JP2018178026A - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粘度平均分子量20,000〜40,000のビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂(I)及び、下記式(1)で表されるカーボネート構造単位(A)と下記式(2)で表されるカーボネート構造単位(B)とを含み、カーボネート構造単位(A)とカーボネート構造単位(B)の合計100mol%に対し、カーボネート構造単位(B)の割合が、10mol%を超え、36.5mol%以下であるポリカーボネートコポリマー(II)を含有し、前記ポリカーボネート樹脂(I)100質量部に対し、前記ポリカーボネートコポリマーを4〜40質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
近年、自動車材料、電気電子機器材料を中心に、部材の軽薄短小化、集積大型化が進み、材料の成形加工性はますます高いレベルで要求されている。
する構造単位を特定量含む芳香族ポリカーボネートコポリマーが、ポリカーボネート樹脂用の流動改質剤として有効であることを見出し、さらには特定の分子量のポリカーボネート樹脂に上記芳香族ポリカーボネートコポリマーを特定量含有させることで、優れた流動性、優れた強度、優れた色相、優れた透明性を同時に有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[5]に存する。
下記式(1)で表されるカーボネート構造単位(A)と下記式(2)で表されるカーボネート構造単位(B)とを含み、カーボネート構造単位(A)とカーボネート構造単位(B)の合計100mol%に対し、カーボネート構造単位(B)の割合が、10mol%を超え、36.5mol%以下であるポリカーボネートコポリマー(II)を含有し、前記ポリカーボネート樹脂(I)100質量部に対し、前記ポリカーボネートコポリマー(II)を4〜40質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[2]前記カーボネート構造単位(B)が、下記式(6)、(8)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[4]前記ポリカーボネートコポリマー(II)はASTM D256に準拠し測定したIzod衝撃値が、500J/m以上であることを特徴とする[3]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[5]前記ポリカーボネートコポリマー(II)はJIS(1999年度版)K7210
付属書Cに準拠し、高化式フローテスターを用いて、280℃、160kgf/cm2の条件で測定した流れ値(Q値)が、4〜18(単位:10−2cm3/sec)であることを特徴とする[1]乃至[4]の何れかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂(I)を含む。このような芳香族ポリカーボネート樹脂(I)を有することで本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の衝撃強度、曲げ強度等の機械物性、耐熱性、及び光学特性が良好なものとなる。本発明におけるポリカーボネート樹脂(I)は、特定の分子量を有するビスフェノールA型の樹脂であればよいが、具体的には、下記式(1)で表されるカーボネート構造単位(A)を有することが好ましい。
また本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂(I)において、上述のカーボネート構造単位(A)とは異なるその他のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位を含む場合、前記芳香族ポリカーボネート樹脂(I)中の全カーボネート構造単位に対する前記その他のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位の割合は、適宜選択すればよいが、通常0.1〜25mol%である。
化合物としては、具体的には以下のものが挙げられる。
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、4,4−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−
ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;
イソソルビド、イソマンニド、イソイデット等の酸素含有複素環ジヒドロキシ化合物類等が挙げられる。
なお、脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の分子量は、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、通常20,000〜40,000であることを特徴とする。粘度平均分子量が上記下限値未満の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械物性が低下するため好ましくない。また粘度平均分子量が上記上限値を超える場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が極端に不十分となる傾向があるため好ましくない。このような観点より、芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは20,500以上、より好ましくは21,000以上、さらに好ましくは21,500以上であり、特に好ましくは22,000以上である。また好ましくは35,000以下、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは28,000以下であり、特に好ましくは27,000以下である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の末端水酸基量は、特に制限はないが、通常10〜2000ppmである。また、好ましくは20ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、さらに好ましくは100ppm以上であり、一方で、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは700ppm以下である。末端水酸基量を前記範囲内とすることで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の色相、熱安定性、湿熱安定性をより向上させることができる。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の末端水酸基量は、公知の任意の方法によって容易に上記範囲に調整することができる。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の製造方法は、公知の手法であれば特に制限はなく適宜選択し用いることができるが、上述のカーボネート構造単位(A)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物、及び任意で選択されるその他のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって得られる。
カーボネート構造単位(A)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物については、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(いわゆるビスフェノールA)を好適に用いることができる。
種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
れる。
まず、本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂(I)を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、原料のジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによって芳香族ポリカーボネートコポリマーを得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
原料のジヒドロキシ化合物及びカーボネート形成性化合物は、前述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、原料のジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
香族フェノールとしては、具体的には例えば、フェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、o−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−n−ペンチルフェノール、m−n−ペンチルフェノール、p−n−ペンチルフェノール、o−n−ヘキシルフェノール、m−n−ヘキシルフェノール、p−n−ヘキシルフェノール、p−t−オクチルフェノール、o−シクロヘキシルフェノール、m−シクロヘキシルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、o−n−ノニルフェノール、m−ノニルフェノール、p−n−ノニルフェノール、o−クミルフェノール、m−クミルフェノール、p−クミルフェノール、o−ナフチルフェノール、m−ナフチルフェノール、p−ナフチルフェノール;2、5−ジ−t−ブチルフェノール;2、4−ジ−t−ブチルフェノール;3、5−ジ−t−ブチルフェノール;2、5−ジクミルフェノール;3、5−ジクミルフェノール;p−クレゾール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、平均炭素数12〜35の直鎖状又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位又はパラ位に有するモノアルキルフェノール;9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(4−メトキシフェニル)フルオレン;9−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン;4−(1−アダマンチル)フェノールなどが挙げられる。これらのなかでは、p−t−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール及びp−クミルフェノールが好ましく用いられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、原料のジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
なお、反応温度は、特に限定されないが、通常0〜40℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
次に、本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂(I)を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、カーボネートエステルと原料のジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
原料のジヒドロキシ化合物、及びカーボネートエステルは、上述の通りである。
原料のジヒドロキシ化合物とカーボネートエステル(前記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)との比率は所望の芳香族ポリカーボネート樹脂(I)が得られる限り任意であるが、これらカーボネートエステルは、ジヒドロキシ化合物と重合させる際に、原料のジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いることが好ましい。すなわち、カーボネートエステルは、ジヒドロキシ化合物に対して、1.01〜1.30倍量(モル比)であることが好ましく、1.02〜1.20倍量(モル比)であることがより好ましい。モル比が小さすぎると、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が大きすぎると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の生産が困難となる場合や、樹脂中のカーボネートエステルの残存量が多くな
り、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となる場合がある。
反応形式は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂(I)が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。但しなかでも、芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
触媒失活剤の使用量は、特に限定されないが、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常20当量以下、好ましくは10当量以下である。さらには、芳香族ポリカーボネート樹脂(I)に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記式(1)で表されるカーボネート構造単位(A)と、下記式(2)で表されるカーボネート構造単位(B)とを含有し、カーボネート構造単位(A)とカーボネート構造単位(B)の合計100mol%に対し、カーボネート構造単位(B)の割合が、10mol%を超え、39mol%未満、好ましくは36.5mol%以下、であるポリカーボネートコポリマー(II)を含むことを特徴とする。
立に0〜4の整数を表す。
ジメチルへプチル基、ジメチルオクチル基、ジメチルノニル基、ジメチルデシル、ジメ
チルウンデシル基、ジメチルドデシル基、ジメチルトリデシル基、ジメチルテトラデシル基、ジメチルペンタデシル基、ジメチルヘキサデシル基、ジメチルヘプタデシル、ジメチルオクタデシル基、ジメチルノナデシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルヘンイコシル基、ジメチルドコシル基、
トリメチルへプチル基、トリメチルオクチル基、トリメチルノニル基、トリメチルデシル、トリメチルウンデシル基、トリメチルドデシル基、トリメチルトリデシル基、トリメチルテトラデシル基、トリメチルペンタデシル基、トリメチルヘキサデシル基、トリメチルヘプタデシル、トリメチルオクタデシル基、トリメチルノナデシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルヘンイコシル基、
エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基、エチルドコシル基、
プロピルヘキシル基、プロピルへプチル基、プロピルオクチル基、プロピルノニル基、プロピルデシル、プロピルウンデシル基、プロピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基、
ブチルヘキシル基、ブチルへプチル基、ブチルオクチル基、ブチルノニル基、ブチルデシル、ブチルウンデシル基、ブチルドデシル基、ブチルトリデシル基、ブチルテトラデシル基、ブチルペンタデシル基、ブチルヘキサデシル基、ブチルヘプタデシル、ブチルオクタデシル基、ブチルノナデシル基、ブチルイコシル基、ブチルイコシル基が挙げられる。なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
とがさらに好ましい。
いられるポリカーボネートコポリマー(II)を芳香族ポリカーボネート樹脂(I)に配合する場合に相溶性、分散性が向上し、良好な機械物性が得られるようになる。
なお、ポリカーボネートコポリマー(II)の全カーボネート構造単位に対する前記カーボネート構造単位(B)の割合は、100×(カーボネート構造単位(B)を構成するモノマーのモル数/全カーボネート構造単位を構成するビスフェノールの全モル数)で定義される。
本発明で用いられるポリカーボネートコポリマー(II)の分子量は、特に制限はないが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、通常5,000〜50,000である。粘度平均分子量が上記下限値未満の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械物性が低下しやすく、またポリカーボネートコポリマーがブリードしやすくなる傾向にある。また粘度平均分子量が上記上限値を超える場合は、流動性が不十分となる傾向があるため好ましくない。このような観点より、ポリカーボネートコポリマー(II)の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは9,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは11,000以上であり、また好ましくは30,000以下、より好ましくは25,000以下、さらに好ましくは20,000以下であり、特に好ましくは18,000以下である。
ポリカーボネートコポリマー(II)の粘度平均分子量(Mv)は、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の測定法と同様である。
本発明で用いられるポリカーボネートコポリマー(II)の末端水酸基量は、特に制限はないが、通常10〜2,000ppmである。また、好ましくは20ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、さらに好ましくは100ppm以上であり、一方で、好ましくは1,800ppm以下、より好ましくは1,600ppm以下、さらに好ましくは1,500ppm以下である。末端水酸基量を前記範囲内とすることで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の色相、熱安定性、湿熱安定性をより向上させることができる。なお、ポリカーボネートコポリマー(II)の末端水酸基量も、公知の任意の方法によって容易に上記範囲に調整することができる。
ーボネート樹脂(I)の末端水酸基量の測定方法と同様である。複数のジヒドロキシ化合物からなるポリカーボネートコポリマーの水酸基量の測定方法も、複数のジヒドロキシ化合物からなる芳香族ポリカーボネート樹脂共重合体における測定方法と同様である。
本発明で用いられるポリカーボネートコポリマー(II)の製造方法は、上述のカーボネート構造単位(A)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物、カーボネート構造単位(B)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物及び任意で選択されるその他のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって得られる。
カーボネート構造単位(B)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物については、例えば下記式(30)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
このような観点より、より好ましいカーボネート構造単位(B)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、以下が挙げられる。
2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ウンデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ドデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)トリデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)テトラデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ペンタデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘキサデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)オクタデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ノナタデカン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)イコサン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イコサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘンイコサン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ドコサン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドコサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)トリコサン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリコサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)テトラコサン、1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
ドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン等である。
またカーボネート構造単位(A)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物、及びカーボネート構造単位(B)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物とは異なるその他のジヒドロキシ化合物については、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂(I)におけるカーボネート構造単位(A)を形成するジヒドロキシ化合物とは異なるその他のジヒドロキシ化合物として例示したものと同様である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上述のビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂(I)100質量部と、上述のポリカーボネートコポリマー(II)4〜40質量部とを含有することを特徴とする。本発明で用いられるポリカーボネートコポリマー(II)を芳香族ポリカーボネート樹脂(I)に上述の範囲で含有させることで芳香族ポリカーボネート樹脂の有する機械物性、熱特性、光学特性等の諸物性を大きく損なうことなく、流動性、成形加工性を向上させることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂(I)に対するポリカーボネートコポリマー(II)が、前記範囲の下限値未満の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が不十分であり、前記範囲の上限値を超える場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性や機械強度が低下する恐れがあるため好ましくない。このような観点より、発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における、芳香族ポリカーボネート樹脂(I)100質量部に対する、上述のポリカーボネートコポリマー(II)の含有量は5質量部以上であることが好ましく、10質量部であることがより好ましく、15質量部であることがさらに好ましく、2
0質量部以上であることが特に好ましい。また、38質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることがより好ましく、33質量部以下であることがさらに好ましく、30質量部以下であることが特に好ましい。なお、ポリカーボネートコポリマー(II)の最適な含有量は、適用するポリカーボネートコポリマー(II)のカーボネート構造(B)の種類、含有割合及び芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の種類や本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に求める物性と流動性のバランスを勘案し適宜選択し決定することができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の衝撃強度は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、ASTM D256に準拠し、厚さ3.2mm、ノッチあり(R=0.25)の条件で測定したIzod衝撃強度が、通常110以上(単位:J/m)であり、130以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることがさらに好ましく、300以上であることが特に好ましく、500以上であることが最も好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の溶融粘度は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、JIS(1999年度版)K7210 付属書Cに準拠し、高化式フローテスターを用いて、280℃、160kgf/cm2の条件で測定した流れ値(Q値)で、通常1以上(単位:10−2cm3/sec)であり、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、6以上であることがさらに好ましく、7以上であることが特に好ましく、8以上であることが最も好ましい。一方、Q値の上限は本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の優れた諸物性を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常30以下であり、好ましくは18以下、より好ましくは17以下である。
なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる熱安定剤としては、従来からポリカーボネート樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えばリン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤が挙げられるが、なかでのリン系安定剤が本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の初期色相、滞留熱安定性が優れる傾向にあるため好ましい。
リン系熱安定剤の具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、熱安定性、湿熱安定性の観点より、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイトが特に好ましく、有機ホスファイト化合物が最も好ましい。
なお、リン系熱安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は酸化防止剤を含有することも好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる酸化防止剤としては、従来からポリカーボネート樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−
ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
れ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾフェノン化合物の市販品としては、例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM−40」、BASF社製「ユビヌルMS−40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、アデカ社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA−51」等が挙げられる。
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリ
ニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物の市販品としては、例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられるが、なかでもポリカーボネート樹脂の高い透明性を維持するためには有機顔料、有機染料が好ましい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック;カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
有機顔料及び有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することも好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる離型剤としては、従来からポリカーボネート樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えば脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メ
チルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、芳香族ポリカーボネート樹脂(I)とポリカーボネートコポリマー(II)と、必要に応じて配合されるその他の成分とを、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形、押出成形等の熱加工によって芳香族ポリカーボネート樹脂成形体として好適に用いることができる。このような芳香族ポリカーボネート樹脂成形体の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形体の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等、また特殊な形状のもの等、各種形状のものが挙げられる。また、例えば表面に凹凸を有していたり、三次元曲面を有する立体的な形状のものであってもよい。
射出成形の方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を
用いることも出来る。
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン(BP−C10)の合成
後述の表−1に記載の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンの合成例を示す。
フェノール(100重量部)を40℃に加温し融解させた後、濃塩酸(1.33重量部)を加えた。そこへ、デカナール(33.1重量部)およびトルエン(21.2重量部)の混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、40℃で1時間熟成した後、炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止させた。反応混合物からフェノールを減圧留去した後、トルエンで抽出し、水で3回洗浄した。溶媒を留去した後、トルエンおよびヘプタンから晶析させることで、白色粉末として23.3重量部の目的化合物を得た。純度99.4%、融点93℃であった。
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン(BP−C12)の合成
後述の表−1に記載の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカンの合成例を示す。
合成例1のデカナールの代わりに、ドデカナール(39.0重量部)を用いて同様に合成し、白色粉末として27.8重量部の目的化合物を得た。純度99.0%、融点86℃であった。
合成例1及び2において、目的化合物を分析する、各分析条件は以下の通りである。
サンプル0.01質量部を1質量部のアセトニトリルに溶解させた。得られた溶液をHPLC分析装置(島津製作所製LC−2010)にて分析した。条件は以下の通りである。
カラム:inertsilODS3V(ジーエルサイエンス社製)
溶出溶媒:アセトニトリル/0.1質量%酢酸アンモニウム溶液
検出器:UV(254nm)
純度は、254nmにおける面積%から求めた。
Stuart Scientific社製SMP3融点測定装置を用いた。2℃/minの条件で昇温し、固体が全て融解した時点での温度を融点とした。
攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した第1反応器に、表−1に記載の原料ジヒドロキシ化合物、およびカーボネート形成化合物を、表−2に記載の原料仕込み比率で仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005〜0.001体積%)。
次に、第1反応器内を1.33kPa(10Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を5回繰り返し、第1反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、300rpmで撹拌機を回転させ、熱媒ジャケット内の温度をコントロールして、第1反応器の内温を220℃に保った。そして、第1反応器の内部で行われるジヒドロキシ化合物とDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
[粘度平均分子量(Mv)]
芳香族ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネートコポリマーの粘度平均分子量は、上述の通り、ウベローデ粘度計(森友理化工業社製)を使用し、20℃における塩化メチレン溶液の固有粘度(極限粘度)[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式
、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出した。表−2及び表−3にその値をそれぞれ示す。
芳香族ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネートコポリマーの末端水酸基量は、上述の通り、四塩化チタン/酢酸法による比色定量によって求めた。表−2及び表−3にその値をそれぞれ示す。
表−1に記載の原料ジヒドロキシ化合物、およびカーボネート形成化合物を、表−3に記載の原料仕込み比率で仕込み、第2反応器内の最終的な内部温度は255℃まで上昇させた他は、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造例と同様の方法にて製造した。
表−2に示した芳香族ポリカーボネート樹脂(I−1〜I−5)と、上述のポリカーボネートコポリマー(II−1〜II−5)とを下記表−4に記載の割合(質量部)で配合、混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSS)に供給し、スクリ
ュー回転数150rpm、吐出量15kg/h、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷した後に、ペレタイザーを用いてペレット化し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
[流れ値(Q値)]
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流れ値(Q値)は、上述の通り、島津製作所社製、CFT−500A型フローテスタを使用し、JIS(1999年度版)K7210 付属書Cに準拠し、280℃、160kgf/cm2の条件で、1mmφ×10mmのオリフィスを使用して、予備加熱時間7分で、測定を行った。Q値は溶融粘度を表し、値が大きい方が流動性が高いことを意味し、好ましい。表−4中「Q値」にその値をそれぞれ示す。
上述の製造方法で得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを熱風乾燥機を用いて120℃で5〜7時間乾燥させた後、日本製鋼所製のJ75EII型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃、成形サイクル40秒の条件で射出成形し、ASTM−D256に準拠した厚み3.2mmのIzod衝撃試験片を成形した。次に株式会社東洋精機製作所社製ノッチングツールを用いて、0.25RのVノッチを切削し、上述のASTM−D256に準拠したIzod耐衝撃試験を実施し、Izod衝撃強度(単位:J/m)を求めた。表−4中「Izod」にその値を示す。
上述の製造方法で得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを熱風乾燥機を用いて120℃で5〜7時間乾燥させた後、日本製鋼所製のJ75EII型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃、成形サイクル40秒の条件で射出成形し、厚み3mm、縦60mm、横60mmのポリカーボネート樹脂のプレート状成形体を得た。次に得られたプレート状成形体を分光測色計(コニカミノルタ株式会社製CM−3700d)によりイエローインデックス(YI)を測定した。YIは、黄変度を表し、値が小さい方が色相に優れることを意味し好ましい。表−4中「YI」にその値を示す。
透明性の評価は、JIS K−7105に準じ、上述の平板状試験片(3mm厚)を試験片とし、日本電色工業(株)製のNDH−2000型ヘイズメーターでヘイズ値(単位「%」)を測定した。ヘイズ(Haze)は、樹脂の濁度の尺度として用いられる値であり、数値が小さい程、透明性が高いことを意味し、好ましい。表−4中、「Haze」にその値を示す。
(比較例1)と比較すると、流動性、衝撃強度、色相、透明性のいずれもが優れることがわかる。
またポリカーボネートコポリマー(II)の含有量が、本発明の規定範囲外である比較例2及び3では、いずれも流動性改良効果と衝撃強度のバランスがとれず実施例1〜9の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物と比較し劣ることがわかる。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂(I)の粘度平均分子量が本発明の規定範囲外である比較例4も十分な衝撃強度を有しておらず、実施例1〜9の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物と比較し劣ることがわかる。
さらに、ポリカーボネートコポリマー(II)中のカーボネート構造単位(B)の割合が本発明の規定範囲外である比較例5では、透明性が低下し、さらには衝撃強度も低下傾向にあるため実施例1〜9の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物と比較し劣ることがわかる。
以上より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、特定の粘度平均分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂(I)と特定のポリカーボネートコポリマー(II)を特定量含むことで流動性、強度、色相、透明性に優れることは明らかであり、このような芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、大型化、薄肉化、複雑化、集積化された成形品の成形を実現させることができ、産業用非常に有用である。
Claims (5)
- 粘度平均分子量20,000〜40,000のビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂(I)及び、
下記式(1)で表されるカーボネート構造単位(A)と下記式(2)で表されるカーボネート構造単位(B)とを含み、カーボネート構造単位(A)とカーボネート構造単位(B)の合計100mol%に対し、カーボネート構造単位(B)の割合が、10mol%を超え、36.5mol%以下であるポリカーボネートコポリマー(II)を含有し、
前記ポリカーボネート樹脂(I)100質量部に対し、前記ポリカーボネートコポリマー(II)を4〜40質量部含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- ASTM D256に準拠し測定したIzod衝撃値が、150J/m以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- ASTM D256に準拠し測定したIzod衝撃値が、500J/m以上であることを特徴とする請求項3に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- JIS(1999年度版) K7210 付属書Cに準拠し、高化式フローテスターを
用いて、280℃、160kgf/cm2の条件で測定した流れ値(Q値)が、4〜18(単位:10−2cm3/sec)であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
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