JP2018192643A - 薬液収容プラスチック容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐熱性と耐衝撃性を有し、薬液特に医薬品成分の保存安定性に優れたプラスチック容器を提供する。【解決手段】ピラゾロン誘導体またはその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液を収容してなるプラスチック容器であって、該プラスチック容器の水溶液収容部は、少なくとも表層及び中間層、最内層をこの順に含む積層容器材料からなり、表層はポリプロピレンが主成分であり、中間層はポリエチレンを40〜80質量%、ポリプロピレンを60〜20質量%の割合で含む混配物からなり、最内層は、少なくとも2種類の異なる構造をもつオレフィンモノマーからなる非晶性ポリマーを主成分とするものであり、当該オレフィンモノマーのうち、少なくとも1種類は環状炭化水素骨格を有するモノマーである、ことを特徴とするプラスチック容器。【選択図】なし

Description

本発明は、薬品、特に、ピラゾロン誘導体またはその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液を収容してなるプラスチック容器に関する。さらに詳細には、プラスチック容器の水溶液収容部が、少なくとも、表層及び中間層、最内層をこの順に含む積層容器材料からなり、表層はポリプロピレンが主成分であり、中間層はポリエチレンを40〜80質量%、ポリプロピレンを60〜20質量%の割合で含む混配物からなり、最内層は、少なくとも2種類の異なる構造をもつオレフィンモノマーからなる非晶性ポリマーを主成分とするもので、当該オレフィンモノマーのうち少なくとも1種類は環状炭化水素骨格を有するモノマーである、プラスチック容器に関するものである。
近年、点滴静注用の製剤として注射用の薬剤を予め希釈調製し、プラスチックなどからなる可撓性を有する容器(プラスチック容器)に充填したソフトバッグ製剤が開発され、当該ソフトバッグ製剤は、使用時の利便性や迅速性に加え、ガラス製の瓶やアンプルと比べて、破損の危険性が軽減されることや廃棄性に優れることから有用であるとされている。
しかし、ラジカル捕捉製剤を始めとする一部の薬品は、ポリエチレン(以下、「PE」と表記する場合がある)やポリプロピレン(以下、「PP」と表記する場合がある)などの通常のポリオレフィン系樹脂(以下、「PO樹脂」と表記する場合がある)や、塩化ビニルなどの医薬容器の材質として一般的に使用される樹脂を成形したフィルムに、吸着あるいは透過することが知られており、薬液の有効成分がプラスチック容器に吸着されたり、プラスチック容器を構成する樹脂フィルムに含まれる添加剤や低分子成分と、薬液との相互作用が起こるなど、ソフトバッグ製剤を開発する上での課題となっていた。
そこで、プラスチック容器に、薬品等の吸着や透過がない樹脂として、環状ポリオレフィン系樹脂(以下、「COl」と表記する場合がある)を用いることが提案されている。
例えば、国際公開第2007/055312号(特許文献1)には、ラジカル捕捉製剤である脳保護剤「エダラボン」を充填する輸液バッグとして、ポリエチレン及び環状オレフィンポリマーを重ね合せて多層としたプラスチック容器を、使用することが開示されているが、当該輸液バッグは、ポリエチレンからなる層を含んでいることから、このような製剤において必要とされる、121℃以上での高温滅菌(いわゆる、「オーバーキル滅菌」)に対応し得る程度の耐熱性を有しておらず、該オーバーキル滅菌を行った場合には、バッグが変形して、外観が大きく損なわれる。
また、特開2016−022092号公報(特許文献2)には、表層がPP、最内層がCOl、両層の間の中間層がPPからなる構成を有する輸液バッグを、「エダラボン」を収容する容器とすることが記載されている。このような構成の容器について評価したところ、オーバーキル滅菌は可能であるものの、滅菌後に、中間層と最内層との間の層間接着性が低下し、落下耐久試験時に、シール部の部分的な剥離が生じ、バッグとしての充分な強度が得られないことが判明した。
上述のように、ラジカル捕捉剤を収容するプラスチック容器において、製剤用途としての充分な耐熱性を有しながら、容器としての優れた耐衝撃性と薬液成分の保存安定性に優れたプラスチック容器は得られておらず、その開発が望まれている。
国際公開第2007/055312号 特開2016−022092号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐熱性と耐衝撃性を有し、薬品、特に、ピラゾロン誘導体またはその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液等の、医薬品成分を含有する水溶液の保存安定性に優れたプラスチック容器を提供することを課題とする。
本願発明者らは、前記課題を解決するため、ピラゾロン誘導体またはその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液を収容してなるプラスチック容器において、水溶液収容部が、少なくとも、特定樹脂成分からなる、表層及び中間層、最内層をこの順に含む積層容器材料からなるものとすることで、上記薬液を、滅菌工程を含め、安定的に保存できることを見出し、本発明を完成した。
本発明のプラスチック容器においては、容器を構成する材料について、表層を、ポリプロピレンを主成分とし、中間層を、ポリエチレンを40〜80質量%、及びポリプロピレンを60〜20質量%の割合で含む混配物からなるものとし、さらに、最内層を、少なくとも2種類の異なる構造をもつオレフィンモノマーからなる非晶性ポリマーを主成分とするもので、当該オレフィンモノマーのうち少なくとも1種類は環状炭化水素骨格を有するモノマーである、としている。このようなプラスチック容器に、ピラゾロン誘導体またはその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液を収容することで、オーバーキル滅菌等の高温滅菌に対応し得る耐熱性と、滅菌後の耐衝撃性とを有し、薬剤の安定的な保存が可能な、ソフトバッグ製剤が得られることが判明した。
すなわち、本発明は、ピラゾロン誘導体またはその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液を収容してなるプラスチック容器であって、該プラスチック容器の水溶液収容部は、少なくとも、表層及び中間層、最内層をこの順に含む積層容器材料からなり、表層はポリプロピレンが主成分であり、中間層はポリエチレンを40〜80質量%、ポリプロピレンを60〜20質量%の割合で含む混配物からなり、最内層は、少なくとも2種類の異なる構造をもつオレフィンモノマーからなる非晶性ポリマーを主成分とするもので、当該オレフィンモノマーのうち少なくとも1種類は環状炭化水素骨格を有するモノマーである、ことを特徴とするプラスチック容器を提供する。
前記非晶性ポリマーのガラス転移温度が、80℃以上であることが好ましい。
前記非晶性ポリマーが、滅菌温度と同等以上のガラス転移温度を有することが好ましい。
前記非晶性ポリマーが、環状炭化水素骨格を有するモノマーとエチレンモノマーとの共重合体であることが好ましい。
また、本発明は、収容物である水溶液を排出するための口部を備えたプラスチック容器を提供する。
また、本発明は、輸液バッグまたはブロー成形容器の形態であるプラスチック容器を提供する。
本発明の薬液収容プラスチック容器を、脱酸素剤とともに、ガスバリア性を有する容器内に収容することも、薬液の保存安定性の点から、好ましい態様である。
本発明によれば、優れた耐熱性と耐衝撃性を有し、薬液特に医薬品成分を含有する水溶液の保存安定性に優れたプラスチック容器を提供することができる。
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
本発明に用いる、ピラゾロン誘導体は、下記式(I)
Figure 2018192643
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表される化合物を用いることができる。
また、式(I)で表される化合物のほか、その薬学的に許容され得る塩を用いることもできる。薬学的に許容され得るとしては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアミンとの塩が挙げられる。この他、薬学的に許容され得るものであれば、その塩の種類は特に限定されない。
さらに、式(I)で示されるピラゾロン誘導体またはその薬学的に許容され得る塩のほか、それらの水和物若しくは溶媒和物を薬液の有効成分とすることもできる。
式(I)で表される化合物はいずれも公知の化合物であり、特公平5−31523号公報等に記載された方法により当業者が容易に合成できる。
本発明のプラスチック容器に収容される、式(I)で示されるピラゾロン誘導体または若しくはその薬学的に許容され得る塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する水溶液は、例えば、輸液バッグ製剤とする場合、ピラゾロン誘導体を、ピラゾロン誘導体の濃度が約0.06mg/mL以上約2mg/mL以下、好ましくは約0.3mg/mL以上約0.6mg/mL以下となるように、溶媒(例えば、輸液等)に溶解し、所望によりpH調節剤を加えてpHを調節し、さらに所望によりその他の添加剤を加えることによって調製することができる。
ピラゾロン誘導体を含有する水溶液の調製に用いられる薬液としては、一般に薬液として用いられるものであればどのようなものであってもよいが、好ましくは、電解質類、糖類、ビタミン類、蛋白アミノ酸類等から任意に選択される一種または二種以上を任意の濃度で水(例えば、注射用蒸留水等)に溶解したもの等が挙げられる。なお、電解質類を溶解したものを電解質液、糖類を溶解したものを糖液と称することもある。電解質類としては、例えば、塩化ナトリウム等が挙げられる。これらの任意の成分は、単独でまたは組み合わせて任意の濃度で用いることができる。本発明において、好ましい薬液としては、例えば、塩化ナトリウム等を任意の濃度で水(例えば、注射用蒸留水等)に溶解したものである。これらの物質の含有量としては、塩化ナトリウムであれば、例えば、生理食塩水と同等、すなわち、0.9%(W/V)等が好ましい。
ピラゾロン誘導体を含有する水溶液の調製に用いられるpH調節剤としては、一般に注射剤のpH調節剤として用いられるものであれば特に制限なく用いることができる。
ピラゾロン誘導体を含有する水溶液の液性、すなわちpHは、前記のpH調節剤を用いることで任意に調節することができる。
ピラゾロン誘導体を含有する水溶液の調製に用いられるその他の添加剤としては、一般に注射剤の添加剤として用いられているようなものであれば特に制限無く用いることができる。本発明において、好ましいその他の添加剤としては、例えば、薬事日報社2000年刊「医薬品添加物辞典」(日本医薬品添加剤協会編集)等に記載されているような医薬品添加剤等が挙げられる。これらの添加剤は、所望によって、塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等の一価のアルカリ金属塩等)として添加してもよく、また、水和物として添加してもよい。これらの添加剤は、一般に注射剤に通常用いられる割合で配合される。当業者にとっては容易なことであり、また、薬事日報社2000年刊「医薬品添加物辞典」(日本医薬品添加剤協会編集)等にも記載されている様に、これらの添加剤は使用目的に応じて、例えば、安定化剤、界面活性剤、緩衝剤、可溶化剤、抗酸化剤、消泡剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、無痛化剤、溶解剤、溶解補助剤等として使い分けることが可能である。これらの添加剤は、所望によって、2以上の成分を組み合わせて本発明の注射用容器に添加することができる。
前記のpH調節剤やその他の添加剤を、本発明のプラスチック容器に添加する場合は、水溶液の調製における添加や混合の操作は通常の製剤学的手法に従って行うことができる。例えば、ピラゾロン誘導体とpH調節剤のみを含有する水溶液を調製する場合は、ピラゾロン誘導体とpH調節剤をそれぞれ秤量し、混合したあとで水に溶解してもよいし、ピラゾロン誘導体を含有する水溶液に、秤量したpH調節剤を溶解してもよい。また、pH調節剤を含有する水溶液に、秤量したピラゾロン誘導体を溶解してもよい。pH調節剤を含有する水溶液とピラゾロン誘導体を含有する水溶液を各々調製しておいて、ピラゾロン誘導体の濃度が前記の濃度になるように、これらの水溶液を混合して調製することも可能である。また、その他の添加剤を含む場合も同様に調製することが可能である。
本発明のプラスチック容器は、その水溶液収納部が、少なくとも、表層及び中間層、最内層をこの順に含む積層容器材料からなり、表層は、ポリプロピレンを主成分とし、中間層は、ポリエチレンを40〜80質量%、及びポリプロピレンを60〜20質量%の割合で含む混配物からなり、さらに、最内層は、少なくとも2種類の異なる構造をもつオレフィンモノマーからなる非晶性ポリマーを主成分とするもので、当該オレフィンモノマーのうち少なくとも1種類は環状炭化水素骨格を有するモノマーである、とした容器である。
本発明において、積層容器材料についての各層における「主成分」とは、着目する成分の、当該成分が含まれるマトリックス全体に占める割合が、50質量%超であることを意味するものである。
本発明のプラスチック容器は、フィルム形状やチューブ形状の積層容器材料の周縁を溶着した袋状容器、あるいはブロー成形した容器とすることができる。
本発明のプラスチック容器が袋状容器である場合は、少なくとも、前記表層及び前記中間層、前記最内層をこの順に含む積層容器材料を用いて、最内層を内面として重ね合せて周縁をシールして袋状に成形することにより製造できる。
上記積層容器材料の厚さは、特に限定されないが、70〜400μmが好ましい。また、周縁のシール幅は、特に限定されないが、2〜20mmであり、好ましくは、3〜7mmである。
積層容器材料において、非晶性ポリマーを主成分とするシーラント層である最内層の厚みは、10〜100μm、より好ましくは20〜80μmである。最内層の厚みが10μm未満では、シール性が十分でなかったり、必要に応じて設けられる口部との溶着強度が十分でないことがある。また、口部を溶着する時に最内層が加熱・加圧により薄くなり、ピンホールによる液漏れの原因となることがある。最内層の厚みは100μmを超えてもよいが、厚くなると容器の柔軟性が劣ることがある。また、コスト的にも好ましくない。
ポリプロピレンを主成分とする表層の厚さは、特に限定されないが、表層の厚みは特に限定されないが、20〜250μm、好ましくは、50〜200μmである。また、中間層の厚さは、20〜100μm、好ましくは、35〜80μmである。
積層容器材料の積層方法は、通常の容器の製造方法として公知の方法を採用することができる。例えば、多層インフレーション成形、多層Tダイキャスト成形などの共押出成形、あるいは溶融樹脂を直接積層する押出ラミネートや接着剤を用いるドライラミネートなどのラミネート法により積層することができる。
また、最内層を構成する非晶性ポリマーと、中間層を構成するPO樹脂とを共押出成形で積層する場合は、これらを直接積層してもよいが、三井化学株式会社製の「アドマー」、三菱化学株式会社製の「モディック」などに代表される接着性樹脂を用いることもできる。
プラスチック容器がブロー成形容器の場合には、例えば、多層の押出ブロー成形が好適に採用される。多層の共押出ブロー成形の方法としては、複数の押出機を有する多層押出機を用いて、非晶性ポリマー及びPO樹脂、必要に応じて接着性樹脂やその他の合成樹脂をそれぞれの押出機で溶融して押出しを行い、空気を吹き込んでブロー成形を行う。ブロー成形に際しては、一旦、プリフォームとしてから、ブロー成形を行ってもよいし、各溶融樹脂層を多層パリソン成形用ダイの内部で管状の多層パリソンとし、ブロー成形するダイレクトブロー成形を行ってもよい。
本発明のプラスチック容器に用いる表層の主成分であるポリプロピレンは、プロピレンのホモポリマーのほか、エチレン、1−ブテン等のα−オレフィンを少量(好ましくは10重量%以下)共重合したコポリマーや、例えば特開2001−226435号公報に開示されるプロピレンとα−オレフィンとを多段重合により製造される共重合体等により構成される。また、これらホモポリマーや共重合体と他のポリオレフィンや樹脂とのコンパウンドを用いてもよい。中でも、環状ポリオレフィン層の剛直さを緩和し、多層フィルムの柔軟性を向上させるものとして、医療用容器用として汎用されている曲げ弾性率が400〜600MPaの比較的柔軟なグレードのものを用いるのが好適である。また別の観点からは表層樹脂のメルトフローレート(230℃、21.2N)値を1〜4(g/10分)とするのが好適である。本発明で好適に使用できる表層を構成するものの具体例を例示すると三菱化学株式会社製の「ゼラス」(登録商標)を挙げることができる。特に、融解ピーク温度が160〜170℃のポリプロピレンを用いることが好ましい。
本発明のプラスチック容器に用いる中間層は、ポリエチレンを40〜80質量%、ポリプロピレンを60〜20質量%の割合で含む、少なくとも2種類以上の混配物である。
ポリエチレンとポリプロピレンとの割合は、PE/PPが45〜75/55〜25(質量%)の範囲が好ましく、50〜70/50〜30(重量部)の範囲が特に、好ましい。上記ポリエチレンの割合が40質量%を下回れば、プラスチック容器の柔軟性が低下し、また、透明性が低下するおそれがある。上記ポリプロピレンの割合が20質量%を下回れば、プラスチック容器の耐熱性が低下するおそれがある。
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンが好ましく用いられる。上記ポリエチレンは、密度が0.880〜0.920g/cmの範囲であることが好ましい。α−オレフィンは炭素数が12個以下のものであり、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、及びオクテン−1等を挙げることができる。上記線状低密度ポリエチレンとしては、メタロセン触媒によって製造されるものが好ましい。メタロセン触媒で重合された線状低密度ポリエチレンは構造の不均一性が小さいため透明性などに優れている。また、分子量分布が均一なため、上記線状低密度ポリエチレンを加熱したとき、上記ポリエチレンはブリード物が少なく白濁のおそれが少ない。
ポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を用いて製造される。メタロセン触媒を用いて製造されるシンジオタクチックポリプロピレンは、柔軟性や透明性に優れていることから、好ましい。上記ポリプロピレンは、融解ピーク温度が110℃以上、さらには、120℃以上であることが望ましく、上記温度特性を有するポリプロピレンは、上記中間層に用いたとき、プラスチック容器に耐熱性が付与される。
本発明のプラスチック容器に用いる最内層の主成分である非晶性ポリマーは、少なくとも2種類の異なる構造をもつオレフィンモノマーからなり、該オレフィンモノマーのうち少なくとも1種類は環状炭化水素骨格を有するモノマーである、非晶性ポリマーである。
本発明のプラスチック容器に用いる最内層の主成分である非晶性ポリマーは、2種類以上のノルボルネン化合物等の環状オレフィンモノマーからなる共重合体や、環状オレフィンモノマーとαーオレフィン等の環状オレフィンモノマー以外のオレフィンモノマーとを共重合した付加重合体、ノルボルネン化合物等の環状オレフィンモノマーを用い、開環メタセシス重合の後、残った二重結合を水素化した重合体を含むが、1種類のノルボルネン化合物等の環状オレフィンモノマーの単独付加重合体(例えば、国際公開第2007/135887号の段落0015参照)は含まない。
本発明のプラスチック容器に用いる最内層の主成分である非晶性ポリマーとしては、上記の環状オレフィン系重合体を用いることができる。このような環状オレフィン系重合体としては、例えば、次のようなものが含まれる。
環状オレフィン系重合体の製造は、一般に、ノルボルネン類の開環メタセシス重合体を水素化して得る方法と、ノルボルネン類とα−オレフィンの共重合反応によって得る方法が知られている。環状オレフィン系重合体の基本構造は、例えば、特開2011−237572号公報に記載の[化2]のように書き表すことができる(下記、式(II)参照)。すなわち環状単位骨格とエチレン単位骨格が交互配置されたポリマーとして記述される。
Figure 2018192643
(nは1以上の整数であり、R1およびR2は水素原子またはアルキル基を示し、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。R1およびR2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
上記構造は、1種類の環状オレフィンモノマーの単独重合体、すなわちホモポリマー様に記述されているが、実際には、例えば、特開2014−124927号公報の[化4]に示されるような(下記、式(III)参照)、複数の環状オレフィンモノマーからなる共重合体である場合も包含される。当該特開2014−124927号公報においては、日本ゼオン株式会社製「ZEONOR」1060Rの化学構造が、下記式(III)のように記述されることを開示している(段落0098)。
Figure 2018192643
(ここでmおよびnは1以上の整数であり、R1およびR2は水素原子またはアルキル基を示し、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。R1およびR2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
また、2009年に開催された、第39回石油・石油化学討論会の依頼講演(セッションID:1C12 “環状オレフィンの開環メタセシス重合の研究“)では、上市されている、「ZEONEX」、「ZEONOR」の主鎖構造は、atacticに制御したランダムコポリマーであることを公表している。このことから、アルケンメタセシス反応による環状オレフィンコポリマーの製造は、工業的に行われており、当業者が容易に入手できるものであり、本発明のプラスチック容器においても、最内層の主成分の非晶性ポリマーとして、使用することができる。
さらに、ノルボルネン類とエチレン、プロピレン、α−オレフィンの1種類から選択される共重合体も、前出の特開2011−237572号公報に[化1]として示されており、次の化学構造で表すことができる(式(IV))。
Figure 2018192643
(ここでmおよびnは1以上の整数であり、R1、R2およびR3は水素原子またはアルキル基を示し、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、R1およびR2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
ここで、R1、R2、R3がともに水素原子である構造は、ポリプラスチック株式会社から販売されている「TOPAS」が代表的に知られており、「TOPAS」の総合カタログに紹介されている。また、R1,R2がアルキル基であり、R3が水素原子である構造は、三井化学株式会社から販売されている「アペル」が該当し、「アペル」の製品カタログに代表的な構造として記載されている。
これらの環状オレフィン系重合体は、水蒸気バリア性に優れる樹脂であり、入手も容易である。上述のように、本発明のプラスチック容器においては、最内層の主成分である非晶性ポリマーとして、これらの環状オレフィン系重合体を使用することができ、環状オレフィン系重合体としては、重合体の1種を単独で、または重合体の2種以上を組み合わせて使用することができる。
環状オレフィン系重合体としては、上記のような市販品を用いることもできる。上記記載と重複するが、当該市販品としては、例えば、ZEONEX(登録商標)(日本ゼオン株式会社製,ノルボルネン系モノマーの開環メタセシス重合体水素化ポリマー)、TOPAS(登録商標)(ポリプラスチックス株式会社製,ノルボルネンとエチレンとのコポリマー)、ZEONOR(登録商標)(日本ゼオン株式会社製,ジシクロペンタジエンとテトラシクロペンタドデセンとの開環重合に基づくコポリマー)、アペル(登録商標)(三井化学株式会社製,エチレンとテトラシクロドデセンとのコポリマー)、アートン(登録商標)(JSR株式会社製,ジシクロペンタジエンおよびメタクリル酸エステルを原料とする極性基を含む環状オレフィン樹脂)等を挙げることができる。
積層容器材料の最内層を構成する材料の組成としては、環状オレフィン系重合体以外に、他の樹脂成分を含有してもよい。他の樹脂成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂、シラン系樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂を含有することにより、プラスチック容器の低温での耐衝撃性や高圧蒸気滅菌処理直後の透明性維持、柔軟性の向上など、輸液バック形状等の容器として所望される性能の向上を図ることが可能である。
積層容器材料の最内層を構成する材料としては、環状オレフィン系重合体のみからなる(環状オレフィン系重合体を100質量%含有する)ことが好ましいが、上記の他の樹脂成分を含む場合、最内層においては、環状オレフィン系重合体を主成分とすること、すなわち50質量%以上含有することが好ましく、特に70質量%以上含有することが好ましい。環状オレフィン系重合体の組成比率が低い場合、微量成分やプラスチックと親和性の高い薬剤成分が吸着され、収容される薬剤成分の保存安定性が不十分となるおそれがある。
積層容器材料の最内層を構成する材料には、容器外観の向上や品質の安定化、その他必要とされる性能を付与するために、安全衛生性を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤等を含有してもよい。
本発明のプラスチック容器は、薬液を充填した後に、好ましくは60℃以上の温度で熱処理、または105℃以上、より好ましくは121℃の温度で高圧蒸気滅菌処理されるため、この温度で、特に、最内層を構成する非晶性ポリマーの分子運動、すなわちミクロブラウン運動が起こらないように分子構造を設計し、ガラス転移温度を決定することが非常に重要である。少なくとも容器の熱処理または高圧蒸気滅菌処理の温度より、同等以上のガラス転移温度を有することが必要である。この滅菌処理温度未満のガラス転移温度である場合には、熱処理や高圧蒸気滅菌処理中に前記ミクロブラウン運動が起こり、分子鎖が回転運動を行うため、使用した容器中への収容薬液成分の吸着や侵入・逸散を防止することが出来なくなり、有効成分の含有量の低下を起こす。このような現象を防止する最適な非晶性ポリマー(環状ポリオレフィン)のガラス転移温度としては、少なくとも、容器の熱処理または高圧蒸気滅菌処理の温度と同等以上であることが必要であり、非晶性ポリマーのガラス転移温度は、80℃以上、好ましくは110℃以上、さらに好ましくは、130℃以上であることが効果的である。
本発明においては、プラスチック容器の一部に、収容物である水溶液を排出するための口部を、少なくとも1つ以上備えたものとすることができる。口部は、排出だけでなく、充填のための口部を兼用することも可能である。
口部の溶着方法は、プラスチック容器が袋状容器である場合は、積層容器材料のシーラント層である最内層同士を重ね合わせて、その間に口部を挿入してヒートシールで溶着することができる。
また、プラスチック容器がブロー成形の場合には、成形時に口部を金型内に挿入するインサート成形により、プラスチック容器の成形時に溶着することができる。あるいは、開口部を有するプラスチック容器を成形し、あとから開口部に口部を挿入してヒートシールで溶着することもできる。
本発明のプラスチック容器は、密封可能な容器であり、内容物の無菌性を保つことができる容器であればどのような形態であってもよいが。一般的に注射液の充填・収容に用いられる、輸液バッグや、シリンジ、アンプル、バイアル等のブロー成形容器の形態の容器が好ましく、輸液バッグが特に好ましい。また、これらの形態の容器は、異物、特に不溶性の異物の生成・混入の視認や確認のために、透明性を有し、無着色のものが好ましいが、内容物の耐光性や容器の意匠性、利便性を考慮すれば、不透明で着色されたものであってもよい。
本発明の薬液収容プラスチック容器は、上述のピラゾロン誘導体を含有する水溶液を、前記のプラスチック容器(輸液バッグ、ブロー成形容器等)に充填し、密封することで、製造することができる。また、これらの製造工程の任意の過程で、滅菌操作に付すことで、無菌性を保持したプラスチック容器とすることができる。また、所望に応じて、これらの容器への充填の前に、防塵フィルターを用いた濾過等の操作を行ってもよい。本発明のプラスチック容器の製造にあたり、滅菌操作の際の具体的な滅菌方法としては、例えば、熱水浸漬滅菌法、熱水シャワー滅菌法、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)法等が挙げられる。
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に制限されるものではない。
シート製膜
Tダイ式多層製膜機を用いて、表層/中間層/最内層の厚み比率が、それぞれ170/50/30(μm)となるよう共押出工法により積層容器材料(以下、「シート」とも表記する場合がある)を製膜した。
表層には、三菱化学株式会社製の密度:0.89、融解ピーク温度が162℃の物性を有するポリプロピレンをベースとする熱可塑性エラストマー「ゼラス」を用いた。中間層には、ポリエチレン成分として日本ポリエチレン株式会社製の密度0.908、融解ピーク温度120℃の気相法メタロセン系ポリエチレン「ハーモレックス」と、ポリプロピレン成分として日本ポリプロ株式会社製の密度0.90,融解ピーク温度が125℃のメタロセン系ポリプロピレン「ウィンテック」を、指定の比率でペレットの状態でドライブレンドしたものを使用した。
最内層の非晶性ポリマーには、ポリプラスチックス株式会社から販売されている、エチレンとノルボルネンとの共重合ポリマー「TOPAS」を用いた。当該非晶性ポリマーとしては、ガラス転移温度は、33℃、65℃、78℃、110℃、138℃の各グレードをそれぞれ単独で用いた。
耐熱性の評価
上記のシート製膜手順により、最内層のガラス転移温度が異なる5種類のシートを作成した。中間層を構成する混配物の樹脂組成は、ポリエチレン:ポリプロピレンが質量比50:50となるようブレンドしたものを使用した。
製膜したシートを用い、最内層同士を重ね合わせて、外周をヒートシールして、外寸172mm×115mmとなる輸液バッグ形状の容器(以下、「パウチ」と表記する場合がある)を作成した。外周シール幅が5mmとなるようトリミングし、パウチ内部に105mLの水を充填して密封シールした。
それぞれ作成した容器を高圧蒸気滅菌器により、下記表1に示す4条件で滅菌処理を行った。加熱処理後は冷却水により速やかに温度を下げた後、フィルム表面および側面を目視で観察し、その状態を確認した。
Figure 2018192643
滅菌後の外観評価結果を下記表2にまとめた。
Figure 2018192643
ガラス転移温度が低い(33℃、65℃)の非晶性ポリマーを使用すると、医薬品の滅菌条件として一般的な105℃以上での加熱時に、容器の顕著な変形や収縮を引き起こし、ソフトバック製剤としての商品価値を損なうため、好ましくない。一方でガラス転移温度が80℃の非晶性ポリマーを選定した場合、110℃以下の滅菌温度では、容器全体の収縮は認められないものの、シール端部の波打ちといった若干の変形が見られた。110℃以上のガラス転移温度を有する非晶性ポリマーを使用した場合には、一般的に行われる105〜115℃までの滅菌処理温度に対して、顕著な変形や収縮がみられず、耐熱性を有することを見出した。また、世界的に標準となっている121℃での滅菌処理(オーバーキル滅菌)においても、ガラス転移温度が136℃の非晶性ポリマーでは、良好な外観を維持していた。これらのことから、滅菌処理に対する耐熱性は、最内層を構成する非晶性ポリマーのガラス転移温度が大きく関係していることが明らかとなり、最内層を構成する非晶性ポリマーにおいて、ガラス転移温度が滅菌加熱温度と同等以上のものを選択することが望ましいといえる。
保存安定性データの取得
上記のシート製膜で得られた5種類のシートを用い、滅菌後の外観評価を行ったものと同サイズの輸液バッグ形状の容器を形成した。容器内には、下記表3に示す組成(エダラボンモデル製剤の組成)で、pH3.85に調製したエダラボン含有水溶液を製剤とし、容器内に105mLを充填して密封した。
製剤を収容した容器は、高圧蒸気滅菌器により105℃、30分間の滅菌処理を行い、冷却完了後に容器外側を乾燥させ、バック製剤とした。当該滅菌操作を完了したバッグ製剤を、二軸延伸ポリエステル/アルミニウム箔/直鎖状低密度ポリエチレンの3層構成からなるドライラミネート外装袋内に、脱酸素剤(三菱ガス化学株式会社製「エージレス」)とともに収納し、開口部をヒートシールして検体の作製を完了した。
Figure 2018192643
作成した製剤入りバッグ検体は、下記表4に示す保存条件下で、所定の期間保存した後に、バッグの保存安定性を評価するための成分残存率の測定を行った。25℃は製剤が通常保存される環境、40℃は加速試験条件、60℃はさらに短期間で評価を行うための苛酷試験条件、70℃はごく短期間でスクリーニング評価するために用いられる保存条件を想定して条件を設定した。
Figure 2018192643
上記表4に記載の各条件下での保存を完了した製剤の残存率を、次に示す条件で、液体クロマトグラフ法により測定した。

検出器:紫外吸光光度計(測定波長:243nm)
カラム:内径4.6mm、長さ150mmのステンレス管に粒径5μmのオクタデシルシリル化シリカゲルを充填した液体クロマトグラフィー用カラム。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:メタノール:水:酢酸=49.8:49.8:0.4
流速:1.0mL/min.
注入量:20μL

試験検体バッグからエダラボン約0.9mgに対応する容量を採取し、移動相を加えて10mLとして試料溶液とした。この液1mLを正確に量り、移動相を加えて正確に100mLとし、標準溶液とした。試料溶液および標準溶液20μLにつき、上述の試験条件にて、液体クロマトグラフィーにより試験を行った。それぞれのピーク面積を自動積分法により測定し、以下の式によりそれぞれの試験条件についてエダラボン成分の残存率を求めた。
エダラボン残存率(%)=(保存試験完了後のエダラボンのピーク面積)/標準溶液のエダラボンのピーク面積)×100(%)
種々の条件下で保存試験が完了した後のエダラボン製剤の成分残存率(%)を表5に示す。
Figure 2018192643
表5に示す結果から、保存温度と容器の保存安定性には、明確な相関が存在することが明らかとなった。最内層の非晶性ポリマーのガラス転移温度が、保存条件温度を下回る場合、長期保存後の有効成分の残存率は大きく低下する結果となった。その一方で、通常医薬品の保存安定性データを取得するための保管温度よりも、高いガラス転移温度を有する非晶性ポリマーを使用した場合には、高い成分残存率を示し、十分な保存安定性が得られることが明らかとなった。
中間層のポリエチレン成分とポリプロピレン成分の組成比は、プラスチック容器としての基本的な物理性能を保持するために特定の比率範囲であることが必要である。本発明のプラスチック容器における中間層の組成比率範囲において、良好なヒートシール強度や層間の接着強度といった物理特性が得られることを、以下、実験例に基づいて説明する。
[ヒートシール強度]
試験方法:輸液バッグ形状の容器のヒートシール部分に対して直角の方向に幅15.0 mm、展開長さ100mm以上の試験片を採取したものを試料とした。試験片のヒートシール部を中央にして180°に開き、引張試験機におけるつかみの間隔を50mmとして,試験片の両端を試験機のつかみ部に取り付けた。引張速度300mm/min.の一定速で、ヒートシール部が破断するまで引張荷重測定を行った。その間の最大荷重(N/15mm)を求め、ヒートシール強度として数値を求めた。
評価方法:JIS Z0238「ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法」において、レトルト殺菌用袋などで,強いヒートシール強さを要する場合、そのヒートシール強度は23N/15mm以上であることを規格として定めている。これを下回るものは性能不十分であると判断した。
[接着強度]
試験方法:輸液バッグ形状の容器のパウチ部分を15mm幅×150mm長に切り取り、酢酸エチルを用いて層間を分離させた。分離させた長さが20mm以上となるまで展開し、引張試験機のつかみに取り付けた。引張試験機の速度5mm/min.で30mmの長さを層間剥離させたときの平均強度を読み取り、接着強度(N/15mm)として数値化した。
評価方法:多層フィルムを用いた包装袋においては滅菌処理などを行った後も高い接着強度が維持されていることが望ましい。JIS等での規格化はなされていないが、包装製品としての望ましい層間接着強度実績を参考として、10N/15mm以上を好ましい値として採用した。
滅菌前後の容器から得られた試料について、ヒートシール強度および接着強度を測定し、評価を行った。また、接着強度を測定するにあたって分離した剥離面を観察し、記録した。これらの実験・評価結果を下記表6にまとめた。
Figure 2018192643
中間層として、PPが大部分を占める組成である場合、非晶性ポリマーを主成分とする最内層/中間層間で容易に剥離する傾向がみられる。ヒートシール強度が規格値を上回る、良好な水準で得られたのは、PEが40質量%以上の割合で含まれる場合であった。
一方で、中間層において、PEが大部分を占める組成では、表層/中間層間で容易に剥離し、接着強度が低下する傾向がみられ、特に、90質量%以上の割合でPEが含まれる場合において、滅菌処理後の接着強度が、設定した好ましい接着強度の下限値である10N/15mmを下回った。この組成範囲では、ヒートシール強度の低下はみられないが、ソフトバッグ製剤として長期の保存中に、接着強度が徐々に低下し、最終的に、シートの層間の分離(デラミネーション)を生じるおそれがあり、外観を含めた製品の商品価値を損なうおそれがあることから、中間層を構成する混配物の組成としては、PE:PPが、40:60〜80:20、好ましくは50:50〜70:30であることが、適正な範囲である。

Claims (6)

  1. ピラゾロン誘導体またはその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液を収容してなるプラスチック容器であって、該プラスチック容器の水溶液収容部は、少なくとも、表層及び中間層、最内層をこの順に含む積層容器材料からなり、表層はポリプロピレンが主成分であり、中間層は、ポリエチレンを40〜80質量%、ポリプロピレンを60〜20質量%の割合で含む混配物からなり、最内層は、少なくとも2種類の異なる構造をもつオレフィンモノマーからなる非晶性ポリマーを主成分とするもので、該オレフィンモノマーのうち少なくとも1種類は環状炭化水素骨格を有するモノマーである、ことを特徴とするプラスチック容器。
  2. 非晶性ポリマーのガラス転移温度が、80℃以上である請求項1に記載のプラスチック容器。
  3. 非晶性ポリマーが、滅菌温度と同等以上のガラス転移温度を有する請求項1または2に記載のプラスチック容器。
  4. 非晶性ポリマーが、環状炭化水素骨格を有するモノマーとエチレンモノマーとの共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチック容器。
  5. 収容物である水溶液を排出するための口部を備えたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチック容器。
  6. 輸液バッグまたはブロー成形容器の形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチック容器。
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