JP2018185050A - 焼結軸受およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸受面の耐摩耗性と軸受強度とを両立した低コストの焼結軸受を提供する。【解決手段】焼結軸受1は、鉄、銅、銅よりも低融点の金属、および固体潤滑剤を主成分とする。この焼結軸受1は表面層S1とベース部S2とからなる。表面層S1を、その厚さ方向が薄くなるように配置された扁平銅粉を主体として形成し、ベース層S2のうち、鉄組織33およびこの鉄組織に接する銅組織31cを、鉄粉に銅粉を部分拡散させた部分拡散合金粉で形成する。【選択図】図8

Description

本発明は、焼結金属からなる焼結軸受、およびその製造方法に関する。
焼結軸受は、無数の内部気孔を有する多孔質体であり、通常は、内部気孔に潤滑流体(例えば、潤滑油)を含浸させた状態で使用される。この場合、焼結軸受およびその内周に挿入した軸の相対回転時には、焼結軸受の内部気孔に保持された潤滑油が温度上昇に伴って焼結軸受の内周面(軸受面)に滲み出す。そして、この滲み出した潤滑油によって、焼結軸受の軸受面と軸の外周面との間の軸受隙間に油膜が形成され、軸が相対回転自在に支持される。
例えば、下記の特許文献1には、鉄および銅を主成分とする銅鉄系の焼結軸受として、鉄粉に対し10質量%以上30質量%未満の銅を被覆してなり、粒度を80メッシュ以下とした銅被覆鉄粉を圧粉・焼結したものが記載されている。
特許第3613569号公報 実開平2−57251号公報 特開2012−26504号公報
しかしながら、特許文献1の構成では、鉄相(鉄組織)と銅相(銅組織)のネック強度が低いため、軸受面が早期に摩耗する等の点が問題となる。
特許文献1の焼結軸受を振動モータに使用した場合、長期間使用時に回転変動が大きくなることが明らかになった。これは鉄組織と銅組織間のネック強度不足により軸受面が早期に摩耗することによる。
また、自動車用スタータにおけるモータ軸を回転自在に支持する軸受としてすべり軸受を使用することが知られている(特許文献2)。自動車用スタータでは、エンジン始動時に必要な大トルクを得るため、減速比の大きい減速装置、例えば遊星歯車機構を介してモータ出力を減速させるのが通例である。この遊星歯車機構を構成する遊星ギヤの内周に銅系、鉄系、あるいは銅鉄系等の焼結軸受を圧入し、軸に対して遊星ギヤを回転自在に支持することが既に提案されている(特許文献3)。
ところで、エンジンの回転中はスタータが停止状態にあるため、軸と軸受との間に相対回転は生じない。従って、エンジンの回転中に焼結軸受の軸受面やこれに対向する軸の表面が摩耗するとは考え難い。しかしながら、本発明者らの検証によれば、長時間エンジンを駆動させた際に、焼結軸受の軸受面や軸の表面にフレッティング摩耗を生じることが判明した。これは、エンジンの回転中はスタータにエンジンの振動が伝わるため、この振動により軸受面と軸の表面とが接触して微少滑りを生じ、これを契機として軸受面や軸の表面が酸化し、表面組織が脱落し易くなるためと考えられる。この場合、鉄組織と銅組織間のネック強度が不足していれば、表面組織の脱落が助長されることになる。このフレッティング摩耗は、焼結軸受におけるFeの含有量が増すほど顕著であるため、鉄系の焼結軸受、あるいはFe量の多い銅鉄系の焼結軸受を使用する場合に特に問題となる。
銅系の焼結軸受を使用すれば、酸化を生じにくくなるので、フレッティング摩耗を防止することができる。しかしながら、銅系の焼結軸受は、銅自体が軟質であるために軸受強度が不足する傾向にある。そのため、エンジンの振動により軸が軸受面に接触した際に軸受面が変形し、あるいは焼結軸受をハウジングの内周に圧入した際に、圧入に伴う焼結軸受の縮径変形の影響が軸受面にもおよび、軸受面の精度が低下するおそれがある。
このように銅系の焼結軸受は、初期なじみ性や静粛性といった摺動特性の面では有利であるが、軸受強度の面で難がある。反対に、鉄系やFe量の多い銅鉄系の焼結軸受は、軸受強度の面では有利であるが、摺動特性の面で難がある(既に述べたように、使用条件によってはフレッティング摩耗も懸念される)。このように既存の焼結軸受では、摺動特性、軸受強度、耐摩耗性等を全て満足することは困難であり、焼結軸受の用途拡大のためにもこれらの要求特性を高次元で満足する焼結軸受の提供が望まれる。
そこで、本発明は、良好な摺動特性を有すると共に、軸受面の耐摩耗性と軸受強度とを両立でき、かつコスト低減を図ることができる焼結軸受およびその製造方法を提供することを目的する。
上記目的を達成するため、本発明にかかる焼結軸受は、鉄、銅、銅よりも低融点の金属、および固体潤滑剤を主成分とする焼結軸受であって、鉄組織および銅組織を含むベース部と、ベース部の表面を覆う表面層とを有し、表面層が、その厚さ方向が薄くなるように配置された扁平銅粉を主体として形成され、かつベース部が、鉄粉に銅粉を部分拡散させた部分拡散合金粉で形成された鉄組織および銅組織を有することを特徴とするものである。
扁平銅粉は原料粉の成形時に金型成形面に付着する性質を有し、そのため成形後の圧粉体は表層に多くの銅が含まれる。従って、焼結後の焼結体には、銅の含有量の多い表面層が形成される(好ましくは表面層の表面に面積比で60%以上の銅組織が形成される)。このように表面層での銅の含有量を多くすることで、初期なじみ性および静粛性の向上を図ることができ、黒鉛等の固体潤滑剤の作用と相俟って、摺動特性が良好なものとなる。また、軸に対する攻撃性も低くなるので、耐久寿命が向上する。加えて、酸化されにくい銅リッチの軸受面が形成されるため、軸受面のフレッティング摩耗を防止することができる。
この焼結軸受は低融点金属を含有するため、ベース部の鉄組織に接する銅組織は、基本的に銅粉に低融点金属を拡散させたものとなる。焼結時には低融点金属が銅の表面をぬらして液相焼結を進行させるため、特にベース部において金属粒子間の結合力を強化することができる。また、ベース部が基本的に鉄粉に銅粉の一部を拡散させた部分拡散合金粉で形成されるため、焼結後の銅組織(銅を主成分とする組織)と鉄組織(鉄を主成分とする組織)間で高いネック強度が得られる。以上から、軸受面からの銅組織や鉄組織の脱落を防止し、軸受面の耐摩耗性を高めることができる。また、軸受強度を高めることができ、そのためにハウジングの内周に焼結軸受を圧入固定した場合でも、軸受面がハウジングの内周面形状に倣って変形することがなく、軸受面の高精度化を図ることができる。また、軸受面の下地が強化されるため、振動等により軸が軸受面と接触した際の軸受面の変形を抑えることができる。従って、エンジンを始動するためのスタータ(スタータ内部に組み込まれる減速装置等も含まれる)での使用や携帯端末等に使用される振動モータでの使用に適合する焼結軸受を提供することができる。部分拡散合金粉における銅の割合は10wt%以上、30wt%以下とするのが好ましい。
扁平銅粉と低融点金属とを含む圧粉体を焼結すると、扁平銅粉の球状化が懸念される。本発明では、鉄粉に銅粉の一部を拡散させた部分拡散合金粉を使用しているため、焼結時に低融点金属の周囲には多数の銅粉が存在する。この場合、焼結の昇温に伴って溶融した低融点金属が扁平銅粉より先に部分拡散合金粉の銅粉に拡散するため、低融点金属粉が表面層の扁平銅粉に与える影響を抑えることができる。従って、表面層の扁平銅粉の球状化を防止することができ、表面層の表面における銅濃度を高めることができる。
ベース部の鉄組織および銅組織を、全て部分拡散合金粉で形成する他、ベース層の鉄組織および銅組織を、部分拡散合金粉と、単体鉄粉および単体銅粉のうち、どちらか一方または双方とで形成することができる。
扁平銅粉と低融点金属を組み合わせて使用する場合、球状化の影響を最小限にするためにも、扁平銅粉に対する低融点金属の含有量を10wt%よりも小さくすべきである、というのがこれまでの技術常識である。これに対し、本発明では、上記のとおり低融点金属による表面層の扁平銅粉の球状化を抑制することができるので、軸受中の低融点金属の含有量を増加させることができる。このように低融点金属の含有量が増えることで、金属粒子間の結合力がさらに強化されるので、軸受強度の向上に有効となる。具体的には、低融点金属を扁平銅粉に対する重量比で10wt%以上、30wt%以下含有させることができる。
鉄組織はフェライト相(だけ)で形成し、あるいはフェライト相と、フェライト相の粒界に存在するパーライト相とで形成することができる。前者であれば、表面層の摩耗により鉄組織を多く含むベース部が露出した際にも、鉄組織がフェライト相を主体とするため、銅の含有量が少なくても軸に対する攻撃性を弱くすることができ、耐久性が増す。後者であれば、硬質のパーライト相がフェライト相の耐摩耗性を補うため、軸受面の摩耗を抑制することができる。後者の場合、パーライトの存在割合が過剰になると、軸に対する攻撃性が増して軸が摩耗しやすくなる。かかる観点から、パーライト相はフェライト相の粒界に存在(点在)する程度とする(図9参照)。焼結軸受には、動粘度が30mm2/sec以上、200mm2/sec以下の潤滑油を含浸させるのが好ましい。
以上に述べた焼結軸受は、鉄粉に銅粉を部分拡散させた部分拡散合金粉と、扁平銅粉と、銅よりも低融点の金属粉と、固体潤滑剤粉とを混合し、この混合粉末で圧粉体を成形した後、圧粉体を銅の融点よりも低い温度で焼結することで製造することができる。
本発明によれば、良好な摺動特性を有すると共に、軸受面の耐摩耗性と軸受強度とを両立した低コストの焼結軸受を提供することが可能となる。
本発明にかかる焼結軸受の断面図である。 スタータの代表的構成を簡略化して示す断面図である。 部分拡散合金粉を模式的に示す拡大図である。 上段は扁平銅粉の側面図、下段は扁平銅粉の平面図である。 互いに付着した扁平銅粉と鱗状黒鉛を示す側面図である。 金型による圧粉体の成形工程を示す断面図である。 図6中の領域Qの拡大断面図である。 焼結軸受(図1の領域P)の半径方向断面における拡大図である。 図8の鉄組織およびその周辺組織を示す拡大図である。 扁平銅粉の球状化を説明する拡大図で、図10(a)が焼結前、図10(b)が焼結後を示す。 本願発明の焼結前の圧粉体組織を概念的に示す拡大図である。 本発明にかかる焼結軸受のその他の実施形態を示す断面図である。 本発明にかかる焼結軸受のその他の実施形態を示す断面図である。 振動モータの要部概略断面図である。 図14中に示すA−A線での断面図である。
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、焼結軸受1は、内周に軸受面1aを有する円筒状に形成される。この実施形態の焼結軸受1は多孔質の焼結体の内部空孔に潤滑油を含浸させて使用される(焼結含油軸受とも呼ばれる)。焼結軸受1の内周にステンレス鋼等からなる軸2を挿入し、その状態で軸を回転させ、あるいは軸受1を回転させると、焼結軸受1の無数の空孔に保持された潤滑油が温度上昇に伴って軸受面1aに滲み出す。この滲み出した潤滑油によって、軸の外周面と軸受面1aの間の軸受隙間に油膜が形成され、軸2が軸受1によって相対回転可能に支持される。
図2に、自動車用エンジンの始動のために用いられるスタータSTの代表的構成を簡略化して示す。図2に示すように示すように、スタータSTは、ハウジング3、モータ軸2aを有するモータ部4、出力軸2bを有する減速装置5、出力軸2cを有するオーバーランニングクラッチ6、ピニオンギヤ7、シフトレバー8、および電磁スイッチ9を主要な構成要素とする。シフトレバー8は支点Oを中心として回転可能であり、その先端はオーバーランニングクラッチ6の背後(入力側)に配置されている。オーバーランニングクラッチ6はワンウェイクラッチであり、その入力側には、減速装置5の出力軸2bがスプライン等を介して軸方向に摺動可能に連結されている。オーバーランニングクラッチ6の出力軸2cにピニオンギヤ7が取り付けられ、オーバーランニングクラッチ6は、その出力軸2cおよびピニオンギヤ7と一体となって軸方向に移動可能である。
イグニッションをオンにすると、モータ部4が駆動され、モータ軸2aのトルクが減速装置5、およびオーバーランニングクラッチ6を介してピニオンギヤ7に伝達される。また電磁スイッチ9がオンとなってシフトレバー8に図中の矢印方向の回転力が与えられ、オーバーランニングクラッチ6およびピニオンギヤ7が一体に前進する。これにより、クランクシャフトと結合されたリングギヤ10にピニオンギヤ7が噛み合い、モータ部4のトルクがクランクシャフトに伝達されてエンジンが始動する。エンジンの始動後は、電磁スイッチ9がオフとなり、オーバーランニングクラッチ6およびピニオンギヤ7が後退して、ピニオンギヤ7がリングギヤ10から離れる。エンジン始動直後のエンジントルクはオーバーランニングクラッチ6で遮断されるため、モータ部4に伝達されない。
本発明の焼結軸受1は、以上に述べたスタータSTのハウジング3等の内周に圧入固定され、スタータST内の各種軸2(2a〜2c)を支持する(図2ではモータ軸2aおよびオーバーランニングクラッチ6の出力軸2cを焼結軸受1で支持する場合を例示している)。詳細な図示は省略するが、減速装置5のギヤの支持にも焼結軸受1を使用することができる。例えば減速装置5を遊星歯車機構で構成する場合は、軸に対して回転する遊星ギヤの内周に本発明の焼結軸受1を圧入することで、遊星ギヤを軸に対して回転自在に支持することができる。
以上に述べた焼結軸受1は、各種粉末を混合した原料粉を金型に充填し、これを圧縮して圧粉体を成形した後、圧粉体を焼結することで形成される。
原料粉は、部分拡散合金粉、扁平銅粉、低融点金属粉、および固体潤滑剤粉を主成分とする混合粉末である。この混合粉末には、必要に応じて各種成形助剤、例えば離型性向上のための潤滑剤(金属セッケン等)が添加される。以下、焼結軸受1の第一の実施形態について、その原料粉末および製造手順を詳細に述べる。
[部分拡散合金粉]
部分拡散合金粉としては、図3に示すように、鉄粉12の表面に多数の銅粉13を部分拡散させたFe−Cu部分拡散合金粉11が使用される。部分拡散合金粉11の拡散部分はFe−Cu合金を形成しており、図3中の部分拡大図に示すように、合金部分は鉄原子12aと銅原子13aとが相互に結合し、配列した結晶構造を有する。部分拡散合金粉11としては平均粒径が75μm〜212μmのものを使用するのが好ましい。
上記の部分拡散合金粉11を構成する鉄粉12としては、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉等、公知の鉄粉を使用することができるが、本実施形態では還元鉄粉を使用する。還元鉄粉は、球形に近似した不規則形状で、かつ内部気孔を有する海綿状(多孔質状)であるから、海綿鉄粉とも称される。使用する鉄粉12は、平均粒径45μm〜150μmのものが好ましく、平均粒径63μm〜106μmのものがより一層好ましい。
なお、平均粒径は、粒子群にレーザ光を照射し、そこから発せられる回析・散乱光の強度分布パターンから計算によって粒度分布、さらには平均粒径を求めるレーザ回析散乱法(例えば株式会社島津製作所製のSALD31000を用いる)により測定することができる(以下に述べる各粉末の平均粒径も同様の方法で測定することができる)
また、部分拡散合金粉11を構成する銅粉13としては、汎用されている不規則形状や樹枝状の銅粉が広く使用可能であり、例えば、電解銅粉、アトマイズ銅粉等が用いられる。本実施形態では、表面に多数の凹凸を有すると共に、粒子全体として球形に近似した不規則形状をなし、成形性に優れたアトマイズ銅粉を使用している。使用する銅粉13は、鉄粉12よりも小粒径のものが使用され、具体的には平均粒径5μm以上45μm以下のものが使用される。なお、部分拡散合金粉11におけるCuの割合は10〜30wt%(好ましくは22〜26wt%)とする。
[扁平銅粉]
扁平銅粉は、水アトマイズ粉等からなる原料銅粉を搗砕(Stamping)することで扁平化させたものである。扁平銅粉としては、長さLが20μm〜80μm、厚さtが0.5μm〜1.5μm(アスペクト比L/t=13.3〜160)のものが主に用いられる。ここでいう「長さ」および「厚さ」は、図4に示すように個々の扁平銅粉15の幾何学的な最大寸法をいう。扁平銅粉の見かけ密度は1.0g/cm3以下とする。以上のサイズ、及び見かけ密度の扁平銅粉であれば、金型成形面に対する扁平銅粉の付着力が高まるため、金型成形面に多量の扁平銅粉を付着させることができる。
[流体潤滑剤]
金型成形面に扁平銅粉を付着させるため、扁平銅粉には予め流体潤滑剤を付着させておく。この流体潤滑剤は、原料粉末の金型充填前に扁平銅粉に付着させていればよく、好ましくは原料粉の混合前、さらに好ましくは原料銅粉を搗砕する段階で原料銅粉に付着させる。搗砕後、他の原料粉体と混合するまでの間に扁平銅粉に流体潤滑剤を供給し、攪拌する等の手段で扁平銅粉に流体潤滑剤を付着させてもよい。金型成形面上の扁平銅粉の付着量を確保するため、扁平銅粉に対する流体潤滑剤の配合割合は、重量比で0.1重量%以上とし、また扁平銅粉同士の付着による凝集を防止するため、配合割合は0.8重量%以下とする。望ましくは配合割合の下限は0.2重量%以上とし、上限は0.7重量%とする。流体潤滑剤としては、脂肪酸、特に直鎖飽和脂肪酸が好ましい。この種の脂肪酸は、Cn-12n-1COOHの一般式で表される。この脂肪酸としては、Cnが12〜22の範囲のもので、具体例として例えばステアリン酸を使用することができる。
[低融点金属粉]
低融点金属粉は、銅よりも低融点の金属粉であり、本発明では、融点が700℃以下の金属粉、例えば錫、亜鉛、リン等の粉末が使用される。この中でも焼結時の蒸散が少ない錫が好ましい。低融点金属粉の平均粒径は5μm〜45μmとし、部分拡散合金粉11の平均粒径よりも小さくするのが好ましい。これら低融点金属粉は銅に対して高いぬれ性を持つ。原料粉に低融点金属粉を配合することで、焼結時には先ず低融点金属粉が溶融して銅粉の表面をぬらし、銅に拡散して銅を溶融させる。溶融した銅と低融点金属の合金により液相焼結が進行し、鉄粒子同士の間、鉄粒子と銅粒子の間、および銅粒子同士の間の結合強度が強化される。
[固体潤滑剤粉]
固体潤滑剤粉は、軸2との摺動による金属接触時の摩擦低減のために添加され、例えば黒鉛が使用される。この時、黒鉛粉としては、扁平銅粉に対する付着性が得られるように、鱗状黒鉛粉を使用するのが望ましい。固体潤滑剤粉としては、黒鉛粉の他に二硫化モリブデン粉も使用することができる。二硫化モリブデン粉は層状結晶構造を有していて層状に剥離するため、鱗状黒鉛と同様に扁平銅粉に対する付着性が得られる。
[配合比]
上記各粉末を配合した原料粉では、部分拡散合金粉を75〜90wt%、扁平銅粉を8〜20wt%、低融点金属粉(例えば錫粉)を0.8〜6.0wt% 、固体潤滑剤粉(例えば黒鉛粉)を0.5〜2.0wt%配合するのが好ましい。この配合比としたのは以下の理由による。
本発明では、後述のように、原料粉の金型への充填時に扁平銅粉を金型に層状に付着させている。原料粉における扁平銅の配合割合が8重量%を下回ると、金型への扁平銅の付着量が不十分となって本願発明の作用効果が期待できない。また、扁平銅粉の金型への付着量は20wt%程度で飽和し、これ以上配合量を増しても、高コストの扁平銅粉を使用することによるコストアップが問題となる。低融点金属粉の割合が0.8wt%を下回ると軸受の強度を確保できず、6.0wt%を超えると、扁平銅粉の球形化の影響が無視できなくなる。また、固体潤滑剤粉の割合が0.5重量%を下回ると、軸受面における摩擦低減効果が得られず、2.0wt%を超えると強度低下等を招く。
[混合]
以上に述べた各粉末の混合は、2回に分けて行うのが望ましい。先ず、一次混合として、鱗状黒鉛粉および予め流体潤滑剤を付着させた扁平銅粉を公知の混合機で混合する。次いで、二次混合として、一次混合粉に部分拡散合金粉、および低融点金属粉を添加して混合し、さらに必要に応じて黒鉛粉も添加・混合する。扁平銅粉は、各種原料粉末の中でも見かけ密度が低いため、原料粉中に均一に分散させるのが難しいが、一次混合で見かけ密度が同レベルの扁平銅粉と黒鉛粉とを予め混合しておくと、扁平銅粉に付着した流体潤滑剤等により、図5に示すように、扁平銅粉15と黒鉛粉14が互いに付着して層状に重なり、扁平銅粉の見かけ密度が高まる。そのため、二次混合時に原料粉末中に扁平銅粉を均一に分散させることが可能となる。一次混合時に、別途潤滑剤を添加すれば、扁平銅粉と黒鉛粉の付着がさらに促進されるため、二次混合時に扁平銅粉をより均一に分散させることが可能となる。ここで添加する潤滑剤としては、上記流体潤滑剤と同種または異種の流体状潤滑剤の他、粉末状のものも使用可能である。例えば上述した金属セッケン等の成形助剤は一般に粉状でありながら、ある程度の付着力を有するので、扁平銅粉と黒鉛粉の付着より促進させることができる。
図5に示す扁平銅粉15と鱗状黒鉛粉14との付着状態は、二次混合後もある程度保持されるため、原料粉末を金型に充填した際には、金型表面に扁平銅粉と共に多くの黒鉛粉が付着することとなる。
[成形]
二次混合後の原料粉末は成形機の金型20に供給される。図6に示すように、金型20は、コア21、ダイ22、上パンチ23、および下パンチ24からなり、これらによって区画されたキャビティに原料粉末が充填される。上下パンチ23,24を接近させて原料粉体を圧縮すると、原料粉末が、コア21の外周面、ダイ22の内周面、上パンチ23の端面、および下パンチ24の端面からなる成形面によって成形され、円筒状の圧粉体25が得られる。
原料粉体における金属粉の中では、扁平銅粉の見かけ密度が最も小さい。また、扁平銅粉は、上記長さLおよび厚さtを有する箔状であり、単位重量あたりの幅広面の面積が大きい。そのため、扁平銅粉15は、その表面に付着した流体潤滑剤による付着力、さらにはクーロン力等の影響を受けやすくなり、原料粉の金型20への充填後は、図7(図6中の領域Qの拡大図)に拡大して示すように、扁平銅粉15がその幅広面を金型20の成形面20aに向け、かつ複数層(1層〜3層程度)重なった層状態となって成形面20aの全域に付着する。この際、扁平銅粉15に付着した鱗状黒鉛も扁平銅粉15に付随して金型の成形面20aに付着する(図7では黒鉛の図示を省略)。その一方で、扁平銅15の層状組織の内側領域(キャビティ中心側となる領域)では、部分拡散合金粉11、扁平銅粉15、低融点金属粉16、および黒鉛粉の分散状態が全体で均一化している。成形後の圧粉体25は、このような各粉末の分布状態をほぼそのまま保持している。
[焼結]
その後、圧粉体25は焼結炉にて焼結される。本実施形態では、鉄組織が、フェライト相とパーライト相の二相組織となるように焼結条件が決定される。このように鉄組織をフェライト相とパーライト相の二相組織とすれば、硬質のパーライト相が耐摩耗性の向上に寄与し、高面圧下での軸受面の摩耗を抑制して軸受寿命を向上させることができる。
炭素が拡散することにより、パーライト(γFe)の存在割合が過剰となり、フェライト(αFe)と同等レベル以上の割合になると、パーライトによる軸に対する攻撃性が著しく増して軸が摩耗しやすくなる。これを防止するため、パーライト相(γFe)はフェライト相(αFe)の粒界に存在(点在)する程度に抑える(図9参照)。ここでいう「粒界」は、粉末粒子間に形成される粒界の他、粉末粒子中に形成される結晶粒界18の双方を意味する。このように鉄組織をフェライト相(αFe)とパーライト相(γFe)の二相組織で形成する場合、鉄組織に占めるフェライト相(αFe)およびパーライト相(γFe)の割合は、後述するベース部S2の任意断面における面積比で、それぞれ、80〜95%および5〜20%(αFe:γFe=80〜95%:5〜20%)程度とするのが望ましい。これにより、軸2の摩耗抑制と軸受面1aの耐摩耗性向上とを両立させることができる。
パーライトの成長速度は、主に焼結温度に依存する。従って、上記の態様でパーライト相をフェライト相の粒界に存在させるためには、焼結温度(炉内雰囲気温度)を820℃〜900℃程度とし、かつ炉内雰囲気として炭素を含むガス、例えば天然ガスや吸熱型ガス(RXガス)を用いて焼結する。これにより、焼結時にはガスに含まれる炭素が鉄に拡散し、パーライト相(γFe)を形成することができる。なお、900℃を越える温度で焼結すると、黒鉛粉中の炭素が鉄と反応し、パーライト相が必要以上に増えるので好ましくない。焼結に伴い、上記流体潤滑剤、その他の潤滑剤、各種成形助剤は焼結体内部で燃焼し、あるいは焼結体内部からベーパする。
以上に述べた焼結工程を経ることで、多孔質の焼結体が得られる。この焼結体にサイジングを施し、さらに真空含浸等の手法で潤滑油あるいは液状グリースを含浸させることにより、図1に示す焼結軸受1(焼結含油軸受)が完成する。焼結体に含浸させた潤滑油は、焼結組織の粒子間に形成された気孔だけでなく、部分拡散合金粉の還元鉄粉が有する気孔にも保持される。焼結体に含浸させる潤滑油としては、動粘度が30mm2/sec以上、200mm2/sec以下のものが好ましい。なお、用途によっては、潤滑油の含浸工程を省略し、無給油下で使用する焼結軸受1とすることもできる。
以上の製作工程を経た焼結軸受1の表面付近(図1中の領域P)のミクロ組織を図8に概略図示する。
図8に示すように、本発明の焼結軸受1では、金型成形面20aに扁平銅粉15を層状に付着させた状態で圧粉体25が成形され(図7参照)、この扁平銅粉15が焼結されていることに由来して、軸受1の軸受面1aを含む表面全体に銅濃度が他よりも高い表面層S1が形成される。しかも、扁平銅粉15の幅広面が成形面20aに付着していたこともあり、表面層S1の銅組織31aの多くが表面層S1の厚さ方向を薄くした扁平状になる。表面層S1の厚さは金型成形面20aに層状に付着した扁平銅粉層の厚さに相当し、概ね1μm〜6μm程度である。表面層S1の表面は、銅組織31aの他に遊離黒鉛32(黒塗りで示す)を主体として形成され、残りが気孔の開口部や後述の鉄組織となる。この中では、銅組織31aの面積が最大であり、具体的には表面の60%以上が銅組織31aとなる。
一方、表面層S1で覆われた内側のベース部S2は、二種類の銅組織(31b,31c)、鉄組織33、遊離黒鉛32、および気孔が形成される。一方の銅組織31b(第一の銅組織)は圧粉体25の内部に含まれていた扁平銅粉15に由来して形成されたもので、扁平銅粉に対応した扁平形状をなしている。他方の銅組織31c(第二の銅組織)は、部分拡散合金粉11を構成する銅粉13に低融点金属が拡散して形成されたものであり、鉄組織33と接して形成されている。この第二の銅組織31cは、後述のように、粒子同士の結合力を高める役割を担う。
図9は、図8に示す焼結後の鉄組織33およびその周辺組織を拡大して示すものである。図9に示すように、低融点金属としての錫は、焼結時に最初に溶融して部分拡散合金粉11(図3参照)を構成する銅粉13に拡散し、青銅相16(Cu−Sn)を形成する。この青銅相16により液相焼結が進行し、鉄粒子同士、鉄粒子と銅粒子、あるいは銅粒子同士が強固に結合される。また、個々の部分拡散合金粉11のうち、銅粉13の一部が拡散してFe−Cu合金が形成された部分にも溶融した錫が拡散してFe−Cu−Sn合金(合金相17)が形成される。青銅相16と合金相17を合わせたものが第二の銅組織31cとなる。このように第二の銅組織31cは、その一部が鉄組織33に拡散しているため、第二の銅組織31cと鉄組織33の間で高いネック強度を得ることができる。なお、図9においては、フェライト相(αFe)やパーライト相(γFe)などを色の濃淡で表現している。具体的には、フェライト相(αFe)→青銅相16→合金相17(Fe−Cu−Sn合金)→パーライト相(γFe)の順に色を濃くしている。
部分拡散合金粉11に代えて通常の鉄粉19を使用した場合、図10(a)に示すように、低融点金属粉16の一部が扁平銅粉15と通常鉄粉19の間に存在することになる。この状態で焼結すると、溶融した低融点金属粉16の表面張力によって扁平銅粉15が低融点金属粉16に引き込まれ、低融点金属粉16を核として丸くなる、いわゆる扁平銅粉15の球状化の問題を生じる。扁平銅粉15の球状化を放置すると、表面層S1における銅組織31a(図9参照)の面積が減少し、軸受面1aの摺動性に大きな影響を与える。
これに対し、本発明では、図11に示すように、原料粉末として鉄粉12の略全周が銅粉13で覆われた部分拡散合金粉11を使用しているため、低融点金属粉16の周辺には多数の銅粉13が存在することになる。この場合、焼結に伴って溶融した低融点金属粉16が扁平銅粉15より先に部分拡散合金粉11の銅粉13に拡散する。特に焼結の初期段階では、扁平銅粉15の表面に流体潤滑剤が残存しているため、この現象が助長される。これにより、低融点金属粉16が表面層S1の扁平銅粉15に与える影響を抑えることができる(仮に扁平銅粉15の直下に低融点金属粉16が存在していたとしても、扁平銅粉15に作用する表面張力が減少する)。従って、表面層における扁平銅粉15の球状化を抑制することができ、軸受面1aをはじめとする軸受表面における銅組織の割合を高め、良好な摺動特性を得ることが可能となる。以上の特徴を活かすため、原料粉末には極力単体の鉄粉を添加しないのが好ましい。すなわち、鉄組織33は全て部分拡散合金粉由来のものとするのが好ましい。
このように本発明では、表面層S1における扁平銅粉15の球状化を回避できるので、軸受における低融点金属粉16の配合割合を増やすことができる。すなわち、これまでの技術常識では、扁平銅粉15の球状化の影響を抑えるために、扁平銅粉15に対する低融点金属の配合配合(重量比)は10wt%未満に抑えるべきとされているが、本発明によれば、この割合を10wt%〜30wt%にまで高めることができる。このように低融点金属の配合割合を増すことで、液相焼結による金属粒子間の結合を促進させる効果がさらに高まるため、焼結軸受1の高強度化により有効となる。
以上の構成から、軸受面1aを含む表面層S1の表面全体で、鉄組織に対する銅組織の面積比を60%以上にすることができ、酸化されにくい銅リッチの軸受面1aを安定的に得ることができる。また、表面層S1が摩耗したとしても、部分拡散合金粉11に付着した銅粉13に由来する銅組織31cが軸受面1aに現れる。従って、焼結軸受1をスタータSTに使用した場合でも、軸受面1aのフレッティング摩耗を防止することが可能となる。また、初期なじみ性および静粛性をはじめとする軸受面1aの摺動特性も向上させることができる。
その一方で、表面層S1の内側のベース部S2は、表面層S1に比べて銅の含有量が少なく、かつ鉄の含有量が多い硬質組織となっている。具体的には、ベース部S2ではFeの含有量が最大であり、Cuの含有量は20〜40wt%となる。このように軸受1のほとんどの部分を占めるベース部S2で鉄の含有量が多くなるため、軸受1全体での銅の使用量を削減することができ、低コスト化を達成することができる。また、鉄の含有量が多いために軸受全体の強度を高めることができる。
特に本発明では、銅よりも低融点の金属を所定量配合し、その液相焼結により金属粒子間(鉄粒子間、鉄粒子と銅粒子、あるいは銅粒子同士)の結合力が向上しており、しかも部分拡散合金粉11に由来する銅組織31cと鉄組織間33の間で高いネック強度が得られる。以上から、軸受面1aからの銅組織や鉄組織の脱落を防止し、軸受面の耐摩耗性を向上させることができる。また、軸受強度を高めることができ、具体的には、既存の銅鉄系焼結体に比べて2倍以上の圧環強度(300MPa以上)を達成することが可能となる。そのため、図2に示すようにハウジング3の内周に焼結軸受1を圧入固定した場合でも、軸受面1aがハウジング3の内周面形状に倣って変形することがなく、取り付け後も軸受面1aの真円度や円筒度等を安定的に維持することができる。従って、ハウジング3の内周に焼結軸受1を圧入固定した後、軸受面1aを適正形状・精度に仕上げるための加工(例えばサイジング)を追加的に実行することなく、所望の真円度(例えば3μm以下の真円度)を確保することができる。また、エンジンの振動により、軸2が軸受面1aに接触した際にも軸受面1aの変形を防止することができる。
加えて、軸受面1aを含む表面全体に遊離黒鉛が析出しており、しかも扁平銅粉3に付随する形で金型成形面20aに鱗状黒鉛を付着させているため、表面層S1における黒鉛の含有率がベース部S2での黒鉛の含有率よりも大きくなる。そのため、軸受面1aを低摩擦化することができ、軸受1の耐久性を増すことができる。
[金属組織の他の形態]
以上に述べた第一の実施形態では、鉄組織をフェライト相とパーライト相の二層組織としているが、パーライト相(γFe)は硬い組織(HV300以上)であって、相手材に対する攻撃性が強いため、軸受の使用条件によっては、軸2の摩耗を進行させるおそれがある。これを防止するため、鉄組織33の全てをフェライト相(αFe)で形成することもできる。
このように鉄組織33の全てをフェライト相で形成するため、焼結雰囲気は、炭素を含有しないガス雰囲気(水素ガス、窒素ガス、アルゴンガス等)あるいは真空とする。これらの対策により、原料粉では炭素と鉄の反応が生じず、従って焼結後の鉄組織は全て軟らかい(HV200以下)フェライト相(αFe)となる。かかる構成であれば、仮に表面層S1が摩耗してベース部S2の鉄組織33が表面に現れていても、軸受面1aを軟質化することができ、軸2に対する攻撃性を弱めることができる。これ以外の構成、例えば原料粉体の組成や製造手順等は、第一の実施形態と共通であるので、重複説明を省略する。
[焼結軸受の他の構成]
図12に示すように、表面層S1とベース部S2を有する焼結軸受1の円筒面状の軸受面1aの軸方向両側に、開口側が大径となるテーパ面1b1,1b2を形成することもできる。このように焼結軸受1の軸方向両端にテーパ面1b1,1b2を形成することで、軸2にたわみが生じた場合でも軸2の外周面が焼結軸受1の端部に局所的に当接することを防止でき、応力集中による軸受面1aの局部摩耗や軸受強度の低下、異常音の発生等を防止することができる。
以上の効果を得るため、両テーパ面1b1,1b2の各軸方向長さb1,b2(何れも軸方向端部のチャンファは含まない)に対する半径方向ドロップ量の最大値γの比X(X=γ/b1もしくはX=γ/b2)は、1.75×10-3≦X≦5.2×10-2の範囲内(テーパ面の傾斜角が0.1°〜3°となる範囲内)に設定するのが好ましい。なお、この場合、焼結軸受1の軸方向全長aに対する両テーパ面1b1,1b2の軸方向長さの和の比は、0.2≦(b1+b2)/a≦0.8の範囲に設定するのが好ましい。図12に示す焼結軸受1は、例えば自動車のパワーウィンド用駆動機構やパワーシート用駆動機構に用いることができる。
図13に示すように、焼結軸受1の円筒面状の軸受面1aの軸方向一方側にだけ、開口側が大径となるテーパ面1b1を形成することもでき、これによっても図12に示す実施形態と同様の作用効果を得ることができる。図12に示す実施形態と同様に、テーパ面1b1に対する半径方向ドロップ量の最大値γの比X(X=γ/b1)は、1.75×10-3≦X≦5.2×10-2の範囲内(テーパ面の傾斜角が0.1°〜3°となる範囲内)に設定するのが好ましい。なお、この場合、焼結軸受1の軸方向全長aに対するテーパ面1b1の軸方向長さの比は、0.2≦b/a≦0.8の範囲に設定するのが好ましい。図13に示す焼結軸受1は、例えば自動車のパワーウィンド用駆動機構やパワーシート用駆動機構に用いることができる。
[焼結軸受の他の用途]
図1に示す焼結軸受1は、携帯電話やスマートフォンをはじめとする携帯端末等において、電話の着信やメールの受信等を報知するバイブレータとして機能する振動モータに使用することができる。この振動モータは、図14に示すように、軸2の一端に取り付けた錘(偏芯錘)Wをモータ部4で回転させることにより、振動モータのハウジング3、さらには携帯端末全体に振動を発生させる構成になっている。図14は、二つの焼結軸受1(101,102)を使用した場合の振動モータの要部を概念的に示すもので、図示例ではモータ部4の軸方向両側に突出させた軸2の両側を焼結軸受1(101,102)により回転自在に支持している。錘W側の焼結軸受101は、錘Wとモータ部4の間に配置されており、この錘W側の焼結軸受101は、錘Wと反対側の焼結軸受102よりも厚肉でかつ大径に形成されている。二つの焼結軸受1は、何れも内周に軸受面1aを有し、例えば金属材料で形成されたハウジング3の内周に圧入等の手段で固定されている。
この振動モータにおいて、軸2は10000rpm以上の回転数で駆動される。軸2が回転すると、錘Wの影響を受けて軸2が軸受面1aの全面に沿って振れ回りながら回転する。通常用途の焼結軸受では、軸2は重力方向に偏芯した状態を保持して回転するが、振動モータ用の焼結軸受1では、図15に示すように、軸受中心Obに対して軸中心Oaを重力方向だけでなくあらゆる方向に偏芯させた状態で軸2が回転することになる。
このように振動モータ用の軸受では、軸2が軸受面全面にわたって振れ回り、さらにアンバランス荷重により軸受面が軸によって頻繁に叩かれる(軸受面に対して軸が頻繁に摺動接触する)ため、軸受面が通常用途の焼結軸受よりも摩耗し易くなる。また、焼結軸受をハウジング3内周に圧入した際に、軸受面がハウジングの内周面形状に倣って僅かでも変形すると、軸2の回転精度に大きな影響を与えることになる。本発明の焼結軸受1を振動モータに使用することで、これらの問題を解消することができる。
なお、振動モータ用の焼結軸受1では、部分拡散合金粉として、平均粒度145メッシュ以下(平均粒径106μm以下)の粉末を使用するのが好ましい。これにより、軸受の多孔質組織を均一化して粗大気孔の生成を防止することができるので、軸受1を高密度化し、振動モータ用軸受としての使用にも耐え得る圧環強度や耐摩耗性を得ることが可能となる。圧粉工程における粉末充填性が低下するのを防止するため、平均粒度350メッシュ(平均粒径45μm)以下の部分拡散合金粉の割合は、25質量%未満とするのが好ましい。また、例えば振動モータ用の焼結軸受1として、図12あるいは図13の何れか一方に記載した焼結軸受1を用いてもよい。この場合、両図におけるテーパ面の軸方向長さに対する半径方向ドロップ量の最大値γの比Xは、上記と同様の範囲に設定することができる。
[その他の実施形態]
これまでは、焼結軸受1の鉄組織や銅組織の全てを部分拡散合金粉だけで形成する場合を説明したが、原料粉末に単体鉄粉および単体銅粉のうちどちらか一方または双方を添加し、ベース部S2における鉄組織や銅組織の一部を単体鉄粉や単体銅粉で形成することもできる。この場合、最低限の耐摩耗性、強度、および摺動特性を確保するため、原料粉末における部分拡散合金粉の割合は50質量%以上にするのが好ましい。この場合の原料粉末には、扁平銅粉を8〜20wt%、低融点金属粉(例えば錫粉)を0.8〜6.0wt%、固体潤滑剤粉(例えば黒鉛粉)を0.5〜2.0wt%配合し、残部を単体鉄粉もしくは単体銅粉(あるいは双方の単体粉)とする。
かかる構成では、単体鉄粉や単体銅粉の配合量を変更することにより、部分拡散合金粉を使用することで得られる耐摩耗性、高強度、および良好な摺動特性を維持しつつ、軸受特性を調整することが可能となる。例えば単体鉄粉を添加すれば、部分拡散合金粉の使用量減による低コスト化を図りつつ軸受の耐摩耗性や強度を高めることができ、単体銅粉を添加すれば摺動特性をさらに改善することができる。そのため、各種用途に適合した焼結軸受の開発コストを低廉化することができ、焼結軸受の多品種少量生産にも対応可能となる。
なお、以上の説明では、本発明を、軸受面1aを真円形状とした真円軸受に適用する場合を例示したが、本発明は真円軸受に限らず、軸受面1aや軸2の外周面にヘリングボーン溝、スパイラル溝等の動圧発生部を設けた流体動圧軸受にも同様に適用することができる。また、本実施形態では、軸2を回転させる場合を説明したが、これとは逆に軸受1を回転させる用途にも使用することができる。さらに、用途として自動車用スタータや携帯端末に使用される振動モータ等を例示したが、本発明にかかる焼結軸受1の用途はこれらに限定されず、例示した以外の他の用途にも広く適用することが可能である。
また、圧粉体25を圧縮成形する際には、成形金型20および原料粉末の少なくとも一方を加熱した状態で圧粉体25を圧縮成形する、いわゆる温間成形法や、成形金型20の成形面に潤滑剤を塗布した状態で圧粉体25を圧縮成形する金型潤滑成形法を採用しても良い。このような方法を採用すれば、圧粉体25を一層精度良く成形することができる。
1 軸受
1a 軸受面
2 軸
3 ハウジング
4 モータ
11 部分拡散合金粉
12 鉄粉
13 銅粉
14 黒鉛粉
15 扁平銅粉
16 青銅層
17 合金相
25 圧粉体
31a 表面層の銅組織
31b ベース部の第一の銅組織
31c ベース部の第二の銅組織
32 黒鉛(固体潤滑剤)
33 鉄組織
S1 表面層
S2 ベース部
ST スタータ

Claims (14)

  1. 鉄、銅、銅よりも低融点の金属、および固体潤滑剤を主成分とする焼結軸受であって、
    鉄組織および銅組織を含むベース部と、ベース部の表面を覆う表面層とを有し、表面層が、その厚さ方向が薄くなるように配置された扁平銅粉を主体として形成され、かつベース層が、鉄粉に銅粉を部分拡散させた部分拡散合金粉で形成された鉄組織および銅組織を有することを特徴とする焼結軸受。
  2. 前記表面層の表面に面積比で60%以上の銅組織を形成した請求項1記載の焼結軸受。
  3. 前記ベース部の鉄組織および銅組織が、全て前記部分拡散合金粉で形成されている請求項1または2記載の焼結軸受。
  4. 前記ベース部の鉄組織および銅組織が、前記部分拡散合金粉と、単体鉄粉および単体銅粉のうち、どちらか一方または双方とで形成されている請求項1または2記載の焼結軸受。
  5. 前記ベース部の鉄組織に接する銅組織を、銅粉に前記低融点金属を拡散させたものとした請求項1〜4何れか1項に記載の焼結軸受。
  6. 前記低融点金属を、前記扁平銅粉に対して重量比で10wt%以上、30wt%以下含有する請求項1〜5何れか1項に記載の焼結軸受。
  7. 前記固体潤滑剤として黒鉛を含有する請求項1〜6何れか1項に記載の焼結軸受。
  8. 前記鉄組織をフェライト相で形成した請求項1〜7何れか1項に記載の焼結軸受。
  9. 前記鉄組織を、フェライト相と、フェライト相の粒界に存在するパーライト相とで形成した請求項1〜7何れか1項に記載の焼結軸受。
  10. 前記部分拡散合金粉における銅の割合が10wt%以上、30wt%以下である請求項1〜9何れか1項に記載の焼結軸受。
  11. 動粘度が30mm2/sec以上、200mm2/sec以下の潤滑油を含浸させた請求項1〜10何れか1項に記載の焼結軸受。
  12. エンジンを始動するためのスタータに使用される請求項1〜11何れか1項に記載の焼結軸受。
  13. 振動モータに使用される請求項1〜11何れか1項に記載の焼結軸受。
  14. 鉄粉に銅粉を部分拡散させた部分拡散合金粉と、扁平銅粉と、銅よりも低融点の金属粉と、固体潤滑剤粉とを混合し、この混合粉末で圧粉体を成形した後、圧粉体を銅の融点よりも低い温度で焼結することを特徴とする焼結軸受の製造方法。
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