JP6856457B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、耐衝撃性、流動性、弾性率及び耐熱性のバランスに優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、例えば自動車材料、電気電子機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。
そして、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維を配合した樹脂組成物が、寸法精度や剛性等が要求される分野に広く用いられている。しかし、近年の電気電子機器や情報機器等は小型化・薄肉化が著しるしく進展しており、そのため例えばその筐体等は極めて薄肉になっている。このような薄肉の部材には寸法精度や剛性に加えて低反り性が要求される。ガラス繊維用の繊維状充填材を配合した場合、繊維状充填材の配向に伴う成形収縮時の異方性により反りが発生しやすい。
このような低反り性の要求に対しては、ガラスフレーク等の板状フィラーを配合することで、成形収縮時の異方性を低減させ、反りを小さくできることが知られている(例えば、特許文献1、2を参照。)。
しかしながら、板状フィラーのみでは繊維状充填材を配合した組成物に比較して機械的強度が劣る。ポリカーボネート樹脂に板状フィラーを配合した樹脂組成物の弾性率を向上させるには、板状フィラーの添加量を増やす必要がある。しかし、板状フィラーの添加量を増やすと、流動性が悪化し成形性が悪化する。そこで、流動性を改良させようとして、ポリカーボネートオリゴマーを添加すると、衝撃性が低下するという問題が生じる。
特開平8−229976号公報 特開平8−231812号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、耐衝撃性、流動性、弾性率及び耐熱性のバランスに優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、板状フィラー(B)と、特定のポリカーボネート樹脂を含有させることにより、耐衝撃性、流動性、弾性率及び耐熱性のバランスに優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
[1]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、板状フィラー(B)を10〜100質量部含有する樹脂組成物であって、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を構成する全カーボネート構造100mol%中、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を1〜15mol%含むことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 0006856457
Figure 0006856457
[式(1)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または式(2)で表される二価の有機基の何れか1種を表す。式(2)中、Xは酸素原子またはNRを表し、Xは炭素数3〜18の二価炭化水素基を表し、Xは炭素数1〜7のアルキレン基を表し、mは1〜500の整数を表す。また、式(1)及び(2)中、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R、R、R、R、R、R及びRのうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。]
[2]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物(ii)に由来するカーボネート構造単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とを含むことを特徴とする上記[1]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 0006856457
Figure 0006856457
[式(4)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または式(5)で表される二価の有機基の何れか1種を表す。式(5)中、Xは炭素数3〜18の二価炭化水素基を表し、Xは酸素原子またはNR14を表し、Xは炭素数1〜7のアルキレン基を表し、nは1〜500の整数を表す。また、式(4)及び(5)中、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の一価炭化水素基を表す。]
[3]芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)が、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位と、上記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物(ii)に由来するカーボネート構造単位とを含むことを特徴とする上記[2]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[4]芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)を構成する全カーボネート構造100mol%中、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を2.5〜36.5mol%含むことを特徴とする上記[3]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[5]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とを質量比で、60/40〜4/96の割合で含むことを特徴とする上記[2]乃至[4]の何れかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[6]ジヒドロキシ化合物(i)が、下記式(7)で表されることを特徴とする上記[1]乃至[5]の何れかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 0006856457
[式(7)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表し、R15は炭素数7〜24のアルキル基を表す。]
[7]ジヒドロキシ化合物(i)が、下記式(9)の化合物であることを特徴とする上記[6]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
Figure 0006856457
[8]芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来するカーボネート構造単位からなることを特徴とする上記[2]乃至[7]の何れかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[9]板状フィラー(B)が、ガラスフレークまたはタルクから選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]乃至[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性、成形性、弾性率及び耐熱性のバランスに優れる。そのため、電気・電子機器のハウジングや自動車用部品、特に、各種携帯端末、電子機器、画像表示機器の筐体などに好適に使用することができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含む。このように下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含むことで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性を向上させ、外観を良好とすることが可能となる。式(1)のジヒドロキシ化合物(i)に由来するポリカーボネート単位を含むことで、流動性が向上するので、例えば、ビスフェノールA由来のポリカーボネート樹脂と流動性を同じとした場合には、分子量を高くすることができるため、耐衝撃性が向上させることが可能となる。また、式(1)のジヒドロキシ化合物(i)に由来するポリカーボネートを含むことで透明性や、全光線透過率の向上も見込める。
Figure 0006856457
式(1)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または下記式(2)で表される二価の有機基の何れか1種を表す。
Figure 0006856457
式(2)中、Xは酸素原子またはNRを表す。Rは、後述の通りである。
は炭素数3〜18の二価炭化水素基を表す。
炭素数3〜18の二価炭化水素基としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシニレン基などが挙げられ、それぞれさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基などが挙げられる。さらに一部架橋構造を有していてもよい。
このようなXを有する式(2)の二価の有機基の好ましい例としては、下記式(3)の有機基が挙げられる。
Figure 0006856457
は、炭素数1〜7のアルキレン基を表す。
炭素数1〜7のアルキレン基としては、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、環状構造を有していてもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、t−ブチレン基、シクロブチレン基、1−メチル−シクロプロピレン基、2−メチル−シクロプロピレン基、n−ペンチレン基、1−メチル−n−ブチレン基、2−メチル−n−ブチレン基、3−メチル−n−ブチレン基、1,1−ジメチル−n−プロピレン基、1,2−ジメチル−n−プロピレン基、2,2−ジメチル−n−プロピレン基、1−エチル−n−プロピレン基、シクロペンチレン基、1−メチル−シクロブチレン基、2−メチル−シクロブチレン基、3−メチル−シクロブチレン基、1,2−ジメチル−シクロプロピレン基、2,3−ジメチル−シクロプロピレン基、1−エチル−シクロプロピレン基、2−エチル−シクロプロピレン基、n−ヘキシレン基、1−メチル−n−ペンチレン基、2−メチル−n−ペンチレン基、3−メチル−n−ペンチレン基、4−メチル−n−ペンチレン基、1,1−ジメチル−n−ブチレン基、1,2−ジメチル−n−ブチレン基、1,3−ジメチル−n−ブチレン基、2,2−ジメチル−n−ブチレン基、2,3−ジメチル−n−ブチレン基、3,3−ジメチル−n−ブチレン基、1−エチル−n−ブチレン基、2−エチル−n−ブチレン基、1,1,2−トリメチル−n−プロピレン基、1,2,2−トリメチル−n−プロピレン基、1−エチル−1−メチル−n−プロピレン基、1−エチル−2−メチル−n−プロピレン基、シクロヘキシレン基、1−メチル−シクロペンチレン基、2−メチル−シクロペンチレン基、3−メチル−シクロペンチレン基、1−エチル−シクロブチレン基、2−エチル−シクロブチレン基、3−エチル−シクロブチレン基、1,2−ジメチル−シクロブチレン基、1,3−ジメチル−シクロブチレン基、2,2−ジメチル−シクロブチレン基、2,3−ジメチル−シクロブチレン基、2,4−ジメチル−シクロブチレン基、3,3−ジメチル−シクロブチレン基、1−n−プロピル−シクロプロピレン基、2−n−プロピル−シクロプロピレン基、1−イソプロピル−シクロプロピレン基、2−イソプロピル−シクロプロピレン基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピレン基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピレン基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピレン基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピレン基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピレン基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピレン基及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピレン基、n−へプチレン基等が挙げられるが、なかでも、炭素数1乃至3のアルキレン基が好ましい。
また、mは1〜500の整数を表すが、なかでも5〜300であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。
式(1)中のR、R、R及びR、式(2)中のR、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R、R、R、R、R、R及びRのうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。
上記炭素数1〜24の一価炭化水素基としては、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアリールアルキル基等が挙げられる。
炭素数1〜24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性をより効果的に高められるため、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、メチルヘキシル基、メチルへプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルデシル基、メチルウンデシル基、メチルドデシル基、メチルトリデシル基、メチルテトラデシル基、メチルペンタデシル基、メチルヘキサデシル基、メチルヘプタデシル、メチルオクタデシル基、メチルノナデシル基、メチルイコシル基、メチルイコシル基、メチルヘンイコシル基、メチルドコシル基、メチルトリコシル基、
ジメチルブチル基、ジメチルペンチル基、ジメチルヘキシル基、ジメチルへプチル基、ジメチルオクチル基、ジメチルノニル基、ジメチルデシル、ジメチルウンデシル基、ジメチルドデシル基、ジメチルトリデシル基、ジメチルテトラデシル基、ジメチルペンタデシル基、ジメチルヘキサデシル基、ジメチルヘプタデシル、ジメチルオクタデシル基、ジメチルノナデシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルヘンイコシル基、ジメチルドコシル基、
トリメチルへプチル基、トリメチルオクチル基、トリメチルノニル基、トリメチルデシル、トリメチルウンデシル基、トリメチルドデシル基、トリメチルトリデシル基、トリメチルテトラデシル基、トリメチルペンタデシル基、トリメチルヘキサデシル基、トリメチルヘプタデシル基、トリメチルオクタデシル基、トリメチルノナデシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルヘンイコシル基、
エチルプロピル基、エチルブチル基、エチルペンチル基、エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基、エチルドコシル基、
プロピルブチル基、プロピルペンチル基、プロピルヘキシル基、プロピルへプチル基、プロピルオクチル基、プロピルノニル基、プロピルデシル、プロピルウンデシル基、プロピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル基、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基、
ブチルペンチル基、ブチルヘキシル基、ブチルへプチル基、ブチルオクチル基、ブチルノニル基、ブチルデシル基、ブチルウンデシル基、ブチルドデシル基、ブチルトリデシル基、ブチルテトラデシル基、ブチルペンタデシル基、ブチルヘキサデシル基、ブチルヘプタデシル、ブチルオクタデシル基、ブチルノナデシル基、ブチルイコシル基、ブチルイコシル基が挙げられる。なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
環状アルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
炭素数2〜24のアルケニル基としては、上記直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、4,8,12−トリメチルトリデシル基が挙げられる。
炭素数1〜24のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、一部環状構造を有するアルコキシ基などが挙げられるが、なかでも直鎖状のアルコキシ基が好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基およびテトラデシルオキシ基、フェノキシ基などが挙げられる。
炭素数6〜24のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基などが挙げられ、炭素数7〜24のアリールアルキル基等としては、ベンジル基などが挙げられる。
式(1)中のR、R、R及びR、式(2)中のR、R及びRは、上述のように、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R、R、R、R、R、R及びRのうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。
このように炭素数7〜24のアルキル基を有することで、芳香族ポリカーボネート樹脂の高分子鎖の絡まりを適度に阻害し、高分子鎖の摩擦を低減することや、高い流動性をも発現させることができ、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が向上するという効果も同時に得られる。また、同等の溶融粘度で比較した場合は、炭素数7〜24のアルキル基を有さない芳香族ポリカーボネート樹脂と比較し、耐衝撃性を向上させることも可能となる。
炭素数が7未満の場合は、上述のような流動性、耐衝撃性の改良効果が十分に得られず、一方で、炭素数が24を超える場合は、極端に耐熱性が低下し、さらには耐衝撃性も低下するため好ましくない。このような観点より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、上記式(1)で表される構造単位を形成するジヒドロキシ化合物(i)におけるR、R、R、R、R、R及びRのうち少なくとも1つは、炭素数8〜20のアルキル基を有することがより好ましく、炭素数9〜15のアルキル基を有することがさらに好ましく、炭素数9〜11のアルキル基を有することが特に好ましい。
このような、炭素数7〜24のアルキル基としては、具体的には直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性をより効果的に高められるため、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルへプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルデシル基、メチルウンデシル基、メチルドデシル基、メチルトリデシル基、メチルテトラデシル基、メチルペンタデシル基、メチルヘキサデシル基、メチルヘプタデシル、メチルオクタデシル基、メチルノナデシル基、メチルイコシル基、メチルイコシル基、メチルヘンイコシル基、メチルドコシル基、メチルトリコシル基、
ジメチルヘキシル基、ジメチルへプチル基、ジメチルオクチル基、ジメチルノニル基、ジメチルデシル、ジメチルウンデシル基、ジメチルドデシル基、ジメチルトリデシル基、ジメチルテトラデシル基、ジメチルペンタデシル基、ジメチルヘキサデシル基、ジメチルヘプタデシル、ジメチルオクタデシル基、ジメチルノナデシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルヘンイコシル基、ジメチルドコシル基、
トリメチルへプチル基、トリメチルオクチル基、トリメチルノニル基、トリメチルデシル、トリメチルウンデシル基、トリメチルドデシル基、トリメチルトリデシル基、トリメチルテトラデシル基、トリメチルペンタデシル基、トリメチルヘキサデシル基、トリメチルヘプタデシル基、トリメチルオクタデシル基、トリメチルノナデシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルヘンイコシル基、
エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基、エチルドコシル基、
プロピルペンチル基、プロピルヘキシル基、プロピルへプチル基、プロピルオクチル基、プロピルノニル基、プロピルデシル、プロピルウンデシル基、プロピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル基、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基、
ブチルペンチル基、ブチルヘキシル基、ブチルへプチル基、ブチルオクチル基、ブチルノニル基、ブチルデシル基、ブチルウンデシル基、ブチルドデシル基、ブチルトリデシル基、ブチルテトラデシル基、ブチルペンタデシル基、ブチルヘキサデシル基、ブチルヘプタデシル、ブチルオクタデシル基、ブチルノナデシル基、ブチルイコシル基、ブチルイコシル基が挙げられる。
なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
炭素数7〜24のアルキル基としては、なかでもn−へプチル基、n−オクチル基、エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基が好ましく、n−オクチル基、エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基がより好ましく、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基が特に好ましい。このようなアルキル基を持つことで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性と機械強度をより効果的に高めることができる。
また、上記式(1)で表される構造単位を形成するジヒドロキシ化合物(i)は、1種のみまたは複数種類有していてもよいが、2種であることが好ましく、1種のみであることが、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性、耐衝撃性、耐熱性のバランスが良好となる傾向にあるためより好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、構成する全カーボネート構造100mol%中、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を、1〜15mol%で含むことを特徴とする。ジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位が、上記下限値を下回る場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の十分な流動性改善効果が得られず、また外観性も不十分となるため好ましくない。一方、ジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位が、上記上限値を上回る場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性や耐熱性も低下するためやはり好ましくない。
このような観点より、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位は、1.5mol%以上であることが好ましく、2.5mol%以上であることがより好ましく、3mol%以上であることがさらに好ましく、3.5mol%以上であることが特に好ましく、4mol%以上であることが最も好ましい。また、13mol%以下であることが好ましく、より好ましくは12mol%以下、さらには11mol%以下、なかでも10mol%以下、特には9mol%以下が好ましく、7.5mol%以下であることが最も好ましい。
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート(A)は、上述の範囲で上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含んでいれば、共重合体であっても、混合物であってもよい。
芳香族ポリカーボネート(A)が共重合体である場合は、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位と、ジヒドロキシ化合物(i)以外のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位を有する。ジヒドロキシ化合物(i)以外のジヒドロキシ化合物としては特に制限はないが、好ましくは下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物(ii)であることが好ましい。
Figure 0006856457
式(4)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または下記式(5)で表される二価の有機基の何れか1種を表す。
Figure 0006856457
式(5)中、Xは酸素原子またはNR14を表し、Xは炭素数3〜18の二価炭化水素基を表し、Xは炭素数1〜7のアルキレン基を表し、nは1〜500の整数を表す。また、式(4)及び(5)中、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の一価炭化水素基を表す。
の炭素数3〜18の二価炭化水素基は、前記した式(2)におけるXの炭素数3〜18の二価炭化水素基として例示されたものと同一であり、Xの炭素数1〜7のアルキレン基は、前記式(2)のXの炭素数1〜7のアルキレン基として例示されたものと同一である。また、nは1〜500の整数を表すが、なかでも5〜300であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。
式(4)中のR、R、R10及びR11、式(5)中のR12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の一価炭化水素基を表す。上記炭素数1〜6の一価炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基等が挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性をより効果的に高められるため、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルブチル基、エチルプロピル基、エチルブチル基等が挙げられる。なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。環状アルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
炭素数2〜6のアルケニル基としては、上記直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素二重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、一部環状構造を有するアルコキシ基などが挙げられるが、なかでも直鎖状のアルコキシ基が好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、芳香族ポリカーボネート(A)は、ジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)とジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含まない芳香族ポリカーボネート樹脂との混合物であることも好ましい。このように、ジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含まない、既存の芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、ジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)及びその他所望の添加剤を適宜混合することで、種々の配合設計に応じた材料を、工業的に効率良く製造できる他、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性、耐衝撃性、耐熱性のバランスを調整することが容易となる。
上述の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に含まれるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含まない芳香族ポリカーボネート樹脂としては、なかでも、上記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物(ii)に由来するカーボネート構造単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)であることが好ましい。
また、上述のジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)は、ジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位とジヒドロキシ化合物(ii)に由来するカーボネート構造単位を含むことも好ましく、なかでもジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位とジヒドロキシ化合物(ii)に由来するカーボネート構造単位とからなる共重合体であることがより好ましい。このようにジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位とジヒドロキシ化合物(ii)に由来するカーボネート構造単位を含むことで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の相溶性が向上し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性、外観性、耐衝撃性が向上する傾向にある。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂(A)中の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)を構成する全カーボネート構造100mol%中、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位の割合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の特徴を損なわない範囲で適宜選択することができるが、通常1mol%以上であり、好ましくは2.5mol%以上、より好ましくは4mol%以上、さらに好ましくは8mol%以上、特に好ましくは16mol%以上、最も好ましくは20mol%以上である。また、通常49mol%以下であり、好ましくは36.5mol%以下、より好ましくは36mol%以下、さらに好ましくは34mol%以下、特に好ましくは33mol%以下、最も好ましくは32mol%以下である。このような範囲とすることで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性や耐衝撃性が優れるようになる。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)を含む場合、それらの配合比は本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の特徴を損なわない限り特に制限はないが、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とを質量比で、通常99/1〜1/99であり、好ましくは90/10〜2/98、より好ましくは70/30〜3/97、さらに好ましくは60/40〜4/96、特に好ましくは50/50〜5/95、最も好ましくは30/70〜5/95である。
このような範囲とすることで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性、耐衝撃性が優れるようになる。
ジヒドロキシ化合物(i)の具体例としては、なかでも下記式(6)〜(7)で表される化合物がより好ましく、(7)で表される化合物がさらに好ましい。
Figure 0006856457
式(6)中、R、R、R、Rは、式(1)中のR、R、R、Rと同義であり、R、Rは、式(2)中のR、Rと同義であるが、R、R、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。
Figure 0006856457
式(7)中、R、R、R、Rは、式(1)中のR、R、R、Rと同義であり、R15は、炭素数7〜24のアルキル基を表す。
式(6)〜(7)中のR、R、R、R、R、R、R15の炭素数7〜24のアルキル基としては、具体的には直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性をより効果的に高められるため、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルへプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルデシル基、メチルウンデシル基、メチルドデシル基、メチルトリデシル基、メチルテトラデシル基、メチルペンタデシル基、メチルヘキサデシル基、メチルヘプタデシル、メチルオクタデシル基、メチルノナデシル基、メチルイコシル基、メチルイコシル基、メチルヘンイコシル基、メチルドコシル基、メチルトリコシル基、
ジメチルヘキシル基、ジメチルへプチル基、ジメチルオクチル基、ジメチルノニル基、ジメチルデシル、ジメチルウンデシル基、ジメチルドデシル基、ジメチルトリデシル基、ジメチルテトラデシル基、ジメチルペンタデシル基、ジメチルヘキサデシル基、ジメチルヘプタデシル、ジメチルオクタデシル基、ジメチルノナデシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルヘンイコシル基、ジメチルドコシル基、
トリメチルへプチル基、トリメチルオクチル基、トリメチルノニル基、トリメチルデシル、トリメチルウンデシル基、トリメチルドデシル基、トリメチルトリデシル基、トリメチルテトラデシル基、トリメチルペンタデシル基、トリメチルヘキサデシル基、トリメチルヘプタデシル基、トリメチルオクタデシル基、トリメチルノナデシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルヘンイコシル基、
エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基、エチルドコシル基、
プロピルペンチル基、プロピルヘキシル基、プロピルへプチル基、プロピルオクチル基、プロピルノニル基、プロピルデシル、プロピルウンデシル基、プロピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル基、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基、
ブチルペンチル基、ブチルヘキシル基、ブチルへプチル基、ブチルオクチル基、ブチルノニル基、ブチルデシル基、ブチルウンデシル基、ブチルドデシル基、ブチルトリデシル基、ブチルテトラデシル基、ブチルペンタデシル基、ブチルヘキサデシル基、ブチルヘプタデシル、ブチルオクタデシル基、ブチルノナデシル基、ブチルイコシル基、ブチルイコシル基が挙げられる。なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
炭素数7〜24のアルキル基としては、なかでもn−へプチル基、n−オクチル基、エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基が好ましく、n−オクチル基、エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基がより好ましく、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基が特に好ましい。このようなアルキル基を持つことで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性と機械強度をより効果的に高めることができる。
このような式(6)、(7)の具体例としては、下記表1に例示される化合物(6)−1〜(6)−18及び下記表2に例示される化合物(7)−1〜(7)−18が挙げられる。
Figure 0006856457
Figure 0006856457
ジヒドロキシ化合物(i)としては、なかでも化合物(6)−1〜(6)−15及び(7)−1〜(7)−11がより好ましく、化合物(6)−3〜(6)−5、及び(7)−1〜(7)−6がさらに好ましく、下記式(8)、(9)で表される化合物であることが特に好ましく、化合物(9)であることが最も好ましい。このようなジヒドロキシ化合物(i)を選択することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組物の流動性、耐衝撃性が優れるだけでなく、熱安定性、耐熱性にも優れるようになる。
Figure 0006856457
Figure 0006856457
前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物(ii)としては、例えば、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
1,4−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アリールアルキル類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;等
が挙げられる。
上述のその他のジヒドロキシ化合物については、特に制限はなく、種々の特性付与の為に、N(窒素)、S(硫黄)、P(リン)、Si(ケイ素)等のヘテロ原子やヘテロ結合が導入されたジヒドロキシ化合物であってもよい。このようなヘテロ原子やヘテロ結合が導入されたジヒドロキシ化合物としては、
3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド(フェノールフタレイン)、
2−メチル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、
2−フェニル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、
ジメチルシロキサン骨格を有するビスフェノール化合物等が挙げられる。
なお、ジヒドロキシ化合物(ii)は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明において上記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物(ii)としては、なかでも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)であることが好ましい。このようなジヒドロキシ化合物(ii)を選択することで本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性、耐衝撃性が良好なものになる傾向にある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)としては、i)芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)として、下記式(10)で表されるポリカーボネート構造単位と下記式(11)で表されるポリカーボネート構造単位からなる共重合ポリカーボネート樹脂と、ii)芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)として、式(11)で表されるポリカーボネート構造単位からなるポリカーボネート樹脂とのブレンド物であることが、特に好ましい。
Figure 0006856457
式(10)中、R、R、R、R及びR15は、前記式(7)中のR、R、R、R、R15と同義である。
Figure 0006856457
上記式(10)の構造単位におけるR、R、R、R及びR15として好ましいものは、前述した通りである。また、上記式(10)のポリカーボネート単位は、好ましくは1,1−ビス(4−ヒドロキシルフェニル)ドデカン由来のポリカーボネート構造単位であり、上記式(11)のポリカーボネート単位は、好ましくはビスフェノールA由来のポリカーボネート構造単位である。
式(10)のポリカーボネート構造単位と式(11)のポリカーボネート構造単位からなる共重合ポリカーボネート樹脂における式(10)のポリカーボネート構造単位の割合は、共重合ポリカーボネート樹脂の100モル%中、通常1mol%以上であり、好ましくは2.5mol%以上、より好ましくは4mol%以上、さらに好ましくは8mol%以上、特に好ましくは16mol%以上、最も好ましくは20mol%以上である。また、通常49mol%以下であり、好ましくは36.5mol%以下、より好ましくは36mol%以下、さらに好ましくは34mol%以下、特に好ましくは33mol%以下、最も好ましくは32mol%以下である。
式(10)と式(11)ポリカーボネート構造単位からなる共重合ポリカーボネート樹脂と、式(11)のポリカーボネート樹脂との混合比は、前者と後者の質量比で、通常99/1〜1/99であり、好ましくは90/10〜2/98、より好ましくは70/30〜3/97、さらに好ましくは60/40〜4/96、特に好ましくは50/50〜5/95、最も好ましくは30/70〜5/95である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を構成する全カーボネート構造100mol%中の、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位の割合、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)を構成する全カーボネート構造100mol%中の上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位の割合は、NMRにて容易に求めることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と(a2)を併用する場合の、ジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位の割合は、上記と同様にNMRによって求めることができる。また、用いた各々のポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位の分子量及び混合比率を加味して、加重平均により算出してもよい。
また、その測定条件については特に制限はないが、重溶媒としては通常重クロロホルムを好適に使用することができるが、芳香族ポリカーボネート樹脂の特性に合わせ、重アセトン、重ジメチルスルホキシド、重ジクロロメタン等の重溶媒を適宜選択できる。また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物が重溶媒に溶解しづらい場合は、水酸化ナトリウムなどの強アルカリ条件で加水分解し、不溶物を濾過して得られたジヒドロキシ化合物(i)と、ジヒドロキシ化合物(ii)を含むジヒドロキシ化合物(i)以外のジヒドロキシ化合物との混合物サンプルをNMRで分析する方法も考えられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、通常10,000〜100,000であることを特徴とする。粘度平均分子量が上記下限値未満の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械物性が低下するため好ましくない。また粘度平均分子量が上記上限値を超える場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が極端に不十分となる傾向があるため好ましくない。このような観点より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上、さらに好ましくは19,000以上であり、特に好ましくは20,000以上である。また好ましくは80,000以下、より好ましくは40,000以下、さらに好ましくは30,000以下であり、特に好ましくは28,000以下である。
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量を上記範囲に制御する際には、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を(a1)及び(a2)用いて混合し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)を制御してもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)の分子量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)の分子量は、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、通常5,000〜40,000であることが好ましい。粘度平均分子量が上記下限値未満の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械物性が低下するため好ましくない。また粘度平均分子量が上記上限値を超える場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が極端に不十分となり、また芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)への分散性が低下する傾向があるため好ましくない。このような観点より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)の粘度平均分子量(Mv)は、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、なかでも12,000以上、特には13,000以上が好ましい。またより好ましくは30,000以下、さらに好ましくは28,000以下、なかでも24,000以下、特には22,000以下が好ましく、最も好ましくは20,000以下である。
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)の粘度平均分子量を上記範囲に制御する際には、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて混合し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)の粘度平均分子量(Mv)を制御してもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の分子量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の分子量は、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の好ましい粘度平均分子量の範囲と同様である。
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の粘度平均分子量を上記範囲に制御する際には、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて混合し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の粘度平均分子量(Mv)を制御してもよい。
なお本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒として塩化メチレンを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での固有粘度(極限粘度)[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出される値を意味する。また固有粘度(極限粘度)[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 0006856457
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の末端水酸基量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の末端水酸基量は、特に制限はないが、通常10〜2,000ppmである。また、好ましくは20ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、さらに好ましくは100ppm以上であり、一方で、好ましくは1,800ppm以下、より好ましくは1,600ppm以下、さらに好ましくは1200ppm以下である。末端水酸基量を前記範囲内とすることで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性をより向上させることができる。
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の末端水酸基量は、公知の任意の方法によって容易に上記範囲に調整することができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。複数のジヒドロキシ化合物からなる芳香族ポリカーボネート樹脂共重合体においては、対応するジヒドロキシ化合物を共重合比率に応じて混合したサンプルを最低3水準の濃度で用意し、該3点以上のデータから検量線を引いた上で芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量を測定する。また、検出波長は546nmとする。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の製造方法
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の製造方法は、公知の手法であれば特に制限はなく適宜選択し用いることができるが、上述のカーボネート構造単位(i)を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物、及び任意で選択されるその他のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって得られる。
カーボネート形成性化合物の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート形成性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、下記式(12)で表される化合物であればよく、アリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類やジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
Figure 0006856457
式(12)中、Z及びZは、それぞれ独立に炭素数1〜30のアルキル基またはアリール基、アリールアルキル基を表す。以下、Z及びZが、アルキル基、アリールアルキル基のときジアルキルカーボネートと称し、アリール基のときジアリールカーボネートと称すことがある。なかでもジヒドロキシ化合物との反応性の観点よりZ及びZは、共にアリール基であることが好ましく、下記式(13)で表されるジアリールカーボネートでることがより好ましい。
Figure 0006856457
式(13)中、Z及びZは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、p及びqはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。
このようなカーボネートエステルとしては、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチルフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート等の(置換)ジアリールカーボネートが挙げられるが、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。なお、これらのカーボネートエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、前記のカーボネートエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)を製造する方法としては、従来から知られている重合法により製造することができ、その重合法としては、特に限定されるものではない。重合法の例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
界面重合法
まず、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、原料のジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによって芳香族ポリカーボネートコポリマーを得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
原料のジヒドロキシ化合物及びカーボネート形成性化合物は、前述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、原料のジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤としては、特に限定されないが、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的には例えば、フェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、o−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−n−ペンチルフェノール、m−n−ペンチルフェノール、p−n−ペンチルフェノール、o−n−ヘキシルフェノール、m−n−ヘキシルフェノール、p−n−ヘキシルフェノール、p−t−オクチルフェノール、o−シクロヘキシルフェノール、m−シクロヘキシルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、o−n−ノニルフェノール、m−ノニルフェノール、p−n−ノニルフェノール、o−クミルフェノール、m−クミルフェノール、p−クミルフェノール、o−ナフチルフェノール、m−ナフチルフェノール、p−ナフチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;p−クレゾール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、平均炭素数12〜35の直鎖状又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位又はパラ位に有するモノアルキルフェノール;9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(4−メトキシフェニル)フルオレン;9−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン;4−(1−アダマンチル)フェノールなどが挙げられる。これらのなかでは、p−t−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール及びp−クミルフェノールが好ましく用いられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、原料のジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質(反応原料)、反応媒(有機溶媒)、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート形成性化合物としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤は原料のジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は、特に限定されないが、通常0〜40℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
溶融エステル交換法
次に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、カーボネートエステルと原料のジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
原料のジヒドロキシ化合物、及びカーボネートエステルは、上述の通りである。
原料のジヒドロキシ化合物とカーボネートエステル(前記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)との比率は所望の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)が得られる限り任意であるが、これらカーボネートエステルは、ジヒドロキシ化合物と重合させる際に、原料のジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いることが好ましい。すなわち、カーボネートエステルは、ジヒドロキシ化合物に対して、1.01〜1.30倍量(モル比)であることが好ましく、1.02〜1.20倍量(モル比)であることがより好ましい。モル比が小さすぎると、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が大きすぎると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の生産が困難となる場合や、樹脂中のカーボネートエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となる場合がある。
溶融エステル交換法により本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に限定されず、従来から公知のものを使用できる。例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法において、反応温度は、特に限定されないが、通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は、特に限定されないが、通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
反応形式は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。但しなかでも、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体、リン含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒失活剤の使用量は、特に限定されないが、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常20当量以下、好ましくは10当量以下である。さらには、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
[板状フィラー(B)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、板状フィラー(B)を含有する。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物では、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を特定量含有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と板状フィラー(B)とを組み合わせることで、耐衝撃性、成形性、弾性率及び耐熱性をバランスよく向上することができる。
本発明に用いる板状フィラー(B)としては、薄片状、鱗片状等の形状を有する無機充填材であり、従来公知の任意のものを使用でき、樹脂用のフィラーとして知られる、好ましくはL/D(L:フィラーの平均直径、D:フィラーの厚さ)が10以上の無機フィラーが好ましい。具体的には例えばタルク、ガラスフレーク、カオリン、マイカ、クレー等が挙げられる。これらの中でも、ガラスフレーク、タルク、カオリンから選択される少なくとも1種であることが好ましく、ガラスフレーク及び/又はタルクであることが好ましい。
タルクは、層状粘土鉱物の1つで、主たる成分は4SiO・3MgO・HOで表され、含水珪酸マグネシウムである。タルクは産地により、不純物等の組成が異なるが、Fe或いはAl等の不純物が多いと、得られる樹脂組成物の熱安定性等に悪影響を与えるので、これらの不純物が少ないタルクが好ましい。タルクの粒子径については、平均粒径が10μm以下のタルクを使用すると、組成物の物性を犠牲にせず、良外観の組成物が得られるので好ましい。
ガラスフレークは、通常、好ましくは厚さ3〜7μm、粒子径10〜4000μmの板状無定形ガラスである。使用されるガラスは、Cガラスと、Eガラスがあり、EガラスはNaO或いはKO等がCガラスに比べて少ないので、Eガラスを使用したガラスフレークが好ましく使用される。
本発明に用いる板状フィラー(B)は、必要に応じてその表面をエポキシ系化合物、シラン系化合物、アミノシラン系化合物、チタネート化合物等の各種表面処理剤やカップリング剤で処理されたものも好ましい。
板状フィラー(B)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、10〜100質量部である。板状フィラー(B)の含有量が10質量部未満では、耐衝撃性や弾性率向上効果が不十分であり、100質量部を超えると成形性が悪化し、ポリカーボネート樹脂成形体の外観が悪化したりする場合がある。板状フィラー(B)の含有量は、好ましくは15質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上であり、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、弾性率及び耐熱性のバランスに優れている。ここで流動性と耐衝撃性のバランスは通常、トレードオフの関係性にある。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、従来公知の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物と比較し、同等の流動性の場合は、衝撃強度が優れるようになり、一方で同等の耐衝撃性を保つ範囲では、より高めの流動性を付与することができるところが特徴である。具体的には、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に求める所望の流動性、耐衝撃性に応じて芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を構成する全カーボネート構造中のジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位の割合を制御することで従来公知の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物よりも優れた流動性と耐衝撃性のバランスを達成することが可能となる。
ここで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性については通常高い方が成形加工性が高まるため、好ましく、特に上限はないが、例えばISO1133に準拠し、φ2mmのオリフィスを用い、300℃、1.2kgの条件で測定したMVRの値で、その下限は通常3以上であり、好ましくは4以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは6以上であり、特に好ましくは7以上、最も好ましくは8以上である。一方、MVRの上限は、特に制限はないが、通常50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下、特に好ましくは20以下、最も好ましくは15以下である。MVRが前記下限値を下回る場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形する場合に、流動性が不足するため所望の厚みや、大きさの成形品を取得することができない可能性があり、一方で前記上限を超える場合は、成形品からバリが出やすくなる可能性がある。
一方、耐衝撃性は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、ISO179−1&2に準拠し、厚さ3mm、ノッチ付きの条件で測定したシャルピー衝撃強度で代表することができ、通常1KJ/m以上、好ましくは2KJ/m以上、より好ましくは3KJ/m以上、さらに好ましくは3.5KJ/m以上、特に好ましくは4KJ/m以上、最も好ましくは5KJ/m以上である。シャルピー衝撃強度は前記下限を下回る場合は、成形品が極端に割れやすくなる恐れがある。なお、シャルピー衝撃強度の上限は特に制限はない。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の特徴を損なわない範囲であれば、特に制限はないが、ISO75−1&2に準拠し、荷重1.80MPaの条件(A法)にて測定した荷重撓み温度(DTUL)が、80℃以上であることが好ましく、85℃以上であることがより好ましく、90℃以上でることがさらに好ましく、95℃以上でることが特に好ましく、100℃以上であることが最も好ましい。DTULの値を上述の範囲とすることで、例えば光源や熱源に近い部材に用いる場合や、自動車車内のような高温環境下においても、高い寸法安定性を有し、さらには長期に渡り使用した際にも強度低下の小さい成形品を得ることができる。
なお、上記DTUL値の上限は特にないが、通常200℃以下であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは140℃以下である。DTULの値が200℃を超える場合は、流動性が極端に低下する傾向にあるため好ましくない。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果及び所望の諸物性を著しく阻害しない範囲で、上述したもの以外にその他の成分(樹脂添加剤)を含有していてもよい。樹脂添加剤の例を挙げると、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、染顔料、紫外線吸収剤、難燃剤、輝度向上剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なかでも、一般射出成形材料として用いるためには熱安定剤、酸化防止剤、離型剤および紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
熱安定剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる熱安定剤としては、従来から芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えばリン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤が挙げられるが、なかでもリン系安定剤が本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性が優れる傾向にあるため好ましい。
リン系熱安定剤の具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、熱安定性の観点より、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイトが特に好ましく、有機ホスファイト化合物が最も好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−メチル−4−エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−メチル−4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイト、ビス(モノノニルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、(2,6−ジ−t−ブチル−4メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4−t−ブチル−6−メチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)ヘキシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ヘキシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ステアリルホスファイト等が挙げられ、有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイトやテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5メチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ(登録商標)2112」、「アデカスタブ PEP−8」、「アデカスタブ PEP−36」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASF社製「イルガフォス(登録商標)168」等が挙げられ、有機ホスホナイト化合物としては、BASF社製「イルガフォスP−EPQ」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
リン系安定剤の含有量は、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量以下、より好ましくは0.5質量部以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、熱安定性の低下、射出成形時にガスが出やすくなる可能性がある。
酸化防止剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は酸化防止剤を含有することも好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる酸化防止剤としては、従来から芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、射出成形時にガスが出やすくなる可能性がある。
離型剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することも好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる離型剤としては、従来から芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する公知のものであれば特に制限されないが、例えば脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
離型剤の含有量は、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離形剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、熱安定性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
紫外線吸収剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することも好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、マロン酸エステル化合物がより好ましく、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物が特に好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物の市販品としては、例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、「ケミソーブ79」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−n−ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
このようなベンゾフェノン化合物の市販品としては、例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビナール3049」、「ユビナール3050」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、ADEKA社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA−51」等が挙げられる。
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4−tert−ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物の市販品としては、例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物の市販品としては、例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビナール3030」、「ユビナール3035」、「ユビナール3039」等が挙げられる。
トリアジン化合物の例としては、例えば1,3,5−トリアジン骨格を有する化合物等が挙げられ、このようなトリアジン化合物としては、具体的には例えば、ADEKA社製「LA−46」、「LA−F70」、BASF社製「チヌビン1577ED」、「チヌビン1600」、「チヌビン400」、「チヌビン405」、「チヌビン460」、「チヌビン477−DW」、「チヌビン479」等が挙げられる。
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物の市販品としては、例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
マロン酸エステル化合物としては、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物の市販品としては、例えば、クラリアント社製「PR−25」、「B−CAP」等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、さらに好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.15質量部以上である。また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が不十分となり、紫外線吸収剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちになるばかりでなく、射出成形時にモールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性や押出成形時にダイからのガスの発生、メヤニの発生を引き起こすため好ましくない。なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と板状フィラー(B)、必要に応じて配合されるその他の成分とを、あるいは、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)と板状フィラー(B)、必要に応じて配合されるその他の成分とを、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を製造時に、重合終了後の溶融樹脂に直接添加剤を添加し、混練してもよい。このように添加する際には、重合終了後、溶融樹脂を押出機に直接導入し、添加剤を配合し、溶融混練しペレット化する方法が好ましい。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
芳香族ポリカーボネート樹脂成形体
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形、押出成形等の熱加工によって芳香族ポリカーボネート樹脂成形体として好適に用いることができる。このような芳香族ポリカーボネート樹脂成形体の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形体の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等、また特殊な形状のもの等、各種形状のものが挙げられる。また、例えば表面に凹凸を有していたり、三次元曲面を有する立体的な形状のものであってもよい。
射出成形の方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
成形体の例を挙げると、各種自動車部材、電気電子機器、情報端末機器、OA機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品が挙げられる。これらの中でも、本発明の成形品は、耐衝撃性、流動性、弾性率及び耐熱性のバランスに優れることから、特に電気電子機器、情報端末機器、OA機器、家電製品等の部品へ用いて好適であり、電気電子機器、情報端末機器、OA機器、自動車内装部品、家電製品の筐体に用いて、特に好適である。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、下記の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。また、以下の説明において「部」とは、特に断らない限り質量基準に基づく「質量部」を表す。
以下の実施例及び比較例で使用した原料のうち、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)として使用したポリカーボネート樹脂(a1−1)は、以下に記載の方法により製造した。
[合成例:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカンの合成]
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカンは、前記した式(9)で表されるジヒドロキシ化合物であり、以下「BPC−12」ともいう。
フェノール(100質量部)を40℃に加温し融解させた後、濃塩酸(1.33質量部)を加えた。そこへ、ドデカナール(39.0質量部)およびトルエン(21.2質量部)の混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、40℃で1時間熟成した後、炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止させた。反応混合物からフェノールを減圧留去した後、トルエンで抽出し、水で3回洗浄した。溶媒を留去した後、トルエンおよびヘプタンから晶析させることで、白色粉末として27.8質量部のBPC−12を得た。純度は99.0%、融点86℃であった。
なお、上記合成例において、得られたBPC−12の分析条件は以下の通りである。
<純度>
サンプル0.01質量部を1質量部のアセトニトリルに溶解させた。得られた溶液をHPLC分析装置(島津製作所社製、LC−2010)にて、以下の条件で分析した。
カラム:inertsilODS3V(ジーエルサイエンス社製)
溶出溶媒:アセトニトリル/0.1質量%酢酸アンモニウム溶液
検出器:UV(254nm)
純度は、254nmにおける面積%から求めた。
<融点>
Stuart Scientific社製、SMP3融点測定装置を用いた。
2℃/minの条件で昇温し、固体が全て融解した時点での温度を融点とした。
[ポリカーボネート樹脂(a1−1)の製造]
攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した第1反応器に、三菱ケミカル社製ビスフェノールA(以下、「BPA」ともいう。)、BPC−12、三菱ケミカル社製ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」ともいう。)及び触媒としてのキシダ化学社製炭酸セシウムを、mol比で、70:30:105.5:1×10−0.6の原料仕込み比率で仕込み、十分に窒素置換した。
次に、第1反応器内を1.33kPa(10Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を5回繰り返し、第1反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、300rpmで撹拌機を回転させ、熱媒ジャケット内の温度をコントロールして、第1反応器の内温を220℃に保った。そして、第1反応器の内部で行われるジヒドロキシ化合物とDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、第1反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。系内を窒素で絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、予め200℃以上に加熱した移送配管を経由して、第1反応器内のオリゴマーを攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ並びに還流冷却管を具備した内温240℃の第2反応器に圧送した。次に、第2反応器内に圧送したオリゴマーを攪拌し、熱媒ジャケットにて内温を昇温し、第2反応器内を40分かけて絶対圧で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。その後、昇温を継続し、さらに40分かけて、内圧を絶対圧で13.3kPaから399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、昇温を続け、第2反応器内の絶対圧が70Pa(約0.5Torr)に到達後、70Paを保持し、重縮合反応を行った。
第2反応器内の内部温度を250℃まで上昇させ、第2反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了し、反応器内を窒素で復圧後、圧力をかけ漕底から抜出し、水冷漕で冷却し、芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。
その後、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂にパラトルエンスルホン酸ブチルを5ppm配合し、φ30mmの二軸押出機で溶融混練し、ストランド状にしたものをペレタイザーでカッティングし、ペレット状の粘度平均分子量15,600、末端水酸基量660ppmの芳香族ポリカーボネート樹脂(a1−1)を得た。
さらに、芳香族ポリカーボネート樹脂のジヒドロキシ化合物(ii)に由来するカーボネート構造単位の割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1−1)を重クロロホルムに3質量%の濃度で溶解し、日本電子社製JNM−AL400型NMR(400MHz)にてプロトンNMR測定を実施し、各カーボネート構造に由来するプロトンの積分値から算出した。
その結果、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1−1)では30mol%であった。
(実施例1〜13、比較例1〜3)
実施例及び比較例に使用した原料成分を、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1−1)と共に、下記の表3に示す。
Figure 0006856457
表3に示した各成分を、以下の表4、5に記載の割合(質量部)で配合、混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSS)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/h、バレル温度260℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷した後に、ペレタイザーを用いてペレット化し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
[ジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位の割合]
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を構成する全カーボネート構造100mol%中のジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位の割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂を重クロロホルムに3質量%の濃度で溶解し、日本電子社製JNM−AL400型NMR(400MHz)にてプロトンNMR測定を実施し、各カーボネート構造に由来するプロトンの積分値から算出した。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と前記芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)との混合物の場合のジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位の割合は、構造単位の分子量及び混合比率を加味して、加重平均により算出され、以下の表における「樹脂(A)の(i)mol%」の欄に記載した。
また、前述の方法により測定される芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)を記載した。
[芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の評価]
[流動性:Q値]
上記で得られた樹脂組成物のペレットを用い、流れ値(Q値、単位:10−2cc/sec)を、島津製作所社製、CFT−500D型フローテスタを使用し、JIS(1999年度版) K7210 付属書Cに準拠し、240℃、160kgf/cmの条件で、1mmφ×10mmのオリフィスを使用して、予備加熱時間7分で、測定した。
流れ値(Q値)が大きいと流動性が高く、成形性に優れることを示し、流れ値(Q値)が小さいと流動性が低く、成形性が悪いことを示す。
[耐衝撃性:シャルピー衝撃値(ノッチ付き)]
上記で得られた樹脂組成物のペレットを80℃で5時間乾燥した後、日本製鋼所社製射出成形機(J55−60H)で、シリンダー温度260℃、金型温度60℃、スクリュー回転数100rpm、成形サイクル40秒の条件で射出成形し、ISO多目的試験片(3mm厚)を作製した。得られた試験片を室温(23℃)条件下でISO179−1&2に基づき、シャルピー衝撃試験(ノッチ付き)を行い、耐衝撃値(単位:KJ/m)を求めた。
[曲げ弾性率]
ISO178に準拠して、上記と同様にして、ISO試験片(4mm)を用い、23℃において、曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
[耐熱性]
上記で得られた樹脂組成物のペレットを80℃で5時間乾燥した後、日本製鋼所社製射出成形機(J55−60H)で、シリンダー温度260℃、金型温度60℃、スクリュー回転数100rpm、成形サイクル40秒の条件で射出成形し、ISO多目的試験片(4mm厚)を作製した。得られた試験片をISO75−1&2に基づき、荷重1.80MPaの条件(A法)にて、DTUL(荷重撓み温度、単位:℃)を測定し、耐熱性の評価を行った。
[総合評価]
上記の流動性、弾性率、耐衝撃性及び耐熱性の4項目につき、以下の基準で総合評価を行い、○または×と判定した。
<基準>
・流動性(Q値):7.5×10−2cc/sec以上である。
・弾性率(曲げ弾性率):2900MPa以上である。
・耐衝撃性(シャルピー衝撃値):5.0KJ/m以上である。
・耐熱性(DTUL):90℃以上である。
○:上記の4項目の基準を、全て満たしている。
×:上記の4項目の基準を、3項目以下で満たしている。
以上の評価結果を下記の表4及び表5に示す。
Figure 0006856457
Figure 0006856457
表4及び5から、ジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を特定量含む芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を含む本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である実施例1〜13は、ジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含まない従来のポリカーボネート樹脂組成物である比較例1と比べて、流動性に優れることがわかる。また、ポリカーボネートオリゴマーで流動性を向上させた比較例3は、流動性は向上するものの、耐衝撃性が非常に悪くなっていることが判る。また、本発明の範囲を超える量でジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である比較例2は、各実施例と比べて、耐熱性、耐衝撃性が著しく低下していることがわかる。
以上より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物と比較し、流動性、耐熱性及び耐衝撃性に優れることは明らかである。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性、流動性、弾性率及び耐熱性のバランスに優れるので、電気・電子機器のハウジングや自動車用部品、特に、各種携帯端末、電子機器、画像表示機器の筐体などに好適に使用することができ、産業上の利用性は非常に高い。

Claims (8)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、板状フィラー(B)を、10〜100質量部含有する樹脂組成物であって、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を構成する全カーボネート構造100mol%中、下記式()で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を1〜15mol%含むことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0006856457
    [式(7)中、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜24の一価炭化水素基からなる群より選ばれる何れか一つを表し、R 15 は炭素数7〜24のアルキル基を表す。]
  2. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、上記式()で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物(ii)に由来するカーボネート構造単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とを含むことを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0006856457
    Figure 0006856457
    [式(4)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または式(5)で表される二価の有機基の何れか1種を表す。式(5)中、Xは炭素数3〜18の二価炭化水素基を表し、Xは酸素原子またはNR14を表し、Xは炭素数1〜7のアルキレン基を表し、nは1〜500の整数を表す。また、式(4)及び(5)中、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜6の一価炭化水素基からなる群より選ばれる何れか一つを表す。なお、式(5)中、*はベンゼン環との結合部位を示す。
  3. 芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)が、上記式()で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位と、上記式()で表されるジヒドロキシ化合物(ii)に由来するカーボネート構造単位とを含むことを特徴とする請求項2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)を構成する全カーボネート構造100mol%中、上記式()で表されるジヒドロキシ化合物(i)に由来するカーボネート構造単位を2.5〜36.5mol%含むことを特徴とする請求項3に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とを質量比で、60/40〜4/96の割合で含むことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  6. ジヒドロキシ化合物(i)が、下記式(9)の化合物であることを特徴とする請求項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 0006856457
  7. 芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来するカーボネート構造単位からなることを特徴とする請求項2乃至の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 板状フィラー(B)が、ガラスフレークまたはタルクから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
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