JP2010276051A - 焼結含油軸受およびこの軸受に含浸して使用される潤滑流体 - Google Patents

焼結含油軸受およびこの軸受に含浸して使用される潤滑流体 Download PDF

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Abstract

【課題】高温腐食環境下においても優れた耐食性を有する焼結含油軸受を提供する。
【解決手段】焼結含油軸受11は、ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織とを有する焼結金属で形成され、その内部気孔には所定の組成を有する潤滑油を含浸してなる。ここで、潤滑油はエステル系合成油を基油とし、かつ、少なくとも防錆剤としてのスルホン酸金属塩を含有する。
【選択図】図1

Description

本発明は焼結含油軸受およびこの軸受に含浸して使用される潤滑流体に関し、特に高温かつ腐食性の高い環境下で使用可能な焼結含油軸受とこの軸受に含浸して使用される潤滑流体に関する。
上記高温腐食環境下に適した軸受として、例えば下記特許文献1に記載の焼結金属軸受が知られている。すなわち、この焼結金属軸受は、ステンレス鋼粉末に、硫化マンガン粉末を配合して焼結した焼結金属からなるもので、耐酸化性に優れたステンレス鋼粉末と、このステンレス鋼中の酸化クロムによる不動態膜の形成を阻害しない硫化マンガン粉末との組合せにより、高い耐酸化性と良好な摺動特性(低トルク性)を兼備するものである。
特開2006−242224号公報
このように、高温雰囲気下において高い耐酸化性を要求される用途としては、例えば自動車エンジンの排気ガス流量制御機構、より具体的には、EGR(排気ガス再循環利用装置)バルブや、排気ブレーキバタフライバルブなどの弁軸を支持する軸受などが挙げられるが、最近では、これまで以上に高い耐食性を備えた焼結金属軸受の出現が期待されている。
すなわち、近年のCO2削減等による環境負荷低減を目的として、従来の石油等の化石燃料に代えてバイオエタノールの如きバイオガソリンが開発され、また、実際に自動車用エンジンオイルとして導入が開始されつつあるが、この種のガソリンは従来の化石燃料系ガソリンに比べて有機酸等の不純物の割合が高く、その排気ガス中の不純物濃度も高い。そのため、このような不純物を多く含むガソリンを使用したエンジンの排気ガス流量制御機構には、従来の耐酸化性に加えて耐酸性(酸腐食に対する耐久性)を併せ持つ軸受が要求される。
また、上述の如き機構においては、排気ガスが非常に高温となることから、このガスに曝される軸受も相当温度にまで加熱される。この際、上記特許文献1に記載の焼結金属軸受を構成するステンレス鋼は、他の軸受用金属(青銅など)に比べて熱伝導性に劣る面がある。そのため、排気ガスに曝された軸受が相当温度にまで加熱され、腐食が早期に進行する可能性も考えられる。
以上の事情に鑑み、高温腐食環境下においても優れた耐食性を有する焼結含油軸受を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
本発明は、前記課題の解決を図るためになされたものである。すなわち、本発明に係る焼結含油軸受は、ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織とを有し、その内部気孔に潤滑流体が含浸されている焼結含油軸受において、潤滑流体はエステル系合成油を基油として有し、かつ、少なくともスルホン酸金属塩を防錆剤として含有している点をもって特徴づけられる。
このように、上記組成に特徴を有する潤滑流体を含浸した焼結含油軸受は、以下に述べる本発明者らの知見に基づき創作されたものであって、下記の如き作用効果を奏する。すなわち、基油としてのエステル系合成油は焼結金属軸受中に含まれる硫黄成分との相性がよく、また、防錆剤に含まれるスルホン酸基は上記軸受中の主成分となる鉄に付着しやすい性質を有する。そのため、上記潤滑流体がステンレス鋼組織と硫化マンガンとからなる焼結金属軸受の表面に良好に密着して、防錆剤(スルホン酸金属塩)による防錆膜を容易に形成することができ、防錆剤による高い耐酸腐食性を焼結金属軸受に付与することができる。以上、これらエステル系合成油とスルホン酸金属塩との組合せにより、ステンレス鋼および硫化マンガンからなる焼結金属軸受の有する耐酸化性と低トルク性を維持しつつも、優れた耐酸腐食性を付与して当該軸受の長寿命化を図ることが可能となる。
また、上記潤滑剤による追加的作用として、ステンレス鋼は他の金属に比べて熱伝導率が非常に低い特性を有するが、本発明に係る防錆剤には金属成分が含まれるため、潤滑流体の熱伝導性が向上する。そのため、これを含浸させたステンレス鋼製の焼結含油軸受の熱伝導性を改善して放熱性を高めることができる。従って、焼結含油軸受の加熱を可及的に防ぎ、これによっても腐食の抑制を図ることができる。
基油としては、エステル系合成油である限り、種々のものを使用できるが、高温用途であること又はコスト面と併せて考慮すると、ポリオールエステルが好適である。もちろん、これを単独種で使用する場合に限る必要はなく、例えばポリオールエステルにポリαオレフィンを混合したもの(2種以上の混合油)を基油として使用しても構わない。
防錆剤については、スルホン酸金属塩である限りにおいて種々のものを使用でき、例えば亜鉛もしくはカルシウムを金属成分として含むものが好適に使用可能である。スルホン酸金属塩の亜鉛もしくはカルシウムが焼結軸受においては良好な錆止め効果を有するためである。また、防錆剤を潤滑剤に添加するとその潤滑性能が低下することが多いが、スルホン酸金属塩(スルホン酸亜鉛塩)によれば、スルホン酸亜鉛塩に含まれる亜鉛が焼結金属に対して良好な潤滑特性を示す。そのため、焼結金属軸受の摺動特性が低下するおそれもない。また、スルホン酸カルシウム塩は耐摩耗性にも優れた物質であるため、これを防錆剤として使用することで、焼結金属軸受の耐摩耗性を向上させることも可能となる。なお、基油と同様、スルホン酸金属塩(亜鉛塩もしくはカルシウム塩)はこれ単独で使用するほか、他のスルホン酸金属塩あるいはカルボン酸化合物(カルボン酸やカルボン酸塩、カルボン酸エステルなどを含む)と組合せて使用することも可能である。
また、上記潤滑流体は、さらに有機金属化合物を耐摩耗剤として含有しているものであってもよい。この種の軸受においては、運転開始時の接触摺動等によりステンレス鋼組織の表層が摩耗することでステンレス鋼による腐食抑制力が低減する場合が起こり得るところ、上記のように有機金属化合物を耐摩耗剤として添加することで、摺動摩耗に伴う腐食抑制力の低下を防止して、防錆剤による高い耐酸腐食性を維持することができる。また、本発明に係る防錆剤(スルホン酸金属塩)であれば、有機金属化合物による摩耗抑制効果を阻害することもないため、好ましい組合せといえる。また、上記耐摩耗剤であれば金属成分が含まれるため、潤滑流体の熱伝導性をさらに高めることができる。
耐摩耗剤としての有機金属化合物には種々のものを使用でき、例えば亜鉛もしくはモリブデンを金属成分として含むものが好適に使用可能である。中でも亜鉛はステンレス鋼中のクロムに対する相性に優れていることから、有機亜鉛化合物を耐摩耗剤に用いることで、軸受表面への密着性を高めて、磨耗抑制効果やトルク低減効果をさらに高めることができる。もちろん、ステンレス鋼に対する摩耗抑制効果を発揮し得る限りにおいて有機金属化合物以外の耐摩耗剤を使用することもでき、例えば亜リン酸エステルなどのリン系化合物を例として挙げることができる。
また、上記構成の潤滑流体は、さらに酸化防止剤としてアミン系酸化防止剤又はフェノール系酸化防止剤を含有しているものであってもよい。このような酸化防止剤を添加することで、潤滑流体の酸化を可及的に防止もしくは抑制して、高温環境下における軸受の長寿命化を図ることができる。
また、上記構成の潤滑流体は、さらに粘度指数向上剤としてポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリブデンの何れかを含有しているものであってもよい。このように粘度指数向上剤を添加することで、高温時においても潤滑流体の粘度の低下を抑えて、低トルク特性を維持することができる。また、潤滑流体の漏れ出しを可及的に抑制でき、これによっても低トルク特性を維持することができる。
このように、潤滑流体の粘度特性を使用環境等に合わせて調整することは重要であり、例えば、高温環境下で焼結含油軸受に使用する点を考慮すると、潤滑流体の40℃における動粘度が35mm2/s以上でかつ400mm2/s以下となるように調整するのが好ましい。たとえ粘度指数向上剤を添加した場合でも、潤滑流体の動粘度が35mm2/sを下回るようだと、油膜が形成し難いなど、そもそも焼結含油軸受用の潤滑流体として十分に機能しないおそれがあるためである。また、動粘度が400mm2/sを超えるようだと、潤滑流体の含浸が十分になされないおそれが生じるためである。もちろん、高温環境下での使用を考慮すれば、潤滑流体の40℃における上記動粘度の範囲を満たすと共に、潤滑流体の130℃における動粘度が5mm2/s以上でかつ12mm2/s以下となるように調整されていることがなお好ましい。
なお、上記潤滑流体の動粘度の調整を行う目的で、例えばグリース化したものを潤滑流体として使用することも可能である。この場合、具体的にはウレア系の増ちょう剤またはリチウム系の増ちょう剤の添加によりグリース化したものを潤滑流体として使用することができる。これにより、高温時の油漏れを可及的に防止することができる。
また、軸受本体を構成するステンレス鋼組織はオーステナイト系ステンレス鋼を主成分とするものであってもよい。オーステナイト系ステンレス鋼であれば、ニッケル成分を相当割合含むため、ニッケルにより酸化クロムの不動態膜の形成能力および修復能力を高めて、非酸化性の酸(硫酸、亜硫酸、塩酸等)に対する耐食性を改善することができる。また、オーステナイト系ステンレス鋼の熱伝導率は他の軸受用金属のみならずステンレス鋼のそれと比べても小さいが、本発明に係る潤滑流体を含浸したものであれば、防錆剤や耐摩耗剤に含まれる金属成分により軸受の放熱性能の不足分を補うことができるため、特に問題はない。
以上の説明に係る焼結含油軸受は、特に高温環境下における耐食性に優れたものであるため、例えば自動車エンジンの排気ガス流量制御機構、より具体的には、排気ガス再循環利用装置に組み込んで好適に使用することができる。このような循環利用装置においては、バイオエタノールの如きバイオガソリンを使用する際に生成される排気ガス中に亜硫酸ガスが混在する場合も考えられるが、上記発明に係る焼結含油軸受であれば、この種の酸性ガスに対しても高い耐食性を示す。よって、本発明に係る焼結含油軸受を用いることではじめて優れた軸受性能を長期にわたって発揮することが可能となる。
また、前記課題の解決は、本発明に係る焼結含油軸受用の潤滑流体によっても達成される。すなわち、この潤滑流体は、ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織とを有する焼結金属軸受に含浸して使用される潤滑流体において、エステル系合成油を基油として有し、かつ、少なくともスルホン酸金属塩を防錆剤として含有している点をもって特徴づけられる。
ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織とを有する焼結金属軸受に含浸して使用する潤滑流体を、少なくともエステル系合成油とスルホン酸金属塩とを含有する組成とすることで、既述した本発明に係る焼結含油軸受により得ることのできる作用効果と同一の作用効果を得ることができる。そのため、低トルク性を維持しつつも、高温環境下において優れた耐酸腐食性を示す焼結含油軸受を提供することが可能となる。
以上のように、本発明によれば、高温腐食環境下においても優れた耐食性を有する焼結含油軸受を提供することができる。
本発明に係る焼結含油軸受の第1用途例を示した図であって、この軸受を組み込んだEGRバルブの要部断面図である。 本発明に係る焼結含油軸受の第2用途例を示した図であって、この軸受を組み込んだ排気ブレーキバルブの要部断面図である。
以下、本発明に係る焼結含油軸受の実施形態を説明する。
本発明に係る焼結含油軸受は、ステンレス鋼組織と硫化マンガンとを有する焼結金属で形成されるものであって、その内部空孔に、後述する組成の潤滑流体(ここでは潤滑油)を含浸したものである。
ここで、上記焼結金属組織を構成するステンレス鋼は、特に所定の種類に限定されるものではなく、オーステナイト系、オーステナイト・フェライト系、フェライト系、マルテンサイト系のいずれの種類であってもよいが、耐酸腐食性の観点からは、オーステナイト系ステンレス鋼が好適である。この組織形態を有するステンレス鋼であれば、ニッケル成分を相当割合含むため、ニッケルにより酸化クロムの不動態膜の形成能力および修復能力を高めて、非酸化性の酸(硫酸、亜硫酸、塩酸等)に対する耐食性を改善することができるためである。このステンレス鋼の代表例としては、例えばSUS304(18Cr−8Ni)を挙げることができる。
また、ステンレス鋼と共に焼結金属組織を構成する硫化マンガンは、固体潤滑剤として作用させることを目的として配合される。かかる観点から、硫化マンガンの含有割合は、焼結金属100重量%に対して0.5重量%以上20重量%以下とするのが好ましく、1重量%以上10重量%以下とするのがより好ましい。硫化マンガン組織の含有割合が0.5重量%未満だと、固体潤滑剤としての機能を十分に発揮することが難しいためである。また、20重量%を超えて硫化マンガン組織を含有させた場合、摺動面(軸受面)における摩擦係数の低減効果はあまり期待できず、却ってステンレス鋼組織の減少による軸受強度の低下を招くおそれがあるためである。
上記焼結金属軸受に含浸して使用する潤滑油は、エステル系合成油を基油として有すると共に、少なくともスルホン酸金属塩を防錆剤として含有する。
エステル系合成油としては、ジエステルやポリオールエステル、コンプレックスエステルなどが使用可能であるが、高温用途であることを考慮すると、ポリオールエステルあるいはコンプレックスエステルが好ましく、さらにコスト面と併せて考慮すると、ポリオールエステルがより好ましい。ここで、ポリオールエステルは多価アルコールと炭素数5〜20の脂肪酸(飽和、不飽和の別を問わない)とをエステル化した構造を有するものであり、多価アルコールとして、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが使用可能である。また、炭素数5〜20の脂肪酸(短鎖脂肪酸)として、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸などが使用可能である。上記説明に係るポリオールエステルは単独で基油として使用できるが、相異なる2種以上のポリオールエステルを混合したものを基油として使用することもできる。さらには、これらポリオールエステルに他の合成油(例えばポリαオレフィンなど)を1種又は2種以上混合したものを基油として使用することもできる。なお、高温時における動粘度を所要の大きさに維持する目的で、例えばオクチルアルコールとダイマー酸(重合脂肪酸)からなるジエステルなどを使用しても構わない。
スルホン酸金属塩としては、種々のものが使用でき、例えば亜鉛あるいはカルシウムを金属成分として含むスルホン酸金属塩(スルホン酸亜鉛塩あるいはスルホン酸カルシウム塩)が好適に使用可能である。スルホン酸亜鉛塩としては、防錆剤として機能することが知られているものについては特に制限なく使用でき、例えばジノニルナフタレンスルホン酸亜鉛塩を代表例として挙げることができる。この場合、スルホン酸亜鉛塩の配合量は、ステンレス鋼と硫化マンガンとの焼結組織に対する防錆作用の程度に基づき定めるのがよく、具体的には基油100重量部に対して0.01重量部以上30重量部以下とするのが好ましく、基油100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下とするのがより好ましい。スルホン酸カルシウム塩の配合量に関しても同様である。なお、基油と同様、スルホン酸亜鉛塩あるいはカルシウム塩はこれ単独で使用するほか、他のスルホン酸金属塩あるいはカルボン酸化合物(カルボン酸やカルボン酸塩、カルボン酸エステルなどを含む)と組合せて使用することも可能である。
上記組成の潤滑油には、さらに耐摩耗剤としての有機金属化合物が含有されていてもよい。ここで、有機金属化合物としては、種々のものが使用でき、例えば亜鉛を金属成分として含む有機亜鉛化合物やモリブデンを金属成分として含む有機モリブデン化合物などが好適に使用可能である。特に有機亜鉛化合物中の亜鉛はステンレス鋼中のクロムとの相性に優れていることから、上記組成の焼結金属軸受に対しては有機亜鉛化合物が耐摩耗剤として好適である。ここで、有機亜鉛化合物の代表例としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を挙げることができる。また、有機モリブデン化合物の代表例としては、Mo−ジアルキルジチオカルバメートを挙げることができる。これらは何れも耐摩耗剤としての機能を発現できる程度において基油に添加可能であり、その配合量は、基油100重量部に対して0.01重量部以上30重量部以下とするのが好ましく、基油100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下とするのがより好ましい。なお、スルホン酸カルシウム塩には防錆性に加えて、ステンレス製の焼結金属軸受に対する耐摩耗性の向上作用も認められるため、スルホン酸カルシウム塩を使用する場合には、耐摩耗剤としての有機金属化合物を必ずしも含めずともよい。
また、上記組成の潤滑油には、さらにアミン系酸化防止剤又はフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤が含有されていてもよく、あるいは、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリブデンなどの粘度指数向上剤が含有されていてもよい。これら添加剤は、潤滑油を構成する基油や防錆剤、あるいは耐摩耗剤の機能を特に阻害しない限り、上記例示以外のものを使用することも可能である。また、同様の観点から、各添加剤(酸化防止剤、粘度指数向上剤)の基油に対する配合割合を定めるのがよい。
以上の組成に係る潤滑油は、高温環境下で焼結含油軸受に使用する点を考慮して、その40℃における動粘度が35mm2/s以上でかつ400mm2/s以下となるように調整するのが好ましく、80mm2/s以上でかつ150mm2/s以下となるように調整するのがより好ましい。たとえ粘度指数向上剤を添加した場合でも、35mm2/sを下回るようだと、油膜形成能力をはじめ、焼結含油軸受用の潤滑油として十分に機能しないおそれがあるためである。また、動粘度が400mm2/sを超えるようだと、潤滑油を含浸させることが難しくなるためである。もちろん、高温環境下での使用を考慮すれば、潤滑流体の40℃における上記動粘度の範囲を満たすと共に、潤滑流体の130℃における動粘度が5mm2/s以上でかつ12mm2/s以下となるように調整されていることがなお好ましい。
なお、上記潤滑油の動粘度の調整を行う目的で、例えば金属石鹸などの増ちょう剤をさらに添加することも可能である。この場合、具体的にはウレア系の増ちょう剤またはリチウム系の増ちょう剤の添加によりグリース化したものを上記焼結金属軸受に含浸して使用することができる。
上記組成の焼結含油軸受は、例えば以下に示す方法で製造される。すなわち、原料となるステンレス鋼粉末と硫化マンガンとの混合粉末を所定の形状に圧縮成形する工程(a)、圧縮成形により形成された圧粉成形体を焼結する工程(b)、および、焼結体に上記組成の潤滑油(潤滑グリース)を含浸する工程(c)との少なくとも3工程を経て製造される。
まず、圧粉成形工程(a)に関し、V型混合器等でステンレス鋼粉末に硫化マンガン粉末を混合した原料粉末を作成する。必要に応じて、ステアリン酸亜鉛などの金属ステアレイトの粉末をさらに潤滑剤として混合してもよい。次に、完成品(例えば図1中の焼結含油軸受11や図2中の焼結含油軸受26)に準じた形状を有する成形用金型を用意し、この金型内の充填空間に上記原料粉末を供給し、所定圧力でプレスすることで、上記金型に対応する形状の圧粉成形体を得る。
次に、上記圧粉成形体を、主成分たる金属粉末、ここではステンレス鋼粉末の焼結温度まで加熱し所定時間保持する。これにより、ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織とを有する焼結金属組織からなる焼結体を得る(焼結工程(b))。なお、次工程に係る含浸工程(c)の前に、焼結体の寸法ないし形状を矯正する目的で焼結体に対してサイジングを実施する工程(サイジング工程)を設けるようにしても構わない。
最後に、真空含浸等の公知の手法により焼結体の内部に潤滑油あるいは潤滑グリースを含浸させることで(含油工程(c))、焼結含油軸受が完成する。
なお、上記の製造工程例では、最初に硫化マンガン粉末を用意し、これをステンレス鋼粉末に混合するようにした場合を説明したが、これに代えて、硫黄粉末とマンガン粉末との混合粉末を、ステンレス鋼粉末に混合して原料粉末を作成し、これを焼結することによっても、ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織とを有する焼結体(焼結金属軸受)を得ることもできる。ステンレス鋼の焼結温度にまで加熱することで圧粉成形体中の硫黄とマンガンとが反応し、焼結と同時に硫化マンガン組織を生成することができるためである。
以上の説明に係る焼結含油軸受は、特に高温環境下における耐食性に優れたものであるため、例えば自動車エンジンの排気ガス流量制御機構、より具体的には、排気ガス再循環利用装置のバルブ機構や排気ブレーキのバルブ機構に好適に使用することができる。
図1は、上記焼結含油軸受の第1用途例に係るもので、焼結含油軸受11を組み込んだ自動車エンジンの排気ガス再循環利用装置(以下、EGR)バルブ1の要部断面図を示している。このEGRバルブ1は、内部に流体の流路4を有するとともに、流路4内外を貫通する流入孔5及び流出孔6を有するハウジング2と、ハウジング2に装着され、スプリング8の付勢力と流体圧との協働によって変位するダイアフラム7と、流路4内に設けられると共にダイアフラム7と一体に変位可能に連結されており、かつ、一方に変位したときに流路4内に設けられているバルブシート10に当接して流路4を閉塞し、他方に変位したときにバルブシート10から離間して流路4を開放するニードルバルブ9と、ハウジング2に装着されてニードルバルブ9を変位自在に支持する焼結含油軸受11とを備えている。そして、ダイアフラム7に追従させる形でニードルバルブ9を変位させることにより流路4の一部を開放又は閉塞し、これにより流入孔5から流出孔6への排気ガスの流通を許容又は阻止するようになっている。
この場合、焼結含油軸受11は、既述の如く、ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織とを有する焼結金属で形成され、その内部気孔に、以下の組成を有する潤滑油、すなわち、エステル系合成油を基油とし、かつ、少なくとも防錆剤としてのスルホン酸金属塩を含有する潤滑油を含浸してなるものである。
そして、上記構成を有する焼結含油軸受11を、ハウジング2の流路4の一端部に設けられている段部3内に嵌合固定し、中心部に設けられている孔12内にニードルバルブ9を挿通させることにより、ニードルバルブ9を軸方向に沿って変位自在に支持することができる。なお、焼結含油軸受11のハウジング2に対する固定手段は特に問わず、圧入、接着(軽圧入を伴った接着を含む)、溶接等任意の手段を採用することができる。また、ステンレス鋼組織を主とする焼結金属であれば、延展性にも比較的優れているため、例えば焼結含油軸受11の軸方向一端に鍔部を形成し、この鍔部を加締めることでハウジング2に固定する等の手段も採用することができる。
上記構成のEGRバルブ1にあっては、焼結含油軸受11に含浸される潤滑油を、少なくともエステル系合成油とスルホン酸金属塩とを含むように構成したので、ステンレス鋼および硫化マンガンからなる焼結金属軸受の有する耐酸化性と低トルク性を維持しつつも、非常に優れた耐酸腐食性を付与することができる。特に、EGRバルブ1のような排気ガス流量制御機構においては、使用するガソリンの種類によって、排気ガス中に亜硫酸ガスの如き酸性ガスが含まれる場合も考えられるが、この焼結含油軸受11であればこの種の酸性ガスに対しても高い耐食性を示す。よって、この焼結含油軸受11を用いることで優れた軸受性能を長期にわたって発揮することが可能となる。
図2は、上記焼結含油軸受の第2用途例に係るもので、焼結含油軸受26を組み込んだ自動車エンジンの排気ブレーキバルブ21の要部断面図を示している。この排気ブレーキバルブ21は、流体の流路24を有するハウジング22と、ハウジング22の流路24を貫通した状態で回転自在に設けられる軸25と、ハウジング22に装着され、軸25を回転自在に支持する焼結含油軸受26と、ハウジング22の流路24内に配設されて軸25と一体に回動し、一方に回動した際に流路24を閉塞し、他方に回動した際に流路24を開放するバタフライ弁28とを備えている。そして、バタフライ弁28によって流路24を開閉することにより、流体の流通を許容又は阻止するようになっている。
この場合、焼結含油軸受26は、既述の如く、ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織とを有する焼結金属で形成され、その内部気孔に、以下の組成を有する潤滑油、すなわち、エステル系合成油を基油とし、かつ、少なくとも防錆剤としてのスルホン酸金属塩を含有する潤滑油を含浸してなるものである。
そして、上記構成を有する焼結含油軸受26の1つを、ハウジング22の流路24の両側部に穿孔形成された孔部の一方であって、当該一方の孔部に設けた段部23内に嵌合固定し、かつ、穿孔形成された孔部の他方に焼結含油軸受26のもう1つを嵌合固定する。そして、各々の焼結含油軸受26,26の中心部に設けられている孔27,27内に軸25を挿通させることにより、軸25およびバタフライ弁28を回動自在に支持することができる。もちろん、この用途例においても、焼結含油軸受26のハウジング22に対する固定手段に、上記第1用途例と同様の固定手段を採用することができる。
上記構成の排気ブレーキバルブ21にあっては、焼結含油軸受26に含浸される潤滑油を、少なくともエステル系合成油とスルホン酸金属塩を含むように構成したので、ステンレス鋼および硫化マンガンからなる焼結金属軸受の有する耐酸化性と低トルク性を維持しつつも、非常に優れた耐酸腐食性を付与することができる。そのため、排気ブレーキバルブのような排気ガス流量制御機構において、排気ガス中に酸性ガスが含まれる場合であっても、この焼結含油軸受26であればこの酸性ガスに対して高い耐食性を示す。よって、この焼結含油軸受26を用いることで優れた軸受性能を長期にわたって発揮することが可能となる。
なお、以上の説明では、本発明に係る焼結含油軸受を、自動車エンジンの排気ガス流量を制御する機構のうちEGRバルブ1ないし排気ブレーキバルブ21に適用した場合を説明したが、これに限定することなく、高温で腐食性の高い環境下で使用される用途に使用できることはもちろんである。
1 EGRバルブ
2 ハウジング
3 段部
4 流路
5 流入孔
6 流出孔
7 ダイアフラム
8 スプリング
9 ニードルバルブ
10 バルブシート
11 焼結含油軸受
12 孔
21 排気ブレーキバルブ
22 ハウジング
23 段部
24 流路
25 軸
26 焼結含油軸受
27 孔
28 バタフライ弁

Claims (13)

  1. ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織とを有し、その内部気孔に潤滑流体が含浸されている焼結含油軸受において、
    前記潤滑流体はエステル系合成油を基油として有し、かつ、少なくともスルホン酸金属塩を防錆剤として含有していることを特徴とする焼結含油軸受。
  2. 前記エステル系合成油はポリオールエステルである請求項1に記載の焼結含油軸受。
  3. 前記スルホン酸金属塩は亜鉛もしくはカルシウムを金属成分として含むものである請求項1又は2に記載の焼結含油軸受。
  4. 前記潤滑流体は、さらに有機金属化合物を耐摩耗剤として含有している請求項1〜3の何れかに記載の焼結含油軸受。
  5. 前記有機金属化合物は亜鉛もしくはモリブデンを金属成分として含むものである請求項4に記載の焼結含油軸受。
  6. 前記潤滑流体は、さらに酸化防止剤としてアミン系酸化防止剤又はフェノール系酸化防止剤を含有している請求項1〜5の何れかに記載の焼結含油軸受。
  7. 前記潤滑流体は、さらに粘度指数向上剤としてポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリブデンの何れかを含有している請求項1〜6の何れかに記載の焼結含油軸受。
  8. 前記潤滑流体の40℃における動粘度が35mm2/s以上でかつ400mm2/s以下に調整されている請求項1〜7の何れかに記載の焼結含油軸受。
  9. 前記潤滑流体の130℃における動粘度が5mm2/s以上でかつ12mm2/s以下に調整されている請求項8に記載の焼結含油軸受。
  10. 前記潤滑流体は、ウレア系又はリチウム系の増ちょう剤の添加によりグリース化されたものである請求項1〜9の何れかに記載の焼結含油軸受。
  11. 前記ステンレス鋼組織はオーステナイト系ステンレス鋼を主成分とする請求項1〜10の何れかに記載の焼結含油軸受。
  12. 排気ガス再循環利用装置に組み込まれて使用される請求項1〜11の何れかに記載の焼結含油軸受。
  13. ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織とを有する焼結金属軸受に含浸して使用される潤滑流体において、
    エステル系合成油を基油として有し、かつ、少なくともスルホン酸金属塩を防錆剤として含有していることを特徴とする焼結含油軸受用の潤滑流体。
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