JP2018202425A - 内面螺旋溝付多重捻り管とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、内面に長さ方向に沿う複数の螺旋溝が周方向に間隔をおいて形成され、隣接する前記螺旋溝間に螺旋フィンが形成された金属製の複数の径の異なる内面螺旋溝付管を備え、大径の内面螺旋溝付管の内側に小径の内面螺旋溝付管が挿入されて一体化され、前記大径の内面螺旋溝付管の外周に犠牲陽極層が形成されたことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
特許文献1には、ヒートポンプ式の熱源機においてコストの増加を抑制しつつ熱交換性能の向上を図った二重管式熱交換器が開示されている。
この伝熱管において暖かい冷媒と冷たい冷媒の間で効率良く熱交換を行うためには、二重管が螺旋構造になっていれば、理想的な構造と考えられる。
しかし、二重管のそれぞれを螺旋構造とするのは容易ではなく、上述の如く熱交換性能を向上させようとすると熱交換器の大型化、材料費の増加が避けられないという問題がある。
また、自動車用コンデンサやエバポレータなどの熱交換器は、雨水に触れることがあり耐食性の面においても優れていることが望ましい。
本発明の内面螺旋溝付多重捻り管において、前記大径の内面螺旋溝付管内面の前記螺旋フィンがその内側の内面螺旋溝付管の外周面に食い込まされ、前記小径の内面螺旋溝付管の内側に第1の流路が形成され、前記小径の内面螺旋溝付管と前記大径の内面螺旋溝付管との間に第2の流路が形成された構成を採用できる。
本発明の内面螺旋溝付多重捻り管において、前記個々の内面螺旋溝付管の螺旋溝が一定の捻り周期を有する構成を採用できる。
本発明の内面螺旋溝付多重捻り管において、前記個々の内面螺旋溝付管の内面に形成されている螺旋溝の捻り角が個々の内面螺旋溝付管の中心軸線に対し5〜80゜に設定された構成を採用できる。
本発明に係る内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法は、長さ方向に沿う溝として内面螺旋溝を有する素管を用いることができる。
本発明に係る内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法は、前記引抜きダイスによる縮径率を5〜40%とすることができる。
本発明に係る内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法は、Znを0.2質量%以上含み、厚さ80μm以上の犠牲陽極層を形成することができる。
本発明に係る内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法は、前記引抜きダイスに前記複合素管を通して前記複合素管を捻りつつ縮径する際、前記複合素管に前方張力と後方張力を付加することができる。
本実施形態の内面螺旋溝付多重捻り管の製造装置A(図3〜図4参照)は、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝が周方向に間隔をおいて複数形成された径の異なる素管(図6、図7参照)を複数本、例えば2本(素管1、8)を複合した複合素管Fが適用される。
この例の製造装置Aは、例えば、素管1に素管8を挿入して複合素管Fを構成し、これに一定の捻りを生じさせ、図1に示す内面に螺旋溝2aを有する小径の内面螺旋溝付管2と内面に螺旋溝3aを有する大径の内面螺旋溝付管3を一体化した内面螺旋溝付多重捻り管4の基本構造を形成する装置である。この製造装置Aで捻り加工後、内面螺旋溝付管3の外周に溶射法、めっき法、塗布法、クラッド法などの適宜の方法によりZn溶射層、Znメッキ層、Znクラッド層などを形成し、必要に応じ熱処理してZnを拡散させることで犠牲陽極層14を備えた内面螺旋溝付多重捻り管4を得ることができる。
内面螺旋溝付多重捻り管4の外周面、即ち、内面螺旋溝付管3の外周面には犠牲陽極層14が形成されている。この犠牲陽極層14は、一例としてZn溶射層、クラッドによるZn層あるいはZnメッキ層などから、あるいは、これらから熱拡散によりZnが拡散されて形成された防食層である。アルミニウム又はアルミニウム合金から、あるいは、鉄系合金から内面螺旋溝付管3を形成した場合、犠牲陽極層14の領域はZnが拡散されていない領域より電気化学的に卑となって、優先的に腐食することにより、内面螺旋溝付管3の孔食を防止する。犠牲防食層14を構成する材料は、防食対象の内面螺旋溝付管3を構成する金属材料よりも電位が卑な(低電位な)金属の層を設けると良い。
Znの拡散を行わない場合は、内面螺旋溝付層3を構成する材料にZnを多く含ませた材料からなる溶射層、クラッド層などを設けることが好ましい。
Zn含有量が0.2質量%未満の場合は内面螺旋溝付管3の母材(Znを拡散させていない領域)との電位差が少なくなり、腐食防止効果が不充分となり易い。
犠牲陽極層14の厚さが80μm未満であると、犠牲陽極層厚が不足し、孔食に繋がりやすくなる問題を生じ易い。
この製造装置Aは、内面に直線溝(図6参照)1aが形成された素管1に図7に示すように同等構造で小径の素管8を挿入して複合した複合素管Fを図3、図4に示すようにコイル状に巻き取った状態に保持する巻き出し側キャプスタン5と、この巻き出し側キャプスタン5から巻き出される複合素管Fを巻き出し側キャプスタン5とともに回転する回転手段6を備えている。また、製造装置Aは、巻き出し側キャプスタン5から送り出された複合素管Fを通す引抜きダイス7と、引抜きダイス7を通って捻り加工と引抜き加工がなされた内面螺旋溝付多重捻り管3を巻き付けながら送り出す引き抜き側キャプスタン9を備えている。
この素管1の内部に素管1の内径より若干小さな外径の素管8が素管1の長さ方向に沿って挿入され、複合素管Fが構成されている。素管8は素管1と同等構造で外径のみ若干小さく形成されたもので、アルミニウムあるいはアルミニウム合金管からなり、例えば外径3〜20mm程度、より具体的には3〜12mm程度の外径であって、素管1の内部に挿入可能な外径に形成されている。素管8において図7に示すように管本体8Aの内面に長さ方向に沿って複数の直線溝8aが形成され、内周方向に隣接する直線溝8a、8a間にフィン8bが形成されている構造についても素管1と同等構造とされている。
外側の素管1と内側の素管8は同じ材料である必要は無く、素管1を銅合金製とし、素管8をアルミニウム合金製などとしても良い。また、同じアルミニウム合金であっても、素管1と素管8を組成の異なるアルミニウム合金製で構成することも可能である。また、素管1と素管8はこの例では相似形状の素管として表示されているが、それらの内面に形成されている直線溝1a、8aの幅やフィン1b、8bの幅、高さ、形成ピッチなどは内側の素管8と外側の素管1で異なっていても良い。
中空軸部13の他端側には中空軸部13に対し斜め方向に延在するように第2支持フレーム16が設けられ、第2支持フレーム16の先端側に延設された延長フレーム17に錘体18が取り付けられている。第1支持フレーム15と第2支持フレーム16は中空軸部13の他端13bに対しV字型に配置されるように接続され、中空軸部13の軸回りの回転によって第1支持フレーム15と第2支持フレーム16はV字型に支持されたまま回転される。
巻き出し側キャプスタン5において、円盤部5aの外周縁に沿って複合素管Fを巻き付けることができるように構成されている。
中空軸部13の一端13a側の開口部には複合素管Fを挿入可能な大きさの入口部13cが形成され、中空軸部13の他端13b側の開口部には先の複合素管Fを引き出し可能な出口部13dが形成されている。
この巻き出し側キャプスタン5に対する複合素管Fの巻き付け状態と巻き出し状態の一例を図5に簡略的に示しておく。図5においてCは巻き出し側キャプスタン5に巻き付けられる前段側の複合素管Fの軸心を示し、C1は巻き出し側キャプスタン5から巻き出された複合素管Fの軸心を示している。
この駆動モーター21と動力伝達装置22と中空軸部13により巻き出し側キャプスタン5と錘体18を一体に回転させる構成であり、駆動モーター21と動力伝達装置22と中空軸部13により、巻き出し側キャプスタン5を回転駆動する回転手段6が構成されている。
また、複合素管Fがダイス孔を通過する際、巻き出し側キャプスタン5が回転されるので、複合素管Fは引抜きダイス7のダイス孔によって縮径されると同時に捻りが付与される。このため、複合素管Fを構成する素管1、8は捻りが付加されて図1に示す内面螺旋溝付多重捻り管4に加工される。
支柱部材23において引き抜き側キャプスタン9を取り付けた側と反対側に回転駆動用の駆動モーター25の出力軸25aが水平軸28に直接連結するように設置され、駆動モーター25によって引き抜き側キャプスタン9を回転駆動できる。
次に、以上説明のように構成された製造装置Aを用いて、内面螺旋溝付多重捻り管4の基本構造を製造する方法の一例について説明する。
予め、押出により、図6、図7に示すように、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝1aが周方向に間隔をおいて形成された大径の素管1と、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝8aが周方向に間隔をおいて形成された小径の素管8を作製する(素管押出工程)。
次に、外径の大きな素管1の内部に外径の小さな素管8を図7に示すように挿通して複合素管Fを構成する(複合素管作製工程)。
図3〜図5に示す製造装置Aに対し複合素管Fを供給するには、複合素管Fの先端側を中空軸部13の入口部13cから中空軸部13に挿通し、中空軸部13の出口部13dから複合素管Fを引き出し、巻き出し側キャプスタン5の外周に沿って図5に示すように1周分巻き付ける。この複合素管Fを巻き出し側キャプスタン5から接線方向に水平に巻き出して引抜きダイス7のダイス孔に挿通し、引抜きダイス7のダイス孔を通過させた複合素管Fを引き抜き側キャプスタン9に1周分以上巻き付け、引き抜き側キャプスタン9の下流側まで複合素管Fを引き出す。これらの操作は内面螺旋溝付多重捻り管の製造開始前の準備段階の作業となる。
巻き出し側キャプスタン5から巻き出した複合素管Fに引抜きダイス7を通過させて引き抜き側キャプスタン9に巻き付け、引き抜き側キャプスタン9から一定の速度で巻き出す。これらの動作を開始すると同時に中空軸部13を駆動モーター21により所定速度で回転させ、巻き出し側キャプスタン5と錘体18を回転駆動する(捻り引抜き工程)。
更に、引き抜き側キャプスタン9から複合素管Fが引き出される場合の前方張力を一定になるように調整する。
前方張力の安定的な付加のためには、張力調整具32の下流側に巻き取りローラーやウインチ装置などの引張り装置を配置し、一定の速度で張力調整具32を牽引できるように調整することが好ましい。また、後方張力の安定的な付加のためには、張力調整具33の上流側に巻き出しローラーなどの巻き出し装置を配置し、一定の速度で張力調整具33を繰り出しできるように調整することが好ましい。
あるいは、張力調整具32、33を略してこれらの位置に巻き出し用のローラーと巻取用のローラーを配置し、これらのローラーにブレーキ機構や速度調整機構を内蔵し、引抜きダイス7より下流側の複合素管Fの先端側に所望の前方張力を付加し、引抜きダイス7より上流側の複合素管Fの後端側に所望の後方張力を付加できるように構成することが大量生産を行う上では好ましい。
通常、3〜20mm程度、あるいは3〜12mm程度などの外径のアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる薄肉の素管1、8に対し、捻り力のみを作用させると容易に座屈するか破断する。この製造装置Aでは捻り力の作用と同時に引抜き力を作用させて捻りによる破断を抑制しながら引き抜くので、上述のサイズの細径のアルミニウム又はアルミニウム合金製の素管1と素管8からなる複合素管Fであっても、破断させることなく捻りを付加できる。
なお、この実施形態においてアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる素管1、8を用いるが、素管1、8については銅系合金あるいはステンレス鋼などの鉄系合金から形成されていてもよく、素管1、8が別種の金属から構成されていても良い。
引抜きダイス7のダイス孔を複合素管Fが通過する場合、複合素管Fの中心とダイス孔の中心の位置合わせを行い、複合素管Fに余計な応力が作用しないようにするためには、巻き出し側キャプスタン5から巻き出された側の軸心C1を回転中心として軸心C1の周回りに巻き出し側キャプスタン5が回転するように、中空軸部13の位置関係と第1支持フレーム15の位置関係と巻き出し側キャプスタン5の位置関係を合わせることが好ましい。
複合素管Fの中心とダイス孔の中心の位置合わせを行っていることにより、ダイス孔7を通過する複合素管Fに大きな捻りを付加し、捻り角の大きな加工を施しても複合素管Fを破断させることなく捻り加工できる。
この内面螺旋溝付多重捻り管4において、所定の捻り周期(捻りピッチ)で内面螺旋溝付管2と内面螺旋溝付管3が螺旋状に加工されている。このため、内面螺旋溝付管2の内面に形成された内面螺旋溝2aと内面螺旋溝付管3の内面に形成された内面螺旋溝3aの捻り周期はほぼ同一に形成されている。
この例の内面螺旋溝3aと螺旋フィン3bの捻り角θは巻き出し側キャプスタン5の回転速度に応じて例えば5゜〜80゜程度まで製造可能となる。
図2に示す構造の内面螺旋溝付管3においてその周壁を切り開いて平面状に展開した場合、管の内周長さaに対し、内面螺旋溝3aあるいは螺旋フィン3bの1周期分の長さbとした場合、a、bを2辺とする直角三角形の1つの頂角が示すように捻り角θとして規定される。
一例として、外径8.5mmのアルミニウム合金製の内面螺旋溝付管3の場合、図1に示す底肉厚W1:0.58mm、フィン高さ:0.28mm、条数:50個、リード角:20゜に形成することができ、外径6.5mmのアルミニウム合金製の内面螺旋溝付管2の場合、底肉厚W2:0.35mm、フィン高さ:0.16mm、条数:50個、リード角:17゜に形成できる。
このため、内面螺旋溝付管2と内面螺旋溝付管3との間に内面螺旋溝付管2の外周面と内面螺旋溝付管3の螺旋溝3aと螺旋フィン3bによって囲まれた複数の流路が形成される。このため、内面螺旋溝付多重捻り管4においては、内面螺旋溝付管2の内部側に第1の流路R1が形成され、内面螺旋溝付管2と内面螺旋溝付管3との間に第2の流路R2が複数形成される。なお、図1に示す断面のように第2の流路R2は複数の小さな流路の集合体となるが、この第2の流路R2の断面積を大きくするためには内面螺旋溝付管3の螺旋フィン3bの高さを図1の構造より大きく設定し、螺旋フィン3bの条数を少なくすることにより対応できる。
内面螺旋溝付管2の螺旋溝2aのリード角と内面螺旋溝付管3の螺旋溝3aのリード角の大小関係は、一例として後述する実施例において示す。
また、複合素管Fの引抜き速度と回転数の関係を周期的に変更するならば、長さ方向にピッチと捻り角が周期的に変化する内面螺旋溝付多重捻り管4を得ることができる。
この場合、冷媒や熱媒は内面螺旋溝2a、3aの存在により冷媒や熱媒と内面螺旋溝付管2、3との間で効率の良い熱交換がなされる。
このため、例えば、本実施形態の内面螺旋溝付多重捻り管4を自動車用コンデンサとエバポレータを接続する伝熱管に適用するならば、効率の良い熱交換機能を備えた伝熱管構造を実現できる。自動車用コンデンサとエバポレータを接続する伝熱管は通常の場合2本必要であるが、図1の内面螺旋溝付多重捻り管4であれば、第1の流路R1と第2の流路R2を備えているので、1本の内面螺旋溝付多重捻り管4で両者を接続することができる。
この場合、コンデンサとエバポレータの間で行き来する冷媒または熱媒の流量を等しくするには第1の流路R1と第2の流路R2の流路断面積を同等にすれば良く、それには大径側の内面螺旋溝付管3の螺旋フィン3bの高さと幅を大きくして条数を少なくすればよい。
また、本実施形態の製造装置Aにおいて、複合素管Fを構成する素管1、8を予め内面螺旋溝付管としておき、これらの内面螺旋溝付管を複合して引抜きダイス7に通過させて縮径と捻りを同時に付与し、内面螺旋溝付多重捻り管を構成しても良い。
本実施形態の内面螺旋溝付多重捻り管4の外周面には犠牲陽極層14が形成されているので、内面螺旋溝付多重捻り管4を腐食環境に設置した場合、犠牲陽極層14が優先的に面食される結果、内面螺旋溝付管2、3に孔食が発生し難い。このため、耐食性に優れ、孔食の発生し難い内面螺旋溝付多重捻り管4を提供できる。
引抜きダイス7のダイス孔を通過する場合に引抜きと捻りを精密に加えつつ加工することで5゜〜40゜程度の捻り角の内面螺旋溝付多重捻り管を製造できるが、素管1、8を構成するアルミニウム合金の組成によっては伸びが低く、破断する恐れが高い材料であることも考えられる。このような場合は、目的の大きな捻り角に1回の捻り引抜き加工で加工するのではなく、2回や3回に分けて徐々に加工することもできる。このように複数回の加工に分けることで破断のおそれを低くしながら、大きな捻り角の内面螺旋溝付多重捻り管4を加工することができる。
この場合、最初の捻り引抜き加工で10゜のリード角を付与したとして、2回目の捻り引抜き加工で更に10゜のリード角を付与するような捻り引抜き加工を施した場合、大径側の内面螺旋溝付管に形成される螺旋フィン(螺旋溝)のリード角を20゜、小径側の内面螺旋溝付管に形成される螺旋フィン(螺旋溝)のリード角を10゜とした内面螺旋溝付多重捻り管を製造することができる。
また、1本の小径の素管にある程度の捻り引抜き加工を施して内面螺旋溝付管に加工した後、直線溝を有する大径の素管と複合して2回目の捻り引抜き加工を行えば、小径側の内面螺旋溝付管に形成される螺旋フィン(螺旋溝)のリード角を20゜、大径側の内面螺旋溝付管に形成される螺旋フィン(螺旋溝)のリード角を10゜とした内面螺旋溝付多重捻り管を製造することができる。
また、引き抜き側キャプスタン9の下流側に更に整形用の引抜きダイスを設けて内面螺旋溝付多重捻り管4の真円度を高めるための仕上げ引抜きを行っても良い。
仕上げ引抜き用の引抜きダイスを設けるには、図3に示す支柱部材23と同等形状の支柱部材を支柱部材23の下流側に設け、その支柱部材上部に支持架台24と同等形状の支持架台を別途設けてその支持架台に仕上げ成形用の引抜きダイスを設けると良い。
引き抜き側キャプスタン9を通過した後の内面螺旋溝付多重捻り管を仕上げ成形用の引抜きダイスに通すことで最終的に得られる内面螺旋溝付多重捻り管の真円度を向上し、形状の整った内面螺旋溝付多重捻り管を提供できる。
先の実施形態においては素管1、8を複合して一体化し、捻り加工と引抜き加工を施して内面螺旋溝付多重捻り管4を得たが、素管を一体化する場合の適用本数は任意の数を選択できる。
例えば、径の異なる3本の素管を挿通して3重管を構成し、この3重管を製造装置Aにより捻りを付加しながら引抜き加工することで図8に示す3重管構造の内面螺旋溝付多重捻り管34を製造することができる。
図8に示す第2実施形態の内面螺旋溝付多重捻り管34は、図1に示す構造の内面螺旋溝付多重捻り管4の外側に更に径の大きな素管を1本複合して捻り加工と引抜き加工を施して製造された構造である。
なお、大径の内面螺旋溝付管35の外周面には犠牲陽極層14が形成されている。犠牲陽極層14は、先の実施形態と同等の層である。
なお、3重管構造の内面螺旋溝付多重捻り管34を製造する場合、図7に示す素管1、8の複合素管Fに対し素管1より小径の素管を複合してから製造装置Aを用いて捻り加工と引抜き加工を施しても良い。
内面螺旋溝付多重捻り管34において犠牲陽極層14の領域はZnが拡散されていない領域より卑となって優先的に腐食することにより内面螺旋溝付管35の孔食を防止する。このため、耐食性に優れた内面螺旋溝付多重捻り管34を提供できる。
例えば、最も径の小さな素管として直線溝を有する素管を用い、2番目に大きな素管としてリード角度10゜の内面螺旋溝付管を用い、1番大きな素管としてリード角20゜の内面螺旋溝付管を用い、製造装置Aを用いて10゜のリード角を付与する条件で捻り加工と引抜き加工を施す。
このように製造することにより、最も小さな内面螺旋溝付管のリード角を10゜、2番目に大きな内面螺旋溝付管のリード角を20゜、1番大きな内面螺旋溝付管のリード角を30゜とした3重管構造の耐食性に優れた内面螺旋溝付多重捻り管を得ることができる。
先の実施形態においては、素管1の内部に1本の素管8を挿通して引抜き加工と捻り加工を付加したが、素管1の内部に複数の素管8を挿通した複合素管を用いて製造装置Aにより内面螺旋溝付多重捻り管を製造することも可能である。
例えば、1本の素管1の内部にそれより小径の複数本(例えば3本)の素管を挿入して複合素管を作製し、この複合素管の全体に引抜き加工と捻り加工を施して内面螺旋溝付多重捻り管を製造することができる。
この実施形態の内面螺旋溝付多重捻り管40は、最外層に大径の内面螺旋溝付管41が設けられ、その内側に3本の撚線化された小径の内面螺旋溝付管42が設けられている。
大径の内面螺旋溝付管41の内面には長さ方向に所定のピッチで複数の螺旋溝41aと螺旋フィン41bが設けられている。3本の小径の内面螺旋溝付管42の内面にはそれぞれ長さ方向に所定のピッチで複数の螺旋溝42aと螺旋フィン42bが設けられ、小径の内面螺旋溝付管42はそれぞれ横断面略三角楕円形状に形成されている。
なお、外側の内面螺旋溝付管41の外周面には犠牲陽極層14が形成されている。犠牲陽極層14は、先の実施形態と同等の層である。
この実施形態の内面螺旋溝付多重捻り管40において、最外層の内面螺旋溝付管41の内面に形成されている螺旋溝42aの周期(撚線ピッチ)とその内側で撚線化されている3本の内面螺旋溝付管42の周期(撚線ピッチ)が略同一周期とされている。
これは、径の大きな1本の内面溝付素管の内部に径の小さな3本の内面溝付素管を挿入し、製造装置Aを用いて全体に引抜き加工と捻り加工を施して得られたためである。小径の内面螺旋溝付管42の内側には第1の流路R1が形成され、大径の内面螺旋溝付管41の内側であって小径の内面螺旋溝付管42の外側には第2の流路R2が形成されている。
本実施形態の内面螺旋溝付多重捻り管40における捻り角θは、製造装置Aを用いて巻き出し側キャプスタン5の回転速度に応じて例えば5゜〜80゜程度まで製造可能となる。
その場合に第1の流路R1を流れる冷媒又は熱媒は第2の流路R2を流れる冷媒または熱媒と効率良く熱交換できるので、伝熱管として熱交換性能の高い接続ができる。
また、内面螺旋溝付多重捻り管40において犠牲陽極層14の領域はZnが拡散されていない領域より卑となって優先的に腐食することにより内面螺旋溝付管41の孔食を防止する。このため、耐食性に優れた内面螺旋溝付多重捻り管40を提供できる。
先に説明したように内面に直線溝を有する素管と内面に螺旋溝を有する素管を組み合わせて製造装置Aに適用できるので、異なる内面螺旋溝を形成した3本の素管を大径素管に挿入し、製造装置Aを用いて引抜き加工と捻り加工を加えることで、撚線ピッチと異なる周期の螺旋溝を有する内面螺旋溝付管を3本備えた内面螺旋溝付多重捻り管を得ることができる。
伝熱管50は例えば直管部50Aで複数のフィン52の挿通孔52aを通過するように配置され、図11(A)に示す直管部50Aの開口端どうしを更に図示略のエルボ管で接合することで蛇行状の伝熱管を構成することができる。
フィン52は一例としてアルミニウムまたはアルミニウム合金板からなり、その一部にバーリング加工などを施して挿通孔52aが形成されており、挿通孔52aの開口内周縁部分にフランジ部52bが形成されている。
また、内面螺旋溝付多重捻り管4、34、40の外周面には犠牲陽極層14が形成されているため、熱交換器51が腐食環境に設置された場合、電位の卑な犠牲陽極層14が優先的に腐食される。この結果、腐食生成物が内面螺旋溝付多重捻り管4、34,40の表面に生成し、この腐食生成物は内面螺旋溝付多重捻り管4、34、40がフランジ部52bを通過する部分にも生成する。
この結果、内面螺旋溝付多重捻り管4、34、40がフランジ部52bを通過した部分の隙間を前記腐食生成物で埋めることができ、これによって熱交換器51の外部からフィン52の内側に前記隙間を介し侵入しようとする雨水などの侵入を防止できる。
並列されたフィン52の間に雨水などが浸入して水滴を構成し、フィン間の隙間を水滴が閉塞すると、フィン52に送風した場合の送風抵抗が増大し、熱交換器51の熱交換効率が低下する。このため、内面螺旋溝付多重捻り管4、34、40の外周面に形成した犠牲陽極層14は熱交換器51の耐食性を高めるとともに、熱交換器51の効率低下も抑制する。
図11に、上述の条件で製造した試料の断面図(図11(A)参照)と部分拡大図(図11(B)参照)を示す。
得られた内面螺旋溝付多重捻り管は、外径8.45mm肉厚0.55mm、フィン高さ0.2mm、溝数50個の内側に、外径6.95mm、肉厚0.40mm、フィン高さ0.2mm、溝数55個の内面螺旋溝付管を一体化した構造であり、外周面にZn溶射層を有する内面螺旋溝付多重捻り管であった。
これら実施例1〜12に示すように外径3.6〜12mmのように極めて細径であって座屈し易いアルミニウム合金製の内面螺旋溝付管を備えた内面螺旋溝付多重捻り管を図3〜図5に示す構成の製造装置Aによって製造することができた。
Claims (12)
- 内面に長さ方向に沿う複数の螺旋溝が周方向に間隔をおいて形成され、隣接する前記螺旋溝間に螺旋フィンが形成された金属製の複数の径の異なる内面螺旋溝付管を備え、大径の内面螺旋溝付管の内側に小径の内面螺旋溝付管が挿入されて一体化され、前記大径の内面螺旋溝付管の外周に犠牲陽極層が形成されたことを特徴とする内面螺旋溝付多重捻り管。
- 前記大径の内面螺旋溝付管内面の前記螺旋フィンがその内側の内面螺旋溝付管の外周面に食い込まされ、前記小径の内面螺旋溝付管の内側に第1の流路が形成され、前記小径の内面螺旋溝付管と前記大径の内面螺旋溝付管との間に第2の流路が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の内面螺旋溝付多重捻り管。
- 前記個々の内面螺旋溝付管の螺旋溝が一定の捻り周期を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内面螺旋溝付多重捻り管。
- 前記犠牲陽極層がZnを0.2質量%以上含み、厚さ80μm以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付多重捻り管。
- 前記個々の内面螺旋溝付管の内面に形成されている螺旋溝の捻り角が個々の内面螺旋溝付管の中心軸線に対し5〜80゜に設定されたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付多重捻り管。
- 内面に長さ方向に沿う複数の溝が周方向に間隔をおいて形成された径の異なる素管を複数本用意し、大径の素管の中に小径の素管を挿入して複合素管を形成し、この複合素管を巻き出し側キャプスタンにその導入側接線方向から巻き付けつつ前記複合素管を導出側接線に沿って巻き出し、前記巻き出し側キャプスタンを前記導出側接線を軸として軸回りに回転させることにより、前記巻き出し側キャプスタンから前記複合素管を前記軸心回りに回転させながら前記接線の延長方向に巻き出す素管巻き出し工程と、巻き出された前記複合素管を引抜きダイスに通して縮径しながら捻りを付与して内面螺旋溝付多重捻り管とする捻り引抜き工程と、前記内面螺旋溝付多重捻り管の表面に犠牲陽極層を設ける工程を具備することを特徴とする内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法。
- 長さ方向に沿う溝として内面に直線溝を有する素管を用いることを特徴とする請求項6に記載の内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法。
- 長さ方向に沿う溝として内面螺旋溝を有する素管を用いることを特徴とする請求項6に記載の内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法。
- 前記引抜きダイスによる縮径率を5〜40%とすることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法。
- Znを0.2質量%以上含み、厚さ80μm以上の犠牲陽極層を形成することを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法。
- 前記巻出し側キャプスタンに前記複合素管を巻き始める位置と前記巻出し側キャプスタンから前記引抜きダイス側に前記複合素管を送り始める位置を前記巻出し側キャプスタンの回転軸と平行な方向にずらすことにより、前記巻出し側キャプスタンと前記引抜きダイスとの間を前記複合素管の捻り加工領域とすることを特徴とする請求項6〜請求項10のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法。
- 前記引抜きダイスに前記複合素管を通して前記複合素管を捻りつつ縮径する際、前記複合素管に前方張力と後方張力を付加することを特徴とする請求項6〜請求項11のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付多重捻り管の製造方法。
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