本発明の解凍装置の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
なお、下記の実施形態は、本発明の具体例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。下記の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
<第1実施形態>
(1)全体構成
本発明の第1実施形態に係る解凍装置100は、凍結している食品等の物品Mに電磁波を照射し、物品Mを内部発熱させて解凍する装置である。
電磁波を用いた物品の解凍は、外部加熱により物品外部からの伝熱で物品内部を加熱する解凍とは異なり、物品内部の直接加熱が可能という特徴を有する。そのため、電磁波を用いた物品の解凍では、外部加熱による方法に比べれば、物品の外部と内部との温度ムラを抑制しながら解凍することができる。しかし、電磁波を用いた物品の解凍においても、電磁波の減衰により物品の内部には電磁波が到達しにくいため、物品の内部は物品の外部に比べれば温まりにくい。そのため、電磁波を用いた物品の解凍においても、物品の内部は解凍されていないのにも関わらず、物品の外部は過熱された状態になるという問題が発生し得る(図4の二点鎖線参照)。
そこで、本解凍装置100では、物品Mを外部から冷却しながら、物品Mを電磁波で内部発熱させて解凍することが可能に構成されている。そして、本解凍装置100では、物品Mの表面温度(第1温度)と内部温度(第2温度)とに基づいて、物品Mの外部からの冷却が制御されるため、物品Mの解凍時の、物品Mの外周部と中心部との温度ムラを抑制することが可能である(図4の実線参照)。
また、一方で、本解凍装置100は、凍結している物品Mを、外部から加熱しながら、物品Mを電磁波で内部発熱させて解凍することも可能に構成されている。このように構成されているため、本解凍装置100は、物品Mを急速解凍することが可能である。
解凍装置100は、例えば、業務用の大型の解凍装置である。しかし、これに限定されるものではなく、解凍装置100は、家庭用の小型の解凍装置であってもよい。
解凍装置100は、ケーシング110と、電磁波照射器200と、冷凍機300と、温度センサ500と、コントローラ400と、を主に含む(図1及び図2参照)。
ケーシング110は、解凍空間110aを内部に形成する筐体である。解凍空間110aは、物品Mが収容され、解凍される空間である。解凍空間110aは、その周囲を、ケーシング110の壁面(天井面、側面及び底面を含む、図示省略)で覆われた空間である。ケーシング110には、解凍空間110a内に凍結している物品Mを搬入し、解凍空間110aから解凍後の物品Mを搬入するためのドア(図示せず)が設けられている。
電磁波照射器200は、物品Mを内部発熱させるため、物品Mに電磁波を照射する機器である。物品Mに電磁波を照射する1対の電極210は、解凍空間110a内に配置される(図1参照)。物品Mに電磁波を照射するため、解凍装置100により冷却される物品Mは、1対の電極210間に挟まれるよう戴置される。なお、物品Mは、電極210に接触している必要はない。物品Mと電極210との間には、電磁波が透過可能な材質の物品Mを戴置するための台が配置されていてもよい。
電磁波照射器200は、所定の周波数の電磁波を照射する。ここでは、電磁波照射器200の照射する電磁波の周波数は、中波(300kHz〜3MHz)、短波(3〜30MHz)及び超短波(30〜300MHz)のいずれかの周波数帯に含まれる。
冷凍機300は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを利用して、ケーシング110の内部の解凍空間110aを冷却又は加熱するヒートポンプ機器である。冷凍機300は、熱源側ユニットとしてのケーシング外ユニット300aと、利用側ユニットとしてのケーシング内ユニット300bとを有する(図1参照)。ケーシング外ユニット300aとケーシング内ユニット300bとは、液冷媒連絡配管302及びガス冷媒連絡配管304を介して互いに接続されている(図1参照)。ケーシング内ユニット300bは、解凍空間110aに冷風を吹き出し、解凍空間110a内の温度を下げることで、解凍空間110a内の物品Mを外部から冷却する。また、ケーシング内ユニット300bは、解凍空間110aに温風を吹き出し、解凍空間110a内の温度を上げることで、解凍空間110a内の物品Mを外部から加熱する。
温度センサ500は、物品Mの温度を計測するセンサである。温度センサ500は、表面温度センサ510と、内部温度センサ520と、を含む。表面温度センサ510は、物品Mの所定箇所の表面温度(第1温度)を測定するセンサである。内部温度センサ520は、表面温度センサ510が測定する前記の所定箇所とは異なる箇所の物品Mの温度(第2温度)を測定する。具体的には、内部温度センサ520は、物品Mの内部温度を測定するセンサである。
コントローラ400は、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御する機器である。コントローラ400は、操作部450が受け付けた運転モードの選択(選択された運転モードでの運転指示)に従い、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御し、各種運転を実行する。なお、操作部450は、運転モードの選択を受け付ける受付部の一例である。操作部450は、運転モードを選択するためのボタン等のスイッチを主に有する。
コントローラ400は、操作部450が運転モードの選択として通常解凍モードの実行指示を受け付けると、物品Mを外部から冷却しながら、電磁波を物品Mに照射して物品Mを解凍する通常解凍運転を解凍装置100に実行させる。なお、通常解凍運転中、物品Mの外部からの冷却を調整するため、コントローラ400は、温度センサ500の測定する物品Mの2点の温度(第1温度及び第2温度)に基づいて、冷凍機300の運転/停止、及び/又は、冷凍機300の冷却能力を制御する。
また、コントローラ400は、操作部450が運転モードの選択として急速解凍モードの実行指示を受け付けると、物品Mを外部から加熱しながら、電磁波を物品Mに照射して物品Mを解凍する急速解凍運転を解凍装置100に実行させる。
通常解凍運転及び急速解凍運転については、後ほど更に説明する。
(2)詳細構成
解凍装置100を構成する、電磁波照射器200、冷凍機300、温度センサ500、及びコントローラ400についてより詳細に説明する。
(2−1)電磁波照射器
電磁波照射器200は、物品Mを内部発熱されるため、物品Mに高周波の電磁波を照射して物品Mを誘電加熱する機器である。電磁波照射器200は、特に、凍結している物品Mを内部発熱させて解凍するため、物品Mに電磁波を照射する機器である。
電磁波照射器200は、一対の電極210と、高周波電源220と、を主に含む。
電極210は、例えば金属製である。各電極210の形状は、平板状である。ただし、電極210の形状は、平板状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。一対の電極210は、ケーシング110内の解凍空間110aに、互いに対向するように配置されている。言い換えれば、一対の電極210は、互いに平行に配置されている。
電極210は、高周波電源220と接続されている(図1参照)。なお、電極210は、負荷整合回路(図示せず)を介して高周波電源220と接続されてもよい。
高周波電源220は、例えば自励発振回路を用いた高周波電源220である。ただし、これに限定されるものではなく、高周波電源220は、他励発振回路を用いた高周波電源220であってもよい。高周波電源220は、例えば、周波数及び出力が一定の電源である。
高周波電源220は、コントローラ400と電気的に接続され、コントローラ400により制御される。電磁波照射器200は、高周波電源220に対するコントローラ400の指示に応じ、電磁波の照射/照射停止を切り換える。
なお、高周波電源220は、周波数及び出力が可変の電源であってもよい。そして、例えばコントローラ400は、解凍対象の物品Mの種類等に応じ、高周波電源220が物品Mに対し照射する電磁波の周波数や出力を調整するよう構成されていてもよい。
(2−2)冷凍機
冷凍機300は、蒸気圧縮式のヒートポンプ機器である。
冷凍機300は、熱機器の一例である。冷凍機300は、ケーシング110内の解凍空間110aに置かれた物品Mを外部から冷却することができる。冷凍機300による物品Mの冷却は、物品Mの外周部の過熱の抑制を主な目的とする。また、冷凍機300は、加熱機としても機能する。冷凍機300は、ケーシング110内の解凍空間110aに置かれた物品Mを外部から加熱することができる。
なお、解凍装置100は、1台の冷凍機300で冷却/加熱を行う代わりに、冷却用の冷凍機と、冷却用の冷凍機とは別の加熱用の冷凍機と、を有していてもよい。また、解凍装置100は、ヒートポンプ機器以外の機器を熱機器として有してもよい。例えば、解凍装置は、冷却用のヒートポンプ機器と、加熱用の電気ヒータと、を有していてもよい。
冷凍機300は、ケーシング外ユニット300a、ケーシング内ユニット300b、及び冷凍機制御部390を主に有する(図1参照)。
冷凍機300では、ケーシング外ユニット300aの圧縮機310、四路切換弁320、第2熱交換器350、膨張弁360及びアキュムレータ380と、ケーシング内ユニット300bの第1熱交換器330と、が冷媒配管で接続されることで、冷媒回路が構成される。
(2−2−1)ケーシング内ユニット
ケーシング内ユニット300bは、第1熱交換器330と、ケーシング内ファン340と、を主に有する(図1参照)。
第1熱交換器330は、例えば、伝熱管と多数のフィンとにより構成された、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。第1熱交換器330は、冷媒配管により、液冷媒連絡配管302及びガス冷媒連絡配管304と接続されている(図1参照)。第1熱交換器330は、物品Mを冷却する冷却運転時には冷媒の蒸発器(冷却器)として機能し、物品Mを加熱する加熱運転時には冷媒の凝縮器(放熱器)として機能する。
ケーシング内ファン340は、ファン用モータ(図示省略)によって駆動されるファンである。ファン用モータは、インバータ式である。ケーシング内ファン340は、第1熱交換器330に空気を供給することで、第1熱交換器330における空気と冷媒との熱交換を促進する。また、ケーシング内ファン340は、冷媒との熱交換によって冷却された、第1熱交換器330を通過して流れる空気を解凍空間110a内に吹き出すことで解凍空間110aの温度を低下させ、解凍空間110a内に置かれた物品Mを外部から冷却する。また、ケーシング内ファン340は、冷媒との熱交換によって加熱された、第1熱交換器330を通過して流れる空気を解凍空間110a内に吹き出すことで解凍空間110aの温度を上昇させ、解凍空間110a内に置かれた物品Mを外部から加熱する。
(2−2−2)ケーシング外ユニット
ケーシング外ユニット300aは、圧縮機310、四路切換弁320、第2熱交換器350、膨張弁360、ケーシング外ファン370、及びアキュムレータ380を主に有する(図1参照)。
また、ケーシング外ユニット300aは、圧縮機310、四路切換弁320、第2熱交換器350、膨張弁360及びアキュムレータ380を接続する冷媒配管群306を含む(図1参照)。冷媒配管群306には、吸入管306a、吐出管306b、第1ガス冷媒管306c、液冷媒管306d及び第2ガス冷媒管306eを含む(図1参照)。
冷媒配管群306によるケーシング外ユニット300aの各構成の接続について説明する。吸入管306aは、圧縮機310の吸入口と四路切換弁320とを接続する配管である。吸入管306aにはアキュムレータ380が配置される。吐出管306bは、圧縮機310の吐出口と四路切換弁320とを接続する配管である。第1ガス冷媒管306cは、四路切換弁320と第2熱交換器350のガス側とを接続する配管である。液冷媒管306dは、第2熱交換器350の液側と液冷媒連絡配管302とを接続する配管である。液冷媒管306dには、膨張弁360が設けられる。第2ガス冷媒管306eは、四路切換弁320とガス冷媒連絡配管304とを接続する配管である。
圧縮機310は、モータ(図示せず)で圧縮機構を駆動することで、吸入管306aから低圧のガス冷媒を吸入し、圧縮機構で圧縮した高圧のガス冷媒を吐出管306bに吐出する。圧縮機310のモータは、インバータ式である。
四路切換弁320は、冷媒が流れる方向を切り換える機構である。冷却運転時(物品Mの冷却時)には、図1に実線で示されるように、四路切換弁320は、吸入管306aと第2ガス冷媒管306eを接続するとともに、吐出管306bと第1ガス冷媒管306cを接続する。一方、加熱運転時(物品Mの加熱時)には、図1に破線で示されるように、四路切換弁320は、吸入管306aと第1ガス冷媒管306cとを接続するとともに、吐出管306bと第2ガス冷媒管306eとを接続する。
第2熱交換器350は、例えば、伝熱管と多数のフィンとにより構成された、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。第2熱交換器350は、冷却運転時(物品Mの冷却時)には冷媒の凝縮器として機能し、加熱運転時(物品Mの加熱時)には冷媒の蒸発器として機能する。
膨張弁360は、液冷媒管306dを流れる冷媒を減圧する膨張機構の一例である。膨張弁360は、開度可変の電動膨張弁である。
ケーシング外ファン370は、ファン用モータ(図示省略)によって駆動されるファンである。ケーシング外ファン370は、空気を第2熱交換器350に供給することで、第2熱交換器350における空気と冷媒との熱交換を促進する。
アキュムレータ380は、圧縮機310における液圧縮を避けるため(圧縮機310に液相の冷媒が送られるのを避けるため)、吸入管306aを流れる冷媒を気相と液相に気液分離器である。
(2−2−3)冷却機制御部
冷凍機制御部390は、冷凍機300の動作を制御するコンピュータである。例えば、冷凍機制御部390は、CPUやメモリを有するマイクロ・コントローラ・ユニット(MCU)である。なお、図1中では、冷凍機制御部390をケーシング外ユニット300a側に描画しているが、冷凍機制御部390は、ケーシング外ユニット300a側のMCUと、ケーシング内ユニット300b側のMCUとが協働して冷凍機300の動作を制御するものであってもよい。
冷凍機制御部390は、図示は省略しているが、冷凍機300の各構成、例えば、圧縮機310、四路切換弁320、ケーシング内ファン340のファン用モータ、膨張弁360及びケーシング外ファン370のファン用モータ等に電気的に接続されている。冷凍機制御部390では、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することで、冷凍機300の制御を行う。
冷凍機制御部390は、物品Mの冷却時(冷却運転時)には、以下の様に各構成機器が動作するように冷凍機300を制御する。冷却運転時には、圧縮機310から吐出された冷媒は、四路切換弁320を通って第2熱交換器350へ流入し、ケーシング110外の空気に放熱して凝縮する。第2熱交換器350で凝縮した冷媒は、膨張弁360を通過する時に膨張する。その後、第1熱交換器330へと流入し、解凍空間110aの空気から吸熱して蒸発する。
また、冷凍機制御部390は、物品Mの加熱時(加熱運転時)には、以下の様に書く構成機器が動作するように冷凍機300を制御する。加熱運転時には、圧縮機310から吐出された冷媒は、四路切換弁320を通って第1熱交換器330へ流入し、解凍空間110aの空気に放熱して凝縮する。第1熱交換器330で凝縮した冷媒は、膨張弁360を通過する時に膨張する。その後、第2熱交換器350へと流入し、ケーシング110外の空気から吸熱して蒸発する。
冷凍機制御部390は、コントローラ400とも電気的に接続されている(図1及び図2参照)。冷凍機制御部390は、コントローラ400からの冷凍機300の運転/停止指令や、冷却/加熱能力の調整指令に応じて、冷凍機300の各構成の動作を制御する。
冷凍機300の冷却能力は、例えば、ケーシング外ファン370のファン用モータの回転数を変更してケーシング外ファン370の風量を増減することで調整される(風量を増加させると冷却能力が大きくなり、風量を減らすと冷却能力が小さくなる)。また、冷凍機300の冷却能力は、例えば、圧縮機310の回転数等を変更して第1熱交換器330で冷媒と熱交換した後の空気の温度を上昇/下降することで調整される(第1熱交換器330で冷媒と熱交換した後の空気の温度を下降させると冷却能力が大きくなり、第1熱交換器330で冷媒と熱交換した後の空気の温度を上昇させると冷却能力が小さくなる)。
冷凍機300の加熱能力は、例えば、ケーシング外ファン370のファン用モータの回転数を変更してケーシング外ファン370の風量を増減することで調整される(風量を増加させると加熱能力が大きくなり、風量を減らすと加熱能力が小さくなる)。また、冷凍機300の加熱能力は、例えば、圧縮機310の回転数等を変更して第1熱交換器330で冷媒と熱交換した後の空気の温度を上昇/下降することで調整される(第1熱交換器330で冷媒と熱交換した後の空気の温度を上昇させると加熱能力が大きくなり、第1熱交換器330で冷媒と熱交換した後の空気の温度を下降させると加熱能力が小さくなる)。
(2−3)温度センサ
温度センサ500は、物品の所定箇所(第1箇所)の表面温度である第1温度と、前記の所定箇所とは異なる箇所(第2箇所)の温度である第2温度とを測定する。
温度センサ500は、表面温度センサ510と、内部温度センサ520と、を含む。表面温度センサ510は、物品の第1箇所の表面温度である第1温度を測定するセンサである。内部温度センサ520は、物品の第2箇所の温度である第2温度を測定するセンサである。
表面温度センサ510が第1温度を計測する物品Mの所定箇所(第1箇所)は、電磁波による誘電加熱により比較的加熱されやすい物品Mの表面である。また、物品Mの第1箇所は、例えば、冷凍機300により比較的冷却/加熱されやすい箇所(ケーシング内ファン340が吹き出す冷風/温風が当たりやすい箇所)である。例えば、物品Mの所定箇所は、解凍空間110aの電極210間に戴置された物品Mの上面である。
表面温度センサ510は、例えば、物品Mの発生する赤外線を検知することで物品Mの表面温度を計測する非接触式の赤外線センサである。表面温度センサ510は、コントローラ400と電気的に接続されている。コントローラ400には、表面温度センサ510が検出した物品Mの第1温度に基づく信号(計測した物品Mの第1温度をコントローラ400に知らせる信号)が送信される。
内部温度センサ520が第2温度を計測する物品Mの箇所(第2箇所)は、ここでは物品Mの内部である。特には、物品Mの第2箇所は、物品Mの中心部である。内部温度センサ520が第2温度を計測する物品Mの第2箇所は、電磁波が比較的到達しにくく、電磁波による誘電加熱により比較的加熱されにくい(物品Mの外周部に比べ加熱されにくい)箇所である。また、内部温度センサ520が第2温度を計測する物品Mの第2箇所は、冷凍機300により冷却/加熱されにくい箇所(冷凍機300の運転が温度に与える影響が物品Mの外周部に比べ低い箇所)である。
内部温度センサ520は、例えば、光ファイバー式温度センサである。内部温度センサ520は、光ファイバープローブ522を有する。内部温度センサ520は、光ファイバープローブ522が挿入された物品Mの内部(特にここでは、物品Mの中心部)の温度を計測する。なお、光ファイバープローブ522は、例えば冷凍肉等の物品Mをケーシング110内に戴置する際に作業者が手動で物品Mに差し込むものであってもよい。また、光ファイバープローブ522は、物品Mがケーシング110内に戴置されると、図示しない駆動機構により駆動され、物品Mに自動で差し込まれてもよい。内部温度センサ520は、コントローラ400と電気的に接続されている。コントローラ400には、内部温度センサ520が検出した物品Mの第2温度に基づく信号(計測した物品Mの第2温度をコントローラ400に知らせる信号)が送信される。
(2−4)コントローラ
コントローラ400は、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御するコンピュータである。コントローラ400は、一般のコンピュータと同様に、CPUやメモリを有し、CPUがメモリに記憶されている解凍装置100の動作制御用のプログラムを実行することで、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御する。
なお、ここではコントローラ400として、コンピュータがプログラムを実行することで上記のように解凍装置100を制御することを想定しているが、コントローラ400は、上記のような制御をハードウェアで実現するものであってもよい。
コントローラ400は、電磁波照射器200の動作を制御するため高周波電源220に電気的に接続されている(図2参照)。また、コントローラ400は、冷凍機300の動作を制御するため冷凍機制御部390に電気的に接続されている(図2参照)。また、コントローラ400は、温度センサ500、より具体的には表面温度センサ510及び内部温度センサ520とも電気的に接続されている(図2参照)。コントローラ400は、表面温度センサ510及び内部温度センサ520のそれぞれから送信される、物品Mの第1温度を示す信号及び物品Mの第2温度を示す信号を受信する。
コントローラ400は、操作部450が受け付けた作業者による運転モードの選択に従い、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御し、各種運転を実行する。ここでは、解凍装置100は、運転モードとして通常解凍モード及び急速解凍モードの2種類の運転モードを有する(操作部450は、運転モードの選択として、通常解凍モードの選択又は急速解凍モードの選択を受け付ける)。ただし、これに限定されるものではなく、解凍装置100は、これら2種類以外の運転モードを有していてもよい。
操作部450が運転モードの選択として通常解凍モードの選択(通常解凍モードの実行指示)を受け付けると、コントローラ400、特に機能部としての通常解凍運転部410は、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御し、通常解凍運転を解凍装置100に実行させる。ここでの通常解凍運転は、冷凍機300により物品Mを外部から冷却しながら(物品Mの外周部の過熱を抑制しながら)、電磁波照射器200により電磁波を物品Mに照射して、内部発熱により物品Mを解凍する運転モードである。なお、通常解凍運転中、通常解凍運転部410は、表面温度センサ510が測定する第1温度と、内部温度センサ520が測定する第2温度とに基づいて、冷凍機300の運転/停止、及び/又は、冷凍機300の冷却能力を制御する。
また、操作部450が運転モードの選択として急速解凍モードの選択(急速解凍モードの実行指示)を受け付けると、コントローラ400、特に機能部としての急速解凍運転部420は、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御し、急速解凍運転を解凍装置100に実行させる。急速解凍運転は、冷凍機300により物品Mを外部から加熱しながら、更に電磁波照射器200により電磁波を物品Mに照射して内部発熱により物品Mを解凍する運転モードである。
(3)解凍装置の動作
通常解凍運転及び急速解凍運転時の解凍装置100の動作について以下に説明する。
(3−1)通常解凍運転
通常解凍運転について図3A,図3Bのフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下では特に説明しないが、コントローラ400は、通常解凍運転中、表面温度センサ510から送信される第1温度を示す信号と、内部温度センサ520から送信される第2温度を示す信号とを、それぞれ適宜取得している。
操作部450が運転モードの選択として通常解凍モードの実行指示を受け付けると、コントローラ400の通常解凍運転部410は、電磁波照射器200が運転を開始し、凍結している物品Mに対して電磁波を照射するように、電磁波照射器200(特に高周波電源220)を制御する(ステップS1)。そして、ステップS2に進む。
ステップS2では、通常解凍運転部410は、表面温度センサ510が計測した第1温度と、内部温度センサ520が計測した第2温度と、がいずれも目標温度以上になっているかを判定する。目標温度は、物品Mの解凍が完了したと判定可能な値であることが好ましい。なお、物品Mの解凍が完了した状態は、物品Mが完全に解凍された状態に限定されるものではなく、物品Mが所望の状態になっている場合(例えば半解凍状態となっている場合)も含む。目標温度は、限定するものではないが、例えば0℃である。第1温度及び第2温度がいずれも目標温度以上である場合にはステップS3へ進み、第1温度及び第2温度の少なくとも一方が目標温度より低い場合にはステップS4に進む。
第1温度及び第2温度がいずれも目標温度以上である場合、物品Mの解凍は完了したと考えられる。そのため、ステップS3では、通常解凍運転部410は、電磁波照射器200が運転を停止し、物品Mに対する電磁波の照射を停止するように、電磁波照射器200(特に高周波電源220)を制御する。そして、解凍装置100は、物品Mの解凍のための動作を完了する。なお、処理がステップS3に進んだ際に、冷凍機300が運転中である場合には、通常解凍運転部410は、電磁波照射器200の運転に加えて冷凍機300の運転を停止してもよい。
ステップS4では、通常解凍運転部410は、表面温度センサ510が計測した第1温度が、内部温度センサ520が計測した第2温度より高いか否かを判定する。具体的な処理としては、通常解凍運転部410は、第1温度の値が、(第2温度+α)の値より大きいか否かを判定する。αの値は0であってもよいが、ステップS4及び後述するステップS5の判定の結果、冷凍機300の運転/停止や、冷却能力が頻繁に切り換えられることを避けるためには、αの値は正の値であることが好ましい。また、αの値は、物品Mの第1温度と第2温度との差が大きくなりすぎないよう、適切な値に決定されることが好ましい。
ステップS4において、第1温度の値が(第2温度+α)の値より大きいと判定された場合、処理はステップS10に進む。第1温度の値が(第2温度+α)の値以下と判定された場合、処理はステップS5に進む。
ステップS5では、通常解凍運転部410は、表面温度センサ510が計測した第1温度が、内部温度センサ520が計測した第2温度より小さいか否かを判定する。ここでは、通常解凍運転部410は、第1温度が単純に第2温度より小さいか否かを判定する。
なお、ステップS5では、通常解凍運転部410が、第1温度の値が、(第2温度−β(β>0))の値より小さいか否かを判定するように構成してもよい。第1温度の値と、(第2温度−β(β>0))の値とを比較する場合、ステップS4におけるαの値は0であってもよい。このように構成される場合にも、ステップS4及びステップS5の判断により冷凍機300の運転/停止や、冷却能力が頻繁に切り換えられることを避けることができる。
ステップS5において、第1温度の値が第2温度の値より低いと判定された場合、処理はステップS20に進む。第1温度の値が第2温度の値以上と判定された場合、処理はステップS2に戻る。
一例では、ステップS10及びステップS20では、例えば以下の様な制御が行われる(図3A参照)。
ステップS10では、冷凍機300が停止していた場合、通常解凍運転部410は、冷凍機300が物品Mを外部から冷却する運転(冷却運転)を開始するよう、冷凍機300を制御する。一方、ステップS10に処理が進んだ時に冷凍機300が既に冷却運転を実行している場合、通常解凍運転部410は、冷凍機300が冷却運転を継続するよう制御する(言い換えれば、通常解凍運転部410は、冷凍機300の運転を停止する制御を行わない)。なお、ここでは、冷凍機300の冷却能力は、第1冷却能力で一定とする。ステップS10の実行後、処理はステップS2に戻る。
ステップS20では、冷凍機300が運転していた場合、通常解凍運転部410は、冷凍機300が運転を停止し、物品Mの冷却を停止するよう、冷凍機300を制御する。一方、ステップS20に処理が進んだ時に冷凍機300が既に停止していた場合、通常解凍運転部410は、冷凍機300が運転を停止し続けるよう制御する(言い換えれば、通常解凍運転部410は、冷凍機300の運転を開始する制御を行わない)。ステップS20の実行後、処理はステップS2に戻る。
なお、図3Aのように、ステップS10,ステップS20において冷凍機300の運転/停止だけが制御される場合(冷却能力の制御は行われない場合)には、圧縮機310やケーシング内ファン340のファン用モータはインバータ式でなくてもよい。
他の例では、ステップS10及びステップS20では、例えば以下の様な制御が行われる(図3B参照)。なお、図3Bのフローチャートではステップの図示を省略しているが、ここでは、通常解凍運転中、常に冷凍機300は運転されているものとする。
図3Bのフローチャートでは、ステップS10に処理が進んだ場合、通常解凍運転部410は、冷凍機300が第1冷却能力で運転するように、冷凍機300を制御する。なお、ステップS10に処理が進んだ時に、冷凍機300の冷却能力が既に第1冷却能力である場合、通常解凍運転部410は、冷凍機300の冷却能力を第1冷却能力で維持する(冷却能力を変更しない)。ステップS20に処理が進んだ場合には、通常解凍運転部410は、冷凍機300が第2冷却能力でするように、冷凍機300を制御する。なお、ステップS20に処理が進んだ時に、冷凍機300の冷却能力が既に第2冷却能力である場合、通常解凍運転部410は、冷凍機300の冷却能力を第2冷却能力で維持する(冷却能力を変更しない)。第2冷却能力は、第1冷却能力よりも低い冷却能力である。
なお、ここで説明した通常解凍運転時の解凍装置100の動作は一例にすぎず、通常解凍運転時の解凍装置100の動作は説明した態様に限定されるものではない。
例えば、ステップS2では、第1温度及び第2温度がいずれも目標温度以上である場合にステップS3に進むが、例えば一方が目標温度以上であれば、ステップS3に進むように構成されてもよい。例えば、比較的解凍されにくい物品Mの内部温度(第2温度)が目標温度以上であれば、ステップS3に進むように構成されてもよい。
また、解凍が完了したか否かは、ステップS2のように温度センサ500の計測値に基づいて判定されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、物品Mの重さ等から算出される解凍所要時間が経過したか否かに基づいて解凍の完了が判定されてもよい。
また、例えば、図3A,図3Bのフローチャートにおける各ステップの順序は、矛盾しない範囲で適宜変更されてもよい。例えば、ステップS4とステップS5の順番は逆であってもよい。
(3−2)急速解凍運転時
急速解凍運転について図5のフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下では特に説明をしないが、コントローラ400は、急速解凍運転中、表面温度センサ510から送信される第1温度を示す信号と、内部温度センサ520から送信される第2温度を示す信号を、それぞれ適宜取得している。
操作部450が運転モードの選択として急速解凍モードの実行指示を受け付けると、コントローラ400の急速解凍運転部420は、電磁波照射器200が運転を開始し、凍結している物品Mに対して電磁波を照射するように、電磁波照射器200(特に高周波電源220)を制御する(ステップS101)。そして、ステップS102に進む。
ステップS102では、急速解凍運転部420は、冷凍機300が物品Mを外部から加熱する運転(加熱運転)を開始するよう、冷凍機300を制御する。急速解凍運転部420は、冷凍機300の加熱能力を所定の加熱能力に制御する。限定するものではないが、所定の加熱能力は、例えば、冷凍機300の最大加熱能力である。なお、所定の加熱能力は、物品Mの表面温度(第1温度)と物品Mの内部温度(第2温度)との温度差が過大となりにくいように決定された最大加熱能力以外の加熱能力であってもよい。ステップS102実施後、ステップS103に進む。
ステップS103では、通常解凍運転部410は、表面温度センサ510が計測した第1温度と、内部温度センサ520が計測した第2温度と、がいずれも目標温度以上になっているかを判定する。ステップS103の処理は、通常解凍運転におけるステップS2の処理と同様である。第1温度及び第2温度がいずれも目標温度以上である場合、処理はステップS104へ進む。ステップS103において、第1温度及び第2温度の少なくとも一方が目標温度より低いと判定されている場合、ステップS103の処理が繰り返し実行される。
ステップS104では、急速解凍運転部420は、電磁波照射器200が運転を停止し、物品Mに対する電磁波の照射を停止するように、電磁波照射器200(特に高周波電源220)を制御する(ステップS104)。そして、ステップS105に進む。
ステップS105では、急速解凍運転部420は、冷凍機300が運転を停止し、冷凍機300による物品Mの加熱が停止されるよう、冷凍機300を制御する。そして、解凍装置100は、物品Mの解凍のための動作を完了する。
なお、ここで説明した急速解凍運転時の解凍装置100の動作は一例にすぎず、急速解凍運転時の解凍装置100の動作は説明した態様に限定されるものではない。
例えば、ここでは、急速解凍運転部420は、一定の加熱能力で冷凍機300を運転するが、これに限定されるものではない。例えば、急速解凍運転部420は、物品Mの第1温度と物品Mの第2温度との温度差((第1温度−第2温度)の値)が過大となり、物品Mの第1箇所(表面温度センサ510による第1温度の測定箇所)が過熱している(加熱し過ぎ)と判断される場合に、冷凍機300の加熱能力を弱める、あるいは、冷凍機300を停止するように制御してもよい。
また、例えば、図5のフローチャートにおける各ステップの順序は、矛盾しない範囲で変更されてもよい。例えば、ステップS101とステップS102との順番は、逆であってもよく、ステップS101とステップS102とは同時に実施されてもよい。ステップS104とステップS105とについても同様である。
(4)特徴
(4−1)
第1実施形態に係る解凍装置100は、電磁波照射器200と、熱機器の一例としての冷凍機300と、制御部の一例としてのコントローラ400と、を備える。電磁波照射器200は、凍結している物品Mを内部発熱させるため物品Mに電磁波を照射する。冷凍機300は、物品Mを外部から冷却する。コントローラ400は、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御し、物品Mを外部から冷却しながら、電磁波を物品Mに照射して物品Mを解凍する。コントローラ400は、物品Mの所定箇所の表面温度である第1温度と、前記の所定箇所とは異なる箇所の物品Mの温度である第2温度と、に基づいて、冷凍機300の運転/停止、及び/又は、冷凍機300の冷却能力を制御する。
本解凍装置100では、凍結している物品Mを外部から冷却しながら電磁波で内部発熱させて解凍する場合に、物品Mの2点の温度に基づき冷凍機300の運転が制御される。その結果、第1温度の測定箇所(第1箇所)と第2温度の測定箇所(第2箇所)との温度ムラや、第1温度及び第2温度の測定箇所の加熱し過ぎや冷却し過ぎに基づいて解凍装置を運転することが可能で、解凍時の物品Mの部位による温度ムラの発生を抑制したり、効率よく物品Mを解凍したりすることができる。
(4−2)
第1実施形態に係る解凍装置100では、第2温度は、物品Mの内部温度である。
本解凍装置100では、第1温度は電磁波により比較的加熱されやすく冷凍機300により比較的冷却されやすい物品Mの表面温度であるのに対し、第2温度は、電磁波により比較的加熱されにくく冷凍機300による冷却の影響を受けにくい物品Mの内部の温度である。仮に冷凍機300が常に一定能力で運転されるとすれば、第1温度と第2温度との間には乖離が発生しやすい。
これに対し、本解凍装置100では、第1温度(表面温度)及び第2温度(内部温度)に基づいて冷凍機300の運転が制御されるため、物品Mの部位による(外周部と内部との)解凍時の温度ムラの発生を抑制したり、効率よく物品Mを解凍したりする効果が得られやすい。
(4−3)
第1実施形態に係る解凍装置100では、冷凍機300は、物品Mを外部から冷却可能である。コントローラ400は、第1温度が第2温度より高い場合(第1温度が第2温度より所定値以上高い場合を含む)に、冷凍機300をある冷却能力(第1冷却能力)で運転する。コントローラ400は、第1温度が第2温度より低い場合(第1温度が第2温度より所定値以上低い場合を含む)に、冷凍機300を停止する(冷凍機300の冷却運転を停止する)、又は、冷凍機300を第1冷却能力より低い冷却能力で運転する。
本解凍装置100では、第1温度が第2温度よりも高い場合には、第1温度の測定箇所(第1箇所)が過熱ぎみであることから冷却される。一方で、第1温度が第2温度より低い場合には、第1箇所を冷やし過ぎであるため、冷凍機300が、停止又は能力を下げて運転される。このように構成されることで、本解凍装置100では、解凍時の物品Mの部位による温度ムラの発生を抑制しつつ、効率よく物品Mを解凍することができる。
(4−4)
第1実施形態に係る解凍装置100は、受付部の一例としての操作部450を備える。操作部450は、運転モードの選択を受け付ける。冷凍機300は、物品Mを外部から加熱可能である。コントローラ400は、操作部450が運転モードの選択として急速解凍モードを受け付けると、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御し、物品Mを外部から加熱しながら電磁波を物品Mに照射して物品Mを解凍する。
解凍装置100には、解凍した物品Mの品質よりも解凍スピードが求められる場合がある。本解凍装置100では、このようなニーズに応えることができる。
(4−5)
第1実施形態に係る解凍装置100は、第1温度及び第2温度を測定する温度センサ500(第1温度を測定する表面温度センサ510及び第2温度を測定する内部温度センサ520)を備える。
解凍装置100では、物品Mの第1箇所及び第2箇所の実測温度に基づいて冷凍機300の動作が制御されるため、冷凍機300の動作が適切に制御されやすい。
(4−6)
第1実施形態に係る解凍装置100は、電磁波照射器200が照射する電磁波の周波数は、中波、短波、及び超短波のいずれかの周波数帯に含まれる。
本解凍装置100では、物品Mを高周波誘電加熱により解凍することが可能である。
(5)変形例
以下に上記実施形態の変形例を説明する。なお、各変形例の構成の一部又は全部は、他の変形例の構成の一部又は全部と互いに矛盾しない範囲で複数組み合わされてもよい。
(5−1)変形例1A
上記実施形態では、電磁波照射器200が照射する電磁波の周波数は、中波、短波、及び超短波のいずれかの周波数帯に含まれる。しかし、電磁波照射器200が照射する電磁波の周波数は、物品Mを内部加熱可能な周波数であればよく、中波、短波、及び超短波以外の周波数帯に含まれていてもよい。例えば、電磁波照射器200の照射する電磁波の周波数は、極超短波(300MHz〜3GHz)及びセンチメートル波(3〜30GHz)のいずれかの周波数帯に含まれていてもよい。
なお、電磁波照射器が極超短波(300MHz〜3GHz)又はセンチメートル波(3〜30GHz)の周波数の電磁波を照射する機器である場合、電磁波照射器は、電子レンジのように、マイクロ波発生装置(マグネトロン)で発生した電磁波を物品Mに照射する装置であってもよい。
(5−2)変形例1B
上記実施形態では、第2温度は物品Mの内部温度である。特に、上記実施形態では、第2温度は、物品Mの中心部の温度である。しかし、第2温度は、物品Mの中心部の温度や、物品Mの内部温度に限定されるものではない。
例えば、第2温度は、表面温度センサ510が第1温度を測定する第1箇所とは異なる第2箇所の、物品Mの表面温度であってもよい。つまり、温度センサ500は、内部温度センサ520の代わりに、第2の表面温度センサを有するものであってもよい。
例えば、表面温度センサ510は、物品Mの電磁波により比較的加熱されやすい第1箇所(例えば、物品Mの上面)の表面温度を第1温度として測定するのに対し、第2の表面温度センサは、物品Mの表面であって、第1温度が測定される第1箇所に対し電磁波により比較的加熱されにくい第2箇所(例えば、物品Mの下面や側面)の表面温度を測定する。なお、物品Mの表面の第1箇所及び第2箇所は、例えば、電磁波照射器200の特性や、物品Mの形状等を考慮して適宜決定されればよい。このように構成される場合にも、第1箇所と第2箇所との温度ムラや、第1箇所及び第2箇所の加熱し過ぎや冷却し過ぎに基づいて解凍装置を運転することが可能で、解凍時の物品の部位による温度ムラの発生を抑制しつつ、効率よく物品を解凍することができる。
なお、第2の表面温度センサは、例えば、表面温度センサ510と同様に赤外線センサである。第2温度を計測する物品Mの第2箇所が、表面温度センサ510により温度を計測可能な箇所であれば、表面温度センサ510により第2温度も測定されてもよい。
なお、第2温度を計測する物品Mの表面の第2箇所が、赤外線センサによる温度計測が難しい箇所であれば、第2の表面温度センサは、他の形式、例えば上記実施形態の内部温度センサ520と同様に光ファイバー式温度センサであってもよい。そして、光ファイバープローブの感温部が物品Mの表面の第2箇所と接触するように配置されてもよい。
(5−3)変形例1C
上記実施形態では、受付部は、運転モードを選択するためのスイッチ等を有する操作部450であるが、これに限定されるものではない。例えば、受付部は、作業者が有する携帯端末から送信される運転モードの選択信号を受信する信号受信部であってもよい。
(5−4)変形例1D
上記実施形態のコントローラ400は、独立した機器でなくてもよい。例えば、冷凍機300の冷凍機制御部390が、コントローラ400と同様の制御を行ってもよい。
(5−5)変形例1E
上記実施形態では、解凍装置100は、通常解凍運転に加え、急速解凍運転を実行するが、これに限定されるものではない。解凍装置100は、通常解凍運転だけを実行するものであってもよい。
この場合には、冷凍機300に代えて、物品Mを外部から冷却する冷却運転だけが可能な(物品Mを外部から加熱できない)蒸気圧縮式の冷凍装置が用いられてもよい。また、物品Mを外部から加熱する必要が無い場合、冷凍機300に代えて、ペルチェ素子を用いた冷却機が熱機器として用いられてもよい。
(5−6)変形例1F
上記実施形態では、第1温度及び第2温度は、それぞれ物品Mの1箇所の温度であるが、これに限定されるものではない。
例えば、表面温度センサ510は、物品Mの複数箇所の表面温度を測定し、温度センサ500は、表面温度センサ510が測定した複数の測定値の代表値(例えば平均値、中央値、最大値等)を第1温度として測定するものであってもよい。また、例えば、温度センサ500は、物品Mのそれぞれ異なる箇所の内部温度をそれぞれ検知する複数の内部温度センサ520を有し、内部温度センサ520が測定した複数の測定値の代表値(例えば平均値、中央値、最大値等)を第2温度として測定するものであってもよい。そして、コントローラ400は、このようにして測定された第1温度及び第2温度に基づいて、上記実施形態と同様に、冷凍機300の運転/停止、及び/又は、冷凍機300の冷却能力を制御するものであってもよい。
なお、第1温度及び第2温度のいずれもが、物品Mの複数箇所の温度の代表値である必要はなく、一方だけが物品Mの複数箇所の温度の代表値であってもよい。
(5−7)変形例1G
物品Mの表面の複数箇所の温度を計測する場合、解凍装置は、例えば、更に以下の様に構成されてもよい。
上記実施形態では、解凍装置100は熱機器として冷凍機300を1台有するが、例えば、解凍装置は冷凍機300を複数台有し、各冷凍機300が物品Mの異なる箇所を主に冷却するよう構成されてもよい。あるいは、1台の冷凍機300は、複数組の第1熱交換器330及びケーシング内ファン340を有し、それぞれの第1熱交換器330を流れる冷媒の量は独立して調整可能に構成され、各ケーシング内ファン340は、それぞれが物品Mの異なる箇所を主に冷却するよう構成されてもよい。そして、物品Mの複数箇所の温度に基づき、1の箇所の表面温度が他の箇所の表面温度より高い場合に、他の箇所より温度が高い箇所が冷却される(他の箇所は冷却されない)ように、又は、他の箇所より温度が高い箇所が強く冷却されるように、冷凍機が制御されてもよい。
また、他の例では、表面温度センサ510は、物品Mの複数箇所の表面温度を測定する。表面温度センサ510が測定する複数箇所の物品Mの表面温度は、それぞれが第1温度として用いられる。つまり、ここでは、表面温度センサ510により、複数の第1温度が測定される。また、ここでは、解凍装置は、冷凍機300を複数台有し、冷凍機300のそれぞれが物品Mの異なる箇所(各第1温度の測定箇所)を主に冷却する。そして、コントローラ400は、各第1温度と、第2温度(物品Mの内部温度)とに基づいて、各第1温度の測定箇所を冷却する冷凍機300の運転/停止、及び/又は、冷凍機300の冷却能力を制御してもよい。この場合、特に物品Mの部位による温度ムラの発生が抑制されやすい。
(5−8)変形例1H
上記実施形態の図3Aのフローチャートでは、ステップS10の工程で冷凍機300の冷却運転が開始され、ステップS20の工程で冷凍機300の冷却運転が停止されている。また、上記実施形態の図3Bのフローチャートでは、ステップS10の工程で冷凍機300の冷却能力が第1冷却能力に調整され、ステップS20の工程で冷凍機300の冷却能力が第2冷却能力に調整されている。
しかし、解凍装置100の構成及び制御の態様は、上記の態様に限定されるものではなく、例えば図6の態様であってもよい。
図6の態様では、冷凍機300の冷却能力は、3段階以上変更可能である。ここでは、図3Bの処理と同様、通常解凍運転中、常に冷凍機300は運転されるものとする。そして、図6のフローチャートでは、通常解凍運転部410は、ステップS10において冷凍機300の冷却能力が1段階上昇するよう冷凍機300を制御し、ステップS20において冷凍機300の冷却能力が1段階下降するよう冷凍機300を制御する。なお、ステップS10において冷凍機300の冷却能力が既に最大に設定されている場合、通常解凍運転部410は、冷凍機300の冷却能力を最大で維持する。同様に、ステップS20において冷凍機300の冷却能力が既に最小に設定されている場合、通常解凍運転部410は、冷凍機300の冷却能力を最小で維持する。
また、他の例では、通常解凍運転部410は、ステップS10において、冷凍機300が停止していた場合には最小冷却能力で運転を開始するよう冷凍機300を制御し、冷凍機300が既に運転されている場合には冷却能力が上昇するよう冷凍機300を制御してもよい。また、通常解凍運転部410は、ステップS20において、冷凍機300が最小冷却能力以外の冷却能力で運転されていた場合には冷却能力が下降するよう冷凍機300を制御し、冷凍機300が最小冷却能力で運転されていた場合には運転を停止するよう冷凍機300を制御してもよい。
また、更に他の例では、通常解凍運転部410は、ステップS10において、冷凍機300が停止していた場合には最小冷却能力で運転を開始するよう冷凍機300を制御し、冷凍機300が既に運転されている場合には冷却能力が上昇するよう冷凍機300を制御してもよい。また、通常解凍運転部410は、ステップS20において、冷凍機300が運転を停止するよう冷凍機300を制御してもよい。
(5−9)変形例1I
上記実施形態では、解凍装置100が表面温度センサ510及び内部温度センサ520を有するが、解凍装置100は、このような形態に限定されるものではない。
例えば、解凍装置100は、図7のように、物品Mの第1温度を測定する表面温度センサ510だけを有し、コントローラ400(より具体的には機能部としての第2温度算出部430)が、表面温度センサ510の第1温度の測定値に基づいて物品Mの第2箇所の温度(第2温度)を算出してもよい。
例えば、第2温度算出部430は、予め機械学習による学習済みの学習器を有し、第1温度の測定値の他、各種データ(例えば、電磁波照射器200の加熱能力、電磁波照射器200の運転時間、冷凍機300の冷却/加熱能力、冷凍機300の運転時間、物品Mの種類、重さ、形状など)が入力として与えられると、推定される第2温度を算出する(第2温度を出力する)。なお、ここで挙げた入力データの種類は例示であって、これらの一部が入力データに含まれていなくてもよく、これら以外のデータが入力データに含まれていてもよい。なお、学習器は、例えば、教師ありのニューラルネットワーク(ディープラーニングを含む)を学習アルゴリズムとして用いるが、これに限定されるものではなく、他の学習アルゴリズムを用いてもよい。
また、第2温度算出部430は、機械学習を利用するのでなく、予め準備された(例えば人が作成した)、第1温度やその他の値(例えば、電磁波照射器200の加熱能力、電磁波照射器200の運転時間、冷凍機300の冷却/加熱能力、冷凍機300の運転時間、物品Mの重さ等)を変数とする計算式等を用いて、第1温度の測定値に基づいて第2温度を算出してもよい。計算式は、理論的に導出されるものであってもよいし、シミュレーションや実験の結果に基づいて導出されるものであってもよい。なお、ここで挙げた変数の種類は例示であって、これらの一部が変数に含まれていなくてもよく、これら以外の変数が変数に含まれていてもよい。また、計算式は、物品Mの種類や形状等の条件に応じて複数準備されていてもよい。
ここでは、表面温度センサ510の第1温度の測定値に基づいて第2温度が算出されるので、第2温度を測定するためのセンサを省略可能で、解凍装置100のコストを抑制することができる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る解凍装置100について説明する。
第2実施形態に係る解凍装置100と第1実施形態に係る解凍装置100との主な相違点は、通常解凍運転時の解凍装置100の動作である。その他の点に関しては、第2実施形態に係る解凍装置100と、第1実施形態に係る解凍装置100とは同様である。そこで、ここでは、第2実施形態の解凍装置100のコントローラ400の、通常解凍運転部1410(図8参照)による電磁波照射器200及び冷凍機300の動作の制御について主に説明し、その他の説明については説明の簡素化のため大部分を省略する。なお、第2実施形態の説明では、通常解凍運転部1410以外の解凍装置100の構成について、第1実施形態と同じ符号を付す。
第2実施形態では、操作部450が運転モードの選択として通常解凍モードの選択(通常解凍モードの実行指示)を受け付けると、通常解凍運転部1410が、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御し、通常解凍運転を解凍装置100に実行させる。
第2実施形態における解凍装置100の通常解凍運転は、物品Mの温度ムラを抑制するため、冷凍機300により物品Mを外部から冷却又は加熱しながら、電磁波照射器200により電磁波を物品Mに照射して内部発熱により物品Mを解凍する運転モードである。つまり、第2実施形態の解凍装置100は、通常解凍運転中に、冷凍機300により物品Mが外部から加熱される場合がある点で第1実施形態の解凍装置100と異なる。通常解凍運転中、通常解凍運転部1410は、表面温度センサ510が測定する第1温度と、内部温度センサ520が測定する第2温度とに基づいて、冷凍機300の運転/停止(加熱運転/冷却運転/停止)、及び/又は、冷凍機300の冷却能力及び加熱能力を制御する。
第2実施形態の解凍装置100における通常解凍運転について図9のフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下では特に説明しないが、コントローラ400は、通常解凍運転中、表面温度センサ510から送信される第1温度を示す信号と、内部温度センサ520から送信される第2温度を示す信号とを、それぞれ適宜取得している。
操作部450が運転モードの選択として通常解凍モードの実行指示を受け付けると、通常解凍運転部1410は、電磁波照射器200が運転を開始し、凍結している物品Mに対して電磁波を照射するように、電磁波照射器200(特に高周波電源220)を制御する(ステップS1)。そして、ステップS2に進む。
ステップS2では、通常解凍運転部1410は、表面温度センサ510が計測した第1温度と、内部温度センサ520が計測した第2温度と、がいずれも目標温度以上になっているかを判定する。第1温度及び第2温度がいずれも目標温度以上である場合にはステップS3へ進み、第1温度及び第2温度の少なくとも一方が目標温度より低い場合にはステップS4に進む。
ステップS2及びS3で行われる処理は、第1実施形態において説明した図3A及び図3BにおけるステップS2及びS3で行われる処理とそれぞれ同様であるのでここでは説明を省略する。
ステップS4では、通常解凍運転部1410は、表面温度センサ510が計測した第1温度が、内部温度センサ520が計測した第2温度より高いか否かを判定する。具体的な処理としては、通常解凍運転部1410は、第1温度の値が、(第2温度+α1)の値より大きいか否かを判定する。α1の値は0であってもよいが、ステップS4及び後述するステップS205の判定の結果、冷凍機300の冷却運転/加熱運転/停止が頻繁に切り換えられることを避けるためには、α1の値は正の値であることが好ましい。また、α1の値は、物品Mの第1温度と第2温度との差が大きくなりすぎないよう、適切な値に決定されることが好ましい。
ステップS4において、第1温度の値が(第2温度+α1)の値より大きいと判定された場合、処理はステップS10に進む。第1温度の値が(第2温度+α1)の値以下と判定された場合、処理はステップS205に進む。
ステップS205では、通常解凍運転部1410は、表面温度センサ510が計測した第1温度が、内部温度センサ520が計測した第2温度より小さいか否かを判定する。ここでは、通常解凍運転部1410は、第1温度が(第2温度−β1(β1≧0))の値より小さいか否かを判定するように構成される。なお、β1の値は0であってもよいが、冷凍機300の冷却運転/加熱運転/停止が頻繁に切り換えられることを避けるためには、β1は正の値であることが好ましい。また、β1の値は、物品Mの第1温度と第2温度との差が大きくなりすぎないよう、適切な値に決定されることが好ましい。
ステップS205において、第1温度の値が(第2温度−β1)の値より低いと判定された場合、処理はステップS220に進む。第1温度の値が(第2温度−β1)の値以上と判定された場合、処理はステップS206に進む。
一例では、ステップS10、ステップS220及びステップS206では、例えば以下の様な制御が行われる。
ステップS10において、冷凍機300が停止していた場合、又は、冷凍機300が加熱運転を行っていた場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が物品Mを外部から冷却する運転(冷却運転)を開始するよう冷凍機300を制御する。一方、ステップS10に処理が進んだ時に冷凍機300が既に冷却運転を実行している場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が冷却運転を継続するよう制御する(言い換えれば、通常解凍運転部1410は、冷凍機300の冷却運転を停止する制御を行わない)。なお、ここでは、冷凍機300の冷却能力は第1冷却能力で一定とする。ステップS10の実行後、処理はステップS2に戻る。
ステップS220において、冷凍機300が停止していた場合、又は、冷凍機300が冷却運転を行っていた場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が物品Mを外部から加熱する運転(加熱運転)を開始するよう冷凍機300を制御する。一方、ステップS220に処理が進んだ時に冷凍機300が既に加熱運転を実行している場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が加熱運転を継続するよう制御する(言い換えれば、通常解凍運転部1410は、冷凍機300の加熱運転を停止する制御を行わない)。なお、ここでは、冷凍機300の加熱能力は第1加熱能力で一定とする。ステップS220の実行後、処理はステップS2に戻る。
ステップS206では、冷凍機300が冷却運転又は加熱運転を行っていた場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が運転を停止するよう冷凍機300を制御する。一方、ステップS206に処理が進んだ時に冷凍機300が既に停止している場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が運転を停止し続けるよう制御する(言い換えれば、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が冷却運転/加熱運転を開始する制御を行わない)。ステップS206の実行後、処理はステップS2に戻る。
なお、図9のように、冷凍機300の冷却運転/加熱運転の運転及び停止だけが制御される場合(冷却能力/加熱能力の制御は行われない場合)には、圧縮機310やケーシング内ファン340のファン用モータはインバータ式でなくてもよい。
また、他の例では、通常解凍運転は図10のフローチャートのように実行されてもよい。なお、以下では特に説明しないが、図10のフローチャートにおいても、コントローラ400は、通常解凍運転中、表面温度センサ510から送信される第1温度を示す信号と、内部温度センサ520から送信される第2温度を示す信号とを、それぞれ適宜取得している。
図10のフローチャートにおけるステップS1〜ステップS3は、図9のフローチャートと同様であるため、説明は省略する。
ステップS4では、通常解凍運転部1410は、表面温度センサ510が計測した第1温度が、内部温度センサ520が計測した第2温度より高いか否かを判定する。具体的な処理としては、通常解凍運転部1410は、第1温度の値が、(第2温度+α1)の値より大きいか否かを判定する。α1は正の値である。
ステップS4において、第1温度の値が(第2温度+α1)の値より大きいと判定された場合、処理はステップS10に進む。第1温度の値が(第2温度+α1)の値以下と判定された場合、処理はステップS305に進む。
ステップS305では、通常解凍運転部1410は、表面温度センサ510が計測した第1温度の値が、(第2温度+α2)の値より大きいか否かを判定する。α2は正の値であって、α1よりは小さな値である。なお、ステップS4及びステップS305の判定の結果、後述するステップS10及びステップS320において頻繁に冷凍機300の冷凍能力が切り換えられることが無いよう、α1とα2との値は適切に選定されることが好ましい。
ステップS305において、第1温度の値が(第2温度+α2)の値より大きいと判定された場合、処理はステップS320に進む。第1温度の値が(第2温度+α2)の値以下と判定された場合、処理はステップS306に進む。
ステップS306では、通常解凍運転部1410は、表面温度センサ510が計測した第1温度が、内部温度センサ520が計測した第2温度より小さいか否かを判定する。ここでは、通常解凍運転部1410は、第1温度が(第2温度−β1(β1≧0))の値より小さいか否かを判定するように構成される。なお、β1の値は0であってもよいが、冷凍機300の冷却運転/加熱運転/停止が頻繁に切り換えられることを避けるためには、β1は正の値であることが好ましい。また、β1の値は、物品Mの第1温度と第2温度との差が大きくなりすぎないよう、適切な値に決定されることが好ましい。
ステップS306において、第1温度の値が(第2温度−β1)の値より低いと判定された場合、処理はステップS330に進む。第1温度の値が(第2温度−β1)の値以上と判定された場合、処理はステップS307に進む。
一例では、ステップS10、ステップS320、ステップS330及びステップS307では、例えば以下の様な制御が行われる。
ステップS10において、冷凍機300が停止していた場合、冷凍機300が加熱運転を行っていた場合、又は、冷凍機300が第2冷凍能力(第1冷却能力よりも低い冷却能力)で運転をしていた場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が第1冷却能力で冷却運転を行うように冷凍機300を制御する。なお、ステップS10に処理が進んだ時に、冷凍機300が既に第1冷却能力で冷却運転を行っている場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が冷却能力を第1冷却能力で維持したまま冷却運転を継続するよう制御する(言い換えれば、通常解凍運転部1410は、冷凍機300の冷却能力の変更や、冷凍機300の運転の加熱運転への切り換えや、冷凍機300の運転の停止を行わない)。ステップS10の実行後、処理はステップS2に戻る。
ステップS320では、冷凍機300が停止していた場合、冷凍機300が加熱運転を行っていた場合、又は、冷凍機300が第1冷凍能力で運転をしていた場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が第2冷却能力で冷却運転を行うように冷凍機300を制御する。なお、ステップS320に処理が進んだ時に、冷凍機300が既に第2冷却能力で冷却運転を行っている場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が冷却能力を第2冷却能力で維持したまま冷却運転を継続するよう制御する(言い換えれば、通常解凍運転部1410は、冷凍機300の冷却能力の変更や、冷凍機300の運転の加熱運転への切り換えや、冷凍機300の運転の停止を行わない)。ステップS320の実行後、処理はステップS2に戻る。
ステップS330では、冷凍機300が停止していた場合、又は、冷凍機300が冷却運転を行っていた場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が第1加熱能力で加熱運転を行うように冷凍機300を制御する。なお、ステップS320に処理が進んだ時に、冷凍機300が既に第1加熱能力で加熱運転を行っている場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が加熱能力を第1加熱能力で維持したまま加熱運転を継続するよう制御する(言い換えれば、通常解凍運転部1410は、冷凍機300の加熱能力の変更や、冷凍機300の運転の冷却運転への切り換えや、冷凍機300の運転の停止を行わない)。ステップS330の実行後、処理はステップS2に戻る。
ステップS307では、冷凍機300が冷却運転又は加熱運転を行っていた場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が運転を停止するよう冷凍機300を制御する。一方、ステップS307に処理が進んだ時に冷凍機300が既に停止している場合、通常解凍運転部1410は、冷凍機300が運転を停止し続けるよう制御する(言い換えれば、通常解凍運転部1410は、冷凍機300の冷却運転/加熱運転を開始する制御を行わない)。ステップS307の実行後、処理はステップS2に戻る。
なお、ここで説明した通常解凍運転時の第2実施形態の解凍装置100の動作は一例にすぎず、通常解凍運転時の解凍装置100の動作は説明した態様に限定されるものではない。
例えば、ステップS2では、第1温度及び第2温度がいずれも目標温度以上である場合にステップS3に進むが、例えば一方が目標温度以上であれば、ステップS3に進むように構成されてもよいのは第1実施形態と同様である。
また、解凍が完了したか否かは、ステップS2のように温度センサ500の計測値に基づいて判定されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、物品Mの重さ等から算出される解凍所要時間が経過したか否かに基づいて解凍の完了が判定されてもよいのも第1実施形態と同様である。
また、例えば、図9,図10のフローチャートにおける各ステップの順序は、矛盾しない範囲で適宜変更されてもよいのも第1実施形態と同様である。
また、例えば、図10のフローチャートでは加熱能力には第1加熱能力だけが用いられるが、これに限定されるものではない。例えば、通常解凍運転部1410は、図10のフローチャートにおける冷凍機300の冷凍能力の制御と同様に、第1温度が第2温度に比べて低くなるほど(第2温度から第1温度を差し引いた温度差の値が大きくなるほど)、加熱能力が調整可能な範囲で大きくなるよう冷凍機300の加熱能力を制御してもよい。
<特徴>
第2実施形態に係る解凍装置100は、電磁波照射器200と、熱機器の一例としての冷凍機300と、制御部の一例としてのコントローラ400と、を備える。電磁波照射器200は、凍結している物品Mを内部発熱させるため物品Mに電磁波を照射する。冷凍機300は、物品Mを外部から冷却及び加熱する。コントローラ400は、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御し、物品Mを外部から冷却又は加熱しながら、電磁波を物品Mに照射して物品Mを解凍する。コントローラ400は、物品Mの所定箇所(第1箇所)の表面温度である第1温度と、前記の所定箇所とは異なる箇所(第2箇所)の物品Mの温度である第2温度と、に基づいて、冷凍機300の運転/停止(冷却運転/加熱運転/停止)、及び/又は、冷凍機300の冷却能力及び/又は加熱能力を制御する。
本解凍装置100では、凍結している物品Mを電磁波で内部発熱させて解凍する場合に、物品Mの2点の温度に基づき冷凍機300の運転が制御される。その結果、第1箇所と第2箇所との温度ムラや、第1箇所及び第2箇所の加熱し過ぎや冷却し過ぎに基づいて解凍装置100を運転することが可能で、解凍時の物品Mの部位による温度ムラの発生を抑制したり、効率よく物品Mを解凍したりすることができる。
また、第2実施形態に係る解凍装置100も、第1実施形態の解凍装置100の特徴として(4−2),(4−4),(4−5),(4−6)に記載した特徴と同様の特徴を有する。
<変形例>
第2実施形態の解凍装置100にも、第1実施形態の解凍装置100の変形例の特徴を矛盾の無い範囲で適用してもよい。なお、第1実施形態の解凍装置100の各変形例の構成の一部又は全部は、他の変形例の構成の一部又は全部と互いに矛盾しない範囲で複数組み合わされてもよい。
第1実施形態の解凍装置100の変形例の他、例えば、以下のような変形例も第2実施形態の解凍装置に適用できる。
(1)変形例2A
例えば、解凍装置100は、以下のように構成されてもよい。
表面温度センサ510は、物品Mの複数箇所の表面温度を測定する。表面温度センサ510が測定する物品Mの複数箇所の表面温度は、それぞれが第1温度として用いられる。つまり、ここでは、複数の第1温度が表面温度センサ510により測定される。また、ここでは、解凍装置100は、それぞれが物品Mの異なる箇所(各第1温度の測定箇所)を主に冷却又は加熱する冷凍機300を複数台有する。そして、コントローラ400は、各第1温度と第2温度(物品Mの内部温度)とに基づいて、冷凍機300の運転/停止(冷却運転/加熱運転/停止)、及び/又は、冷凍機300の冷却能力及び加熱能力を制御する。つまり、ここでは、物品Mのある箇所は外部から加熱され、物品Mの他の箇所は外部から冷却されるという状態が発生し得る。この構成では、物品Mの温度を細かく制御できるので、特に物品Mの部位による温度ムラの発生が抑制されやすい。
(2)変形例2B
例えば、解凍装置100は、以下のように構成されてもよい。
ここでは、第1実施形態の変形例1Bと同様に、第2温度は、表面温度センサ510が第1温度を測定する第1箇所とは異なる第2箇所の、物品Mの表面温度である。また、ここでは、冷凍機は、加熱運転専用のヒートポンプである。そして、変形例2Bの解凍装置100では、コントローラは、電磁波照射器及び冷凍機の動作を制御し、物品を外部から加熱しながら、電磁波を物品に照射して物品を解凍する。コントローラは、第1温度と第2温度とに基づいて、冷凍機の加熱運転の運転/停止、及び/又は、熱機器の加熱能力を制御する。このように構成される場合、第1温度の測定箇所と第2温度の測定箇所とで外部からの加熱の影響に差が出やすい場合であっても、物品Mの部位による温度ムラの発生が抑制されやすい。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る解凍装置100について説明する。
第3実施形態に係る解凍装置100と第1実施形態に係る解凍装置100との主な相違点は、解凍装置100が通常解凍モード及び急速解凍モードに代えて、組合せ解凍モードだけを運転モードとして有する点にある。コントローラ400は、通常解凍運転部410及び急速解凍運転部420に代えて、解凍装置100を組合せ解凍モードで運転させるための機能部として組合せ解凍運転部2410を有する(図11参照)。ただし、第3実施形態に係る解凍装置100は、組合せ解凍モードに加え、第1実施形態や第2実施形態で説明した通常解凍モード及び/又は急速解凍モードを運転モードとして有していてもよい(つまり、コントローラ400は、組合せ解凍運転部2410に加え、通常解凍運転部410,1410及び急速解凍運転部420を有していてもよい)。
その他の点に関しては、第3実施形態に係る解凍装置100と、第1実施形態に係る解凍装置100とは同様である。そこで、ここでは、第3実施形態の解凍装置100のコントローラ400の組合せ解凍運転部2410による電磁波照射器200及び冷凍機300の動作の制御について主に説明し、その他の説明については説明の簡素化のため大部分を省略する。なお、第3実施形態の説明では、組合せ解凍運転部2410以外の解凍装置100の構成について、第1実施形態と同じ符号を付す。
まず、組合せ解凍モードについて説明する。組合せ解凍モードは、急速解凍モードと通常解凍モードとを組み合せたような形態の運転モードである。具体的には、組合せ解凍運転部2410は、解凍装置100が凍結している物品M(例えば−20℃の物品M)の解凍を開始する時に、解凍装置100に第1実施形態で説明した急速解凍運転(急速解凍モードでの運転)を開始させる。言い換えれば、組合せ解凍運転部2410は、解凍装置100が凍結している物品Mの解凍を開始する時に、解凍装置100が物品Mを冷凍機300で外部から加熱しながら電磁波を物品Mに照射するように、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御する。なお、急速解凍運転は、第1運転の一例である。その後、組合せ解凍運転部2410は、物品Mの温度が上昇し、物品Mの第1温度及び第2温度の少なくとも一方が所定温度を超えた時に、解凍装置100に外部冷却運転を開始させる。外部冷却運転は、物品Mを冷凍機300で外部から冷却しながら電磁波を物品Mに照射して物品Mを解凍する運転であり、第2運転の一例である。その後、組合せ解凍運転部2410は、解凍装置100に第1実施形態や第2実施形態で説明した通常解凍運転を実行させる。
図12のフローチャートを参照しながら、組合せ解凍運転部2410による電磁波照射器200及び冷凍機300の動作の制御について説明する。なお、ここでは、ステップS401の実施時点において、物品Mの第1温度及び第2温度は後述する切換温度より低いものとする。また、以下では特に説明をしないが、コントローラ400は、解凍装置100の運転中、表面温度センサ510から送信される第1温度を示す信号と、内部温度センサ520から送信される第2温度を示す信号を、それぞれ適宜取得している。
操作部450が組合せ解凍モードの実行指示を受け付けると、コントローラ400の組合せ解凍運転部2410は、電磁波照射器200が運転を開始し、凍結している物品Mに対して電磁波を照射するように、電磁波照射器200(特に高周波電源220)を制御する(ステップS401)。そして、ステップS402に進む。
ステップS402では、組合せ解凍運転部2410は、冷凍機300が物品Mを外部から加熱する運転(加熱運転)を開始するよう、冷凍機300を制御する。ステップS402が実行されることで、解凍装置100は急速解凍運転(第1運転)を開始することとなる。組合せ解凍運転部2410は、冷凍機300の加熱能力を所定の加熱能力に制御する。限定するものではないが、所定の加熱能力は、例えば、冷凍機300の最大加熱能力である。なお、所定の加熱能力は、第1温度と第2温度との温度差が過大となりにくいように決定された最大加熱能力以外の加熱能力であってもよい。ステップS402実施後、ステップS403に進む。
ステップS403では、組合せ解凍運転部2410は、物品Mの第1温度及び第2温度の少なくとも一方が切換温度を超えたか否かを判定する。
ここで、切換温度は、好ましくは物品Mの最大氷結晶生成帯より低い温度(つまり最大氷結晶生成帯の下限値より低い温度)である。また、切換温度は、好ましくは物品Mの最大氷結晶生成帯の下限値に比較的近い温度(好ましくは、例えば最大氷結晶生成帯の下限値から3℃以内)である。なお、最大氷結晶生成帯とは、物品M中の水分(氷)が溶けだして氷の結晶が大きくなる温度帯であり、この温度帯では物品Mの組織破壊が進行しやすい。食品の最大氷結晶生成帯は、概ね−5℃〜−1℃である。そこで、切換温度には、限定するものではないが、例えば−7℃というような温度が選択される。
ステップS403は、物品Mの第1温度及び第2温度の少なくとも一方が切換温度を超えたと判定されるまで繰り返し実行される。物品Mの第1温度及び第2温度の少なくとも一方が切換温度を超えたと判定されると、処理はステップS404に進む。
ステップS404では、組合せ解凍運転部2410は、冷凍機300が、加熱運転を中止し、物品Mを外部から冷却する運転(冷却運転)を開始するよう、冷凍機300の動作を制御する。ステップS404が実行されることで、解凍装置100は外部冷却運転(第2運転)を開始することとなる。つまり、組合せ解凍運転部2410は、物品Mの第1温度及び第2温度の少なくとも一方が切換温度を超えると、解凍装置100の運転を、急速解凍運転から外部冷却運転に切り換える。組合せ解凍運転部2410は、冷凍機300の冷却能力を所定の冷却能力(例えば第1冷却能力)に制御する。限定するものではないが、第1冷却能力は、例えば、冷凍機300の最大冷却能力である。このように、物品Mの温度が最大氷結晶生成帯に達する前に、解凍装置100の運転が急速解凍運転から外部冷却運転に変更されことで、局所的な(特に、本実施形態では電磁波及び冷凍機300により加熱されやすい第1箇所周辺における)氷の結晶の成長を抑えると共に、物品M全体の温度の均一化を図ることができ、解凍による物品Mの劣化が特に抑制されやすい。
ステップS404の実行後、組合せ解凍運転部2410は、物品Mの解凍が完了したと判定されるまで、解凍装置100に第1実施形態や第2実施形態で説明したような通常解凍運転を実行させる(ステップS405)。
<特徴>
第3実施形態に係る解凍装置100は、第1実施形態の解凍装置100の特徴として(4−1),(4−2),(4−3),(4−5),(4−6)に記載した特徴と同様の特徴を備える。また、第3実施形態に係る解凍装置100は、以下の特徴を更に有する。
(1)
第3実施形態に係る解凍装置100では、冷凍機300は、物品Mを外部から冷却及び加熱可能である。組合せ解凍運転部2410は、解凍装置100が少なくとも急速解凍運転(第1運転)と外部冷却運転(第2運転)とを実行するように、電磁波照射器200及び冷凍機300の動作を制御する。組合せ解凍運転部2410は、第1温度及び第2温度がいずれも切換温度より低い状態で解凍装置100に急速解凍運転を開始させた後、第1温度及び第2温度の少なくとも一方が切換温度を超えた時に少なくとも一時的に解凍装置100に第2運転を実行させる。
ここでは、物品Mの温度が比較的低い時(切換温度より低い時)には外部加熱と電磁波とにより迅速に解凍が行われる。一方で、物品Mの温度が比較的上昇し、物品Mの第1温度と第2温度との乖離が解凍後の物品Mの品質に与える影響が大きくなると、外部冷却をしながら電磁波で加熱が行われる。そのため、解凍の短時間化と解凍による物品の劣化抑制との両立を図ることができる。
(2)
第3実施形態に係る解凍装置100では、前記の切換温度は、物品Mの最大氷結晶生成帯より低い温度である。
ここでは、局所的な(特に、本実施形態では電磁波や外部加熱により加熱されやすい第1箇所周辺における)氷の結晶の成長を抑えると共に、物品M全体の温度の均一化を図ることができ、解凍による物品Mの劣化が特に抑制されやすい。
<変形例>
第3実施形態の解凍装置100にも、第1実施形態の解凍装置100及び第2実施形態の解凍装置100の特徴、及び、第1実施形態の解凍装置100及び第2実施形態の解凍装置100の変形例の特徴を矛盾の無い範囲で適用してもよい。なお、第1実施形態の解凍装置100及び第2実施形態の解凍装置100の各変形例の構成の一部又は全部は、他の変形例の構成の一部又は全部と互いに矛盾しない範囲で複数組み合わされてもよい。