JP2018199878A - 高耐久合皮シート、及び、高耐久合皮シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この人工皮革は、非弾性のマトリックス繊維と、弾性ポリマーがその表面に配されたバインダー繊維とから構成され、且つ該バインダー繊維は該マトリックス繊維中に分散しながらマトリックス繊維に融着している繊維集合体が、以下のa〜eの要件を同時に満足する非含浸型基材を、人工皮革用基布として用いている。
a.基材全重量に占める弾性ポリマーの割合は2. 5〜25%の範囲にあること;
b.密度が0. 15〜0. 45gr/cm3 の範囲にあること;
c.バインダー繊維を構成する弾性ポリマーが、
c−1.単独のマトリックス繊維に融着してなる単独結合単位、および
c−2.近接状態にある複数本のマトリックス繊維に集合的に融着してなる複合結合単位が散在すること;
d.該単独結合単位および複合結合単位にあっては、
d−1.一部のマトリックス繊維が、その全周長に亘って弾性ポリマーにより被覆されながら融着されている完全融着部、および
d−2.他の一部のマトリックス繊維が、その全周長に亘って弾性ポリマーにより被覆されながらも、両者の界面の一部は融着状態にあり、その余の界面部は非接触状態にあるような部分融着部が形成され、その際、
d−3.該完全融着部と部分融着部との個数比率が、35:65〜75:25の範囲にあること;そして
e.バインダー繊維同士の交差点においては、弾性ポリマーにより融着された弾性結合点が形成されていること。
更に、特許文献1の人工皮革は、繊維集合体を必須としているものの、この繊維集合体は、上述したa〜eの要件を全て同時に満足しなくてはならず、構造が複雑となる。
その結果、頻繁に表面1aが擦れる部分(例えば、自動車シートを覆うシートカバーにおけるサイド部分(サイド材)など)にも、合皮シート1を使用できる。
尚、合皮シート1は「高耐久合皮シート」であるとも言える。
その結果、頻繁に表面1aが擦れる部分(例えば、自動車シートを覆うシートカバーにおけるサイド部分(サイド材)など)にも、製造した合皮シート1を使用できる。
尚、合皮シートの製造方法は「高耐久合皮シートの製造方法」であるとも言える。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1〜6には、本発明の第1実施形態に係る合皮シート1が示されており、この合皮シート1は、基材層2の一方面(表面)2a側にパイル層3を有したシート状物である。
尚、合皮シート1の「表面1a」とは、自動車等のシート(椅子)を覆うシートカバーなどの繊維製品に使用する時に露出する側の面であるとも言える。
合皮シート1の厚さ1wは、何れの値でも良いが、例えば、0.05mm以上10.00mm以下、好ましくは0.10mm以上5.00mm以下、更に好ましくは0.50mm以上3.00mm以下(1.20mmなど)であっても良い。
合皮シート1の目付も、特に限定はないが、例えば、200g/m2 以上900g/m2 以下、好ましくは300g/m2 以上800g/m2 以下、更に好ましくは400g/m2 以上700g/m2 以下であっても良い。
合皮シート1は、その色彩についても、黒色系、茶色系、青色系、白色系、赤色系、橙色系、黄色系、緑色系、紫色系など何れの色調でも良く、彩度や明度についても何れの値でも構わない。合皮シート1の模様についても、無地や、花や草木などの植物の柄、動物の柄、幾何学模様、表面凹凸等による模様など何れでも良い。
図1〜6に示したように、基材層2は、その一方面(表面)2a側にはパイル層3が有り、その他方面(裏面)2b側には、被覆層4を有している。
尚、基材層2の「表面2a」は、合皮シート1を自動車等のシート(椅子)を覆うシートカバーなどの繊維製品に使用する時に露出する表面1aに近い面であるとも言え、逆に、基材層2の「裏面2b」は、合皮シート1をシートカバーなどの繊維製品に使用する時に露出しない裏面1bに近い面であるとも言える。
このような基材層2を構成する経編地2’について、以下に述べる。
図1〜6に示したように、経編地2’は、繊維10を経糸10’として編成した編地であり、その一方面側にニードルループ面2N’を有し、他方面側にシンカーループ面2S’を有している。
このような経編地2’が編成できるのであれば、何れの経編機を用いても良く、経編機は、複数の筬(例えば、2枚〜6枚や、7枚以上など)を有しているが、編成される経編地2’のニードルループ面2N’の最も近くに位置する筬を第1筬とし、以下、この第1筬よりシンカーループ面2S’側に位置する第1筬以外の筬を、ニードルループ面2N’側に近い順に第2筬、第3筬、第4筬、第5筬・・・とする。
尚、経編地2’は、経編機における第1筬、第2筬、第3筬、第4筬、第5筬・・・のうち、第1筬をとばして第2、3、4筬の3枚の筬で編成されたり、第2筬をとばして第1、3、4、5筬の4枚の筬で編成されるなど、何れかの筬をとばして編成されても良い。
又、第1筬に通す経糸10’を第1編糸(バック編糸とも言う)11、第2筬に通す経糸10’を第2編糸(ミドル編糸とも言う)12、フロント筬に通す経糸10’を第3編糸(フロント編糸とも言う)13とする。
更に、各編糸11、12、13は、ニードルループ21、22、23とシンカーループ31、32、33を有している。
詳解すれば、第1筬に通された第1編糸11は、1針振り又は2針以上振りのシンカーループ31を形成して編み込まれ、第2筬に通された第2編糸12が1針振り又は2針振り以上のシンカーループ32を形成して編み込まれ、第3筬に通された第3編糸13が1針振り又は2針振り以上のシンカーループ33を形成して編み込まれる。
第3編糸13のシンカーループ33は、第1編糸11のシンカーループ31の振り数と同じ又はより多かったり、第2編糸12のシンカーループ32の振り数と同じ又はより多くとも良い。
その他、経編地2’の編組織の例としては、第1編糸11を編組織パターン1−0/1−2(1針振り)で編成し、第2編糸12を編組織パターン1−0/3−4(3針振り)で編成し、第3編糸13を編組織パターン1−0/3−4(3針振り)で編成したものであったり、各編糸11、12、13を2針振りや4針振り以上を交えたものなど、何れの編組織であっても良い。
尚、経編地2’のウェール方向Wにおける糸の密度(ウェール密度)や、コース方向Cにおける糸の密度(コース密度)も、何れの値でも良いが、例えば、ウェール密度であれば、10ウェール/インチ(=ウェール/25.4mm)以上80ウェール/インチ以下、好ましくは20ウェール/インチ以上70ウェール/インチ以下、更に好ましくは30ウェール/インチ以上60ウェール/インチ以下であっても良い。
又、コース密度は、例えば、50コース/インチ(=コース/25.4mm)以上120コース/インチ以下、好ましくは60コース/インチ以上110コース/インチ以下、更に好ましくは70コース/インチ以上100コース/インチ以下であっても良い。
又、少なくとも第3編糸13(特に、ニードルループ23)が起毛されることで、合皮シート1におけるパイル層3を構成する。
同様に、第2編糸12も、その一部(ニードルループ22など)が起毛されることでパイル層3を構成しても良い。
このような第1編糸11は、基材層2の強度保持に関係するとも言える。
このような第2編糸12は、上述したように、基材層2の弾性を有した部分を構成するとも言える。
又、第3編糸13は、上述したように、パイル層3(つまり、合皮シート1の表面1a)を構成することから、合皮シート1の風合いに関係するとも言える。
各編糸11、12、13(特に、第3編糸13)の繊維10がマルチフィラメントである場合には、その繊維10として、断面視で溶解除去し得る成分と溶解除去し得ない成分が混在する複合繊維が用いられても良い。
これらの複合繊維は、経編地2’の編成後に、例えば、減量処理を施してその溶解成分を溶解除去し、その複合繊維を複数本の各繊維に分割しても良い。
以下、各編糸11、12、13(経糸10’)は、マルチフィラメントとして述べる。
又、第1編糸11がマルチフィラメントの場合、その各フィラメント(繊維10)の単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.1dtex以上50.0dtex以下、好ましくは0.5dtex以上30.0dtex以下、更に好ましくは1.0dtex以上20.0dtex以下(6.9dtex(6.25d(デニール))など)であっても良い。
更に、1本の第1編糸11におけるフィラメントの本数も、特に限定はないが、例えば、2本以上100本以下、好ましくは3本以上70本以下、更に好ましくは5本以上50本以下(12本など)であっても良い。
そして、第1編糸11は、当該第1編糸11を構成する繊維10の熱収縮率も、特に限定はないが、例えば、10.0%以上50.0%以下、好ましくは12.0%以上40.0%以下、更に好ましくは15.0%以上30.0%以下(20.2%など)で、所謂、高熱収縮繊維で構成されていても良い。
又、第2編糸12がマルチフィラメントの場合、その各フィラメント(繊維10)の単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.05dtex以上40.00dtex以下、好ましくは0.10dtex以上20.00dtex以下、更に好ましくは0.50dtex以上10.0dtex以下(2.8dtex(2.5d(デニール))など)であっても良い(言わば、極細繊維であっても良い)。
更に、1本の第2編糸12におけるフィラメントの本数も、特に限定はないが、例えば、2本以上200本以下、好ましくは3本以上140本以下、更に好ましくは5本以上100以下(12本や24本など)であっても良い。
そして、第2編糸12も、当該第2編糸12を構成する繊維10の熱収縮率は、特に限定はないが、例えば、10.0%以上50.0%以下、好ましくは12.0%以上40.0%以下、更に好ましくは15.0%以上30.0%以下(19.5%や20.0%など)で、所謂、高熱収縮繊維で構成されていても良い。
又、第3編糸13がマルチフィラメントの場合、その各フィラメント(繊維10)の単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.01dtex以上10.00dtex以下、好ましくは0.05dtex以上5.00dtex以下、更に好ましくは0.10dtex以上1.00dtex以下(0.1dtex(0.1d(デニール))や、0.2dtex(0.2d(デニール))、0.3dtex(0.3d(デニール))など)であっても良い。
更に、1本の第3編糸13におけるフィラメントの本数も、特に限定はないが、例えば、2本以上2000本以下、好ましくは10本以上1000本以下、更に好ましくは50本以上700以下(420本など)であっても良い。
そして、第3編糸13も、当該第3編糸13を構成する繊維10の熱収縮率は、特に限定はないが、例えば、1.0%以上10.0%未満、好ましくは2.0%以上9.0%以下、更に好ましくは3.0%以上8.0%以下(5.6%など)で、上述した第1、2編糸11、12の高熱収縮繊維より熱収縮率が低い繊維(所謂、低熱収縮繊維)で構成されていても良い。
尚、第3編糸13は、低熱収縮繊維だけでなく、この低熱収縮繊維より熱収縮率が高い高熱収縮繊維も含んでいても良く、この第3編糸13における高熱収縮繊維の熱収縮率も、特に限定はないが、例えば、10.0%以上50.0%以下、好ましくは12.0%以上40.0%以下、更に好ましくは15.0%以上30.0%以下(19.5%など)であっても良い。
又、第3編糸13が低熱収縮繊維と高熱収縮繊維を含んでいる場合、低熱収縮繊維は、上述した総繊度で、マルチフィラメントであれば、上述した単繊維繊度・本数であっても良い。
一方、高熱収縮繊維は、その総繊度は、例えば、1dtex以上500dtex以下、好ましくは5dtex以上200dtex以下、更に好ましくは10dtex以上100dtex以下(34dtexなど)であっても良く、当該高熱収縮繊維がマルチフィラメントの場合、その各フィラメントの単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.10dtex以上50.00dtex以下、好ましくは1.00dtex以上20.00dtex以下、更に好ましくは2.00dtex以上10.0dtex以下(2.9dtexなど)であったり、フィラメントの本数も、特に限定はないが、例えば、2本以上200本以下、好ましくは3本以上140本以下、更に好ましくは5本以上100以下(12本など)であっても構わない。
更に、第3編糸13が低熱収縮繊維と高熱収縮繊維を含んでいる場合、第3編糸13における高熱収縮繊維が占める質量比率も、特に限定はないが、例えば、その質量比率は、20質量%以上60質量%以下、好ましくは20質量%以上50質量%以下、更に好ましくは20質量%以上40質量%以下であっても良い。
第2、3編糸12、13が共にマルチフィラメントである場合には、第3編糸13の単繊維繊度(特に、低熱収縮繊維の単繊維繊度)は、第2編糸12の単繊維繊度より細かったり、第3編糸13の熱収縮率(特に、低熱収縮繊維の熱収縮率)は、第2編糸12の熱収縮率より低く、好ましくは、第2編糸12の熱収縮率より5%以上低くても構わない。
第1、3編糸11、13が共にマルチフィラメントである場合には、第3編糸13の単繊維繊度(特に、低熱収縮繊維の単繊維繊度)は、第1編糸11の単繊維繊度より細かったり、第3編糸13の熱収縮率(特に、低熱収縮繊維の熱収縮率)は、第1編糸11の熱収縮率より低く、好ましくは、第1編糸11の熱収縮率より5%以上低くても構わない。
更に、第3編糸13がマルチフィラメントである場合には、第3編糸13の高熱収縮繊維の単繊維繊度が2dtex以上であり、第3編糸13の低熱収縮繊維の単繊維繊度が1dtex以下であっても構わない。
特に図1、2に示したように、経編地2’の「ニードルループ面2N’」とは、各編糸11、12、13のニードルループ21、22、23が露出している面であり、後述する繊維毛羽3’が立毛(立設)しパイル層3が形成され、基材層2(合皮シート1)としては、表面2a(1a)となるとも言える。
又、基材層2の表面2aとは、断面視において、ニードルループ面2N’に凹凸があったとしても、後述の起毛により立設した繊維10(繊維毛羽3’)の根元を結ぶ面であるとも言える(図4参照)。
又、基材層2の裏面2bは、断面視において、シンカーループ面2S’に凹凸があったとしても、後述する被覆層4との境界面であるとも言える(図4参照)。
次に、経編地2’の起毛について述べる。
図3〜6に示したように、上述した経編地2’は、そのニードルループ面2N’及びシンカーループ面2S’が起毛されている。
つまり、ニードルループ面2N’における起毛は、主にパイル層3を構成する第3編糸13より、主に基材層2を構成する第2編糸12の毛羽立ちが抑えられ、この第2編糸12より、基材層2を構成する第1編糸11の毛羽立ちが更に抑えられ、ニードルループ面2N’には、少なくとも第3編糸13のニードルループ23の起毛毛羽によるパイル層3が形成されている。
具体的には、<1>第1編糸11を1針振りとし、第3編糸13を2針振り以上の多針振りとし、編み込まれる編糸11、12、13のうちシンカーループ面2N’側に位置する第3編糸13の糸足を長くした構成、<2>第1、2編糸11、12の両方を、第3編糸13より熱収縮させるか、又は、第1編糸11を第2、3編糸12、13の両方より熱収縮させて、第3編糸13の糸足を相対的に長くした構成、<3>第3編糸13の一部の繊維(上述した高熱収縮繊維)を収縮させて、他の一部の繊維(上述した低熱収縮繊維)を第3編糸13の表面に浮き出させた構成、<4>上述の<3>の構成において、浮き出る繊維(低熱収縮繊維)を、単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とした構成、<5>上述の<3>の構成において、第1、2編糸11、12のうち少なくとも第1編糸11を、第3編糸13より単繊維繊度は大きく、第3編糸13より総繊度は小さくして、第3編糸13を起毛し易く(例えば、後述する起毛工程S2等における針布の起毛針に引っ掛かり易く)した構成、<6>第3編糸13のシンカーループ33に損傷を与えて弛緩状態にしてから、経編地2’のニードルループ面2N’から第3編糸13の繊維を掻き出し易くした(例えば、後述する起毛工程S2等において、先に経編地2’のシンカーループ面2S’を起毛してから、次にニードルループ面2N’を起毛する)構成であって、経編地2’は、<1>〜<6>の構成のうち、少なくとも1つを有していても良い。
以下は、起毛後のシンカーループ面2S’の状態について主に述べる。
シンカーループ面2S’における起毛具合は、第3編糸13における少なくとも一部のシンカーループ33が切断される程度であっても良い。
この第3編糸13のシンカーループ33の切断具合によって、経編地2’のシンカーループ面2S’における起毛毛羽の立ち具合や起毛量が加減でき、出来上がる経編地2’(合皮シート1)の厚みも調整可能とも言える。
一方、第3編糸13において、低熱収縮繊維は細いため立設(立毛)し難く、立設した高熱収縮繊維の根元周辺に横たわるウェブ状となるが、このウェブによっても、合皮シート1のクッション性が高まると言える。このクッション性を有したウェブも図4中における被覆層4の直上の空隙と、この空隙を囲む繊維10(第2編糸12など)で構成されるとも言える。
図1〜4に示したように、パイル層3は、上述した基材層2の一方面(表面2a)側の層であって、基材層2である経編地2’のニードルループ面2N’にて起毛された繊維毛羽(起毛毛羽)3’で形成される。
尚、パイル層3の「表面3a」は、合皮シート1を自動車等のシート(椅子)を覆うシートカバーなどの繊維製品に使用する時に露出する表面1aそのものであるとも言え、逆に、パイル層3の「裏面3b」は、合皮シート1をシートカバーなどの繊維製品に使用する時に露出しない裏面1bに近い面であるとも言える。
ここで、「パイル層3の厚さ3w」とは、繊維毛羽3’が基材層2の表面2a(合皮シート1の表面)1aに略沿っているものが存在する部分(略層状となっている部分)において、基材層2の表面2aから最も遠い位置までの高さ(距離)を意味する。
尚、繊維毛羽3’のうち、基材層2の表面2a(合皮シート1の表面)1aに対して略直立しているものの高さ(言わば、毛羽長)は、パイル層3の厚さ3wではないものとする。
尚、図6中の所定方向は、1つの例示であって、また別の方向の略沿う繊維毛羽3’が多ければ、その方向を所定方向としても良い。
又、パイル層3における糸の密度(パイル糸密度とも言える)は、特に限定はないが、例えば、上述したウェール密度とコース密度を掛けた値としても良く、そのパイル糸密度は、500本/インチ2 (=本/(25.4mm)2 )以上9600本/インチ2 、好ましくは1200本/インチ2 以上7700本/インチ2 、更に好ましくは2100本/インチ2 以上6000本/インチ2 でも構わない。
尚、パイル糸密度は、上述のようになるが、第3編糸13がマルチフィラメントである場合などは、実際の繊維毛羽3’の密度は、パイル糸密度より当然大きくなると言える。
図1〜4に示したように、被覆層4は、上述した経編地2’のシンカーループ面2S’を、被覆樹脂4’で覆って形成される。
尚、被覆層4の「表面4a」は、合皮シート1を自動車等のシート(椅子)を覆うシートカバーなどの繊維製品に使用する時に露出する表面1aに近い面であるとも言え、逆に、被覆層4の「裏面4b」は、合皮シート1をシートカバーなどの繊維製品に使用する時に露出しない裏面1bそのものであるとも言える。
又、この被覆樹脂4’は、経編地2’のシンカーループ面2S’を覆う(シンカーループ面2S’に付着する)のであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、後述する被覆工程S6等で、被覆樹脂4’を、エマルジョン状態で経編地2’のシンカーループ面2S’に塗布(コーティング)しても良い。
このような被覆樹脂4’は、経編地2’のシンカーループ面2S’において起毛された繊維10(言わば、起毛毛羽)の先に付着して、被覆層4を形成しているとも言える。
つまり、被覆樹脂4’は、経編地2’のシンカーループ面2S’においては、第1編糸11には接触することなく、シンカーループ面2S’の最表面側に位置し且つ起毛されて立毛した第3編糸13のシンカーループ33の起毛毛羽を覆って、被覆層4を形成しているとも言える。
以下、基材樹脂5について述べる。
図1〜6に示したように、基材樹脂5は、上述した基材層2である経編地2’の繊維10表面に付着している樹脂である。
この基材樹脂5は、上述した被覆層4の被覆樹脂4’とは別の位置(つまり、経編地2’のシンカーループ面2S’を覆う位置ではなく、基材層2(経編地2’)内部や表面2a)における繊維10表面に付着していると言える。
基材樹脂5は、上述した被覆層4の被覆樹脂4’とは異なる素材であっても良い。
経編地2’の繊維10表面に付着している基材樹脂5の大きさも、特に限定はないが、例えば、付着した基材樹脂5の長手方向に沿った長さで、30μm以上500μm以下、好ましくは50μm以上300μm以下、更に好ましくは70μm以上200μm以下(150μmなど)であっても良い。
その他、基材樹脂5は、基材層2(経編地2’)において、被覆樹脂4’が付着している位置以外の全体に亘って付着していても良い。
図9に示したように、合皮シートの製造方法は、ここまで述べてきた基材層2の一方面(表面)2a側にパイル層3を有した合皮シート1を製造する方法である。
合皮シートの製造方法は、経編地2’を編成する編成工程S1と、経編地2’を起毛してパイル層3を形成する起毛工程S2と、経編地2’の繊維10表面に基材樹脂5を付着させる付着工程S3と、経編地2’を被覆樹脂4’で覆って被覆層4を形成する被覆工程S6を少なくとも有している。
図9に示したように、編成工程S1は、繊維10で基材層2である経編地2’を編成する工程である。
編成工程S1で用いられる経編機は、上述した経編地2’が編成できるのであれば、何れの経編機を用いても良いが、例えば、トリコット編機やラッシェル編機の他、ミラニーズ編機、クロシェ編機などであっても構わない。
又、編成工程S1での経編機の速度も、何れの値でも良く、例えば、1500rpm回転以上などであっても構わない。
図9に示したように、起毛工程S2は、上述した編成工程S1で編成した経編地2’のニードルループ面2N’及びシンカーループ面2S’を起毛して、経編地2’のニードルループ面2N’にて起毛された繊維毛羽3’でパイル層3を形成する工程である。
起毛工程S2では、起毛針を有した針布(ロール状であれば、起毛ロール)による針布起毛加工を用いても良く、針布起毛加工の場合は、針布の密度・長さ・角度・尖端形状や、起毛時の針布の回転数・経編地2’との接圧・接触回数などを変えて、起毛状態を調整できる。
又、起毛工程S2においては、起毛による立毛した繊維毛羽を切断しても良く、起毛後に毛足を整えるための揃毛加工も施してもよい。
逆に、起毛工程S2では、先にニードルループ面2N’を起毛してから、シンカーループ面2S’を起毛しても良い。
図9に示したように、付着工程S3は、上述した起毛工程S2で起毛した経編地2’の繊維10表面に基材樹脂5を付着(含浸)させる工程である。
付着工程S3では、経編地2’の繊維10表面に基材樹脂5を付着できるのであれば、その付着の具体的な構成は、何れであっても良いが、例えば、ディッピング(浸漬)加工を用いても良く、ディッピング加工の場合、上述した基材樹脂5を、所定の溶剤(溶媒とも言い、水や有機溶剤など)を用いて所定含有率と(例えば、含有率25%の基材樹脂5を溶剤で希釈して含有率5%とするなど)した溶液に、起毛した経編地2’をディッピングして、経編地2’の繊維10表面に基材樹脂5を付着(固着)させる。尚、基材樹脂5を付着させた後には、乾燥させても構わない。
この場合、経編地2’をディッピングする溶液における基材樹脂5の含有率や、ニップ加工時のニップ圧力などを変えて、基材樹脂5の付着量を調整できる。
尚、この付着工程S3の後、すぐに後述する被覆工程S6に移っても良い。
図9に示したように、再起毛工程S4は、上述した付着工程S3で基材樹脂5が付着した経編地2’のニードルループ面2N’を起毛(再び起毛)する工程である。
再起毛工程S4は、基材樹脂5が付着した経編地2’のニードルループ面2N’の余分な繊維毛羽3’を削ぎ落とし、合皮シート1の表面(最表面)1aを削る工程であるとも言える。
再起毛工程S4を、起毛工程S2で上述したエメリー加工(特に、WETエメリー加工)を例に詳解すれば、WETエメリー機を、WET状態(湿潤状態)で、所定の速度(例えば、5m/分など)にて、所定のエメリー部材(例えば、ダイヤモンドのエメリーロール4本など)で経編地2’のニードルループ面2N’を削っても良く、WETかDRYか、エメリー部材、加工速度などを変えて、再起毛状態も調整できる。尚、経編地2’のニードルループ面2N’を再起毛させた後には、乾燥させても構わない。
図9に示したように、揉工程S5は、上述した再起毛工程S4でニードルループ面2N’を起毛された経編地2’を揉む工程である。
揉工程S5は、経編地2’をリラックスさせ、合皮シート1のパイル層3(繊維毛羽3’)にソフト感を出させる工程であるとも言える。
その他、揉工程S5では、水などの液体を用いたサーキュラー染色機を用いたり、経編地2’をクランプに把持し、一方のクランプをシートに揉み変形が加わるように駆動させる装置や、2つの組み合わさった突起を有するステーの間に経編地2’を通して、当該経編地2’に突起を押し込みながら揉みほぐしを行う装置などを用いても良い。尚、サーキュラー染色機を用いた後には、乾燥させても構わない。
図9に示したように、被覆工程S6は、付着工程S3によって基材樹脂5が付着した経編地2’のシンカーループ面2S’を被覆樹脂4’で覆って被覆層4を形成する工程である。
被覆工程S6では、経編地2’のシンカーループ面2S’を被覆樹脂4’で覆って被覆層4を形成するのであれば、何れの構成であっても良いが、上述したように、例えば、被覆樹脂4’を、エマルジョン状態で経編地2’のシンカーループ面2S’に塗布(コーティング)しても良い。
又、被覆樹脂4’をエマルジョン状態で塗布する際、その溶剤(溶媒)も、特に限定はないが、水や有機溶剤などを用いても良い。
ここからは、まず本発明に係る合皮シート1の実施例1〜3と、比較例について言及する。
これらの実施例と比較例を用いて、後述する試験を行う。
図1〜6に示したように、合皮シート1の実施例1は、編成工程S1において、3枚の筬を具備する28G(ゲージ)のトリコット経編機を、1500rpm以上の速度で用いて編成する。
この経編機において、第1筬に単繊維繊度が6.9dtex(6.25d(デニール))のポリエステル繊維マルチフィラメントを第1編糸11として通し第1筬を編組織パターン/1−0/1−2/………の順に操作し、第2筬に単繊維繊度が2.8dtex(2.5d(デニール))のポリエステル繊維マルチフィラメントを第2編糸12として通し第2筬を編組織パターン/1−0/3−4/………の順に操作し、第3筬には単繊維繊度が0.2dtex(0.2d(デニール))のポリエステル繊維マルチフィラメントを第3編糸13として通し第3筬を編組織パターン/1−0/3−4/………の順に操作して編成した経編地2’を編成する。この編成した経編地2’に染色処理を施すが、経編地2’の繊維10(各編糸11、12、13)が熱収縮繊維であれば、この処理で熱収縮を顕現する。
次に、起毛工程S2において、起毛ロールで経編地2’のシンカーループ面2S’に起毛処理を施した後、ニードルループ面2N’を起毛ロールで起毛処理を施し、このニードルループ面2N’の起毛でパイル層3を形成し、そして、中間セット工程を行う。
更に、付着工程S3において、上述の中間セット工程を経た経編地2’を、基材樹脂5であるポリエステル樹脂(含有率25%)を含有率5%まで希釈した溶液にディッピングして、基材樹脂5を経編地2’に付着させる。
続いて、再起毛工程S4において、基材樹脂5が付着した経編地2’のニードルループ面2N’を、WETエメリー機をWET状態で速度5m/分にして4本のダイヤモンドエメリーロールで削り、再び乾燥させる。
その次に、揉工程S5において、再び乾燥させた経編地2’を、エアーフロー染色機にて揉む。
そして、被覆工程S6において、揉んだ経編地2’のシンカーループ面2S’に、被覆樹脂4’であるアクリル樹脂を塗布して被覆層4を形成した後に、乾燥させて合皮シート1の実施例1を得た。
尚、実施例1のパイル層3の厚さ3wは、0.19mmである。
実施例2の合皮シート1は、上述した実施例1において、付着工程S3を経た経編地2’に対して、再起毛工程S4及び揉工程S5をすることなく、被覆工程S6において、そのシンカーループ面2S’に被覆樹脂4’であるアクリル樹脂を塗布して被覆層4を形成した後に、乾燥させて実施例2の合皮シート1とした。
実施例3の合皮シート1は、上述した実施例1において、再起毛工程S4を経た経編地2’に対して、揉工程S5をすることなく、被覆工程S6において、そのシンカーループ面2S’に被覆樹脂4’であるアクリル樹脂を塗布して被覆層4を形成した後に、乾燥させて実施例3の合皮シート1とした。
一方、図7〜10に示したように、比較例のシートは、上述した実施例1において、起毛工程S2を経た(中間セット工程を経た)経編地2’に対して、付着工程S3、再起毛工程S4及び揉工程S5をすることなく、被覆工程S6において、そのシンカーループ面2S’に被覆樹脂4’であるアクリル樹脂を塗布して被覆層4を形成した後に、乾燥させて比較例のシートとした。
尚、比較例のパイル層の厚さは、0.24mmである。
試験では、上述した実施例1〜3と比較例に対して、JASO M403シート表皮用布材料の試験方法(B法)に準じる平面摩耗試験を行うと共に、実施例と比較例の表面における風合いの官能試験を行い、それぞれの結果を、以下の表1に示す。
尚、平面摩耗試験において、等級が3.0級以上のとき合格(表1中では「○」)とし、3.0級未満のとき不合格(表1中では「×」)とすると共に、例えば「3.5級」とは「4級」と「3級」の間の等級であることを意味する。
又、風合い官能試験におけるポイントは、<1>表面の柔らかさ、<2>ヌメリ感、<3>フィンガーマークの有無などであり、表1中では、<1>表面が柔らかく、<2>ヌメリ感があり、<3>フィンガーマークがほぼ無い場合には「◎」とし、<1>表面が柔らかく、<2>ヌメリ感があるものの、<3>フィンガーマークが有る場合には「○」とし、<1>表面が若干硬く、<2>ヌメリ感が少なく、<3>フィンガーマークが無い場合には「△」とし、<1>表面が硬く、<2>ヌメリ感がなく、<3>フィンガーマークが無い場合には「×」とする。
表1で示されたように、基材層2の繊維10表面に基材樹脂5が付着した(少なくとも付着工程S3を有した)実施例1〜3は、平面摩耗試験による評価が「3.5級」で合格(「○」)であるが、基材層2の繊維10表面に基材樹脂5が付着していない(付着工程S3、再起毛工程S4及び揉工程S5を有さない)比較例は、平面摩耗試験による評価が「2.0級」で不合格(「×」)となっている。
つまり、合皮シート1として被覆層4を有しつつ、この被覆層4の被覆樹脂とは別の位置で且つ基材層2の繊維10表面に、基材樹脂5が付着することによって、基材層2の基材樹脂5で繊維10同士が相対移動し難く(ずれ難く)、当該基材層2でパイル層3をより強固に保持できるため、合皮シート1の表面1aが人の手足などで擦れても、この擦れによってパイル層3(繊維毛羽3’)が動くことを抑制でき、摩耗などに対する耐久性が上がる(「耐久性の向上」が図れる)と言える。
表1で示されたように、再起毛工程S4と揉工程S5を有さない実施例2や、揉工程S5のみを有さない実施例3の評価は「△」であるが、付着工程S3の後に再起毛工程S4も揉工程S5も有する実施例1の評価は「◎」となっていることから、耐久性を確保しつつ、合皮シート1の表面1aの柔らかさや、ヌメリ感が確保でき、外観(風合い)が更に向上すると言える。
更に、実施例1の評価は、付着工程S3、再起毛工程S4及び揉工程S5を何れも有さない比較例の評価「○」よりも上がっている。
これは、図3、4、7、8に示したように、比較例のパイル層の厚さは「0.24mm」であるのに対して、再起毛工程S4や揉工程S5を経て繊維毛羽(毛足)3’が短く削られた実施例1のパイル層3の厚さ3wは「0.19mm」であり、ほんの「0.05mm(50μm)の差」で、人が手などで触った跡(フィンガーマーク)が低減できると言える。
ここで、このようにフィンガーマーク等が低減できるか否かの境界は、パイル層3の厚さ3wが、「0.24mm」から「0.19mm」に変わる間に存在するとも言え、その境界値は、0.19mmに近い値(厳しくとった値)として「0.20mm以下」であれば、フィンガーマーク等の低減が図れるとも言える。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。合皮シート1、合皮シートの製造方法等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
合皮シート1は、上述した各層2〜4の他に、当該合皮シート1の裏面1b(被覆層4の裏面4b)側に、裏打層などの別の層状物などを有していても良い。
基材樹脂5は、上述した被覆層4の被覆樹脂4’と同じ素材であっても良い。
合皮シート1は、上述した合皮シートの製造方法以外の方法(例えば、起毛工程S2の後、先に被覆工程S6をしてから、付着工程S3を行うなど)で製造されていても良い。
又、合皮シートの製造方法は、上述した工程S1〜S6以外に、編成工程S1と起毛工程S2の間に減量工程や染色工程(割繊工程、熱収縮工程とも言える)を有していたり、起毛工程S2と付着工程S3の間に中間セット工程を有していたり、被覆工程S6の後に仕上工程(乾燥工程、セット工程とも言える)を有していても良い。
本発明に係る合皮シートの製造方法も、当該製造方法にて製造された合皮シートを、自動車や鉄道車両、航空機、船舶等のシートを覆うシートカバーなどの繊維製品に用いたり、鉄道車両や自動車等の内装材など乗物内装用途の繊維製品として利用したり、その他、産業資材用途、インテリア用途、衣料用途、衣料資材用途などに利用しても良い。
2 基材層
2’ 経編地
2N’ ニードルループ面
2S’ シンカーループ面
3 パイル層
3’ 繊維毛羽
4 被覆層
4’ 被覆樹脂
5 基材樹脂
10 繊維
S1 編成工程
S2 起毛工程
S3 付着工程
S4 再起毛工程
S5 揉工程
S6 被覆工程
Claims (6)
- 基材層(2)の一方面側にパイル層(3)を有した合皮シートであって、
前記基材層(2)は、繊維を編成した経編地であり、この経編地のニードルループ面及びシンカーループ面が起毛され、
前記経編地のニードルループ面にて起毛された繊維毛羽で前記パイル層(3)が形成され、
前記経編地のシンカーループ面を被覆樹脂で覆って被覆層(4)が形成され、
この被覆層(4)の被覆樹脂とは別の位置で且つ前記基材層(2)の経編地の繊維表面に、基材樹脂(5)が付着していることを特徴とする合皮シート。 - 前記基材樹脂(5)は、前記被覆層(4)の被覆樹脂とは異なる素材であることを特徴とする請求項1に記載の合皮シート。
- 前記パイル層(3)の厚さは0.20mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の合皮シート。
- 前記パイル層(3)の起毛された繊維毛羽のうち、平面視で所定方向に略沿う繊維毛羽は、平面視で前記所定方向に沿わない繊維毛羽より多いことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の合皮シート。
- 基材層(2)の一方面側にパイル層(3)を有した合皮シートの製造方法であって、
繊維で前記基材層(2)となる経編地を編成する編成工程と、
この編成工程で編成した経編地のニードルループ面及びシンカーループ面を起毛して、前記経編地のニードルループ面にて起毛された繊維毛羽で前記パイル層(3)を形成する起毛工程と、
この起毛工程で起毛した経編地の繊維表面に、基材樹脂(5)を付着させる付着工程と、
この付着工程の後で、前記基材樹脂(5)が付着した経編地のシンカーループ面を被覆樹脂で覆って被覆層(4)を形成する被覆工程を有していることを特徴とする合皮シートの製造方法。 - 前記付着工程と被覆工程の間に、前記付着工程で基材樹脂(5)が付着した経編地のニードルループ面を起毛する再起毛工程と、
この再起毛工程でニードルループ面を起毛された経編地を揉む揉工程を有していることを特徴とする請求項5に記載の合皮シートの製造方法。
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