2領域をそれぞれ別個に作成した後、第1領域及び第2領域のうちの一方を他方上へ積層してもよい。この場合、第1領域と第2領域の積層は湿潤状態で行うことが好ましく、また、第1領域と第2領域を接着層等を介して接合してもよい。第1領域と第2領域の間に接着層が設けられる場合は、接着層を構成する接着剤としては、上述した接着剤と同様のものと挙げることができる。
(積層体)
本発明は、上述したシートと、シートの少なくとも一方の面側に配される樹脂層と、を有する積層体に関するものでもある。図5は、積層体20の構造を説明する断面図である。図5に示されるように、積層体20は、第1領域10a及び第2領域10bを有するシート10と、樹脂層22を有する。樹脂層22は、シート10の一方の面側にのみ設けられていてもよく、シート10の両方の面側に設けられていてもよい。
樹脂層は、天然樹脂や合成樹脂を主成分とする層である。ここで、主成分とは、樹脂層の全質量に対して、50質量%以上含まれている成分を指す。樹脂の含有量は、樹脂層の全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、樹脂の含有量は、100質量%とすることもでき、95質量%以下であってもよい。
天然樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂を挙げることができる。
合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、及びシリコン樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、合成樹脂はポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、又はシリコン樹脂であることが好ましい。
また、合成樹脂としては、接着層を構成する接着剤を挙げることもできる。このような合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂や、SBR、NBR等のゴム系エマルジョンなどが挙げられる。
樹脂層を構成する樹脂は1種を単独で用いてもよく、複数の樹脂成分が共重合または、グラフト重合してなる共重合体を用いてもよい。また、複数の樹脂成分を物理的なプロセスで混合したブレンド材料として用いてもよい。
シートの各々の面側に設けられる樹脂層としては、単一の樹脂層を設けてもよく、複数の樹脂層を設けてもよい。複数の樹脂層を設ける場合における樹脂層としては、上記した接着層を構成する接着剤と、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、及びシリコン樹脂から選ばれる少なくとも一種とを含む樹脂層を形成してよい。
積層体を製造する際には樹脂層形成用の樹脂組成物をシート上に塗工することで形成してもよい。また、予め形成した樹脂層をシート上に積層してもよい。この場合、樹脂層とシートの間には接着層を設けてもよく、このような接着層も樹脂層に包含されるまた、シート製造時の基材が樹脂の場合、基材を剥離せずに、樹脂層の一部としてもよい。
(用途)
本発明のシートは、各種のディスプレイ装置、各種の太陽電池、等の光透過性基板の用途に適している。また、電子機器の基板、家電の部材、各種の乗り物や建物の窓材、内装材、外装材、包装用資材等の用途にも適している。さらに、糸、フィルタ、織物、緩衝材、スポンジ、研磨材などの他、シートそのものを補強材として使う用途にも適している。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
[リン酸基導入セルロース繊維の作製]
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2のシート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を原料として使用した。上記針葉樹クラフトパルプ100質量部(絶乾質量)を、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液に含浸させ、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
得られたリン酸化パルプをパルプ質量で100g分取し、10Lのイオン交換水を注ぎ、撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。次いで、得られた脱水シートを10Lのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12以上13以下のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を添加した。撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。
得られた脱水シートに対し、先と同様にして、リン酸基を導入する工程、濾過脱水する工程を繰り返し、二回リン酸化セルロースの脱水シートを得た。得られた脱水シートの赤外線吸収スペクトルをFT−IRで測定した。その結果、1230cm-1以上1290cm-1以下にリン酸基に基づく吸収が観察され、リン酸基の付加が確認された。
[解繊処理]
得られた二回リン酸化セルロースの脱水シートにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)で245MPaの圧力にて3回処理し、微細繊維状セルロース分散液を得た。
[置換基量の測定]
置換基導入量は、繊維原料へのリン酸基の導入量であり、この値が大きいほど、多くのリン酸基が導入されている。置換基導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%の微細繊維状セルロース含有スラリーに体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の微細繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図3(リン酸基)に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。算出した結果、リン酸基の導入量は0.98mmol/gであった。
[繊維幅の測定]
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。
微細繊維状セルロース分散液の上澄み液を濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。乾燥後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEOL−2000EX)により観察した。これにより、平均繊維幅が4nm程度の微細繊維状セルロースになっていることを確認した。
[ポリビニルアルコールの溶解]
イオン交換水に、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、ポバール105、重合度:500、ケン化度:98〜99mol%)を20質量%になるように加え、95℃で1時間撹拌し、溶解した。上記の手順でポリビニルアルコール水溶液を得た。
[第2領域の形成]
微細繊維状セルロース分散液、および上記ポリビニルアルコール水溶液をそれぞれ固形分濃度が0.6質量%となるようにイオン交換水で希釈した。次いで、希釈後の微細繊維状セルロース分散液10質量部に対し、希釈後のポリビニルアルコール水溶液が90質量部になるように混合し、混合液(A)を得た。さらに、シートの仕上がり坪量が37.5g/m2になるように混合液(A)を計量して、市販の透明アクリル板上に展開した。なお、所定の坪量となるようアクリル板上には堰止用の枠(内寸180mm×180mm、高さ50mm)を配置した。なお、アクリル板の反対面には、堰止用の枠内の領域に油性ペンで120mm×120mmの四角形を描画し、さらにその四角形を36等分に区分する直線を引き、20mm角のマス目を描画しておいた 。その後、堰止用の枠内にシートの仕上がり坪量が37.5g/m2になるように混合液(A)を塗工 し、70℃の乾燥機で24時間乾燥し、後に第2領域となるシート(A)を得た。
[第1領域の形成]
微細繊維状セルロース分散液、および上記ポリビニルアルコール水溶液をそれぞれ固形分濃度が0.6質量%となるようにイオン交換水で希釈した。次いで、希釈後の微細繊維状セルロース分散液70質量部に対し、希釈後のポリビニルアルコール水溶液が30質量部になるように混合し、混合液(B)を得た。さらに、シートの仕上がり坪量が105g/m2になるように混合液(B)を計量して、上記のとおり市販のアクリル板上に形成されたシート(A)上に展開した 。なお、所定の坪量となるようシート(A)上には堰止用の枠(内寸120mm×120mm、高さ5cm)を[第2領域の形成]において描写した四角形と重なるよう配置した。その後70℃の乾燥機で24時間乾燥し、シート(A)上に第1領域となるシート(B)を形成した。以上の手順により、シート(B)からなる第1領域と、シート(A)からなる第2領域により構成される、シート(C)を得た。
[樹脂層の形成]
アクリロイル基がグラフト重合したアクリル樹脂(大成ファインケミカル社製、アクリット8KX−012C:アクリル樹脂成分39.0質量%、1−プロパノール30.5質量%、酢酸ブチル30.5質量%)100質量部、ポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ社製、TPA−100)38質量部、ラジカル重合開始剤(BASF社製、イルガキュア184)2質量部を混合して樹脂組成物を得た。次いで、上記樹脂組成物を、アクリル板からはく離したシート(C)のシート(A)側の面に、バーコーターにて塗布した後、100℃で1時間加熱して硬化させることで樹脂層を形成した。樹脂層の厚みは10μmであった。以上の手順により、評価用シートを得た。
[実施例2]
実施例1の[第2領域の形成]において、混合液(A)の配合を以下の様に変更した。具体的には、希釈後の微細繊維状セルロース分散液20質量部に対し、希釈後のポリビニルアルコール水溶液が80質量部になるように混合し、混合液(A)を得た。また、シートの仕上がり坪量が39g/m2になるように混合液(A)を計量して、市販のアクリル板上に展開した。
さらに、[第1領域の形成]において、混合液(B)の配合を以下の様に変更した。具体的には、希釈後の微細繊維状セルロース分散液80質量部に対し、希釈後のポリビニルアルコール水溶液が20質量部になるように混合し、混合液(B)を得た。また、シートの仕上がり坪量が108g/m2になるように混合液(B)を計量して、シート(A)上に展開した。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用シートを得た。
[実施例3]
実施例1の[第2領域の形成]において、混合液(A)の配合を以下の様に変更した。具体的には、希釈後の微細繊維状セルロース分散液40質量部に対し、希釈後のポリビニルアルコール水溶液が60質量部になるように混合し、混合液(A)を得た。また、シートの仕上がり坪量が41g/m2になるように混合液(A)を計量して、市販のアクリル板上に展開した。
さらに、[第1領域の形成]において、混合液(B)の配合を以下の様に変更した。具体的には、希釈後の微細繊維状セルロース分散液60質量部に対し、希釈後のポリビニルアルコール水溶液が40質量部になるように混合し、混合液(B)を得た。また、シートの仕上がり坪量が88g/m2になるように混合液(B)を計量して、シート(A)上に展開した。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用シートを得た。
[実施例4]
実施例1において、[樹脂層の形成]を行わず、シート(C)を評価用シートとした。
[実施例5]
実施例1の[第2領域の形成]および[第1領域の形成]において、希釈後のポリビニルアルコール水溶液の代わりにポリエチレンオキサイド水溶液(住友精化(株)製、PEO−18をイオン交換水で濃度0.6質量%となるよう溶解したもの)を使用した。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用シートを得た。
[実施例6]
実施例1の[第1領域の形成]において、希釈後のポリビニルアルコール水溶液の代わりにポリエチレンオキサイド水溶液(住友精化(株)製、PEO−18をイオン交換水で濃度0.6質量%となるよう溶解したもの)を使用した。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用シートを得た。
[比較例1]
実施例1において、[第2領域の形成]を行わなかった。また、[第1領域の形成]において、シートの仕上がり坪量が150g/m2になるように混合液(B)を計量して、市販のアクリル板上に展開した。その後70℃の乾燥機で24時間乾燥して得たシート(B)をアクリル板からはく離し、アクリル板と接していた面に[樹脂層の形成]を行った。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用シートを得た。
[比較例2]
実施例1の[第2領域の形成]において、混合液(A)の配合を以下の様に変更した。具体的には、希釈後の微細繊維状セルロース分散液70質量部に対し、希釈後のポリビニルアルコール水溶液が30質量部になるように混合し、混合液(A)を得た。また、シートの仕上がり坪量が45g/m2になるように混合液(A)を計量して、市販のアクリル板上に展開した。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用シートを得た。
[比較例3]
比較例1の[第1領域の形成]において、混合液(B)の配合を以下の様に変更した。具体的には、希釈後の微細繊維状セルロース分散液10質量部に対し、希釈後のポリビニルアルコール水溶液が90質量部になるように混合し、混合液(B)を得た。また、シートの仕上がり坪量が125g/m2になるように混合液(B)を計量して、市販のアクリル板上に展開した。その他の手順は比較例1と同様にし、評価用シートを得た。
[比較例4]
実施例1の[第1領域の形成]において、混合液(B)の配合を以下の様に変更した。具体的には、希釈後の微細繊維状セルロース分散液10質量部に対し、希釈後のポリビニルアルコール水溶液が90質量部になるように混合し、混合液(B)を得た。また、シートの仕上がり坪量が88g/m2になるように混合液(B)を計量して、シート(A)上に展開した。その他の手順は実施例1と同様にし、評価用シートを得た。
<測定>
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた評価用シートを、以下の方法に従って測定した。
[各領域の厚み]
評価用シートの厚み方向の断面が露出するように、ウルトラミクロトームUC−7(JEOL社製)によって切り出し、当該断面を光学顕微鏡で観察した。当該断面に存在する10点の各領域の厚みの平均値を、各領域の厚みとした。
<評価>
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた評価用シートを、以下の方法に従って評価した。
[層間密着性]
JIS K 5400に準拠し、評価用シートの第1領域側の表面に1mm2のクロスカットを100個入れ、セロハンテープ(ニチバン社製)をその上に貼り付け、1.5kg/cm2の荷重で押し付けた後、90°方向にはく離した。はく離したマス目数により、以下の基準にしたがって第1領域と第2領域の密着性を評価した。なお、比較例1及び比較例3については評価用シートが第2領域を有しないため、本評価は行わなかった。
◎:はく離したマス目数が5未満である。
○:はく離したマス目数が5以上10未満である。
△:はく離したマス目数が10以上20未満である。
×:はく離したマス目数が20以上である。
[カール]
評価用シートを幅5mm×長さ80mmの試験片に切り出した。図2に示すように、試験片50の一方の短辺を含む端部を幅20mm×長さ30mm×高さ20mmの磁石2個(磁石55)で支持し(磁石55から長さ50mmの試験片50が露出する)、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、水平な台の上に試験片50の長さ方向が台に対して垂直になるように静置した。そして、この際のカール曲率を測定した。具体的には、図2におけるΔxとΔyの値を測定し、下記の式(1)に従って、カール曲率Cを算出した。
式(1):C=2Δy/(Δx2+Δy2
算出したカール曲率Cから、以下の基準にしたがって評価用シートの耐カール性を評価した。
◎:カール曲率Cが1m-1未満
○:カール曲率Cが1m-1以上5m-1未満
△:カール曲率Cが5m-1以上20m-1未満
×:カール曲率Cが20m-1以上
[歩留]
実施例1〜6及び比較例1〜4において、各々のシートをアクリル板からはく離する際、シートがアクリル板に張り付いた状態で上方から観察し、シートにシワ・割れが発生したマスを計数した。さらに、シートをアクリル板からはく離した後、アクリル板にシートが割れて残っているマス目数を計数した。なお、マス目は、アクリル板の反対面に描画した120mm×120mmの四角形を36等分することで得られたマス目である。計数したマス目数の合計から、以下の基準にしたがって歩留まりを評価した。
◎:計数したマス目数の合計が2未満である。
○:計数したマス目数の合計が2以上5未満である。
△:計数したマス目数の合計が5以上10未満である。
×:計数したマス目数の合計が10以上である。
[寸法安定性]
評価用シートをレーザーカッターにより、幅3mm×長さ30mmに切り出した。これを、熱機械分析装置(日立ハイテク社製、TMA7100)にセットして、引張モードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下で室温から180℃まで5℃/分で昇温、180℃から25℃まで5℃/分で降温、25℃から180℃まで5℃/分で昇温した際の2度目の昇温時の100℃から150℃の測定値から線熱膨張係数を求めた。測定した線熱膨張係数の結果から、以下の基準にしたがって寸法安定性を評価した。
◎:線熱膨張係数が20ppm/℃未満
○:線熱膨張係数が20ppm/℃以上30ppm/℃未満
△:線熱膨張係数が30ppm/℃以上40ppm/℃未満
×:線熱膨張係数が40ppm/℃以上
Figure 2018202822
表1から明らかなように、微細繊維状セルロース含有率の大きい第1領域と、微細繊維状セルロース含有率の小さい第2領域を備える実施例1〜6では、耐カール性及び歩留が高く、かつ寸法安定性に優れるシートが得られた。ここで、層間密着性は、第1領域と第2領域に含まれる樹脂が同じである際により優れる結果となった。また、カールの程度は樹脂層を備えることでより小さくなる結果となった。
一方、微細繊維状セルロース含有率の大きい第1領域のみを有する比較例1、及び第1領域における繊維状セルロースの含有率と、第2領域における繊維状セルロースの含有率が同じである比較例2では、寸法安定性に優れるシートが得られたものの、耐カール性や歩留の評価で劣る結果となり、生産性およびハンドリング性の低下が懸念された。また、微細繊維状セルロース含有率の小さい第1領域のみを有する比較例3、及び第1領域における繊維状セルロースの含有率と、第2領域における繊維状セルロースの含有率が同じである比較例4では、耐カール性や歩留では良好な結果が確認されたが、寸法安定性に劣る結果となった。
10 シート
10a 第1領域
10b 第2領域
20 積層体
22 樹脂層
50 試験片
55 磁石

Claims (10)

  1. 繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース及び第1樹脂を含む第1領域と、
    前記第1領域の少なくとも一方の面側に配され、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース及び第2樹脂を含む第2領域と、を有し、
    前記第1領域における前記繊維状セルロースの含有率(質量%)をC1とし、前記第2領域における前記繊維状セルロースの含有率(質量%)をC2とした場合、C1>C2であるシート。
  2. 前記第1領域における前記繊維状セルロースの密度が、前記第1領域の厚み方向の少なくとも一部において略均一である請求項1に記載のシート。
  3. 前記第2領域における前記繊維状セルロースの密度が、前記第2領域の厚み方向の少なくとも一部において略均一である請求項1又は2に記載のシート。
  4. 前記第1樹脂と前記第2樹脂が、同種の樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート。
  5. 前記第1樹脂と前記第2樹脂が、異種の樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート。
  6. 前記第1領域における前記繊維状セルロースの含有率は、前記第1領域の全質量に対して、51質量%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート。
  7. 前記第2領域における前記繊維状セルロースの含有率は、前記第2領域の全質量に対して、49質量%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート。
  8. 前記第1領域における前記繊維状セルロースの含有率(質量%)をC1とし、前記第2領域における前記繊維状セルロースの含有率(質量%)をC2とした場合、C1/C2≧1.3である請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート。
  9. 前記第1領域における前記繊維状セルロース及び前記第2領域における前記繊維状セルロースは、アニオン性基を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載のシート。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のシートと、前記シートの少なくとも一方の面側に配される樹脂層と、を有する積層体。
JP2017114071A 2017-06-09 2017-06-09 シート及び積層体 Active JP7005950B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017114071A JP7005950B2 (ja) 2017-06-09 2017-06-09 シート及び積層体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017114071A JP7005950B2 (ja) 2017-06-09 2017-06-09 シート及び積層体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018202822A true JP2018202822A (ja) 2018-12-27
JP7005950B2 JP7005950B2 (ja) 2022-01-24

Family

ID=64954859

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017114071A Active JP7005950B2 (ja) 2017-06-09 2017-06-09 シート及び積層体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7005950B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020132651A (ja) * 2019-02-12 2020-08-31 王子ホールディングス株式会社 繊維状セルロース含有被膜の製造方法、樹脂組成物、被膜及び積層体

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010044169A1 (ja) * 2008-10-17 2010-04-22 株式会社日本吸収体技術研究所 耐水性高通気性複合シート及びその製造方法
WO2012128107A1 (ja) * 2011-03-18 2012-09-27 凸版印刷株式会社 積層体およびその製造方法ならびに成形容器
JP2015084318A (ja) * 2013-08-14 2015-04-30 三菱製紙株式会社 リチウムイオン電池用セパレータ用塗液及びリチウムイオン電池用セパレータ
WO2017046749A1 (en) * 2015-09-17 2017-03-23 Stora Enso Oyj Flexible microfibrillated film formation

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010044169A1 (ja) * 2008-10-17 2010-04-22 株式会社日本吸収体技術研究所 耐水性高通気性複合シート及びその製造方法
WO2012128107A1 (ja) * 2011-03-18 2012-09-27 凸版印刷株式会社 積層体およびその製造方法ならびに成形容器
JP2015084318A (ja) * 2013-08-14 2015-04-30 三菱製紙株式会社 リチウムイオン電池用セパレータ用塗液及びリチウムイオン電池用セパレータ
WO2017046749A1 (en) * 2015-09-17 2017-03-23 Stora Enso Oyj Flexible microfibrillated film formation

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020132651A (ja) * 2019-02-12 2020-08-31 王子ホールディングス株式会社 繊維状セルロース含有被膜の製造方法、樹脂組成物、被膜及び積層体

Also Published As

Publication number Publication date
JP7005950B2 (ja) 2022-01-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6394775B2 (ja) 繊維状セルロースの製造方法及び繊維状セルロース
JP7283606B2 (ja) 積層体及び積層体の製造方法
WO2017138589A1 (ja) シート
JP6866693B2 (ja) シート
JP6947033B2 (ja) 積層シート及び積層体
JP7294395B2 (ja) パルプ、スラリー、シート、積層体及びパルプの製造方法
JP7120009B2 (ja) シート
JP7120010B2 (ja) シート
JP6531615B2 (ja) シート及び成形体
JP7005950B2 (ja) シート及び積層体
WO2019124364A1 (ja) シート
JP6907600B2 (ja) 積層シート
WO2021131380A1 (ja) シート及びシートの製造方法
JP2018104568A (ja) シート
JP6620875B1 (ja) シート及び積層体
JP2018171729A (ja) シート
JP2018171730A (ja) 積層シート
JP7346870B2 (ja) シートの製造方法及びシート
JP6907601B2 (ja) 積層シート
JP7271879B2 (ja) 樹脂組成物、硬化物及び電池パック
JP6620567B2 (ja) 積層体及び積層体の製造方法
JP2018104567A (ja) シート

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191203

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200924

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201027

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201225

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20210525

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210824

C60 Trial request (containing other claim documents, opposition documents)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60

Effective date: 20210824

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20210907

C21 Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21

Effective date: 20210914

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211207

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211220

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7005950

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150