JP2018181670A - 2次電池の検査方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】2次電池の自己放電特性の良否を,さほど長時間を掛けることなく高精度に判定することができる,2次電池の検査方法を提供すること。【解決手段】複数個の2次電池を初期充電する工程(S1)と,複数個の2次電池のそれぞれについて,初期充電後に自己放電させたときにおける,自己放電前の電圧値および自己放電後の電圧値を測定する工程(S2〜S4)と,複数個の2次電池のそれぞれについて,測定された自己放電の前後での電圧値の差である電圧降下量を算出する工程(S5)と,複数個の2次電池を,測定された自己放電前の電圧値によりグループ分けする工程(S6)と,各グループについて,属する2次電池の自己放電前の電圧値に基づいて判定規格を設定する工程(S8,S9)と,各グループについて,設定された判定規格と,属する各2次電池の電圧降下量とを対比することで,各2次電池の良否判定を行う工程(S11)とを行う。【選択図】図1

Description

本発明は,2次電池の良否を検査する方法に関する。さらに詳細には,2次電池の自己放電特性の良否を判定する方法に関するものである。
2次電池の性能特性の1つとして,自己放電特性が挙げられる。充電した2次電池を放置しておいても放電して電圧が下がってしまう電圧降下傾向の大小である。この傾向には,同一の仕様の2次電池であっても個体ごとのばらつきがある。むろん,電圧降下の程度が大きい個体は,不良品であるということになる。かかる2次電池の自己放電特性の良否判定に利用できる従来の技術として,特許文献1に記載されているものを挙げることができる。同文献の技術では基本的に,個々の電池におけるエージング前後での電圧差を所定の閾値と比較することで判定を行っている。そしてその閾値を,電池の微小内部短絡による電圧降下量を想定した基準値を用いて定めるようにしている。すなわち,エージング前後での電圧差についての検査ロット全体での平均値から上記基準値を差し引いた値を閾値としている。
特開2004−132776号公報
しかしながら前記した従来の技術には,判定の精度が低いという問題点があった。従来技術による判定の精度が低い理由であるが,エージング前の初期電圧のばらつきを考慮していないことにある。本発明者が得た知見によれば,電圧降下量の大小には,初期電圧も影響するからである。このため従来技術では,不良品と判定すべき電池が良品と判定されたり,或いはその逆の判定がなされたりすることがあった。なお,電圧降下量の大小に対する初期電圧の影響は,エージング時間を長く取れば緩和される傾向がある。よって,エージング時間を長く取れば判定精度はある程度向上する。しかしそれでは,良否検査を迅速に行うことができない。
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,2次電池の自己放電特性の良否を,さほど長時間を掛けることなく高精度に判定することができる,2次電池の検査方法を提供することにある。
本発明の一態様における2次電池の検査方法は,複数個の2次電池を初期充電する工程と,複数個の2次電池のそれぞれについて,初期充電後に自己放電させたときにおける,自己放電前の電圧値および自己放電後の電圧値を測定する工程と,複数個の2次電池のそれぞれについて,測定された自己放電の前後での電圧値の差である電圧降下量を算出する工程と,複数個の2次電池を,測定された自己放電前の電圧値によりグループ分けする工程と,各グループについて,属する2次電池の自己放電前の電圧値に基づいて判定規格を設定する工程と,各グループについて,設定された判定規格と,属する各2次電池の電圧降下量とを対比することで,各2次電池の良否判定を行う工程とを有している。
上記態様における2次電池の検査方法では,基本的には各2次電池における自己放電の前後での電圧差,すなわち電圧降下量により判定が行われる。ただし,自己放電前の電圧値により2次電池をグループ分けし,グループごとに判定規格が設定される。判定規格は,グループに属する2次電池の自己放電前の電圧値に基づいて設定される。自己放電前の電圧値は,電圧降下量との間に強い相関性を持つ性質がある。このためグループごとに適切に,判定規格が設定される。このように設定された判定規格と電圧降下量とを対比するので,自己放電前の電圧値に対して適切な判定が行われる。このため,自己放電時間をあまり長くすることなく,あるいは自己放電前の電圧値ごとに自己放電時間を替えるようなことも必要なく,高精度に2次電池の良否判定ができる。
本構成によれば,2次電池の自己放電特性の良否を,さほど長時間を掛けることなく高精度に判定することができる,2次電池の検査方法が提供されている。
実施の形態に係る2次電池の良否判定の手順を示すフローチャートである。 電池電圧と短絡放電量との関係を示すグラフである。
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,複数個の2次電池を,図1に示す手順により良否検査する方法として,本発明を具体化したものである。
図1の検査手順では最初に,検査対象の各2次電池の初期充電を行う(S1)。初期充電の内容は例えば,次の(1)〜(3)のようなものである。
(1)初充電。製造されたばかりの各2次電池を充電する。目標電圧は3.8〜4.5[V]程度とする。
(2)高温エージング。初充電後の各2次電池を,45〜85℃の範囲内の温度下にて,10〜200時間の範囲内の所定の期間にわたり放置する。この「高温エージング」は,後述するS3の「一定期間放置」とは別である。
(3)SOC調整。高温エージング後の各2次電池を,ある程度放電させる。放電後の目標電圧は2.5〜3.5[V]程度とする。
次に,初期充電がなされた各2次電池の電圧値を測定する(S2)。これが自己放電前の電圧値V1である。電圧値V1は,検査対象の2次電池のそれぞれの個体について測定される。前述のSOC調整を経ているため,測定される電圧値V1の大部分は放電後の目標電圧の範囲内にある。
次に,検査対象の各2次電池を一定期間放置する(S3)。このときには前述の高温エージングのときと異なり,対象の2次電池について特段の温度操作はしない。このため各2次電池はほぼ常温のまま保持されることとなる。放置時間は,1〜150時間程度の範囲内とする。放置時間はまた,各2次電池とも同じでもよいし,2次電池によって違ってもよい。この放置中に各2次電池においては,自己放電によるある程度の電圧降下が起きる。
次に,放置後の各2次電池の電圧値を測定する(S4)。これが自己放電後の電圧値V2である。電圧値V2も当然,検査対象の2次電池のそれぞれの個体について測定される。そしてこれにより,検査対象の各2次電池について,自己放電の前後での電圧差ΔVを算出する(S5)。電圧差ΔVは,各2次電池についての電圧値V1から電圧値V2を引いた差である。
そして,検査対象の2次電池のグループ分けを行う(S6)。ここでのグループ分けは,S2で測定した電圧値V1に基づいて行う。前述のように電圧値V1はある程度の幅の範囲内に分布しているので,さらに狭い範囲の幅(例えば0.1[V]程刻み)を指定して分類するのである。グループ分けのための電圧値V1の幅は,1つの2次電池が複数のグループに所属することがないように定める。ここでグループ分けした各グループを以下,判定群という。各判定群には,電圧値V1が一定範囲内の2次電池のみが所属している。
次に,判定群に所属する2次電池の個数が,一定数以上あるか否かを確認する(S7)。この確認は,判定群ごとに行われる。この「一定数」は,あらかじめ定めておけばよい。2次電池の個数が一定数に満たない判定群は判定不能とされ(S7:No),判定対象から除外される。一定数以上の2次電池が所属している判定群は判定可能とされる(S7:Yes)。
S7で判定可能とされた判定群については続いて,群内基準電圧の決定が行われる(S8)。群内基準電圧は,判定群に属する各2次電池の電圧値V1(S2で測定)に基づいて決定される。具体的には,各2次電池の電圧値V1の代表値をもって群内基準電圧とする。ここでの代表値は,一般的な平均値や中央値,最頻値のいずれかでもよいし,それ以外に最大値あるいは最小値であってもよい。要は,群内の電圧値V1により一意的に定まる値であって,かつ,群内の電圧値V1の分布範囲を逸脱しない値であればよい。判定可能な判定群が複数ある場合には,判定群ごとに群内基準電圧が定められる。
次に,判定可能な判定群について判定規格が定められる(S9)。判定規格は,S8で定められた群内基準電圧に基づいて定められる。この判定規格の設定ではさらに,図2が用いられる。図2は,電池電圧と短絡放電量との関係を示すグラフである。図2のグラフの横軸は2次電池の電圧値を示し,縦軸は1日当たりの放電量,すなわち電圧降下幅を示している。この放電量は,2次電池を放置しておいた場合における,電池内の微小短絡による放電の程度である。図2のグラフは,検査対象の2次電池と同一仕様の2次電池についてあらかじめ,種々の電圧に充電した状態からの放電量を測定することで作成しておく。
具体的には,判定群ごとの群内基準電圧を図2の横軸に当てはめる。そして,当てはめた群内基準電圧に対応する短絡放電量の値(縦軸)を読み出す。図2中には,次の2例を示している。
群内基準電圧3.15962[V] → 短絡放電量0.16[mV/日]
群内基準電圧3.29750[V] → 短絡放電量0.075[mV/日]
上記のようにして図2から読み出した短絡放電量は,1日(24時間)当たりの値である。そこでこれを,前述のS3での放置時間当たりの値に換算する。放置時間が例えば72時間(3日)であれば,図2から読み出した値を3倍する。これにより,判定規格が設定される。判定規格も判定群ごとに設定される。なお,図2は2次電池の自己放電前の電圧値と判定規格との関係を定めるものであるから,S9全体としては,判定群に属する2次電池の電圧値V1に基づいて判定規格を設定していることになる。
次に,判定可能な判定群について,群内基準電圧差(図1中では「群内基準ΔV」)の決定が行われる(S10)。群内基準電圧差は,判定群に属する各2次電池の電圧差ΔV(S5で算出)に基づいて決定される。具体的には,各2次電池の電圧差ΔVの代表値をもって群内基準電圧差とする。ここでの代表値は前述のS8の説明のところで述べたのと同じ意味である。判定可能な判定群が複数ある場合には,判定群ごとに群内基準電圧差が定められる。
次に,各2次電池についての良否判定を行う(S11)。良否判定は,各2次電池の電圧差ΔV(S5で算出)からその判定群の群内基準電圧差(S10で算出)を差し引いた較差を,その判定群の判定規格(S9で設定)と対比することで行われる。前者が後者以上であれば不良品とし(S11:Yes),後者が大きければ良品とする(S11:No)。この判定を,判定可能とされた判定群に属するすべての2次電池について行う。これにより2次電池の良否検査がなされる。なお,この判定は,S9で設定した判定規格に判定群の群内基準電圧差(S10で算出)を足したものを新たに判定規格とし,これと各2次電池の電圧差ΔV(S5で算出)とを比較して判定することと等価である。
ここで,上記の検査方法の実施例を説明する。下記実施例は,以下の仕様のリチウムイオン2次電池でのものである。
・正極合材層:
・・正極活物質:三元系活物質
・・導電助剤:アセチレンブラック
・・バインダ:ポリフッ化ビニリデン
・負極合材層:
・・負極活物質:アモルファスコートグラファイト
・・バインダ:スチレンブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロース
・電解液:
・・電解質:ヘキサフルオリン酸リチウム
・・溶媒:エチレンカーボネート,エチルメチルカーボネート,ジメチルカーボネート
・構造:角形
上記仕様により,2ロット各5個,計10個の2次電池を作製し,良否検査に供した。
検査手順中のS1およびS3の各条件は,以下の通りとした。
・初充電の充電電流:1C(Cは1時間でフル放電からフル充電に至らしめる電流値)
・初充電の末期電圧:4.1[V]
・高温エージング:63℃×20時間
・SOC調整の放電電流:1C
・SOC調整の末期電圧:3.0[V](以上S1)
・自己放電:20℃×90時間(S3)
Figure 2018181670
良否検査の結果は,表1に示す通りであった。表1中,左端の「群1」,「群2」はそれぞれ,第1判定群,第2判定群のそれぞれの5個の2次電池群を示している。表1の最上段の意味は次の通りである。
「S2」欄:電圧値V1(S2で測定)
「S4」欄:電圧値V2(S4で測定)
「S5」欄:電圧差ΔV(S5で算出)
「S8」欄:群内基準電圧(S8で決定)
「S9」欄:判定規格(S9で設定)
「S10」欄:群内基準電圧差(S10で算出)
「S11」欄:電圧差ΔVから群内基準電圧差を差し引いた値(S11の式の左辺)
「判定」欄:「S9」欄の値と「S11」欄の値との比較による良否判定結果
表1と図1との関係を説明する。まず図1のS1〜S5により,表1の「S2」欄から「S5」欄までのデータが取得される。そして図1のS6のグループ分けが,「S2」欄のデータ,すなわち電圧値V1により行われる。表1の例は,電圧値V1について,次のグループ分け設定がなされていた例である。
・3.2[V]未満→第1判定群
・3.2[V]以上→第2判定群
すなわち表1中の「群1」,「群2」の区分けは,S6のグループ分けの結果による判定群なのである。なお,この設例ではグループ分けによる判定群が作成時のロットと一致しているが,必ずそうなる訳ではない。また,図1のS7については,本設例では「一定数」は5以下の数に設定されているものとする。よって,「群1」,「群2」ともに判定可能とされている。
S8の群内基準電圧であるが,本設例では代表値として中央値を用いることとしている。このため,「群1」,「群2」のいずれについても1番の「S2」欄の値が,表1中の「S8」欄の値として採用されている。そして,このS8の値と図2のグラフとにより,表1中の「S9」欄の値が決定されている。すなわち,S8の値と図2とから直接読み出される短絡放電量の値は前述の通りであるが,本設例では自己放電時間が90時間であるため,(90/24)倍して表1中の「S9」欄の値としている。
次にS10の群内基準電圧差であるが,本設例ではここでも代表値として中央値を用いることとしている。このため,「群1」,「群2」のいずれについても2番の「S5」欄の値が,表1中の「S10」欄の値として採用されている。そして,「S5」欄の値から「S10」欄の値を差し引いた差が,「S11」欄の値となっている。「S11」欄の値のうち,「S9」欄の値より大きいものを斜体字で表示している。
そして,「S9」欄の値と「S11」欄の値との比較により,「判定」欄の判定結果が定められている。すなわち,「S11」欄が斜体字で記されている「群1」の5番および「群2」の5番が,「×」の判定となっている。それ以外はすべて「○」の判定となっている。このように表1の「判定」欄は,適切な良否判定結果となっている。
しかしながら,「判定群」による区分けを行わない場合には,必ずしも適切な判定結果が得られない。表2がその例である。表2では,「S8」欄の群内基準電圧として,「群1」,「群2」のいずれについても表1中の「群1」の「S8」欄の値を使用している。これにより「S9」欄の値も,「群1」,「群2」ともに表1中の「群1」の「S9」欄の値となっている。「S10」欄の値は,全10個の2次電池についての「S5」欄の値の中央値となっている。なお表2においては,「S2」〜「S5」の欄については,内容が表1と同じであるため省略している。
Figure 2018181670
表2においては,「S11」欄の値が斜体字で記されているものはない。このため,「判定」欄がすべて「○」となっている。すなわち,「群1」の5番および「群2」の5番が,表1における判定結果と異なっている。そこで表2ではこれら2つの「○」を斜体字で示している。これら2つでは,本来「×」と判定されるべきなのに「○」と判定されているのである。なお,「群1」の3番では,「S11」欄の値の絶対値は「S9」欄の値より大きい。しかし判定は「○」となっている。図1のS11の判定は絶対値による判定ではないからである。
Figure 2018181670
表3は,「判定群」による区分けを行わないという点で表2と同じ例である。ただし,「S8」欄の群内基準電圧として,表1中の「群2」の値を使用している。「S9」欄の値も同じく,表1中の「群2」の値となっている。「S10」欄の値は表2と同じである。表3においては,「群2」の5番は表1と同じ判定結果になっているものの,「群1」の5番はやはり表1と異なる判定結果になっている。このようにやはり,適切な判定結果とはいえない。なお,不適切な判定では,表2,表3中にはないが,本来「○」と判定されるべきものが「×」と判定されることもありうる。
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,2次電池の自己放電の前後での電圧降下量に基づく良否検査を行うに際して,複数個の2次電池を自己放電前の電圧値V1によりグループ(判定群)分けすることとしている。そして判定群ごとに,判定規格を定めて,電圧差ΔVによる良否判定を行うこととしている。これにより,自己放電時間をあまり長くすることなく,かつ高精度に良否判定ができる2次電池の検査方法が実現されている。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,対象とする2次電池は,リチウムイオン2次電池に限らない。また,図1中のS7でNoとなった場合に,必ず判定不能としなければならない訳ではない。判定精度はある程度下がるが,隣接する判定群の判定規格を外挿する等により判定規格を定めて判定することが可能な場合はある。また,図2のグラフについては,検査対象の2次電池と同一仕様の2次電池からの実測に基づくばかりでなく,理論上作成したものでもよい。いずれにせよ,図1中のS9のときまでに既知となっていればよい。さらに,図1中のS10については,S7よりも後でS11よりも前であればいつ行ってもよい。

Claims (1)

  1. 複数個の2次電池を初期充電する工程と,
    前記複数個の2次電池のそれぞれについて,初期充電後に自己放電させたときにおける,自己放電前の電圧値および自己放電後の電圧値を測定する工程と,
    前記複数個の2次電池のそれぞれについて,測定された自己放電の前後での電圧値の差である電圧降下量を算出する工程と,
    前記複数個の2次電池を,測定された自己放電前の電圧値によりグループ分けする工程と,
    各前記グループについて,属する2次電池の自己放電前の電圧値に基づいて判定規格を設定する工程と,
    各前記グループについて,設定された判定規格と,属する各2次電池の電圧降下量とを対比することで,各2次電池の良否判定を行う工程とを有することを特徴とする2次電池の検査方法。
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