JP2018196941A - ガスバリア積層体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
これら蒸着フィルムは、透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性および積層フィルムの密着性向上効果を有しているため、金属箔等では得ることができない絶縁特性、透明性を有する包装材料として好適とされている。
材の表面に対してリアクティブエッチング処理を施す際にC−OH結合あるいはC=O結合の割合を制御することにより、レトルト処理・ボイル処理を行っても密着性が劣化しないガスバリア積層体の製造方法を提供することを目的とする。
ポリエチレンテレフタレート(PET)基材の両面または片面に少なくとも酸化アルミニウム膜を積層してなるガスバリア積層体の製造方法において、
前記PET基材表面にリアクティブイオンエッチング(RIE)処理を施した後、酸化アルミニウム膜を蒸着法により積層する工程を備え、前記RIE処理を施した際のPET基材表面においてX線光電子分光法(XPS)で測定されたC1sピークの波形分離で確認される生成官能基C−OH結合ピークの面積率が、1.0%から6.0%の範囲内であることを特徴とするガスバリア積層体の製造方法である。
前記RIE処理を施したPET基材表面に対して前記XPSで測定されたC1sピークの波形分離で確認される生成官能基C=O結合の面積率が、0.5%〜4.0%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア積層体の製造方法である。
前記酸化アルミニウム膜において、前記XPS測定によって算出される酸素とアルミニウムの比(O/Al)が1.5〜1.9の範囲内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のガスバリア積層体の製造方法である。
前記酸化アルミニウム膜の厚さが5〜30nmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア積層体の製造方法である。
前記PET基材表面にプラズマを利用したRIE処理が施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア積層体の製造方法である。
前記RIE処理が、アルゴン、窒素、酸素、水素のうちの1種類のガスまたはこれらの混合ガスを用いて1回以上行われる処理であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア積層体の製造方法である。
具体的には、請求項1又は2に記載の発明により、レトルト処理・ボイル処理で密着性が劣化しないガスバリア積層体の基材となる。また請求項3に記載の発明によりレトルト処理・ボイル処理で透明性に優れた膜質となる。また請求項4に記載の発明により、レトルト処理・ボイル処理で密着性が劣化しない膜厚となる。さらに請求項5又は6に記載の発明により、処理液を用いた化学処理に比べて廃液を出さず環境を汚染しない処理が可能
となる。
図1は本発明に係るガスバリア積層体を説明する断面図である。図1で示すガスバリア積層体10は、PET基材1の表面に、プラズマを利用したRIE処理による前処理を施した処理層3が形成され、その上に酸化アルミニウム膜2が形成された構造である。
プラズマ処理により生成したPET基材1表面の官能基C−OH結合とC=O結合の割合は、X線光電子分光法(XPS)で測定される。このとき測定面積を直径6mmとし、100WのX線を照射してC1sスペクトルを測定し、波形分離解析を行うことによって前記結合の割合が得られる。
このような解析を行った結果に基づいて、本発明者はC−OH結合の割合(%)とC=O結合の割合(%)が適切な値になっていないと密着性劣化を起こしやすいことを見出した。
まず、PET基材の表面にプラズマによるRIE処理を施していない未処理PETフィルムの分子構造は、図2で示すXPSで測定されたC1s波形の波形分離解析から各結合のピーク値を読み取ることにより、C−C結合が約60%、C−O結合が約20%、COO結合が約20%となることがわかる。したがってXPSでは分子構造が測定される。
上述した基材1はポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、酸化アルミニウム膜の透明性を生かすために、可能であれば透明なPET基材であることが好ましい。PET基材は延伸したものの方が機械的強度や寸法安定性が良い。またこのPET基材の、酸化アルミニウム膜が設けられる面と反対側の表面に、公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などが使用されていても良い。または押出しラミネーション法によりポリエチレンを貼りあわせるために、RIE処理を施してC−OH結合とC=O結合の割合を密着性に優れた範囲にしても効果的である。この時押出されるポリエチレンの温度は300℃から340℃であることが望ましい。
本発明のガスバリア積層体の製造方法では、PET基材の酸化アルミニウム膜を積層する側の面に、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施す。
このRIEによる処理を行う条件を制御することで、発生したラジカルやイオンを利用してPET基材の表面に生成する官能基の割合を調整したり、他の官能基を生成させることができる化学的効果と、イオンエッチングすることで表面の不純物を除去したり、表面粗さを大きくしたりといった物理的効果の2つの効果を同時に得ることが可能である。これにより、PET基材と酸化アルミニウム膜との密着を向上させ、レトルト処理やボイル処理で両者が剥離しない構造となる。
陰極15は開口部を有するボックス形状で、その開口部は処理ロール6に対向して開口している。ガス導入口8は陰極15の上方に配置され、処理ロール6と陰極15の間、及び処理ロール6と遮蔽板14の間の空隙にRIE用ガスが導入されるようになっている。
陰極15及び遮蔽板14との間にプラズマを発生させる。これにより、陽極である処理ロール6に向けてプラズマ5が引き寄せられ、PET基材7の表面にプラズマ5を作用させる。
次に酸化アルミニウム膜2について説明する。酸化アルミニウム膜はXPS法によって算出される酸素とアルミニウムの比(O/Al)が1.5〜1.9であることが好ましい。O/Alが1.5より小さい場合、バリア性が低下し、かつバリア層が着色し透明性を失う。一方、1.9より大きい場合、バリア膜の残留応力が大きく、また水酸基が多く導入された状態でバリア性が著しく低下する。
また、酸化アルミニウム膜上には、保護、接着性および印刷適性を向上させるため、オーバーコート層を形成することができる。このオーバーコート層としては、溶剤溶解性または水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ビニルアルコール樹脂、EVOH樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂およびアルキルチタネート等を単独あるいは2種類以上からなる層を設けることができる。また、オーバーコート層としては、バリア性、摩耗性、滑り性向上のためシリカゾル、アルミナゾル、粒子状無機フィラーおよび層状無機フィラーから選択される1種類以上を添加あるいはこれらの1粒子の存在下で上記樹脂を重合あるいは縮合により形成して得た上記樹脂からなるオーバーコート層が好ましい。
測定装置は日本電子株式会社製のX線光電子分光分析装置JPS−9030を用いた。X線源として非単色化MgKα(1253.6eV)を使用し、X線出力は100W(10kV−10mA)で測定した。C−OH結合とC=O結合の面積率を求めるためにC1sの波形分離解析を行い、O/Alを求めるための定量分析には、それぞれO1sで2.28、Al2pで0.6の相対感度因子を用いて計算した。
厚さ12μmのPETフィルムの片面に、電子線加熱方式を用いて酸化アルミニウム膜を10nmの厚みで蒸着しガスバリア積層体を作製した。この時のPET面にはホロアノード・プラズマ処理により3Wの出力でアルゴンガスを用いて処理し、C−OH%が1.5%、C=O%が0.5%、O/Alが1.60であった。酸化アルミニウム蒸着膜の上にPVAとTEOSを混合したオーバーコートを300nmの厚みでコートした。
ホロアノード・プラズマ処理の出力を25WとしてC−OH%が3.0%、C=O%が0.8%に調整し、O/Alが1.72であった以外は実施例1と同様にして、ガスバリア積層体を作製した。
ホロアノード・プラズマ処理の出力を35WとしてC−OH%が4.7%、C=O%が3.1%に調整し、O/Alが1.78であった以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を作製した。
ホロアノード・プラズマ処理の出力を0W(未処理)の場合、C−OH%は0.0%、C=O%が0.0%、O/Alが1.56であった以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を作製した。
ホロアノード・プラズマ処理の出力を1WとしてC−OH%が1.0%、C=O%が0.0%16.1%に調整し、O/Alが1.92であった以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を作製した。
ホロアノード・プラズマ処理の出力を45WとしてC−OH%が6.5%、C=O%が4.5%に調整し、O/Alが1.95であった以外は実施例1と同様にしてガスバリア積層体を作製した。
上記サンプルのガスバリア積層体についてバリアコート層側にウレタン系接着剤を用いて厚み15μmのナイロン(ONy)を貼り合せ、さらに厚み60μmポリプロピレンフィルム(CPP)をウレタン系接着剤で貼り合せたラミネートフィルムを作成した。このフィルムを用いてA5サイズの三方パウチを作成した。パウチの中身は市水を使用した。
このパウチを121℃30分の条件でレトルト処理をして、レトルト後2時間以内にガスバリア積層体とナイロンの間を剥がしてきっかけとし、オリエンテック社製の引張試験機テンシロンRTC−1250で180°剥離して剥離強度を測定した。
以上の測定結果を表1に示す。評価基準として、剥離強度2N/15mm以上を示した場合を適として○とし、2N/15mmより値が低い場合を不適として×とした。
2・・・酸化アルミニウム膜
3・・・プラズマ処理層
4・・・電極
5・・・プラズマ
6・・・処理ロール
7・・・PET基材
8・・・ガス導入口
9・・・マッチングボックス
10・・・ガスバリア積層体
14・・・遮蔽板
15・・・電極(陰極)
Claims (6)
- ポリエチレンテレフタレート(PET)基材の両面または片面に少なくとも酸化アルミニウム膜を積層してなるガスバリア積層体の製造方法において、
前記PET基材表面にリアクティブイオンエッチング(RIE)処理を施した後、酸化アルミニウム膜を蒸着法により積層する工程を備え、
前記RIE処理を施した際のPET基材表面においてX線光電子分光法(XPS)で測定されたC1sピークの波形分離で確認される生成官能基C−OH結合ピークの面積率が、1.0%から6.0%の範囲内であることを特徴とするガスバリア積層体の製造方法。 - 前記RIE処理を施したPET基材表面に対して前記XPSで測定されたC1sピークの波形分離で確認される生成官能基C=O結合の面積率が、0.5%〜4.0%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア積層体の製造方法。
- 前記酸化アルミニウム膜において、前記XPS測定によって算出される酸素とアルミニウムの比(O/Al)が1.5〜1.9の範囲内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のガスバリア積層体の製造方法。
- 前記酸化アルミニウム膜の厚さが5〜30nmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア積層体の製造方法。
- 前記PET基材表面にプラズマを利用したRIE処理が施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア積層体の製造方法。
- 前記RIE処理が、アルゴン、窒素、酸素、水素のうちの1種類のガスまたはこれらの混合ガスを用いて1回以上行われる処理であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア積層体の製造方法。
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