JP2018187557A - 塗膜の形成方法、塗膜構造体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】立体感に優れ、多様で明瞭な模様を有し、模様内における明度差が大きい塗膜を形成することを可能とする、塗膜の形成方法を提供する。【解決手段】基板11の一方の主面11aに、第1異方性マグネットシート10Aを貼り付ける工程と、第1異方性マグネットシート10A上に第2異方性マグネットシート10Bを貼り付ける工程と、基板11の他方の主面11bに非磁性の被塗物12を載置し、被塗物12に磁性を有する顔料を含む磁性塗料を塗布する工程と、塗布した磁性塗料からなる塗膜13を乾燥硬化させる工程と、を有し、第2異方性マグネットシート10Bとして、基板11の厚み方向の平面視において、第1異方性マグネットシート10Aより小さいものを用いることを特徴とする塗膜の形成方法。【選択図】図1
Description
本発明は、立体感に優れ、多様で明瞭な模様を有し、模様内における明度差が大きい塗膜の形成を可能とする塗膜の形成方法、および、これによって形成される塗膜を備えた塗膜構造体とその製造方法に関する。
工業製品等に、柄模様を有する塗膜(模様塗膜)を塗装によって形成する方法が知られている。これは、予め模様形状に着磁させた形状物を準備し、その上に非磁性の素材を載置し、磁性を有する鱗片状の顔料を含む塗料を塗装した上で当該顔料を配向させ、塗装された部分の領域ごとの配向状態の違いによって模様を表現するものである。
例えば特許文献1には、所望の柄模様に相当する柄模様で着磁させるか、または所望の柄模様が抜けた模様に相当する柄模様で着磁させた、磁性体粒子を含有するシートを用いて、模様塗膜を形成する方法が記載されている。引用文献1の記載によれば、着磁させたシートの上に非磁性体シートを載せ、この非磁性体シートの表面に、微細なフレーク状磁性材料を含有する透明または半透明の液状塗料を、乾燥膜厚で8〜50mmとなるように塗布し、塗布した液状塗料を、その塗布の1分後の不揮発分が60〜80質量%となるように乾燥または硬化させ、液状塗料の塗膜中に当該磁性柄模様に相当する模様を形成させ、その後に当該塗膜を完全に乾燥または硬化させることによって、模様塗膜を形成することができるとされている。
特許文献1に記載されている方法では、出発材料として、磁性体粒子を含有する1枚のシートまたは1枚のマグネットシートが用いられる。このような方法によれば、何れの出発材料を用いた場合においても、模様を有する塗膜を形成することはできる。しかしながら、形成することができる模様は、単純なものに限られており、立体感に優れ、多様で明瞭な模様を有し、模様内における明度差が大きい塗膜を形成することは難しい。
本発明は以上のような点を考慮してなされたものであり、立体感に優れ、多様で明瞭な模様を有し、模様内における明度差が大きい塗膜を形成することを可能とする、塗膜の形成方法、および、これによって形成される塗膜構造体とその製造方法を提供することを目的とする。
(1)本発明の一態様に係る塗膜の形成方法は基板の一方の主面に、第1異方性マグネットシートを貼り付ける工程と、前記第1異方性マグネットシート上に第2異方性マグネットシートを貼り付ける工程と、前記基板の他方の主面に非磁性の被塗物を載置し、前記被塗物に磁性を有する顔料を含む磁性塗料を塗布する工程と、塗布した前記磁性塗料からなる塗膜を乾燥硬化させる工程と、を有し、前記第2異方性マグネットシートとして、前記基板の厚み方向の平面視において、前記第1異方性マグネットシートより小さいものを用いることを特徴とする。
(2)上記(1)に記載の塗膜の形成方法は、前記磁性塗料からなる塗膜を乾燥硬化させた後に、前記磁性塗料からなる塗膜上にクリヤー塗料を塗布してもよい。
(3)上記(2)に記載の塗膜の形成方法は、前記クリヤー塗料からなる塗膜の厚さを10μm以上200μm以下としてもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の塗膜の塗膜の形成方法は、前記第1異方性マグネットシートおよび/または前記第2異方性マグネットシートとして、ラバーマグネットシートを用いてもよい。
(5)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の塗膜の形成方法は、前記第1異方性マグネットシートおよび/または前記第2異方性マグネットシートとして、シート状のフェライト磁石を用いてもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の塗膜の形成方法は、前記磁性塗料からなる塗膜の厚さを、5μm以上100μm以下としてもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の塗膜の形成方法は、前記磁性塗料からなる塗膜を乾燥硬化させる工程を、常温または80℃以上160℃以下の温度範囲で行ってもよい。
(8)上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の塗膜の形成方法は、前記磁性塗料からなる塗膜を乾燥硬化させる工程を、前記磁性塗料からなる塗膜を30秒以上5分以下の間静置した後に、80℃以上160℃以下の温度範囲で行ってもよい。
(9)本発明の一態様に係る塗膜構造体の製造方法は、平板状の被塗物と、前記被塗物の片方の主面に形成された塗膜と、を備えた塗膜構造体の製造方法であって、基板の一方の主面に、第1異方性マグネットシートを貼り付ける工程と、前記第1異方性マグネットシート上に第2異方性マグネットシートを貼り付ける工程と、前記基板の他方の主面に非磁性の被塗物を載置し、前記被塗物に磁性を有する顔料を含む磁性塗料を塗布する工程と、塗布した前記磁性塗料からなる塗膜を乾燥硬化させる工程と、を有し、前記第2異方性マグネットシートとして、前記基板の厚み方向の平面視において、前記第1異方性マグネットシートより小さいものを用いることを特徴とする。
(10)本発明の一態様に係る塗膜構造体は、上記(9)に記載の塗膜構造体の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする。
本発明に係る塗膜の形成は、塗膜の下地となる被塗物に対し、塗膜を形成する側と反対側に、基板を介して複数の異方性マグネットシートを重ね合わせた状態で行う。被塗物に形成される塗膜は磁性塗料からなるため、異方性マグネットシートから発生する磁場によって磁化される。ただし、異方性マグネットシートの端部において発生する磁場は弱いため、端部に重なる位置における塗膜の磁化は、他の位置における磁化に比べて小さいものとなる。したがって、異方性マグネットシートの端部に重なる部分とそれ以外の部分とで、磁化の強さが異なり、磁化の強さの分布に対応した模様が塗膜上に形成される。
本発明に係る塗膜の形成では、上層側の異方性マグネットシートとして、下層側の異方性マグネットシートより小さいものを用いるため、複数の異方性マグネットシートの端部同士が重なることはない。このように積層した複数の異方性マグネットシートを用いることにより、各異方性マグネットシートの端部に重なる部分、すなわち、相対的に磁化の小さい部分を、塗膜上の複数個所に発生させることができる。したがって、複数の異方性マグネットシートの端部の位置をそれぞれ調整することにより、塗膜上の所望の位置に、相対的に小さく磁化した部分を複数形成することができ、ひいては、この小さく磁化した部分からなる所望の模様を形成することができる。小さく磁化した部分を複数形成することにより、異方性マグネットシートを一枚だけ用いる場合に比べて、より複雑な模様、立体感に優れ、多様で明瞭な模様を有し、さらには模様内における明度差が大きい塗膜と、これを被塗物上に備えた塗膜構造体を得ることができる。
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
<第一実施形態>
本発明の柄模様を有する塗膜(模様塗膜)の形成方法について、図1(a)〜(d)を用いて詳細に説明する。図1(a)〜(d)は、本発明の第一実施形態に係る塗膜の形成方法を、段階的に説明する被処理体の概略構成図である。塗膜の形成方法は、以下に説明する第1〜第3工程を、少なくとも有する。
本発明の柄模様を有する塗膜(模様塗膜)の形成方法について、図1(a)〜(d)を用いて詳細に説明する。図1(a)〜(d)は、本発明の第一実施形態に係る塗膜の形成方法を、段階的に説明する被処理体の概略構成図である。塗膜の形成方法は、以下に説明する第1〜第3工程を、少なくとも有する。
(第1工程)
まず、平滑な基板11の一方の主面(裏面)11aに、第1異方性マグネットシート10Aを貼り付ける。基板11の材料については、特に限定されない。
まず、平滑な基板11の一方の主面(裏面)11aに、第1異方性マグネットシート10Aを貼り付ける。基板11の材料については、特に限定されない。
(第2工程)
続いて、第1異方性マグネットシート10A上に、第2異方性マグネットシート10Bを貼り付ける。
続いて、第1異方性マグネットシート10A上に、第2異方性マグネットシート10Bを貼り付ける。
図1(a)、(b)に示すように、第1、第2工程を経た基板の一方の主面11a側には、第1異方性マグネットシート10A、第2異方性マグネットシート10Bを順に重ねた積層体10が形成されている。
以下では、異方性マグネットシートを2枚重ねる場合を例にして説明するが、異方性マグネットシートの枚数については、複数であればよく、好ましくは2〜5枚、より好ましくは2〜3枚である。
これらの範囲の枚数であれば、本発明の効果、すなわち、後述する塗膜における模様の立体感を十分に表現する効果を得ることができる。なお、重ねる枚数が多すぎると、後述する被塗物から異方性マグネットシートまでの間隔が大きくなり、塗膜に発生させる磁力が弱くなるため、周縁の模様が不鮮明となり、本発明の効果を得ることが難しくなる。
第2異方性マグネットシート10Bとして、基板11の厚み方向の平面視において、第1異方性マグネットシート10Aより小さいものを用いる。異方性マグネットシートを2枚以上用いる場合にも、上層側ほど、主面の面積が小さいものを選択する。つまり、異方性マグネットシートの主面の面積は、最下層(基板11の直上層)で最大であり、積層順に小さくなっていく。この条件を満たす限りにおいて、異方性マグネットシートの形状に関する制限はない。
被塗物12としては、例えば、アルミニウム等の非磁性金属、プラスティック、木材、紙、ガラス、セラミック等の非磁性材料、あるいはこれらの成形物等からなるものを用いるのが好ましい。なお、異方性マグネットシート10が強い磁力を有する場合には、被塗物12は磁性金属等の磁性材料であってもよい。被塗物12の厚さは、異方性マグネットシート10において発生する磁力が、後述する塗膜に作用するのを妨げない程度のものであることが好ましい。
異方性マグネットシートとしては、例えば、ラバーマグネットシート(ゴムシート)、フェライトを主成分として含むマグネットシートなどを用いることができる。
(第3工程)
続いて、基板11の他方の主面11bに被塗物12を載置し、この被塗物12に対して、磁性を有する顔料を含む液状塗料(磁性塗料)を塗布(塗装)し、被塗物11の表面に、磁性塗料からなる塗膜13を形成する(図1(c))。磁性塗料としては、塗布後に磁場を作用させることによって配向する鱗片状の粉末粒子であって、例えば、ステンレススチール、コバルト、クロム、鉄、酸化鉄等の粉末粒子、これらの金属または金属酸化物を被覆または含有したものを用いることができる。
続いて、基板11の他方の主面11bに被塗物12を載置し、この被塗物12に対して、磁性を有する顔料を含む液状塗料(磁性塗料)を塗布(塗装)し、被塗物11の表面に、磁性塗料からなる塗膜13を形成する(図1(c))。磁性塗料としては、塗布後に磁場を作用させることによって配向する鱗片状の粉末粒子であって、例えば、ステンレススチール、コバルト、クロム、鉄、酸化鉄等の粉末粒子、これらの金属または金属酸化物を被覆または含有したものを用いることができる。
塗膜の形成過程においては、形成した際の安定性の観点から、積層体10を基板11に対して接着するなどして固定することが好ましい。固定の方法としては、例えば、接着剤を用いて基板の一方の主面11aと異方性マグネットシート(本実施形態では第1異方性マグネットシート10A)の主面とを、接着する方法などが挙げられる。
また、同じ観点から、重なる異方性マグネットシート同士(本実施形態では第1異方性マグネットシート10Aと第2異方性マグネットシート10B)を、互いにずれないように固定することが好ましい。固定の方法としては、例えば、接着剤を用いて異方性マグネットシートの主面同士を接着する方法、異方性マグネットシートの側面の一部または全部を囲む枠部材を設ける方法などが挙げられる。
被塗物12の表面に塗膜13が形成された時点において、塗膜13のうち、厚さ方向に延びる磁場が作用した領域が磁化されることになり、その結果として、異方性マグネットシート10の模様に対応する模様が、塗膜13上に形成される。このとき、塗膜13の中で鱗片状の粒子が配向する。
磁性塗料の塗布は、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装などによって行う。塗布によって形成される磁性塗料からなる塗膜13の厚さは、乾燥膜厚に基づいて、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上30μm以下であればより好ましく、10μm以上15μm以下であればさらに好ましい。
(第4工程)
次に、塗布された磁性塗料からなる塗膜13を、乾燥硬化させる。乾燥硬化は、塗布した磁性塗料の種類に応じた方法を適宜選択して行う。この方法としては、例えば、常温乾燥、反応硬化、加熱による硬化、加熱による溶融およびその後の冷却による硬化を利用する方法が挙げられる。加熱を行う場合、80℃以上160℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。この加熱は、磁性塗料からなる塗膜を30秒以上5分以下の間、静置した後に行ってもよい。
次に、塗布された磁性塗料からなる塗膜13を、乾燥硬化させる。乾燥硬化は、塗布した磁性塗料の種類に応じた方法を適宜選択して行う。この方法としては、例えば、常温乾燥、反応硬化、加熱による硬化、加熱による溶融およびその後の冷却による硬化を利用する方法が挙げられる。加熱を行う場合、80℃以上160℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。この加熱は、磁性塗料からなる塗膜を30秒以上5分以下の間、静置した後に行ってもよい。
当該加熱は、予備加熱と本加熱の2つのステップに分けて行ってもよい。すなわち、例えば、揮発分が20質量%以上30質量%以下となるように予備加熱(40〜90℃(好ましくは60〜80℃)、5〜10分)を行い、第1、第2異方性マグネットシート10A、10Bの模様に対応した模様を、塗膜13中に形成する。その後、本加熱(80〜160℃、5〜30分)を行い、塗膜13を完全に乾燥または硬化させる。
ここでは、磁性塗料が、金属または金属酸化物を被覆または含有したものである場合を想定し、磁性塗料を乾燥硬化させる方法として、加熱によるものを挙げたが、磁性塗料が光硬化性を有する場合には、紫外線を照射して硬化させることもできる。また、塗布された磁性塗料からなる塗膜13は、30秒以上5分以下程度の時間間隔で、実験室等に静置することによっても乾燥硬化させることができる。
(第5工程)
塗膜13の形成後、次工程に入る前に、塗膜13上にクリヤー塗料を塗布してもよい。クリヤー塗料としては、例えば、基体樹脂および架橋剤を含有してなる有機溶剤型硬化性塗料、水性硬化性塗料などを用いることができる。クリヤー塗料には、透明性を損なわない程度に着色されているものも含まれる。
塗膜13の形成後、次工程に入る前に、塗膜13上にクリヤー塗料を塗布してもよい。クリヤー塗料としては、例えば、基体樹脂および架橋剤を含有してなる有機溶剤型硬化性塗料、水性硬化性塗料などを用いることができる。クリヤー塗料には、透明性を損なわない程度に着色されているものも含まれる。
クリヤー塗料の塗布は、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、ローラー、刷毛、静電塗装などを用いて行うことができる。塗布によって形成されるクリヤー塗料からなる塗膜の厚さは、乾燥膜厚に基づいて、20μm以上200μm以下であることが好ましく、25μm以上150μm以下であればより好ましく、30μm以上100μm以下であればさらに好ましい。
クリヤー塗料を塗布することによって、塗膜12を外部環境から保護することができるとともに、塗膜12の最終的な表面を滑らかにして、高い光沢性を生じさせることができる。
(第6工程)
以上の工程を経ることにより、所望の模様が形成された塗膜12を有する、塗膜構造体100を得ることができる。
以上の工程を経ることにより、所望の模様が形成された塗膜12を有する、塗膜構造体100を得ることができる。
以上説明したように、本発明に係る塗膜の形成は、塗膜の下地となる被塗物に対し、塗膜を形成する側と反対側に、基板を介して複数の異方性マグネットシートを重ね合わせてなる積層体を形成した状態で行う。被塗物に形成される塗膜は磁性塗料からなるため、異方性マグネットシートから発生する磁場によって磁化される。ただし、異方性マグネットシートの端部において発生する磁場は弱いため、端部に重なる位置における塗膜の磁化は、他の位置における磁化に比べて小さいものとなる。したがって、異方性マグネットシートの端部に重なる部分とそれ以外の部分とで、磁化の強さが異なり、磁化の強さの分布に対応した模様が塗膜上に形成される。
本発明に係る塗膜の形成では、上層側の異方性マグネットシートとして、下層側の異方性マグネットシートより小さいものを用いるため、複数の異方性マグネットシートの端部同士が重なることはない。このように積層した複数の異方性マグネットシートを用いることにより、各異方性マグネットシートの端部に重なる部分、すなわち、相対的に磁化の小さい部分を、塗膜上の複数個所に発生させることができる。したがって、複数の異方性マグネットシートの端部の位置をそれぞれ調整することにより、塗膜上の所望の位置に、相対的に小さく磁化した部分を複数形成することができ、ひいては、この小さく磁化した部分からなる所望の模様を形成することができる。小さく磁化した部分を複数形成することにより、異方性マグネットシートを一枚だけ用いる場合に比べて、より複雑な模様、立体感に優れ、多様で明瞭な模様を有し、さらには模様内における明度差が大きい塗膜と、これを被塗物上に備えた塗膜構造体を得ることができる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例1)
アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)からなる平滑な基板(ABS板)の一方の主面に、円板状の2枚の異方性ラバーマグネットシート(ゴム磁石、ゴムシート)を重ねてなる積層体を形成した。
アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)からなる平滑な基板(ABS板)の一方の主面に、円板状の2枚の異方性ラバーマグネットシート(ゴム磁石、ゴムシート)を重ねてなる積層体を形成した。
また、異方性ラバーマグネットシートとしては、主面の面積が互いに異なるものを用いた。主面の面積の大きい方が下層側(被塗物側)に、小さい方が上層側(被塗物と反対側)にそれぞれ位置するように、2枚の異方性ラバーマグネットシートを積層した。また、上層側の異方性マグネットシートの主面が、下層側のマグネットシートの主面の中央部と重なるように、2枚の異方性ラバーマグネットシートを積層した。これらの異方性ラバーマグネットシートの厚さは、1.0mmであった。
次に、基板の他方の主面に被塗物を載置、この被塗物に対して、磁性を有する鱗片状の顔料を含む液状塗料(磁性塗料)を塗布し、被塗物の表面に、磁性塗料からなる塗膜を形成した。顔料としては、鉄、ニッケル、ステンレス等を鱗片状にしたもの、より詳細には、東洋アルミニウム社製のRFA4000を用いた。
ここで用いた塗料については、次のように製造した。攪拌容器に、固形分32%の前記アクリル樹脂I(内部溶剤;トルエン/キシレン/メチルエチルケトン=3/1/1)95部(固形分で30.4部)を入れ、ステンレスフレークRFA4000(東洋アルミ株式会社製)11.5部(固形分)を加えて十分に攪拌した。ここに、「レタンPGハイブリッドエコ#400ディープブラック」(商品名、関西ペイント社製)5部、さらに「レタンPGハイブリッドエコ標準硬化剤」(関西ペイント社製、架橋剤)を固形分で21部加え、レタンPGハイブリッドシンナー(関西ペイント社製)を加えて、粘度をフォードカップ#4(20℃)で20秒に調整して、磁性模様形成塗料を得た。
「レタンPGエコハイブリッドクリヤーGベース」(商品名、関西ペイント社製、基体樹脂:アクリル樹脂・ウレタン樹脂、架橋剤:レタンPGPGエコハイブリッドクリヤー硬化剤)に、レタンPGハイブリッドシンナー加えて、粘度をフォードカップ#4(20℃)で20秒に調整して、トップコート用のクリヤ塗料を得た。
磁性模様形成塗料を、硬化膜厚で15μmとなるように、エアスプレー塗装し、室温で10分間静置して、模様を形成させた後、マグネットシートを外した。その後、クリヤ塗料を、硬化膜厚で40μmとなるように、エアスプレー塗装した。その後、室温で10分間静置し、さらに80℃に加熱して乾燥硬化させ、本発明の塗膜を得た。
図2(a)は、実施例1として得た構造体であって、平滑な基板11と、その一方の主面11aに形成された異方性マグネットシートからなる複数の積層体10と、他方の主面に形成された塗膜とを備えた構造体の、積層体10側(裏側)の写真である。
各積層体10は、菱形状の2枚の異方性マグネットシートが重なってなる。上層側の異方性マグネットシート10Bは、下層側の異方性マグネットシート10Aより小さく、かつ、下層側の異方性マグネットシート10Aの中央部分に重なっている。各積層体10は、異方性マグネットシート10Aの各角において、他の積層体10と接するように配置されている。
異方性マグネットシート10A、10Bとしては、シーアイ化成社製の厚さが1.0mmの磁性シートを用いた。
図2(b)は、図2(a)に示す構造体の反対側、すなわち、被塗物12側(表側)の写真である。被塗物12には、裏側に配された積層体10(異方性マグネットシート10A、10B)の形状に対応した複数の二重の菱形模様、および、それらの隙間を構成する菱形模様が形成されている。形成された菱形模様は、いずれも立体感を有している。
(比較例1)
図3(a)は、比較例1として用いた構造体であって、平滑な基板21と、その一方の主面21aに形成された複数の菱形状の異方性マグネットシート20と、他方の主面21bに形成された塗膜とを備えた構造体の、異方性マグネットシート20側(裏側)の写真である。比較例1の構造体は、異方性マグネットシートを積層していない点のみにおいて、比較例1の構造体と異なっている。異方性マグネットシート20の構成材料、厚さに関しては、実施例1で用いたものと同様とした。
図3(a)は、比較例1として用いた構造体であって、平滑な基板21と、その一方の主面21aに形成された複数の菱形状の異方性マグネットシート20と、他方の主面21bに形成された塗膜とを備えた構造体の、異方性マグネットシート20側(裏側)の写真である。比較例1の構造体は、異方性マグネットシートを積層していない点のみにおいて、比較例1の構造体と異なっている。異方性マグネットシート20の構成材料、厚さに関しては、実施例1で用いたものと同様とした。
図3(b)は、図3(a)に示す構造体の反対側、すなわち、被塗物22側(表側)の写真である。被塗物22には、裏側に配された異方性マグネットシート20の形状に対応した複数の菱形模様、および、それらの隙間を構成する菱形模様が形成されている。形成された菱形模様は、いずれも明瞭な輪郭を有しているが、立体感を有していない。
本発明の塗膜の形成方法は、立体感に優れ、多様で明瞭な模様を有し、模様内における明度差が大きい塗膜を形成する方法として、産業上広く利用することができる。
10A、10B・・・異方性マグネットシート、11・・・基板、12・・・被塗物、
11a・・・基板の一方の主面、11b・・・基板の他方の主面、
13・・・塗膜、10・・・積層体、100・・・塗膜構造体。
11a・・・基板の一方の主面、11b・・・基板の他方の主面、
13・・・塗膜、10・・・積層体、100・・・塗膜構造体。
Claims (10)
- 基板の一方の主面に、第1異方性マグネットシートを貼り付ける工程と、
前記第1異方性マグネットシート上に第2異方性マグネットシートを貼り付ける工程と、
前記基板の他方の主面に非磁性の被塗物を載置し、前記被塗物に磁性を有する顔料を含む磁性塗料を塗布する工程と、
塗布した前記磁性塗料からなる塗膜を乾燥硬化させる工程と、を有し、
前記第2異方性マグネットシートとして、前記基板の厚み方向の平面視において、前記第1異方性マグネットシートより小さいものを用いることを特徴とする塗膜の形成方法。 - 前記磁性塗料からなる塗膜を乾燥硬化させた後に、前記磁性塗料からなる塗膜上にクリヤー塗料を塗布することを特徴とする請求項1に記載の塗膜の形成方法。
- 前記クリヤー塗料からなる塗膜の厚さを10μm以上200μm以下とすることを特徴とする請求項2に記載の塗膜の形成方法。
- 前記第1異方性マグネットシートおよび/または前記第2異方性マグネットシートとして、ラバーマグネットシートを用いることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の塗膜の形成方法。
- 前記第1異方性マグネットシートおよび/または前記第2異方性マグネットシートとして、シート状のフェライト磁石を用いることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の塗膜の形成方法。
- 前記磁性塗料からなる塗膜の厚さを、5μm以上100μm以下とすることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の塗膜の形成方法。
- 前記磁性塗料からなる塗膜を乾燥硬化させる工程を、常温または80℃以上160℃以下の温度範囲で行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の塗膜の形成方法。
- 前記磁性塗料からなる塗膜を乾燥硬化させる工程を、前記磁性塗料からなる塗膜を30秒以上5分以下の間静置した後に、80℃以上160℃以下の温度範囲で行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の塗膜の形成方法。
- 平板状の被塗物と、前記被塗物の片方の主面に形成された塗膜と、を備えた塗膜構造体の製造方法であって、
基板の一方の主面に、第1異方性マグネットシートを貼り付ける工程と、
前記第1異方性マグネットシート上に第2異方性マグネットシートを貼り付ける工程と、
前記基板の他方の主面に非磁性の被塗物を載置し、前記被塗物に磁性を有する顔料を含む磁性塗料を塗布する工程と、
塗布した前記磁性塗料からなる塗膜を乾燥硬化させる工程と、を有し、
前記第2異方性マグネットシートとして、前記基板の厚み方向の平面視において、前記第1異方性マグネットシートより小さいものを用いることを特徴とする塗膜構造体の製造方法。 - 請求項9に記載の塗膜構造体の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする塗膜構造体。
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