JP6702529B2 - フィルム、延伸フィルムの製法、及び該フィルムを用いた包装材料 - Google Patents
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Description
また、前記ポリプロピレン二軸延伸多層フィルムとして、例えば、最外層に低融点の成分を含むことでヒートシール性を付与したり、マット調やエンボス加工によるホログラム調を付与した二軸延伸多層フィルム等が知られている。
また、特許文献2には、ヒートシール性を改善するために、ポリプロピレン複合フィルムが、アイソタクチックポリプロピレン層からなる基材層の少なくとも片面上に、プロピレン含有率55〜85モル%、示差走査型熱量計の熱分析に基づく結晶融解熱量が10〜80Joule/gのプロピレン−1−ブテンランダム共重合体95〜50重量%と、アイソタクチックポリプロピレン5〜50重量%とからなるポリオレフィン組成物層が積層されていることが開示されている。
また、特許文献3には、結晶性ポリプロピレン重合体からなる二軸延伸フィルムの少なくとも片面に、A:結晶性ポリプロピレンあるいは結晶性ピロピレン−α−オレフィン(プロプレンを除く)共重合体の少なくとも1種を99〜30重量部、B:ポリエチレンを1〜70重量部、C:半減期10時間を得るための分解温度が60℃以上である有機過酸化物の少なくとも1種を(A+B)の100重量部に対して0.01〜1.0重量部のA〜Cからなる組成物を少なくとも1軸方向に延伸してなるフィルムを積層せしめてなる、半透明なポリプロピレン二軸延伸積層フィルムが開示されている。
また、特許文献4には、表面が乱反射を起こしやすく、しかも、透過光は極めて透過しやすいような艶消しフィルムとして、二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、一軸方向に配向されたフィルム状の、エチレン−プロピレンブロック共重合体を含む層が積層され、該積層エチレン−プロピレンブロック共重合体が、示唆走査熱量により測定されたスペクトルにおいて、120〜125℃と145〜162℃に、各々、第1と第2の融解ピークの頂点があり、各々のピークでの融解熱H1、H2が0.05≦H1/(H1+H2)≦0.25なる関係を満たす、艶消しフィルムが開示されている。
一方、TD延伸の破断を抑制するために、TD延伸の温度を、MD延伸の温度より高く設定すると、融点の低い層において融解が促進され、その後の冷却時に、再結晶化することで、その層の透明性が著しく低下するのみならず、多層フィルム全体の透明性も低下してしまう。
すなわち本発明は、以下の発明を提供する。
[1] 融点(Tm−D)が80℃以上、155℃以下であるA層と、融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであるオレフィン系重合体(I)を含み融点(Tm−D)が155℃を超えるB層と、を含む、フィルム。
[2] 前記オレフィン系重合体(I)が、B層に0.1質量%以上、50質量%未満含まれる、上記[1]に記載のフィルム。
[3] 前記A層が、少なくとも一方の最外層を形成する、上記[1]又は[2]に記載のフィルム。
[4] 前記B層が、融点(Tm−D)が155℃以上、190℃以下を満たすオレフィン系重合体(II)を含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のフィルム。
[5] 前記B層の融点(Tm−D)が、155℃を超え、190℃以下である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のフィルム。
[6] 前記A層が、融点(Tm−D)が80℃以上、155℃以下を満たすオレフィン系重合体(III)を含む、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のフィルム。
[7] 前記オレフィン系重合体(I)の50モル%以上がプロピレンモノマーで構成されるプロピレン系重合体(I−a)である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルム。
[8] 前記オレフィン系重合体(I)が、下記(i)、(ii)の少なくともどちらか一つを満たすプロピレン系重合体(I−b)である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のフィルム。
(i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、25モル%以下で含まれる。
(ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。
[9] 前記オレフィン系重合体(I)が下記(1)を満たす、上記[7]に記載のフィルム。
(1)[mmmm]が20〜60モル%である。
[10] 前記オレフィン系重合体(I)が下記(2)及び(3)を満たす、上記[9]に記載のフィルム。
(2)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(3)分子量分布(Mw/Mn)<4.0
[11] 前記オレフィン系重合体(I)が下記(4)及び(5)を満たす、上記[9]又は[10]に記載のフィルム。
(4)[rmrm]>2.5モル%
(5)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
[12] 延伸されたフィルムである、上記[1]〜[11]のいずれかに記載のフィルム。
[13] 二軸延伸されたフィルムである、上記[1]〜[11]のいずれかに記載のフィルム。
[14] 融点(Tm−D)が80℃以上、155℃以下であるA層と、融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであるオレフィン系重合体(I)を含み融点(Tm−D)が155℃を超えるB層とを含む、フィルムを加熱して、一軸又は二軸方向へ、同時又は逐次延伸して得る、延伸フィルムの製造方法。
[15] 上記[1]〜[13]のいずれかに記載のフィルムからなる包装材料。
本発明のフィルムは、融点(Tm−D)が80℃以上、155℃以下であるA層と、融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであるオレフィン系重合体(I)を含み融点(Tm−D)が155℃を超えるB層と、を含む。
ここで、融解吸熱量(ΔH−D)は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのピークを含むラインと熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線(ベースラインとする)とで囲まれる面積を求めることで算出される。
なお、本発明のフィルムは、前記A層、B層の以外の、その他の層を含んだ多層フィルムであってもよい。なお、本発明のフィルムの優れた光学特性を維持するために、その他の層は、後述するように、融点を有しない非晶質樹脂、又は本発明のTD延伸の温度にて、融解しない又は一部融解するも全部融解しない程度の融点を有する結晶性樹脂であることが好ましい。
前記A層が本発明のフィルムの少なくとも一方の最外層を構成していてもよいし、本発明のフィルムの両方の最外層を構成していてもよい。前記A層が本発明のフィルムの少なくとも一方の最外層を構成しているとき、もう一方の最外層が前記B層で構成されていてもよいし、後述するその他の層で構成されても良い。
また、本発明のフィルムは前記A層、B層はそれぞれ二層以上有していてもよい。
また、本発明のフィルムは、二層以上の多層フィルムであって、延伸前の多層フィルム、一軸延伸後の多層フィルム、及び二軸延伸後の多層フィルムを含む意味で用いる。
さらに、本発明のフィルムは、融点(Tm−D)が80℃以上、155℃以下であるA層と、融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであるオレフィン系重合体(I)を含み融点(Tm−D)が155℃を超えるB層とを含むことから、A層が融解しない又は一部融解するも全部融解しない低温で、MD延伸を行い、次いで、通常のTD延伸温度より低い、A層が融解しない又は一部融解するも全部融解しない低温で、所望の厚みまでTD延伸したとしても、破断が抑制される、力学特性(例えば、弾性率)に優れ、また光学特性(例えば、ヘイズ、光沢)に優れる。
したがって、最外層として、融点(Tm−D)が80℃以上、155℃以下であるA層を用いた場合、下記のような様々な用途に用いられる二軸延伸多層フィルムを得ることができる。
(i)スキン層の融解を抑制した高透明ヒートシール性の二軸延伸多層フィルム。
(ii)従来よりも低い融点や軟化点を持つ低温ヒートシール性二軸延伸多層フィルム。さらに、熱エンボス温度の低温化による高速エンボス対応のホログラム調二軸延伸多層フィルム。
(iii)ヒートシール層を厚化させた高強度ヒートシール性二軸延伸多層フィルム。さらに、エンボス加工の凹凸面が深化した高プリズムのホログラム調二軸延伸多層フィルム。
(iv)ムラの低減されたマット調二軸延伸多層フィルム。
加えて、ロール付着性の抑制による生産ライン速度の向上、及び生産フィルムの幅の広化が図られる。
ここで、本明細書では、該融点(Tm−D)は、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップの値とする。
以下、本発明に用いられる各成分、製造方法について順次説明する。
<オレフィン系重合体(I)>
本発明に用いられる、オレフィン系重合体(I)は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gである。
本発明におけるオレフィン系重合体(I)は、エチレン及び炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーを重合してなるオレフィン系重合体(I)が好ましい。
炭素数3〜28のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−イコセン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数3〜24のα−オレフィン、より好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン、更に好ましくは炭素数3〜6のα−オレフィン、特に好ましくは炭素数3〜4のα−オレフィン、最も好ましくはプロピレンである。
これらのうちの1種を単独で重合したオレフィン系重合体(I)を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて共重合して得られるオレフィン系共重合体(I−1)を使用してもよい。オレフィン系共重合体(I−1)としては、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がエチレンモノマーであるエチレン系重合体、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がプロピレンモノマーであるプロピレン系重合体(I−a)、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がブテンモノマーであるブテン系重合体などが挙げられ、透明性や延伸ムラ抑制の観点から優れた成形体物性、例えば、フィルム物性が得られる、プロピレン系重合体(I−a)がより好ましい。
プロピレン系重合体(I−a)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、又はプロピレン−α−オレフィングラフト共重合体等から選択されるプロピレン系重合体(I−a)であることが好ましく、特にプロピレン単独重合体が好ましい。
すなわち、プロピレン系重合体(I−b)は、炭素数が2のオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が2のオレフィン(すなわち、エチレンモノマー)の構成単位が、好ましくは0モル%を超え、25モル%以下、より好ましくは0モル%を超え、23モル%以下、さらに好ましくは0モル%を超え、20モル%以下、より更に好ましくは0モル%を超え、18モル%以下である。また、炭素数が3のオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が3のオレフィン(すなわち、プロピレンモノマー)の構成単位が、好ましくは50モル%以上、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは75モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上である。また、炭素数が4以上のαオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が4以上のαオレフィン含有量が、好ましくは0モル%を超え、30モル%以下、より好ましくは0モル%を超え、27モル%以下、更に好ましくは0モル%を超え、20モル%以下である。
また、本発明の二軸延伸多層フィルムにおいて、B層の主成分であるオレフィン系重合体(II)が後述するプロピレン系重合体(II−1)である場合、主成分のプロピレン系重合体(II−1)との相溶性の観点などから、本発明のオレフィン系重合体(I)は、最も好ましくはプロピレン単独重合体である。なお、上記の重合体は、石油・石炭由来のモノマーを用いた重合体でもよいし、バイオマス由来のモノマーを用いた重合体でもよい。
特に、本発明のフィルムの低温延伸性、光学特性を大幅に改善される観点から、B層における非晶成分の割合を増大させるためには、B層を構成する組成物に対して、オレフィン系重合体(I)の含有量が、0.1質量%以上、50質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、20質量%未満、更に好ましくは0.5質量%以上、15質量%未満、より更に好ましくは1質量%以上、10質量%未満である。
また、特に、前記オレフィン系重合体(II)がプロピレン系重合体(II−1)であって、かつ、オレフィン系重合体(I)がプロピレン系重合体(I−a)又はプロピレン系重合体(I−b)である場合は、プロピレン系重合体(II−1)に対するプロピレン系重合体(I−a)又はプロピレン系重合体(I−b)の相溶性もより良好となり、より優れた透明性並びに延伸性を有する成形体を得ることができる。
オレフィン系重合体(I)、プロピレン系重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)の融解吸熱量(ΔH−D)は、0〜80J/gである。オレフィン系重合体(I)、プロピレン系重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)の融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gの場合、本発明の二軸延伸多層フィルムのB層の主成分であるオレフィン系重合体(II)(特に、オレフィン系重合体(II)がプロピレン系重合体(II−1)である場合)に対して、結晶化度を低減させる。それにより、ラメラ−ラメラ間のタイ分子数が低減する。延伸時にタイ分子数が少ないと初期の高次構造が均一に変形するため、結果として、均一延伸性が向上する。このような観点から、融解吸熱量(ΔH−D)は、好ましくは10〜70J/g、より好ましくは20〜60J/g、更に好ましくは30〜50J/gである。
なお、上述したように、前記融解吸熱量(ΔH−D)は、融解吸熱量(ΔH−D):示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのピークを含むラインと熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線(ベースラインとする)とで囲まれる面積を求めることで算出される。
(1)[mmmm]が20〜60モル%である。
(2)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(3)分子量分布(Mw/Mn)<4.0
(4)[rmrm]>2.5モル%
(5)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
メソペンタッド分率[mmmm]は、オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体の立体規則性を表す指標であり、メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。
オレフィン系重合体(I)がプロピレン単独重合体である場合、そのメソペンタッド分率[mmmm]は、プロピレン系重合体の取り扱い性及びオレフィン系重合体(II)へ少量添加した際の延伸性の改良効果の観点から、好ましくは20〜60モル%、より好ましくは30〜55モル%、更に好ましくは40〜50モル%である。メソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上であると、本発明のフィルムのB層の主成分であるオレフィン系重合体(II)の剛性を低下させず、延伸性を改良することができ、60モル%以下であると、主成分であるオレフィン系重合体(II)と共晶化せず、主成分であるオレフィン系重合体(II)の非晶部分に相溶することで延伸性を改良できる。
[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、メソペンタッド分率[mmmm]及びラセミペンタッド分率[rrrr]から求められ、ポリプロピレンの規則性分布の均一さを示す指標である。[rrrr]/(1−[mmmm])のこの値が大きくなると既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高立体規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、成形後のポリプロピレン延伸フィルムのべたつきの原因となる。なお、上記における[rrrr]及び[mmmm]の単位は、モル%である。
オレフィン系重合体(I)及びプロピレン系重合体(I−a)、プロピレン系重合体(I−b)における[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、べたつきの観点から、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.001〜0.05、更に好ましくは0.001〜0.04、特に好ましくは0.01〜0.04である。
オレフィン系重合体(I)、プロピレン系重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)の分子量分布(Mw/Mn)は、高強度の観点から、好ましくは4.0未満である。分子量分布(Mw/Mn)が4.0未満であれば、延伸性や成形体物性、例えば、フィルム物性(たとえば、力学特性、光学特性)に悪影響を及ぼす低分子量成分が抑制され、後述する本発明の成形体物性、特に、延伸フィルムのフィルム物性の低下が抑制される。このような観点から、オレフィン系重合体(I)、プロピレン系重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.5以下、より好ましくは1.5〜2.5である。
本発明において、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnより算出した値である。
ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、ポリプロピレンの立体規則性のランダム性を表す指標であり、値が大きいほどポリプロピレンのランダム性が増加する。
オレフィン系重合体(I)、プロピレン系重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)のラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、好ましくは2.5モル%を超える。オレフィン系重合体(I)、プロピレン系重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)の[rmrm]が2.5モル%を超えることにより、ランダム性が増し、本発明の二軸延伸多層フィルムのB層の主成分であるオレフィン系重合体(II)(特に、オレフィン系重合体(II)がプロピレン系重合体(II−1)である場合)と共晶化し難くなり、その結果、ポリオレフィン系組成物の耐熱性や剛性の低下が抑制される。このような観点から、オレフィン系重合体(II)及びプロピレン系重合体(II−1)のラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、より好ましくは2.6モル%以上、更に好ましくは2.7モル%以上である。その上限は、通常、好ましくは10モル%程度であり、より好ましくは7モル%、更に好ましくは5モル%、特に好ましくは4モル%である。
トリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]から算出される[mm]×[rr]/[mr]2の値は、重合体のランダム性の指標を表し、1に近いほどランダム性が高くなり、本発明の本発明の二軸延伸多層フィルムのB層の主成分であるオレフィン系重合体(II)(特に、オレフィン系重合体(II)がプロピレン系重合体(II−1)である場合)に対してと共晶化が起こらず、主成分であるオレフィン系重合体(II)(特に、プロピレン系重合体(II−1))に対して効率的に延伸性を改良することができる。本発明における、オレフィン系重合体(I)、プロピレン系重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)は、上式の値が通常2以下、好ましくは1.8〜0.5、さらに好ましくは1.5〜0.5の範囲である。なお、上記における[mm]及び[rr]の単位は、モル%である。
また、オレフィン系重合体(I)、プロピレン系重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)の重量平均分子量(Mw)は、強度の観点から10,000以上、500,000以下が好ましい。
上記オレフィン系重合体(I)、プロピレン系重合体(I−a)及びプロピレン系重合体(I−b)において重量平均分子量が10,000以上、500,000以下であるとフィルム強度に優れる。この重量平均分子量は、好ましくは30,000以上、400,000以下であり、より好ましくは50,000以上、300,000以下である。
本発明において、重量分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
具体的に例示すれば、
(i)一般式(I)
で表される遷移金属化合物、及び(ii)(ii−1)該(i)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(ii−2)アルミノキサンから選ばれる成分を含有する重合用触媒が挙げられる。
本発明に用いられるオレフィン系重合体(II)は、上述した通り、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が155℃以上、190℃以下であることが好ましい。
なお、該融点(Tm−D)は後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
炭素数3〜28のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−イコセン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数3〜24のα−オレフィン、より好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン、更に好ましくは炭素数3〜6のα−オレフィン、特に好ましくは炭素数3〜4のα−オレフィン、最も好ましくはプロピレンである。
これらのうちの1種を単独で重合したオレフィン系重合体を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて共重合して得られるオレフィン系共重合体を使用してもよい。なお、本明細書中において、単に「オレフィン系重合体」という場合には、オレフィン系共重合体も含まれる。オレフィン系共重合体としては、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がエチレンモノマーであるエチレン系重合体、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がプロピレンモノマーであるプロピレン系重合体(II−1)、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がブテンモノマーであるブテン系重合体などが挙げられ、剛性や透明性の観点から優れた成形体物性、例えば、フィルム物性が得られる、プロピレン系重合体(II−1)がより好ましい。さらに、プロピレン系重合体(II−1)は、剛性や透明性向上の観点から、後述するメソペンタッド分率[mmmm]が、好ましくは70〜99モル%、より好ましくは80〜98.5モル%、更に好ましくは85〜98モル%、より更に好ましくは87〜97.5モル%であり、より更に好ましくは88〜97.5モル%であり、より更に好ましくは89〜97.5モル%である。
プロピレン系重合体(II−1)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、又はプロピレン−α−オレフィングラフト共重合体等から選択されるプロピレン系重合体(II−1)であることが好ましい。
更に、成形体物性、例えば、延伸フィルムの物性(たとえば、力学物性、光学物性)の観点から、本発明のオレフィン系重合体(II)は、特に好ましくはプロピレン−エチレンランダム共重合体もしくは、プロピレン単独重合体である。なお、上記の重合体は、石油・石炭由来のモノマーを用いた重合体でもよいし、バイオマス由来のモノマーを用いた重合体でもよい。
本発明のフィルムは、フィルムに様々な機能性を付与する観点から、A層に含まれるオレフィン系重合体(III)の融点(Tm−D)は、80℃以上、155℃以下を満たす。上記範囲の融点を有するオレフィン系重合体を用いればA層は、例えば、熱で融解させて他に接着するヒートシール層として用いることができる。
オレフィン系重合体(III)としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの材料を使用することができる。
本発明のフィルムは、上述のA、B層以外のその他の層を有してもよい。その他の層は、本発明のフィルムの優れた光学特性を維持するために、融点を有しない非晶質樹脂、又は本発明のTD延伸の温度にて、融解しない又は一部融解するも全部融解しない程度の融点を有する結晶性樹脂であることが好ましい。
その他の層として、例えば、ガスバリア層や剛性層、接着層として使われるEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)、ポリビニルアルコール、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)、EMA(エチレン−アクリル酸メチル共重合体)、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレン、その他変性ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、PVAc(ポリ塩化ビニル)、ポリエーテル、ポリケトン、ポリカーボネート、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)が挙げられる。
本発明のフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じてさらに、A層、B層またはその他の層の少なくともいずれか一方に、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、核剤、ブロッキング防止剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤、エラストマーなどを配合することができる。
帯電防止剤としては、一般的に用いられる公知の低分子型又は高分子型帯電防止剤を好適に用いることができる。
低分子型帯電防止剤としては、例えば、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン型帯電防止剤、テトラアルキルアンモニウム塩型のカチオン型帯電防止剤、アルキルスルホン酸塩等のアニオン型帯電防止剤、アルキルベタイン等の両性型帯電防止剤等の帯電防止剤等を挙げることができる。
高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエーテルエステルアミド等の非イオン型帯電防止剤、ポリスチレンスルホン酸等のアニオン型帯電防止剤、第四級アンモニウム塩含有重合体等のカチオン型帯電防止剤等を挙げることができる。
帯電防止剤は、前記フィルムの各層の全量100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で配合することが好ましい。
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれら飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることができる。これらの内でも、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。スリップ剤は、前記フィルムの各層の全量100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で配合することが好ましい。
ブロッキング防止剤としては、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状もしくは液状のシリコン樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、架橋されたアクリル樹脂やメタクリル樹脂粉末のような微粉末状架橋樹脂を挙げることができる。これらの内では、微粉末シリカおよび微粉末状架橋樹脂が好ましい。ブロッキング防止剤は、前記フィルムの各層の全量100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で配合することが好ましい。
エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、エステル系、軟質塩ビ系、ウレタン系、アミド系、ブタジエン・イソプレン系のエラストマー、あるいはこれらを数種類組み合わせたエラストマーを用いることができる。これらの中でもスチレン系、オレフィン系、ブタジエン・イソプレン系が好ましい。エラストマーは、前記フィルムの各層の全量100質量%に対して、1〜20質量%の範囲で配合することが好ましい。
本発明のフィルムは、上述したA、B層を有する、フィルムである。
A層が、最外層におけるヒートシール層である場合、上述したA層に含まれるオレフィン系重合体(III)がプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン三元ランダム共重合体、またはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であることがより好ましい。
本発明のフィルムの厚みは特に制限がないが、1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、そして、5000μm以下、3000μm以下、1000μm以下、400μm以下、250μm以下、80μm以下の順で好ましい。
なお、場合によって、本発明のフィルムの厚みが250μmを超える場合は、該フィルムを「シート」ともいうことがある。
本発明の延伸フィルムの製造方法は、上述したA層、B層を有する、二層以上からなるフィルムを再加熱して、二軸方向へ、同時又は逐次延伸して延伸フィルムを得る製造方法である。
ここでは、本発明のフィルムについて、上述したA層、B層を含むフィルムを例に取って、一般的な製法を以下に説明する。なお、本発明では、以下の製法に限るものではない。
B層を構成するポリオレフィン系組成物は、オレフィン系重合体(I)とオレフィン系重合体(II)、また、必要に応じて添加剤を加えて、例えば、高速ミキサー、バンバリーミキサー、連続ニーダー、一軸又は二軸押出機、ロール、ブラベンダープラストグラフ等の通常の混合混練機を使用して、一般には加熱溶融混練して造粒する方法が採用される。
B層を構成するポリオレフィン系組成物は押し出し成形用に好ましく用いられる。また、上記オレフィン系重合体(I)とオレフィン系重合体(II)を押し出し成形直前に、例えば、押出機上のホッパー内に同時に投入して(ドライブレンド)用いてもよい。
一方、A層を構成するポリオレフィン系組成物も、オレフィン系重合体(III)また、必要に応じて添加剤を加えて、上記同様に、造粒されるかドライブレンドが用いられる。
次いで、得られたA、B層を構成する、それぞれのポリオレフィン系組成物を溶融共押出ししてT型のダイスからカーテン状に垂らし、直後にこの溶融膜を冷却ロールによって固化させ一次フィルムを得る。続いて、後続の延伸装置により延伸を行う。なお、上記溶融押出時の好ましい樹脂温度は、180〜300℃、より好ましくは200〜280℃である。また、冷却ロール温度は、好ましくは、0〜120℃、より好ましくは10〜100℃である。
押出により得られた一次フィルムを更に一軸延伸又は二軸延伸等により延伸して、延伸成形された延伸フィルムを得ることもできる。延伸方法としては、押出た一次フィルムを連続してロール延伸とテンター方式による逐次二軸延伸やテンター方式による同時二軸延伸を行う方法、又はインフレーション方式による同時二軸延伸を行う方法が挙げられる。また、バッチ式の二軸延伸装置を使用してもよい。延伸倍率は延伸フィルムの用途に応じて適宜決定することができるが、機械方向(MD)及び/又は機械方向に対して垂直方向(TD)について、それぞれ2〜12倍に一軸延伸又は二軸延伸することが好ましい。
テンター方式による逐次二軸延伸では、まず、上記一次フィルムを延伸に適した温度(縦(MD)延伸温度;好ましくは、70〜155℃、より好ましくは80〜150℃)に再加熱して、遅ロール(前ロール)と速ロール(後ロール)との間で機械方向(MD)に延伸する。次いで、テンター部にて、MD方向に延伸したフィルムの両端を保持したまま、更に加熱(横(TD)延伸温度;好ましくは、120〜175℃、より好ましくは130〜170℃)し、機械方向に対して垂直方向(TD)に延伸する。最後に、延伸処理後のフィルムを熱処理(熱固定温度;好ましくは、100〜175℃、より好ましくは110〜170℃)することで延伸フィルム物性を安定化させて、巻き取り機によって巻き上げて、目的の延伸フィルムを得ることができる。得られた延伸フィルムは、さらに、スリッター等の機械で適切な巾や長さに調整して、目的に応じた形状にしてもよい。また、上記に示したような機械方向(MD)及び垂直方向(TD)の延伸を同時に行う二軸同時テンター式延伸方式を用いても、本発明の延伸フィルムを得ることが可能である。
なお、得られる延伸フィルムの透明性をより向上させる観点からは、上記MD延伸温度及びTD延伸温度は、好ましい条件の中でも、低い温度条件であることが好ましい。
一方、前記プロピレン系重合体(I−a)(特に、上記融解吸熱量(ΔH−D)を有しかつ前述した特性を有するプロピレン単独重合体)は均一な組成、狭分子量分布であるため室温でもペレットとして扱える。したがって、前記オレフィン系重合体(II)に、前記プロピレン系重合体(I−a)をドライブレンドしてもフィルムの成形が可能である。
本発明のフィルムは、包装材料に好適に用いられる。本発明のフィルムは、特に限定されるものではないが、例えば食品用途や工業用途などの包装材料、例えば、生鮮食品、加工食品、調理済み製品、レトルト食品、菓子、又は飲料などを直接又は間接的に(例えば、菓子箱)包装及び梱包する場合に使用できる材料、タバコケース、医薬品、コンデンサーやキャパシターなどの電気部品、繊維、文具、雑貨、プラスチック部品、金属部品、などの包装及び梱包に使用できる材料、又はコンデンサーやキャパシターなどの電気部品自体、繊維、文具、プラスチック部品、種々の再利用可能な容器、実験器具、スピーカーコーン、自動車部品、又は紙幣など幅広い用途に使用することができる。使用方法は、そのままのフィルムで使用してもよいし、他のフィルムと積層させて用いてもよいし、金属蒸着させて使用してもよい。
また、保護フィルム、合成紙、ラベル、シール基材としても用いることができ、フィルム法合成紙、ファイバー法合成紙、フィルムラミネート法合成紙に用いることができる。
〔DSC測定〕
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから融解吸熱量(ΔH−D)として求めた。また、得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップから融点(Tm−D)を求めた。
なお、融解吸熱量(ΔH−D)は、熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線をベースラインとして、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用いた、DSC測定により得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と当該ベースラインとで囲まれる面積を求めることで算出される。
ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。測定には、下記の装置および条件を使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量を得た。分子量分布(Mw/Mn)は、これらの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
<GPC測定装置>
カラム :東ソー(株)製「TOSO GMHHR−H(S)HT」
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出 ウォーターズ・コーポレーション製「WATERS 150C」
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
以下に示す装置および条件で、13C−NMRスペクトルの測定を行った。なお、ピークの帰属は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案された方法に従った。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
M=m/S×100
R=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
オレフィン系重合体(II)として、「F−300SP」(プライムポリマー社製PP樹脂、融点(Tm−D):163℃、引張弾性率:1700MPa、立体規則性[mmmm]:90%、融解熱量(ΔH−D):86J/g)を用いた。
オレフィン系重合体(III)として、「F−744NP」(プライムポリマー社製ランダムPP樹脂、融点:130℃)を用いた。
攪拌機付きの内容積20Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを20L/hr、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、並びに(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、トリイソブチルアルミニウム及びプロピレンを質量比1:2:20で、事前に接触させて得られた触媒成分を、ジルコニウム換算で6μmol/hrで連続供給した。
反応器内の全圧を1.0MPa・Gに保つようプロピレンと水素とを連続供給し、重合温度を適宜調整し所望の分子量を有する重合溶液を得た。
得られた重合溶液に、酸化防止剤をその含有割合が1000質量ppmになるように添加し、次いで溶媒であるn−ヘプタンを除去することにより、オレフィン系重合体(I)を得た。
下記測定方法によって、後述する各実施例及び比較例で作製した二軸延伸多層フィルムの物性を評価した。
作製した二軸延伸フィルムのMD方向及びTD方向のそれぞれから採取した200mm×15mmの短冊状の試験片を用い引張試験機((株)島津製作所製、「オートグラフAG−I」)で引張速度300mm/minで引張り、引張弾性率、破断強度、破断伸度を求めた。
各試験とも、MD方向で5回、TD方向で5回ずつ測定して、その平均値を測定値とした。なお、ここでMD方向の試験片とは、上記短冊状試験片の長手方向が二軸延伸フィルムのMD方向である試験片のことをいう。TD方向についても、同様である。
(i)引張弾性率
200mm×15mmの短冊状の試験片を用いて、引張試験機でチャック間距離150mm、引張速度300mm/minで引張り、伸度(ひずみ)を横軸とし、応力を縦軸とした二次元座標軸上に関係線(曲線)を引き、降伏点前の関係線の傾きを「引張弾性率」として求めた。引張弾性率は値が高いほど、フィルムの剛性が優れる。
(ii)破断強度
上記二次元座標軸上に関係線(曲線)において、試験片が破断する前に試験片に表れる最大の引張応力を『破断強度』として、求めた。
(iii)破断伸度
破断伸度(%)=100×(L−L0)/L0
(式中、L0:試験前の試験片の長さ、L:破断時の試験片の長さ)
(i)透明性(ヘイズ)測定
JIS K7105およびJIS K7136に準拠して測定した。ヘイズは全光線透過光量に対する散乱角4°以上の散乱光量の比率を示すものであり、目視ではフィルムの曇り感に対応する。なお、ヘイズ値が小さいほど透明性が高くなる。
ヘイズ(%)=Td/Tt×100
(式中、Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)
(ii)光沢(グロス)の測定
JIS K7105およびJIS Z8741に準拠して測定した。なお、60度鏡面光沢を測定した。また、グロス値が高いほど光沢性が高くなる。
製造例1のオレフィン系重合体(I)5質量%とオレフィン系重合体(II)(PP、プライムポリマー(株)製、F−300SP、融点:160℃、引張弾性率:1700MPa、立体規則性[mmmm]:90%、融解熱量(ΔH−D):86J/g)95質量%とからなる樹脂組成物のドライブレンド物をB層に、オレフィン系重合体(III)(ランダムPP、プライムポリマー(株)製、F−744NP、融点:130℃)をA層になるように、サーモ・プラスティックス工業製50φmmシート成形機によって250℃で共押出しながら、1000μm厚のフィルムを作製した。このとき、A層:B層:A層の厚みの比は1:18:1であった。また、このときの冷却ロールの温度は50℃であった。
得られたフィルムのシートを岩本製作所製のテーブルテンターを用いて、予熱時間:300秒、延伸速度:6500%/分、延伸温度が154℃にて、それぞれ機械方向(MD)に5.8倍、およびその垂直方向(TD)に9.5倍同時に延伸して二軸延伸フィルムを作製した。
その際の延伸降伏応力は、当該シートをチャックで挟んで延伸倍率を変化させた時に検出されるMD方向の応力を、テーブルテンターに付属の検出器にて検出した。横軸をMD延伸倍率として、検出された応力を縦軸とした二次元座標軸上に関係線(曲線)を引き、関係線の最初の変曲点(低延伸倍率から高延伸倍率に延伸倍率を変化させた際に現れる最初の変曲点)の最大値を延伸降伏応力として求めた。延伸降伏応力は値が小さいほど、均一延伸が可能となり、延伸性に優れる。
製膜された二軸延伸フィルムサンプルについて、フィルム物性値として引張弾性率、破断強度、破断伸度、ヘイズ、グロスを評価した。延伸可能下限温度、延伸降伏応力およびフィルム物性について表2に示す。
延伸可能下限温度とは、上記テーブルテンターで延伸した際の破断回数が5回中0回であった延伸温度である。
実施例1の樹脂の替わりにB層の樹脂をプライムポリマー(株)製のF−300SP(融点:163℃、引張弾性率:1700MPa、立体規則性[mmmm]:90%、融解熱量(ΔH−D):86J/g)のみを用いて、延伸温度を162℃とした以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムを成形したフィルムサンプルについて、延伸性の指標として延伸降伏応力を、フィルム物性値として引張弾性率、破断強度、破断伸度、ヘイズ、グロスを評価した。結果を表2に示す。
実施例1の樹脂の替わりにB層の樹脂をプライムポリマー(株)製のF−300SP(融点:163℃、引張弾性率:1700MPa、立体規則性[mmmm]:90%、融解熱量(ΔH−D):86J/g)のみを用いて、延伸温度を156℃とした以外は実施例1と同様の方法で延伸フィルムを成形したフィルムサンプルについて、延伸性の指標として延伸降伏応力を、フィルム物性値として引張弾性率、破断強度、破断伸度、ヘイズ、グロスを評価した。結果を表2に示す。
Claims (15)
- 融点(Tm−D)が80℃以上、155℃以下であるA層と、
融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであるオレフィン系重合体(I)を含み融点(Tm−D)が155℃を超えるB層と、を含み、
前記オレフィン系重合体(I)が、B層に1質量%以上、10質量%未満含まれる、フィルム。 - 前記オレフィン系重合体(I)の融解吸熱量(ΔH−D)が30〜50J/gである、請求項1に記載のフィルム。
- 前記A層が、少なくとも一方の最外層を形成する、請求項1又は2に記載のフィルム。
- 前記B層が、融点(Tm−D)が155℃以上、190℃以下を満たすオレフィン系重合体(II)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム。
- 前記B層の融点(Tm−D)が、155℃を超え、190℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム。
- 前記A層が、融点(Tm−D)が80℃以上、155℃以下を満たすオレフィン系重合体(III)を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム。
- 前記オレフィン系重合体(I)の50モル%以上がプロピレンモノマーで構成されるプロピレン系重合体(I−a)である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム。
- 前記オレフィン系重合体(I)が、下記(i)、(ii)の少なくともどちらか一つを満たすプロピレン系重合体(I−b)である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルム。
(i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、25モル%以下で含まれる。
(ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。 - 前記オレフィン系重合体(I)が下記(1)を満たす、請求項7に記載のフィルム。
(1)[mmmm]が20〜60モル%である。 - 前記オレフィン系重合体(I)が下記(2)及び(3)を満たす、請求項9に記載のフィルム。
(2)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(3)分子量分布(Mw/Mn)<4.0 - 前記オレフィン系重合体(I)が下記(4)及び(5)を満たす、請求項9又は10に記載のフィルム。
(4)[rmrm]>2.5モル%
(5)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0 - 延伸されたフィルムである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のフィルム。
- 二軸延伸されたフィルムである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のフィルム。
- 融点(Tm−D)が80℃以上、155℃以下であるA層と、融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであるオレフィン系重合体(I)を含み融点(Tm−D)が155℃を超えるB層とを含み、前記オレフィン系重合体(I)が、B層に1質量%以上、10質量%未満含まれるフィルムを加熱して、一軸又は二軸方向へ、同時又は逐次延伸して得る、延伸フィルムの製造方法。
- 請求項1〜13のいずれか1項に記載のフィルムからなる包装材料。
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