JP2018178867A - プロペラファン - Google Patents
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Abstract
【課題】プロペラファンにおいて、翼端渦に起因する騒音の増加とファン効率の低下を抑える。【解決手段】プロペラファン(10)の翼(20)において、翼(20)の径方向断面の外周側端と内周側端を通る直線と、ハブ(15)の中心軸と直交する第2平面(47)とのなす角を傾斜角(φ)とする。また、翼(20)の翼端(22)において、プロペラファン(10)の回転方向の前側の端部を前翼端とし、その後側の端部を後翼端とする。そして、翼(20)の形状を、前翼端と後翼端の間の中間位置から後翼端に亘る領域において、中間位置から後翼端へ向かって傾斜角(φ)が単調増加するような形状とする。【選択図】図3
Description
本発明は、送風機などに用いられるプロペラファンに関するものである。
従来より、プロペラファンは、送風機などに広く用いられている。例えば、特許文献1には、ハブと三つの翼とを備えたプロペラファンが開示されている。プロペラファンが回転すると、プロペラファンの回転中心軸に沿った方向へ空気が流れる。プロペラファンの各翼は、送風方向を向く面が正圧面となり、送風方向の逆側を向く面が負圧面となる。
プロペラファンの翼では、翼の正圧面側から負圧面側へ翼端を回り込んで空気が流れることによって翼端渦が生じる。プロペラファンの回転中に翼端渦の大きさが変動すると、翼の正圧面側から負圧面側へ逆流する空気の流量が変動し、翼の正圧面側の圧力(即ち、プロペラファンから吹き出される空気の圧力)が変動する。そして、プロペラファンの回転中に翼端渦の大きさが大幅に変化すると、プロペラファンから吹き出される空気の圧力の変動幅が大きくなり、騒音が増加したり、プロペラファンの駆動に要する動力が嵩んでファン効率が低下するおそれがある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プロペラファンの翼において生じる翼端渦を安定させ、翼端渦に起因する騒音の増加とファン効率の低下を抑えることにある。
第1の発明は、円筒状のハブ(15)と、該ハブ(15)の側面から外方へ伸びる複数の翼(20)とを備えるプロペラファンを対象とする。そして、上記翼(20)のそれぞれは、上記ハブ(15)の中心軸を含む第1平面(46)における上記翼(20)の断面を径方向断面とし、上記径方向断面の外周側端と内周側端を通る直線と、上記ハブ(15)の中心軸と直交する第2平面(47)とのなす角を傾斜角(φ)とし、上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)とし、上記翼端(22)の上記プロペラファンの回転方向における前端を前翼端(22a)とし、上記翼端(22)の上記プロペラファンの回転方向における後端を後翼端(22b)としたときに、上記前翼端(22a)と上記後翼端(22b)の間の中間位置から上記後翼端(22b)に亘る領域において、上記中間位置から上記後翼端(22b)へ向かって上記傾斜角(φ)が単調増加するものである。
なお、この明細書に記載した「単調増加」は、“広義の単調増加”である。従って、各翼(20)は、中間位置から後翼端(22b)へ向かって傾斜角(φ)が増加し続けてもよいし、中間位置から後翼端(22b)へ至るまでの一部の区間において傾斜角(φ)が一定となっていてもよい。
第1の発明において、傾斜角(φ)は、ハブ(15)の中心軸と直交する第2平面(47)に対する径方向断面の傾きの程度を表す指標である。従って、この発明の翼(20)では、中間位置から後翼端(22b)までの領域において、径方向断面の第2平面(47)に対する傾きが次第に大きくなる。径方向断面の第2平面(47)に対する傾きが大きくなるにつれて、翼(20)の正圧面側から負圧面側へ翼端(22)を回り込む空気の流れがスムーズになり、その結果、翼端渦の大きさの変動が抑えられる。
ここで、翼(20)の翼端(22)付近において発生した翼端渦は、翼端(22)の後翼端(22b)へ向かって発達してゆく。一方、第1の発明の翼(20)では、中間位置から後翼端(22b)までの領域において、傾斜角(φ)が次第に大きくなる。つまり、この発明の翼(20)では、翼端(22)のうち翼端渦が発達してゆく領域において、径方向断面の第2平面(47)に対する傾きが次第に大きくなる。このため、翼(20)の中間位置から後翼端(22b)までの領域において、空気が翼(20)の正圧面側から負圧面側へ翼端(22)を回り込んでスムーズに流れる。従って、この発明では、翼端渦の大きさの変動が抑えられる。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記前翼端(22a)と上記後翼端(22b)の間の中間位置から上記後翼端(22b)に亘る領域だけにおいて、上記傾斜角(φ)が上記後翼端(22b)へ近付くにつれて次第に大きくなるものである。
第2の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における中間位置から後翼端(22b)までの領域だけにおいて、中間位置から後翼端(22b)へ向かって傾斜角(φ)が単調増加する。各翼(20)における前翼端(22a)から中間位置までの領域において、傾斜角(φ)は、一定に保たれるか、あるいは前翼端(22a)から中間位置へ向かって次第に小さくなる。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記前翼端(22a)から上記中間位置に亘る領域において、上記傾斜角(φ)が上記後翼端(22b)へ近付くにつれて次第に小さくなり、上記傾斜角(φ)が、上記中間位置において最小となるものである。
第3の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、前翼端(22a)から中間位置までの領域において、傾斜角(φ)が後翼端(22b)へ近付くにつれて次第に小さくなる。また、各翼(20)では、傾斜角(φ)が中間位置において最小となる。つまり、各翼(20)では、中間位置とハブ(15)の中心軸とを含む平面における翼(20)の径方向断面において、傾斜角(φ)が最小となる。
第4の発明は、上記第1〜第3のいずれか一つの発明において、上記翼(20)のそれぞれは、上記後翼端(22b)と上記ハブ(15)の中心軸とを含む平面を後端平面(43)としたときに、上記翼(20)の後縁(24)が、上記後端平面(43)の上、又は上記後端平面(43)よりも上記プロペラファンの回転方向の前側に位置するものである。
第4の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、その後縁(24)が、後端平面(43)の上、又は後端平面(43)よりもプロペラファン(10)の回転方向の前側に位置する。翼端(22)のプロペラファン(10)の回転方向における後端である後翼端(22b)は、翼(20)の後縁(24)を構成する。この後翼端(22b)は、後端平面(43)上に位置する。翼(20)の後縁(24)のうち後翼端(22b)以外の部分は、その全部が後端平面(43)上に位置してもよいし、その全部がプロペラファン(10)の回転方向における前側に位置してもよいし、その一部が後端平面(43)上に位置して残りの部分がプロペラファン(10)の回転方向における前側に位置してもよい。
ここで、一般的なプロペラファンの翼は、後端平面よりもプロペラファンの回転方向における後側に位置する領域(後方領域)が存在するのが通常である。しかし、この後方領域は、プロペラファンの送風能力に殆ど寄与しない。また、この後方領域と空気の摩擦によってプロペラファンの駆動に要する動力が消費され、プロペラファンの効率低下を招くおそれがある。
これに対し、第4の発明のプロペラファン(10)では、各翼(20)の後縁(24)が、後端平面(43)の上、又は後端平面(43)よりもプロペラファン(10)の回転方向の前側に位置する。つまり、この発明の翼(20)には、上述した後方領域が存在しない。このため、翼(20)と空気の摩擦によって消費される動力が減少し、プロペラファン(10)の効率向上が図られる。
第5の発明は、上記第1〜第4のいずれか一つの発明において、上記翼(20)のそれぞれは、翼断面における翼弦(31)から反り線(32)までの距離を反り高さとし、上記翼断面において上記反り高さが最大となる上記翼弦(31)上の位置を最大反り位置(A)とし、上記翼断面における前縁(23)から上記最大反り位置(A)までの距離(d)の翼弦長(c)に対する比を最大反り位置比(d/c)とし、上記翼(20)のハブ(15)側の端部を翼元(21)とし、上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)としたときに、上記翼端(22)における上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)における上記最大反り位置比(d/c)よりも大きいものである。
ここで、プロペラファン(10)の翼(20)では、翼端(22)において反り高さが最大となる位置の近傍において翼端渦が発生する。そして、この翼端渦の発生位置が翼(20)の前縁(23)に近づくほど、翼端渦が長くなり、翼端渦の生成に消費されるエネルギが増加する。
これに対し、第5の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(d/c)が、翼元(21)における最大反り位置比(d/c)よりも大きくなっている。つまり、各翼(20)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置(A)が、翼端(22)において従来よりも翼(20)の後縁(24)に近づく。このため、翼端渦の発達が抑制されて翼端渦が短くなり、翼端渦の生成に消費されるエネルギが減少し、その結果、ファン効率の向上が図られる。
第6の発明は、上記第1〜第4のいずれか一つの発明において、上記翼(20)のそれぞれは、翼断面における翼弦(31)から反り線(32)までの距離である反り高さの最大値を最大反り高さ(f)とし、上記翼断面における上記最大反り高さ(f)の上記翼弦長(c)に対する比を反り比(f/c)とし、上記翼(20)のハブ(15)側の端部を翼元(21)とし、上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)としたときに、上記反り比(f/c)が、上記翼元(21)と上記翼端(22)の間に位置する基準翼断面(33b)において最大となり、上記基準翼断面(33b)から上記翼元(21)へ向かって単調減少し、上記基準翼断面(33b)から上記翼端(22)へ向かって単調減少するものである。
第6の発明のプロペラファン(10)に設けられた複数の翼(20)のそれぞれでは、翼元(21)から所定の距離だけ離れた基準翼断面(33b)において反り比(f/c)が最大となる。また、各翼(20)において、反り比(f/c)は、基準翼断面(33b)から翼元(21)へ向かって単調減少し、且つ基準翼断面(33b)から翼端(22)へ向かって単調減少する。
なお、この明細書に記載した「単調減少」は、“広義の単調減少”である。従って、各翼(20)は、基準翼断面(33b)から翼端(22)へ向かって反り比(f/c)が減少し続けてもよいし、基準翼断面(33b)から翼端(22)へ至るまでの一部の区間において反り比(f/c)が一定となっていてもよい。
ここで、翼(20)の翼元(21)付近は、ハブ(15)の近傍であるため、気流の乱れが生じやすい領域である。一方、第6の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が基準翼断面(33b)から翼元(21)へ向かって単調減少する。つまり、翼(20)のうち気流の乱れが生じやすい翼元(21)付近の領域において、反り比(f/c)が基準翼断面(33b)に比べて小さくなる。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れが抑制され、乱れによって消費されるエネルギが減少し、その結果、ファン効率の向上が図られる。
また、第6の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が基準翼断面(33b)から翼端(22)へ向かって単調減少する。つまり、各翼(20)では、基準翼断面(33b)から、基準翼断面(33b)よりも周速度の高い翼端(22)へ向かって、反り比(f/c)が単調減少する。このため、翼(20)の仕事量(具体的には、翼(20)に作用する揚力)が翼(20)の全体で平均化され、その結果、ファン効率の向上が図られる。
本発明のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における中間位置から後翼端(22b)に亘る領域において、中間位置から後翼端(22b)へ向かって傾斜角(φ)が単調増加する。このため、翼端(22)のうち翼端渦が発達してゆく後翼端(22b)寄りの領域において、翼(20)の正圧面側から翼端(22)を回り込んで負圧面側へ向かう空気の流れをスムーズにすることができ、翼端渦の大きさの変動を抑えることができる。従って、本発明によれば、翼端渦に起因する騒音の増加とファン効率の低下を抑えることが可能となる。
上記第4の発明のプロペラファン(10)の各翼(20)には、後端平面(43)よりもプロペラファン(10)の回転方向における後側に位置する後方領域が存在しない。このため、ファンの送風能力を落とすこと無く、翼(20)と空気の摩擦によって消費される動力を削減でき、プロペラファン(10)の効率を向上させることが可能となる。
上記第5の発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、上記翼端(22)における上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)における上記最大反り位置比(d/c)よりも大きくなる。このため、翼端渦の発達が抑制されて翼端渦が短くなり、翼端渦の生成に消費されるエネルギが減少する。従って、この発明によれば、プロペラファン(10)を回転駆動するための動力のロスを低減することによってファン効率を向上させることができる。
上記第6の発明では、プロペラファン(10)の各翼(20)において、反り比(f/c)が、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する基準翼断面(33b)において最大となり、基準翼断面(33b)から翼元(21)へ向かって単調減少し、且つ基準翼断面(33b)から翼端(22)へ向かって単調減少する。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れを抑えることができると共に、各翼(20)の全体において翼(20)の仕事量を平均化できる。従って、この発明によれば、プロペラファン(10)を回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態のプロペラファン(10)は、軸流ファンである。このプロペラファン(10)は、例えば、空気調和機の熱源ユニットに設けられ、熱源側熱交換器へ室外空気を供給するために用いられる。
実施形態1について説明する。本実施形態のプロペラファン(10)は、軸流ファンである。このプロペラファン(10)は、例えば、空気調和機の熱源ユニットに設けられ、熱源側熱交換器へ室外空気を供給するために用いられる。
−プロペラファンの構造−
図1,図2,及び図6に示すように、本実施形態のプロペラファン(10)は、一つのハブ(15)と、三つの翼(20)とを備えている。一つのハブ(15)と、三つの翼(20)とは、一体に形成されている。プロペラファン(10)の材質は、樹脂である。
図1,図2,及び図6に示すように、本実施形態のプロペラファン(10)は、一つのハブ(15)と、三つの翼(20)とを備えている。一つのハブ(15)と、三つの翼(20)とは、一体に形成されている。プロペラファン(10)の材質は、樹脂である。
ハブ(15)は、先端面(図1における上面)が閉塞した円筒状に形成されている。このハブ(15)は、ファンモータの駆動軸に取り付けられる。ハブ(15)の中心軸は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)である。
翼(20)は、ハブ(15)の外周面から外側へ突出するように配置されている。三つの翼(20)は、ハブ(15)の周方向へ互いに一定の角度間隔で配置されている。各翼(20)は、プロペラファン(10)の径方向の外側に向かって広がる形状となっている。各翼(20)の形状は、互いに同じである。
翼(20)は、プロペラファン(10)の径方向の中心側(即ち、ハブ(15)側)の端部が翼元(21)であり、プロペラファン(10)の径方向の外側の端部が翼端(22)である。翼(20)の翼元(21)は、ハブ(15)に接合されている。プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から翼元(21)までの距離riは、翼元(21)の全長に亘って実質的に一定である。また、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から翼端(22)までの距離roは、翼端(22)の全長に亘って実質的に一定である。
翼(20)は、プロペラファン(10)の回転方向の前側の縁部が前縁(23)であり、プロペラファン(10)の回転方向の後側の縁部が後縁(24)である。翼(20)の前縁(23)及び後縁(24)は、翼元(21)から翼端(22)へ向かってプロペラファン(10)の外周側へ延びている。
本実施形態では、翼(20)の翼端(22)において、プロペラファン(10)の回転方向の前側に位置する端部を前翼端(22a)とし、プロペラファン(10)の回転方向の後側に位置する端部を後翼端(22b)とする。前翼端(22a)は、プロペラファン(10)の径方向の外側に位置する前縁(23)の端部でもある。後翼端(22b)は、プロペラファン(10)の径方向の外側に位置する後縁(24)の端部でもある。
翼(20)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)と直交する平面に対して傾いている。具体的に、翼(20)は、前縁(23)がハブ(15)の先端(図1における上端)寄りに配置され、後縁(24)がハブ(15)の基端(図1における下端)寄りに配置されている。翼(20)は、プロペラファン(10)の回転方向の前側の面(図1における下向きの面)が正圧面(25)であり、プロペラファン(10)の回転方向の後側の面(図1における上向きの面)が負圧面(26)である。
図2に示すように、翼(20)は、前翼端(22a)付近の部分が、プロペラファン(10)の回転方向の前方に向かって尖った形状となっている。翼(20)の前縁(23)は、前翼端(22a)を除く全体が、前端平面(42)よりもプロペラファン(10)の回転方向の後側に位置している。翼(20)の前端平面(42)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)と翼(20)の前翼端(22a)とを含む平面である。
また、翼(20)は、後翼端(22b)付近の部分が、プロペラファン(10)の回転方向の後方に向かって尖った形状となっている。翼(20)の後縁(24)は、後翼端(22b)を除く全体が、後端平面(43)よりもプロペラファン(10)の回転方向の前側に位置している。翼(20)の後端平面(43)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)と翼(20)の後翼端(22b)とを含む平面である。
ここで、図2に示すように、翼(20)において第1平面(46)と前端平面(42)のなす角の角度をθxとする。翼(20)の後端平面(43)は、角度θx=θLの第1平面(46)である。
−翼の詳細な形状−
翼(20)の形状について、詳細に説明する。
翼(20)の形状について、詳細に説明する。
〈径方向断面〉
図3に示す翼(20)の径方向断面は、第1平面(46)における翼の断面である。第1平面(46)は、ハブの中心軸(即ち、プロペラファン(10)の回転中心軸(11))を含む平面である。この図3に示すように、翼(20)は、負圧面(26)側に傾斜している。
図3に示す翼(20)の径方向断面は、第1平面(46)における翼の断面である。第1平面(46)は、ハブの中心軸(即ち、プロペラファン(10)の回転中心軸(11))を含む平面である。この図3に示すように、翼(20)は、負圧面(26)側に傾斜している。
図3に示す翼(20)の径方向断面において、点Bは径方向断面の外側の端部の中点(厚さ方向の中央)であり、点Cは径方向断面の中心側の端部の中点(厚さ方向の中央)である。この径方向断面において、点Bと点Cを通る直線と第2平面(47)のなす角が、翼(20)の傾斜角φである。第2平面(47)は、ハブの中心軸(即ち、プロペラファン(10)の回転中心軸(11))と直交する平面である。
〈傾斜角〉
図4に示すように、本実施形態の翼(20)では、径方向断面の傾斜角φが、前端平面(42)からの角度θxに応じて変化する。この傾斜角φは、翼端(22)の前翼端(22a)から後翼端(22b)に至る過程(即ち、前端平面(42)から後端平面(43)に至る過程)において、一度だけ極小となり且つ一度も極大とならないように変化する。
図4に示すように、本実施形態の翼(20)では、径方向断面の傾斜角φが、前端平面(42)からの角度θxに応じて変化する。この傾斜角φは、翼端(22)の前翼端(22a)から後翼端(22b)に至る過程(即ち、前端平面(42)から後端平面(43)に至る過程)において、一度だけ極小となり且つ一度も極大とならないように変化する。
具体的に、傾斜角φは、前翼端(22a)と後翼端(22b)の間(即ち、前端平面(42)と後端平面(43)の間)に位置する基準径方向断面(41)において、最小値となる。翼(20)のうち基準径方向断面(41)よりも前翼端(22a)側の部分では、前端平面(42)との角度θxが増えるにつれて(即ち、プロペラファンの回転方向の逆側に進むにつれて)、傾斜角φが次第に減少する。一方、翼(20)のうち基準径方向断面(41)よりも後翼端(22b)側の部分では、前端平面(42)との角度θxが増えるにつれて(即ち、プロペラファンの回転方向の逆側に進むにつれて)、傾斜角φが次第に増加する。このように、本実施形態の翼(20)では、前翼端(22a)と後翼端(22b)の間の中間位置(即ち、基準径方向断面(41))から後翼端(22b)に亘る領域だけにおいて、傾斜角(φ)が後翼端(22b)へ近付くにつれて次第に大きくなる。
図5Aに示す翼(20)の径方向断面は、基準径方向断面(41)である。また、図5Bと図5Cに示す翼(20)の径方向断面は、基準径方向断面(41)よりも後翼端(22b)側に位置する。そして、図5Cに示す径方向断面(図2のIII-III断面)における傾斜角φCは、図5Bに示す径方向断面(図2のII-II断面)における傾斜角φBよりも大きく(φB<φC)、この傾斜角φBは、図5Aに示す径方向断面(図2のI-I断面)における傾斜角φAよりも大きい(φA<φB)。
また、本実施形態の翼(20)では、後翼端(22b)における傾斜角φが、前翼端(22a)における傾斜角φよりも大きい。なお、図4には、前翼端(22a)(角度比θx/θL=0.0)における傾斜角φの値と、後翼端(22b)(角度比θx/θL=1.0)における傾斜角φの値とが示されていない。これは、前翼端(22a)の近傍と後翼端(22b)の近傍とにおいては、径方向断面の長さが非常に短くなるため、傾斜角φの値を実質的に計測できないからである。従って、図4に示す傾斜角φの変化を示す曲線において、その左端の値が前翼端(22a)における実質的な傾斜角φであり、その右端の値が後翼端(22b)における実質的な傾斜角φである。
〈翼断面〉
図7に示す翼断面は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から距離rに位置する翼(20)の断面を平面に展開したものである。この図7に示すように、翼(20)は、負圧面(26)側に膨らむように反っている。
図7に示す翼断面は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から距離rに位置する翼(20)の断面を平面に展開したものである。この図7に示すように、翼(20)は、負圧面(26)側に膨らむように反っている。
図7に示す翼断面において、前縁(23)と後縁(24)を結んだ線分が翼弦(31)であり、翼弦(31)が“プロペラファン(10)の回転中心軸(11)と直交する平面”となす角が取付け角αである。翼弦長cは、半径がrで中心角がθの円弧の長さrθを、取付け角αに対する余弦cosαで除した値である(c=rθ/cosα)。なお、θは、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から距離rの位置における翼(20)の中心角であり(図2を参照)、その単位はラジアンである。
図7に示す翼断面において、正圧面(25)と負圧面(26)の中点を結んだ線が反り線(32)であり、翼弦(31)から反り線(32)までの距離が反り高さである。反り高さは、翼弦(31)に沿って前縁(23)から後縁(24)に向かうにつれて次第に増加し、前縁(23)から後縁(24)に至る途中で最大値となり、最大値となった位置から後縁(24)に近づくにつれて次第に減少する。反り高さの最大値が最大反り高さfであり、反り高さが最大反り高さfとなる翼弦(31)上の位置が最大反り位置Aである。また、前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離がdである。
〈反り比〉
図8に示すように、本実施形態の翼(20)では、翼断面における最大反り高さfの翼弦長cに対する比である反り比(f/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この反り比(f/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極大となり且つ一度も極小とならないように変化する。
図8に示すように、本実施形態の翼(20)では、翼断面における最大反り高さfの翼弦長cに対する比である反り比(f/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この反り比(f/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極大となり且つ一度も極小とならないように変化する。
具体的に、反り比(f/c)は、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する第2基準翼断面(33b)において最大値(fm2/cm2)となる。なお、fm2は、第2基準翼断面(33b)における最大反り高さであり、cm2は、第2基準翼断面(33b)における翼弦長である(図10Bを参照)。
また、反り比(f/c)は、翼元(21)から第2基準翼断面(33b)へ向かって次第に増加し、第2基準翼断面(33b)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、ri≦r≦rm2の場合は距離rが大きくなるにつれて反り比(f/c)が大きくなり、rm2≦r≦roの場合は距離rが大きくなるにつれて反り比(f/c)が小さくなる。
ここで、第2基準翼断面(33b)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離がrm2の位置の翼断面である。つまり、第2基準翼断面(33b)は、翼元(21)から距離(rm2−ri)だけ離れた位置の翼断面である。本実施形態において、翼元(21)から第2基準翼断面(33b)までの距離(rm2−ri)は、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の約15%となっている。つまり、第2基準翼断面(33b)は、プロペラファン(10)の径方向における翼元(21)と翼端(22)の中央よりも翼元(21)寄りに位置している。
本実施形態の翼(20)では、翼端(22)における反り比(fo/co)が、翼元(21)における反り比(fi/ci)よりも小さくなっている。具体的に、翼端(22)における反り比(fo/co)は、翼元(21)における反り比(fi/ci)の約55%である。なお、fiは、翼元(21)における最大反り高さであり、ciは、翼元(21)における翼弦長である(図10Aを参照)。また、foは、翼端(22)における最大反り高さであり、coは、翼端(22)における翼弦長である(図10Cを参照)。
〈最大反り位置比〉
図9に示すように、本実施形態の翼(20)では、前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離dの翼弦長cに対する比である最大反り位置比(d/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極大となり且つ一度も極小とならないように変化する。
図9に示すように、本実施形態の翼(20)では、前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離dの翼弦長cに対する比である最大反り位置比(d/c)が、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離に応じて変化する。この最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から翼端(22)へ至る過程において、一度だけ極大となり且つ一度も極小とならないように変化する。
具体的に、最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)と翼端(22)の間に位置する第1基準翼断面(33a)において最大値(dm1/cm1)となる。なお、dm1は、第1基準翼断面(33a)における前縁(23)から上記最大反り位置Aまでの距離である。
また、最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から第1基準翼断面(33a)へ向かって次第に増加し、第1基準翼断面(33a)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、ri≦r≦rm1の場合は距離rが大きくなるにつれて最大反り位置比(d/c)が大きくなり、rm1≦r≦roの場合は距離rが大きくなるにつれて最大反り位置比(d/c)が小さくなる。最大反り位置比(d/c)が大きくなるほど、最大反り位置Aが相対的に前縁(23)から遠ざかり、最大反り位置Aが相対的に後縁(24)に近づく。プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から任意の距離に位置する翼断面における最大反り位置Aを結んだ最大反り位置線(35)を、図6に二点鎖線で示す。
ここで、第1基準翼断面(33a)は、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)からの距離がrm1の位置の翼断面である。つまり、第1基準翼断面(33a)は、翼元(21)から距離(rm1−ri)だけ離れた位置の翼断面である。本実施形態において、翼元(21)から第1基準翼断面(33a)までの距離(rm1−ri)は、翼元(21)から翼端(22)までの距離(ro−ri)の約90%となっている。つまり、第1基準翼断面(33a)は、プロペラファン(10)の径方向における翼元(21)と翼端(22)の中央よりも翼端(22)寄りに位置している。
本実施形態の翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(do/co)が、翼元(21)における最大反り位置比(di/ci)よりも大きくなっている。なお、diは、翼元(21)における前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離であり(図10Aを参照)、doは、翼端(22)における前縁(23)から最大反り位置Aまでの距離である(図10Cを参照)。
また、本実施形態の翼(20)では、全ての翼断面において、最大反り位置比(d/c)が、0.55以上0.65以下の値に設定されている。この最大反り位置比(d/c)は、0.5以上0.8以下の値に設定されるのが望ましい。
〈取付け角〉
図10A〜図10Cに示すように、本実施形態の翼(20)では、取付け角αが翼元(21)から翼端(22)へ向かって次第に小さくなっている。つまり、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から離れた翼断面ほど、取付け角αが小さくなっている。従って、本実施形態の翼(20)では、翼元(21)における取付け角αiが最大値であり、翼端(22)における取付け角αoが最小値である。
図10A〜図10Cに示すように、本実施形態の翼(20)では、取付け角αが翼元(21)から翼端(22)へ向かって次第に小さくなっている。つまり、プロペラファン(10)の回転中心軸(11)から離れた翼断面ほど、取付け角αが小さくなっている。従って、本実施形態の翼(20)では、翼元(21)における取付け角αiが最大値であり、翼端(22)における取付け角αoが最小値である。
−プロペラファンの送風作用−
本実施形態のプロペラファン(10)は、ハブ(15)に連結されたファンモータによって駆動され、図2における時計方向へ回転する。プロペラファン(10)が回転すると、空気が翼(20)によってプロペラファン(10)の回転中心軸(11)方向へ押し出される。
本実施形態のプロペラファン(10)は、ハブ(15)に連結されたファンモータによって駆動され、図2における時計方向へ回転する。プロペラファン(10)が回転すると、空気が翼(20)によってプロペラファン(10)の回転中心軸(11)方向へ押し出される。
プロペラファン(10)の各翼(20)では、正圧面(25)側の気圧が大気圧よりも高くなり、負圧面(26)側の気圧が大気圧よりも低くなる。このため、プロペラファン(10)の各翼(20)には、翼(20)を正圧面(25)から負圧面(26)へ向かって押す方向の揚力が作用する。この揚力は、プロペラファン(10)の各翼(20)が空気を押し出す力の反力である。従って、翼(20)に作用する揚力が大きいほど、空気を押し出す翼(20)の仕事量が大きくなる。
〈傾斜角と気流の関係〉
上述したように、回転中のプロペラファン(10)の各翼(20)では、正圧面(25)側の気圧が大気圧よりも高くなり、負圧面(26)側の気圧が大気圧よりも低くなる。このため、翼(20)では、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ流れ込む空気の流れが生じる。
上述したように、回転中のプロペラファン(10)の各翼(20)では、正圧面(25)側の気圧が大気圧よりも高くなり、負圧面(26)側の気圧が大気圧よりも低くなる。このため、翼(20)では、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ流れ込む空気の流れが生じる。
翼(20)では、翼(20)の正圧面(25)側から負圧面(26)側へ翼端(22)を回り込んで空気が逆流することによって翼端渦(90)が生じる。この翼端渦(90)の大きさが変動すると、翼(20)の正圧面(25)側から負圧面(26)側へ逆流する空気の流量が変動する。その結果、翼の正圧面(25)側の圧力(即ち、プロペラファン(10)から吹き出される空気の圧力)が変動し、送風音の増加や、ファン効率の低下を招くおそれがある。
これに対し、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、基準径方向断面(41)から後翼端(22b)までの領域において、後翼端(22b)へ近付くにつれて傾斜角(φ)が次第に大きくなる。傾斜角(φ)は、ハブ(15)の中心軸と直交する第2平面(47)に対する径方向断面の傾きの程度を表す指標である。従って、本実施形態の翼(20)では、基準径方向断面(41)から後翼端(22b)までの領域において、径方向断面の第2平面(47)に対する傾きが次第に大きくなる。
そして、径方向断面の第2平面(47)に対する傾きが大きくなるにつれて、空気が翼端(22)を回り込んで流れる際の空気流の向きの変化が小さくなる。このため、翼(20)の正圧面側から負圧面側へ翼端(22)を回り込む空気の流れがスムーズになり、その結果、翼端渦(90)の大きさの変動が抑えられる。
ここで、翼(20)の翼端(22)付近において発生した翼端渦(90)は、翼端(22)の後翼端(22b)へ向かって発達してゆく。一方、本実施形態の翼(20)では、基準径方向断面(41)から後翼端(22b)までの領域において、傾斜角φが次第に大きくなる。つまり、本実施形態の翼(20)では、翼端(22)のうち翼端渦(90)が発達してゆく領域において、径方向断面の第2平面(47)に対する傾きが次第に大きくなる。このため、翼(20)の基準径方向断面(41)から後翼端(22b)までの領域において、翼(20)の正圧面側から負圧面側へ翼端(22)を回り込む空気の流れがスムーズになる。従って、本実施形態では、翼端渦(90)の大きさの変動が抑えられる。
〈反り比と気流の関係〉
プロペラファン(10)における翼(20)の翼元(21)付近は、ハブ(15)の近傍であるため、気流の乱れが生じやすい領域である。一方、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33b)から翼元(21)へ向かって次第に減少する。つまり、翼(20)のうち気流の乱れが生じやすい翼元(21)付近の領域において、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33b)に比べて小さくなる。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れが抑制され、乱れによって消費されるエネルギが減少する。その結果、ファン効率が向上し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
プロペラファン(10)における翼(20)の翼元(21)付近は、ハブ(15)の近傍であるため、気流の乱れが生じやすい領域である。一方、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33b)から翼元(21)へ向かって次第に減少する。つまり、翼(20)のうち気流の乱れが生じやすい翼元(21)付近の領域において、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33b)に比べて小さくなる。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れが抑制され、乱れによって消費されるエネルギが減少する。その結果、ファン効率が向上し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、反り比(f/c)が第2基準翼断面(33b)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。つまり、各翼(20)では、第2基準翼断面(33b)から、第2基準翼断面(33b)よりも周速度の高い翼端(22)へ向かって、反り比(f/c)が次第に小さくなる。このため、翼(20)の仕事量(具体的には、翼(20)に作用する揚力)が翼(20)の全体で平均化され、その結果、ファン効率の向上が図られる。
ここで、プロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)の周速度が翼元(21)の周速度よりも高い。このため、翼端(22)における反り比(fo/co)が翼元(21)における反り比(fi/ci)と同程度であると、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差が大きくなり過ぎ、その結果、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ流れる空気の流量が多くなってファン効率の低下を招くおそれがある。
これに対し、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)は、翼端(22)における反り比(fo/co)が、翼元(21)における反り比(fi/ci)の約56%程度となっている。このため、各翼(20)の翼端(22)付近における正圧面(25)側と負圧面(26)側の気圧差が過大でない程度に抑えられる。その結果、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ逆流する空気の流量が低減され、ファン効率の向上が図られる。また、翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)が抑制され、この翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少するため、その点でもファン効率の向上が図られる。
〈最大反り位置比と気流の関係〉
プロペラファン(10)の翼(20)では、翼端(22)において反り高さが最大となる位置の近傍において翼端渦(90)が発生する。そして、図12に示すように、翼端渦(90)の発生位置が翼(80)の前縁(23)に近づくほど、翼端渦(90)が長くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが増加する。
プロペラファン(10)の翼(20)では、翼端(22)において反り高さが最大となる位置の近傍において翼端渦(90)が発生する。そして、図12に示すように、翼端渦(90)の発生位置が翼(80)の前縁(23)に近づくほど、翼端渦(90)が長くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが増加する。
これに対し、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(do/co)が、翼元(21)における最大反り位置比(di/ci)よりも大きい。つまり、各翼(20)の翼端(22)では、翼断面において反り高さが最大となる最大反り位置Aが、翼(20)の後縁(24)に相対的に近づく。そして、図11に示すように、本実施形態の翼(20)では、図12に示す従来の翼(80)に比べて、翼端渦(90)の発生位置が翼(20)の後縁(24)に近くなる。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少する。その結果、ファン効率が向上し、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力が減少する。
ここで、翼(20)の負圧面(26)に沿って前縁(23)から後縁(24)に向かう気流は、最大反り位置Aを過ぎた付近で翼(20)の負圧面(26)から剥離することがある。このため、最大反り位置Aを前縁(23)に近づけ過ぎると、気流が翼(20)の負圧面(26)から剥離する領域が拡大し、送風音の増大や、ファン効率の低下を招くおそれがある。この問題を回避するには、最大反り位置比(d/c)を0.5以上の値に設定するのが望ましい。そこで、本実施形態の翼(20)では、最大反り位置比(d/c)を0.55以上にしている。
また、最大反り位置Aを後縁(24)に近づけ過ぎると、翼断面の形状が、後縁(24)寄りの位置で急激に折れ曲がるような形状となる。このため、最大反り位置Aが後縁(24)に近すぎると、翼(20)の負圧面(26)に沿って流れる気流が負圧面(26)から剥離しやすくなる。そして、気流が翼(20)の負圧面(26)から剥離すると、送風音の増大や、ファン効率の低下を招くおそれがある。この問題を回避するには、最大反り位置比(d/c)を0.8以下の値に設定するのが望ましい。そこで、本実施形態の翼(20)では、最大反り位置比(d/c)を0.65以下にしている。
上述したように、本実施形態の翼(20)は、取付け角αが翼元(21)に近い翼断面ほど大きくなっている。取付け角αが大きいほど、翼(20)の負圧面(26)に沿って流れる気流が、負圧面(26)から剥離しやすくなる。一方、最大反り位置比(d/c)が概ね0.5以上の範囲では、最大反り位置比(d/c)が小さいほど(即ち、最大反り位置Aが相対的に前縁(23)に近づくほど)、翼(20)の負圧面(26)に沿って流れる気流が負圧面(26)から剥離しにくくなる。そこで、本実施形態の翼(20)では、第1基準翼断面(33a)から翼元(21)の間の領域において、翼元(21)に近づくにつれて(即ち、取付け角αが大きくなるにつれて)最大反り位置比(d/c)を次第に小さくし、翼(20)の負圧面(26)からの気流の剥離を生じにくくしている。
−実施形態1の効果−
本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、前翼端(22a)と後翼端(22b)の間に位置する基準径方向断面(41)から後翼端(22b)に亘る領域において、傾斜角φが後翼端(22b)へ近付くにつれて次第に大きくなる。このため、翼端(22)のうち翼端渦(90)が発達してゆく後翼端(22b)寄りの領域において、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ向かう空気の流れをスムーズにすることができ、翼端渦(90)の大きさの変動を抑えることができる。従って、本実施形態によれば、翼端渦(90)に起因する騒音の増加とファン効率の低下を抑えることが可能となる。
本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、前翼端(22a)と後翼端(22b)の間に位置する基準径方向断面(41)から後翼端(22b)に亘る領域において、傾斜角φが後翼端(22b)へ近付くにつれて次第に大きくなる。このため、翼端(22)のうち翼端渦(90)が発達してゆく後翼端(22b)寄りの領域において、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ向かう空気の流れをスムーズにすることができ、翼端渦(90)の大きさの変動を抑えることができる。従って、本実施形態によれば、翼端渦(90)に起因する騒音の増加とファン効率の低下を抑えることが可能となる。
ここで、一般的なプロペラファンの翼は、後端平面(43)よりもプロペラファンの回転方向の後側に位置する領域(後方領域)が存在するのが通常である。しかし、この後方領域は、プロペラファンの送風能力に殆ど寄与しない。また、この後方領域と空気の摩擦によってプロペラファンの駆動に要する動力が消費され、プロペラファンの効率低下を招くおそれがある。
一方、本実施形態のプロペラファン(10)において、各翼(20)の後縁(24)は、後翼端(22b)を除く全体が、後端平面(43)よりもプロペラファン(10)の回転方向の前側に位置している。つまり、本実施形態の翼(20)には、上述した後方領域が存在しない。このため、本実施形態によれば、プロペラファン(10)の送風能力を保ちながら、翼(20)と空気の摩擦によって消費される動力を削減でき、プロペラファン(10)の効率を向上させることが可能となる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における最大反り位置比(do/co)が、翼元(21)における最大反り位置比(di/ci)よりも大きい。このため、翼端渦(90)の発達が抑制されて翼端渦(90)が短くなり、翼端渦(90)の生成に消費されるエネルギが減少する。従って、本実施形態によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを低減することによってファン効率を向上させることができ、プロペラファン(10)を駆動するファンモータの消費電力を削減できる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、最大反り位置比(d/c)が0.5以上0.8以下に設定されている。このため、翼(20)の負圧面(26)から気流が剥離しにくくなり、気流の剥離に起因する送風音の増加やファン効率の低下を抑えることができる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、反り比(f/c)が、第2基準翼断面(33b)において最大となり、第2基準翼断面(33b)から翼元(21)へ向かって次第に減少し、且つ第2基準翼断面(33b)から翼端(22)へ向かって次第に減少する。このため、各翼(20)の翼元(21)付近における気流の乱れを抑えることができると共に、各翼(20)の全体において翼(20)の仕事量を平均化できる。従って、本実施形態によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)の各翼(20)では、翼端(22)における反り比(f/c)が、翼元(21)における反り比(f/c)よりも小さくなっている。このため、翼(20)の正圧面(25)側から翼端(22)を回り込んで負圧面(26)側へ逆流する空気の流量を削減できると共に、翼端(22)付近で発生する翼端渦(90)を抑制できる。従って、本実施形態によれば、ファンを回転駆動するための動力のロスを更に低減でき、ファン効率の更なる向上を図ることができる。
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態のプロペラファン(10)は、実施形態1のプロペラファン(10)において、翼(20)の形状を変更したものである。ここでは、本実施形態のプロペラファン(10)について、実施形態1のプロペラファン(10)と異なる点を説明する。
実施形態2について説明する。本実施形態のプロペラファン(10)は、実施形態1のプロペラファン(10)において、翼(20)の形状を変更したものである。ここでは、本実施形態のプロペラファン(10)について、実施形態1のプロペラファン(10)と異なる点を説明する。
図13に示すように、本実施形態のプロペラファン(10)は、各翼(20)が後方領域(27)を有している。後方領域(27)は、図13においてドットを付した領域であって、翼(20)のうち後端平面(43)よりもプロペラファンの回転方向の後側に位置する部分である。本実施形態の翼(20)の後縁(24)は、後翼端(22b)を除く全体が、後端平面(43)よりもプロペラファン(10)の回転方向の後側に位置している。
本実施形態のプロペラファン(10)において、各翼(20)の傾斜角φは、前翼端(22a)から基準径方向断面(41)へ向かって次第に小さくなり、基準径方向断面(41)において最小となり、基準径方向断面(41)から後翼端(22b)へ向かって次第に大きくなる。このため、本実施形態のプロペラファン(10)によれば、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、上述したように傾斜角φが変化することによる効果が得られる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)において、各翼(20)の反り比(f/c)は、翼元(21)から第2基準翼断面(33b)へ向かって次第に大きくなり、第2基準翼断面(33b)において最大となり、第2基準翼断面(33b)から翼端(22)へ向かって次第に小さくなる。このため、本実施形態のプロペラファン(10)によれば、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、上述したように反り比(f/c)が変化することによる効果が得られる。
また、本実施形態のプロペラファン(10)において、各翼(20)の最大反り位置比(d/c)は、翼元(21)から第1基準翼断面(33a)へ向かって次第に大きくなり、第1基準翼断面(33a)において最大となり、第1基準翼断面(33a)から翼端(22)へ向かって次第に小さくなる。このため、本実施形態のプロペラファン(10)によれば、実施形態1のプロペラファン(10)と同様に、上述したように最大反り位置比(d/c)が変化することによる効果が得られる。
以上説明したように、本発明は、送風機などに用いられるプロペラファンについて有用である。
10 プロペラファン
15 ハブ
20 翼
21 翼元
22 翼端
22a 前翼端(22a)
22b 後翼端(22b)
31 翼弦
32 反り線
33 基準翼断面(第1基準翼断面(33a)、第2基準翼断面(33b))
41 基準径方向断面(41)
43 後端平面(43)
46 第1平面(46)
47 第2平面(47)
15 ハブ
20 翼
21 翼元
22 翼端
22a 前翼端(22a)
22b 後翼端(22b)
31 翼弦
32 反り線
33 基準翼断面(第1基準翼断面(33a)、第2基準翼断面(33b))
41 基準径方向断面(41)
43 後端平面(43)
46 第1平面(46)
47 第2平面(47)
第1の発明は、円筒状のハブ(15)と、該ハブ(15)の側面から外方へ伸びる複数の翼(20)とを備えるプロペラファンを対象とする。そして、上記翼(20)のそれぞれは、上記ハブ(15)の中心軸を含む第1平面(46)における上記翼(20)の断面を径方向断面とし、上記径方向断面の外周側端と内周側端を通る直線と、上記ハブ(15)の中心軸と直交する第2平面(47)とのなす角を傾斜角(φ)とし、上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)とし、上記翼端(22)の上記プロペラファンの回転方向における前端を前翼端(22a)とし、上記翼端(22)の上記プロペラファンの回転方向における後端を後翼端(22b)とし、上記径方向断面の外周側端と内周側端を通る直線が上記第2平面(47)に対して上記翼(20)の負圧面(26)側に傾斜している場合に上記傾斜角(φ)が正の値になるとしたときに、上記前翼端(22a)と上記後翼端(22b)の間の中間位置から上記後翼端(22b)に亘る領域において、上記中間位置から上記後翼端(22b)へ向かって上記傾斜角(φ)が単調増加するものである。
10 プロペラファン
15 ハブ
20 翼
21 翼元
22 翼端
22a 前翼端
22b 後翼端
31 翼弦
32 反り線
33 基準翼断面(第1基準翼断面、第2基準翼断面)
41 基準径方向断面
43 後端平面
46 第1平面
47 第2平面
15 ハブ
20 翼
21 翼元
22 翼端
22a 前翼端
22b 後翼端
31 翼弦
32 反り線
33 基準翼断面(第1基準翼断面、第2基準翼断面)
41 基準径方向断面
43 後端平面
46 第1平面
47 第2平面
Claims (6)
- 円筒状のハブ(15)と、該ハブ(15)の側面から外方へ伸びる複数の翼(20)とを備えるプロペラファンであって、
上記翼(20)のそれぞれは、
上記ハブ(15)の中心軸を含む第1平面(46)における上記翼(20)の断面を径方向断面とし、
上記径方向断面の外周側端と内周側端を通る直線と、上記ハブ(15)の中心軸と直交する第2平面(47)とのなす角を傾斜角(φ)とし、
上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)とし、
上記翼端(22)の上記プロペラファンの回転方向における前端を前翼端(22a)とし、
上記翼端(22)の上記プロペラファンの回転方向における後端を後翼端(22b)としたときに、
上記前翼端(22a)と上記後翼端(22b)の間の中間位置から上記後翼端(22b)に亘る領域において、上記中間位置から上記後翼端(22b)へ向かって上記傾斜角(φ)が単調増加する
ことを特徴とするプロペラファン。 - 請求項1において、
上記翼(20)のそれぞれは、
上記前翼端(22a)と上記後翼端(22b)の間の中間位置から上記後翼端(22b)に亘る領域だけにおいて、上記傾斜角(φ)が上記後翼端(22b)へ近付くにつれて次第に大きくなる
ことを特徴とするプロペラファン。 - 請求項1又は2において、
上記翼(20)のそれぞれは、
上記前翼端(22a)から上記中間位置に亘る領域において、上記傾斜角(φ)が上記後翼端(22b)へ近付くにつれて次第に小さくなり、
上記傾斜角(φ)が、上記中間位置において最小となる
ことを特徴とするプロペラファン。 - 請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
上記翼(20)のそれぞれは、
上記後翼端(22b)と上記ハブ(15)の中心軸とを含む平面を後端平面(43)としたときに、
上記翼(20)の後縁(24)が、上記後端平面(43)の上、又は上記後端平面(43)よりも上記プロペラファンの回転方向の前側に位置している
ことを特徴とするプロペラファン。 - 請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
上記翼(20)のそれぞれは、
翼断面における翼弦(31)から反り線(32)までの距離を反り高さとし、
上記翼断面において上記反り高さが最大となる上記翼弦(31)上の位置を最大反り位置(A)とし、
上記翼断面における前縁(23)から上記最大反り位置(A)までの距離(d)の翼弦長(c)に対する比を最大反り位置比(d/c)とし、
上記翼(20)のハブ(15)側の端部を翼元(21)とし、
上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)としたときに、
上記翼端(22)における上記最大反り位置比(d/c)が、上記翼元(21)における上記最大反り位置比(d/c)よりも大きい
ことを特徴とするプロペラファン。 - 請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
上記翼(20)のそれぞれは、
翼断面における翼弦(31)から反り線(32)までの距離である反り高さの最大値を最大反り高さ(f)とし、
上記翼断面における上記最大反り高さ(f)の翼弦長(c)に対する比を反り比(f/c)とし、
上記翼(20)のハブ(15)側の端部を翼元(21)とし、
上記翼(20)の外周側の端部を翼端(22)としたときに、
上記反り比(f/c)が、上記翼元(21)と上記翼端(22)の間に位置する基準翼断面(33b)において最大となり、上記基準翼断面(33b)から上記翼元(21)へ向かって単調減少し、上記基準翼断面(33b)から上記翼端(22)へ向かって単調減少する
ことを特徴とするプロペラファン。
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