JP2006342436A - 人造皮革と車両椅子張地 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱収縮性マルチフィラメントと、海成分ポリマーと島成分ポリマーとから成る海島型複合マルチフィラメントを混繊して加撚したポリエステル系極細マルチフィラメント混用糸を経糸に適用し、ポリエステル系捲縮マルチフィラメント糸を緯糸に適用し、朱子織組織によって織成した織物を起毛し、弾性エラストマーを含浸付与し、起毛面の単位面積1mm2 当たりの織組織における経糸の表出面積占有率が0.75〜0.92(75〜92%)、経糸密度が5〜12本/mm、緯糸密度が1.9〜7.9本/mmであり、単繊維繊度が0.05〜0.40dtexの極細フィラメントに海島型複合マルチフィラメントが割繊された人造皮革に仕上げる。
【選択図】図1
Description
織物と起毛布帛の原布とし、ポリウレタン樹脂エマルジョンを含浸付与して仕上げられた人造皮革が公知であり、その原布は、五枚朱子両面緯二重織組織によって織成され、経糸密度を150本/吋、緯糸密度を224本/吋、又は、経糸密度を147本/吋、緯糸密度を192本/吋とし、経糸にはポリエステル仮撚嵩高加工糸(82.5dtex/36f)を使用し、緯糸には、経糸に比して単繊維繊度が細く、起毛し易いポリエステルフィラメント糸(121.1dtex/366f、又は、60.5dtex/196f)を使用し、緯糸密度を経糸密度に比して緻密にして起毛し易く原布織物を構成している(例えば、特許文献3参照)。
その経糸の表出面積占有率を具体的に示すと、平織組織の経糸の表出面積占有率は50%、2/1綾織組織の経糸の表出面積占有率は67%、3/1綾織組織や四枚破れ経朱子織組織の経糸の表出面積占有率は75%、五枚経朱子織組織の経糸の表出面積占有率は80%、八枚経朱子織組織の経糸の表出面積占有率は85%、十二枚経朱子織組織の経糸の表出面積占有率は92%になる。
従って、『経糸の表出面積占有率』とは、狭義に言えば、本発明の人造皮革の原布である織物の織組織を、四枚破れ経朱子織組織から十二枚経朱子織組織までの一連の各経朱子織組織とすること意味する。
従って、経糸の表出面積占有率を0.75〜0.92(75〜92%)にすると言うことは、具体的に言えば、緯糸が織物や起毛布帛や人造皮革の表面に殆ど露出していないことを意味すると言うことも出来る。
しかし、本発明では、経糸密度が5〜12本/mmと極緻密であり、起毛面の1mm2 当りの経糸の表出面積占有率が0.75〜0.92であり、その起毛面の殆ど全てを占める経糸12に単繊維繊度0.05〜0.40dtexの極細フィラメントが混在しており、隣合う経糸12と経糸12の間の境目13が殆ど目立たず、起毛処理によって毛羽立ち難いとしても経糸12が嵩高に脹らみ、加えて、極細フィラメントと一緒に経糸12に混在する熱収縮性マルチフィラメントとの収縮差によって、極細フィラメントが起毛面に隆起し、特に、経糸12に弾性糸を混用するときは極細フィラメントが隆起し易く、その一部が削り取られて毛羽立った観を呈し、起毛面がヌバック調になる。
特に、弾性エラストマーの含浸付与後に研磨処理するときは、弾性エラストマーに包まれて補強された極細フィラメントが起毛面に隆起しているので、その極細フィラメントを包む弾性エラストマーの皮膜が破られると共に、極細フィラメントが切削され、その切削面14が毛羽立った観を呈するようになり、弾性エラストマーの皮膜が亀裂して原布織物の透湿性が取り戻され、同時に、弾性エラストマーが濡れ感とストレッチ性を与えるので、原布織物としての保形性を有する人造皮革が得られ、弾性エラストマーとしてシリコン系エラストマーの適用によって、ヌメリ感があって耐光性に優れ、撥水性と防汚性(ソイルリリーズ)、防融性(耐タバコ火)を有し、車両椅子張地に適した人造皮革となる。
そこで、本発明では、エンボス処理による表面凹凸によって肉厚感を付与するのであるが、その凹凸によって人造皮革の比表面積(外気に触れる面積)が増え、その凹部が保湿機能を発揮し、又、その凹部の底部(谷底)では人造皮革の厚みが薄くなるので、透湿性と可撓性を増し、保形性、ストレッチ性、耐光性に優れ、感触が柔らかく、薄手で透湿性を有し、縫製し易く、特に車両椅子張地に適した人造皮革が得られる。
このため緯糸に導電糸を適用しても、製織過程や起毛処理において導電糸の通電可能な電気的連続性が保たれ、導電糸によって起毛面の美観(彩色)が損なわれることがなく、内装材に適した制電性人造皮革が得られる。
そのためには、極細マルチフィラメントとの収縮率差が8%以上になるように、沸騰水中での熱収縮率が少なくとも10%、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上のポリエステル系熱収縮性マルチフィラメントを経糸に混用し、その熱収縮性マルチフィラメントと極細マルチフィラメントとの混繊比を、前者2〜5に対し後者8〜5、即ち、熱収縮性マルチフィラメントの混用率を20〜50質量%に、好ましくは25〜40質量%に、概して28質量%前後とし、研磨処理において切削された毛羽を構成することになる極細マルチフィラメントの混用率を多くする。
経糸への弾性糸の混用も熱収縮性マルチフィラメントの混用と同じ理由によるものであり、その混用率は5〜25質量%に、概して10質量%前後にするとよい。
経糸に使用するポリエステル系極細マルチフィラメント混用糸は、ポリエステル系熱収縮性マルチフィラメントと、0.055〜0.22dtexのポリエステル系極細マルチフィラメントを混繊し加撚したポリエステル系極細マルチフィラメント混繊実撚糸とするとよい。
そのように隆起して開毛した極細マルチフィラメントによって起毛面が緻密に覆われるようにするには、K=(経糸の総デニール)×(経糸密度)1/2 として算出される経糸のカバーファクター(K)(経糸密度は、インチ当りの経糸の本数(本/吋)として設定される。)が1200〜5000に、好ましくは2400〜4500になるように、経糸の総繊度と経糸密度を設定するとよい。
緯糸密度は、1.9〜7.9本/mmにするとよい。
原布織物を二重織組織とする場合、その裏織組織は、表織組織よりも枚数の多い朱子織組織とするとよい。
その海成分ポリマーの溶解除去された経糸では、極細マルチフィラメントの各極細フィラメントが密着状態にある。
起毛処理は、その密着状態から極細フィラメントを解放し、極細マルチフィラメントを嵩高に開繊するために施され、その起毛処理は、隣合う経糸12と経糸12の間の境目13に沿って出来る織組織の地模様が掻き消される程度に軽く施せば済む。
そのように本発明では、起毛処理を軽く施すだけで充分であり、又、経糸12の長さ方向と起毛ロールの回転方向が平行であり、経糸密度を5.9〜11.8本/mm、概して5〜12本/mmとして単位面積(1mm2 )当たりの経糸の表出面積占有率を0.75〜0.92とするときは、平織(一重織物)や多重織物の表織組織における緯糸密度も経糸密度と同等の5.9〜11.8本/mm、概して5〜12本/mmとなり、接結点と接結点の間で浮き出る経糸の長さも略1mm未満となるので、その浮き出た経糸12(極細フィラメント)が起毛ロールに掻き上げられて破断する程度も極少なく、且つ又、起毛ロールの回転方向に直交する方向に長く続くとは言え、緯糸11(熱収縮性マルチフィラメント)は、殆ど起毛面に露出していないので、起毛ロールから殆ど損傷を受けない。
そのように、起毛処理によって緯糸11も経糸12も殆ど損傷を受けないので、本発明の人造皮革は、強度的に優れ、車両椅子張地に適したものとなる。
起毛面にエンボス処理による凹部を点(ドット)状に施す場合、その凹部(ドット)の大きさ(面積)は1mm2 以下とし、隣合う凹部(ドット)の型際と凹部(ドット)の型際の間の最小寸法を3mm以下、好ましくは1mm以下にする。
起毛布帛に含侵付与する弾性エラストマーは、エマルジョンタイプのものでも、有機溶剤溶液タイプのものであってもよい。
起毛布帛に含侵付与する弾性エラストマーの含侵付与量(乾燥質量)は、60g/m2 以下、特に、エンボス処理を施さない場合は10〜30g/m2 (概して25g/m2 前後)でよいが、エンボス処理を施す場合は、20g/m2 以上(20〜60g/m2 )にするとよい。
車両椅子張地に適用するための人造皮革の裏打処理は、バッキング剤(裏打用接着剤)を裏面に塗布して行われるが、その裏打処理においては予め裏面を起毛処理しておくとよい。
その場合、裏面は起毛面とは逆に緯糸で覆われているので毛羽立ち易く、その起毛毛羽が絡合するので、バッキング剤の塗布量は少なくて済み、人造皮革の可撓性や通気性が保たれる。
75dtex/50f・17分割型ポリエステル海島複合マルチフィラメントと75dtex/12fポリエステル高熱収縮性マルチフィラメント(沸騰水中熱収縮率20%)と20dtex/1fポリウレタン弾性糸とをエアカバー方式で混繊して加撚した実撚糸を経糸12とし、100dtex/2×36fポリエステル高捲縮仮撚加工糸12aを表緯糸とし、100dtex/2×36fポリエステル高捲縮仮撚加工糸11bおよび150dtex/30fポリエステル中捲縮仮撚加工糸と20dtex/6f導電糸を合撚した導電合撚糸11cを裏緯糸とし、裏織組織(図2−b)においては150dtex/30fポリエステル中捲縮仮撚加工糸11bと導電合撚糸11cを前者4本につき後者1本の割合で打ち込んで織成した図2に図示する五枚経朱子織組織の緯二重織物をアルカリ減量処理して海島複合マルチフィラメントを17本の極細マルチフィラメントに分割し、染色後の加熱過程でポリエステル高熱収縮性マルチフィラメント(経糸12)を熱収縮させ、シリコン系エラストマー(有機溶剤溶液タイプ)を30g/m2 (乾燥質量)含浸付与し、起毛面に研磨処理を施して、経糸密度6.7本/mm、緯糸密度7.1本/mmの人造皮革を得た。
図2において、(a)は緯二重織物の五枚経朱子織組織図、(b)は緯二重織物の五枚経朱子表織組織図、(c)は緯二重織物の十枚経朱子裏織組織図を示す。
75dtex/50f・17分割型ポリエステル海島複合マルチフィラメントと30dtex/12fポリエステル高熱収縮性マルチフィラメント(沸騰水中熱収縮率20%)とをインターレース方式で混繊して加撚した実撚糸を経糸12とし、100dtex/2×36fポリエステル高捲縮仮撚加工糸12aを表緯糸とし、100dtex/2×36fポリエステル高捲縮仮撚加工糸11bおよび150dtex/30fポリエステル中捲縮仮撚加工糸と20dtex/6f導電糸を合撚した導電合撚糸11cを裏緯糸とし、裏織組織(図2−b)においては150dtex/30fポリエステル中捲縮仮撚加工糸11bと導電合撚糸11cを前者4本につき後者1本の割合で打ち込んで織成した五枚経朱子織組織(図2−a)の緯二重織物をアルカリ減量処理して海島複合マルチフィラメントを17本の極細マルチフィラメントに分割し、染色後の加熱過程でポリエステル高熱熱収縮性マルチフィラメント(経糸12)を熱収縮させ、シリコン系エラストマー(有機溶剤溶液タイプ)を30g/m2 (乾燥質量)含浸付与し、起毛面に研磨処理を施して、経糸密度6.7本/mm、緯糸密度7.1本/mmの人造皮革を得た。
12:経糸
13:境目
14:切削面
Claims (10)
- (a) 起毛布帛に弾性エラストマーを含浸付与して成る人造皮革において、
(b) 起毛布帛が、織物の表面を起毛処理して成り、
(c) その織物の経糸には、ポリエステル系熱収縮性マルチフィラメントと、そのポリエステル系熱収縮性マルチフィラメントよりも単繊維繊度が細く0.05〜0.40dtexのポリエステル系極細マルチフィラメントを混用したポリエステル系極細マルチフィラメント混用糸が適用され、緯糸には、ポリエステル系捲縮マルチフィラメント糸が適用されており、
(d) 起毛面の経緯各1mmとなる単位面積(1mm2 )に現れる織組織における経糸の表出面積占有率が0.75〜0.92(75〜92%)であり、
(e) 経糸密度が5〜12本/mmであり、
(f) 弾性エラストマーの含浸付与後に研磨処理されて起毛面が毛羽立っている人造皮革。 - (g) 弾性エラストマーとしてシリコン系エラストマーが含浸付与されている前掲請求項1に記載の人造皮革。
- (b1) 起毛布帛を構成する織物の起毛面における織組織が五枚経朱子織組織である前掲請求項1と2の何れかに記載の人造皮革。
- (b2) 起毛布帛を構成する織物の織組織が二重織組織である前掲請求項1と2の何れかに記載の人造皮革。
- (b3) 起毛布帛を構成する織物の織組織が二重織組織であり、起毛面における表織組織が五〜八枚経朱子織組織である前掲請求項1と2の何れかに記載の人造皮革。
- (c1) 極細マルチフィラメントが、海成分ポリマーと島成分ポリマーとから成る海島型複合繊維に成り、製織後に海成分ポリマーが溶解除去されて単繊維繊度0.05〜0.40dtexの極細フィラメントに極細化されている前掲請求項1、2、3、4、5の何れかに記載の人造皮革。
- (h) 弾性エラストマーの含浸付与前後(前または後)に、起毛面にエンボス処理が施されており、そのエンボス処理によって付形された凹部の深さが0.3mm以上であり、そのエンボス処理の施された起毛面の経緯各1cmとなる単位面積(1cm2 )において凹部の占める面積占有率が0.1〜0.3(10〜30%)である前掲請求項1、2、3、4、5、6の何れかに記載の人造皮革。
- (i) 経糸に弾性糸が混用されている前掲請求項1、2、3、4、5、6、7の何れかに記載の人造皮革。
- (j) 緯糸に導電糸が混用されている前掲請求項1、2、3、4、5、6、7、8の何れかに記載の人造皮革。
- (k) 前掲請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9の何れかに記載の人造皮革の裏面に裏打処理を施して成る車両椅子張地。
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