本発明による部分放電計測システムと部分放電計測方法では、運転中の高電圧機器(例えば、モータや発電機などの回転機、変圧器、及びケーブルなどの電気機器)に流れる電流を計測することによって、絶縁劣化の状態を表す指標となる部分放電に起因する電流信号を計測し、この電流信号を電流波形の特徴量(例えば、周波数と振幅変化)によってグループに分ける。部分放電の発生位置と発生要因は、このグループごとに特定できる。複数の位置と要因で発生した部分放電についても、このグループ分けによって、それぞれの発生位置と発生要因を特定することができる。
以下、本発明の実施例による部分放電計測システムと部分放電計測方法を説明する。以下の実施例では、高電圧機器としてモータを診断する例を示す。
図1は、本発明の実施例1による部分放電計測システムの構成を示す概略図である。本実施例による部分放電計測システムは、電流波形計測部101、特徴量抽出部102、減衰特性取得部103、判定部104、及び表示部105を備える。電流波形計測部101は、高電圧機器を流れる電流(部分放電に起因する電流を含む)を計測して部分放電の電流波形(電流信号)を取得する。特徴量抽出部102は、電流波形計測部101が取得した電流波形の周波数と振幅の時間変化(振幅変化)とを電流波形の特徴量として抽出して取得する。減衰特性取得部103は、特徴量抽出部102が取得した振幅変化から電流波形の減衰特性(例えば、減衰率)を計算して求める。判定部104は、特徴量抽出部102が取得した電流波形の周波数と減衰特性取得部103が求めた電流波形の減衰特性とから、電流波形の分布データを作成する。表示部105は、判定部104に接続され、判定部104から出力された情報を表示するモニタである。部分放電計測システムの作業者は、表示部105に表示された情報を参照して、インターフェースを介して、部分放電計測システムを操作したり、部分放電計測システムに入力作業を行ったりすることができる。
図2は、電流波形計測部101の構成図である。電流波形計測部101は、高電圧機器に設置されて高電圧機器を流れる電流を検出する電流センサ201と、電流センサ201から電流波形を取得する計測器202を備える。
電流センサ201は、電源203からモータ204に電力を供給する給電線205a、205b、205cに設置され、給電線205a〜205cに流れる電流の信号を検出する。電流センサ201は、図2では1つの給電線205cに設置されているが、給電線205a〜205cのうちの1つまたは複数に設置できる。電流センサ201には、例えば、貫通型電流センサ、クランプ型電流センサ、分割型電流センサ、及び磁気光学効果を用いた光ファイバセンサを使用することができ、使用するセンサの種類は限定しない。
計測器202は、電流センサ201が検出した電流信号の時系列データを電流波形として取得する。計測器202は、電気回路(電子回路を含む)を用いて構成してもよく、コンピュータを用いて構成してもよい。
図3は、電流波形計測部101の計測器202が取得する電流波形301の例を示す図である。計測器202は、図3に示すような電流波形301をデジタルデータとして取得し、取得した電流波形301のデータを特徴量抽出部102に出力する。
計測器202が電流波形301のデータを特徴量抽出部102に出力する方法は、任意である。例えば、有線通信で送信しても無線通信で送信してもよい。また、電話回線やインターネット回線を利用することで、計測器202は、モータ204から遠く離れた遠隔地にある特徴量抽出部102にデータを出力することができ、特徴量抽出部102は、遠隔地でデータを解析することができる。
さらに、電流波形計測部101は、部分放電に起因する電圧信号の波形(電圧波形)を取得することもできる。電圧波形は、例えば、電圧センサを給電線205a〜205cに設置する方法、電流波形計測部101が取得した電流波形301から推定する方法、または電流センサ201で電圧も検出する(電流に応じた電圧を検出する)方法などにより、取得することができる。
次に、特徴量抽出部102について説明する。特徴量抽出部102は、計測器202が出力した電流波形301の周波数と振幅変化を、電流波形301の特徴量として取得する。特徴量抽出部102は、電気回路(電子回路を含む)を用いて構成してもよく、コンピュータを用いて構成してもよい。
図4は、図3に示した電流波形301に、各周期におけるピーク401a、401b、401c、401dを示した図である。ピーク401a〜401dの電流値は、電流波形301の振幅の値を与える。
特徴量抽出部102が電流波形301の周波数を求める方法は、任意であり、例えば、FFTによる周波数成分分析を利用してもよく、電流波形301のピーク401a〜401dの時間間隔から計算してもよい。
特徴量抽出部102は、例えば次のようにして、電流波形301の振幅変化(振幅の時間変化量)を求めることができる。モータの部分放電のような瞬間的なパルス信号に起因する電流波形301は、図4に示すように、徐々に減衰しながら伝播する。特徴量抽出部102は、電流波形301のピーク401a〜401dの電流値を取得して、振幅の時間変化量を求める。
次に、減衰特性取得部103について説明する。減衰特性取得部103は、特徴量抽出部102が取得した振幅変化から電流波形の減衰特性(例えば、減衰率)を計算して取得する。減衰特性取得部103は、電気回路(電子回路を含む)を用いて構成してもよく、コンピュータを用いて構成してもよい。
以下では、一例として、電流の振幅の対数減衰率を電流波形の減衰特性とする。なお、振幅の減少量を電流波形の減衰特性としてもよい。
図5は、減衰特性取得部103が取得した、電流波形の減衰特性の例を示す図である。図5には、3つの異なる電流信号(電流波形)の減衰特性を表す直線501、502、503(対数減衰率を表す直線501、502、503)を示した。例えば、図4に示したピーク401a、401b、401c、401dの電流値(振幅)の対数を取って時間順に並べると、図5に示した点501a、501b、501c、501dが得られ、これらの点501a〜501dを通る直線501の傾きが、電流の振幅の対数減衰率、すなわち電流波形301の減衰特性である。
次に、判定部104について説明する。判定部104は、特徴量抽出部102が取得した電流波形の周波数と、減衰特性取得部103が取得した電流波形の減衰特性(減衰率)とから、周波数と減衰特性(減衰率)による電流波形(電流信号)の分布を示す分布データを作成する。判定部104は、作成した電流信号の分布データを表示部105に出力することができる。また、判定部104は、この分布データから、周波数と減衰特性(減衰率)による電流波形(電流信号)の分布図を作成し、この電流信号の分布図を表示部105に出力することができる。判定部104は、電気回路(電子回路を含む)を用いて構成してもよく、コンピュータを用いて構成してもよい。
図6は、判定部104が作成した分布データによる、周波数fと減衰率ζによる電流信号の分布図の例を示す図である。図6には、複数の異なる電流信号(電流波形)が、周波数fと減衰率ζにより、3つのグループ601、602、603に分けられた分布図を示している。図6の分布図において、グループ601は、周波数fと減衰率ζがともに小さい電流信号のグループであり、グループ602は、周波数fと減衰率ζがともに大きい電流信号のグループであり、グループ603は、周波数fが大きく減衰率ζが小さい電流信号のグループである。
グループ601の電流信号とグループ602の電流信号とグループ603の電流信号は、部分放電の電流信号であり、部分放電の発生位置と発生要因がグループ内では同じであるが、他のグループとは異なる。すなわち、電流信号は、部分放電の発生位置と発生要因に応じて、異なるグループに分けられる。部分放電の発生位置と発生要因が同じであれば、電流信号は、分布図の中で近い位置に分布し、同じグループに入れられる。
判定部104は、分布データ(分布図)と周波数fの閾値範囲Rfと減衰率ζの閾値範囲Rζを用いて、複数の電流信号をグループに分けることができる。閾値範囲Rfと閾値範囲Rζは、任意の方法で予め定めることができる。判定部104は、複数の電流信号のうち、互いに周波数fが閾値範囲Rf以内にあり、かつ減衰率ζが閾値範囲Rζ以内にある電流信号を、1つのグループに入れる。例えば、図6において、グループ601に属する電流信号は、互いの周波数fの差が閾値範囲Rf以下であり、かつ互いの減衰率ζの差が閾値範囲Rζ以下であるが、グループ602とグループ603に属する電流信号に対しては、周波数fの差が閾値範囲Rfより大きいことと減衰率ζの差が閾値範囲Rζより大きいことのうち少なくとも一方の関係を満たす。
複数の電流信号をグループに分けるのは、作業者が、表示部105に出力された分布図を参照しながら実施することもできる。作業者は、分布図に表示された電流信号の分布を基に、どの電流信号がグループを形成しているかを判断し、インターフェースを介して電流信号をグループに分ける。
判定部104は、電流信号のグループ(どの電流信号がどのグループに属するのか)を表示部105に出力することができる。
判定部104は、電流信号のグループごとに、既存の技術を用いて、部分放電の発生位置と発生要因を特定することができる。部分放電の発生位置と発生要因の特定は、例えば、次のようにすることができる。
判定部104は、規格IEC60034−27−2の部分放電パターン(部分放電の、電圧波形の位相に対する放電電荷量の分布図)の形状を表す点のデータを保持している、またはこのデータを保持した記憶装置に接続されているとする。この規格には、部分放電が発生するモータの部位(部分放電の発生位置)と発生要因(部分放電の種類)ごとに、部分放電パターンが示されている。
判定部104は、電流信号のグループごとに、電流信号から放電電荷量を求めて、電流波形計測部101が計測した電流信号についての部分放電パターンのデータを求め、計測により得られたこの部分放電パターンのデータと規格IEC60034−27−2の部分放電パターンのデータとを比較する。判定部104は、電流信号のグループごとに、規格IEC60034−27−2の部分放電パターンの中から、計測による部分放電パターンに最も特徴が近いものを選択し、選択した規格IEC60034−27−2の部分放電パターンについての部分放電の発生位置と発生要因を、計測した部分放電の発生位置と発生要因とする。判定部104は、このようにして、電流信号のグループごとに、グループに属する電流信号(電流波形)に基づいて、部分放電の発生位置と発生要因を特定することができる。
判定部104は、計測により得られた部分放電パターンを表示部105に出力することができる。また、判定部104は、規格IEC60034−27−2の部分放電パターンの形状を表す点のデータから、規格IEC60034−27−2の部分放電パターンを表示部105に出力することができる。
部分放電の発生位置と発生要因の特定は、作業者が行うこともできる。作業者は、電流信号のグループごとに、表示部105に出力された計測による部分放電パターンと、規格IEC60034−27−2の部分放電パターンとを比較し、規格IEC60034−27−2の部分放電パターンの中から、計測による部分放電パターンに最も特徴が近いものを選択し、選択した規格IEC60034−27−2の部分放電パターンについての部分放電の発生位置と発生要因を、計測した部分放電の発生位置と発生要因とする。作業者は、このようにして、電流信号のグループごとに、部分放電の発生位置と発生要因を特定することができる。
以上に説明した部分放電の発生位置と発生要因の特定は、部分放電は、高電圧機器の種類や発生位置(絶縁劣化の場所)や発生要因により固有の部分放電パターンを持つ、という性質を利用するものである。すなわち、部分放電パターンが分かれば、部分放電の発生位置と発生要因を特定することができる。本実施例では、複数の電流信号を特徴量(周波数と振幅変化)によってグループに分け、電流信号のグループごとに部分放電パターンを得ることで、部分放電の発生位置と発生要因を特定することができる。
表示部105は、電流信号の分布データ、電流信号の分布図、及び部分放電パターンなど、部分放電計測システムで作成したデータや図を表示する。例えば、表示部105は、電流信号の周波数fに対する減衰率ζのデータを出力し、どの電流信号がどのグループに属するのかを表示することができる。
実施例1では、電流波形計測部101が取得した1つの電流信号(電流波形)が、単一の周波数成分を持つ場合について説明した。実施例2では、電流波形計測部101が取得した1つの電流信号が、異なる複数の周波数成分を持つ場合について説明する。
図7は、本実施例において、電流波形計測部101の計測器202が取得する電流波形701の例を示す図である。電流波形701は、低周波数成分702と高周波数成分703を持つ波形である。このような異なる複数の周波数成分を持つ電流信号に対しては、周波数フィルタ(フィルタ回路)を利用して信号の周波数成分を分離することができる。周波数フィルタには、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、及びバンドパスフィルタのうち1つ以上を用いることができる。フィルタを通過させる信号の周波数は、例えば、電流波形701を実測することにより定めることができる。
図8は、本発明の実施例2による部分放電計測システムの構成を示す概略図である。本実施例による部分放電計測システムは、実施例1による部分放電計測システムと同様の構成を備えるが、ローパスフィルタ801aとハイパスフィルタ801bを備え、2つの特徴量抽出部102a、102bと、2つの減衰特性取得部103a、103bを備える点が、実施例1による部分放電計測システムと異なる。以下では、実施例1による部分放電計測システムと異なる構成について説明する。
電流波形計測部101には、ローパスフィルタ801aとハイパスフィルタ801bが接続される。ローパスフィルタ801aとハイパスフィルタ801bには、それぞれ特徴量抽出部102a、102bが接続される。特徴量抽出部102a、102bには、それぞれ減衰特性取得部103a、103bが接続される。
ローパスフィルタ801aは、電流波形計測部101が取得した電流信号(電流波形701)の低周波数成分702を通過させる。ハイパスフィルタ801bは、電流波形計測部101が取得した電流信号(電流波形701)の高周波数成分703を通過させる。特徴量抽出部102aと減衰特性取得部103aは、電流信号の低周波数成分702に対して実施例1で説明したのと同様の処理を行い、特徴量抽出部102bと減衰特性取得部103bは、電流信号の高周波数成分703に対して実施例1で説明したのと同様の処理を行う。判定部104は、低周波数成分702と高周波数成分703のそれぞれに対して実施例1で説明したのと同様の処理を行い、電流信号の分布データを作成し、複数の電流信号をグループに分けることができる。
本実施例のように、複数の周波数成分を持つ1つの電流信号に対して信号の周波数成分を分離することで、電流信号をより精度良く周波数fと減衰率ζによってグループに分けることができる。このため、本実施例による部分放電計測システムは、部分放電の発生位置と発生要因をより精度良く特定することができる。
実施例1と実施例2による部分放電計測システムでは、モータなどの高電圧機器で計測した電流信号をグループに分けることで、部分放電の発生位置と発生要因を特定し、計測時点での高電圧機器の状態の分析(絶縁劣化の診断)を行うことができる。実施例3による部分放電計測システムは、高電圧機器の状態変化(絶縁劣化の変化)を分析することができる。
図9は、本発明の実施例3による部分放電計測システムの構成を示す概略図である。本実施例による部分放電計測システムは、実施例1による部分放電計測システムと同様の構成を備えるが、記憶装置901を備える点が、実施例1による部分放電計測システムと異なる。以下では、実施例1による部分放電計測システムと異なる構成について説明する。
記憶装置901は、判定部104に接続され、電流波形計測部101が計測した電流波形(電流信号)と、特徴量抽出部102が取得した電流信号の特徴量(周波数と振幅変化)と、減衰特性取得部103が求めた電流波形の減衰特性とを、電流信号を計測した日時または計測した順序を示す番号を付けて保存する。記憶装置901は、電流信号のグループのそれぞれに属する電流信号の周波数と減衰特性とを保存するとともに、電流信号の分布データや分布図を保存する。記憶装置901が保存した情報は、表示部105が表示することができる。
判定部104または作業者は、記憶装置901が保存した上記の情報を参照し、異なる2つの時点での電流信号の特徴量と減衰特性を互いに比較することで、電流信号の分布データや分布図(例えば、図6)の時間変化を求め、高電圧機器の状態変化を分析することができる。異なる2つの時点とは、例えば、現在の計測時点と過去の計測時点や、異なる2つの過去の計測時点である。状態変化の分析には、任意の方法を用いることができ、例えば、数値比較、閾値判定、または機械学習などの方法を用いることができる。
実施例1から実施例3では、電流波形(電流信号)の特徴量として周波数と振幅変化を使用し、これらの値から周波数と減衰特性による電流信号の分布データや分布図(例えば、図6)を作成する。電流信号の特徴量には、その他の値を利用することもできる。実施例4では、電流信号の特徴量として、周波数と減衰特性(減衰率)に加えて、部分放電の発生頻度を利用する例を説明する。部分放電の発生頻度は、予め定めた一定の長さの期間において部分放電が発生した回数である。
本実施例による部分放電計測システムは、部分放電の発生頻度nを求める計数部を備える。計数部は、予め定めた一定の長さの期間における部分放電の発生回数を数えて、部分放電の発生頻度nを求める。計数部は、例えば、特徴量抽出部102または判定部104に計数回路を設けることで構成することができる。
電流信号の分布データと分布図は、周波数fと減衰率ζと部分放電の発生頻度nによって表される。
判定部104は、周波数fと減衰率ζと発生頻度nによって、実施例1で説明したのと同様な方法で、電流信号の分布データと分布図を作成し、複数の電流信号をグループに分けることができる。例えば、判定部104は、分布データ(分布図)と周波数fの閾値範囲Rfと減衰率ζの閾値範囲Rζと発生頻度nの閾値範囲Rnを用いて、複数の電流信号をグループに分けることができる。閾値範囲Rnは、任意の方法で予め定めることができる。
また、作業者が、表示部105に出力された分布図を参照しながら、複数の電流信号をグループに分けることもできる。
図10は、判定部104が作成した分布データによる、周波数fと減衰率ζと部分放電の発生頻度nによる電流信号の分布図の例を示す図である。図10には、複数の異なる電流信号が、周波数fと減衰率ζと発生頻度nにより、3つのグループ1001、1002、1003に分けられた分布図を示している。
以上のようにして分けられた電流信号のグループごとに、部分放電の発生位置と発生要因を特定する方法は、実施例1と同様である。
発生頻度nを特徴量として利用することで、発生回数の多い部分放電の発生位置と発生要因を特定することができる。このため、発生回数が多くて高電圧機器の状態(絶縁劣化)に大きな影響を与える部分放電の発生位置と発生要因を特定できるとともに、発生回数に応じて部分放電の対策順序を決めることができる。例えば、発生回数が多い部分放電を優先的に対策すると決めることができる。
実施例1で説明したように、判定部104または作業者は、複数の電流信号をグループに分けることができる。しかし、判定部104が作成した電流信号の分布データや分布図(例えば、図6)において、電流信号のグループの境界が不明確であり、電流信号をグループに分けるのが困難な場合も考えられる。
図11は、判定部104が作成した分布データによる、周波数fと減衰率ζによる電流信号の分布図であり、電流信号のグループの境界が不明確な分布図の例を示す図である。電流信号のグループの境界が不明確であり、電流信号をグループに分けるのが困難な場合には、作業者は、表示部105に表示された分布図でインターフェースを介して電流信号を選択することで、電流信号を任意のグループに分けることができる。
図11には、作業者が、電流信号をグループ1101に分けた例と、グループ1102に分けた例とを示している。作業者は、図11の分布図では電流信号のグループの境界が不明確なので、試しに電流信号をグループ1101に分けたりグループ1102に分けたりすることができる。
判定部104は、作業者が分けたグループに属する電流信号について、グループごとに部分放電パターンを作成する。表示部105は、判定部104が作成したこの部分放電パターンを表示する。
図12は、作業者が分けたグループ1101に属する電流信号について、判定部104が作成し、表示部105が表示する部分放電パターンの例である。表示部105には、部分放電パターンとして、電流信号(部分放電の信号)の電圧波形1201と電荷量の分布1202が表示される。
図13は、作業者が分けたグループ1102に属する電流信号について、判定部104が作成し、表示部105が表示する部分放電パターンの例である。表示部105には、部分放電パターンとして、電流信号(部分放電の信号)の電圧波形1301と電荷量の分布1302が表示される。
作業者は、表示部105に表示された部分放電パターン(図12、図13)を参照しながら、電流信号を試行錯誤的にグループに分けることができる。このため、作業者は、電流信号をグループに分ける基準を試行錯誤的に決定することができ、発生位置と発生要因に応じて部分放電の対策の重要度を判別することができ、高電圧機器の修理やメンテナンスを計画する際の参考にできる。
実施例1から実施例5は、部分放電の電流信号をグループに分けて部分放電の発生位置と発生要因を特定する例である。電流信号をグループに分けることにより、電流信号に含まれているノイズをノイズ源に応じて分類することもできる。実施例6では、電流信号に含まれているノイズをノイズ源に応じて分類し、ノイズの種類を特定する例について説明する。
判定部104は、グループに分けられた電流信号から、電流信号に含まれているノイズを、1つまたは異なる複数のノイズ源に応じて分類する。ノイズ源ごとにノイズを分類することによって、ノイズ対策を行う際の参考にできる。
図14は、判定部104が作成した分布データによる、周波数fと減衰率ζによる電流信号の分布図であり、ノイズによる電流信号についての分布図の例を示す図である。電流信号は、グループ1401とグループ1402に分けられている。
図15は、断続的に発生する電源ノイズの電流波形の例を示す図である。例えば、ノイズが断続的に電源から発生する場合には、電流信号は、周波数fが互いにほぼ等しく一定の範囲内に収まり、信号の点数が多い分布になる。したがって、グループ1401の電流信号は、電源から発生する電源ノイズであることがわかる。この電源ノイズに対しては、電源線にノイズフィルタを設置するという対策を行うことで、ノイズを低減できる。
図16は、電磁ノイズ(放射ノイズ)の電流波形の例を示す図である。例えば、電磁ノイズ(放射ノイズ)の影響がある場合には、電流信号は、周波数fが大きい高周波数帯域に分布する。したがって、グループ1402の電流信号は、電磁ノイズであることがわかる。この電磁ノイズに対しては、信号ケーブルにシールドを設置するという対策を行うことで、ノイズを低減できる。
これらのような対策を実施した後で作成した電流信号の分布図から、ノイズによって生じる電流信号の分布が消えていれば、実施した対策が有効であることが確認できる。
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。