JP2018199295A - 逐次二軸延伸フィルム及び逐次二軸延伸フィルムの製造方法 - Google Patents

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匡貴 岡野
Masaki Okano
匡貴 岡野
久保 昌宏
Masahiro Kubo
昌宏 久保
望 藤井
Nozomi Fujii
望 藤井
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Abstract

【課題】ヒートシール強度が高く、縦延伸時の縦延伸温度を低温化して配向が強くかかる条件下でも、その後のTD方向への延伸性に優れ、破断が抑制された逐次二軸延伸フィルム、及び該逐次二軸延伸フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの20℃以上120℃以下の範囲の融解吸熱量(ΔHb)が、全温度範囲における融解吸熱量(ΔHa)に対して10%以上である樹脂組成物からなるA層及び、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が0J/g以上80J/g以下であるオレフィン系重合体(I)を含み、融点(Tm−D)が155℃を超える樹脂組成物を含むB層を含む、逐次二軸延伸フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、逐次二軸延伸フィルム及び該逐次二軸延伸フィルムの製造方法に関する。
多層フィルムを一軸又は二軸延伸したフィルムの中でも、ポリプロピレン二軸延伸多層フィルムが知られている。
また、前記ポリプロピレン二軸延伸多層フィルムとして、例えば、最外層に低融点の成分を含むことでヒートシール性を付与したり、マット調やエンボス加工によるホログラム調を付与した二軸延伸多層フィルム等が知られている。
例えば、二軸延伸フィルムとして、特許文献1には、融点(Tm−D)が80℃以上、155℃以下であるA層と、融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであるオレフィン系重合体(I)を含み融点(Tm−D)が155℃を超えるB層とを含むフィルムが開示されている。
特開2016−107497号公報
ポリプロピレン単重合体よりも融点の低いランダムポリプロピレンやランダムポリエチレンのような、比較的融点の低い結晶性樹脂を含む層を有する多層フィルムは、この層が融解しない又は一部融解するも全部融解しない低温で、ロールにより機械方向(MD)に延伸(以下、「MD延伸」、「縦延伸」ともいう)を行うため、原反は通常よりも配向度が高くなる。この高い配向度の一軸延伸後のフィルムは、通常、テンターによる、機械方向に対して垂直方向(TD)の延伸(以下、「TD延伸」、「横延伸」ともいう)がしづらいため、仮に、通常のTD延伸温度より低い温度で、所望の厚みまで二軸延伸した場合には、フィルムが破断したり偏肉による厚みムラが生じるおそれがあった。
一方、TD延伸の破断を抑制するために、TD延伸の温度を、MD延伸の温度より高く設定すると、融点の低い層において融解が促進され、その後の冷却時に、再結晶化することで、その層の透明性が著しく低下するのみならず、多層フィルム全体の透明性も低下してしまう。
特許文献1に記載のフィルムでは、比較的融点の低い結晶性樹脂を含む層を有することにより、二軸延伸時、特に同時二軸延伸時のフィルムの破断抑制、力学特性及び光学特性の改善を図っている。しかしながら、逐次二軸延伸時の縦延伸温度の低温化やヒートシール強度については十分に検討されていない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ヒートシール強度が高く、縦延伸時の縦延伸温度を低温化して配向が強くかかる条件下でも、その後のTD方向への延伸性に優れ、破断が抑制された逐次二軸延伸フィルム、及び該逐次二軸延伸フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本願開示は、以下に関する。
[1]示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの20℃以上120℃以下の範囲の融解吸熱量(ΔHb)が、全温度範囲における融解吸熱量(ΔHa)に対して10%以上である樹脂組成物からなるA層及び、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が0J/g以上80J/g以下であるオレフィン系重合体(I)を含み、融点(Tm−D)が155℃を超える樹脂組成物を含むB層を含む、逐次二軸延伸フィルム。
[2]前記A層を構成する樹脂組成物の融点(Tm−D)が70℃以上155℃以下である、上記[1]に記載の逐次二軸延伸フィルム。
[3]前記逐次二軸延伸フィルムの厚みが8μm以上200μm以下である、上記[1]または[2]に記載の逐次二軸延伸フィルム。
[4]前記オレフィン系重合体(I)が、B層を構成する樹脂組成物中に0.1質量%以上50質量%未満含まれる、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の逐次二軸延伸フィルム。
[5]前記A層が、少なくとも一方の最外層を形成する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の逐次二軸延伸フィルム。
[6]前記B層を構成する樹脂組成物の融点(Tm−D)が155℃を超え190℃以下である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の逐次二軸延伸フィルム。
[7]前記オレフィン系重合体(I)の50モル%以上がプロピレンモノマーで構成されるプロピレン系重合体(I−b)である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の逐次二軸延伸フィルム。
[8]前記オレフィン系重合体(I)が、下記(i)及び(ii)のうち少なくとも一つを満たすプロピレン系重合体(I−b)である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の逐次二軸延伸フィルム。
(i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、25モル%以下で含まれる。
(ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。
[9]前記オレフィン系重合体(I)の[mm]が20モル%以上90モル%以下である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の逐次二軸延伸フィルム。
[10]前記オレフィン系重合体(I)の[mmmm]が20モル%以上60モル%以下である、上記[7]に記載の逐次二軸延伸フィルム。
[11]前記オレフィン系重合体(I)が下記(2)及び(3)を満たす、上記[10]に記載の逐次二軸延伸フィルム。
(2)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(3)分子量分布(Mw/Mn)<4.0
[12]前記オレフィン系重合体(I)が下記(4)及び(5)を満たす、上記[10]又は[11]に記載の逐次二軸延伸フィルム。
(4)[rmrm]>2.5モル%
(5)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
[13]上記[1]〜[12]のいずれかに記載の逐次二軸延伸フィルムの製造方法であって、縦延伸時の縦延伸温度が150℃以下である、逐次二軸延伸フィルムの製造方法。
本発明によれば、ヒートシール強度が高く、縦延伸時の縦延伸温度を低温化して配向が強くかかる条件下でも、その後のTD方向への延伸性に優れ、破断が抑制された逐次二軸延伸フィルム、及び該逐次二軸延伸フィルムの製造方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
<逐次二軸延伸フィルム>
本実施形態の逐次二軸延伸フィルムは、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの20℃以上120℃以下の範囲の融解吸熱量(ΔHb)が、全温度範囲における融解吸熱量(ΔHa)に対して10%以上である樹脂組成物からなるA層及び、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が0J/g以上80J/g以下であるオレフィン系重合体(I)を含み、融点(Tm−D)が155℃を超える樹脂組成物を含むB層を含むことを特徴とする。
本実施形態の逐次二軸延伸フィルムは、上記A層及びB層を含むことにより、ヒートシールができる逐次二軸延伸フィルムが得られる。そして、ヒートシールを実施した際、ヒートシール層であるA層を排斥させ、B層が樹脂だまりを形成できるため、低温ヒートシール性、優れたヒートシール強度を有すると推測される。
本実施形態の逐次二軸延伸フィルムは、前記A層、B層をそれぞれ二層以上含んでいてもよいし、前記A層、B層以外のその他の層を含んだ多層フィルムであってもよい。また、A層が本実施形態の逐次二軸延伸フィルムの少なくとも一方の最外層を構成していてもよいし、該フィルムの両方の最外層を構成していてもよい。
〔B層〕
前記B層は、後述するオレフィン系重合体(I)を含み、融点(Tm−D)が155℃を超える樹脂組成物を含めば特に限定されないが、オレフィン系重合体(I)を含み、融点(Tm−D)が155℃を超える樹脂組成物からなる層であることが好ましい。
融点(Tm−D)が155℃以下では、得られたフィルムの耐熱性や機械的強度が低下する。このような観点から、B層を構成する樹脂組成物の融点(Tm−D)は、好ましくは156℃以上、より好ましくは158℃以上、更に好ましくは160℃以上であり、そして、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは170℃以下である。
ここで、本明細書では、融点(Tm−D)は、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップの値とする。
オレフィン系重合体(I)の融解吸熱量(ΔH−D)は、低温での延伸性を改善する観点から、0J/g以上80J/g以下である。このような観点から、オレフィン系重合体(I)の融解吸熱量(ΔH−D)は、好ましくは10J/g以上、より好ましくは20J/g以上、更に好ましくは30J/g以上であり、そして、好ましくは70J/g以下、より好ましくは60J/g以下、更に好ましくは50J/g以下である。
上記融解吸熱量(ΔH−D)は、熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線をベースラインとして、DSC測定により得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークを含むライン部分と当該ベースラインとで囲まれる面積を求めることで算出される。
なお、融解吸熱量(ΔH−D)は、モノマー濃度や反応圧力を適宜調整することで制御することができる。
オレフィン系重合体(I)は、エチレン及び炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーを重合してなるオレフィン系重合体(I)が好ましい。
炭素数3〜28のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−イコセン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数3〜24のα−オレフィン、より好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン、更に好ましくは炭素数3〜6のα−オレフィン、特に好ましくは炭素数3〜4のα−オレフィン、最も好ましくはプロピレンである。
これらのうちの1種を単独で重合したオレフィン系重合体(I−1)を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて共重合して得られるオレフィン系共重合体(I−2)を使用してもよい。オレフィン系共重合体(I−2)としては、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がエチレンモノマーであるエチレン系重合体、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がプロピレンモノマーであるプロピレン系重合体(I−b)、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がブテンモノマーであるブテン系重合体などが挙げられる。
オレフィン系重合体(I)は、透明性や延伸ムラ抑制の観点から優れた成形体物性、例えば、フィルム物性が得られる、プロピレン単独重合体(I−a)又はプロピレン系重合体(I−b)がより好ましい。
また、プロピレン系重合体(I−b)としては、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、又はプロピレン−α−オレフィングラフト共重合体等から選択されるプロピレン系重合体(I−b)であることが好ましい。
また、本実施形態の逐次二軸延伸フィルムにおいて、B層の主成分であるオレフィン系重合体(II)が後述するプロピレン系重合体(II−1)である場合、オレフィン系重合体(I)は、以下の構成単位を有するプロピレン系重合体(I−b)も用いることができる。
すなわち、プロピレン系重合体(I−b)は、炭素数が2のオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が2のオレフィン(すなわち、エチレンモノマー)の構成単位が、好ましくは0モル%を超え、25モル%以下、より好ましくは0モル%を超え、23モル%以下、さらに好ましくは0モル%を超え、20モル%以下、より更に好ましくは0モル%を超え、18モル%以下である。また、炭素数が4以上のαオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が4以上のαオレフィン含有量が、好ましくは0モル%を超え、30モル%以下、より好ましくは0モル%を超え、27モル%以下、更に好ましくは0モル%を超え、20モル%以下である。
上記プロピレン系重合体(I−b)は、下記(i)及び(ii)のうち少なくとも一つを満たすことがより好ましい。
(i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、20モル%以下で含まれる。
(ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。
また、本実施形態の逐次二軸延伸フィルムにおいて、B層の主成分であるオレフィン系重合体(II)が後述するプロピレン系重合体(II−1)である場合、主成分のプロピレン系重合体(II−1)との相溶性の観点などから、オレフィン系重合体(I)は、最も好ましくはプロピレン単独重合体である。なお、上記の重合体は、石油・石炭由来のモノマーを用いた重合体でもよいし、バイオマス由来のモノマーを用いた重合体でもよい。
本実施形態の逐次二軸延伸フィルムは、B層を構成する樹脂組成物に対し、オレフィン系重合体(I)を含むことで、非晶成分の割合が増大し、ポリオレフィン系組成物を延伸した時の降伏応力が低下するため、均一延伸性が向上し、成形体、例えば、製膜されたフィルムの粘り強さが向上する。オレフィン系重合体(I)はB層に柔軟性を付与し、主成分であるオレフィン系重合体(II)の融点を下げないものが好ましい。
特に、本実施形態の逐次二軸延伸フィルムの低温延伸性を大幅に改善させる観点から、B層における非晶成分の割合を増大させるためには、B層を構成する樹脂組成物中に含まれるオレフィン系重合体(I)の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%未満、より好ましくは20質量%未満、更に好ましくは15質量%未満、より更に好ましくは10質量%未満である。
また、特に、B層の主成分であるオレフィン系重合体(II)がプロピレン系重合体(II−1)であって、かつ、オレフィン系重合体(I)がプロピレン単独重合体(I−a)又はプロピレン系重合体(I−b)である場合は、プロピレン系重合体(II−1)に対するプロピレン単独重合体(I−a)又はプロピレン系重合体(I−b)の相溶性もより良好となり、より優れた透明性並びに延伸性を有する成形体を得ることができる。
成形体の力学特性に影響を与えることなく、延伸性が大幅に改善される観点から、オレフィン系重合体(I)が、前記融解吸熱量(ΔH−D)を有し、かつ後述する特性を有する場合であって、このオレフィン系重合体(I)の含有量が、上述した範囲の含有量であることが好ましい。
本実施形態における、プロピレン単独重合体(I−a)は、好ましくは下記(1)を満たし、より好ましくは、さらに(2)及び(3)を満たし、さらに好ましくは、下記(1)〜(3)に加え下記(4)及び(5)を満たす。
(1)[mmmm]が20〜60モル%である。
(2)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(3)分子量分布(Mw/Mn)<4.0
(4)[rmrm]>2.5モル%
(5)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
〔メソペンタッド分率[mmmm]〕
メソペンタッド分率[mmmm]は、オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体の立体規則性を表す指標であり、メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。
オレフィン系重合体(I)がプロピレン単独重合体である場合、そのメソペンタッド分率[mmmm]は、プロピレン系重合体の取り扱い性及びオレフィン系重合体(II)へ少量添加した際の延伸性の改良効果の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは60モル%以下、より好ましくは55モル%以下、更に好ましくは51モル%以下である。メソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上であると、本実施形態の逐次二軸延伸フィルムのB層の主成分であるオレフィン系重合体(II)の剛性を低下させず、延伸性をより改良することができ、60モル%以下であると、主成分であるオレフィン系重合体(II)と共晶化せず、主成分であるオレフィン系重合体(II)の非晶部分に相溶することで延伸性をより改良できる。
〔[rrrr]/(1−[mmmm])〕
[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、メソペンタッド分率[mmmm]及びラセミペンタッド分率[rrrr]から求められ、ポリプロピレンの規則性分布の均一さを示す指標である。[rrrr]/(1−[mmmm])の値が大きくなると既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高立体規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、成形後のポリプロピレン延伸フィルムのべたつきの原因となる。なお、上記における[rrrr]及び[mmmm]の単位は、モル%である。
プロピレン単独重合体(I−a)における[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、べたつきの観点から、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.04以下であり、そして、より好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.01以上である。
〔メソトリアッド分率[mm]〕
メソトリアッド分率[mm]は、オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体の立体規則性を表す指標であり、メソトリアッド分率[mm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。
オレフィン系重合体(I)のメソトリアッド分率[mm]は、プロピレン系重合体の取り扱い性及びオレフィン系重合体(II)へ少量添加した際の延伸性の改良効果の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。メソトリアッド分率[mm]が20モル%以上であると、本実施形態の逐次二軸延伸フィルムのB層の主成分であるオレフィン系重合体(II)の剛性を低下させず、延伸性をより改良することができ、60モル%以下であると、主成分であるオレフィン系重合体(II)と共晶化せず、主成分であるオレフィン系重合体(II)の非晶部分に相溶することで延伸性をより改良できる。
ここで、メソトリアッド分率[mm]、メソペンタッド分率[mmmm]、及びラセミペンタッド分率[rrrr]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のトリアッド単位でのメソ分率、並びにペンタッド単位でのメソ分率及びラセミ分率である。また、後述する[rr]及び[mr]も上記方法により算出される。
〔分子量分布(Mw/Mn)〕
オレフィン系重合体(I)の分子量分布(Mw/Mn)は、高強度の観点から、好ましくは4.0未満である。分子量分布(Mw/Mn)が4.0未満であれば、延伸性や成形体物性、例えば、フィルム物性(たとえば、力学特性、光学特性)に悪影響を及ぼす低分子量成分が抑制される。このような観点から、オレフィン系重合体(I)の分子量分布(Mw/Mn)は、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは1.5以上2.5以下である。
本実施形態において、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnより算出した値である。
〔ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]〕
ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、ポリプロピレンの立体規則性のランダム性を表す指標であり、値が大きいほどポリプロピレンのランダム性が増加する。
プロピレン単独重合体(I−a)のラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、好ましくは2.5モル%を超える。プロピレン単独重合体(I−a)の[rmrm]が2.5モル%を超えることにより、ランダム性が増し、本実施形態の逐次二軸延伸フィルムのB層の主成分であるオレフィン系重合体(II)(特に、オレフィン系重合体(II)がプロピレン系重合体(II−1)である場合)と共晶化し難くなり、その結果、ポリオレフィン系組成物の耐熱性や剛性の低下が抑制される。このような観点から、プロピレン単独重合体(I−a)のラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、より好ましくは2.6モル%以上、更に好ましくは2.7モル%以上である。その上限は、通常、好ましくは10モル%程度であり、より好ましくは7モル%、更に好ましくは5モル%、より更に好ましくは4モル%である。
〔[mm]×[rr]/[mr]
トリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]から算出される[mm]×[rr]/[mr]の値は、重合体のランダム性の指標を表し、1に近いほどランダム性が高くなり、本実施形態の逐次二軸延伸フィルムのB層の主成分であるオレフィン系重合体(II)(特に、オレフィン系重合体(II)がプロピレン系重合体(II−1)である場合)と共晶化が起こらず、主成分であるオレフィン系重合体(II)(特に、プロピレン系重合体(II−1))に対して効率的に延伸性を改良することができる。本実施形態における、プロピレン単独重合体(I−a)は、上式の値が通常2以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.5以下であり、そして、好ましくは0.5以上である。なお、上記における[mm]及び[rr]の単位は、モル%である。
また、オレフィン系重合体(I)、プロピレン単独重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)の重量平均分子量(Mw)は、強度の観点から10,000以上、500,000以下が好ましい。
上記オレフィン系重合体(I)、プロピレン単独重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)において重量平均分子量が10,000以上、500,000以下であるとフィルム強度に優れる。この重量平均分子量は、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは50,000以上であり、そして、より好ましくは400,000以下、更に好ましくは300,000以下である。
本実施形態において、重量分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
上記プロピレン単独重合体(I−a)又はプロピレン系重合体(I−b)は、例えば、WO2003/087172号に記載されているようなメタロセン系触媒を使用して製造することができる。特に、配位子が架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物を用いたものが好ましく、なかでも、2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と助触媒を組み合わせて得られるメタロセン系触媒が好ましい。
具体的に例示すれば、
(i)一般式(I)
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E及びEはそれぞれ置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ヘテロシクロペンタジエニル基、置換ヘテロシクロペンタジエニル基、アミド基、ホスフィド基、炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A及びAを介して架橋構造を形成しており、又それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX、E、E又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY、E、E又はXと架橋していてもよく、A及びAは二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−Se−、−NR−、−PR−、−P(O)R−、−BR−又は−AlR−を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
で表される遷移金属化合物、及び(ii)(ii−1)該(i)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(ii−2)アルミノキサンから選ばれる成分を含有する重合用触媒が挙げられる。
上記(i)成分の遷移金属化合物としては、配位子が(1,2’)(2,1’)二重架橋型の遷移金属化合物が好ましく、例えば(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドが挙げられる。
上記(ii−1)成分の化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム、テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム、テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム、テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(4−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム、テトラキス〔ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニル硼酸フェロセニウム、テトラフェニル硼酸銀、テトラフェニル硼酸トリチル、テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン、テトラフルオロ硼酸銀,ヘキサフルオロ燐酸銀、ヘキサフルオロ砒素酸銀、過塩素酸銀、トリフルオロ酢酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀等を挙げることができる。
上記(ii−2)成分のアルミノキサンとしては、公知の鎖状アルミノキサンや環状アルミノキサンが挙げられる。
また、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等の有機アルミニウム化合物を併用して、プロピレン単独重合体(I−a)又はプロピレン系重合体(I−b)を製造してもよい。
オレフィン系重合体(II)としては、例えば、エチレン及び炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーを重合してなるオレフィン系重合体が好ましい。
炭素数3〜28のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−イコセン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数3〜24のα−オレフィン、より好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン、更に好ましくは炭素数3〜6のα−オレフィン、特に好ましくは炭素数3〜4のα−オレフィン、最も好ましくはプロピレンである。
これらのうちの1種を単独で重合したオレフィン系重合体を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて共重合して得られるオレフィン系共重合体を使用してもよい。なお、本明細書中において、単に「オレフィン系重合体」という場合には、オレフィン系共重合体も含まれる。オレフィン系共重合体としては、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がエチレンモノマーであるエチレン系重合体、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がプロピレンモノマーであるプロピレン系重合体(II−1)、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がブテンモノマーであるブテン系重合体などが挙げられ、剛性や透明性の観点から優れた成形体物性、例えば、フィルム物性が得られる、プロピレン系重合体(II−1)がより好ましい。さらに、プロピレン系重合体(II−1)は、剛性や透明性向上の観点から、メソペンタッド分率[mmmm]が、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上、より更に好ましくは87モル%以上、より更に好ましくは88モル%以上、より更に好ましくは89モル%以上であり、そして、好ましくは99モル%以下、より好ましくは98.5モル%以下、更に好ましくは98モル%以下、より更に好ましくは97.5モル%以下である。
プロピレン系重合体(II−1)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、又はプロピレン−α−オレフィングラフト共重合体等から選択されるプロピレン系重合体(II−1)であることが好ましい。
さらに、延伸性を高める観点から、プロピレン系重合体(II−1)は、重合体中に含まれるエチレン構成単位の含有量が1モル%以下であることが好ましく、エチレン構成単位を含まないプロピレン単独重合体であることがより好ましい。
なお、上記の重合体は、石油・石炭由来のモノマーを用いた重合体でもよいし、バイオマス由来のモノマーを用いた重合体でもよい。
オレフィン系重合体(II)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.3g/10min以上、より好ましくは0.5g/10min以上、更に好ましくは1g/10min以上、より更に好ましくは2g/10min以上であり、そして、好ましくは10g/10min以下、より好ましくは7g/10min以下、更に好ましくは5g/10min以下、より更に好ましくは4g/10min以下である。MFRが、0.3g/10min以上、10g/10min以下であれば、成形加工性と成形体の物性のバランスに優れるため好ましい。
なお、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210で規定された測定方法により測定され、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
B層を構成する樹脂組成物に対して、オレフィン系重合体(II)の含有量は、50質量%以上であることが好ましい。当該含有量が50質量%以上であることで、逐次二軸延伸フィルムの耐熱性が維持される。そのような観点から、B層を構成する樹脂組成物に対して、オレフィン系重合体(II)の含有量は、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上である。また、二軸延伸多層フィルムの透明性、耐熱性の観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
〔A層〕
前記A層は、前記融解吸熱量(ΔHb)が、前記融解吸熱量(ΔHa)に対して10%以上である樹脂組成物からなり、好ましくはヒートシール層として用いられる。前記融解吸熱量(ΔHb)が、前記融解吸熱量(ΔHa)に対して10%未満では、ヒートシール強度を低下させるおそれがある。このような観点から、前記融解吸熱量(ΔHb)は、前記融解吸熱量(ΔHa)に対して好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、より更に好ましくは50%以上である。上限値は特に限定されないが、好ましくは90%以下である。
前記A層を構成する樹脂組成物は、融点(Tm−D)が70℃以上155℃以下を満たすオレフィン系重合体(III)を含むことが、ヒートシール強度をより向上する観点から好ましい。このような観点から、オレフィン系重合体(III)の融点(Tm−D)は、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは148℃以下である。
オレフィン系重合体(III)は、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン三元ランダム共重合体、またはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であることがより好ましい。
〔その他の層〕
本実施形態の逐次二軸延伸フィルムは、上述のA、B層以外のその他の層を有してもよい。その他の層は、本実施形態の逐次二軸延伸フィルムの光学特性を維持するために、融点を有しない非晶質樹脂、又は本実施形態におけるTD延伸の温度にて、融解しない又は一部融解するも全部融解しない程度の融点を有する結晶性樹脂であることが好ましい。
その他の層として、例えば、ガスバリア層、剛性層、接着層等が挙げられる。接着層には、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)、ポリビニルアルコール、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)、EMA(エチレン−アクリル酸メチル共重合体)、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレン、その他変性ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、PVAc(ポリ塩化ビニル)、ポリエーテル、ポリケトン、ポリカーボネート、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)等が使用される。
〔添加剤〕
本実施形態の逐次二軸延伸フィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じてさらに、A層、B層またはその他の層の少なくともいずれか一方に、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、核剤、ブロッキング防止剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤、エラストマーなどを配合することができる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、イオウ系、ラクトーン系、有機ホスファイト系、有機ホスフォナイト系の酸化防止剤、あるいはこれらを数種類組み合わせた酸化防止剤等を使用することができる。酸化防止剤は、前記フィルムの各層の全量100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下の範囲で配合することが好ましい。
帯電防止剤としては、一般的に用いられる公知の低分子型又は高分子型帯電防止剤を好適に用いることができる。
低分子型帯電防止剤としては、例えば、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン型帯電防止剤、テトラアルキルアンモニウム塩型のカチオン型帯電防止剤、アルキルスルホン酸塩等のアニオン型帯電防止剤、アルキルベタイン等の両性型帯電防止剤等の帯電防止剤等を挙げることができる。
高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエーテルエステルアミド等の非イオン型帯電防止剤、ポリスチレンスルホン酸等のアニオン型帯電防止剤、第四級アンモニウム塩含有重合体等のカチオン型帯電防止剤等を挙げることができる。
帯電防止剤は、前記フィルムの各層の全量100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下の範囲で配合することが好ましい。
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ベヘン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれら飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることができる。これらの内でも、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。スリップ剤は、前記フィルムの各層の全量100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下の範囲で配合することが好ましい。
ブロッキング防止剤としては、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状もしくは液状のシリコン樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、架橋されたアクリル樹脂やメタクリル樹脂粉末のような微粉末状架橋樹脂を挙げることができる。これらの内では、微粉末シリカおよび微粉末状架橋樹脂が好ましい。ブロッキング防止剤は、前記フィルムの各層の全量100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下の範囲で配合することが好ましい。
エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、エステル系、軟質塩ビ系、ウレタン系、アミド系、ブタジエン・イソプレン系のエラストマー、あるいはこれらを数種類組み合わせたエラストマーを用いることができる。これらの中でもスチレン系、オレフィン系、ブタジエン・イソプレン系が好ましい。エラストマーは、前記フィルムの各層の全量100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下の範囲で配合することが好ましい。
〔フィルムの厚み〕
本実施形態の逐次二軸延伸フィルムの厚みは、各用途によって設定されるが、充分なヒートシール強度発現の観点から、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
<逐次二軸延伸フィルムの製造方法>
本実施形態の逐次二軸延伸フィルムの製造方法においては、150℃以下で縦延伸を行うことができる。
本実施形態では、上述したA、B層を含む未延伸のフィルムを用いることにより、該フィルムの縦延伸時の縦延伸温度を150℃以下の低温で配向が強くかかる条件下で行っても、その後のTD方向への延伸性を優れたものとすることができ、破断が抑制された逐次二軸延伸フィルムを得ることができる。
本実施形態の逐次二軸延伸フィルムについて、上述したA、B層を含むフィルムを例に取って、一般的な製法を以下に説明する。なお、本実施形態では、以下の製法に限るものではない。
B層を構成する樹脂組成物は、オレフィン系重合体(I)とオレフィン系重合体(II)、また、必要に応じて添加剤を加えて、例えば、高速ミキサー、バンバリーミキサー、連続ニーダー、一軸又は二軸押出機、ロール、ブラベンダープラストグラフ等の通常の混合混練機を使用して、一般には加熱溶融混練して造粒する方法が採用される。
B層を構成する樹脂組成物は押し出し成形用に好ましく用いられる。また、上記オレフィン系重合体(I)及びオレフィン系重合体(II)を押し出し成形直前に、例えば、押出機上のホッパー内に同時に投入して(ドライブレンド)用いてもよい。
一方、A層を構成する樹脂組成物も、オレフィン系重合体(III)、また、必要に応じて添加剤を加えて、上記同様に、造粒されるかドライブレンドが用いられる。
次いで、得られたA、B層を構成する、それぞれの樹脂組成物を溶融共押出ししてT型のダイスからカーテン状に垂らし、直後にこの溶融膜を冷却ロールによって固化させ一次フィルムを得る。続いて、後続の延伸装置により延伸を行う。なお、上記溶融押出時の好ましい樹脂温度は、180℃以上300℃以下、より好ましくは200℃以上280℃以下である。また、冷却ロール温度は、好ましくは0℃以上120℃以下、より好ましくは10℃以上100℃以下である。
押出により得られた一次フィルムを更に二軸延伸により延伸して、延伸成形された延伸フィルムを得る。延伸方法としては、押出た一次フィルムを連続してロール延伸とテンター方式による逐次二軸延伸を行う方法が挙げられる。延伸倍率は延伸フィルムの用途に応じて適宜決定することができるが、機械方向(MD)及び/又は機械方向に対して垂直方向(TD)について、それぞれ2倍以上12倍以下で二軸延伸することが好ましい。
また、一般的に、逐次二軸延伸を行う場合、先にMD方向への延伸によってフィルムを配向させた後に、さらに、TD方向への延伸を行う場合に、例えば、MD方向の延伸倍率が高すぎると、TD方向への延伸倍率を高めた場合に、フィルムが破断しやすくなるといった不具合が発生することが知られている。前記樹脂組成物を用いた場合は、良好な延伸性が得られるため、高延伸倍率での成形も可能となり、例えば、適切な延伸温度を設定したうえで、MD方向では、4倍以上、さらには5倍以上での延伸が可能であり、また該MD方向への延伸後に、TD方向に9倍以上、さらには9.5倍以上での延伸も可能である。
テンター方式による逐次二軸延伸では、まず、上記一次フィルムを延伸に適した温度(縦(MD)延伸温度)に再加熱して、遅ロール(前ロール)と速ロール(後ロール)との間で機械方向(MD)に延伸する。本実施形態では、縦(MD)延伸温度を150℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下にすることができる。また、下限値としては、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上である。
縦延伸温度を150℃以下の低い温度に設定した場合、配向が強くかかるため、その後のTD方向への延伸性が低下する場合がある。本実施形態では、縦延伸時の縦延伸温度を150℃以下の低温で配向が強くかかる条件下で行っても、その後のTD方向への延伸性を優れたものとすることができる。
次いで、テンター部にて、MD方向に延伸したフィルムの両端を保持したまま、更に加熱(横(TD)延伸温度)し、機械方向に対して垂直方向(TD)に延伸する。横(TD)延伸温度としては、好ましくは154℃以上、より好ましくは155℃以上、更に好ましくは158℃以上であり、そして、好ましくは168℃以下、より好ましくは165℃以下である。
最後に、延伸処理後のフィルムを熱処理(熱固定温度;好ましくは、100℃以上、より好ましくは110℃以上、そして、好ましくは175℃以下、より好ましくは170℃以下)することで延伸フィルム物性を安定化させて、巻き取り機によって巻き上げて、目的の逐次二軸延伸フィルムを得ることができる。
得られた逐次二軸延伸フィルムは、さらに、スリッター等の機械で適切な巾や長さに調整して、目的に応じた形状にしてもよい。
なお、得られる逐次二軸延伸フィルムの透明性をより向上させる観点からは、上記MD延伸温度及びTD延伸温度は、好ましい条件の中でも、低い温度条件であることが好ましい。
また、延伸倍率として、機械方向(MD)及び/又は機械方向に対して垂直方向(TD)を掛け合わせた面倍率について、通常は、4倍以上40倍以下であるが、上述の樹脂組成物を用いると、より延伸性が向上するために、高倍率での延伸が可能となる。例えば、上記4倍以上40倍以下の範囲よりも高倍率延伸が可能であり、面倍率が42倍以上さらには45倍以上、さらには47倍以上の面倍率でも延伸が可能となる。このように高倍率に延伸されたフィルムは、厚くても透明性に優れ、また延伸後のフィルムの収縮を抑えることが可能である。
このようにして得られた逐次二軸延伸フィルムは、包装材料に好適に用いられる。本実施形態の逐次二軸延伸フィルムは、特に限定されるものではないが、例えば食品用途や工業用途などの包装材料、例えば、生鮮食品、加工食品、調理済み製品、レトルト食品、菓子、又は飲料などを直接又は間接的に(例えば、菓子箱)包装及び梱包する場合に使用できる材料、タバコケース、医薬品、コンデンサーやキャパシターなどの電気部品、繊維、文具、雑貨、プラスチック部品、金属部品、などの包装及び梱包に使用できる材料、又はコンデンサーやキャパシターなどの電気部品自体、繊維、文具、プラスチック部品、種々の再利用可能な容器、実験器具、スピーカーコーン、自動車部品、又は紙幣など幅広い用途に使用することができる。使用方法は、そのままのフィルムで使用してもよいし、他のフィルムと積層させて用いてもよいし、金属蒸着させて使用してもよい。
また、保護フィルム、合成紙、ラベル、シール基材としても用いることができ、フィルム法合成紙、ファイバー法合成紙、フィルムラミネート法合成紙に用いることができる。
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
以下に、実施例で用いたオレフィン系重合体(I)から(III)、A層を構成する樹脂組成物及びB層を構成する樹脂組成物の測定方法について説明する。
〔DSC測定〕
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから融解吸熱量(ΔH−D)として求めた。また、得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップから融点(Tm−D)を求めた。
なお、融解吸熱量(ΔH−D)は、熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線をベースラインとして、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用いた、DSC測定により得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と当該ベースラインとで囲まれる面積を求めることで算出される。
〔重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)測定〕
ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。測定には、下記の装置および条件を使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量を得た。分子量分布(Mw/Mn)は、これらの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
<GPC測定装置>
カラム :東ソー(株)製「TOSO GMHHR−H(S)HT」
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出 ウォーターズ・コーポレーション製「WATERS 150C」
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
〔NMR測定〕
以下に示す装置および条件で、13C−NMRスペクトルの測定を行った。なお、ピークの帰属は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案された方法に従った。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
<計算式>
M=m/S×100
R=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm
メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]およびラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠して求めたものであり、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、およびラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、トリアッド分率[mm]、[rr]および[mr]も上記方法により算出した。
さらに、上記の13C−NMRスペクトルの測定結果から、下記式にて1,3−結合分率及び2,1−結合分率を算出した。
1,3−結合分率=(D/2)/(A+B+C+D)×100(モル%)
2,1−結合分率=[(A+B)/2]/(A+B+C+D)×100(モル%)
A:15〜15.5ppmの積分値
B:17〜18ppmの積分値
C:19.5〜22.5ppmの積分値
D:27.6〜27.8ppmの積分値
以下に、実施例で使用したオレフィン系重合体(II)について説明する。
<オレフィン系重合体(II)>
オレフィン系重合体(II)として、「F−300SP」((株)プライムポリマー製PP樹脂、融点(Tm−D):160℃、引張弾性率:1700MPa、立体規則性[mmmm]:90%、融解熱量(ΔH−D):86J/g、MFR:3.1g/10min)を用いた。
なお、メルトフローレイト(MFR)は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
<オレフィン系重合体(III)>
オレフィン系重合体(III)として、「F−724NP」((株)プライムポリマー製ランダムPP樹脂、融点:147℃、融解吸熱量(ΔHa):88J/g、融解吸熱量(ΔHb):52J/g、融解吸熱量(ΔHa)に対する融解吸熱量(ΔHb)の割合:59%)を用いた。
なお、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、オレフィン系重合体(III)10mgを窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから全温度範囲における融解吸熱量(ΔHa)及び20℃以上120℃以下の範囲の融解吸熱量(ΔHb)を求め、さらに、融解吸熱量(ΔHa)に対する融解吸熱量(ΔHb)の割合を算出した。
以下に、実施例で使用したオレフィン系重合体(I)の製造例について説明する。
製造例1[オレフィン系重合体(I)の製造]
撹拌機付きの内容積200Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを20L/hr、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド及びトリイソブチルアルミニウムを質量比1:2:20で、プロピレンと事前に接触させて得られた触媒成分を、ジルコニウム換算で6μmol/hrで連続供給した。
反応器内の全圧を1.0MPa・Gに保つようプロピレンと水素とを連続供給し、重合温度を適宜調整し所望の分子量を有する重合溶液を得た。
得られた重合溶液に、酸化防止剤をその含有割合が1000質量ppmになるように添加し、次いで溶媒であるn−ヘプタンを除去することにより、オレフィン系重合体(I)を得た。
製造例1で得られた、オレフィン系重合体(I)について、上述の測定を行った。結果を、以下の表1に示す。
実施例1
製造例1のオレフィン系重合体(I)5質量%とオレフィン系重合体(II)95質量%とからなる樹脂組成物のドライブレンド物をB層に、オレフィン系重合体(III)をA層になるように、サーモ・プラスティックス工業(株)製50φmmシート成形機によって240℃で共押出しながら、1000μm厚のフィルムを作製した。このとき、A層:B層:A層の厚みの比は1:10:1であった。また、このときの冷却ロールの温度は30℃であった。
得られたフィルムのシートを(株)岩本製作所製の一軸延伸機を用いて、縦(MD)延伸温度147℃、縦(MD)延伸倍率5倍の条件で機械方向に延伸(MD、縦延伸)を行い、幅約20cm、厚さ約200μmの一軸延伸フィルムを作製した。
次いで、(株)岩本製作所製のテーブルテンターにより、横(TD)延伸温度:153、154、155、156、157、158、159、160、162、164、165℃で、それぞれ機械方向に対して垂直方向(TD、横延伸)に延伸してフィルムを作製することとし、かつ、それぞれの横延伸時の、予熱時間:68秒、延伸速度:6600%/分、横(TD)延伸倍率:9倍の条件で横延伸温度の異なる、厚さ20μmの逐次二軸延伸フィルムを作製した。フィルムの延伸性の評価は、破断および延伸ムラがみられなかった場合をA、延伸倍率9倍まで延伸できたが、延伸ムラがみられた場合をB、チャック抜け及び破断がみられた場合をCとして評価した。結果を表2に示す。
実施例2
実施例1において、縦延伸温度を127℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして逐次二軸延伸フィルムを作製し、フィルムの延伸性の評価を行った。
実施例3
実施例1において、縦延伸温度を107℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして逐次二軸延伸フィルムを作製し、フィルムの延伸性の評価を行った。
比較例1
実施例1において、B層を構成する樹脂組成物として、オレフィン系重合体(II)100質量%を用いたこと以外は、実施例1と同様にして逐次二軸延伸フィルムを作製し、フィルムの延伸性の評価を行った。
比較例2
比較例1において、縦延伸温度を127℃に変更したこと以外は、比較例1と同様にして逐次二軸延伸フィルムを作製し、フィルムの延伸性の評価を行った。
比較例3
比較例1において、縦延伸温度を107℃に変更したこと以外は、比較例1と同様にして逐次二軸延伸フィルムを作製し、フィルムの延伸性の評価を行った。
実施例1〜3の逐次二軸延伸フィルムは、比較例1〜3の逐次二軸延伸フィルムと比較して、いずれもTD延伸の延伸可能温度域が拡がり延伸性に優れていた。
比較例4
製造例1のオレフィン系重合体(I)5質量%とオレフィン系重合体(II)95質量%とからなる樹脂組成物のドライブレンド物をB層に、オレフィン系重合体(III)をA層になるように、サーモ・プラスティックス工業製50φmmシート成形機によって250℃で共押出しながら、1000μm厚のフィルムを作製した。このとき、A層:B層:A層の厚みの比は1:10:1であった。また、このときの冷却ロールの温度は30℃であった。
得られたフィルムのシートを岩本製作所製のテーブルテンターを用いて、予熱時間:300秒、延伸速度:6600%/分、延伸温度が152、154、156、158、160、162、164℃で、それぞれ機械方向(MD)に5.8倍、およびその垂直方向(TD)に9.5倍同時に延伸して二軸延伸フィルムを作製した。フィルムの延伸性の評価は、破断および延伸ムラがみられなかった場合をA、延伸倍率9倍まで延伸できたが、延伸ムラがみられた場合をB、チャック抜け及び破断がみられた場合をCとして評価した。結果を表3に示す。
比較例5
比較例4において、B層を構成する樹脂組成物として、オレフィン系重合体(II)100質量%を用いたこと以外は、比較例4と同様にして逐次二軸延伸フィルムを作製し、フィルムの延伸性の評価を行った。
実施例4
製造例1のオレフィン系重合体(I)5質量%とオレフィン系重合体(II)95質量%とからなる樹脂組成物のドライブレンド物をB層に、オレフィン系重合体(III)をA層になるように、サーモ・プラスティックス工業(株)製50φmmシート成形機によって240℃で共押出しながら、1000μm厚のフィルムを作製した。このとき、A層:B層:A層の厚みの比は1:10:1であった。また、このときの冷却ロールの温度は30℃であった。
得られたフィルムのシートを(株)岩本製作所製の一軸延伸機を用いて、縦(MD)延伸温度127℃、縦(MD)延伸倍率5倍の条件で機械方向に延伸(MD、縦延伸)を行い、幅約20cm、厚さ約200μmの一軸延伸フィルムを作製した。
次いで、(株)岩本製作所製のテーブルテンターにより、横(TD)延伸温度156℃、横(TD)延伸倍率9倍の条件で機械方向に対して垂直方向に延伸(TD、横延伸)を行い、厚さ20μmの逐次二軸延伸フィルムを作製した。
比較例6
実施例4において、B層を構成する樹脂組成物として、オレフィン系重合体(II)100質量%を用い、横延伸温度を159℃に変更したこと以外は、実施例4と同様にして逐次二軸延伸フィルムを作製した。
比較例7
製造例1のオレフィン系重合体(I)5質量%とオレフィン系重合体(II)95質量%とからなる樹脂組成物のドライブレンド物をB層に、オレフィン系重合体(III)をA層になるように、サーモ・プラスティックス工業製50φmmシート成形機によって250℃で共押出しながら、1000μm厚のフィルムを作製した。このとき、A層:B層:A層の厚みの比は1:10:1であった。また、このときの冷却ロールの温度は30℃であった。
得られたフィルムのシートを岩本製作所製のテーブルテンターを用いて、予熱時間:300秒、延伸速度:6600%/分、延伸温度が154℃にて、それぞれ機械方向(MD)に5.8倍、およびその垂直方向(TD)に9.8倍同時に延伸して二軸延伸フィルムを作製した。
<二軸延伸フィルムの評価>
下記測定方法によって、実施例4、比較例6、及び比較例7で作製した二軸延伸フィルムの物性を評価した。
〔フィルム厚みの測定〕
フィルムの厚みは、厚み分布計(Marl社製、「MillimarC1216」)で測定した。測定範囲は、フィルムのMD方向に5cm間隔で2点、TD方向に5cm間隔で4点を測定した。得られた測定値から平均値を算出した値をフィルム厚みとした。
〔光学特性の測定〕
(i)透明性(ヘイズ)測定
JIS K7105およびJIS K7136に準拠して、日本電色工業(株)製、「ISOヘイズメーター(NDH2000)」を用いて測定した。なお、ヘイズ値が小さいほど透明性が高くなる。
ヘイズ(%)=Td/Tt×100
(式中、Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)
(ii)光沢(グロス)の測定
JIS K7105およびJIS Z8741に準拠して、日本電色工業株式会社製の光沢計「VG2000」を用いて測定した。なお、60度鏡面光沢を測定し、キャストフィルム成膜時、冷却ロール面と接している面を内側面、反対側を外側面とした。グロス値が高いほど光沢性が高くなる。
〔ヒートシール強度の測定〕
ヒートシール試験機を用いて、15mm×10mmの接着面積、90、100、110、120℃、0.2MPa、2秒の条件でヒートシールした。その後、ヒートシールされていない部分を引張試験機のチャックにつかませ、T型剥離法にてシール強度を測定することにより行った。この評価は、JIS Z−1707に準拠した方法により行い、剥離速度は200mm/分とした。
実施例4の逐次二軸延伸フィルムは、いずれの温度においてもヒートシール強度が高い結果が得られた。

Claims (13)

  1. 示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの20℃以上120℃以下の範囲の融解吸熱量(ΔHb)が、全温度範囲における融解吸熱量(ΔHa)に対して10%以上である樹脂組成物からなるA層及び、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が0J/g以上80J/g以下であるオレフィン系重合体(I)を含み、融点(Tm−D)が155℃を超える樹脂組成物を含むB層を含む、逐次二軸延伸フィルム。
  2. 前記A層を構成する樹脂組成物の融点(Tm−D)が70℃以上155℃以下である、請求項1に記載の逐次二軸延伸フィルム。
  3. 前記逐次二軸延伸フィルムの厚みが8μm以上200μm以下である、請求項1または2に記載の逐次二軸延伸フィルム。
  4. 前記オレフィン系重合体(I)が、B層を構成する樹脂組成物中に0.1質量%以上50質量%未満含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の逐次二軸延伸フィルム。
  5. 前記A層が、少なくとも一方の最外層を形成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の逐次二軸延伸フィルム。
  6. 前記B層を構成する樹脂組成物の融点(Tm−D)が155℃を超え190℃以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の逐次二軸延伸フィルム。
  7. 前記オレフィン系重合体(I)の50モル%以上がプロピレンモノマーで構成されるプロピレン系重合体(I−b)である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の逐次二軸延伸フィルム。
  8. 前記オレフィン系重合体(I)が、下記(i)及び(ii)のうち少なくとも一つを満たすプロピレン系重合体(I−b)である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の逐次二軸延伸フィルム。
    (i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、25モル%以下で含まれる。
    (ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。
  9. 前記オレフィン系重合体(I)の[mm]が20モル%以上90モル%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の逐次二軸延伸フィルム。
  10. 前記オレフィン系重合体(I)の[mmmm]が20モル%以上60モル%以下である、請求項7に記載の逐次二軸延伸フィルム。
  11. 前記オレフィン系重合体(I)が下記(2)及び(3)を満たす、請求項10に記載の逐次二軸延伸フィルム。
    (2)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
    (3)分子量分布(Mw/Mn)<4.0
  12. 前記オレフィン系重合体(I)が下記(4)及び(5)を満たす、請求項10又は11に記載の逐次二軸延伸フィルム。
    (4)[rmrm]>2.5モル%
    (5)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の逐次二軸延伸フィルムの製造方法であって、
    縦延伸時の縦延伸温度が150℃以下である、逐次二軸延伸フィルムの製造方法。
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