以下に添付図面を参照して、本発明に係る硬貨搬送装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1及び図2は、それぞれ本発明の実施の形態である硬貨搬送装置が適用された硬貨処理機の内部構造を示す斜視図である。ここで例示される硬貨処理機1は、例えば釣銭機として適用されるものであり、入金口2を通じて入金された硬貨を金種毎に収納する一方、出金指示により収納する硬貨を出金口3より払い出すものである。このような硬貨処理機1は、硬貨検銭装置4及び硬貨搬送装置10を備えて構成してある。
硬貨検銭装置4は、入金口2を通じて入金された硬貨の真偽及び金種を鑑別するものである。この硬貨検銭装置4は、鑑別の結果、偽貨と鑑別された硬貨を出金口3まで搬送して払い出すとともに、正貨と鑑別された硬貨を硬貨搬送装置10に搬送するものである。
硬貨搬送装置10は、硬貨検銭装置4で真偽及び金種が鑑別された硬貨を搬送し、その搬送途中で該硬貨の金種を判別するとともに、該硬貨を金種毎に振り分けて収納部5に送出するものである。収納部5は、硬貨搬送装置10で振り分けられた硬貨を金種毎に収納するものであり、出金指示が与えられた場合には、該当する硬貨を出金口3まで送出して、該出金口3を通じて外部に払い出させるものである。また収納部5は、精査指示が与えられた場合には、収納する硬貨を硬貨搬送装置10まで搬送するものである。以下に硬貨搬送装置10の構成について詳細に説明する。
図3は、図1及び図2に示した硬貨搬送装置10を示す斜視図であり、図4及び図5は、それぞれ図3に示した硬貨搬送装置10を一部の構成要素を省略して示す斜視図であり、図6は、図3に示した硬貨搬送装置10を一部の構成要素を省略して示す平面図であり、図7は、図3に示した硬貨搬送装置10の特徴的な制御系を模式的に示すブロック図である。
硬貨搬送装置10は、レール部20と、搬送部30と、リバースローラ(規制部材)40と、中間ローラ(中間規制部材)50と、判別部60と、返却部70と、振分部80と、搬送制御部90とを備えて構成してある。
レール部20は、図8及び図9に示すように、第1レール形成部材21、第2レール形成部材22、第3レール形成部材23及び第4レール形成部材24を備えて構成してある。
第1レール形成部材21は、硬貨搬送装置10における下部の搬送経路HKを形成する第1水平延在部21Aを備えている。第1水平延在部21Aは、複数のレール凸部21Bが水平方向に沿って湾曲する態様で延在しており、第1左延部21aと、前延部21bと、第1右延部21cとを有している。
第1左延部21aは、左方に向けて延在した後に前方に向けて湾曲する態様で形成された部分である。前延部21bは、第1左延部21aの延在端部より前方に向けて延在する部分である。第1右延部21cは、前延部21bの延在端部より右方に向けて湾曲した後に前方に向けて延在する部分である。
また第1レール形成部材21には、第1水平延在部21Aの両側において、該第1水平延在部21Aの延在方向に沿う態様で一対のガイド部21dが立設してあり、外側のガイド部21dには、投入口21e及び搬入口21fが形成してある。投入口21eは、前延部21bの左側のガイド部21dに形成してあり、硬貨検銭装置4で正貨と鑑別された硬貨が投入される開口である。搬入口21fは、収納部5に収納された硬貨が搬入される開口である。そのような一対のガイド部21dは、第1左延部21aの右端側における互いの離間距離が最も拡大するように形成してある。
上記第1水平延在部21Aにおいては、前延部21bのうち投入口21eの右方側のレール凸部21Bの突出高さ、並びに第1右延部21cの右端部におけるレール凸部21Bの突出高さが、第1水平延在部21Aにおけるその他の領域(以下、第1水平延在部21Aの主領域ともいう)のレール凸部21Bの突出高さよりも小さく形成してある。
第2レール形成部材22は、硬貨搬送装置10における前方側右部の搬送経路HKを形成する上方延在部22Aを備えている。上方延在部22Aは、複数のレール凸部22Bが上方に向けて湾曲する態様で延在している。上方延在部22Aは、第1水平延在部21Aにおける第1右延部21cに連続しており、右方に凸となる態様で上方に向けて湾曲している。また上方延在部22Aのレール凸部22Bの突出高さは、第1右延部21cの右端部におけるレール凸部22Bの突出高さと同程度である。
第3レール形成部材23は、硬貨搬送装置10における上部の搬送経路HKを形成する第2水平延在部23Aを備えている。第2水平延在部23Aは、複数のレール凸部23Bの右端部が上方延在部22Aのレール凸部22Bに対向し、かつ複数のレール凸部23Bが第1水平延在部21Aの上方にて水平方向に沿って湾曲する態様で延在しており、第2左延部23aと、後延部23bと、第2右延部23cとを有している。
第2左延部23aは、左方に向けて延在した後に後方に向けて湾曲する部分である。この第2左延部23aは、右端部が上方延在部22Aの上端部に対向する態様で湾曲している。後延部23bは、第2左延部23aの延在端部より後方に向けて延在する部分である。第2右延部23cは、後延部23bの延在端部より右方に向けて湾曲した後に後方に向けて延在する部分である。
このような第2水平延在部23Aにおけるレール凸部23Bの突出高さは、第1水平延在部21Aの主領域におけるレール凸部23Bの突出高さと同程度である。
第4レール形成部材24は、硬貨搬送装置10における後方側右部の搬送経路HKを形成する下方延在部24Aを備えている。下方延在部24Aは、複数のレール凸部24Bが下方に向けて湾曲する態様で延在している。下方延在部24Aは、複数のレール凸部24Bの上端部が第2右延部23cの右端部のレール凸部23Bに対向する態様で湾曲しており、複数のレール凸部24Bの下端部が第1左延部21aのレール凸部21Bに連続している。また下方延在部24Aは、右方に凸となる態様で下方に向けて湾曲している。このような下方延在部24Aにおけるレール凸部24Bの突出高さは、上方延在部22Aにおけるレール凸部24Bの突出高さと同程度である。
このようにレール部20は、第1レール形成部材21、第2レール形成部材22、第3レール形成部材23及び第4レール形成部材24が設けられることにより、各レール凸部21B〜24Bによって無端状の搬送経路HKを構成している。
図10は、図3に示した硬貨搬送装置10を構成する搬送部30を示す斜視図である。この図10に示すように、搬送部30は、複数の保持部30Aが無端状に連結されて構成してある。
このような搬送部30は、その一部が駆動搬送プーリ35a及び複数の従動搬送プーリ35bに噛合している。駆動搬送プーリ35aは、第1伝達ユニット36を介して搬送駆動モータ37に連係されており、搬送駆動モータ37の駆動により駆動力が伝達されて回転するものである。これにより、搬送部30は、搬送駆動モータ37の駆動によって駆動搬送プーリ35aが回転することにより、搬送経路HKに沿って変位するものである。
ここで搬送駆動モータ37は、搬送制御部90から駆動指令が与えられることにより駆動するもので正逆回転に駆動可能なものである。搬送駆動モータ37が正転方向に駆動する場合には、搬送部30は、正回転駆動し、図10の実線矢印で示すように、各保持部30Aが第1水平延在部21A、上方延在部22A、第2水平延在部23A、下方延在部24Aの順に移動する態様でレール部20を搬送方向に沿って変位する。
その一方、搬送駆動モータ37が逆転方向に駆動する場合には、搬送部30は、逆回転駆動し、図10の破線矢印で示すように、各保持部30Aが下方延在部24A、第2水平延在部23A、上方延在部22A、第1水平延在部21Aの順に移動する態様でレール部20を非搬送方向に沿って変位する。
そして、搬送部30では、搬送経路HKの形態上、第1水平延在部21Aを通過する保持部30Aと、第2水平延在部23Aを通過する保持部30Aとでは、その姿勢が上下反転している。
ところで、上記第1伝達ユニット36には、トルクリミッタ36aが設けてある。トルクリミッタ36aは、従来公知のものであり、過負荷がかかると接続を切り、搬送駆動モータ37の駆動力を搬送部30に伝達することを遮断するものである。
上記搬送部30の構成要素である保持部30Aは、硬貨を1枚ずつ保持することが可能なものであり、図11に示すように、保持押圧部材31と保持規制部材32とが保持連結部材33に連結されることにより構成してある。
保持押圧部材31は、搬送経路HKの内側から外側に向けて延在する棒状体である。このような保持押圧部材31は、搬送部30が正回転駆動することにより硬貨を搬送経路HKにおける搬送方向の下流側に向けて押圧するものであり、その下流側を臨む押圧面31aが内方から外方に向かうに連れて漸次搬送方向上流側に傾斜して構成してある。
また保持押圧部材31には、第1水平延在部21A、上方延在部22A及び下方延在部24Aのレール凸部21B,22B,24Bの進入を許容する第1凹部31bと、第2水平延在部23Aのレール凸部23Bの進入を許容する第2凹部31cとが設けてあり、第1凹部31bの底部分の外表面には、搬送方向下流側及び非搬送方向下流側に向けて傾斜する傾斜面31dが形成してある。
保持規制部材32は、保持押圧部材31と同様の形態をなしており、搬送経路HKの内側から外側に向けて延在する棒状体である。このような保持規制部材32は、内方側が保持連結部材33を介して保持押圧部材31に連結しており、搬送部30がレール部20を搬送方向に沿って変位することにより保持押圧部材31に押圧される硬貨が必要以上に該保持押圧部材31から離隔することを規制するものである。尚、保持規制部材32は、当該保持部30Aの搬送方向下流側の保持部30Aを構成する保持押圧部材31と内方側が連結してある。
かかる保持規制部材32は、搬送経路HKの下流側を臨む下流面32aが内方から外方に向かうに連れて漸次上流側に傾斜して構成してある。この保持規制部材32には、第1水平延在部21A、上方延在部22A及び下方延在部24Aのレール凸部21B,22B,24Bの進入を許容する第3凹部32bと、第2水平延在部23Aのレール凸部23Bの進入を許容する第4凹部32cとが設けられており、第3凹部32bの底部分の外表面には、搬送方向下流側及び非搬送方向下流側に向けて傾斜する傾斜面32dが形成してある。
ところで、上述したように、上方延在部22Aの上端部と、第2左延部23aの右端部とは、互いに対向しているので、かかる部分を通過する保持部30Aは、保持押圧部材31の第1凹部31bに上方延在部22Aのレール凸部22Bが進入するとともに、該保持押圧部材31の第2凹部31cに第2左延部23aのレール凸部23Bが進入した状態となる。同様に、保持規制部材32の第3凹部32bに上方延在部22Aのレール凸部22Bが進入するとともに、該保持規制部材32の第4凹部32cに第2左延部23aのレール凸部23Bが進入した状態となる。
また上述したように、第2右延部23cの右端部と、下方延在部24Aの上端部とは、互いに対向しているので、かかる部分を通過する保持部30Aは、保持押圧部材31の第1凹部31bに下方延在部24Aのレール凸部24Bが進入するとともに、該保持押圧部材31の第2凹部31cに第2右延部23cのレール凸部23Bが進入した状態となる。同様に、保持規制部材32の第3凹部32bに下方延在部24Aのレール凸部24Bが進入するとともに、該保持規制部材32の第4凹部32cに第2右延部23cのレール凸部23Bが進入した状態となる。
ところで、上述したように、第1水平延在部21Aにおいては、前延部21bのうち投入口21eの右方側のレール凸部24B、並びに第1右延部21cの右端部におけるレール凸部24Bの突出高さが第1水平延在部21Aの主領域におけるレール凸部24Bの突出高さよりも小さくなっている。
そのため、第1水平延在部21Aの主領域を通過する保持押圧部材31では、図12に示すように、傾斜面31dがレール凸部21Bよりも上方に位置し、押圧面31aがレール凸部21Bよりも下方に位置している。その一方、前延部21bのうち投入口21eの右方側を通過する保持押圧部材31では、図13に示すように、傾斜面31dだけでなく押圧面31aの上端部もレール凸部21Bよりも上方に位置している。
上方延在部22Aにおいては、レール凸部22Bの突出高さが第1右延部21cの右端部におけるレール凸部21Bと同程度であるので、第1水平延在部21Aの主領域におけるレール凸部21Bの突出高さよりも小さい。
そのため、上方延在部22Aを通過する保持押圧部材31では、図14に示すように、傾斜面31dだけでなく押圧面31aの上端部もレール凸部22Bよりも上方に位置している。
第2水平延在部23Aにおいては、レール凸部23Bの突出高さは、第1水平延在部21Aの主領域におけるレール凸部21Bの突出高さと同程度であり、保持部30Aの姿勢は、第1水平延在部21Aを通過する姿勢と上下反転している。
そのため、第2水平延在部23Aを通過する保持押圧部材31では、図15に示すように、傾斜面31dは、レール凸部23Bの上端部分より下方に位置し、押圧面31aの一部がレール凸部23Bの上端部分より上方に位置している。
リバースローラ40は、図4に示したように、上方延在部22A(第2レール形成部材22)に対向する態様で支持板41に回転可能に設けてある。このリバースローラ40は、上方延在部22Aのレール凸部22Bの突出高さを小さくしたことに伴い、図10に示すように、前後方向に沿って拡径部40aが所定間隔毎に形成された円柱状を成している。そして、リバースローラ40は、図10及び図16に示すように、上記第1伝達ユニット36、並びにこの第1伝達ユニット36から分岐した第2伝達ユニット42を介して搬送駆動モータ37に連係されており、該搬送駆動モータ37の駆動により自身の中心軸回りに回転するものである。つまり、リバースローラ40は、搬送部30と共通の駆動源により駆動するものである。
そして、リバースローラ40は、搬送駆動モータ37が正転方向に駆動する場合には、図10及び図16の実線矢印で示すように、前方から見て時計回りに回転する一方、搬送駆動モータ37が逆転方向に駆動する場合には、図10及び図16の破線矢印で示すように、前方から見て反時計回りに回転するものである。
そのようなリバースローラ40においては、拡径部40aを有することにより、図17に示すように、リバースローラ40と上方延在部22Aのレール凸部22Bとの離間距離L1の大きさを硬貨が一枚通過できる程度の大きさに調整してある。
中間ローラ50は、図4及び図5に示したように、第1水平延在部21Aの前延部21bのうち投入口21eよりも搬送方向下流側となる領域に対向する態様でガイド部21d間に回転可能に設けてある。この中間ローラ50は、硬質のウレタンゴムにより構成された円柱状部材である。そして、中間ローラ50は、図10及び図16に示すように、上記第1伝達ユニット36、並びにこの第1伝達ユニット36から分岐した第3伝達ユニット51を介して搬送駆動モータ37に連係されており、該搬送駆動モータ37の駆動により自身の中心軸回りに回転するものである。つまり、中間ローラ50は、搬送部30及びリバースローラ40と共通の駆動源により駆動するものである。
そして、中間ローラ50は、搬送駆動モータ37が正転方向に駆動する場合には、図10及び図16の実線矢印で示すように、左方から見て時計回りに回転する一方、搬送駆動モータ37が逆転方向に駆動する場合には、図10及び図16の破線矢印で示すように、左方から見て反時計回りに回転するものである。
そのような中間ローラ50においては、図18に示すように、中間ローラ50と前延部21bのレール凸部21Bとの離間距離L2の大きさを硬貨が数枚(2〜3枚程度)通過できる程度の大きさに調整してある。
判別部60は、第3レール形成部材23に設けてある。この判別部60は、第3レール形成部材23における所定の判別領域において、保持部30Aの保持押圧部材31に押圧されながら搬送される硬貨の金種を判別するものである。かかる判別部60での判別結果は、搬送制御部90に判別信号として出力される。
返却部70は、第3レール形成部材23により形成される搬送経路HKにおいて、判別部60(判別領域)よりも搬送方向下流側に設けられており、返却開口71及び返却ゲート72を備えている。
返却開口71は、搬送部30により搬送されるすべての金種の硬貨の通過を許容する大きさを有する開口である。この返却開口71を通過した硬貨は、所定の経路を通じて出金口3より払い出される。
返却ゲート72は、常態においては返却開口71を閉成する一方、返却指令が与えられた場合に揺動して返却開口71を開成させるものである。
振分部80は、第3レール形成部材23により形成される搬送経路HKにおいて、返却部70よりも搬送方向下流側に設けてある。この振分部80は、複数の振分通過口81及び振分ゲート82を備えて構成してある。
複数の振分通過口81は、それぞれが硬貨を通過させるのに十分な大きさを有した開口である。振分ゲート82は、振分通過口81毎に対応して、それぞれが第3レール形成部材23により形成される搬送経路HKを横断する態様で設けてある。このような振分ゲート82は、振分駆動ソレノイド83が非通電状態となる場合には、対応する振分通過口81を閉成する一方、振分駆動ソレノイド83が通電状態となる場合には、駆動して対応する振分通過口81を開成させるものである。
搬送制御部90は、メモリ91に記憶されたプログラムやデータにしたがって硬貨搬送装置10の動作を統括的に制御するものである。かかる搬送制御部90は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
また搬送制御部90は、上述したように、搬送駆動モータ37に対して駆動指令を与えて該搬送駆動モータ37を正転方向若しくは逆転方向に駆動させるものであるが、搬送駆動モータ37を駆動させる場合には、予め決められた搬送力に近似されるようPWM制御により行う。
以上のような構成を有する硬貨搬送装置10は、硬貨検銭装置4から正貨と鑑別された硬貨が送出されて、硬貨処理機1の動作を統括的に制御する硬貨処理主制御部1Aから搬送制御部90に動作指令が与えられることにより、次のように動作する。
すなわち、搬送制御部90は、搬送駆動モータ37に対して正転方向への駆動指令を与えて該搬送駆動モータ37を正転方向に駆動させ、搬送部30を搬送方向に変位させる。これにより、投入口21eより第1水平延在部21Aに投入された硬貨は、該第1水平延在部21Aにおいて搬送部30により搬送方向に沿って搬送される。
この場合において、第1水平延在部21Aの前延部21bのうち投入口21eの右方側のレール凸部21Bの突出高さをその他よりも小さくしたので、図13に示したように、通過する保持押圧部材31では、傾斜面31dだけでなく押圧面31aの上端部もレール凸部21Bよりも上方に位置している。そのため、保持押圧部材31では、押圧面31aの上端部で硬貨を押圧することができ、硬貨が複数枚重なった状態でも硬貨を搬送方向に沿って確実に搬送することができる。
ところで、第1水平延在部21Aの主領域では、レール凸部21Bの突出高さが投入口21eの右方側のレール凸部21Bの突出高さよりも大きくしてあるので、図12に示したように、通過する保持押圧部材31では、傾斜面31dだけがレール凸部21Bよりも上方に位置している。そのため、保持押圧部材31は、傾斜面31dで硬貨を押圧することになる。このように傾斜面31dで硬貨を押圧することにより、何らかの要因で硬貨が引っ掛かった場合でも、硬貨が傾斜面31dから退避することができ、結果的に搬送部30の変位がロックして搬送不具合が生ずることを回避することができる。
そして、第1水平延在部21Aの前延部21bのうち投入口21eよりも搬送方向下流側となる領域に対向する態様で回転可能に設けられた中間ローラ50は、搬送部30の正回転駆動により(搬送部30の搬送方向の変位により)、左方から見て時計回りに回転している。この中間ローラ50では、前延部21bのレール凸部21Bとの離間距離L2の大きさを硬貨が数枚(2〜3枚程度)通過できる程度の大きさに調整してあり、各保持部30Aを構成する保持押圧部材31により搬送される硬貨の枚数、すなわち保持部30Aに保持される硬貨の枚数を規制することができる。
中間ローラ50の下方域を通過した硬貨は保持押圧部材31に押圧されながら第1右延部21cを通過して上方延在部22Aに至る。上方延在部22Aを通過する保持押圧部材31では、図14に示したように、傾斜面31dだけでなく押圧面31aの上端部もレール凸部22Bよりも上方に位置しているので、押圧面31aで硬貨を確実に搬送することができるとともに、該硬貨に重なった硬貨については、傾斜面31dを利用して硬貨を該保持押圧部材31から離脱させることが可能になる。これにより、リバースローラ40と搬送部30との間に2枚の硬貨が挟まって搬送詰まり等が発生することを抑制することができる。
そして、リバースローラ40は、上方延在部22Aのレール凸部22Bとの離間距離L1の大きさが硬貨が一枚通過できる程度の大きさに調整してあるので、上方延在部22Aを通過した保持部30Aに硬貨が複数保持されることを規制し、保持部30Aに一枚の硬貨を保持させることができる。
上述したように、搬送部30では、第1水平延在部21Aを通過する保持部30Aと、第2水平延在部23Aを通過する保持部30Aとではその姿勢が上下反転していることにより、第2凹部31cに第2水平延在部23Aのレール凸部23Bが進入した状態で変位する場合には、図15に示したように、押圧面31aだけがレール凸部23Bの上端部分より上方に位置することとなり、保持押圧部材31が硬貨を確実に押圧して安定的に搬送することができる。
そして、判別部60にて判別領域を通過する硬貨の金種が判別されると、搬送制御部90は、かかる判別結果に応じて、該当する振分駆動ソレノイド83に振分駆動指令を与えて該振分駆動ソレノイド83を通電状態にさせる。この結果、該当する振分ゲート82を揺動させて、硬貨を該当する振分通過口81に案内し、収納部5に収納させることができる。
次に、収納部5に収納された硬貨の金種毎の枚数を計測する精査処理を行う場合について説明する。かかる精査を行う場合には、硬貨処理主制御部1Aが収納部5の動作を統括する収納制御部5Aに払出指令を与えるとともに、搬送制御部90に精査指令を与える。
払出指令を与えられた収納制御部5Aでは、各収納部5から搬入口21fを通じて硬貨を硬貨搬送装置10に払い出すとともに、計測した払出枚数に関する払出し信号を搬送制御部90に与える。一方、精査指令を与えられた搬送制御部90は、以下のような精査駆動処理を実施する。
図19は、図7に示した搬送制御部90が実施する精査駆動処理の処理内容を示すフローチャートである。
この精査駆動処理において搬送制御部90は、搬送駆動モータ37に対して逆転方向への駆動指令を送出する(ステップS101)。これにより、搬送部30は、逆回転駆動し、非搬送方向へ変位する。このとき、リバースローラ40は前方から見て反時計回りに回転し、中間ローラ50は左方から見て反時計回りに回転する。
このように搬送部30が逆回転駆動することで、搬入口21fを通じて搬入された硬貨は、第1水平延在部21Aの第1右延部21cから前延部21b及び第1左延部21aに搬送される。
上記ステップS101の処理を実施した搬送制御部90は、収納制御部5Aからの払出し信号の入力待ちとなり(ステップS102)、払出し信号を入力した場合には(ステップS102:Yes)、収納部5から払い出された硬貨の枚数をカウントし、カウント数が予め決められた設定数以上であるか否かを判断する(ステップS103,ステップS104)。
ここで設定数は、収納部5に収納可能な硬貨枚数(例えば170枚程度)から所定枚数(例えば20枚程度)を減算したものとされ、円滑に精査処理を行うために決められたものである。
カウント数が設定数未満である場合(ステップS104:No)、払出制御部は、ステップS102〜ステップS104の処理を繰り返す。その一方、カウント数が設定数以上である場合(ステップS104:Yes)、払出制御部は、搬送駆動モータ37に駆動停止指令を送出し(ステップS105)、収納制御部5Aから硬貨の払い出しが完了した旨の払出し完了信号の入力待ちとなる(ステップS106)。
収納制御部5Aから払出し完了信号を入力した場合(ステップS106:Yes)、搬送制御部90は、搬送駆動モータ37に対して正転方向への駆動指令を送出する(ステップS107)。これにより、搬送部30は、正回転駆動し、搬送方向へ変位する。このとき、リバースローラ40は前方から見て時計回りに回転し、中間ローラ50は左方から見て時計回りに回転する。
これによれば、搬入口21fより第1水平延在部21Aに払い出された硬貨を、上述したように硬貨検銭装置4から送出された硬貨と同様に、搬送方向に沿って搬送させることができる。
そして、所定時間が経過するまでに判別部60より判別信号を入力した場合(ステップS108:Yes,ステップS109:No)、搬送制御部90は、該当する振分駆動ソレノイド83に振分駆動指令を送出し(ステップS110)、振分駆動ソレノイド83を通電状態にさせる。これにより、搬送する硬貨を判別結果に応じて該当する振分通過口81に案内し、収納部5に収納させることができる。
一方、判別部60より判別信号を入力せずに所定時間が経過した場合(ステップS108:No,ステップS109:Yes)、搬送制御部90は、搬送駆動モータ37に駆動停止指令を送出し(ステップS111)、その後に手順をリターンさせて今回の処理を終了する。
これによれば、収納部5に収納された硬貨を金種毎に収納するとともに、金種毎の硬貨数を計測することができる。
そして、このような精査処理においても、中間ローラ50が、搬送部30の正回転駆動により(搬送部30の搬送方向の変位により)、左方から見て時計回りに回転し、各保持部30Aを構成する保持押圧部材31により搬送される硬貨の枚数、すなわち保持部30Aに保持される硬貨の枚数を規制することができる。そのため、上方延在部22Aを通過した保持部30Aに硬貨を一枚ずつ保持させるためのリバースローラ40で硬貨詰まり等が発生することを抑制することができる。
以上説明したように、硬貨搬送装置10によれば、硬貨を1枚ずつ保持することが可能な保持部30Aが無端状に連結されて構成された搬送部30が、正回転駆動することにより、第1水平延在部21A、上方延在部22A、第2水平延在部23A、下方延在部24Aの順に搬送経路HKを変位することにより、入金された硬貨を下方から上方に向けて搬送するので、従来のように一対のローラに無端状に張設されたベルトを複数設けて硬貨の搬送を行うのに比して、硬貨処理機1の設置面積を低減させることができ、これにより硬貨処理機1の小型化を図ることができる。
しかも、第1水平延在部21Aを変位する搬送部30に対向する態様で設置された中間ローラ50が、搬送部30が正回転駆動する場合に、第1水平延在部21Aを通過した保持部30Aが保持する硬貨の枚数を規制するので、上方延在部22Aを変位する搬送部30が大量の硬貨を搬送する事態を回避させることができ、リバースローラ40において硬貨詰まり等が発生することを抑制できる。
また上記硬貨搬送装置10によれば、中間ローラ50は、リバースローラ40と共通の駆動源である搬送駆動モータ37により駆動するので、消費電力の低減化を図ることができる。
上記硬貨搬送装置10によれば、第1レール形成部材21に立設された一対のガイド部21dは、第1左延部21aの右端側における互いの離間距離が最も拡大するように形成してあるので、精査処理時に搬送部30を逆回転駆動させることにより、大量の硬貨を貯留することができる。
上記硬貨搬送装置10によれば、第1伝達ユニット36にトルクリミッタ36aが設けてあるので、何らかの要因で搬送部30の変位が一時的に停止した場合でも、リバースローラ40及び中間ローラ50の回転は継続させることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
上述した実施の形態では、中間ローラ50は、前延部21bのレール凸部21Bとの離間距離L2の大きさが決められていたが、本発明においては、中間規制部材は、第1水平延在部を変位する搬送部に対して近接離反する態様でスライド移動可能に設置されており、常態においては搬送部に近接する態様で付勢手段に付勢されていてもよい。これによれば、大量の硬貨が搬送部により搬送される際には、これら硬貨に当接されることにより付勢手段の付勢力に抗して搬送部から離隔する方向にスライド移動することができ、中間規制部材と搬送部との間で硬貨詰まり等が発生することを抑制することができる。
上述した実施の形態では、中間ローラ50が中間規制部材として説明したが、本発明においては、中間規制部材は、円柱状の形態を成している必要はなく、通過する搬送部との離間距離が所定の大きさに調整された板状部材であってもよい。