本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
図1は、本実施形態のセンサ付き軸受の斜視図である。図2は、本実施形態のセンサ付き軸受の分解斜視図である。図3は、本実施形態のセンサ付き軸受の部分断面図である。図4は、本実施形態のセンサ付き軸受の部分断面図である。図2に示すように、センサ付き軸受1は、センサユニット5と、トーンリング30と、軸受本体20とを有している。
図3及び図4に示すように、軸受本体20は、外輪21と、内輪22と、転動体23とを有する転がり軸受である。以下、内輪22が回転輪として説明するが、外輪21と内輪22とが相対回転していれば、外輪21及び内輪22の内のどちらが回転してもよい。
カバー10は、円環状の天板12と、天板12の周囲に接続され、筒状の側板11とを有する。カバー10は、ケイ素鋼板、炭素鋼(JIS規格 SS400又はS45C)、マルテンサイト系ステンレス(JIS規格 SUS420)又はフェライト系ステンレス(JIS規格 SUS430)のいずれかのような軟磁性を有する材料で形成される。
図2に示すように、センサユニット5において、複数の発電部3と、センサ部40と、が、天板12の軸受本体20側対向面に取り付けられている。センサ部40は、電源基板41と、センサ基板42とを有している。
例えば、図1及び図2に示すように、天板12に開けられた雌ねじ穴に、黄銅など非磁性材料のボルト19が締結することで、各発電部3は、天板12に固定される。同様に、天板12に開けられた雌ねじ穴に、黄銅など非磁性材料のボルト47が締結することで、電源基板41とセンサ基板42とが、天板12に固定される。図1に示すように、ボルト19及びボルト47は、カバー10に取り付けられた状態で、天板12から突出しない長さを有している。
トーンリング30には、外径側に突出する凸部31と、凸部31よりも内径側に凹む凹部32とが周方向に交互に設けられている。トーンリング30は、軸受本体20側に突出する筒状突起33を内周側に有している。
トーンリング30は、ケイ素鋼板、炭素鋼(JIS規格 SS400又はS45C)、マルテンサイト系ステンレス(JIS規格 SUS420)又はフェライト系ステンレス(JIS規格 SUS430)のいずれかのような軟磁性を有する材料で形成される。
各発電部3は、永久磁石13と、ヨーク14と、コイル15と、を有している。永久磁石13は、天板12に接するように固定されている。ヨーク14は、磁石に接するように固定されている。ヨーク14は、ケイ素鋼板などの軟磁性を有する材料で形成されている。ヨーク14の内部における磁束量が増えるように、ヨーク14は、カバー10の材質と同等以上の透磁率を有する材料が用いられていることが望ましい。
コイル15は、導線がヨーク14を巻回するいわゆるマグネットワイヤである。発電量が増加するように、なるべく細い線径の導線を多く巻きつけることが望ましい。隣り合う発電部3のコイル15同士は、直列に接続され、直列接続された複数の発電部3のコイル15から引き出された配線が電源基板41に接続されている。
図3に示すように、側板11の一端が外輪21の外周に設けられた溝21Aにはめ込まれ固定される。筒状突起33は、内輪22の内周に設けられた溝22Aにはめ込まれ固定される。これにより、図3及び図4に示すように、ヨーク14の内周側端面及び天板12の内周側端面がトーンリング30の凸部31又は凹部32に対向する位置に配置される。
図5は、本実施形態のセンサ付き軸受における起電力の電圧と時間との関係を説明するための説明図である。ここで、図5の横軸は、時間であり、縦軸は、起電力の電圧である。外輪21が固定され、内輪22が回転することによって内輪22と共にトーンリング30が回転し、トーンリング30と各発電部3とが相対的に回転する。ヨーク14の内周側端面から図3に示す凸部31の外周側端面31IFまでのエアギャップと、ヨーク14の内周側端面から図4に示す凹部32の外周側端面32IFまでのエアギャップと、が交互に入れ替わる。
このように、トーンリング30の外周の凸部31と凹部32とにより、各発電部3のヨーク14とトーンリング30の外周との距離が周期的に変化する。これにより、各発電部3に生じる磁束Mfが変化する。永久磁石13を備えたヨーク14とトーンリング30とが接近している場合には、永久磁石13、ヨーク14、及び、トーンリング30を通る磁束は大きく、ヨーク14とトーンリング30とが離れている場合には、永久磁石13、ヨーク14、及び、トーンリング30を通る磁束が小さくなる。この磁束Mfの密度変化に応じて、ヨーク14の周りにマグネットワイヤを巻いたコイル15に電圧変化が発生する。
すなわち、ヨーク14と凸部31の外周側端面31IFとが最も近づいたときに、図3に示す磁束Mfが大きくなり、図5に示す起電力の電圧V1が電源基板41に供給される。ヨーク14と凹部32の外周側端面32IFとが最も遠ざかるときに、図4に示す磁束Mfが小さくなり、図5に示す起電力の電圧V2が電源基板41に供給される。
図6は、本実施形態のセンサユニットの平面図である。図6に示すように、電源基板41には、電源部43が実装されている。電源部43は、例えば、整流回路と、平滑回路と、保護回路と、電源回路と、を含む。電源部43は、発電部3から供給された単相交流電力を直流電圧に変換して、センサ基板42へ供給する。
センサ基板42には、センサ44と、通信回路45と、アンテナ46と、が実装されている。電源部43から出力される直流電力は、センサ44と、通信回路45と、に少なくとも供給される。
センサ44は、軸受本体20の周囲温度を検出する温度センサ、軸受本体20の振動を検出する振動センサ、軸受本体20の周囲湿度を検出する湿度センサ、軸受本体20の潤滑油の酸化劣化に伴って生じるガス状の炭化水素、硫化水素、アンモニア等を検出するガスセンサ、軸受本体20において生じる摩擦音を検出する超音波センサ、軸受本体20の回転を検出する回転センサ等の各種検出部のうち、いずれか1つ又は複数の検出部を備える。
通信回路45は、CPU(Central Processing Unit)と、無線送受信回路と、を含む装置である。装置内には、マイクロコンピュータが含まれる。センサ44が検出した検出情報は、通信回路45で処理され、アンテナ46を介して、図1に示す電磁波WVの無線通信により送信され、例えば上位装置50の通信部51で受信される。通信部51で受信した検出情報は、コンピュータ52で処理される。なお、実施形態では、通信回路45は、無線通信回路としたが、有線通信回路であっても良い。
図7は、本実施形態のカバーの斜視図である。図7に示すように、カバー10には、貫通孔12Hが開けられている。貫通孔12Hは、図1に示すように、樹脂などの非磁性材料で形成された非磁性蓋17で密閉されている。
カバー10は、軟磁性を有しているので、アンテナ46からの電磁波WVをシールドする作用を有している。このため、図6に示すように、軸受本体20の回転軸Zr方向の平面視において、アンテナ46が非磁性蓋17と重なるように配置されている。
図8は、本実施形態のセンサ付き軸受に搭載されている回路の構成を示す図である。回路200は、発電機201と、電源部43と、センサ44と、通信回路45と、アンテナ46と、を含む。電源部43は、整流回路202と、平滑回路203と、保護回路204と、電源回路205と、を含む。
発電機201は、図2から図4までに示した複数の発電部3と、トーンリング30と、で構成される。発電機201は、単相交流電力を発電して整流回路202に出力する。整流回路202は、発電機201で発電された単相交流電力を全波整流して平滑回路203に出力する。整流回路202は、ダイオードブリッジが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
平滑回路203は、整流回路202で全波整流された電圧を平滑して保護回路204に出力する。平滑回路203は、コンデンサが例示されるが、本開示はこれに限定されない。保護回路204は、平滑回路203で平滑された直流電圧が予め設定された電圧を超えないように抑制して、電源回路205の入力端子205aに出力する。保護回路204は、降伏ダイオードが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
電源回路205は、入力端子205aに供給される直流電圧を変換して、高電位側の出力端子205c及び低電位側の出力端子205dから出力する。実施形態では、電源回路205は、DC−DCコンバータであるが、本開示はこれに限定されない。電源回路205は、発電機201で発電された単相交流電圧を直流電圧に変換するAC−DCコンバータであっても良い。低電位は、接地電位が例示されるが、本開示はこれに限定されない。出力端子205c及び205dには、並列接続されたセンサ44及び通信回路45が、負荷として接続されている。
センサ44は、電源回路205から供給される直流電力を使用して、各種の物理量又は化学量をセンシングする。通信回路45は、電源回路205から供給される直流電力を使用して、センサ44によってセンシングされたデータを、アンテナ46を介して、(図1に示す)通信部51に無線送信する。
図9は、本実施形態のセンサ付き軸受の電源回路の構成を示す図である。電源回路205は、電源IC(Integrated Circuits)210を備える。電源IC210は、Texas Instruments社のbq25570が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
電源IC210は、NチャネルMOS型のトランジスタQ1及びQ5と、PチャネルMOS型のトランジスタQ2,Q3及びQ4と、を含む。また、電源IC210は、昇圧制御部211と、最大電力点追従(Maximum Power Point Tracking)制御部212と、コールドスタート制御部213と、降圧制御部214と、ナノパワー制御部215と、昇圧電圧閾値比較部216と、を含む。
電源回路205は、昇圧チョッパ回路221を含む。昇圧チョッパ回路221は、電源IC210外部のコイルL1並びにコンデンサCSTOR及びCBYPと、電源IC210内部のトランジスタQ1及びQ2並びに昇圧制御部211と、で構成される。
トランジスタQ1のソースは、端子VSSを介して接地されている。トランジスタQ1のゲートには、昇圧制御部211からゲート信号が供給される。トランジスタQ1のドレインは、端子LBOOSTに接続されている。端子LBOOSTには、コイルL1の一端が接続されている。コイルL1の他端は、入力端子205aに接続されている。また、入力端子205aと接地電位との間には、入力電圧を平滑するコンデンサCINが接続されている。
トランジスタQ2のドレインは、端子LBOOSTに接続されている。トランジスタQ2のゲートには、昇圧制御部211からゲート信号が供給される。トランジスタQ2のソースは、端子VSTORに接続されている。端子VSTORと接地電位との間には、並列接続されたコンデンサCSTOR及びCBYPが接続されている。
昇圧制御部211は、ある1つのタイミングでは、トランジスタQ1をオンに制御し、トランジスタQ2をオフに制御する。これにより、コイルL1にエネルギーが蓄えられる。昇圧制御部211は、次の1つのタイミングでは、トランジスタQ1をオフに制御し、トランジスタQ2をオンに制御する。これにより、コイルL1に蓄えられたエネルギーが、コンデンサCSTOR及びCBYPに供給される。これにより、昇圧チョッパ回路221は、入力端子205aに供給された直流電圧を昇圧する。コンデンサCSTOR及びCBYPの電圧、即ち、端子VSTORの電圧が、昇圧チョッパ回路221の昇圧電圧(出力電圧)である。
昇圧チョッパ回路221が、本発明の昇圧回路に対応する。実施形態では、昇圧回路を昇圧チョッパ回路221としたが、本開示はこれに限定されない。
最大電力点追従制御部212は、昇圧制御部211を制御して、発電機201の最大電力点を追従する制御を行う。最大電力点追従制御部212は、端子VOC_SAMPに供給される電圧に基づいて、動作設定される。
図10は、本実施形態のセンサ付き軸受の発電機及び昇圧チョッパ回路のインピーダンスを説明する図である。発電機201は、開回路電圧Vopenを起電する。発電機201は、出力インピーダンス201aを有する。昇圧チョッパ回路221は、入力インピーダンス221aを有する。
本発明者は、実験の結果、発電機201の出力インピーダンス201aと、昇圧チョッパ回路221の入力インピーダンス221aと、を同じにした場合に、発電機201から電力を好適に得られることを見出した。発電機201に昇圧チョッパ回路221が接続された時の閉回路電圧を、発電機201に昇圧チョッパ回路221が接続されていない時の開回路電圧Vopenの50%にすると、一般的に発電機201から最大電力を得られることが知られている。
そこで、実施形態では、最大電力点追従制御部212は、昇圧チョッパ回路221が動作しているときの発電電圧である閉回路電圧が、昇圧チョッパ回路221が動作していないときの発電電圧である開回路電圧Vopenと、端子VOC_SAMPに供給される電圧により設定された比率と、を乗じた電圧になるように、昇圧チョッパ回路221を制御する。昇圧制御部211は、トランジスタQ1及びQ2のオン時間及びオフ時間を制御することにより、昇圧チョッパ回路221の入力インピーダンス221aを制御する。これにより、電源回路205は、発電機201から電力を好適に得ることができる。
実施形態では、端子VOC_SAMPには、入力端子205aに供給される入力電圧を抵抗ROC2と抵抗ROC1とで分圧した電圧が、供給される。抵抗ROC2及びROC1の抵抗値を変えることで、開回路電圧Vopenに乗じる比率を変更できる。
最大電力点追従制御部212は、一定時間毎、例えば16秒毎に、昇圧チョッパ回路221を停止させる。このとき、発電機201の開回路電圧Vopenを抵抗ROC2と抵抗ROC1とで分圧した電圧が、端子VOC_SAMPに供給される。先に説明したように、実施形態では、昇圧チョッパ回路221の入力電圧が開回路電圧Vopenの50%になるように、抵抗ROC2及びROC1の抵抗値が設定される。
最大電力点追従制御部212は、端子VOC_SAMPに供給される電圧をサンプリングする。そして、最大電力点追従制御部212は、端子VOC_SAMPからサンプリングした電圧に基づいて、昇圧チョッパ回路221を制御する。端子VREF_SAMPと接地電位との間には、コンデンサCREFが接続されている。最大電力点追従制御部212は、端子VOC_SAMPからサンプリングした電圧を、端子VREF_SAMPに出力する。
コールドスタート制御部213は、電源回路205の各部に電力が蓄電されていない状態から電源回路205の動作を開始させるコールドスタートを制御する。コールドスタート制御部213は、端子VIN_DCを介して、入力端子205aに接続されている。コールドスタート制御部213は、入力端子205aに供給される入力電圧が予め定められた電圧、例えば100mVに達したら、昇圧制御部211に昇圧制御を開始させる。
トランジスタQ3のドレインは、端子VSTORに接続されている。トランジスタQ3のゲートには、ナノパワー制御部215からゲート信号が供給される。トランジスタQ3のソースは、端子VBATに接続されている。端子VBATと接地電位との間には、充電可能な電池BATが接続される。なお、実施形態では、電池BATとして、タンタルコンデンサを使用している。
昇圧チョッパ回路221の昇圧電圧がタンタルコンデンサBATの電圧よりも高い場合には、トランジスタQ3の寄生ダイオードを介して、タンタルコンデンサBATが充電される。
電源回路205は、降圧チョッパ回路222を含む。降圧チョッパ回路222は、電源IC210外部のコイルL2及びコンデンサCOUTと、電源IC210内部のトランジスタQ4及びQ5並びに降圧制御部214と、で構成される。
トランジスタQ4のソースは、端子VSTORに接続されている。トランジスタQ4のゲートには、降圧制御部214からゲート信号が供給される。トランジスタQ4のドレインは、端子LBUCKに接続されている。端子LBUCKには、コイルL2の一端が接続されている。コイルL2の他端は、出力端子205cに接続されている。また、出力端子205cと接地電位との間には、コンデンサCOUTが接続されている。コイルL2の他端は、端子VOUTを介して、降圧制御部214にフィードバックされる。
トランジスタQ5のドレインは、端子LBUCKに接続されている。トランジスタQ5のゲートには、降圧制御部214からゲート信号が供給される。トランジスタQ5のソースは、端子VSSを介して接地されている。
降圧制御部214は、ある1つのタイミングでは、トランジスタQ4をオンに制御し、トランジスタQ5をオフに制御する。これにより、コイルL2にエネルギーが蓄えられる。降圧制御部214は、次の1つのタイミングでは、トランジスタQ4をオフに制御し、トランジスタQ5をオンに制御する。これにより、コイルL2に蓄えられたエネルギーが、コンデンサCOUTに供給される。これにより、降圧チョッパ回路222は、昇圧チョッパ回路221の昇圧電圧を降圧する。コンデンサCOUTの電圧、即ち、端子VOUTの電圧が、降圧チョッパ回路222の降圧電圧(出力電圧)である。
降圧チョッパ回路222が、本発明の降圧回路に対応する。実施形態では、降圧回路を降圧チョッパ回路222としたが、本開示はこれに限定されない。
ナノパワー制御部215は、バイアス電圧を、端子VRDIVに出力する。端子VRDIVから出力されるバイアス電圧は、抵抗ROV2と抵抗ROV1とで分圧されて、端子VBAT_OVに供給される。端子VRDIVから出力されるバイアス電圧は、抵抗ROK3及びROK2と抵抗ROK1とで分圧されて、端子OK_PROGに供給される。端子VRDIVから出力されるバイアス電圧は、抵抗ROK3と抵抗ROK2及びROK1とで分圧されて、端子OK_HYSTに供給される。端子VRDIVから出力されるバイアス電圧は、抵抗ROUT2と抵抗ROUT1とで分圧されて、端子VOUT_SETに供給される。
ナノパワー制御部215は、端子VBAT_OV,OK_PROG,OK_HYST及びVOUT_SETに供給される電圧に基づいて、動作設定される。
端子VBAT_OVに供給される電圧は、端子VBATの過電圧閾値を設定する。ナノパワー制御部215は、端子VBATの電圧が過電圧閾値を超えたら、トランジスタQ3をオフに制御する。これにより、ナノパワー制御部215は、タンタルコンデンサBATが過電圧で損傷することを抑制できる。
端子OK_PROGに供給される電圧は、端子VSTORの電圧(昇圧電圧)が上昇している時の第1の昇圧電圧閾値を設定する。昇圧電圧閾値比較部216は、端子VSTORの電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値以上である場合に、ハイレベルの信号を端子VBAT_OKに出力する。また、昇圧電圧閾値比較部216は、端子VSTORの電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値より小さい場合に、ローレベルの信号を端子VBAT_OKに出力する。
端子OK_HYSTに供給される電圧は、端子VSTORの電圧(昇圧電圧)が下降している時の第2の昇圧電圧閾値を設定する。昇圧電圧閾値比較部216は、端子VSTORの電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値以上である場合に、ハイレベルの信号を端子VBAT_OKに出力する。また、昇圧電圧閾値比較部216は、端子VSTORの電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値より小さい場合に、ローレベルの信号を端子VBAT_OKに出力する。
第1の昇圧電圧閾値と第2の昇圧電圧閾値とは、同じであっても良いし、異なっていても良い。
端子VOUT_SETに供給される電圧は、端子VOUTの電圧(降圧電圧)を設定する。抵抗ROUT2及びROUT1の抵抗値を変えることで、降圧チョッパ回路222の降圧電圧を変更できる。降圧制御部214は、降圧チョッパ回路222の降圧電圧が端子VOUT_SETに供給される電圧に合致するように、降圧チョッパ回路222を制御する。一般に、センサ44及び通信回路45の動作電圧の閾値は、1.8Vから3.3V程度である。従って、実施形態では、降圧チョッパ回路222の降圧電圧が1.8Vから3.3V程度になるように、抵抗ROUT2及びROUT1の抵抗値が設定される。
ナノパワー制御部215は、発電機201の電圧が低下して昇圧チョッパ回路221の昇圧電圧がタンタルコンデンサBATの電圧よりも低下した場合には、トランジスタQ3をオンに制御する。これにより、タンタルコンデンサBATに蓄電された電力が、降圧チョッパ回路222に供給され、降圧チョッパ回路222は、降圧電圧の出力を継続できる。
端子ENバーに供給される電圧は、電源IC210の動作又は非動作を設定する。電源IC210は、端子ENバーの電圧がローレベルである場合に、動作する。電源IC210は、端子ENバーの電圧がハイレベルである場合に、動作しない。実施形態では、端子ENバーは、接地されている。従って、電源IC210は、動作する。
端子VOUT_ENに供給される電圧は、降圧チョッパ回路222の動作又は非動作を設定する。降圧チョッパ回路222は、端子VOUT_ENの電圧がハイレベルである場合に、動作する。また、降圧チョッパ回路222は、端子VOUT_ENの電圧がローレベルである場合に、動作しない。
実施形態では、端子VOUT_ENは、端子VBAT_OKに接続されている。従って、降圧チョッパ回路222は、端子VBAT_OKの電圧がハイレベルである場合に、動作する。また、降圧チョッパ回路222は、端子VBAT_OKの電圧がローレベルである場合に、動作しない。
先に説明したように、端子VBAT_OKの電圧は、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値以上である場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値以上である場合に、ハイレベルになる。また、端子VBAT_OKの電圧は、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値より小さい場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値より小さい場合に、ローレベルになる。
以上より、降圧チョッパ回路222は、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値以上である場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値以上である場合に、動作する。また、降圧チョッパ回路222は、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値より小さい場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値より小さい場合に、動作しない。
電源回路205の高電位側の出力ライン223と、接地電位と、の間には、デカップリングコンデンサ225が、接続されている。デカップリングコンデンサ225は、バイパスコンデンサと称されることもある。デカップリングコンデンサ225は、降圧電圧の内の交流成分を通過させ、直流成分を通過させない。これにより、降圧電圧の内の直流成分だけが、高電位側の出力端子205cに供給される。デカップリングコンデンサ225は、負荷(実施形態では、センサ44及び通信回路45)の安定動作に不可欠な回路要素である。
デカップリングコンデンサ225の低電位側の端子と、低電位側の出力端子205dと、の間には、NチャネルMOS型のトランジスタ226が配置されている。なお、トランジスタ226は、NチャネルMOS型に限定されず、PチャネルMOS型であっても良い。
トランジスタ226のソースは、デカップリングコンデンサ225の低電位側の端子に接続されている。トランジスタ226のドレインは、低電位側の出力ライン224を介して、低電位側の出力端子205dに接続されている。
トランジスタ226のゲートは、端子VBAT_OKに接続されている。従って、トランジスタ226は、端子VBAT_OKの電圧がハイレベルである場合に、オン状態になる。また、トランジスタ226は、端子VBAT_OKの電圧がローレベルである場合に、オフ状態になる。
先に説明したように、端子VBAT_OKの電圧は、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値以上である場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値以上の場合に、ハイレベルになる。また、端子VBAT_OKの電圧は、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値より小さい場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値より小さい場合に、ローレベルになる。
従って、トランジスタ226は、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値以上である場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値以上の場合に、オン状態になる。
また、トランジスタ226は、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値より小さい場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値より小さい場合に、オフ状態になる。
トランジスタ226がオン状態の場合には、デカップリングコンデンサ225の電圧が、出力端子205c及び205dを介して、センサ44及び通信回路45に供給される。また、トランジスタ226がオフ状態の場合には、低電位側の出力ライン224が遮断されるので、デカップリングコンデンサ225の電圧が、センサ44及び通信回路45に供給されない。
内輪22の回転が安定しており、発電機201の発電が安定している場合には、先に示した図5の通り、発電機201の出力電圧は安定した正弦波になる。この場合には、電源回路205の入力電圧が安定しているので、昇圧チョッパ回路221は、設定通りの昇圧電圧を出力することができる。そして、降圧チョッパ回路222は、設定通りの降圧電圧を出力することができる。また、端子VBAT_OKの電圧がハイレベルになるので、トランジスタ226がオン状態になる。従って、デカップリングコンデンサ225の、設定通りの電圧が、出力端子205c及び205dを介して、センサ44及び通信回路45に供給される。これにより、センサ44及び通信回路45は、正常に動作できる。
図11は、本実施形態のセンサ付き軸受の発電機の出力電圧の例を示す図である。図12は、本実施形態のセンサ付き軸受の整流回路の出力電圧の例を示す図である。内輪22の回転が不安定であり、発電機201の発電が不安定である場合には、図11に示す通り、発電機201の出力電圧は不安定になる。従って、図12に示す通り、整流回路202の出力電圧も、不安定になる。この場合には、電源回路205の入力電圧が不安定であるので、昇圧チョッパ回路221は、設定通りの昇圧電圧を出力することができなくなる。従って、降圧チョッパ回路222は、設定通りの降圧電圧を出力することができなくなる。
この場合に、もし仮にトランジスタ226が存在しないとしたならば、以下の事態が発生することが考えられる。センサ44及び通信回路45は、降圧チョッパ回路222が設定通りの降圧電圧を出力することができなくなっても、デカップリングコンデンサ225に蓄えられた電力を使用して動作を続ける。すると、デカップリングコンデンサ225の電圧が、徐々に低下する。そして、センサ44及び通信回路45は、デカップリングコンデンサ225の電圧がセンサ44及び通信回路45の動作電圧の閾値の付近に至ったときに、正常ではない動作をしてしまう可能性がある。
更に、センサ付き軸受1では、発電機201の出力電圧が内輪22の回転速度に応じて変動するので、降圧電圧の供給開始及び供給停止が頻繁に繰り返される。センサ44及び通信回路45がデカップリングコンデンサ225から電力の供給を受けて動作することで、デカップリングコンデンサ225の電圧が徐々に下がっているところに、降圧チョッパ回路222からの電力の供給が急に再開されることにより、デカップリングコンデンサ225の電圧が急に変動し、センサ44及び通信回路45に供給される電圧が急に変動する。これにより、センサ44及び通信回路45が正常ではない動作をしてしまう可能性が極めて高くなる。
なお、一般の装置の電源回路では、入力電圧が安定しているので、出力電圧も安定している。また、一般の装置の負荷回路は、消費電力が大きく、デカップリングコンデンサに蓄えられた電力を即座に消費してしまうので、正常ではない動作をしてしまう可能性が極めて低い。一方、センサ付き軸受1では、内輪22の回転速度が不安定になり得るので、発電電圧が不安定になり得て、ひいては出力電圧が不安定になり得る。また、センサ付き軸受1では、負荷回路、即ちセンサ44及び通信回路45は、消費電力が小さいので、デカップリングコンデンサ225に蓄えられた電力で、動作できてしまう。従って、上記の事態は、センサ付き軸受1に特有の課題である。
しかしながら、実施形態に係る電源回路205では、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値より小さい場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値より小さい場合には、端子VBAT_OKの電圧がローレベルになる。これにより、トランジスタ226がオフ状態になる。このため、デカップリングコンデンサ225に蓄えられた電力が、センサ44及び通信回路45に供給されない。従って、センサ44及び通信回路45は、動作できない。これにより、電源回路205は、センサ44及び通信回路45が正常ではない動作をしてしまう可能性を抑制できる。
また、トランジスタ226がオフ状態になることにより、デカップリングコンデンサ225に蓄えられた電力が、センサ44及び通信回路45に消費されずに、温存される。従って、センサ付き軸受の回転速度が回復し、発電機201の発電電力が回復し、電源回路205、センサ44及び通信回路45が次回の動作を開始する際に、デカップリングコンデンサ225への充電量が、少なくて済む。これにより、電源回路205は、デカップリングコンデンサ225の電圧の立ち上がりを早くすることができ、センサ44及び通信回路45の動作開始を早くすることができる。
コンデンサCSTOR及びCBYP並びにタンタルコンデンサBATの容量の設定について、説明する。
図13は、本実施形態のセンサ付き軸受の回路の動作シーケンスの例を示す図である。回路200は、動作開始後の期間T0において、コンデンサCSTOR及びCBYP並びにタンタルコンデンサBATの初期充電を行う。次の期間T1において、通信回路45は、通信部51との間の通信確立を行う。次の期間T2において、センサ44は、センシングを行う。次の期間T3において、通信回路45は、センシングデータを通信部51に送信する通信を行う。以降同様に、次の期間T4において、センサ44は、センシングを行う。次の期間T5において、通信回路45は、センシングデータを通信部51に送信する通信を行う。
コンデンサCSTOR及びCBYP並びにタンタルコンデンサBATの容量は、次の通りとする。期間T0においてコンデンサCSTOR及びCBYP並びにタンタルコンデンサBATが初期充電された後、発電機201の発電電圧が低下して、昇圧チョッパ回路221からコンデンサCSTOR及びCBYP並びにタンタルコンデンサBATへの電力供給が途絶えた場合を想定する。この場合であっても、センサ44及び通信回路45が期間T1から期間T3までの期間の動作を行える、つまり、期間T3の末尾での端子VSTORの電圧が、第2昇圧電圧閾値を超えているだけの電力を充電できるように、コンデンサCSTOR及びCBYP並びにタンタルコンデンサBATの容量を設定する。
もし仮に、コンデンサCSTOR及びCBYP並びにタンタルコンデンサBATの容量が、上記容量より小さいとしたならば、発電機201の発電電圧の変動が繰り返されると、センサ44及び通信回路45が、センシングデータを通信部51に全く送信できなくなってしまう。
一方、コンデンサCSTOR及びCBYP並びにタンタルコンデンサBATの容量が、上記容量以上であれば、発電機201の発電電圧の変動が繰り返されても、センサ44及び通信回路45が、1回の初期充電により、少なくとも1回はセンシングデータを通信部51に送信できる。従って、発電機201の発電電圧の変動が繰り返されても、回路200が、期間T0から期間T3までを繰り返すことにより、センサ44及び通信回路45が、センシングデータを通信部51に送信できる。
なお、コンデンサCSTOR及びCBYP並びにタンタルコンデンサBATの具体的な容量は、発電機201の発電電圧、第2昇圧電圧閾値、デカップリングコンデンサ225の容量、センサ44及び通信回路45の動作電圧の閾値、センサ44及び通信回路45の期間T1から期間T3までの期間での消費電力、回路200各部の損失等を勘案して、決定されるものである。
また、実施形態では、トランジスタ226が、デカップリングコンデンサ225の低電位側の端子と、低電位側の出力端子205dと、の間に配置されていることとしたが、本開示はこれに限定されない。トランジスタ226は、デカップリングコンデンサ225の高電位側の端子と、高電位側の出力端子205cと、の間に配置されていても良い。
但し、トランジスタ226が、デカップリングコンデンサ225の高電位側の端子と、高電位側の出力端子205cと、の間に配置されていると、トランジスタ226のオン抵抗により、センサ44及び通信回路45の高電位側の入力端子に印加される電位が下がってしまう。一方、トランジスタ226が、デカップリングコンデンサ225の低電位側の端子と、低電位側の出力端子205dと、の間に配置されていると、センサ44及び通信回路45の高電位側の入力端子に印加される電位が下がらない。従って、トランジスタ226が、デカップリングコンデンサ225の低電位側の端子と、低電位側の出力端子205dと、の間に配置されている方が好ましい。
また、実施形態では、トランジスタ226のゲートには、端子VBAT_OKの電圧が供給されることとしたが、本開示はこれに限定されない。端子VBAT_OKの電圧がハイレベルになる場合というのは、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値以上である場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値以上の場合である。昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値以上である場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値以上の場合というのは、降圧チョッパ回路222が設定通りの降圧電圧を出力できる場合である。
また、端子VBAT_OKの電圧がローレベルになる場合というのは、昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値より小さい場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値より小さい場合である。昇圧電圧が上昇しており且つ第1の昇圧電圧閾値より小さい場合、又は、昇圧電圧が下降しており且つ第2の昇圧電圧閾値より小さい場合というのは、降圧チョッパ回路222が設定通りの降圧電圧を出力できない場合である。
従って、電源回路205が、降圧チョッパ回路222の降圧電圧と、設定された降圧電圧閾値と、を比較する降圧電圧閾値比較部を、電源IC210の内部(例えば、実施形態に係るナノパワー制御部215)又は外部に備えても良い。そして、降圧電圧閾値比較部が、降圧チョッパ回路222の降圧電圧が降圧電圧閾値以上である場合にハイレベルとなり、降圧チョッパ回路222の降圧電圧が降圧電圧閾値より小さい場合にローレベルとなる信号を、トランジスタ226のゲートに出力しても良い。降圧電圧閾値は、降圧電圧が上昇している時の第1の降圧電圧閾値と、降圧電圧が下降している時の第2の降圧電圧閾値と、に分けられていても良い。