JP7064830B2 - 薬液収容プラスチック容器 - Google Patents
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Description
しかし、ラジカル捕捉製剤を始めとする一部の薬品は、ポリエチレン(以下、「PE」と表記する場合がある)やポリプロピレン(以下、「PP」と表記する場合がある)などの通常のポリオレフィン系樹脂(以下、「PO樹脂」と表記する場合がある)や、塩化ビニルなどの医薬容器の材質として一般的に使用される樹脂を成形したフィルムに、吸着あるいは透過することが知られており、薬液の有効成分がプラスチック容器に吸着されたり、プラスチック容器を構成する樹脂フィルムに含まれる添加剤や低分子成分と、薬液との相互作用が起こるなど、ソフトバッグ製剤を開発する上での課題となっていた。
例えば、国際公開第2007/055312号(特許文献1)には、ラジカル捕捉製剤である脳保護剤「エダラボン」を充填する輸液バッグとして、ポリエチレン及び環状オレフィンポリマーを重ね合せて多層としたプラスチック容器を、使用することが開示されているが、当該輸液バッグは、ポリエチレンからなる層を含んでいることから、このような製剤において必要とされる、121℃以上での高温滅菌(いわゆる、「オーバーキル滅菌」)に対応し得る程度の耐熱性を有しておらず、該オーバーキル滅菌を行った場合には、バッグが変形して、外観が大きく損なわれる。
また、特開2016-022092号公報(特許文献2)には、表層がPP、最内層がCOl、両層の間の中間層がPPからなる構成を有する輸液バッグを、「エダラボン」を収容する容器とすることが記載されている。このような構成の容器について評価したところ、オーバーキル滅菌は可能であるものの、滅菌後に、中間層と最内層との間の層間接着性が低下し、落下耐久試験時に、シール部の部分的な剥離が生じ、バッグとしての充分な強度が得られないことが判明した。
本発明に用いる、ピラゾロン誘導体は、下記式(I)
また、式(I)で表される化合物のほか、その薬学的に許容され得る塩を用いることもできる。薬学的に許容され得るとしては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、エタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のアミンとの塩が挙げられる。この他、薬学的に許容され得るものであれば、その塩の種類は特に限定されない。
さらに、式(I)で示されるピラゾロン誘導体またはその薬学的に許容され得る塩のほか、それらの水和物若しくは溶媒和物を薬液の有効成分とすることもできる。
本発明において、積層容器材料についての各層における「主成分」とは、着目する成分の、当該成分が含まれるマトリックス全体に占める割合が、50質量%超であることを意味するものである。
上記積層容器材料の厚さは、特に限定されないが、70~400μmが好ましい。また、周縁のシール幅は、特に限定されないが、2~20mmであり、好ましくは、3~7mmである。
積層容器材料において、非晶性ポリマーを主成分とするシーラント層である最内層の厚みは、10~100μm、より好ましくは20~80μmである。最内層の厚みが10μm未満では、シール性が十分でなかったり、必要に応じて設けられる口部との溶着強度が十分でないことがある。また、口部を溶着する時に最内層が加熱・加圧により薄くなり、ピンホールによる液漏れの原因となることがある。最内層の厚みは100μmを超えてもよいが、厚くなると容器の柔軟性が劣ることがある。また、コスト的にも好ましくない。
ポリプロピレンを主成分とする表層の厚さは、特に限定されないが、表層の厚みは特に限定されないが、20~250μm、好ましくは、50~200μmである。また、中間層の厚さは、20~100μm、好ましくは、35~80μmである。
また、最内層を構成する非晶性ポリマーと、中間層を構成するPO樹脂とを共押出成形で積層する場合は、これらを直接積層してもよいが、三井化学株式会社製の「アドマー」、三菱化学株式会社製の「モディック」などに代表される接着性樹脂を用いることもできる。
ポリエチレンとポリプロピレンとの割合は、PE/PPが45~75/55~25(質量%)の範囲が好ましく、50~70/50~30(重量部)の範囲が特に、好ましい。上記ポリエチレンの割合が40質量%を下回れば、プラスチック容器の柔軟性が低下し、また、透明性が低下するおそれがある。上記ポリプロピレンの割合が20質量%を下回れば、プラスチック容器の耐熱性が低下するおそれがある。
ポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を用いて製造される。メタロセン触媒を用いて製造されるシンジオタクチックポリプロピレンは、柔軟性や透明性に優れていることから、好ましい。上記ポリプロピレンは、融解ピーク温度が110℃以上、さらには、120℃以上であることが望ましく、上記温度特性を有するポリプロピレンは、上記中間層に用いたとき、プラスチック容器に耐熱性が付与される。
本発明のプラスチック容器に用いる最内層の主成分である非晶性ポリマーは、2種類以上のノルボルネン化合物等の環状オレフィンモノマーからなる共重合体や、環状オレフィンモノマーとαーオレフィン等の環状オレフィンモノマー以外のオレフィンモノマーとを共重合した付加重合体、ノルボルネン化合物等の環状オレフィンモノマーを用い、開環メタセシス重合の後、残った二重結合を水素化した重合体を含むが、1種類のノルボルネン化合物等の環状オレフィンモノマーの単独付加重合体(例えば、国際公開第2007/135887号の段落0015参照)は含まない。
これらの樹脂を含有することにより、プラスチック容器の低温での耐衝撃性や高圧蒸気滅菌処理直後の透明性維持、柔軟性の向上など、輸液バック形状等の容器として所望される性能の向上を図ることが可能である。
口部の溶着方法は、プラスチック容器が袋状容器である場合は、積層容器材料のシーラント層である最内層同士を重ね合わせて、その間に口部を挿入してヒートシールで溶着することができる。
また、プラスチック容器がブロー成形の場合には、成形時に口部を金型内に挿入するインサート成形により、プラスチック容器の成形時に溶着することができる。あるいは、開口部を有するプラスチック容器を成形し、あとから開口部に口部を挿入してヒートシールで溶着することもできる。
Tダイ式多層製膜機を用いて、表層/中間層/最内層の厚み比率が、それぞれ170/50/30(μm)となるよう共押出工法により積層容器材料(以下、「シート」とも表記する場合がある)を製膜した。
表層には、三菱化学株式会社製の密度:0.89、融解ピーク温度が162℃の物性を有するポリプロピレンをベースとする熱可塑性エラストマー「ゼラス」を用いた。中間層には、ポリエチレン成分として日本ポリエチレン株式会社製の密度0.908、融解ピーク温度120℃の気相法メタロセン系ポリエチレン「ハーモレックス」と、ポリプロピレン成分として日本ポリプロ株式会社製の密度0.90,融解ピーク温度が125℃のメタロセン系ポリプロピレン「ウィンテック」を、指定の比率でペレットの状態でドライブレンドしたものを使用した。
最内層の非晶性ポリマーには、ポリプラスチックス株式会社から販売されている、エチレンとノルボルネンとの共重合ポリマー「TOPAS」を用いた。当該非晶性ポリマーとしては、ガラス転移温度は、33℃、65℃、78℃、110℃、138℃の各グレードをそれぞれ単独で用いた。
上記のシート製膜手順により、最内層のガラス転移温度が異なる5種類のシートを作成した。中間層を構成する混配物の樹脂組成は、ポリエチレン:ポリプロピレンが質量比50:50となるようブレンドしたものを使用した。
製膜したシートを用い、最内層同士を重ね合わせて、外周をヒートシールして、外寸172mm×115mmとなる輸液バッグ形状の容器(以下、「パウチ」と表記する場合がある)を作成した。外周シール幅が5mmとなるようトリミングし、パウチ内部に105mLの水を充填して密封シールした。
それぞれ作成した容器を高圧蒸気滅菌器により、下記表1に示す4条件で滅菌処理を行った。加熱処理後は冷却水により速やかに温度を下げた後、フィルム表面および側面を目視で観察し、その状態を確認した。
上記のシート製膜で得られた5種類のシートを用い、滅菌後の外観評価を行ったものと同サイズの輸液バッグ形状の容器を形成した。容器内には、下記表3に示す組成(エダラボンモデル製剤の組成)で、pH3.85に調製したエダラボン含有水溶液を製剤とし、容器内に105mLを充填して密封した。
製剤を収容した容器は、高圧蒸気滅菌器により105℃、30分間の滅菌処理を行い、冷却完了後に容器外側を乾燥させ、バック製剤とした。当該滅菌操作を完了したバッグ製剤を、二軸延伸ポリエステル/アルミニウム箔/直鎖状低密度ポリエチレンの3層構成からなるドライラミネート外装袋内に、脱酸素剤(三菱ガス化学株式会社製「エージレス」)とともに収納し、開口部をヒートシールして検体の作製を完了した。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:243nm)
カラム:内径4.6mm、長さ150mmのステンレス管に粒径5μmのオクタデシルシリル化シリカゲルを充填した液体クロマトグラフィー用カラム。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:メタノール:水:酢酸=49.8:49.8:0.4
流速:1.0mL/min.
注入量:20μL
試験検体バッグからエダラボン約0.9mgに対応する容量を採取し、移動相を加えて10mLとして試料溶液とした。この液1mLを正確に量り、移動相を加えて正確に100mLとし、標準溶液とした。試料溶液および標準溶液20μLにつき、上述の試験条件にて、液体クロマトグラフィーにより試験を行った。それぞれのピーク面積を自動積分法により測定し、以下の式によりそれぞれの試験条件についてエダラボン成分の残存率を求めた。
エダラボン残存率(%)=(保存試験完了後のエダラボンのピーク面積)/標準溶液のエダラボンのピーク面積)×100(%)
試験方法:輸液バッグ形状の容器のヒートシール部分に対して直角の方向に幅15.0 mm、展開長さ100mm以上の試験片を採取したものを試料とした。試験片のヒートシール部を中央にして180°に開き、引張試験機におけるつかみの間隔を50mmとして,試験片の両端を試験機のつかみ部に取り付けた。引張速度300mm/min.の一定速で、ヒートシール部が破断するまで引張荷重測定を行った。その間の最大荷重(N/15mm)を求め、ヒートシール強度として数値を求めた。
評価方法:JIS Z0238「ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法」において、レトルト殺菌用袋などで,強いヒートシール強さを要する場合、そのヒートシール強度は23N/15mm以上であることを規格として定めている。これを下回るものは性能不十分であると判断した。
試験方法:輸液バッグ形状の容器のパウチ部分を15mm幅×150mm長に切り取り、酢酸エチルを用いて層間を分離させた。分離させた長さが20mm以上となるまで展開し、引張試験機のつかみに取り付けた。引張試験機の速度5mm/min.で30mmの長さを層間剥離させたときの平均強度を読み取り、接着強度(N/15mm)として数値化した。
評価方法:多層フィルムを用いた包装袋においては滅菌処理などを行った後も高い接着強度が維持されていることが望ましい。JIS等での規格化はなされていないが、包装製品としての望ましい層間接着強度実績を参考として、10N/15mm以上を好ましい値として採用した。
一方で、中間層において、PEが大部分を占める組成では、表層/中間層間で容易に剥離し、接着強度が低下する傾向がみられ、特に、90質量%以上の割合でPEが含まれる場合において、滅菌処理後の接着強度が、設定した好ましい接着強度の下限値である10N/15mmを下回った。この組成範囲では、ヒートシール強度の低下はみられないが、ソフトバッグ製剤として長期の保存中に、接着強度が徐々に低下し、最終的に、シートの層間の分離(デラミネーション)を生じるおそれがあり、外観を含めた製品の商品価値を損なうおそれがあることから、中間層を構成する混配物の組成としては、PE:PPが、40:60~80:20、好ましくは50:50~70:30であることが、適正な範囲である。
Claims (5)
- ピラゾロン誘導体またはその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液を収容してなるプラスチック容器であって、
前記プラスチック容器の水溶液収容部は、表層及び中間層、最内層をこの順に直接積層した積層容器材料からなり、
前記表層はポリプロピレンが主成分であり、前記中間層は、ポリエチレンを40~80質量%、ポリプロピレンを60~20質量%の割合で含む混配物からなり、前記ポリエチレンは、メタロセン触媒で重合された線状低密度ポリエチレンであり、前記最内層は、少なくとも2種類の異なる構造をもつオレフィンモノマーからなる非晶性ポリマーを主成分とするもので、前記オレフィンモノマーのうち少なくとも1種類は環状炭化水素骨格を有するモノマーである、ことを特徴とするプラスチック容器。 - 前記非晶性ポリマーのガラス転移温度が、80℃以上である請求項1に記載のプラスチック容器。
- 前記非晶性ポリマーが、環状炭化水素骨格を有するモノマーとエチレンモノマーとの共重合体である、請求項1または2に記載のプラスチック容器。
- 収容物である前記水溶液を排出するための口部を備えたことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のプラスチック容器。
- 輸液バッグまたはブロー成形容器の形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載のプラスチック容器。
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