JP2018193312A - エステル化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反応性良く且つ安価に、目的とするエステル化合物を得ることが可能なエステル化合物の製造方法の提供。【解決手段】プロトン酸(カルボン酸を除く)若しくはその塩、又はカルボン酸ハロゲン化物の存在下、アルコールとカルボン酸無水物とを反応させるエステル化合物の製造方法。プロトン酸がハロゲン化水素であることが好ましく、カルボン酸無水物が有するアシル基とカルボン酸ハロゲン化物が有するアシル基が異なることが好ましい。【選択図】なし
Description
本発明は、エステル化合物の製造方法に関する。また、前記製造方法により得られる新規なエステル化合物に関する。
エステル化合物は可塑剤、樹脂添加剤、合成潤滑油、接着剤等として広い分野で用いられており、その1種であるポリオールエステル類は、例えば電子材料用の溶剤として利用されている。エステル化合物の製造方法としては、一般的にカルボン酸無水物とアルコールとを反応させてエステル化合物を得る方法が知られており、例えば、芳香族カルボン酸無水物とアルコールを使用し、ルイス酸として金属塩化物や金属トリフラートを触媒として用いる方法が知られている(非特許文献1)。また、ジオールをアセタールにより保護した後にエステル化反応を行う方法が知られている(非特許文献2)。
Tetrahedron 60 (2004) 1587−1599
J. Org. Chem. 1999, 64, 8386−8395
しかし、非特許文献1に記載される方法はルイス酸触媒が高価であるという問題があった。また、非特許文献2に記載される方法はアセタール保護を行う必要がある点で、製造工程が煩雑となるという問題があった。
従って、本発明の目的は、反応性良く且つ安価に、目的とするエステル化合物を得ることが可能なエステル化合物の製造方法を提供することにある。また、前記の製造方法により得られた新規なエステル化合物を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の条件下でアルコールとカルボン酸無水物とを反応させることにより、反応性良く且つ安価に、目的とするエステル化合物を製造できることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明では、プロトン酸(カルボン酸を除く)若しくはその塩、又はカルボン酸ハロゲン化物の存在下、アルコールとカルボン酸無水物とを反応させることを特徴とするエステル化合物の製造方法について提供する。
なお、本発明のエステル化合物の製造方法では、プロトン酸がハロゲン化水素であることが好ましい。
また、本発明のエステル化合物の製造方法では、カルボン酸無水物が有するアシル基と、カルボン酸ハロゲン化物が有するアシル基とが異なることが好ましい。
また、本発明のエステル化合物の製造方法では、カルボン酸無水物が脂肪族カルボン酸無水物であり、カルボン酸ハロゲン化物が芳香族カルボン酸ハロゲン化物であることが好ましい。
また、本発明のエステル化合物の製造方法では、前記アルコールが、多価アルコールであることが好ましい。
また、本発明のエステル化合物の製造方法では、得られるエステル化合物が下記式(1)又は(2)で示される化合物であることが好ましい。
(式中、R1は芳香族炭化水素基を示す。R2は炭素数が2〜4の脂肪族炭化水素基を示す。)
(式中、R1は芳香族炭化水素基を示す。R2は炭素数が2〜4の脂肪族炭化水素基を示す。)
本発明の製造方法によれば、プロトン酸(カルボン酸を除く)若しくはその塩、又はカルボン酸ハロゲン化物の存在により、アルコールとカルボン酸無水物とのエステル化反応の反応速度が向上するため、反応性良く且つ安価に、目的とするエステル化合物を製造することができる。
また、本発明の製造方法において、脂肪族カルボン酸無水物と、芳香族カルボン酸ハロゲン化物と、多価アルコールとを用いた場合は、位置選択的な反応を示すため、目的とするエステル化合物やその混合物(以下、「エステル化合物等」と称することがある)を効率良く得ることが可能である。また、前記エステル化合物等の沸点や蒸気圧、さらには溶解パラメーターを容易に調整することが可能である。したがって、前記エステル化合物等は、半導体レジスト、カラーレジスト、インクジェットインキ等の電子材料用の溶剤として有効に利用することができる。
<エステル化合物の製造方法>
本発明におけるエステル化合物の製造方法は、プロトン酸(カルボン酸を除く)若しくはその塩、又はカルボン酸ハロゲン化物の存在下、アルコールとカルボン酸無水物とを反応させることを特徴とする。つまり、[1]プロトン酸(カルボン酸を除く)又はその塩の存在下、アルコールとカルボン酸無水物とを反応させることを特徴とするエステル化合物の製造方法、又は[2]カルボン酸ハロゲン化物の存在下、アルコールとカルボン酸無水物とを反応させることを特徴とするエステル化合物の製造方法である。なお、前記のエステル化合物の製造方法を単に「本発明の製造方法」と称することがある。
本発明におけるエステル化合物の製造方法は、プロトン酸(カルボン酸を除く)若しくはその塩、又はカルボン酸ハロゲン化物の存在下、アルコールとカルボン酸無水物とを反応させることを特徴とする。つまり、[1]プロトン酸(カルボン酸を除く)又はその塩の存在下、アルコールとカルボン酸無水物とを反応させることを特徴とするエステル化合物の製造方法、又は[2]カルボン酸ハロゲン化物の存在下、アルコールとカルボン酸無水物とを反応させることを特徴とするエステル化合物の製造方法である。なお、前記のエステル化合物の製造方法を単に「本発明の製造方法」と称することがある。
前記の[1]は、プロトン酸(カルボン酸を除く)又はその塩の存在下にて、アルコールとカルボン酸無水物とを反応させることを特徴とする。プロトン酸は液体、気体のいずれの状態で存在していても良い。本反応では、プロトン酸(カルボン酸を除く)又はその塩が触媒として作用し、カルボン酸無水物とアルコールとの反応速度が向上することとなる。なお、本反応におけるプロトン酸は、ハロゲン化水素であることが好ましい。
前記の[2]は、アルコール、カルボン酸無水物、及びカルボン酸ハロゲン化物を反応させることを特徴とする。本反応では、カルボン酸ハロゲン化物とアルコールのエステル化反応によりハロゲン化水素が系中に生じるものと推察される。そして、反応系中に生じたハロゲン化水素により、カルボン酸無水物とアルコールとの反応速度が向上すると推察される。
[プロトン酸及びその塩]
本発明の製造方法におけるプロトン酸としては、エステル化反応において触媒作用を示すものであってカルボン酸以外のものであれば特に限定されないが、例えば、無機酸及び有機酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等のハロゲン化水素、硫酸、リン酸、硝酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸等のスルホン酸;メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のホスホン酸が挙げられる。この中でも、反応速度の向上及びエステル化合物の収量の観点から、無機酸が好ましく用いられ、ハロゲン化水素が特に好ましく用いられる。
本発明の製造方法におけるプロトン酸としては、エステル化反応において触媒作用を示すものであってカルボン酸以外のものであれば特に限定されないが、例えば、無機酸及び有機酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等のハロゲン化水素、硫酸、リン酸、硝酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸等のスルホン酸;メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のホスホン酸が挙げられる。この中でも、反応速度の向上及びエステル化合物の収量の観点から、無機酸が好ましく用いられ、ハロゲン化水素が特に好ましく用いられる。
プロトン酸塩としては、プロトン酸と無機塩基又は有機塩基との塩が例示される。有機塩基としては特に限定されないが、第1〜3級アミン及び含窒素複素環化合物が挙げられ、この中でも3級アミン及び含窒素複素環化合物が好ましい。なお、3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリC1-4アルキルアミンが挙げられる。また、含窒素複素環化合物としては、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、2,6−ルチジン等が挙げられる。
[アルコール]
本発明の製造方法におけるアルコールの価数は特に限定されず、1価又は多価アルコールが挙げられ、例えば、1価又は多価の脂肪族アルコール、脂環式アルコール、及び芳香族アルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、2〜10価のアルコールが好ましく、2〜6価のアルコールがより好ましく、2〜4価のアルコールがさらに好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の製造方法におけるアルコールの価数は特に限定されず、1価又は多価アルコールが挙げられ、例えば、1価又は多価の脂肪族アルコール、脂環式アルコール、及び芳香族アルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、2〜10価のアルコールが好ましく、2〜6価のアルコールがより好ましく、2〜4価のアルコールがさらに好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記アルコールとしては、例えば、炭素数1〜10(好ましくは1〜5)の脂肪族アルコール、炭素数3〜10(好ましくは3〜7)の脂環式アルコール、炭素数6〜30(好ましくは7〜18)の芳香族アルコールを挙げることができる。炭素数1〜10の脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノールなどの1価の脂肪族アルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の2価の脂肪族アルコール、グリセロールなどの3価の脂肪族アルコールが挙げられる。炭素数3〜10の脂環式アルコールとしては、例えば、シクロヘキシルメチルアルコール、2−シクロヘキシルエチルアルコール、グルコース、フルクトースが挙げられる。炭素数6〜30の芳香族アルコールとしては、例えば、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、3−フェニル−2−プロペン−1−オールが挙げられる。
[カルボン酸無水物]
本発明の製造方法におけるカルボン酸無水物としては、例えば、脂肪族カルボン酸無水物、脂環式カルボン酸無水物、及び芳香族カルボン酸無水物が挙げられる。脂肪族カルボン酸無水物としては、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸の無水物であれば特に限定されないが、酢酸無水物、プロパン酸無水物(無水プロピオン酸)、ブタン酸無水物、ペンタン酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、オクタン酸無水物、ノナン酸無水物、デカン酸無水物、ラウリン酸無水物、ミリスチン酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリン酸無水物、無水マレイン酸、無水コハク酸等が挙げられる。脂環式カルボン酸無水物としては、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基を有するカルボン酸の無水物であれば特に限定されないが、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロヘキセンジカルボン酸無水物、ビス(シクロペンタンカルボン酸)無水物、ビス(シクロヘキサンカルボン酸)無水物、ビス(アダマンタンカルボン酸)無水物、ビス(ノルボルナンカルボン酸)無水物等が挙げられる。芳香族カルボン酸無水物としては、芳香族炭化水素基を有するカルボン酸の無水物であれば特に限定されないが、例えば、安息香酸無水物、フタル酸無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の製造方法におけるカルボン酸無水物としては、例えば、脂肪族カルボン酸無水物、脂環式カルボン酸無水物、及び芳香族カルボン酸無水物が挙げられる。脂肪族カルボン酸無水物としては、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸の無水物であれば特に限定されないが、酢酸無水物、プロパン酸無水物(無水プロピオン酸)、ブタン酸無水物、ペンタン酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、オクタン酸無水物、ノナン酸無水物、デカン酸無水物、ラウリン酸無水物、ミリスチン酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリン酸無水物、無水マレイン酸、無水コハク酸等が挙げられる。脂環式カルボン酸無水物としては、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基を有するカルボン酸の無水物であれば特に限定されないが、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロヘキセンジカルボン酸無水物、ビス(シクロペンタンカルボン酸)無水物、ビス(シクロヘキサンカルボン酸)無水物、ビス(アダマンタンカルボン酸)無水物、ビス(ノルボルナンカルボン酸)無水物等が挙げられる。芳香族カルボン酸無水物としては、芳香族炭化水素基を有するカルボン酸の無水物であれば特に限定されないが、例えば、安息香酸無水物、フタル酸無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
カルボン酸無水物の炭素数は特に限定されないが、例えば、4〜30が好ましく、より好ましくは4〜24、さらに好ましくは6〜18である。より具体的には、炭素数が4〜30(好ましくは4〜24、より好ましくは6〜18)の脂肪族カルボン酸無水物、炭素数が4〜30(好ましくは4〜24、より好ましくは6〜18)の脂環式カルボン酸無水物、及び炭素数が8〜30(好ましくは8〜24、より好ましくは8〜18)の芳香族カルボン酸無水物が挙げられる。
本発明の製造方法におけるアルコールとカルボン酸無水物の使用割合(前者/後者;モル比)は、例えば100/1〜1/30、好ましくは50/1〜1/10、特に好ましくは30/1〜1/5である。アルコールとカルボン酸無水物を上記割合で併用することにより、エステル化反応の反応速度が顕著に向上する傾向がある。
[カルボン酸ハロゲン化物]
本発明の製造方法におけるカルボン酸ハロゲン化物としては、例えば、脂肪族カルボン酸ハロゲン化物、脂環式カルボン酸ハロゲン化物、及び芳香族カルボン酸ハロゲン化物が挙げられる。また、ハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物が挙げられる。脂肪族カルボン酸ハロゲン化物としては、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸のハロゲン化物であれば特に限定されないが、例えば、フッ化アセチル、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、フッ化プロピオニル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、フッ化ブチリル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル等が挙げられる。脂環式カルボン酸ハロゲン化物としては、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基を有するカルボン酸のハロゲン化物であれば特に限定されないが、例えば、塩化シクロヘキサンジカルボニル、塩化シクロヘキセンジカルボニルが挙げられる。また、芳香族カルボン酸ハロゲン化物としては、芳香族炭化水素基を有するカルボン酸のハロゲン化物であれば特に限定されないが、例えば、フッ化ベンゾイル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイルなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の製造方法におけるカルボン酸ハロゲン化物としては、例えば、脂肪族カルボン酸ハロゲン化物、脂環式カルボン酸ハロゲン化物、及び芳香族カルボン酸ハロゲン化物が挙げられる。また、ハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物が挙げられる。脂肪族カルボン酸ハロゲン化物としては、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸のハロゲン化物であれば特に限定されないが、例えば、フッ化アセチル、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、フッ化プロピオニル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、フッ化ブチリル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル等が挙げられる。脂環式カルボン酸ハロゲン化物としては、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基を有するカルボン酸のハロゲン化物であれば特に限定されないが、例えば、塩化シクロヘキサンジカルボニル、塩化シクロヘキセンジカルボニルが挙げられる。また、芳香族カルボン酸ハロゲン化物としては、芳香族炭化水素基を有するカルボン酸のハロゲン化物であれば特に限定されないが、例えば、フッ化ベンゾイル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイルなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の製造方法において、カルボン酸ハロゲン化物を用いる場合、カルボン酸ハロゲン化物とアルコールのエステル化反応によりハロゲン化水素が系中に生じるものと推察される。そして、反応系中に生じたハロゲン化水素により、カルボン酸無水物とアルコールとのエステル化反応速度が向上すると推察される。なお、反応系中に有機塩基を含んでいる場合は、生じたハロゲン化水素と有機塩基との塩(ハロゲン化水素塩)により、前記のエステル化反応速度が向上すると推察される。
本発明の製造方法においてカルボン酸ハロゲン化物を用いる場合、カルボン酸無水物が有するアシル基と、カルボン酸ハロゲン化物が有するアシル基とが異なることが好ましい。カルボン酸無水物とカルボン酸ハロゲン化物との組み合わせとしては、(i)脂肪族カルボン酸無水物及び/又は脂環式カルボン酸無水物と、脂肪族カルボン酸ハロゲン化物及び/又は脂環式カルボン酸ハロゲン化物との組み合わせ、(ii)脂肪族カルボン酸無水物及び/又は脂環式カルボン酸無水物と、芳香族カルボン酸ハロゲン化物との組み合わせ、(iii)芳香族カルボン酸無水物と、脂肪族カルボン酸ハロゲン化物及び/又は脂環式カルボン酸ハロゲン化物との組み合わせ、(iv)芳香族カルボン酸無水物と、芳香族カルボン酸ハロゲン化物との組み合わせ、の何れであってもよいが、反応速度が遅い脂肪族カルボン酸無水物や脂環式カルボン酸無水物の反応速度が顕著に向上する観点から、(ii)であることが好ましく、(ii’)脂肪族カルボン酸無水物と、芳香族カルボン酸ハロゲン化物との組み合わせ、であることがより好ましい。
カルボン酸ハロゲン化物の炭素数は特に限定されないが、例えば、2〜20が好ましく、より好ましくは4〜16、さらに好ましくは6〜12である。より具体的には、炭素数が4〜20(好ましくは4〜16、より好ましくは6〜12)の脂肪族カルボン酸ハロゲン化物、炭素数が4〜20(好ましくは4〜16、より好ましくは6〜12)の脂環式カルボン酸ハロゲン化物、及び炭素数が7〜20(好ましくは7〜16、より好ましくは7〜12)の芳香族カルボン酸ハロゲン化物が挙げられる。
本発明の製造方法においてカルボン酸ハロゲン化物を使用する場合、カルボン酸無水物とカルボン酸ハロゲン化物の使用割合(前者/後者;モル比)は、例えば50/1〜1/30、好ましくは30/1〜1/10、特に好ましくは10/1〜1/5である。カルボン酸無水物とカルボン酸ハロゲン化物を上記割合で併用することにより、エステル化反応の反応速度が顕著に向上する傾向がある。
[有機塩基]
本発明の製造方法では、前述の通り反応系中に有機塩基を含んでいてもよい。有機塩基としては前記のプロトン酸塩として説明したものであれば特に限定されないが、例えば、第1〜3級アミン及び含窒素複素環化合物が好ましく、3級アミン及び含窒素複素環化合物がより好ましい。なお、3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリC1-4アルキルアミンが挙げられる。また、含窒素複素環化合物としては、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、2,6−ルチジン等が挙げられる。
本発明の製造方法では、前述の通り反応系中に有機塩基を含んでいてもよい。有機塩基としては前記のプロトン酸塩として説明したものであれば特に限定されないが、例えば、第1〜3級アミン及び含窒素複素環化合物が好ましく、3級アミン及び含窒素複素環化合物がより好ましい。なお、3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリC1-4アルキルアミンが挙げられる。また、含窒素複素環化合物としては、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、2,6−ルチジン等が挙げられる。
本発明の製造方法において有機塩基を使用する場合、例えば、有機塩基とアルコールの使用割合(前者/後者;モル比)は、例えば200/1〜1/200、好ましくは100/1〜1/100、特に好ましくは10/1〜1/10、特に好ましくは5/1〜1/3である。なお、上記の有機塩基の使用量には、プロトン酸塩として分子中に含まれる有機塩基は含まないものとする。
[溶媒]
本発明の製造方法は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、エステル化反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
本発明の製造方法は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、エステル化反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
[その他の反応条件]
反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。
反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。
反応温度は、例えば−50〜150℃(好ましくは−5〜100℃、より好ましくは0〜50℃)程度である。反応時間は、例えば2〜240時間(好ましくは6〜120時間)程度である。反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
反応終了後、得られた生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、吸着、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
式(1)及び(2)中、R1は芳香族炭化水素基を示す。R2は炭素数が2〜4の脂肪族炭化水素基を示す。
前記の芳香族炭化水素基は特に限定されないが、例えば、本発明の製造方法における芳香族カルボン酸無水物や芳香族カルボン酸ハロゲン化物に由来する芳香族炭化水素基が挙げられる。芳香族炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、6〜20が好ましく、より好ましくは6〜16、さらに好ましくは6〜12である。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。炭素数が2〜4の脂肪族炭化水素基は特に限定されないが、例えば、本発明の製造方法における脂肪族カルボン酸無水物や脂肪族カルボン酸ハロゲン化物に由来する脂肪族炭化水素基が挙げられる。炭素数が2〜4の脂肪族炭化水素基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基が挙げられ、この中でもプロピル基が好ましい。
なお、式(1)及び(2)で示される化合物において、R1又はR2が、炭素数が5以上の脂肪族炭化水素基である場合、得られるエステル化合物は可塑剤として使用されることが多く、溶剤として使用するためには沸点が高すぎるという問題がある。一方、R1又はR2が炭素数が2〜4の脂肪族炭化水素基である場合は、溶剤として有効に使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
反応生成物の同定および定量は、日本電子製NMR ECA500(500MHz)を用いて、1H−NMRスペクトル測定により行った。反応速度定数は反応熱量計(OMNICAL社製、型式SuperCRC)を用いて取得した反応熱の発熱曲線より求めた。
[実施例1]
2−プロパノールを12.96g(0.216mol)、ピリジンを17.05g(0.216mol)、及び、内標準物質として1,1,2,2−テトラクロロエタンを4.01g(0.024mol)を混合し、反応原料液1を調製した。1.62gの反応原料液1にピリジン塩酸塩を0.0292g(0.000253mol)添加し、反応熱量計にセットした。反応温度を25℃に制御した状態で、無水プロピオン酸を0.226g(0.0017mol)添加し、反応熱の発熱曲線を測定して反応速度定数を算出した所、2.1×10-3/secであった。
2−プロパノールを12.96g(0.216mol)、ピリジンを17.05g(0.216mol)、及び、内標準物質として1,1,2,2−テトラクロロエタンを4.01g(0.024mol)を混合し、反応原料液1を調製した。1.62gの反応原料液1にピリジン塩酸塩を0.0292g(0.000253mol)添加し、反応熱量計にセットした。反応温度を25℃に制御した状態で、無水プロピオン酸を0.226g(0.0017mol)添加し、反応熱の発熱曲線を測定して反応速度定数を算出した所、2.1×10-3/secであった。
[実施例2及び3]
反応原料液1へ添加するピリジン塩酸塩の量を、表1に示される通りに変更して実施例1と同様の反応を実施し、反応速度定数を算出した。
反応原料液1へ添加するピリジン塩酸塩の量を、表1に示される通りに変更して実施例1と同様の反応を実施し、反応速度定数を算出した。
[比較例1]
1.62gの反応原料液1を反応熱量計にセットし、反応温度を25℃に制御した状態で、0.206g(0.0016mol)の無水プロピオン酸を添加し、反応熱の発熱曲線を測定して反応速度定数を算出した所、3.3×10-4/secであった。
1.62gの反応原料液1を反応熱量計にセットし、反応温度を25℃に制御した状態で、0.206g(0.0016mol)の無水プロピオン酸を添加し、反応熱の発熱曲線を測定して反応速度定数を算出した所、3.3×10-4/secであった。
実施例1〜3及び比較例1の結果を表1にまとめた。ピリジン塩酸塩の使用量は、1molの無水プロピオン酸に対するピリジン塩酸塩のモル数を示している。また、反応速度定数の単位はS-1である。表1より、酸触媒の添加量増加に伴い、比例的に反応速度は向上していることが理解できる。
[比較例2]
反応原料液1を1.61g用いたこと、及び、無水プロピオン酸を0.25g(0.00178mol)の塩化ベンゾイルに代えたこと以外は実施例1と同様の測定を行った所、反応速度定数は6.9×10-3/secであった。
反応原料液1を1.61g用いたこと、及び、無水プロピオン酸を0.25g(0.00178mol)の塩化ベンゾイルに代えたこと以外は実施例1と同様の測定を行った所、反応速度定数は6.9×10-3/secであった。
[実施例4及び5]
無水プロピオン酸に代えて、無水プロピオン酸と塩化ベンゾイルの混合物を表2に記載した比率で用い、さらにピリジン塩酸塩を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に測定を行った。この際、仕込んだ無水プロピオン酸の物質量と塩化ベンゾイルの物質量の和が、実施例1で仕込んだ無水プロピオン酸の物質量(0.0017mol)と等しくなるように調整した。得られた発熱曲線が、2つの素反応から得られる生成物の量と合致するように、無水プロピオン酸由来の反応速度定数、塩化ベンゾイル由来の反応速度定数を算出し、各速度定数を得た。この結果を表2にまとめた。なお、表2中、無水プロピオン酸、及び塩化ベンゾイルの割合の単位はmol%である。また、反応速度定数の単位はS-1である。
無水プロピオン酸に代えて、無水プロピオン酸と塩化ベンゾイルの混合物を表2に記載した比率で用い、さらにピリジン塩酸塩を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に測定を行った。この際、仕込んだ無水プロピオン酸の物質量と塩化ベンゾイルの物質量の和が、実施例1で仕込んだ無水プロピオン酸の物質量(0.0017mol)と等しくなるように調整した。得られた発熱曲線が、2つの素反応から得られる生成物の量と合致するように、無水プロピオン酸由来の反応速度定数、塩化ベンゾイル由来の反応速度定数を算出し、各速度定数を得た。この結果を表2にまとめた。なお、表2中、無水プロピオン酸、及び塩化ベンゾイルの割合の単位はmol%である。また、反応速度定数の単位はS-1である。
実施例4及び5での塩化ベンゾイル由来の反応速度定数は、塩化ベンゾイルのみを用いた場合(比較例2)と比較してあまり変化しなかった。一方、実施例4及び5での無水プロピオン酸由来の反応速度定数は、無水プロピオン酸のみを用いた場合(比較例1)と比較して10倍程度向上しており、塩化ベンゾイル由来の反応で副生する塩化水素の触媒効果を確認することができた。
[実施例6]
1,3−ブタンジオールを0.985g(10.9mmol)、ピリジンを0.868g(11.0mmol)混合した後、無水プロピオン酸を0.0702g(0.540mmol)、及び塩化ベンゾイルを0.163g(1.16mmol)添加し、20℃で96時間反応をおこなった。得られた反応液を1H−NMRで解析し、2級水酸基付け根のメチンプロトンの面積比から、1,3−ジベンゾイルオキシブタン、1−プロピオニルオキシ−3−ベンゾイルオキシブタン、1,3−ジプロピオニルオキシブタン、1−ベンゾイルオキシ−3−プロピオニルオキシブタンの比率を求めた。なお、これらの化合物はカラムクロマトグラフィーにより単離し、GC−MSにより分析を行うことで存在を確認した。
1,3−ブタンジオールを0.985g(10.9mmol)、ピリジンを0.868g(11.0mmol)混合した後、無水プロピオン酸を0.0702g(0.540mmol)、及び塩化ベンゾイルを0.163g(1.16mmol)添加し、20℃で96時間反応をおこなった。得られた反応液を1H−NMRで解析し、2級水酸基付け根のメチンプロトンの面積比から、1,3−ジベンゾイルオキシブタン、1−プロピオニルオキシ−3−ベンゾイルオキシブタン、1,3−ジプロピオニルオキシブタン、1−ベンゾイルオキシ−3−プロピオニルオキシブタンの比率を求めた。なお、これらの化合物はカラムクロマトグラフィーにより単離し、GC−MSにより分析を行うことで存在を確認した。
[比較例3]
無水プロピオン酸を、0.0528g(0.570mmol)の塩化プロピオニルに代えたこと以外は、実施例6と同様に反応を実施し、同様の解析を行った。
無水プロピオン酸を、0.0528g(0.570mmol)の塩化プロピオニルに代えたこと以外は、実施例6と同様に反応を実施し、同様の解析を行った。
[実施例7]
1,3−ブタンジオールを0.0762g(0.846mmol)、ピリジンを0.132g(1.70mmol)用い、これを重クロロホルム1.04gで希釈して、無水プロピオン酸を0.0729g(0.560mmol)、塩化ベンゾイルを0.163g(1.16mmol)添加し、20℃で96時間反応をおこなった。この反応粗液を1H−NMRで解析し、2級水酸基付け根のメチンプロトンの面積比から、1,3−ジベンゾイルオキシブタン、1−プロピオニルオキシ−3−ベンゾイルオキシブタン、1,3−ジプロピオニルオキシブタン、1−ベンゾイルオキシ−3−プロピオニルオキシブタンの比率を求めた。
1,3−ブタンジオールを0.0762g(0.846mmol)、ピリジンを0.132g(1.70mmol)用い、これを重クロロホルム1.04gで希釈して、無水プロピオン酸を0.0729g(0.560mmol)、塩化ベンゾイルを0.163g(1.16mmol)添加し、20℃で96時間反応をおこなった。この反応粗液を1H−NMRで解析し、2級水酸基付け根のメチンプロトンの面積比から、1,3−ジベンゾイルオキシブタン、1−プロピオニルオキシ−3−ベンゾイルオキシブタン、1,3−ジプロピオニルオキシブタン、1−ベンゾイルオキシ−3−プロピオニルオキシブタンの比率を求めた。
[比較例4]
無水プロピオン酸を0.0483g(0.522mmol)の塩化プロピオニルに代えたこと以外は、実施例7と同様に反応を実施し、同様の解析をおこなった。
無水プロピオン酸を0.0483g(0.522mmol)の塩化プロピオニルに代えたこと以外は、実施例7と同様に反応を実施し、同様の解析をおこなった。
表3に、実施例6,7,比較例3,4における、(1)反応原料液におけるプロピオニルを基準とするベンゾイルの比率(モル比率)、(2)生成した1,3−ブタンジオールのジエステルにおける、1級プロピオニルを基準とする1級ベンゾイルの比率(モル比率)、(3)生成した1,3−ブタンジオールのジエステルにおける、2級プロピオニルを基準とする2級ベンゾイルの比率(モル比率)、(4)1級ベンゾイルと2級ベンゾイルの差(1級−2級ベンゾイル化比の差)を示す。(1)については「仕込み比」の項に記載した。また、(2)及び(3)については「生成比」の項に記載した。
実施例6におけるアシル化剤は、無水プロピオン酸及び塩化ベンゾイルである。比較例3におけるアシル化剤は、塩化プロピオニル及び塩化ベンゾイルである。実施例6及び比較例3では、これらのアシル化剤に対し、大過剰の1,3−ブタンジオールが存在する。したがって、これらのアシル化剤は反応しやすい1級アルコールとの反応が優先すると予測される。
1級−2級ベンゾイル化比の差は、実施例6では0.19、比較例3では0.37であった。このことから、実施例6における2種のアシル化剤と、比較例3における2種のアシル化剤において、前者のアシル化能の差が後者のアシル化能の差よりも小さいことが理解できる。つまり、実施例6では、系中で発生する塩化水素による触媒効果により、無水プロピオン酸のアシル化能が向上し、そのアシル化能が(塩化プロピオニルのアシル化能よりも)塩化ベンゾイルのアシル化能に近づいたということが理解できる。
実施例7におけるアシル化剤は、無水プロピオン酸及び塩化ベンゾイルである。比較例4におけるアシル化剤は、塩化プロピオニル及び塩化ベンゾイルである。実施例7では、1,3−ブタンジオール由来の水酸基量はアシル化剤と等量であるため、反応速度の高い塩化ベンゾイルが1級水酸基と反応し、残った2級水酸基に無水プロピオン酸が反応することが予測される。
1級−2級ベンゾイル化比の差は、実施例7では0.49、比較例4では−1.33となった。このことから、実施例7における2種のアシル化剤と、比較例4における2種のアシル化剤において、前者のアシル化能の差が後者のアシル化能の差(絶対値としての差)よりも小さいことが理解できる。つまり、実施例7では、系中で発生する塩化水素による触媒効果により、無水プロピオン酸の活性が向上して1級水酸基と優先的に反応し、2級水酸基には塩化ベンゾイルが反応するということが理解できる。
以上の結果から、本発明の製造方法において、脂肪族カルボン酸無水物と、芳香族カルボン酸ハロゲン化物と、多価アルコールとを用いた場合は、特定の位置選択的な反応を示すことが示された。これにより、所望のエステル化合物やその混合物を効率良く得ることや、前記エステル化合物等の沸点や蒸気圧、さらには溶解パラメーターを容易に調整することが可能であるといえる。
Claims (7)
- プロトン酸(カルボン酸を除く)若しくはその塩、又はカルボン酸ハロゲン化物の存在下、アルコールとカルボン酸無水物とを反応させることを特徴とするエステル化合物の製造方法。
- プロトン酸がハロゲン化水素であることを特徴とする請求項1に記載のエステル化合物の製造方法。
- カルボン酸無水物が有するアシル基と、カルボン酸ハロゲン化物が有するアシル基とが異なることを特徴とする請求項1又は2に記載のエステル化合物の製造方法。
- カルボン酸無水物が脂肪族カルボン酸無水物であり、カルボン酸ハロゲン化物が芳香族カルボン酸ハロゲン化物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のエステル化合物の製造方法。
- アルコールが多価アルコールであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のエステル化合物の製造方法。
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