JP2018196851A - ガスバリア性フィルムとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高いガスバリア性を保持しつつ、更なる薄膜化を可能としたガスバリア性フィルムを提供する。【解決手段】ガスバリア性フィルムの製造方法は、高分子基材からなる支持基材上にUV硬化樹脂もしくは熱硬化樹脂のいずれかを塗布し、硬化させ樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層上に原子層堆積法を用いてバリア層を形成する工程とを含む。支持基材を、樹脂層およびバリア層から剥離することで光学フィルムとして使用できる。【選択図】図1
Description
本発明は、ガスバリア性フィルムに関する。
近年、有機ELディスプレイ、有機EL照明、有機太陽電池など次世代デバイスの開発が行われており、一部では実用化されている。これらのデバイスの基本構成となる素子は、精密な構造を有し、かつ外部からの影響を受けやすい材料から形成される。このため、例えば、極微量の水分や酸素の影響で構造や材料の劣化が生じ、デバイスの機能が低下することがある。これに対応するため、例えば水分による有機EL素子の劣化に対しては、素子を空気から遮断する封止効果に優れ、防湿性が高く、光透過性を有するガラス基板により挟持する構造が採用されている。
しかし、ガラスの取り扱い難さ、それ自体の厚さや重さが、ガラス基材を用いた素子構造の課題となる。そのため、ガラス基材の代替として、透明ガスバリア性フィルムの利用が検討されている。例えば、高い水蒸気バリア性を達成するため、プラスチックフィルム基材上に緻密な無機材料の薄膜からなるガスバリア層を形成したガスバリア性フィルムや、無機材料の脆弱性を補うために有機材料と無機材料とを積層形成した複合ガスバリア層を有するガスバリア性フィルムが開発されてきた。
ところで、有機ELディスプレイでは、画像の高輝度化・高細密化と合わせて、薄型化の要求が高まっている。有機ELディスプレイを薄型化することで、デザイン性やフレキシブル性の向上が可能となる。その場合、有機ELディスプレイの応用先が増え、更なる需要拡大に繋がる可能性がある。
ガスバリア性フィルム薄膜化には、積層構成の単純化と基材の厚みの低減が効果的である。原子層堆積膜は、単層で10−4g/m2/day台のバリア性能を発現するため、積層構造によるガスバリア性フィルムよりも構成を単純化できるため、他の成膜法よりも有利であるといえる。原子層堆積膜によるガスバリア性フィルム製造法として、空間分割型ロールツーロール成膜方式がある。このような空間分割型原子層堆積膜形成法では、フィルム基材の搬送が技術的なポイントとなる。両面非接触搬送のため、フィルム膜厚が薄いほど、基材折れ、バタツキ等のリスクが高い。
また、ディスプレイ用途に用いるフィルム部材としては、基材となるフィルムは光学等方性であることが望ましい。例えば、特許文献1は、光学等方性基材である脂環式オレフィン樹脂フィルムに無機層を形成することで、ガスバリア性光学フィルムを作製することを開示している。
そこで、本発明はこれらの事情に鑑みてなされたものであり、高いガスバリア性を保持しつつ、更なる薄膜化を可能としたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一局面は、ガスバリア性フィルムの製造方法であって、高分子基材からなる支持基材上にUV硬化樹脂もしくは熱硬化樹脂のいずれかを塗布し、硬化させ樹脂層を形成する工程と、樹脂層上に原子層堆積法を用いてバリア層を形成する工程とを含む、ガスバリア性フィルムの製造方法である。
本発明の他の局面は、UV硬化樹脂もしくは熱硬化樹脂のいずれかからなる樹脂層と、樹脂層上に形成される原子層堆積膜とを備えるガスバリア性フィルムである。
本発明により、高いガスバリア性能を有し、さらなる薄膜化を可能としたガスバリア性光学フィルムを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法などを下記のものに特定するものではない。本発明は、本実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルム10及びガスバリア性フィルム20について、複数の構成例を挙げて説明する。
(1)第1の構成例
本構成例に係るガスバリア性フィルム10の断面図を図1に示す。ガスバリア性フィルム10は、プラスチックフィルムからなる剥離可能な支持基材11と、バリアフィルム基材となる樹脂層12と、原子層堆積膜13と、をこの順に備える。また、ガスバリア性フィルム10から支持基材11を剥離除去することにより、樹脂層12を基材としたガスバリア性フィルム20を得ることができる。支持基材11から剥離される前のガスバリア性フィルム20の断面図を図2に示す。ガスバリア性フィルム20は、光学フィルムとしてディスプレイ装置等に好適に用いることができる。
本構成例に係るガスバリア性フィルム10の断面図を図1に示す。ガスバリア性フィルム10は、プラスチックフィルムからなる剥離可能な支持基材11と、バリアフィルム基材となる樹脂層12と、原子層堆積膜13と、をこの順に備える。また、ガスバリア性フィルム10から支持基材11を剥離除去することにより、樹脂層12を基材としたガスバリア性フィルム20を得ることができる。支持基材11から剥離される前のガスバリア性フィルム20の断面図を図2に示す。ガスバリア性フィルム20は、光学フィルムとしてディスプレイ装置等に好適に用いることができる。
〔支持基材11〕
支持基材11は、樹脂層の形成の足場及びロールツーロール成膜時の樹脂層の搬送キャリアとなるプラスチックフィルムである。支持基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等を用いることができる。
支持基材11は、樹脂層の形成の足場及びロールツーロール成膜時の樹脂層の搬送キャリアとなるプラスチックフィルムである。支持基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等を用いることができる。
支持基材の厚さは特に制限されるものではないが、フィルム基材の搬送やハンドリング性を考慮して、50μm以上200μm以下の範囲にあることが好ましい。
〔樹脂層12〕
樹脂層12は、支持基材を除去した後のガスバリア性光学フィルムの基材となる。樹脂層12の材料には熱硬化樹脂もしくはUV硬化樹脂を用いることができ、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレートなどの重合性が高いアクリル系のモノマーまたはオリゴマーを適宜選定して用いることができる。
樹脂層12は、支持基材を除去した後のガスバリア性光学フィルムの基材となる。樹脂層12の材料には熱硬化樹脂もしくはUV硬化樹脂を用いることができ、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレートなどの重合性が高いアクリル系のモノマーまたはオリゴマーを適宜選定して用いることができる。
〔原子層堆積膜13〕
原子層堆積層13は、ALD(Atomic Layer Deposition)法によって樹脂層の表面に形成された膜である。ALD法は、表面吸着した物質を表面における化学反応によって原子レベルで一層ずつ成膜する方法である。具体的には、ALD法は、前駆体又はプリカーサと呼ばれる活性ガスと、反応性ガスとを交互に用い、樹脂層の表面における吸着と、これに続く化学反応とを交互に行うことで、樹脂層の表面に原子層を一層ずつ成長させていく成膜方法である。ALD法は、真空蒸着法やスパッタリング法や一般的なCVD法と比較して、緻密であり成膜欠陥の少ない膜を形成することができる。
原子層堆積層13は、ALD(Atomic Layer Deposition)法によって樹脂層の表面に形成された膜である。ALD法は、表面吸着した物質を表面における化学反応によって原子レベルで一層ずつ成膜する方法である。具体的には、ALD法は、前駆体又はプリカーサと呼ばれる活性ガスと、反応性ガスとを交互に用い、樹脂層の表面における吸着と、これに続く化学反応とを交互に行うことで、樹脂層の表面に原子層を一層ずつ成長させていく成膜方法である。ALD法は、真空蒸着法やスパッタリング法や一般的なCVD法と比較して、緻密であり成膜欠陥の少ない膜を形成することができる。
ALD法の具体的な成膜方法は、以下のような手法により行われる。始めに、いわゆるセルフ・リミッティング効果を利用し、樹脂層上に前駆体が一層のみ吸着したところで未反応の前駆体を排気する(第1のステップ)。ここで、セルフ・リミッティング効果とは、樹脂層上の表面吸着において、表面がある種のガスで覆われると、それ以上、そのガスの吸着が生じない現象のことを言う。
次いで、チャンバー内に反応性ガスを導入して、樹脂層の表面に吸着している前駆体を酸化させて、所望の組成を有する薄膜を一層のみ形成する。その後、反応性ガスを排気する(第2のステップ)。ALD法では、上記第1及び第2のステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返し行うことで、樹脂層上に薄膜を原子レベルで一層ずつ成膜する。
本実施形態において、原子層堆積膜は、原子層堆積膜の成膜原料となる前駆体(例えば、TMA:Tri−Methyl AluminumやBis−diethylaminosilane等の金属含有前駆体)を含有する。
原子層堆積層13として、例えば、Al、Ti、Si、Zn、Sn、Ta、Nbなどの元素を含む無機酸化膜や、これらの元素を含む窒化膜や酸窒化膜、それらの混合化合物を用いることができる。例えば、原子層堆積層12は、AlSiOx、TiAlOx、TiOx、TaOx又はNbOxからなる。また、原子層堆積層12としては、例えば、ZrやHfといった他元素を含む酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、それらの混合化合物等を用いることができる。
原子層堆積膜の形成において、基材表面への前駆体ガスの吸着過程が重要となる。基材がポリマーの場合、次の式(1)に例示するように、前駆体がポリマー鎖中のヒドロキシル基に化学吸着する。このときの、前駆体が化学吸着する求核性官能基(親水基)を、吸着サイトと呼ぶ。このときの前駆体と基材の吸着サイトの反応性と、吸着サイトの密度が化学吸着に大きく影響する。
R−OH+Al(CH3)3→R−O−Al(CH3)2+CH4↑ ・・・式(1)
R−OH+Al(CH3)3→R−O−Al(CH3)2+CH4↑ ・・・式(1)
吸着サイトの密度を増加させるために、O2やN2を含むガスを使用してプラズマ処理を行い、高分子基材の表面に官能基の導入が行われる。しかし、高分子の種類によっては、プラズマ処理が高分子鎖の切断を起こす場合もある。高分子鎖に切断が生じた箇所は物理的強度が低下し、低い凝集力の部分となり、weak boundary layer(接着力の弱い界面境界層)を形成して接着強度の低下につながる。したがって、高分子基材表面への官能基導入のためのプラズマ処理は接着強度の面から制約がある。例えば、高分子基材としてはPETやPENがよく用いられる。それらはモノマーの構造上、十分な吸着サイトを有していないため、プラズマ処理による親水基の導入が行われる。
一方、本発明では樹脂層12の表面に原子層堆積膜13を形成する。樹脂層12の材料となるモノマーの構造を選択することで、吸着サイト量の調整が可能となる。すなわち、プラズマ処理等を行わずに所望の吸着サイト密度を有する基材を得ることが可能となる。
原子層堆積層13としては、水蒸気バリア性、耐久性、及びコストの観点より、Al、Si、及びTiのうち、少なくとも1種の元素を含む膜(例えば、上記説明したような膜)を用いるとよい。このような元素を含む膜を原子層堆積層13として用いることで、高い水蒸気バリア性、及び高い耐久性を得ることができると共に、コストを低減することができる。
原子層堆積膜13の厚さは、例えば0.5nm以上200nm以下であることが好ましい。原子層堆積膜13の厚さが0.5nm未満であると、製造技術の観点から十分な水蒸気バリア性を有した原子層堆積膜13を形成することが困難である。原子層堆積膜13の厚さが200nmを超えると、コスト及び成膜時間が増大する。したがって、原子層堆積層13の厚さを0.5nm以上200nm以下の範囲内とすることで、短時間で、かつ十分な水蒸気バリア性を有した原子層堆積膜13を得ることができる。
また、原子層堆積膜13は高い表面被覆(step coverage)性を有する。塗布フィルムである樹脂層は表面粗さが存在し、例えばスパッタ法等で無機膜を形成すると、表面粗さに追従できず、膜欠陥が生じる可能性がある。一方、原子層堆積膜13は表面被覆性により、樹脂層表面のあれに追従し膜形成するため、欠陥発生が少なく、ハイバリア性能を有する膜が形成できると考えられる。
〔工程順の一例〕
第1の構成例では、支持基材11の表面に樹脂層12を形成する。たとえば支持基材11としてPETを用い、樹脂層12の材料としてアクリル系オリゴマーを用いる。次に、樹脂層12の表面に原子層堆積層13を形成する。また、支持基材11を剥離除去することにより、樹脂層12を基材としたガスバリア性フィルム20(光学フィルム)としてもよい。
第1の構成例では、支持基材11の表面に樹脂層12を形成する。たとえば支持基材11としてPETを用い、樹脂層12の材料としてアクリル系オリゴマーを用いる。次に、樹脂層12の表面に原子層堆積層13を形成する。また、支持基材11を剥離除去することにより、樹脂層12を基材としたガスバリア性フィルム20(光学フィルム)としてもよい。
(2)第2の構成例
本構成例に係るガスバリア性フィルム10の断面図を図3に示す。ガスバリア性フィルムは、プラスチックフィルムからなる剥離可能な支持基材11と、バリアフィルム基材となる樹脂層12と、原子層堆積膜13と、保護層となるオーバーコート層14と、をこの順に備える。
本構成例に係るガスバリア性フィルム10の断面図を図3に示す。ガスバリア性フィルムは、プラスチックフィルムからなる剥離可能な支持基材11と、バリアフィルム基材となる樹脂層12と、原子層堆積膜13と、保護層となるオーバーコート層14と、をこの順に備える。
〔オーバーコート層14〕
オーバーコート層14は、原子層堆積膜13を保護する保護膜である。オーバーコート層14により、ガスバリア性フィルムの加工や輸送の際に原子層堆積膜が傷つき、バリア性能が劣化すること防止する。
オーバーコート層14は、原子層堆積膜13を保護する保護膜である。オーバーコート層14により、ガスバリア性フィルムの加工や輸送の際に原子層堆積膜が傷つき、バリア性能が劣化すること防止する。
オーバーコート層14は、樹脂層12との線膨張係数の差が小さいことが好ましい。線膨張係数の差が大きいと、ガスバリア性フィルムがカールする原因となる。線膨張係数を統一するという目的で、オーバーコート層として、樹脂層と同一の樹脂を用いることができる。
オーバーコート層14の材料には熱硬化樹脂もしくはUV硬化樹脂を用いることができ、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレートなどの重合性が高いアクリル系のモノマーまたはオリゴマーを適宜選定して用いることができる。
オーバーコート形成法は、原子層堆積膜の損傷を防ぐため、非接触方式である必要がある。有機材料を含む場合は、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法などにより形成することができる。
〔工程順の一例〕
第2の構成例では、支持基材11の表面に樹脂層12を形成する。樹脂層12の材料には、例えばアクリル系オリゴマーを用いる。次に、樹脂層12の表面に原子層堆積層を形成する。次に、原子層堆積膜13の表面にオーバーコート層14を形成する。オーバーコート層の材料には、例えばアクリル系オリゴマーを用いる。また、支持基材11を剥離除去することにより、樹脂層12を基材としたガスバリア性フィルム20(光学フィルム)としてもよい。
第2の構成例では、支持基材11の表面に樹脂層12を形成する。樹脂層12の材料には、例えばアクリル系オリゴマーを用いる。次に、樹脂層12の表面に原子層堆積層を形成する。次に、原子層堆積膜13の表面にオーバーコート層14を形成する。オーバーコート層の材料には、例えばアクリル系オリゴマーを用いる。また、支持基材11を剥離除去することにより、樹脂層12を基材としたガスバリア性フィルム20(光学フィルム)としてもよい。
(本実施形態の効果)
本実施形態は、以下の効果を奏する。
(1)原子層堆積膜13は、薄膜単層で高いバリア性(10−4〜10−6g/m2/day)を持つ。このため、ガスバリア性光学フィルムにおけるガスバリア層の薄膜化(又は、層数を減らすこと)が可能になり、工程削減、コスト削減、光線透過率の向上を図ることができる。
(2)樹脂層12は塗布法により形成される。そのため、PET等の延伸フィルムで見られる光学異方性がなく、光学フィルムとしての用途に適している。
(3)樹脂層12は、材料となる樹脂の設計により、原子層堆積層13を形成する前駆体の吸着サイト数を制御することができる。そのため、吸着サイト数を増加させる手法となる、アンダーコート層の形成や、プラズマ酸化処理等の工程を削減できる。
(4)塗布法により形成された樹脂層13の表面には微少な凹凸が存在する可能性がある。原子層堆積膜13は表面被覆性が高いため、凹凸に追随するように膜形成する為、基材の凹凸由来のバリア性劣化のリスクが小さい。
(5)ガスバリア性フィルムの薄膜化において、基材厚さを小さくすると成膜時の搬送が技術的課題となり得る。支持フィルムについては製造装置で搬送の容易である厚さを用いることができるので、この課題の解決策となる。
(6)ガスバリア性フィルムの薄膜化により、素子製造時にハンドリング性が問題となり得る。本発明では支持基材11を製造工程の直前に剥離することで、ハンドリング性と薄膜化の両立を可能としている。
(7)積層数の多いガスバリア性フィルムでは、往々にしてフィルムのカールが問題となる。本発明では、ALD膜が薄膜単層で高いバリア性を発現できることと、オーバーコート層14に支持基材と線膨張係数が近い材料を用いることができる点で、カールを抑制できる。
本実施形態は、以下の効果を奏する。
(1)原子層堆積膜13は、薄膜単層で高いバリア性(10−4〜10−6g/m2/day)を持つ。このため、ガスバリア性光学フィルムにおけるガスバリア層の薄膜化(又は、層数を減らすこと)が可能になり、工程削減、コスト削減、光線透過率の向上を図ることができる。
(2)樹脂層12は塗布法により形成される。そのため、PET等の延伸フィルムで見られる光学異方性がなく、光学フィルムとしての用途に適している。
(3)樹脂層12は、材料となる樹脂の設計により、原子層堆積層13を形成する前駆体の吸着サイト数を制御することができる。そのため、吸着サイト数を増加させる手法となる、アンダーコート層の形成や、プラズマ酸化処理等の工程を削減できる。
(4)塗布法により形成された樹脂層13の表面には微少な凹凸が存在する可能性がある。原子層堆積膜13は表面被覆性が高いため、凹凸に追随するように膜形成する為、基材の凹凸由来のバリア性劣化のリスクが小さい。
(5)ガスバリア性フィルムの薄膜化において、基材厚さを小さくすると成膜時の搬送が技術的課題となり得る。支持フィルムについては製造装置で搬送の容易である厚さを用いることができるので、この課題の解決策となる。
(6)ガスバリア性フィルムの薄膜化により、素子製造時にハンドリング性が問題となり得る。本発明では支持基材11を製造工程の直前に剥離することで、ハンドリング性と薄膜化の両立を可能としている。
(7)積層数の多いガスバリア性フィルムでは、往々にしてフィルムのカールが問題となる。本発明では、ALD膜が薄膜単層で高いバリア性を発現できることと、オーバーコート層14に支持基材と線膨張係数が近い材料を用いることができる点で、カールを抑制できる。
本発明におけるガスバリア性フィルムの製造方法及びガスバリア性フィルムについて、以下に具体的な実施例および比較例を挙げて説明する。本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
支持フィルムとして厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる。支持フィルム上に非ウレタン系アクリルオリゴマー(M211B/DCP−4EO−A,東亜合成/共栄社化学)を塗工後、紫外線硬化し30μmの樹脂層を形成した。樹脂層上に原子層堆積法を用いてAlSixOy膜を20nm形成し、支持フィルムを剥離することで実施例1のガスバリア性フィルム(光学フィルム)を作製した。
支持フィルムとして厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる。支持フィルム上に非ウレタン系アクリルオリゴマー(M211B/DCP−4EO−A,東亜合成/共栄社化学)を塗工後、紫外線硬化し30μmの樹脂層を形成した。樹脂層上に原子層堆積法を用いてAlSixOy膜を20nm形成し、支持フィルムを剥離することで実施例1のガスバリア性フィルム(光学フィルム)を作製した。
<実施例2>
支持フィルムとして厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる。支持フィルム上にエポキシ系オリゴマー(jer828/CEL2021P/プラクセル305,三菱化学/ダイセル)を塗工後、紫外線硬化し30μmの樹脂層を形成した。樹脂層上に原子層堆積法を用いてAlSixOy膜を20nm形成し、支持フィルムを剥離することで実施例2のガスバリア性フィルム(光学フィルム)を作製した。
支持フィルムとして厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる。支持フィルム上にエポキシ系オリゴマー(jer828/CEL2021P/プラクセル305,三菱化学/ダイセル)を塗工後、紫外線硬化し30μmの樹脂層を形成した。樹脂層上に原子層堆積法を用いてAlSixOy膜を20nm形成し、支持フィルムを剥離することで実施例2のガスバリア性フィルム(光学フィルム)を作製した。
<実施例3>
実施例1と同様の手順でAlSixOy膜の形成まで行った後、AlSixOy膜の表面に、アクリル系樹脂(V425 VMアンカーワニス、東洋インキ)を塗工後、熱アニーリングし2μmのオーバーコート層を形成した。支持フィルムを剥離することで、実施例3のガスバリア性フィルム(光学フィルム)を作製した。
実施例1と同様の手順でAlSixOy膜の形成まで行った後、AlSixOy膜の表面に、アクリル系樹脂(V425 VMアンカーワニス、東洋インキ)を塗工後、熱アニーリングし2μmのオーバーコート層を形成した。支持フィルムを剥離することで、実施例3のガスバリア性フィルム(光学フィルム)を作製した。
<比較例1>
プラスチックフィルム基材として厚さ50μmのシクロオレフィンポリマーを用いる。シクロオレフィンポリマー上にアクリル系樹脂を塗工後、熱硬化し2μmのハードコート層を形成した。樹脂層上に原子層堆積法を用いてAlSixOy膜を20nm形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
プラスチックフィルム基材として厚さ50μmのシクロオレフィンポリマーを用いる。シクロオレフィンポリマー上にアクリル系樹脂を塗工後、熱硬化し2μmのハードコート層を形成した。樹脂層上に原子層堆積法を用いてAlSixOy膜を20nm形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
<比較例2>
プラスチックフィルム基材として厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートを用いる。ポリエチレンテレフタレートの表面を酸素プラズマ処理後、原子層堆積法を用いてAlSixOy膜を20nm形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
プラスチックフィルム基材として厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートを用いる。ポリエチレンテレフタレートの表面を酸素プラズマ処理後、原子層堆積法を用いてAlSixOy膜を20nm形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
<評価>
(1)ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率をMOCON社製AQUATRAN(測定下限5×10−4g/m2/day)を用いて測定した。
(2)ガスバリア性フィルムの全光線透過率(JIS K7361)を測定した。
(3)ガスバリア性フィルムのリタデーションを測定した。
(4)ガスバリア性フィルムのカールを測定した。
(5)ガスバリア性フィルムの厚さを測定した。
(1)ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率をMOCON社製AQUATRAN(測定下限5×10−4g/m2/day)を用いて測定した。
(2)ガスバリア性フィルムの全光線透過率(JIS K7361)を測定した。
(3)ガスバリア性フィルムのリタデーションを測定した。
(4)ガスバリア性フィルムのカールを測定した。
(5)ガスバリア性フィルムの厚さを測定した。
<結果>
評価結果を表1に示す。実施例1〜3では、光学特性の優れるシクロオレフィンポリマーを基材としたガスバリア性フィルムと同等程度の光学特性を有し、厚さがより薄いガスバリア性フィルムを作製することができた。実施例3では、オーバーコート層を形成後も光学特性は変化せず、積層によるカールも見られないことを確認した。
評価結果を表1に示す。実施例1〜3では、光学特性の優れるシクロオレフィンポリマーを基材としたガスバリア性フィルムと同等程度の光学特性を有し、厚さがより薄いガスバリア性フィルムを作製することができた。実施例3では、オーバーコート層を形成後も光学特性は変化せず、積層によるカールも見られないことを確認した。
本発明は、ガスバリア性を有するフィルム等に有用である。
10 ガスバリア性フィルム
11 支持基材
12 樹脂層
13 原子層堆積層
14 オーバーコート層
20 ガスバリア性光学フィルム
11 支持基材
12 樹脂層
13 原子層堆積層
14 オーバーコート層
20 ガスバリア性光学フィルム
Claims (5)
- ガスバリア性フィルムの製造方法であって、
高分子基材からなる支持基材上にUV硬化樹脂もしくは熱硬化樹脂のいずれかを塗布し、硬化させ樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層上に原子層堆積法を用いてバリア層を形成する工程と、を含む、ガスバリア性フィルムの製造方法。 - 前記支持基材を、前記樹脂層および前記バリア層から剥離する工程をさらに含む、請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 前記バリア層の前記樹脂層と接する面の反対側の面側に、熱硬化樹脂もしくはUV硬化樹脂からなるオーバーコート層を形成する工程をさらに含む請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- UV硬化樹脂もしくは熱硬化樹脂のいずれかからなる樹脂層と、
前記樹脂層上に形成される原子層堆積膜と、を備えるガスバリア性フィルム。 - 前記原子層堆積膜の前記樹脂層と接する面の反対側の面側に、熱硬化樹脂もしくはUV硬化樹脂からなるオーバーコート層をさらに備える、請求項4に記載のガスバリア性フィルム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN117301589A (zh) * | 2023-11-02 | 2023-12-29 | 江苏思尔德科技有限公司 | 一种柔性显示用高阻隔膜制备方法 |
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2017
- 2017-05-23 JP JP2017101822A patent/JP2018196851A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN117301589A (zh) * | 2023-11-02 | 2023-12-29 | 江苏思尔德科技有限公司 | 一种柔性显示用高阻隔膜制备方法 |
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