以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る検査装置10の機能構成を示すブロック図である。本実施形態において、検査装置10は、電力機器20を備える電力設備における放電(部分放電)の発生を検査するために用いられる。
電力機器20は、例えば電源ケーブルを介して高電圧及び大電流を通電する機器であり、例えば遮断機、断路器、変流器または変圧器等によって構成される。具体的には、電力機器20は、例えばスイッチギヤ等の受配電機器を含む。以下の説明においては、電力機器20がスイッチギヤであるものとして説明するが、当該電力機器20は電力用変圧器、ガス絶縁開閉器、発電機、電動機またはリアクトル等のように、部分放電を発生する可能性がある機器であればよい。
スイッチギヤ20は筐体を有し、当該スイッチギヤ20(の筐体)の外壁面には、センサ21が取り付けられている。
なお、図1においては1つのスイッチギヤ20のみが示されているが、本実施形態において、電力設備は、図2に示すように列盤された(つまり、列盤で設置された)複数のスイッチギヤ20を備える。この場合、センサ21は、複数のスイッチギヤ20の各々に取り付けられているものとする。
センサ21は、当該センサ21が取り付けられているスイッチギヤ20から発生している部分放電に基づく複数のパルス信号(部分放電信号)を含む電気信号を計測する。なお、センサ21によって計測される電気信号は、スイッチギヤ20から発生している部分放電によって生じた現象に応じて生成される信号であり、例えば電流、電位または電磁波等の物理量を表す。
センサ21は、例えば信号線を介して検査装置10と接続されている。これにより、センサ21は、当該センサ21によって計測(生成)された電気信号を検査装置10に出力することができる。
検査装置10は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータまたはサーバ装置等の情報処理装置(電子機器)であり、上記したセンサ21とともに検査システムを構成する。
検査装置10は、電気信号取得部11、位相取得部12、ノイズ処理部13、特徴情報生成部14、分析部15、相対情報生成部16、部分放電検出部17、発生盤特定部18及び格納部19を含む。
電気信号取得部11は、スイッチギヤ20(電力設備)から発生している部分放電に基づく複数のパルス信号を含む電気信号を取得する。この電気信号は、センサ21によって計測され、当該センサ21から取得される。
位相取得部12は、スイッチギヤ20(検査対象機)に印加されている電源電圧(交流電圧)の位相を取得する。この電源電圧(商用電源)の位相は、例えばコンセント等に挿入されるACアダプタ等の機器(電源取得装置)から取得される。
ノイズ処理部13は、電気信号取得部11によって取得された電気信号を所定の周期で分割する。ここで、所定の周期は、例えば位相取得部12によって取得された位相に基づく電源周期(50Hzまたは60Hz等の商用電源周期)であるが、他の周期であってもよい。このように電気信号が所定の周期で分割された場合、ノイズ処理部13は、当該電気信号に含まれる複数のパルス信号(スイッチギヤ20から発生している部分放電に基づく複数のパルス信号)を取得する。
ノイズ処理部13は、取得されたパルス信号毎に周波数分析を行うことで、当該パルス信号の予め定められた強度以上の周波数帯域に対してノイズ処理を行う。このようなノイズ処理によれば、各パルス信号のノイズ成分を除去及び低減することができる。この場合、ノイズ処理部13は、例えばフーリエ変換、短時間フーリエ変換、ウェーブレット変換または離散ウェーブレット変換等の公知の手法を用いて高周波のパルス信号を探索する。なお、離散ウェーブレット変換は、他の手法と比較してパルス信号の探索性能がよく、計算負荷が小さいため有効である。
以下、ノイズ処理部13が離散ウェーブレット変換を用いる場合について説明する。ノイズ処理部13は、離散ウェーブレット変換を用いてパルス信号を高周波成分と低周波成分とに分解する。高周波成分は、例えば予め定められた周波数以上の周波数成分である。予め定められた周波数は、例えば100MHzであってもよい。低周波成分は、例えば予め定められた周波数の半分以下の周波数成分である。例えば高周波成分が100MHz以上の周波数成分である場合、低周波成分は50MHz以下の周波数成分である。ノイズ処理部13は、分解したパルス信号に対して閾値処理をした後、当該パルス信号の再構成処理を行うことでノイズを除去する。ノイズ処理部13は、パルス信号の探索のために分解途中に算出されるウェーブレット係数を探索してもよい。離散ウェーブレット変換を用いる場合、予めパルス信号に対して類似性の高いマザーウェーブレットを選択しておくことで、より高い精度で部分放電に基づくパルス信号(部分放電パルス)を探索することができる。ノイズ処理部13は、強調されたパルス信号を含むウェーブレット係数に対して所定の閾値を超えたパルス信号の周波数分析を行い、卓越周波数を用いてフィルタリングすることでS/N比の高い信号を得ることができる。なお、ノイズ処理部13は、フーリエ変換または短時間フーリエ変換を用いた場合も同様に、卓越周波数を用いてフィルタリングすることでS/N比の高い信号を得ることができる。
なお、フィルタリングの手法としては、アナログフィルタまたはデジタルフィルタを用いることができる。デジタルフィルタは、性能及びコストの面でアナログフィルタよりも有利である。デジタルフィルタとしては、有限インパルス応答フィルタを用いることができる。有限インパルス応答フィルタによれば、パルス信号の位相の誤差と、波形の歪とを小さくすることができる。また、ノイズ処理部13は、離散ウェーブレット変換等の非線形フィルタを用いてもよい。
特徴情報生成部14は、位相取得部12によって取得された位相を基準として定められた周期毎に特徴情報を生成する。特徴情報は、電気信号(パルス信号)の波形の特徴を表す。なお、上記した特徴情報を生成する周期を例えば電源周期とした場合には当該電源周期の1周期分のパルス信号(つまり、電気信号を電源周期で分割することによって取得されたパルス信号)毎に特徴情報が生成されるが、特徴情報は、当該電源周期の2周期分のパルス信号毎に特徴情報が生成されてもよい。すなわち、特徴情報は、電源周期の整数倍分のパルス信号毎に生成されればよい。以下の説明では、特徴情報は電源周期の1周期分のパルス信号毎に生成されるものとして説明する。
特徴情報を生成する場合、特徴情報生成部14は、ノイズ処理が行われたパルス信号毎に例えば1つの特徴値を決定する。
ここで、特徴値は、例えばパルス信号の信号値(信号強度)の最大値、最小値及びピーク-ピーク値等であってもよいし、当該パルス信号の波形の積分値等であってもよい。すなわち、特徴値は、パルス信号の代表値であればよい。なお、1つのパルス信号(1波形)からは、少なくとも1つの特徴値が決定されるが、複数の特徴値が決定されてもよい。
また、特徴情報生成部14は、決定された特徴値に対応する電源電圧の位相(角度)を示すタイミング情報を取得する。このタイミング情報は、電源電圧の周期に対して特徴値が得られたタイミング(つまり、特徴値が得られた際の電源電圧の位相)を示す情報である。なお、タイミング情報は、角度が0度の位相が取得された時刻からの経過時間を表す時刻情報であってもよい。この場合、例えば決定された特徴値に対応する電源の位相が0度の場合、タイミング情報は0(ms)を示す。
特徴情報生成部14は、上記した特徴値及びタイミング情報を含む特徴情報を生成する。なお、ここでは電気信号を電源周期で分割することによって取得された全てのパルス信号毎に特徴情報を生成するが、当該特徴情報は、例えば信号強度等が予め定められた値を超えたパルス信号のみを対象として生成されても構わない。
分析部15は、特徴情報生成部14によってパルス信号毎に生成された特徴情報の各々を例えばパルス信号の信号強度及び電源電圧の位相によって規定される平面状にプロットする。プロット方法としては、例えばφ-q-nプロットの手法を用いることができる。なお、φ-q-nプロットが極座標で表示される場合、以下のグループ化処理を行いやすくなるため好適である。
分析部15は、プロットされた特徴情報に含まれる特徴値(つまり、パルス信号の信号強度の最大値等)及びタイミング情報(つまり、電源電圧の周期に対するパルス信号の位相)に基づいて、同一の原因で生じたと特定される1つ以上のパルス信号(パルス信号群)をグループ化(識別)する。この場合、分析部15は、例えばクラスタ分析を用いて所定のパルス信号群をグループ化することができる。なお、クラスタ分析としては、例えば最短距離法、最小分散法、重心法、メジアン法またはK平均法等を用いることができる。また、上記した「同一の原因」とは、例えばコロナ放電、沿面放電または内部放電等の部分放電の種類が同一であることをいう。
相対情報生成部16は、分析部15によってグループ化されたパルス信号群の相対的な関係を表す相対情報を生成する。相対情報生成部16は、グループ化されたパルス信号群に対して、少なくとも1つの相対情報を生成する。この場合、相対情報生成部16は、分析部15によってグループ化されたパルス信号群に含まれるパルス信号の各々から生成された特徴情報(以下、パルス信号群に対応する特徴情報群と表記)に基づいて特性値を算出し、当該特性値を含む相対情報を生成する。特性値としては、例えばパルス信号群に対応する特徴情報群に含まれる特徴値に関する最大値、最小値または分散値等の統計値が用いられる。また、特性値としては、例えばパルス信号群に対応する特徴情報群に含まれるタイミング情報によって示される位相差等が用いられてもよい。なお、相対情報には、パルス信号群から得られる波形が含まれていてもよい。
部分放電検出部17は、相対情報生成部16によって生成された相対情報が予め定められた条件を満たす場合、電気信号取得部11によって取得された電気信号を計測したセンサ21が取り付けられているスイッチギヤ20から部分放電が発生していると判定する。予め定められた条件とは、例えば相対情報に含まれる特性値が予め用意されている部分放電に関する特性値と一致していることを含む。また、予め定められた条件とは、例えば相対情報に含まれる波形と、予め用意されている部分放電に関する波形との一致度が予め定められた値(閾値)以上であることであってもよい。この場合における一致度は、公知の手法で算出されればよい。
なお、上記した予め用意されている部分放電に関する特性値及び関する波形は、部分放電情報として例えば格納部19(データベース)に格納されているものとする。
また、上記した部分放電に関する特性値及び波形を当該部分放電の種類毎に用意しておくことで、部分放電検出部17は、スイッチギヤ20から部分放電が発生していると判定された場合に、当該部分放電の種類を特定することも可能である。
なお、部分放電検出部17は、部分放電の発生を検出するまたは部分放電の種類を特定する際に、予め学習処理を実行したニューラルネットワーク等の統計モデルを用いても構わない。
ここでは、1つのスイッチギヤ20に取り付けられたセンサ21から電気信号を取得することによって、当該スイッチギヤ20から部分放電が発生しているか否かを判定する(つまり、部分放電の発生を検出する)場合について説明したが、上記したように電力設備には複数のスイッチギヤ20が列盤で設置されているため、検査装置10は、当該複数のスイッチギヤ20に取り付けられているセンサ21の各々から電気信号を取得することによって、当該複数のスイッチギヤ20の各々から部分放電が発生しているか否かを判定することができる。
ここで、上記したように列盤で設置されている複数のスイッチギヤ20は、例えば接地線を介して電気的に接続されている。このため、例えば複数のスイッチギヤ20のうちの特定のスイッチギヤ20から部分放電が発生した場合、当該部分放電は他の(隣接する)スイッチギヤ20にも伝播する。
この場合、別のスイッチギヤ20から発生した部分放電が伝播したスイッチギヤ20に取り付けられているセンサ21は当該伝播した部分放電に基づく接地電流(電気信号)を計測してしまう。すなわち、複数のスイッチギヤ20が列盤で設置されている構成によれば、部分放電を発生しているスイッチギヤ20以外のスイッチギヤ20からも部分放電が発生していると判定されることになり、実際に部分放電を発生しているスイッチギヤ20(つまり、部分放電の発生源となるスイッチギヤ20)を特定することは困難である。
そこで、本実施形態において、発生盤特定部18は、例えば上記した分析部15によってグループ化されたパルス信号群に基づいて、複数のスイッチギヤ20の中から部分放電の発生源となるスイッチギヤ20(発生盤)を特定する機能を有する。なお、発生盤特定部18の処理については後述する。
図3は、上記した格納部19に格納されている部分放電情報のデータ構造の一例を示す。図3に示すように、部分放電情報は、放電の種類、最大値、最小値、分散値及び位相差等の情報を含む。部分放電情報は上記した相対情報に含まれる特性値と比較されるため、部分放電情報に含まれる最大値、最小値、分散値及び位相差は当該特性値として用いられる最大値、最小値、分散値及び位相差に対応しているが、当該部分放電情報(に含まれる各値)は例えば予め部分放電(に基づく電気信号)を計測することによって得られた値に相当する。なお、図3に示す例では、格納部19には、放電の種類毎に複数の部分放電情報が格納されている。
具体的には、例えば部分放電の種類として「コロナ放電」を含む部分放電情報は、最大値が「AAA」、最小値が「BBB」、分散値が「CCC」、位相差が「DDD」であることを示している。
また、例えば部分放電の種類として「沿面放電」を含む部分放電情報は、最大値が「EEE」、最小値が「FFF」、分散値が「GGG」、位相差が「HHH」であることを示している。
更に、例えば部分放電の種類として「内部放電」を含む部分放電情報は、最大値が「III」、最小値が「JJJ」、分散値が「KKK」、位相差が「LLL」であることを示している。
なお、格納部に19には、部分放電の種類がコロナ放電、沿面放電及び内部放電以外の部分放電情報が格納されていてもよい。また、部分放電情報には、例えば頻度等の図3に示す情報以外の情報が含まれていてもよい。更に、図3においては省略されているが、部分放電情報には、上記した部分放電に関する波形が含まれていてもよい。
図4は、図1に示す検査装置10のハードウェア構成の一例を示す。検査装置10は、CPU101、不揮発性メモリ102、RAM103、通信デバイス104、入力デバイス105及び表示デバイス106等を備える。
CPU101は、検査装置10内の様々なコンポーネントの動作を制御するためのプロセッサである。CPU101は、単一のプロセッサであってもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。CPU101は、不揮発性メモリ102からRAM103にロードされる様々なプログラムを実行する。本実施形態において、CPU101によって実行されるプログラムには、検査プログラム103aが含まれる。
不揮発性メモリ102は、補助記憶装置として用いられる記憶媒体である。RAM103は、主記憶装置として用いられる記憶媒体である。図4においては、不揮発性メモリ102及びRAM103のみが示されているが、検査装置10は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の他の記憶装置を備えていてもよい。
なお、上記した図1に示す各部11~18の一部または全ては、例えばCPU101(つまり、検査装置10のコンピュータ)が検査プログラム103aを実行すること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。この検査プログラム103aは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体にか格納して頒布されてもよいし、ネットワークを通じて検査装置10にダウンロードされてもよい。上記した各部11~18の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成によって実現されてもよい。
また、本実施形態において、格納部19は、例えば不揮発性メモリ102または他の記憶装置等によって実現される。
通信デバイス104は、外部機器との有線通信または無線通信を実行するように構成されたデバイスである。なお、本実施形態において、外部機器には例えば複数のスイッチギヤ20の各々に取り付けられているセンサ21が含まれるが、検査装置10は、通信デバイス104を介して他の外部機器(例えば、サーバ装置等)と通信可能に構成されていてもよい。
入力デバイス105は、例えばマウス及びキーボード等を含む。表示デバイス106は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等を含む。なお、検査装置10は、入力デバイス105及び表示デバイス106として、例えばタッチスクリーンディスプレイ等を備えていてもよい。また、入力デバイス105及び表示デバイス106は、ここで説明した以外のものであってもよい。
次に、図5のフローチャートを参照して、本実施形態に係る検査装置10の処理手順の一例について説明する。
まず、電気信号取得部11は、複数のスイッチギヤ20のうちの1つのスイッチギヤ(以下、対象スイッチギヤと表記)20に取り付けられているセンサ(以下、対象センサと表記)21から、当該対象センサ21によって計測された電気信号を取得する(ステップS1)。対象スイッチギヤ20から部分放電が発生している場合、このステップS1において取得される電気信号には、当該部分放電に基づいて生じる複数のパルス信号が含まれている。
また、位相取得部12は、上記した電源取得装置から、対象スイッチギヤ20に印加されている電源電圧の位相を取得する(ステップS2)。
ここで、部分放電(に基づくパルス信号)は、対象スイッチギヤ20に印加される電源電圧に関係して発生する。このため、ノイズ処理部13は、ステップS1において取得された電気信号を、ステップS2において取得された位相の周期に基づいて分割することによって、複数のパルス信号を取得する(ステップS3)。
ノイズ処理部13は、ステップS3において取得された複数のパルス信号の各々に対してノイズ処理を実行する(ステップS4)。このステップS4の処理が実行されることによって、複数のパルス信号におけるノイズ成分が除去及び低減される。なお、ノイズ処理の詳細については上述した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
次に、特徴情報生成部14は、ステップS3において取得されたパルス信号毎(つまり、ステップS2において取得された位相を基準として定められた周期毎)に特徴情報を生成する(ステップS5)。なお、ステップS5においてパルス信号毎に生成される特徴情報は、例えば当該パルス信号の信号強度の最大値(特徴値)と当該最大値の信号強度が得られたタイミング(電源電圧の位相)を示すタイミング情報とを含む情報である。
ここで、ステップS5においてはパルス信号毎に特徴情報が生成されるが、当該パルス信号及び特徴情報は、対応づけて例えば格納部19に格納される(ステップS6)。
次に、分析部15は、ステップS6において格納部19に格納された特徴情報に対して例えばクラスタ分析を行うことによって、当該特徴情報の生成に用いられたパルス信号(つまり、当該特徴情報に対応づけて格納部19に格納されたパルス信号)をグループ化する(ステップS7)。このステップS7においては、同一の原因で生じたと特定されるパルス信号群がグループ化される(つまり、パルス信号群のグループが生成される)。なお、ステップS7においては、複数のパルス信号群のグループが生成されても構わない。
ステップS7の処理が実行されると、相対情報生成部16は、当該ステップS7においてグループ化されたパルス信号群の相対的な関係を表す相対情報を生成する(ステップS8)。この場合、相対情報生成部16は、例えばグループ化されたパルス信号群に対応する特徴情報群に含まれる特徴値に関する最大値、最小値または分散値等の統計値を特性値として算出し、当該特性値を含む相対情報を生成する。
次に、部分放電検出部17は、ステップS8において生成された相対情報に基づいて、対象スイッチギヤ20から部分放電が発生しているか否かを判定する処理(部分放電判定処理)を実行する(ステップS9)。このステップS9の処理は上記した部分放電情報に基づいて実行され、当該ステップS9においては、例えば相対情報に含まれる特性値が当該部分放電情報として予め用意されている特性値と一致する場合に対象スイッチギヤ20から部分放電が発生していると判定される。なお、ステップS9においては、相対情報に含まれる特性値と当該部分放電情報として予め用意されている特性値との差分が予め定められた値(閾値)以内である場合に対象スイッチギヤ20から部分放電が発生していると判定されてもよい。
なお、部分放電検出部17は、ステップS8において生成された相対情報(ステップS7においてグループ化されたパルス情報群)を上記した部分放電情報(部分放電毎の特性値)と比較することによって対象スイッチギヤ20から発生している部分放電の種類を判定(特定)してもよい。
ステップS9において対象スイッチギヤ20から部分放電が発生していると判定された場合、発生盤特定部18は、発生盤特定処理を実行する(ステップS10)。この発生盤特定処理は、対象スイッチギヤ20を含む複数のスイッチギヤ20の中から部分放電の発生源となるスイッチギヤ20(発生盤)を特定するための処理である。発生盤特定処理の詳細については後述する。
なお、ステップS9において対象スイッチギヤ20から部分放電が発生していないと判定された場合、ステップS10の処理は実行されず、図5に示す処理は終了される。
次に、図6のフローチャートを参照して、上記した発生盤特定処理(図5に示すステップS10の処理)の処理手順の一例について説明する。
なお、ここでは説明の便宜のために電力設備が複数のスイッチギヤ20として列盤された第1及び第2スイッチギヤ20を備え、上記した図5に示すステップS1~S9の処理が実行されることによって第1スイッチギヤ20から部分放電が発生していると判定された場合を想定する。
この場合、発生盤特定部18は、図5に示すステップS7においてグループ化されたパルス信号群(以下、第1パルス信号群と表記)を取得し、当該第1パルス信号群に含まれるパルス信号の各々に対して高速フーリエ変換処理(FFT処理)を実行する。これにより、発生盤特定部18は、第1スイッチギヤ20から発生している部分放電に基づく第1パルス信号群に関する周波数スペクトル(以下、第1スペクトル信号と表記)を取得する(ステップS21)。
なお、ステップS21において取得される第1スペクトル信号は、上記した第1パルス信号群における周波数成分(帯域)毎の信号強度(振幅)を表す。この第1スペクトル信号によって表される信号強度は、例えばパルス信号群の各々の周波数成分毎の信号強度の平均値等であればよい。
ステップS21の処理が実行されると、発生盤特定部18は、第2スイッチギヤ20から発生している部分放電に基づくパルス信号群(以下、第2パルス信号群と表記)に関する周波数スペクトル(以下、第2スペクトル信号と表記)を取得する(ステップS22)。
このステップS22においては、第1スイッチギヤ20に隣接する第2スイッチギヤ20を対象スイッチギヤとして、図5に示すステップS1~S7の処理が実行され、かつ、上記したステップS21に相当する処理が実行されることによって、第2スペクトル信号を取得することができる。
次に、発生盤特定部18は、ステップS21において取得された第1スペクトル信号とステップS22において取得された第2スペクトル信号とを比較し、当該比較結果に基づいて第1スペクトル信号と第2スペクトル信号とが類似しているか否かを判定する(ステップS23)。
なお、ステップS23においては、例えば第1スペクトル信号によって表される周波数成分毎の信号強度及び第2スペクトル信号によって表される周波数成分毎の信号強度に基づいて第1スペクトル信号及び第2スペクトル信号の類似度を算出し、当該類似度が予め定められた値以上である場合に第1スペクトル信号と第2スペクトル信号とが類似していると判定される。
第1スペクトル信号と第2スペクトル信号とが類似していると判定された場合(ステップS23のYES)、発生盤特定部18は、例えば第1スペクトル信号によって表される信号強度(周波数成分毎の信号強度の最大値または平均値等)と第2スペクトル信号によって表される信号強度(周波数成分毎の信号強度の最大値または平均値等)との比率(以下、強度比率と表記)を算出する(ステップS24)。なお、強度比率は、例えば周波数成分毎に算出されてもよいし、当該周波数成分毎に算出された比率の平均値等であってもよい。このステップS24において算出される強度比率(強度情報)は、第1及び第2スイッチギヤ20の各々から発生している部分放電間の減衰または増加を示す。
ステップS24の処理が実行されると、発生盤特定部18は、当該ステップS24において算出された強度比率が予め用意されている比率(以下、参照比率)と略同一であるか否かを判定する(ステップS25)。なお、参照比率は、例えば特定のスイッチギヤ20から実際に部分放電を発生させることによって当該特定のスイッチギヤ20及び当該スイッチギヤ20に隣接するスイッチギヤ20の各々に取り付けられたセンサ21から取得される電気信号(パルス信号)に基づいて予め計測された値(強度比率)であり、検査装置10内(例えば、格納部19)に保持されているものとする。なお、上記した「強度比率が参照比率と略同一である」には、強度比率が参照比率と一致する場合以外にも、強度比率と参照比率との差分が予め定められた値以下である場合等が含まれる。
強度比率が参照比率と略同一であると判定された場合(ステップS25のYES)、第1及び第2スイッチギヤ20のうちの一方から発生した部分放電が他方に伝播していると推定するものとする。この場合、発生盤特定部18は、上記した第1及び第2スペクトル信号に基づいて、第1及び第2スイッチギヤ20のうちの一方を発生盤(つまり、部分放電の発生源となるスイッチギヤ20)として特定する(ステップS26)。
なお、ステップS26においては、伝播した部分放電は発生盤から発生した部分放電よりも減衰する点を考慮して、例えば第1スペクトル信号によって表される信号強度(例えば、周波数成分毎の信号強度の最大値または平均値等)が第2スペクトル信号によって表される信号強度(例えば、周波数成分毎の信号強度の最大値または平均値等)よりも高い場合には、第1スイッチギヤ20を発生盤として特定する。一方、例えば第2スペクトルによって表される信号強度が第1スペクトル信号によって表される信号強度よりも高い場合には、第2スイッチギヤ20を発生盤として特定する。
ステップS26の処理が実行された場合、図6に示す発生盤特定処理は終了されるが、図5に示すステップS9の処理結果(部分放電が発生していると判定されたこと及び当該部分放電の種類)及び当該ステップS26の処理結果(つまり、第1スイッチギヤ20または第2スイッチギヤ20が発生盤であると特定されたこと)等は、例えば表示デバイス106に表示されてもよいし、検査装置10の外部の装置等に送信されても構わない。
上記した図6に示す処理においては第1及び第2スペクトル信号が類似し、かつ、強度比率が参照比率と略同一である場合に第1及び第2スイッチギヤ20のうちの一方から発生している部分放電が他方に伝播していると推定し、当該第1及び第2スペクトル信号によって表される信号強度に基づいて発生盤を特定するが、上記したステップS23において第1スペクトル信号と第2スペクトル信号とが類似していないと判定された場合(ステップS23のNO)、例えば第1及び第2スイッチギヤ20の各々から別の部分放電が発生している可能性があるとして、ステップS26の処理は実行されない。ステップS25において強度比率が参照比率と略同一でないと判定された場合(ステップS25のNO)も同様である。
また、例えば第1スペクトル信号と第2スペクトル信号とが類似していると判定された場合に第1及び第2スイッチギヤ20のうちの一方から発生している部分放電が他方に伝播していると推定する構成であってもよい。この場合には、ステップS24及びS25の処理は省略されても構わない。
次に、上記した図6に示す発生盤特定処理について具体的に説明する。まず、図7は、第1スイッチギヤ20に取り付けられたセンサ21から電気信号が取得された場合に生成された特徴情報(以下、第1スイッチギヤ20の特徴情報と表記)がプロットされた結果の一例を示している。なお、図7において示されている複数の点の各々は、特徴値及びタイミング情報によって示される位相に基づいてプロットされた特徴情報を表している。図7に示すように第1スイッチギヤ20の特徴情報がプロットされている場合には、2つのグループA及びBが生成される。なお、グループA及びBの各々は、それぞれ上記した第1パルス信号群(及び当該第1パルス信号群に対応する特徴情報群)に相当する。
次に、図8は、第2スイッチギヤ20に取り付けられたセンサ21から電気信号が取得された場合に生成された特徴情報(以下、第2スイッチギヤ20の特徴情報と表記)がプロットされた結果の一例を示している。なお、図8において示されている複数の点の各々は、特徴値及びタイミング情報によって示される位相に基づいてプロットされた特徴情報を表している。図8に示すように、第2スイッチギヤ20の特徴情報がプロットされている場合には、2つのグループA´及びB´が生成される。なお、グループA´及びB´の各々は、それぞれ上記した第2パルス信号群(及び当該第2パルス信号群に対応する特徴情報群)に相当する。
ここで、発生盤特定処理においては、上記した図7に示すグループA(第1パルス信号群)に含まれるパルス信号の各々に対して高速フーリエ変換処理を実行することによって第1スペクトル信号(以下、グループAの第1スペクトル信号と表記)が取得される。図9は、グループAの第1スペクトル信号の一例を示している。
同様に、上記した図7に示すグループB(第1パルス信号群)に含まれるパルス信号の各々に対して高速フーリエ変換処理を実行することによって第1スペクトル信号(以下、グループBの第1スペクトル信号と表記)が取得される。図10は、グループBの第1スペクトル信号の一例を示している。
更に、発生盤特定処理においては、上記した図8に示すグループA´(第2パルス信号群)に含まれるパルス信号の各々に対して高速フーリエ変換処理を実行することによって第2スペクトル信号(以下、グループA´の第2スペクトル信号と表記)が取得される。図11は、グループA´の第2スペクトル信号の一例を示している。
同様に、上記した図8に示すグループB´(第2パルス信号群)に含まれるパルス信号の各々に対して高速フーリエ変換処理を実行することによって第2スペクトル信号(以下、グループB´の第2スペクトル信号と表記)が取得される。図12は、グループB´の第2スペクトル信号の一例を示している。
ここで、上記したように第1スイッチギヤ20の特徴情報及び第2スイッチギヤ20の特徴情報からそれぞれ2つのグループが生成されている場合、発生盤特定部18は、各パルス信号群に対応する特徴情報群に含まれるタイミング情報によって示される位相が近いグループ同士のスペクトル信号を比較する。ここでは、図7に示すグループAは図8に示すグループA´と位相が近く、図7に示すグループBは図8に示すグループB´と位相が近い。この場合、発生盤特定部18は、図9に示すグループAの第1スペクトル信号と図11に示すグループA´の第2スペクトル信号とを比較するとともに、図10に示すグループBの第1スペクトル信号と図12に示すグループB´の第2スペクトル信号とを比較する。
これにより、例えばグループAの第1スペクトル信号とグループA´の第2スペクトル信号とが類似していると判定された場合、当該グループAの第1スペクトル信号によって表される信号強度と当該グループA´の第2スペクトル信号によって表される信号強度との強度比率(以下、第1強度比率と表記)を算出する。
同様に、例えばグループBの第1スペクトル信号とグループB´の第2スペクトル信号とが類似していると判定された場合、当該グループBの第1スペクトル信号によって表される信号強度と当該グループB´の第2スペクトル信号によって表される信号強度との強度比率(以下、第2強度比率と表記)を算出する。
上記したように算出された第1強度比率及び第2強度比率が予め計測された参照比率と略同一である(つまり、所定の減衰または増加を示す)場合、第1及び第2スイッチギヤ20の一方(発生盤)で発生した部分放電が他方(隣接盤)に伝播していると推測することができる。なお、第1強度比率と比較される参照比率と、第2強度比率と比較される参照比率とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1強度比率と比較される参照比率と、第2強度比率と比較される参照比率とが異なる場合、当該参照比率は、例えば電源電圧の位相毎に予め用意されていればよい。
次に、上記した第1スペクトル信号(グループA及びBの第1スペクトル信号)によって表される信号強度と第2スペクトル信号(グループA´及びB´の第2スペクトル信号)によって表される信号強度とを比較し、当該信号強度が高いスペクトル信号が得られたスイッチギヤ20を発生盤として特定する。
なお、図9及び図11に示す例によれば、グループAの第1スペクトル信号によって表される強度信号は、グループA´の第2スペクトル信号によって表される信号強度よりも高い。また、図10及び図12に示す例によれば、グループBの第1スペクトル信号によって表される強度信号は、グループB´の第2スペクトル信号によって表される信号強度よりも高い。この場合、第1スイッチギヤ20を発生盤として特定する。
上記したように本実施形態においては、第1スイッチギヤ20(第1電力機器)に取り付けられたセンサ21(第1センサ)によって計測された電力設備で発生した部分放電に基づく複数のパルス信号を含む電気信号(第1電気信号)を取得し、当該電気信号に含まれる複数のパルス信号を、当該複数のパルス信号の各々の信号強度及び第1スイッチギヤ20に印加されている電源電圧の周期に対する当該複数のパルス信号の各々の位相に基づいてグループ化する。また、本実施形態においては、第2スイッチギヤ20(第2電力機器)に取り付けられたセンサ21(第2センサ)によって計測された電力設備で発生した部分放電に基づく複数のパルス信号を含む電気信号(第2電気信号)を取得し、当該電気信号に含まれる複数のパルス信号を、当該複数のパルス信号の各々の信号強度及び第2スイッチギヤ20に印加されている電源電圧の周期に対する当該複数のパルス信号の各々の位相に基づいてグループ化する。本実施形態においては、上記したようにグループ化された結果(第1及び第2パルス信号群)に基づいて、第1及び第2スイッチギヤ20の中から部分放電の発生源となるスイッチギヤ20を特定する。
具体的には、本実施形態においては、グループ化された第1パルス信号群に基づいて当該第1パルス信号群における周波数成分毎の信号強度を表す第1スペクトル信号を取得し、グループ化された第2パルス信号群に基づいて当該第2パルス信号群における周波数成分毎の信号強度を表す第2スペクトル信号を取得し、当該第1スペクトル信号によって表される信号強度が当該第2スペクトル信号によって表される信号強度よりも高い場合、部分放電の発生源となるスイッチギヤ20として第1スイッチギヤ20を特定する。
また、本実施形態においては、第1及び第2スペクトル信号が類似し、かつ、当該第1スペクトル信号によって表される信号強度と当該第2スペクトル信号によって表される信号強度との強度比率(第1比率)が予め計測された参照比率(第2比率)と略同一である場合に、部分放電の発生源として第1スイッチギヤ20を特定する。
本実施形態においては、上記したように電力設備に備えられている複数のスイッチギヤ20の中から部分放電を発生しているスイッチギヤ20を特定することにより、当該特定されたスイッチギヤ20に対して適切なメンテナンスを行うことができる。
なお、例えば複数のスイッチギヤ20の各々から発生する部分放電に基づくパルス信号の伝播時間の差を見ることによって伝播方向を判定し、当該パルス信号の発生時刻が最も早い盤を発生盤として特定する構成が考えられるが、パルス信号の伝播時間を特定するためには高価な計測器が必要となる。このため、本実施形態においては、このような構成に対してもコストの観点から有用であるといえる。
また、本実施形態においては、上記したように第1または第2パルス信号群に基づいて部分放電の種類を判定することも可能である。このような構成によれば、部分放電の種類に適したメンテナンスを行うことが可能となる。
更に、本実施形態においては、予め定められた周波数以上の高周波成分と、当該予め定められた周波数の半分以下の周波数である低周波成分とが電気信号(第1または第2電気信号)に含まれる場合に、当該電気信号のノイズを除去する。この場合、電気信号に対して周波数分析を行うことで、予め定められた強度以上の周波数帯域に対してノイズ処理が行われる。このような構成によれば、電気信号からノイズを除去することにより、当該電気信号(パルス信号)に基づく部分放電の検出精度及び発生盤の特定精度を向上させることが可能となる。
なお、本実施形態においては、上記したように第1及び第2スペクトル信号が類似している場合に、第1及び第2スイッチギヤ20の一方で発生した部分放電が他方に伝播していると推測するものとして説明したが、当該推定(つまり、発生盤特定処理)は、上記した第1及び第2パルス信号群に関する統計値を用いて行われてもよい。
以下、図13のフローチャートを参照して、第1及び第2パルス信号群に関する統計値を用いた発生盤特定処理の処理手順の一例について説明する。
まず、図6に示すステップS21~S23の処理に相当するステップS31~S33の処理が実行される。
ステップS33において第1スペクトル信号と第2スペクトル信号とが類似していないと判定された場合(ステップS33のNO)、発生盤特定部18は、第1スイッチギヤ20から発生している部分放電に基づく第1パルス信号群(分析部15によってグループ化された第1パルス信号群)を解析することによって、当該第1パルス信号群に関する統計情報を取得する(ステップS34)。
なお、ステップS34において取得された統計情報には、上記した第1パルス信号群に対応する特徴情報群に含まれる特徴値の平均値、変動係数、歪度及び尖度等の統計値が含まれる。統計情報には、第1パルス信号群に対応する特徴情報群に含まれるタイミング情報によって示される位相の平均値、変動係数、歪度及び尖度等の統計値が含まれていてもよい。
ステップS34の処理が実行されると、発生盤特定部18は、第2スイッチギヤ20から発生している部分放電に基づく第2パルス信号群(分析部15によってグループ化された第2パルス信号群)を解析することによって、当該第2パルス信号群に関する統計情報を取得する(ステップS35)。
なお、ステップS35において取得される統計情報には、上記した第2パルス信号群に対応する特徴情報群に含まれる特徴値の平均値、変動係数、歪度及び尖度等の統計値が含まれる。統計情報には、第2パルス信号群に対応する特徴情報群に含まれるタイミング情報によって示される位相の平均値、変動係数、歪度及び尖度等の統計値が含まれていてもよい。
次に、発生盤特定部18は、ステップS34において取得された統計情報(以下、第1統計情報と表記)及びステップS35において取得された統計情報(以下、第2統計情報と表記)を比較することによって、当該第1統計情報(統計値)と当該第2統計情報(統計値)とが類似するか否かを判定する(ステップS36)。
ステップS36においては、例えば第1及び第2統計情報の各々に含まれる統計値(平均値、変動係数、歪度及び尖度等)の差分が予め定められた値以下である場合に、第1統計情報と第2統計情報とが類似していると判定される。なお、例えば第1及び第2統計情報に平均値、変動係数、歪度及び尖度の4つの統計値が含まれている場合、全ての統計値の差分が予め定められた値以下である場合に第1統計情報と第2統計情報とが類似していると判定されてもよいし、所定の数以上の統計値の差分が予め定められた値以下である場合に第1統計情報と第2統計情報とが類似していると判定されてもよい。
第1統計情報と第2統計情報とが類似していると判定された場合(ステップS36のYES)、図6に示すステップS24~S26の処理に相当するステップS37~S39の処理が実行される。
なお、ステップS33において第1スペクトル信号と第2スペクトル信号とが類似していると判定された場合(ステップS33のYES)、ステップS37以降の処理が実行される。
また、ステップS36において第1統計情報と第2統計情報とが類似していないと判定された場合(ステップS36のNO)、例えば第1及び第2スイッチギヤ20の各々から別の部分放電が発生している可能性があるとして、ステップS37以降の処理は実行されない。
次に、上記した図13に示す発生盤特定処理の具体例について説明する。まず、図14は、第1スイッチギヤ20に取り付けられたセンサ21から電気信号が取得された場合に生成された特徴情報(第1スイッチギヤ20の特徴情報)がプロットされた結果の一例を示している。なお、図14において示されている複数の点の各々は、特徴値及びタイミング情報によって示される位相に基づいてプロットされた特徴情報を表している。図14に示すように第1スイッチギヤ20の特徴情報がプロットされている場合には、3つのグループC、D及びEが生成される。なお、グループC、D及びEの各々は、それぞれ上記した第1パルス信号群(及び当該第1パルス信号群に対応する特徴情報群)に相当する。
次に、図15は、第2スイッチギヤ20に取り付けられたセンサ21から電気信号が取得された場合に生成された特徴情報(第2スイッチギヤ20の特徴情報)がプロットされた結果の一例を示している。なお、図15において示されている複数の点の各々は、特徴値及びタイミング情報によって示される位相に基づいてプロットされた特徴情報を表している。図15に示すように、第2スイッチギヤ20の特徴情報がプロットされている場合には、3つのグループC´、D´及びE´が生成される。なお、グループC´、D´及びE´の各々は、それぞれ上記した第2パルス信号群(及び当該第2パルス信号群に対応する特徴情報群)に相当する。
ここで、本実施形態においては上記した格納部19に格納されている部分放電情報に基づいて部分放電が発生しているか否かを判定することが可能であるが、当該部分放電情報は部分放電に基づくパルス信号の特性値(部分放電に関する特性値)を含む情報であるため、当該部分放電情報を参照することによって例えば上記したように生成された各グループ(パルス信号群)が部分放電に基づくパルス信号群であるかノイズに起因するパルス信号群であるかを判定することができる。
図14においてはグループC、D及びEが生成されており、図15においてはグループC´、D´及びE´が生成されているが、ここでは、グループE及びE´がそれぞれノイズに起因するパルス信号群であると判定された場合を想定する。この場合、グループC及びD(のパルス信号群)とグループC´及びD´(のパルス信号群)に基づいて発生盤が特定される。
具体的には、上記した図14に示すグループC(第1パルス信号群)に含まれるパルス信号の各々に対して高速フーリエ変換処理を実行することによって第1スペクトル信号(以下、グループCの第1スペクトル信号と表記)が取得される。
同様に、上記した図14に示すグループD(第1パルス信号群)に含まれるパルス信号の各々に対して高速フーリエ変換処理を実行することによって第1スペクトル信号(以下、グループDの第1スペクトル信号と表記)が取得される。
更に、上記した図15に示すグループC´(第2パルス信号群)に含まれるパルス信号の各々に対して高速フーリエ変換処理を実行することによって第2スペクトル信号(以下、グループC´の第2スペクトル信号と表記)が取得される。
同様に、上記した図15に示すグループD´(第2パルス信号群)に含まれるパルス信号の各々に対して高速フーリエ変換処理を実行することによって第2スペクトル信号(以下、グループD´の第2スペクトル信号と表記)が取得される。
次に、発生盤特定部18は、各パルス信号群に対応する特徴情報群に含まれるタイミング情報によって示される位相が近いグループ同士のスペクトル信号を比較する。図14及び図15に示す例によれば、グループCはグループC´と位相が近く、グループDはグループD´と位相が近い。この場合、発生盤特定部18は、グループCの第1スペクトル信号とグループC´の第2スペクトル信号とを比較するとともに、グループDの第1スペクトル信号とグループD´の第2スペクトル信号とを比較する。
ここで、例えばグループCの第1スペクトル信号とグループC´の第2スペクトル信号とは類似していると判定されたが、グループDの第1スペクトル信号とグループD´の第2スペクトル信号が類似していないと判定された場合を想定する。
この場合、発生盤特定部18は、図16に示すようなグループC、D、C´及びD´(パルス信号群)の各々に関する統計値(平均値、変動係数、歪度及び尖度)を含む統計情報(第1及び第2統計情報)を取得し、グループCに関する第1統計情報とグループC´に関する第2統計情報を比較するとともに、グループDに関する第1統計情報とグループD´に関する第2統計情報とを比較する。
これにより、例えばグループCの第1統計情報とグループC´の第2統計情報とが類似していると判定された場合、上記したグループCの第1スペクトル信号によって表される信号強度と当該グループC´の第2スペクトル信号によって表される信号強度との強度比率(第1強度比率)を算出する。
同様に、例えばグループDの第1統計情報とグループD´の第2統計情報とが類似していると判定された場合、当該グループDの第1スペクトル信号によって表される信号強度と当該グループD´の第2スペクトル信号によって表される信号強度との強度比率(第2強度比率)を算出する。
上記したように算出された第1強度比率及び第2強度比率が予め計測された参照比率と略同一である(つまり、所定の減衰または増加を示す)場合、第1スイッチギヤ20及び第2スイッチギヤ20の一方(発生盤)で発生した部分放電が他方(隣接盤)に伝播していると推測することができる。
この場合、上記した第1スペクトル信号(グループC及びDの第1スペクトル信号)によって表される信号強度と第2スペクトル信号(グループC´及びD´の第2スペクトル信号)によって表される信号強度とを比較し、当該信号強度が高いスペクトル信号が得られたスイッチギヤ20を発生盤として特定する。
このように発生盤特定処理においてパルス信号群に関する統計情報(統計値)を用いる構成によれば、第1スペクトル信号と第2スペクトル信号とが類似していない場合であっても、第1統計情報(統計値)と第2統計情報(統計値)とが類似している場合には、第1及び第2スイッチギヤ20の一方で発生した部分放電が他方に伝播しているものとして推定して発生盤を特定することが可能となる。
なお、ここではグループCに関する第1統計情報とグループC´に関する第2統計情報とを比較するとともに、グループDに関する第1統計情報とグループD´に関する第2統計情報とを比較するものとして説明したが、上記したように例えばグループCの第1スペクトル信号とグループC´の第2スペクトル信号とが類似していると判定されている場合には、グループDに関する第1統計情報とグループD´に関する第2統計情報とを比較するのみでも構わない(つまり、グループCに関する第1統計情報とグループC´に関する第2統計情報とを比較しなくてもよい)。
また、上記した図13においては第1及び第2スペクトル信号が類似していないと判定された場合にステップS34~S36の処理が実行されるものとして説明したが、ステップS31及びS32の処理が実行された後にステップS34~S36の処理が実行される構成であってもよい。この場合には、ステップS33の処理は省略されてもよい。
更に、図13に示す例では、スペクトル信号が類似していないと判定された場合であっても、統計情報が類似していると判定された場合には、部分放電が伝播していると推定するものとして説明したが、当該推定精度を向上させるためには、スペクトル信号が類似していると判定され、かつ、統計情報が類似していると判定された場合に、ステップS37以降の処理が実行されるようにしてもよい。
また、ここでは第1及び第2パルス信号群に関する統計情報(統計値)が平均値、変動係数、歪度及び尖度を含むものとして説明したが、当該統計情報には、平均値、変動係数、歪度及び尖度のうちの少なくとも1つが含まれていればよい。また、統計情報には、平均値、変動係数、歪度及び尖度以外の統計値(例えば、標準偏差等)が含まれていてもよい。
本実施形態においては、説明の便宜のため、電力設備が2つのスイッチギヤ20(第1及び第2スイッチギヤ20)を備える場合について主に説明したが、電力設備は3つ以上のスイッチギヤ20を備えていてもよい。この場合には、列盤された複数のスイッチギヤ20のうちの隣接する2つのスイッチギヤ20の組み合わせ毎に上記した発生盤特定処理を順次実行することによって発生盤を特定することができる。具体的には、例えば隣接する2つのスイッチギヤ20(第1及び第2スイッチギヤ20)を対象として上記した発生盤特定処理を実行することによって、第1スイッチギヤ20が発生盤として特定された場合、次に、当該第1スイッチギヤ20と、第2スイッチギヤ20とは反対側に隣接するスイッチギヤ20(以下、第3スイッチギヤと表記)とを対象として発生盤特定処理を実行する。この発生盤特定処理において第1スイッチギヤ20が発生盤として特定された場合には、当該第1スイッチギヤ20が発生盤であるとして処理を終了する。一方、第3スイッチギヤ20が発生盤として特定された場合には、当該第3スイッチギヤ20と、第1スイッチギヤ20とは反対側に隣接するスイッチギヤ20とを対象として更に発生盤特定処理を実行する。多数のスイッチギヤ20が列盤されている場合であっても、このように発生盤特定処理を繰り返すことによって、当該スイッチギヤ20の中から最終的に1つのスイッチギヤ20を発生盤として特定することができる。
なお、例えば第1スイッチギヤ20と第2スイッチギヤ20とを対象として発生盤特定処理が実行された際にスペクトル信号が類似しないと判定され、かつ、第1スイッチギヤ20と第3スイッチギヤ20とを対象として発生盤特定処理が実行された際にスペクトル信号が類似しないと判定されたような場合には、第1スイッチギヤ20と、第2スイッチギヤ20及び第3スイッチギヤ20と更に隣接するスイッチギヤ20とを対象として発生盤特定処理が順次実行されるものとする。これによれば、列盤方向へ伝播するスペクトル信号(類似スペクトル)がいずれかのスイッチギヤ20において検出され、当該スペクトル信号に基づいて発生盤を特定することができる。
なお、本実施形態においては例えばセンサ21が部分放電に基づく接地電流(第1及び第2スイッチギヤ20の接地電流)を計測することを想定しているが、当該センサ21は、接地電流ではなく、部分放電に基づく接地電位または放射電磁波を計測するように構成されていてもよい。すなわち、本実施形態においてセンサ21から取得される電気信号(第1及び第2電気信号)は、スイッチギヤ20(第1及び第2スイッチギヤ20)の接地電流、接地電位及び放射電磁波のうちの少なくとも1つに基づく信号であればよい。
また、本実施形態においては、上記した図5において説明したように例えば1つのスイッチギヤ20(第1スイッチギヤ20)から部分放電が発生していると判定された場合に発生盤特定処理が実行されるものとして説明したが、例えば部分放電が発生していると判定されるか否かに係わらず、発生盤特定処理が実行される構成であってもよい。この場合には、図5の処理は実行されず、単に図6または図13に示す発生盤特定処理が独立して実行されればよい。
更に、図2に示すように複数のスイッチギヤ20の各々にセンサ21が取り付けられているものとして説明したが、本実施形態においては、電源電圧の周期に対するパルス信号の位相を用いる構成であるため、複数のスイッチギヤ20(に取り付けられたセンサ21)から同時に電気信号を取得する必要はない。このため、取り外し可能に構成されている1つのセンサ21を複数のスイッチギヤ20の各々に順次取り付ける(張り替える)構成としてもよい。すなわち、このような構成の場合には、例えば第1スイッチギヤ20取り付けられているセンサ21(第1センサ)を第2スイッチギヤ20のセンサ21(第2センサ)として使用することができる。これによれば、本実施形態における検査システムを実現するためのセンサ21の数を低減することができるため、コストを抑制することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。