以下、添付図面を参照しつつ、本発明における調理器の好ましい実施形態を説明する。
図1および図2は、本実施形態における自動製パン機能を有する調理器の全体縦断面図である。
これらの各図において、1は箱状の本体で、この本体1の上面前部には操作部2が設けられる。操作部2には、各種の操作キーを含む操作体3と、LEDや液晶パネルなどの表示体4が、それぞれ設けられている。
本体1は、有底筒状に形成された外装体としての外郭部材5の内部に、同じく有底筒状に形成された焼成室としての収容室6を設けて構成される。収容室6は上面が開口しており、ここから容器であるパンケース7が入れられる。パンケース7は金属製で、本体1に対して着脱可能に備えられ、収容室6と同様に、上面が開口した有底筒状に形成される。収容室6の内部には、収容室6に収容されたパンケース7を包囲するように加熱手段8が配置される。加熱手段8は例えばシーズヒータにより構成され、パンケース7の側部に臨んで一乃至複数本配設される。
本体1の内部には、収容室6の中心にあたる箇所に、パンケース支持部9が固定されている。パンケース支持部9は下方に落ち込んだ凹状をなし、その内部は収容室6の内部に露出している。パンケース支持部9は、パンケース7の底面に固定された筒状の台座(図示せず)受け入れて、パンケース7を支えるものであり、パンケース7の台座はパンケース支持部9に嵌り込む構成となっている。パンケース支持部9の中心には、回転自在なステンレス製の羽根軸12が垂直に支持されている。羽根軸12の下端はパンケース支持部9の下面から突き出ており、ここにプーリやベルトで構成される回転伝達機構13が連結される。
図3や図4にも示すように、パンケース7の底部中心には、前述した羽根軸12の上端が、シール対策を施した上で垂直に支持されている。円筒状をなす羽根軸12の上端には、混練具としてのパン羽根14を羽根軸12に対して着脱可能に設けるために、断面を非円形でD形状に形成した装着部15が設けられる。パン羽根14は羽根軸12とは異なる材質のアルミニウム製で、板状の羽根部16と、装着部15に取付けまたは取外し可能なキャップ状の嵌合部17とを有しており、この嵌合部17に開口形成したD形状の孔18に、前記羽根軸12の装着部15を差し込むことで、羽根軸12に対して決められた方向に羽根部16が向くようにパン羽根14が嵌合される。また、この嵌合時にパン羽根14が擦れたとしても、パン羽根14からの小片は、段差を付けた装着部15に留まり、パンケース7内のパン生地に付着しにくくなる。
羽根軸12の上端に位置する装着部15は、パンケース7の内底面中心より上方に突き出しており、パンケース7の上面開口から手を差し入れることで、パン羽根14を容易に取付けまたは取外しすることができる。そして、パン羽根14を羽根軸12に取付けた状態で羽根軸12が回転すると、パンケース7の内部で羽根軸12を中心として羽根部16が旋回するようになっている。
前記本体1の下部には、羽根軸12の駆動源となるモータ21が取付け固定される。モータ21の下面からは、回転する出力軸22が突出しており、この出力軸22に前述の回転伝達機構13が連結される。したがって、これらのモータ21,回転伝達機構13,羽根軸12,パン羽根14は、パンケース7内に入れられたパン原料をパン生地に練り上げる混練手段23として設けられている。
本体1の内部には、収容室6の外面に取り付けられたヒューズ25や、2つの送風器、即ち冷却ファン26,27がそれぞれ設けられる。ヒューズ25は、加熱手段8の短絡時に収容室6内の温度が異常に上昇したときに溶断して、調理器各部への通電を遮断する安全装置として設けられている。また、一方の冷却ファン26は、後述する蓋31に風を送り出すもので、前記操作部2の直下に設けられている。さらに、他方の冷却ファン27は、パンケース7を収容した収容室6内に風を送り出すもので、収容室6の外側面に取付け固定されている。冷却ファン26,27自体の構成は周知のように、モータにより回転するファンと、そのファンを取り囲んで風洞を形成するケーシングとにより構成され、当該ケーシングには空気の取入口と排出口がそれぞれ設けられる。また、冷却ファン27からの風を、収容室6内に送り込んで循環させるために、収容室6の側面には孔65が設けられる。
その他、収容室6の外側面には、収容室6内ひいてはパンケース7内の被調理物の温度を検出する第1温度検出手段としての温度センサ28と、調理器周辺の外気温を検出する第2温度検出手段としての温度センサ29がそれぞれ設けられる。なお、これらの冷却ファン26,27や温度センサ28,29は、同様の目的が達せられれば、図1や図2に示す以外の位置に装着しても構わない。また、操作体3からの各種操作信号や、温度センサ28,29からの検出温度に応じて、加熱手段8の加熱量や、冷却ファン26,27からの送風量や、モータ21などの動作を制御する制御手段として、例えばマイコンなどの制御部30が設けられる。
図5〜図9にも示すように、前記操作部2から後ろの本体1上面は、蓋31で覆われる。蓋31は、軸32で本体1の背面側に取付けられており、その軸32を支点として、本体1上面の開口部を開閉自在に回動する構成となっている。
蓋31は、軸32を介して本体1に取付けられる本体蓋34と、この本体蓋34の上面を覆う上蓋35とを組み合わせて構成される。上蓋35は、ヒンジ体36で本体蓋34の背面側に取付けられており、このヒンジ体36を支点として、本体蓋34上面の開口部を開閉自在に回動する構成となっている。また、上蓋35の前側には、本体蓋34に係脱可能な上蓋開閉レバー37が手動操作可能に配設される。そして、上蓋開閉レバー37を押すと、本体蓋34と上蓋35との係合が外れ、この状態から上蓋35の手前側を持ち上げることで、本体蓋34に対して上蓋35を開けることが可能になる。図8は、上蓋35を開けた状態を示している。
また、本体蓋34の前方両側面には、外方に突出した開閉つまみ38が設けられており、上蓋35を本体蓋34に係合させた状態で、開閉つまみ38を持つことにより、本体蓋34と上蓋35を含む蓋31全体を開閉できるようになっている。図9は、蓋31全体を開けた状態を示している。
蓋31には、調理中にイーストや小麦粉などの粉体をパンケース7内に投入する投入ケース41が設けられる。投入ケース41は、パンケース7の直上に位置して本体蓋34に設けた中空状のケース取付け部42に装着され、上蓋35を開けた状態で、本体蓋34の上面側から着脱できる構造となっている。また、上蓋35を閉めたときに、本体蓋34に装着された投入ケース41の開口上面側から、投入ケース41内の粉体を視認できるように、投入ケース41の上面に対向して、上蓋35には板状の透明部材であるガラス窓44が配設される。ガラス窓44は、その周縁にゴムなどの弾性体からなるパッキン45を介在させて、上蓋35に密着固定される。
図10にも示すように、本体蓋34は、本体蓋34の骨格をなす投入ケースベース47と、投入ケースベース47の下側に取付け固定され、蓋31を閉じたときに収容室6の上面に臨む内蓋48と、投入ケースベース47の上面を覆う蒸気口カバー49とにより、その外郭を構成している。また、本体蓋34の内部後方には、後述する蒸気通路50を形成する筒状の蒸気口ユニット51が配設される。蒸気口ユニット51の一端は、ゴムなどの弾性体からなるパッキン52を介して投入ケースベース47の蒸気取入孔53に取付け固定され、蒸気口ユニット51の他端は、蒸気口カバー49に設けた蒸気口54に臨んで設けられる。また、投入ケースベース47の蒸気取入孔53は、内蓋48の後方に形成した開口部55と連通する。前述したように、本体蓋34の略中央には開口したケース取付け部42が設けられるが、投入ケース41と本体蓋34との隙間から、本体蓋34の内部に蒸気が侵入しないように、ケース取付け部42の側壁には投入ケース41に密着する別なパッキン56が配設される。
図11にも示すように、上蓋35は、上蓋35の骨格をなす上蓋ベース58と、上蓋ベース58の上面を覆う上蓋カバー59とにより、その外郭を構成している。ここで、調理器の外面を形成する上蓋カバー59は、上蓋ベース58よりも耐熱性の劣る樹脂材料で形成されるため、投入ケース41に対向するガラス窓44の温度上昇が、上蓋ベース58に及ばないようにするために、ガラス窓44はその周縁をパッキン45で保持した状態で、空間60を隔てて配置された上蓋ベース58と上蓋カバー59との間に挟持される。
また、上蓋35の境界部分近傍に位置するガラス窓44の上面周縁には、蓋31内部の内容物を目隠しするための印刷部61が印刷形成される。印刷部61は平坦なガラス窓44の表面に若干の凸部を形成するが、ここで注目すべきは、印刷部61をガラス窓44の下面にではなく、上面に設けるということである。つまり、印刷部61を投入ケース41に対向するガラス窓44の下面に形成すると、そのガラス窓44の下面に固着した粉体と共に、印刷部61を剥す虞がある。この点、ガラス窓44の上面は投入ケース41からの粉体が固着しにくく、そこにだけ印刷部61を設けていれば、印刷部61を剥す虞を自ずと回避できる。
次に、図12に示す投入ケース41の構成を説明する。投入ケース41は、上面および下面を開口したケース本体71と、ケース本体71の下面開口を塞ぐ開閉板72とにより構成される。投入ケース41の底壁をなす開閉板72は、第1下蓋73と第2下蓋74を並設した二重板構造となっており、第1下蓋73と第2下蓋74との間には、前記冷却ファン26からの風を通過させる空気層としての冷却風路75が形成される。また、第1下蓋73と第2下蓋74の一側は、ヒンジ軸76でケース本体71の一側下部に取付けられており、そのヒンジ軸76を支点中心として、ケース本体71の下面開口を開閉自在に回動できる構成となっている。ここでは、第1下蓋73と第2下蓋74のヒンジ軸76を共用にすることで、部品点数を削減してコストの低減を図っている。
本実施形態では、加熱手段8への通電に伴い収容室6ひいては蓋31が温度上昇したときの熱影響を避けるために、本体1の上面開口を覆う蓋31にではなく、本体1に冷却ファン26を設けている。そして、図7や図9にも示すように、冷却ファン26からの風を冷却風路75へ導くために、冷却ファン26の排出口に繋がる風路開口78を、本体1の上部に配設すると共に、この風路開口78に臨んで内蓋48の側面に導風口79を設け、投入ケースベース47と内蓋48との間の空間を利用して、導風口79と本体蓋34のケース取付け部42に装着される投入ケース41の冷却風路75とを連通させている。また、冷却風路75は前記投入ケースベース47の蒸気取入孔53を介して蒸気通路50に連通しており、これにより冷却ファン26からの風を風路開口78から導風口79に取り入れて冷却風路75に導いた後、その冷却風路75から蒸気の排気通路である蒸気通路50を通して調理器の外部に排出させる構成となっている。
前述したように、開閉板72の基端側はヒンジ軸76でケース本体71の一側下部に取付けられるが、開閉板72の先端側はケース本体71に設けた可動部81で係止され、開閉板72の上面がケース本体71の下面開口周縁に設けたゴムなどの弾性体からなるパッキン82を押し付けることで、ケース本体71の下面開口が開閉板72で密封される構成となっている。
蓋31を閉じた状態で、投入ケース41の可動部81を可動させる構成として、本実施形態では本体1の内部にソレノイド63(図22参照)が配設される。このソレノイド63は、開閉板72を閉状態から開状態に切り替える駆動源となるもので、調理中に制御部30からの駆動信号を受けて、ソレノイドが通電されると、可動部81が押されて可動部81と開閉板72との係止が解除され、開閉板72は自重でヒンジ軸76を中心に開放するようになっている。また、この開閉板72の開放動作により、開閉板72が完全に開いたときの開放の勢いで、開閉板72がバタつかないように、開閉板72が開く際に開閉板72へブレーキ力を発生させるブレーキばね83が、ヒンジ軸76に配設される。これにより、投入ケース41内の粉体は、開放した開閉板72の下面開口を通して、パンケース7の周辺に飛散することなく、その直下に位置するパンケース7内に落下投入される。
前記第2下蓋74は、第1下蓋73に対して固定部材84により係脱可能に設けられる。固定部材84は、第1下蓋73および第2下蓋74の一方を係止部とし、他方を被係止部とすることで構成され、投入ケース41単体の状態で、第1下蓋73を可動部81に係止させたまま、第2下蓋74だけを第1下蓋73から開放することができる。これにより、第1下蓋73と第2下蓋74との間の冷却風路75を容易に清掃できる。
前記ケース本体71は、粉体を収納する部材であるケース部85と、投入ケース41の外面をなす部材である外面部86との間に断熱空間87を設けて構成される。また、ケース本体71の一端である下端は、断熱空間87とケース本体71の外部とを連通する隙間88が形成される。断熱空間87と隙間88は、粉体71の収納領域を規定するケース本体71の側壁89を取り囲むように、側壁89の外側全周に形成される。このように、投入ケース41に断熱空間87を設けることによって、投入ケース41内の粉体の温度上昇を抑制することが可能になる。
本実施形態では、投入ケース41の底壁に対する側壁89の角度が、垂直よりも大きく形成される。つまり、投入ケース41の側壁89は、上方よりも下方を拡張した逆テーパー状に形成される。また、ここでは図示しないが、投入ケース41の底壁に対する側壁89の角度を垂直に形成してもよい。何れにせよ、このように側壁89の角度を規定すれば、開閉板72を開放する際に、投入ケース41の側壁89から粉体が付着せずに落下し、ブレーキばね83によって開閉板72に対してブレーキ力が加わることと相俟って、投入ケース41からパンケース7内に粉体を確実に投入できる。
図5および図6には、調理時における空気の流れFが矢印で示されている。図5に示すように、投入ケース41からパンケース7に粉体が投入されるまでは、制御部30が冷却ファン26を作動させることにより、冷却ファン26から排出される風が、本体1の風路開口78から内蓋48の導風口79に入り込み、投入ケース41の底部に形成される冷却風路75を通過する。これにより、パンケース7内のパン原料が加熱手段8で加熱され、それにより収容室6や蓋31が温度上昇しても、冷却ファン26からの風が強制的に流れる冷却風路75によって、投入ケース41内に収納した粉体への熱影響を極力回避することができる。
また、パンケース7内のパン原料が加熱されるのに伴い、パンケース7から収容室6に蒸気が発生するが、その蒸気は内蓋48に形成した開口部55から蒸気通路50に入り込む際に、冷却風路75を通過した冷却ファン26からの風と混合する。そのため、蒸気通路50を通過する蒸気の温度を低下させながら、本体1内から調理器の外部に蒸気を安全に排出させることができる。
一方、図6に示すように、投入ケース41からパンケース7に粉体が投入された後は、投入ケース41の開閉板72が開放した状態となる。この場合、パンケース7から収容室6に発生した蒸気は、前述した内蓋48の導風口79だけでなく、冷却風路75や、開口した投入ケース41の底部から、蒸気通路50を通過して調理器の外部に排出される。また、冷却ファン26から蒸気通路50に向けて風を送り込むことで、蒸気通路50を通過する蒸気の温度を低下させることが可能になる。
次に、図13〜図17に基づいて、上述した投入ケース41の細部構成を説明する。
図13に示すように、パッキン82は、ケース本体71の隙間88に取付けられる取付部91と、ケース本体71の隙間88から外方に突出し、開閉板72を閉じたときにその開閉板72に押圧される耳部92とにより構成される。また、ここでのケース部85は、上下に分割される金型(図示せず)で成形される際に形成される突起状のパーティングライン93が、その側壁89に形成される。このパーティングライン93は、投入ケース41にセットする粉体量の目安となる位置に設けられており、これにより工数を増やすことなく、使用者に粉体量の目安を示すことが可能になる。
図14は、投入ケース41の下端を上に向けた状態の断面を示している。同図において、ここでは、中空部としての断熱空間87に入り込むパッキン82の高さH(取付部91の上端の高さ)より近傍までで、且つその高さHよりも高い位置に、断熱空間87と投入ケース41の外部とを連通する液抜き穴94を複数設けている。液抜き穴94はケース本体71の外面部86に設けているが、ケース部85に設けてもよい。このような液抜き孔94があれば、投入ケース41を本来の方向に向けたときに、隙間88から断熱空間87に侵入した液体が、断熱空間87内に留まることなく液抜き孔94から投入ケース41の外部に排出される。
図15は、前述した可動部81周辺の構成を、投入ケース41の下端を上に向けた状態で示している。可動部81は、図示しないソレノイドにより押動操作されるソレノイド操作体95の他に、使用者が手動で開閉板72を開放できるスライド可能なフック部96を設けている。このフック部96は小さく、且つ手の触れる位置に配置されるが、投入ケース41の下側からしかスライド操作できない位置に設けられていて、通常時には容易に手が触れない構造となっている。つまり、フック部96を設けることで、投入ケース41の清掃時にはフック部96を利用して開閉板72の開閉が可能になるが、通常時にはフック部96が下側からしか操作できない位置にあって容易に手に触れないので、誤使用による粉体の落下を防止できる。
図16は、ケース本体71とパッキン82との間を密閉するために、投入ケース41に収納した粉体に近い位置、即ち隙間88の開放端の近傍の位置で、パッキン82にシール部としての突起97を設けている。ここでの突起97は、パッキン82と一体に形成されているが、代わりにRTV(Room Temperature Vulcanizing:室温硬化)ゴムのようなパッキン82とは別体の接着剤を、シール部として使用しても構わない。これにより、ケース本体71とパッキン82との間の液体の浸み出しを突起97により効果的に防いで、ケース本体71とパッキン82との間の密閉性を高めることができる。
図17は、パッキン82と、ヒンジ部であるヒンジ軸76を中心として回動可能に設けられる開閉板72の第1下蓋73との位置関係を示している。同図において、Sは開閉板72の開閉に伴う軌跡を示している。ここでは、パッキン82の耳部92の変形を防止するために、ケース本体71の下端にリブ98を形成している。このリブ98は、開閉板72を閉じてパッキン82が開閉板72に押し付けられたときに、耳部92が側壁89側に入り込むまで変形し、開閉板72とパッキン82との間で密閉不足になる部分が発生するのを防止するために設けられている。つまり、図17に示すリブ98を設けていれば、開閉板72を閉じてパッキン82が開閉板72に押し付けられたときに、耳部92はリブ98に突き当たってそれ以上の変形が防止され、開閉板72とパッキン82との間を確実に密閉させることができる。なお、この耳部92の変形は、特にヒンジ軸76の近傍の開閉板72に強く押し付けられる部分で顕著になるため、少なくともこのヒンジ軸76側に位置するケース本体71の一側にリブ98を設けておけば、そうした開閉板72とパッキン82との間の密閉不足を確実に解消できる。
図18は、投入ケース41を含む蓋31の細部構成を説明する図である。前述したように、蓋31を構成する本体蓋34と上蓋35は、上蓋開閉レバー37を含む嵌合部99により嵌合され、軸32を中心に共に回動するようになっている。図18は、嵌合部99により本体蓋34と上蓋35とを嵌合させて、本体1の開口より蓋31が開いた状態を示している。
ここで、本体蓋34と上蓋35との嵌合力が、投入ケース41の下蓋である開閉板72を開放するのに要する力よりも小さいと、図18の状態で使用者が開閉板72を開けたときに、本体蓋34から上蓋35が外れて開いてしまい、本体1が転倒するなどの虞を生じる。そこで本実施形態では、本体蓋34と上蓋35との嵌合力を、開閉板72を開放する力よりも大きくすることにより、使用者が開閉板72を開けたときに、本体蓋34から上蓋35が外れて開いてしまうことがなく、本体1が転倒するなどの不具合を防ぐことができる。
図19は、上述した本体1の細部構成を説明する図である。同図において、101は本体1の背面に設けられた凹状のコードボックスであり、ここには例えば制御部30などの調理器の各部に給電を行なう可撓性の電源コード102が収納可能に設けられる。また、103はコードボックス101の内部に設けられた電池ケースで、この電池ケース103は扁平状のボタン電池104を保持する保持部105が着脱自在に設けられる。106は、コードボックス101の開口を開閉可能に塞ぐコードボックスカバーであるが、このコードボックスカバー106の開閉に拘らず、電池ケース103はコードボックス101から露出しており、電池ケース103からボタン保持部105を取り出してボタン電池104を交換できるようになっている。なお、一次電池としてのボタン電池104は、電源コード102による調理器への給電が途絶えた場合でも、必要最小限の電力を調理器に供給するもので、例えば制御部30の計時機能や、各種設定の記憶保持機能などに用いられる。
そしてこの場合は、電源コード102を収納するコードボックス101を本体1に配設し、コードボックス101の中にボタン電池104を収納する電池ケース103を設けることで、電池ケース103をわざわざ調理器の別な部位に設ける必要がなく、安価で簡単な構造を実現できる。
以上の投入ケース41や蓋31や本体1の細部構成は、その中の一乃至複数だけを採用してもよいし、それらの全てを採用しても構わない。また、後述する変形例に適用させても構わない。
図20および図21は、投入ケース41の取付け位置に関する別な変形例を示している。図20では、ここに図示しないパンケース7が上面を開口した収容庫である収容室6に収容され、この収容室6の上面に対向しないように、蓋31内に投入ケース41を配置させている。この場合、投入ケース41からの粉体をパンケース7に導くために、傾斜した導入管111が調理器内に配設され、さらに導入管111の下端開口を開閉する開閉蓋112が配設される。開閉蓋112は、粉体の重みで開閉するものでもよいし、開閉手段を設けて電気的な駆動信号で開閉させてもよい。
このように、熱源となる収容室6の直上を避けて、収納室6の上面の脇に投入ケース41を配置することで、投入ケース41内における粉体温度の上昇を抑制することがきる。しかも、この場合は投入ケース41の配置部位を工夫するだけでよく、冷却構造の簡素化とコストの抑制を達成できる。
図21は、図20に示す投入ケース41を、収容室6の上面を覆う蓋31の内部にではなく、蓋31の外部に単体で設置している。したがって、蓋31の内部に投入ケース41を設ける必要がなく、蓋の構造を簡素化してコンパクトにできる。また、投入ケース41は調理器による熱の影響を受けず、上述した本体1内の冷却ファン26や、それに伴う投入ケース41の冷却構造を不要にできる。
そしてここでも、投入ケース41からの粉体をパンケース7に導くために、傾斜した導入管111が調理器内に配設される。その他、113は導入管111を開閉する弁、114は弁113に連結する例えばソレノイドなどの開閉手段であり、制御部30から開閉手段114に駆動信号が与えられると、開閉手段114が動作して弁113が導入管11を開放し、投入ケース41からの粉体が導入管111を通ってパンケース7に投入されるようになっている。なお、図で並べて示してあるように、弁113と開閉手段114に代わり、前述の開閉蓋112を組み込んでもよいし、図20に示した変形例で、開閉蓋112を弁113と開閉手段114に変更してもよい。
次に、上記調理器に関する制御系統について、図22を参照しながら説明する。同図において、制御部30は、操作体3,温度センサ28,29がそれぞれ入力ポートに電気的に接続される。温度センサ28は、容器7に入れられた被調理物の温度を検出する温度検出手段として設けられ、温度センサ29は、調理器外部の室温を検知し取得する室温検知手段として設けられている。また、ヒータである加熱手段8を駆動するためのヒータ駆動回路121と、モータ21を駆動するためのモータ駆動回路122と、ソレノイド63を駆動するためのソレノイド駆動回路123と、蓋31用の冷却装置である冷却ファン26を駆動するためのファン駆動回路124と、本体1用の冷却装置である冷却ファン27を駆動するためのファン駆動回路125と、表示体4を駆動するための表示駆動回路126が、制御部62の出力ポートにそれぞれ接続される。
制御部30は、操作体3からの操作信号と、温度センサ28,29からの検出信号とに基づき、記憶部(図示せず)に内蔵する調理工程に係るプログラムを読み出して、ヒータ駆動回路121,モータ駆動回路122,ソレノイド駆動回路123,ファン駆動回路124,ファン駆動回路125および表示駆動回路126に制御信号を送出して、制御対象となる加熱手段8や、モータ21や、ソレノイド63や、冷却ファン26,27や、表示体4をそれぞれ制御するものである。また制御部30は、前記記憶部に内蔵するプログラムの中で、特にパンケース7内で被調理物からパンを生成するパン生成制御手段131の他に、パンケース7内で被調理物からパン生地やピザ生地を生成する生地生成制御手段132と、パンケース7内でもち米粒などの米粒を原料としてもちを生成するもち生成制御手段133と、パンケース7内でうどん生地を生成するこね生成制御手段134と、前述のパン生成制御手段131と連携して、予約時刻にパンケース7内のパンを焼き上げるタイマー調理制御手段135と、をそれぞれ備えている。
パン生成制御手段131は、小麦粉,イースト,液体(水,牛乳,卵など)および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパンを焼き上げる「小麦食パン」コースと、小麦粉,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れて、「小麦食パン」コースよりも短時間でパンを焼き上げる「小麦食パンお急ぎ」コースと、全粒粉,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパンを焼き上げる「全粒粉パン」コースと、米粒,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパンを焼き上げる「炊パン」コースと、小麦粉,ライ麦粉,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパンを焼き上げる「ライ麦パン」コースと、小麦粉,ご飯,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパンを焼き上げる「小麦ごはんパン」コースと、小麦グルテン入り米粉,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパンを焼き上げる「米粉パン」コースと、小麦グルテンなし米粉,片栗粉,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパンを焼き上げる「小麦ゼロパン」コースの中から、操作体3の操作により選択された特定のコースに対応して、前述した制御対象の動作を制御する機能を有する。
生地生成制御手段132は、小麦粉,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパン生地を生成する「小麦パン生地」コースと、小麦粉,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてピザ生地を生成する「小麦ピザ生地」コースと、米粒,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパン生地を生成する「炊パン生地」コースと、小麦粉,ライ麦粉,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパン生地を生成する「ライ麦パン生地」コースと、米粉,イースト,液体および塩を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてパン生地を生成する「米粉パン生地」コースの中から、操作体3の操作により選択された特定のコースに対応して、前述した制御対象の動作を制御する機能を有する。
もち生成制御手段133は、もち米および液体を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてもちを生成する「もち」コースに対応して、前述した制御対象の動作を制御する機能を有する。
こね生成制御手段134は、強力粉,薄力粉,塩水を含む原料を用い、パンケース7にこれらの原料を入れてうどん生地を生成する「こね」コースに対応して、前述した制御対象の動作を制御する機能を有する。
上記パン生成制御手段131により行われる各調理コースの中で、「炊パン」コースを除く各調理コースでは、最初に全ての原料をパンケース7に入れた状態から、「こね」→「発酵」→「焼き」→「保温」の各工程が連続して行なわれる。但し、イーストを「小麦パン」コースより増量する「小麦食パンお急ぎ」コースでは、半量の小麦粉と液体をパンケース7に入れ、「こね」工程でグルテンを生成してから、投入ケース41に入れた残りの小麦粉とイーストを後でパンケース7内に投入させる。これにより、特にタイマー調理制御手段135によるタイマー調理を行なう際に、最初にパンケース7に入れたイーストが過発酵してしまうのを防ぐようにしている。
また「小麦ゼロパン」コースでは、半量の片栗粉をパンケース7に入れて、「こね」工程で米粉を加熱しながら撹拌することで、片栗粉と液体による糊を生成し、その後で投入ケース41に入れた残りの片栗粉をパンケース7内に投入させる。これにより、片栗粉で糊を作る手間を、米粉を撹拌する工程で行なって、その手間を省くことができる。
一方、「炊パン」コースでは、最初に米粒,液体及び塩をパンケース7に入れると共に、投入ケース41にイーストと、必要に応じて強力粉または上新粉を入れた状態から、「加熱」→「冷却」→「こね」→「発酵」→「焼き」→「保温」の各工程が連続して行なわれる。
また、生地生成制御手段132により行われる各調理コースの中で、「炊パン生地」コースを除く各調理コースでは、最初に全ての原料をパンケース7に入れた状態から、「こね」→「発酵」の各工程が連続して行なわれる。但し、「炊パン生地」コースでは、最初に米粒,液体及び塩をパンケース7に入れると共に、投入ケース41にイーストと、必要に応じて強力粉または上新粉を入れた状態から、「加熱」→「冷却」→「こね」→「発酵」の各工程を連続して行なうように、生地生成制御手段132を構成する。
その他、もち生成制御手段133が行なう「もち」コースは、最初に全ての原料をパンケース7に入れた状態から、「加熱」→「こね」の各工程が連続して行なわれる。さらに、こね生成制御手段134が行なう「こね」コースは、最初に全ての原料をパンケース7に入れた状態から、「こね」の工程が行なわれるようになっている。
図23は、操作部2の構成を示している。同図において、本実施形態の操作体3は、スタートキー3Aと、切キー3Bと、時刻進むキー3Cと、時刻戻るキー3Dと、予約キー3Eと、コース進むキー3Fと、コース戻るキー3Gと、焼き色選択キー3Hと、炊パンキー3Iとにより構成される。また表示体4は、操作部2の略中央に設けたLCDの内部にそれぞれ配置されるコース番号表示部4Aや、焼き色表示部4Bや、コース名表示部4Cや、時刻/時間表示部4Dや、工程表示部4Eの他に、スタートキー3Aの内部に配置されるスタートランプ4Fと、予約キー3Eの内部に配置される予約ランプ4Gとにより構成される。これらの操作体3や表示体4の構成はあくまでも一例であって、操作性や表示性を考慮して適宜変更しても構わない。
コースキーとなるコース進むキー3Fとコース戻るキー3Gは、制御部30が備える上述した複数の調理コースの中から、特定の調理コースを選択するためのものである。本実施形態では、個々の調理コースとコース番号(数字)がそれぞれ関連付けて記憶されており、電源コード102をコンセントに差し込んだ直後の初期状態では、コース番号「01」の「小麦食パン」コースが制御部30により自動的に選択され、コース番号表示部4Aにコース番号である「01」が表示されると共に、コース名表示部4Cにコース名を示す「小麦」と「パン」が表示される。そして、コース進むキー3Fを押すと、コース番号を1つ増加した別の調理コースが選択され、逆にコース進むキー3Fを押すと、コース番号を1つ減少した別の調理コースが選択され、そのコース番号とコース名が、コース番号表示部4Aとコース名表示部4Cにそれぞれ表示される。なお、初期状態で表示される調理コースは、上記「小麦食パン」コース以外であってもよく、またコース番号を文字や記号
で表してもよい。
本実施形態では、全ての調理コースの中から、一つの調理コースを順番に選択できるコース進むキー3Fやコース戻るキー3Gの他に、特定の調理コースである「炊パン」コースを、ワンタッチで選択できる炊パンキー3Iキーを備えた点が注目される。この炊パンキー3Iキーを押動操作すると、それまで選択されていた調理コースに拘らず、制御部30により「炊パン」コースが優先的に選択され、コース番号表示部4Aにコース番号である「04」が表示されると共に、コース名表示部4Cにコース名を示す「小麦」と「炊パン」が表示される。
スタートキー3Aは、制御部30による調理開始を指示するもので、スタートキー3Aを押動操作すると、制御部30は選択された調理メニューに従って調理の工程を開始し、スタートランプ4Fを点灯表示させる。また調理中は、これから行われる工程が工程表示部4Eで点灯表示されると共に、現在行われている工程が工程表示部4Eで点滅表示される。これにより、使用者は選択した調理メニューに関して、どのような工程が現在と今後に行われるのかを、共通する工程表示部4Eで直ちに確認できる。そして、パン生成制御手段131では、「焼き」の工程が完了すると、スタートランプ4Fを点滅表示させてパンの焼き上がりを使用者に知らせると共に、工程表示部4Eで「保温」を点灯表示させて、パンケース7内のパンを所定温度に保温する。一方、その他の生地生成制御手段132,もち生成制御手段133,こね生成制御手段134では、スタートランプ4Fを消灯させて調理の完了を使用者に知らせると共に、工程表示部4Eの全てを消灯させ、表示体4以外の全ての制御対象をオフにするようになっている。
時刻キーとなる時刻進むキー3Cと時刻戻るキー3Dは、制御部30の計時手段(図示せず)で計時される現在時刻や、タイマー調理制御手段135に設定記憶される予約時刻を変更するためのものである。現在時刻を調整変更するには、電源コード102をコンセントに差し込んだ直後の初期状態で、時刻進むキー3Cまたは時刻戻るキー3Dを一定時間押し続けると、制御部30が時刻/時間表示部4Dに時刻を点滅表示させて、現在時刻を調整可能な状態にすることができる。ここで時刻進むキー3Cを押すと、時刻/時間表示部4Dに点滅表示される時刻を進めることができる一方で、時刻戻るキー3Dを押すと、時刻/時間表示部4Dに点滅表示される時刻を戻すことができ、最終的に切キー3Bを押すことにより、制御部30はその変更した時刻を現在時刻として設定し、時刻/時間表示部4Dの点滅表示が点灯表示に変更される。
一方、パンを焼き上げる時刻である予約時刻を変更するには、前述したコース進むキー3Fとコース戻るキー3Gで、パン生成制御手段131に関係する調理コースを選択した後に、予約キー3Eを押動操作すると、タイマー調理制御手段135は予約ランプ4Gを点滅させ、かつ設定記憶されていた予約時刻を呼び出し、その時刻を時刻/時間表示部4Dに点滅表示させて、予約時刻を調整可能な状態にすることができる。ここで時刻進むキー3Cを押すと、時刻/時間表示部4Dに点滅表示される時刻を進めることができる一方で、時刻戻るキー3Dを押すと、時刻/時間表示部4Dに点滅表示される時刻を戻すことができ、最終的にスタートキー3Aを押すことにより、タイマー調理制御手段135はその変更した時刻を予約時刻として設定し、当該予約時刻にパンが焼き上がるようにパン生成制御手段131を制御する。また、タイマー調理の設定が完了してから、パン生成制御手段131が設定した調理コースでの調理を開始するまでは、タイマー調理制御手段135により予約ランプ4Gを点灯させ、スタートランプ4Fを消灯させて、タイマー調理を行なう旨を使用者に知らせている。
その他、焼き色選択キー3Hは、パン生成制御手段131が行なう「焼成」工程で、パンの焼き色を例えば「薄」,「標準」,「濃」の何れかに選択設定させるためのもので、切キー3Bは、調理中または調理完了後に、表示体4以外の制御対象を全てオフにし、且つ表示体4を初期状態に戻す切状態に移行させる際に押動操作されるものである。
図24は、前述した調理器の主な構成を模式的に示したものである。同図において、加熱室となる収容室6は、例えばアルミニウム鋼板などの耐熱性に優れた鋼板で構成される。収容室6内にはパン焼き用の容器であるパンケース7が備えてあるが、このパンケース7は、アルミニウム製の部材内面にフッ素コーティングを施して構成される。パンケース7の内底部には混錬用のパン羽根14が備えてあり、パン羽根14は電動機であるモータ21で回転駆動する構成となっている。パン羽根14はアルミニウム製で、外面にはフッ素コーティングが施されている。
パンケース7と収容室6との間には、パンケース7内の被調理物である例えばパン生地を輻射加熱して焼き上げるシーズヒータとしての加熱手段8が配設される。この加熱手段8は、パンケース7の外側下方に備えてある。パンケース7の側面には、内部にサーミスタ素子を内蔵した温度センサ28が当接され、パンケース7の温度を検出する構成となっている。収容室6の上側には蓋31が設けられており、蓋31の内部には、パンケース7内へイースト菌や小麦粉の他に、フルーツなどの副材料を投入する粉ケースとしての投入ケース41が配設される。
図1に示す調理器に加えて、ここではヒンジ軸141を中心として投入ケース41の上面開口を回動可能に開閉する投入ケース蓋142と、外郭部材5と収容室6にそれぞれ対向して設けた水抜孔143,144とを備えている。また、回転伝達機構13は、混錬具駆動軸である羽根軸の下端と、電動機軸である出力軸22の下端に、伝動プーリ146,147をそれぞれ接続し、伝動プーリ146,147の間に無端状の伝動ベルト148を懸架することで構成される。それ以外の構成は、図1〜図21で示した調理器の構成を、適宜採用すればよい。
次に、上記パン生成制御手段131により行われる「炊パン」コースの動作について、図25のグラフを参照しながら詳しく説明する。なお、「炊パン」コースを選択して、調理を開始させるまでの操作手順は上述した通りなので、説明を省略する。
うるち米を使ってパンを焼き上げる「炊パン」コースでは、米粒と、イーストと、水や牛乳などの液体と、塩などを原料として用い、米粒に水や牛乳などの液体を加える。具体的には、パンケース7内に米粒の他に、塩や所定量の水を加えて入れ、投入ケース41にドライイーストと強力粉または上新粉を入れて、最初の「加熱」工程で加熱手段8でパンケース7を加熱することで、パンケース7内の水を昇温させる。米粒に加える水などの液体は、米粒の質量(重量)の1.3倍以上、好ましくは2倍以上で、2.3倍を目安にしてパンケース7内に入れる。これは、「加熱」工程で、パンケース7内の被調理物を柔らかいご飯状或いは硬めの粥状にするためである。また、「加熱」工程では、温度センサ28で検知したパンケース7の温度をパン生成制御手段131が管理して、加熱手段8への加熱量を調整する。
スタートキー3Aの操作によって、「炊パン」コースの調理開始が指示されると、パン生成制御手段131は、パンケース7内の被調理物を炊飯する「加熱」工程を行なう。ここでは先ず、約60℃以下を目安にしてパンケース7内の水温を上げ、米粒に水を15〜20分程度吸水させる。炊飯時のひたしにより米類の吸水を促進することで、還元糖量を増加させて甘みのあるパンを得ることができる。
その後、加熱手段8に対する加熱量を増加させ、パンケース7内の被調理物を沸騰付近の温度にまで加熱する。この米粒に水を吸水させるひたし時から、沸騰付近の温度にまで加熱する途中までの間に、パン生成制御手段131はモータ21に駆動信号を供給してパン羽根14を回転させ、パンケース7内の被調理物を緩やかに撹拌する。パン羽根14による攪拌をどのようにして行わせるのかは、例えば5分間隔で10秒間撹拌を行なわせたり、或いはパンケース7の温度が所定温度になったら撹拌を行なわせたりして、実機に応じた調整が可能である。また撹拌は、パンケース7内が沸騰温度近傍になる前の米の糊化が十分に進まない状態の時に行ない、パンケース7内が沸騰温度近傍になった以降は、撹拌しない構成となっている。このような撹拌を行なうことで、パンケース7内の水の飛び散りを防止しつつ、ひたし時における被調理物の加熱ムラを低減できる。
「加熱」工程では、パンケース7内の水温が90℃〜沸点(100℃)以下で、気圧条件に応じて上限温度を下げ、好ましくは96℃〜沸点以下になるように、パン生成制御手段131が加熱手段8の加熱量を調整して温度管理する。特に、沸点である100℃を超えた温度にならないように、パンケース7内の水温を温度管理する。
また、「加熱」工程中は、パン生成制御手段131が冷却ファン27を構成するファンモータにパルス駆動信号を出力して、当該冷却ファン27のファンモータを低速で回転させる。これにより、加熱手段8がパンケース7内の米よりも上方に位置していても、収容室6内に風を送り込むことで、加熱ムラが少なく芯のない炊飯を行なうことができる。なお、冷却ファン27のファンモータの回転速度は、パン生成制御手段131によりPWM(パルス幅変調)されたパルス駆動信号のデューティに応じて、容易に可変可能である。
やがて、パンケース7内の水がなくなって、パンケース7の温度が急激に上昇するか、或いは温度センサ28が沸騰温度近傍を検知してから所定時間である10〜15分が経過するか、調理開始の指示から所定時間である50分を経過したら、加熱手段8による炊飯加熱を中止して、「加熱」から「冷却」の工程に移行し、所定時間である10分程度のむらしを行なう。これらの管理温度や時間は実機に応じて、任意の温度と時間に管理すればよく、ここで示した具体的な数値に限定されるものではない。
「冷却」工程では、パンケース7内のご飯を素早く冷却するために、加熱手段8への通電を行なわないようにし、且つ冷却ファン27のファンモータを最高速で回転させる。これにより、パンケース7内で糊化した米粒を冷ます。また、パンケース7内でご飯粒をつぶして、芯残りのない状態を生成するために、パン生成制御手段131がモータ21に駆動信号を供給してパン羽根14を回転させ、パンケース7内のご飯を撹拌する。
パンケース7内の被調理物が所定の管理温度にまで低下すると、「冷却」工程を終了して「こね」工程に移行する。「こね」工程では、引き続きパン生成制御手段131によりモータ21に駆動信号を供給してパン羽根14を回転させ、パンケース7内のご飯を混錬する。パンケース7内において、炊飯により糊化して軟化した米粒は、ご飯状に柔らかくなっており、パン羽根14で練ることによってパン生地状に練り上げる。
また、パンケース7内のご飯を練る前か、或いはご飯を練る途中で、パン生成制御手段131は糊化した米粒が60℃以下、好ましくは40℃以下に冷めたところで、ソレノイド63に駆動信号を供給して、投入ケース71の開閉板72を開放させる。これにより、投入ケース71に入れられたイーストや小麦粉がパンケース7に投入され、パンケース7内の被調理物と混ぜ合わせて練り上がり、パンケース7内でパン生地が仕上げる。投入する小麦粉としては、強力粉などのグルテンを成分に含む材料を加えてもよいし、上新粉などのグルテンを成分に含まない材料を加えてもよいが、いずれの場合も、パンケース7内の被調理物の温度が60℃以下に下がった後に投入する。このようにすれば、「加熱」工程でパンケース7内の米粒を糊化させた後、米粒以外のでんぷん質の材料を、米粒の糊化温度以下で加えることにより、米粒以外のでんぷん質を糊化させないでこねることができる。また、40℃などの室温より高い温度でイーストを投入すると、発酵時間が短くなる効果がある。
モータ21ひいてはパン羽根14の回転数は、投入ケース71の開閉板72を開放する前よりも、投入ケース71の開閉板72を開放した後で遅くするように、パン生成制御手段131からモータ21に駆動信号を供給する。これにより、回転するパン羽根14によって、投入ケース71からパンケース7に落下するイーストや小麦粉が周辺に飛び散るのを防止できる。また、投入ケース71の開閉板72を開放した後で、モータ14への駆動信号の供給を一定時間停止させてもよい、これにより、イーストや小麦粉を投入した後に、パン羽根14の動作を一定時間停止させてイーストや小麦粉が飛び散るのを確実に防止できる。また、パン羽根14の動作が停止している間に、副材料を手動投入することも可能になる。
さらに、パン生成制御手段131は、「こね」工程でモータ21を連続回転させている間は、モータ21に熱によりパン生地の温度が上がらないようにするために、冷却ファン27のファンモータにもパルス駆動信号を供給して、当該ファンモータを低速で回転させる。
なお、パンケース7の上面開口部には、パンケース7に接触して開口部を塞ぐ内蓋を設けないようにしているが、その理由は、炊飯後に投入ケース41からイーストおよび小麦粉のような粉体や、フルーツなどの副材料などを投入する際に、内蓋を設けてあるとパンケース7に粉体や副材料を落下させるのが困難になるからである。
こうして、所定時間の「こね」工程が終了すると、被調理物中に混ぜ合わされたイーストを発酵させるための「発酵」工程に移行する。「発酵」工程では、イーストの発酵を促進するために、温度センサ28で検知したパンケース7の温度に基づいて加熱手段8を通断電制御し、且つガス抜きを行なうために、冷却ファン26により収容室6内に風を送り込む動作が繰り返される。これにより、パン生成制御手段131が「発酵」工程中に、一次発酵,二次発酵および成形発酵の動作を順に行なうことで、イーストは次第に発酵が進み、炭酸ガスが発生してパン生地を膨らませる。
「発酵」工程の仕上げとなる成形発酵に移行すると、パン生成制御手段131は、温度センサ28からの検知温度を管理して、被調理物であるパン生地の温度を60℃にまで緩やかに上昇させる。このように、被調理物を焼成する直前で、イースト菌が死滅しない温度範囲内にパン生地の温度を緩やかに上昇させることで、パン生地の膨らみを向上させることができると共に、パン生地におけるネチ(ダマ)の発生を防止できる。
「発酵」工程が終了すると、次にパン生成制御手段131は「焼成」工程に移行して、パンケース7内の被調理物をパンに焼き上げるように、加熱手段8の加熱量を調節する。この「焼成」工程中も、前述の「加熱」工程と同様に、パン生成制御手段131が冷却ファン27を構成するファンモータにパルス駆動信号を出力して、当該冷却ファン27のファンモータを低速で回転させる。これにより、収容室6内に風を送り込んで熱循環させ、焼きムラの少ないパンに仕上げることが可能になる。「焼成」工程が完了すると、次の「保温」工程に移行するが、「焼成」工程で焼き上げたパンを速やかに冷却するために、「保温」工程では冷却ファン27で収容室6内に風を送り込む。これにより、焼き上げたパンはもとより、パンケース7や蓋31を冷却することができる。
ところで、うるち米は約60℃以上で糊化(β澱粉がα澱粉に変化)するが、白米として食する場合には、98℃以下の低温糊化であると米粒の内部まで十分に糊化せず、硬い部分が残るいわゆる芯残りご飯となって、食味に適さない。よって、被調理物の温度を98℃以上で20分間保持することが、白米を食する条件とされている。したがって、実際の炊飯器は、鍋の上部開口部に内蓋を被せ、鍋の内部が常圧よりも高くなるように工夫されており、通常の大気圧課では、鍋の内部が100℃〜101℃程度になっている。また、圧力式の炊飯器では鍋内をさらに高温にして、粘り向上など食味の改善を図っている。つまり白米として食する場合は、沸点を超えた水温となり、大量の蒸気が発生する炊飯が基本となっている。
一方、本実施形態のようなご飯からパンを作り上げる調理器では、白米をご飯として食べる炊飯ではなく、パン生地として炊飯後に練り上げることを前提に、生の米粒を柔らかくして練るための炊飯加熱を行なうことで、蒸気の発生を極力抑制できる。このように、蒸気の発生を抑制してパン生地生成用の炊飯を行なうことにより、投入ケース41と蓋31の内面との隙間(図24に示す矢印S1)や、外郭部材5と蓋31との隙間(図24に示す矢印S2)や、収容室6とパンケース7との隙間(図24に示す矢印S3)から蒸気が漏れたり、収容室6内に蒸気が結露して水が溜まって汚れたり、制御用電子部品を搭載する制御部30に蒸気が回って電子部品の温度上昇を招いたり、操作部2を構成する表示体4に蒸気が回って表示体4を曇らせてしまうなどの不具合を改善でき、収容室6内の蒸気を蓋3の開口部55から蒸気口54を通して、調理器の外部に全て排出できる(図24に示す矢印S)。
一方、本実施形態のような加熱構成では、被調理物に対する加熱が弱く、パンケース7内の水温上昇にムラが生じる場合がある、という欠点を有する。これを図24に基づき具体的に説明すると、炊飯時における「加熱」工程でのパンケース7内の水温は、加熱手段に近接した(1)下方側部が先ず昇温し、次に水中の熱伝導により、(2)中間側部→(3)上方側部→(4)上方中部→(5)中心→(6)下方中部、の順に昇温する。米は水温の上昇に従い吸収して糊化するため、弱加熱の場合は、(1)→(6)の熱伝導時間が長くなり、(1)から(6)に熱が移動するのに従って米が水を吸って少なくなるので、(5)中心や(6)下方中部では糊化のための高温時間が短くなると共に、糊化のための水が不足して、ご飯が硬くなる問題がある。特にパンケース7内の(5)中心は、水が少なくなって水位が下がり、しかも吸水不足でご飯が硬くなり、場合によっては芯が残り、またパンケース7内の(6)下方中部は、水はあるもものの水温の昇温が遅く、加熱が不足して糊化不足になる場合がある。したがって、従来のパンケース7内各部の温度と時間の関係は、図25に示すようになる。
一方、本実施形態では、炊飯中にパン生成制御手段131がパン羽根14を回転させて、パンケース7内の水と米とを撹拌することにより、パンケース7内の水温の昇温時間差に伴う吸水と糊化のムラを抑制するので、パンケース7内が沸騰近傍温度になって加熱を弱くしても、糊化ムラによる硬さのムラを低減し、その後の「こね」工程で、パン生地に練る場合に硬くて米粒の残りが多くなり、パンの食味を低下させるような不具合を改善できる。
図26は、図25との比較のために、本実施形態におけるパンケース7内各部の温度と時間の関係を示しているが、この場合は、「加熱」工程の開始時から沸騰近傍になるまでの間に、パン羽根14を回転させる撹拌を複数回行なうことで、パンケース7内の(1)下方側部と(6)下方中部との間の昇温温度差が縮まっているのがわかる。
また、加熱手段8は「加熱」工程のみならず、「焼き」工程におけるパンの焼き上げでも兼用され、従来の製パン器と同様にパンケース7の外側下部に加熱手段8を配置している。通常の炊飯器では、鍋の底面と側面下部を加熱し、鍋の底面を加熱することで前記パンケース7内の(6)下方中部の水温上昇が遅くなる欠点を補う構成となっているが、本実施形態では、加熱手段8を炊飯だけでなく、パンの焼き上げと兼用する構成となっており、パンヒータ7の側面下部が主たる加熱源となるため、炊飯器に比べて、特にパンケース7内の(5)中心や(6)下方中部の糊化が難しくなるが、上述した撹拌によって、より加熱ムラを改善する実用的な効果を得ることが可能になる。
なお、パンケース7の上部開口部は、当該開口部を塞ぐ内蓋を設けていないが、内蓋が存在しない構成のために、蒸気の発生量を抑制する構成は、より実用的な効果がある。また、内蓋が存在しないことで、パンケース7内部の炊飯時における圧力上昇が難しく、加熱ムラになりやすい構造であることから、この点でも上述した撹拌を行なうことは、より実用的な効果がある。
図1に戻り、本実施形態では、収容室6内に風を送る送風装置として、本体1内にあって収容室6の外にある冷却ファン27を備え、冷却ファン27からの風を、収容室6内に送り込んで循環させる循環装置として、当該冷却ファン27と共に、収容室6の側面に孔65を設けた構成を採用している。この孔65は冷却ファン27の吹出し口となるもので、加熱の際の収容室6内の温度を均一化し、且つ加熱後の冷却を行なうには、収容器6のほぼ真ん中よりも下方に設けるのが好ましい。さらに、加熱手段8からの熱を効率よく循環させるのに、好ましくは加熱手段8、若しくは加熱手段8の下方に配設される。孔65は、本体1にではなく蓋31に設けても構わない。
次に、タイマー調理制御手段135による動作の詳細を、図27〜図29の各図を参照しながら詳しく説明する。図27は、予約キー3Eに引き続いてスタートキー3Aを押動操作することで、予約時刻をセットしてタイマー調理を開始する予約開始時から、焼成工程である「焼き」工程が終了するまでのフローチャートを示している。また図28は、予約開始から保温までの製パン工程で、各工程における室温に応じた所要時間を示している。
本実施形態の制御部30は、パンを焼き上げるための制御を行なう同じ調理コースの中で、2つの調理モード、すなわちスタートキー3Aを押すとすぐに製パンを開始する即調理モードと、予約時刻を設定して、その予約時刻にパンを焼き上げるタイマー調理モードを備えている。即調理モードは、パン生成制御手段131だけで制御対象を制御し、タイマー調理モードは、パン生成制御手段131とタイマー調理制御手段135が連携して制御対象を制御する。
図28に示すように、タイマー調理モードの製パン工程では、例えば前述の「小麦食パン」コースにおいて、こね1→ねかし→こね2→発酵→焼成→保温の順でパンを焼き上げる制御が、パン生成制御手段131により行われる。ここで、こね1,ねかし,こね2は、前記「こね」工程に対応し、こね1とこね2ではパン羽根14を所定時間回転させるが、ねかしではパン羽根14を一定時間回転停止させる。また、パン生成制御手段131は、温度センサ29で検知される室温を取得して、こね1,こね2,発酵,焼成の各工程の所要時間を、室温に応じて変化させるように、制御対処を制御する。具体的には、例えば室温が低い場合(例えば10℃)では、室温が高い場合(例えば30℃)に比べて、こね1,こね2,発酵,焼成の各工程の所要時間が延びるように設定される。
図27に示すように、タイマー調理モードでは、予約開始になると次のステップS1に移行して、温度センサ29で検知される室温をタイマー調理制御手段135が直ちに取得する。そして、パン生成制御手段131は、ステップS1で取得した室温に応じたこね1以降の各工程の所要時間から、こね1の開始時刻を決定して、その開始時間に実際のこね1工程の制御を開始する(ステップS2)。
こね1の動作が終了すると、タイマー調理制御手段135はステップS3に移行して、予約時刻よりも、こね2から完了(焼成完了)までが最長となる時間前のこね2開始時刻に、温度センサ29で検知される室温を再度取得する。そして、パン生成制御手段131は、ステップS3で取得した室温に応じたこね2以降の各工程の所要時間から、こね2の開始時刻を決定し(ステップS4)、その開始時間に実際のこね2工程の制御を開始する(ステップS5)。これ以降は、ステップS3で取得した室温に応じたこね2以降の各工程の所要時間に従って、こね2,発酵,焼成の各工程による制御を実行し(ステップS6)、「保温」工程でパン生成制御手段131による一連の調理制御を完了する。
図29は、使用者が0:00に予約時刻を7:00にセットして、図28に示す「小麦食パン」コースによるタイマー調理を開始させた場合の、具体的な調理所要時間の設定例を示している。タイマー調理を開始させた予約開始時に、室温が23℃であったとすると、タイマー調理制御手段135はこのときの温度センサ29で検知される室温を取得し、図28に示す所要時間の中から、「20〜25℃未満」に対応する合計140分の所要時間に設定して、パンケース7内の被調理物に対する調理制御をパン生成制御手段131に開始させる。
ここで使用者が、調理器と共に室内に設置されるエアコン(図示せず)を、0:00にオンからオフに切替えたとする。室温は、0:00の23℃から徐々に上昇する。
その後、パン生成制御手段131は、最も調理の所要時間が長い室温が10度未満の条件で、こね2の工程が開始する時刻よりも前に、こね1とねかしの工程が完了するタイミングで、こね1の動作を開始させる。この場合のこね1の所要時間は、予約開始時に温度センサ29から取得した室温に基づくものなので、室温が「20〜25℃未満」に対応する10分間行なわれる。
次に、タイマー調理制御手段135は、最も調理の所要時間が長い室温が10度未満の条件で、こね2の工程が開始する時刻である4:00になると、温度センサ29で検知される室温を再度取得する。この時の室温は、エアコンをオフにしている関係で30℃に上昇しているので、図28に示す所要時間の中から、「30℃以上」に対応する合計120分の所要時間に設定して、これ以降のパンケース7内の被調理物に対する調理制御をパン生成制御手段131に行なわせる。したがて、実際にこね2が開始する時刻は、予約時刻から「30℃以上」に対応する所要時間(120分)を差し引いた5:00になり、以後、25分間のこね2工程と、65分間の発酵工程と、30分間の発酵工程が行われて、予約時刻である7:00にパンが焼き上がる。
図29に示す例で、室温が低い場合(例えば10℃)は、室温が高い場合(例えば30℃)と比べて、パン生成制御手段131が行なう発光や焼成の時間が共に延びる傾向があるため、室温を考慮せずに、予約時刻である製パン完了時刻の一定時間前に特定の工程を開始させてしまうと、パンのできあがりを製パン完了時刻に一致させる必要があるので、室温が高い場合にはパンが早く調理でき、製パン完了時刻まで保温して待つなどすることになり、その間に食味が低下する。
また、予約時刻を設定してタイマー調理の開始を指示する予約開始時の室温を取得して、特定の工程の開始時刻を変動させてしまうと、室温が予約開始時と特定の工程の開始時で異なる場合(例えば予約開始時の室温が25℃で、特定の工程の開始時における室温が10℃)、工程時間が延びてしまって予約時刻にパンを焼き上げることができない。
しかし本例では、例えば「こね1」の工程を除く複数の製パン工程による製パン時間の最長が、室温10℃未満の場合で180分、最短が室温30℃以上の場合で120分であった場合、予約時刻を7:00に設定してタイマー調理を行なうと、先ず最長の製パン時間を要する製パン工程の中で、「こね2」の工程の開始時刻前の4:00に温度センサ29から室温を取得し、このときの室温に応じて、例えば室温が0〜10℃であるならば、「こね2」の工程を直ちに開始させ、室温が30〜35℃であるならば、「こね2」の工程を1時間後の5:00に決定して、その時刻から「こね2」の工程を開始させるように、制御部30のパン生成制御手段131やタイマー調理制御手段135を構成している。
これにより、調理器周辺の室温が予約時刻を設定してタイマー調理の開始を指示する予約開始時時と特定の工程の開始時で異なった場合でも、予約時刻に近い時刻にパンを焼き上げることが可能になり、タイマー調理を行なう場合に室温の変動を加味し、安定した仕上がりのパンを得ることが可能な調理器を提供することができる。
以上のように、本実施形態では、パンケース7に収納したパン原料からパン生地を得ると共に、投入ケース41からパンケース7内に粉体を投入する調理器において、送風器として冷却ファン26を配設し、投入ケース41の底壁を、第1下蓋73と第2下蓋74による二重構造の開閉板72で構成し、第1下蓋73と第2下蓋74との間に、冷却ファン26からの風を通過させる冷却風路75を形成している。
この場合、冷却ファン26から流れる風が、第1下蓋73と第2下蓋74との間の冷却風路75を流れることにより、粉体が載置される投入ケース41の底壁が強制冷却されるため、パンケース7の加熱に起因する投入ケース41内の粉体の温度の上昇を効果的に抑制でき、小麦粉が固まったり、イーストが死滅して発酵しなくなったりする虞を解消できる。
また本実施形態では、パンケース7と冷却ファン26は本体1に設けられ、投入ケース41は本体1の開口を覆う蓋31に設けられ、冷却ファン26に連通する風路開口78を本体1に設け、冷却風路75に連通する導風口79と、パンケース7内から発生する蒸気を外部に排出させる排気通路である蒸気通路50とを蓋31に設け、冷却ファン26からの風を風路開口78から導風口79に取り入れて冷却風路75に導くと共に、その冷却風路75から蒸気通路50を通して調理器の外部に排出させる構成となっている。
この場合、蓋31にではなく、本体1に冷却ファン26を設けることで、蓋31への配線の引き回しを減らすと共にスペースを確保して、蓋31の構造簡素化を図ることが可能になる。また、パンケース7を加熱することに伴い、蓋31が温度上昇した時の熱影響を避けることができ、冷却ファン26の温度上昇を防止することができる。さらに、冷却ファン26からの風により、蒸気通路50を通過する蒸気の温度を低下させながら、本体1内から調理器の外部に蒸気を安全に排出させることができる。
また、本実施形態における第1下蓋73と第2下蓋74は、共通のヒンジ部であるヒンジ軸76を中心として回動可能に設けられ、第1下蓋73に対して第2下蓋74を係脱可能にする固定部材84を設けている。
この場合、第1下蓋73と第2下蓋74のヒンジ軸76を共用にすることで、部品点数を削減してコストの低減を図ることができる。また、第2下蓋74だけを第1下蓋73から開放することができ、第1下蓋73と第2下蓋74との間の冷却風路75を容易に清掃できる。
また、本実施形態では、投入ケース41の底壁が、ヒンジ部であるヒンジ軸76を中心として回動可能に設けられる下蓋としての開閉板72により構成され、開閉板72が開く際にその開閉板72へブレーキ力を発生させるブレーキ部材として、ブレーキばね83を設けている。
この場合、ブレーキばね83によって開閉板72が開く際に開閉板72へブレーキ力が発生するので、投入ケース41内の粉体がパンケース7の周辺に飛散することなく、パンケース7内に投入することができ、結果的に投入ケース41からの粉体の飛散を防止することが可能な調理器をできる。
また、本実施形態では、投入ケース41の底壁に対する側壁89の角度が、垂直若しくは垂直よりも大きく形成されている。
この場合、投入ケース41内に粉体を収納した状態で、投入ケース41の開閉板72を開放する際に、投入ケース41の側壁89から粉体が付着せずに落下するので、投入ケース41からパンケース7内に粉体を確実に投入することが可能になる。
また、本実施形態の投入ケース41は、粉体を収納するケース部85と、投入ケース41の外面部86との間に、断熱空間87を設けたケース本体71を備えて構成される。
この場合、断熱空間87によって投入ケース41内の粉体の温度上昇を抑制することができ、小麦粉が固まったり、イーストが死滅して発酵しなくなったりする虞を解消できる。
また、図20や図21に示す変形例のように、上面を開口した収容庫である収納室6にパンケース7を収容し、投入ケース41を収容室6の上面から側方に配置し、投入ケース41内の粉体をパンケース7に導く導入管111を設けてもよい。
この場合、熱源となる収容室6の直上を避けて、収納室6の上面の側方に投入ケース41を配置することで、投入ケース41内における粉体温度の上昇を抑制することができる。しかも、この場合は投入ケース41の配置部位を工夫するだけでよく、冷却構造の簡素化とコストの抑制を達成できる。
また、図21に示す変形例のように、収容室6の上面を覆う蓋31の外部に投入ケース41を設置してもよい。
この場合、蓋31の内部に投入ケース41を設ける必要がなく、蓋の構造を簡素化してコンパクトにできると共に、蓋31への冷却構造も不要になり、さらなる冷却構造の簡素化とコストの抑制を達成でできる。
また本実施形態では、投入ケース41の底壁を開閉可能な下蓋である開閉板72で構成し、この開閉板72は、一乃至複数の空気層である冷却風路75を設けた断熱構造を有している。
この場合、開閉板72が空気層である冷却風路75を有する断熱構造としたので、焼成室としての収容室6に面する投入ケース41の底壁をなす開閉板72は、収容室6に面する部分でありながら、その温度上昇を低減することができる。
また本実施形態では、前記冷却通路75に空気を送風して、開閉板72を冷却する構成を有している。
この場合、開閉板72の空気層内を特に冷却風路75として送風を行なうことで、さらに開閉板72の温度上昇を防止し、特に投入ケース41の下面の孔を塞ぐ開閉板72の上面の温度上昇を効果的に防止できる。そのため、投入ケース41に入れたイーストや小麦粉などの粉体の温度上昇を抑制して、おいしいパンを焼くことができる。
また、本実施形態の投入ケース41は、複数に分割される金型で成形される際のパーティングライン93が形成され、このパーティングライン93を、投入ケース41にセットする粉体量の目安となる位置に設けている。
この場合、部品を金型で成形する際に形成されるパーティングライン93を、投入ケース41にセットする粉体量の目安となる印として利用できるので、工数を増やすことなく、使用者に粉体量の目安を示すことが可能な調理器を提供できる。
また、本実施形態の投入ケース41は、一端に隙間88を形成した中空部としての断熱空間87を有するケース本体71と、ケース本体71の隙間88に取付けられるパッキン82とにより構成され、断熱空間87に入り込むパッキン82の高さH近傍まで、ケース本体71に液抜き穴94を複数設けている。
この場合、隙間88から断熱空間87に侵入した液体が、断熱空間87内に留まることなく液抜き孔94から投入ケース41の外部に排出されるので、投入ケース41の断熱空間87内に侵入した液体を外部に排出し易くして、衛生面を高めることが可能となる。
また本実施形態では、投入ケース41の上方に透明部材であるガラス窓44を配設し、ガラス窓44は、その周縁をパッキン45で保持した状態で、空間60を隔てて配置した一対の部材である上蓋ベース58と上蓋カバー59との間に挟持されるようになっている。
この場合、投入ケース41からの上昇熱がガラス窓44に達しても、パッキンにより断熱して、部材が温度上昇するのを防止できる。また、ガラス窓44と上蓋ベース58や上蓋カバー59との間をパッキン45で塞ぐことにより、ガラス窓44のガタつきを防止し、且つ空間60内に粉体などの異物が浸入するのを防止できる。
また、上記ガラス窓44は、投入ケース41の上面開口と対向しない面に、印刷部61を形成するのが好ましい。
この場合、ガラス窓44の上面は投入ケース41からの粉体が固着しにくく、そこに印刷部61を形成することで、印刷部61を剥す虞を自ずと回避できる。
また本実施形態では、投入ケース41に手動操作が可能なフック部96を設け、投入ケース41の底壁は、フック部96の操作で開放される下蓋としての開閉板72により構成され、フック部96は通常時に手に触れない位置に設けられている。
この場合、手動操作が可能なフック部96を設けることで、投入ケース41の清掃時には、フック部96を利用して開閉板72の開閉が可能になり、かつ通常時にはフック部96が容易に手に触れないので、誤使用による粉体の落下を防止できる。したがって、投入ケース41の清掃性を良好に保つと共に、通常時には投入ケース41から不意に粉体が落下しない調理器を提供できる。
また、本実施例における投入ケース41は、前述した隙間88の開放端の近傍に位置して、パッキン82とケース本体71との間を密閉するシール部としての突起97を設けている。
この場合、突起97によりケース本体71とパッキン82との間の液体の浸み出しを防いで、ケース本体71とパッキン82との間の密閉性を高めることができる。
また、本実施形態のパッキン82は、開閉板72を閉じたときにその開閉板72に押圧される耳部92を有し、耳部92の変形を防止するリブ98を、少なくともヒンジ軸76側に位置するケース本体71の一側に形成している。
この場合、開閉板72を閉じてパッキン82が開閉板72に押し付けられたときに、耳部92はリブ98に当接してそれ以上の変形が防止され、開閉板72とパッキン82との間を確実に密閉させることができる。
また本実施形態では、本体蓋34と上蓋35との嵌合力が、投入ケース41の下蓋である開閉板72を開放する力よりも大きくなる構成を採用している。
この場合、本体蓋34と上蓋35との嵌合力を、開閉板72を開放する力よりも大きくすることにより、使用者が開閉板72を開けたときに、本体蓋34から上蓋35が外れて開いてしまうことがなく、本体1が転倒するなどの虞を防ぐことができる。
また本実施形態では、パンケース7内のパン原料をパン生地に練り上げる混練手段23を備えた調理器において、混練手段23は、混練具であるパン羽根14と、このパン羽根14に回転力を与える回転軸としての羽根軸12とを備え、パン羽根14に形成したD形状の孔18に、羽根軸12を嵌合させる構成となっている。
この場合、パン羽根14の孔18に羽根軸12を嵌合することにより、羽根軸12に対するパン羽根14の方向性は自ずと定まる。また、パン羽根14を羽根軸12に嵌合する際に、パン羽根14が擦れたとしても、パン羽根14からの小片はD形状の孔18に対応した羽根軸12の部分である装着部15に留まり、パンケース7内のパン生地に付着しにくくなる。したがって、羽根軸12に対するパン羽根14の方向性を定めると共に、パン羽根14から擦れた小片がパン生地に付着しにくい調理器を提供できる。
また本実施形態では、電源コード102を収納するためのコードボックス101を本体1に配設し、コードボックス101の中に電池であるボタン電池104を収納する電池ケース103を設けている。
この場合、コードボックス101内に電池ケース103を設けることで、電池ケース103をわざわざ調理器の別な部位に設ける必要がなく、安価で簡単な構造を実現できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。