JP2019001861A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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JP2019001861A
JP2019001861A JP2017115961A JP2017115961A JP2019001861A JP 2019001861 A JP2019001861 A JP 2019001861A JP 2017115961 A JP2017115961 A JP 2017115961A JP 2017115961 A JP2017115961 A JP 2017115961A JP 2019001861 A JP2019001861 A JP 2019001861A
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敏樹 門田
功 ▲高▼橋
功 ▲高▼橋
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Abstract

【課題】 流動性に優れるとともに、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性などの機械強度にも優れる熱可塑性樹脂組成物を提供する。【解決手段】 スチレン系樹脂と、芳香族ポリカーボネート樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、芳香族ポリカーボネート樹脂が、二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位を有し、前記二価フェノール化合物(A)と前記一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位は、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)に由来する構造単位を含み、前記二価フェノール化合物(A)に由来する構造単位の含有合計量に対する前記フェノール化合物(X)に由来する構造単位の含有合計濃度が、1.5〜40mol%である熱可塑性樹脂組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、強度と成形性に優れる熱可塑性樹脂組成物に関する。より詳しくは、引張強度、曲げ強度、衝撃強度に優れ、さらには流動性にも優れるスチレン系樹脂組成物に関する。
ポリスチレンを始めとするスチレン系樹脂は、比較的容易に成形することができ、さらには寸法安定性に優れるため、自動車材料、電気電子機器材料、雑貨、その他の工業分野における部品製造用材料として幅広く利用されている。特に耐薬品性や硬度を改良するためにアクリロニトリル成分を付与した例えばAS樹脂や、衝撃強度を改良するためにブタジエン成分を含有させた例えばABS樹脂は、各種電気機器筐体やOA機器筐体、さらには自動車内装材などの分野で数多く採用されている。
一方近年、自動車、電気電子機器材料を中心に、部材の軽薄短小化、集積大型化が進み、材料の成形加工性はますます高いレベルで要求され、上述のようなスチレン系樹脂においても高い流動性が求められている。このような要求に対し、従来スチレン系樹脂の分子量を下げ流動性を向上させる手法が試みられているが、このような手法では強度の低下が著しく、満足できる部材を得ることができなかった。
また、一般に樹脂材料の物性を改質する方法として異種ポリマーをブレンドし用いる所謂ポリマーアロイ技術が良く知られており、上述のようなスチレン系樹脂においてはポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイ化が検討されている(例えば、特許文献1)。
特公昭38−15225号公報
しかしながら、従来の知られているスチレン系樹脂とポリカーボネート樹脂のポリマーアロイ化においてはむしろ十分な強度を確保するためには、むしろスチレン系樹脂よりも流動性が悪化し、成形性が低下するという課題を有していた。
本発明は、上記課題に鑑み創案されたもので流動性に優れるとともに、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性などの機械強度にも優れる熱可塑性樹脂組成物を得ることを目的とする。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、スチレン系樹脂に対し、特定の構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を特定量配合することにより、流動性に優れるとともに、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性などの機械強度にも優れる熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[9]に存する。
[1] スチレン系樹脂と、芳香族ポリカーボネート樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
芳香族ポリカーボネート樹脂が、二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位を有し、
前記二価フェノール化合物(A)および/または前記一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位は、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)に由来する構造単位を含み、
前記二価フェノール化合物(A)に由来する構造単位の含有合計量に対する前記フェノ
ール化合物(X)に由来する構造単位の含有合計濃度が、1.5〜40mol%である熱可塑性樹脂組成物。
[2] 前記フェノール化合物(X)が、下記式(1)で表される二価フェノール化合物(a1)を含む[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2019001861
Figure 2019001861
[式(1)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または式(2)で表される二価の有機基の何れか1種を表す。式(2)中、Xは酸素原子またはNRを表し、Xは炭素数3〜18の二価炭化水素基を表し、Xは炭素数1〜7のアルキレン基を表し、mは1
〜500の整数を表す。
また、式(1)及び(2)中、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R、R、R、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。]
[3] 二価フェノール化合物(A)が、上記二価フェノール化合物(a1)と、下記式(3)で表される二価フェノール化合物(a2)を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2019001861
Figure 2019001861
[式(3)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または式(3)で表される二価の有機基の何れか1種を表す。式(4)中、Xは炭素数3〜18の二価炭化水素基を表し
、Xは酸素原子またはNR14を表し、Xは炭素数1〜7のアルキレン基を表し、nは1〜500の整数を表す。また、式(3)及び(4)中、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜6の一価炭化水素基を表す。]
[4] 二価フェノール化合物(a1)が、下記式(5)で表されることを特徴とする[2]または[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2019001861
[式(5)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表し、R15は炭素数7〜24のアルキル基を表す。]
[5] 二価フェノール化合物(a1)が、下記式(6)であることを特徴とする[4]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2019001861
[6]二価フェノール化合物(a2)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンであることを特徴とする[3]〜[5]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。[7] スチレン系樹脂が、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位、シアン化ビニル単量体に由来する構造単位、及びゴム質重合体に由来する構造単位とを有するABS樹脂である
ことを特徴とする[1]〜[6]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8] スチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族ポリカーボネート樹脂を1質量部以上、95質量未満含むことを特徴とする[1]〜[7]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[9] ISO1133に準拠し、220℃、10kgfの条件で測定したMVRの値が、前記スチレン系樹脂のMVRの値に対し、5%以上高いことを特徴とする[1]〜[8]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、流動性に優れるとともに、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性などの機械強度にも優れる熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。このような熱可塑性樹脂組成物は、自動車、電気電子機器材料、その他の工業分野における部品製造用材料として幅広く利用することができる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
熱可塑性樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、後述のスチレン系樹脂100質量部に対し、後述の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を1質量部以上、95質量部未満含むことを特徴とする。芳香族ポリカーボネート樹脂の含有量が、前記下限未満の場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性が不十分であり、また前記上限以上の場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の強度が低下する傾向にあるため好ましくない。このような観点より、本発明の芳香族ポリカーボネートの含有量は、スチレン系樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以上であることが特に好ましく、20質量部以上であることが最も好ましい。また、90質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましく、75質量部以下であることが特に好ましく、70質量部以下であることが最も好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果及び所望の諸物性を著しく阻害しない範囲で、上述したもの以外にその他の成分(樹脂添加剤)を含有していてもよい。樹脂添加剤の例を挙げると、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、輝度向上剤、染料、顔料、離型剤、難燃剤、強化材、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なかでも、一般射出成形材料として用いるためには熱安定剤、酸化防止剤、染料、顔料及び離型剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
スチレン系樹脂
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂を含む。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるスチレン系樹脂(以下、単にスチレン系樹脂と呼ぶことがある)は、芳香族ビニル単量体を主成分として含む樹脂であり、このような芳香族ビニル単量体としては、スチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、α−メチルスチレン、o−,m−,p−メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン等が挙げられるが、これらの中でもスチレンが好ましい。
また、本発明に用いられるポリスチレン系は、上述の芳香族ビニル単量体と共重合可能なコモノマーを、芳香族ビニル単量体と共重合することにより得られたコポリマーを使用してもよい。芳香族ビニル単量体と共重合可能なコモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物;N−フェニルマレイミド等の不飽和ジ脂肪酸イミド類;ブタジエン、水素添加ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン等のジエン系単量体;等が挙げられる。
このようなスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、ゴム成分(ゴム質重合体)(ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、EPDM、EVA等)にスチレン系単量体等の芳香族ビニル単量体と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体と、必要により共重合性単量体(メタクリル酸メチル等ビニル単量体)が重合したグラフト共重合体[耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS、MBS等]、ポリスチレンブロックとジエン又はオレフィンブロックとで構成された共重合体[例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン(SEPS)ブロック共重合体、エポキシ化SBS、エポキシ化SIS等]等が挙げられるが、なかでもGPPS、HIPS、AS、ABSが好ましく、HIPS,ABSがより好ましく、ABSがさらに好ましい。なお、これらのスチレン系樹脂は、一種類を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
このようなスチレン系樹脂としては、以下のPS、AS,MS,ABS、変性ポリスチレン等が挙げられる。
STYROLUTION社製「STYROLUTION PS」、「Absolan」、「Lulan」、「Lulan High Heat」、「NAS」、「Terlux」、「Zylar」、「Clearblend」、「Styrolux」、「K−Resin」、「Absolac」、「Absolac High Heat」、「Novodur」、「Novodur High Heat」、「Luran S」、「Styroflex」、「TERLURAN」、「LUSTRAN」、「LUSTRAN High
Heat」シリーズ、
PS Japan社製「PSJ−ポリスチレン GPPS」、「PSJ−ポリスチレン
HIPS」シリーズ、
東洋スチレン社製「トーヨースチロールGP」、「トーヨースチロールHI」シリーズ、
DIC社製「ディックスチレン」、「リューレックス」シリーズ、
日本A&L社製「ライタック」、「サンタック」、「クララスチック」、「ユニブライト」シリーズ
UMG ABS社製「UMG ABS」、「ダイヤラック」シリーズ
DENKA社製「デンカABS」、「デンカIP」シリーズ
テクノポリマー社製「テクノABS」、「テクノMUH」、「テクノAES」シリーズ
日本触媒社製「エポクロス」シリーズ
荒川化学工業社製「アラスター」シリーズ
NOVA Chemicals社製「Dylark」シリーズ
Chimei社製「ACRYSTEX」、「POLYLAC ABS」シリーズ
本発明に用いられるスチレン系樹脂は、芳香族ビニル単量体を含む単量体成分を熱重合するか、又は単数又は複数の有機過酸化物を重合開始剤として使用して重合することにより得ることができる。有機過酸化物の具体例としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類;ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジミリスチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシエステル類;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;p−メンタハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーアミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等の多官能過酸化物類等を挙げることができる。
これらの有機過酸化物は、スチレン系単量体を含む単量体成分の重合のいずれかの工程において重合系(重合原料溶液又は重合途中の溶液)に添加される。これらの有機過酸化物は、重合原料溶液に加えられても、重合途中の溶液に必要に応じて複数回に分割して添加されてもよい。有機過酸化物の添加量は、重合原料溶液100質量部に対して、好ましくは0.0005質量部〜0.2質量部であり、より好ましくは0.01質量部〜0.1質量部、さらに好ましくは0.03質量部〜0.08質量部である。有機過酸化物の添加量が、0.0005質量部以上であると、重合開始剤添加の所望の効果を得ることができるので好ましく、一方で、0.2質量部以下であると、重合時に反応熱が余り発生しなくなり、重合の制御が容易となるため好ましい。
本発明に用いられるスチレン系樹脂の重合方法としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられる。これらの中でも、塊状重合又は溶液重合が好ましく、さらには、連続塊状重合又は連続溶液重合が、生産性と経済性の両面で特に好ましい。即ち、芳香族ビニル単量体を含む単量体成分、及び必要に応じてエチルベンゼン、トルエン、キシレン等の重合溶媒、ラジカル開始剤として有機過酸化物、連鎖移動剤、安定剤、流動パラフィン(ミネラルオイル)等の添加剤を混合、溶解した原料溶液を攪拌機付き反応機に供給し、芳香族ビニル単量体を含む単量体成分の重合を行うことができる。重合温度は、ラジカル開始剤として有機過酸化物を用いた場合は、有機過酸化物の分解温度、生産性、反応機の徐熱能力、目的としているスチレン系重合体の流動性等を考慮して、既知の技術を用いて設定することができる。重合反応機を出た重合溶液は、脱気工程として、回収装置に導かれ、加熱・減圧脱揮で溶媒と未反応単量体を除去する。回収装置は、スチレン系樹脂の製造で常用される装置、例えば、フラッシュタンクシステム、多段ベント付き押出機等を用いることができる。
芳香族ビニル単量体を含む重合原料のための重合装置としては、完全混合型、プラグフロー型、循環装置を備えたプラグフロー型等の装置のいずれも好適に用いることができる。これらの中でも、組成分布の均一性から完全混合型重合装置が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位を有する。ここで、二価フェノール化合物(A)に由来する構造単位とは、ポリカーボネート樹脂を構成する基本的な繰返し単位を表し、一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位とは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端構造の1つを表す。
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂において、上記二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)は、ともにフェノール化合物であるが、これら二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)中、少なくとも1種の炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)を1.5〜40mol%含むことを特徴とする。
このような二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)中、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)を特定量含むポリカーボネート樹脂を上述のスチレン系樹脂に特定量含有させることで、驚くべきことに、スチレン系樹脂の本来有する引張強度、曲げ強度、衝撃強度等の機械物性を損なうことなく、流動性を著しく向上させることが可能となる。この理由は明らかではないが、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)に由来する構造単位が、本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動時にポリマー同士の摩擦や、絡み合いを適度に阻害し、流動特性を高め、さらに固化した際には、スチレン系樹脂との適度な相溶性を付与し、スチレン系樹脂の機械特性の低下を最小限にした上で、ポリカーボネート樹脂骨格の持つ良好な機械強度特性で補うように働き、優れた機械強度を発現するためと考えられる。
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂において、上述の炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)の二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)の合計に対する割合が、1.5mol%未満の場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性が不十分であり、一方、40mol%を超える場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械物性が低下するため好ましくない。このような観点より、上述の炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)の二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)の合計に対する割合は、2mol%以上であることが好ましく、3mol%以上であることが好ましく、4mol%以上であることがより好ましく、8mol%以上であることがさらに好ましく、15mol%以上であることが特に好ましく、20mol%以上であることが最も好ましい。一方で、38mol%以下であることが好ましく、36.5mol%以下であることがより好ましく、35mol%以下であることがさらに好ましく、33mol%以下であることが特に好ましく、31mol以下であることが最も好ましい。
なお、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)の割合は、当業者であればNMRにて容易に求めることができる。
また、測定条件については特に制限はないが、重溶媒としては通常重クロロホルムを好適に使用することができるが、芳香族ポリカーボネート樹脂の特性に合わせ、重アセトン、重ジメチルスルホキシド、重ジクロロメタン等の重溶媒を適宜選択できる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物が重溶媒に溶解しづらい場合は、水酸化ナトリウムなどの強アルカリ条件でポリカーボネート樹脂を加水分解し、不溶物を濾過して得られたフェノール化合物をNMRで分析する方法も考えられる。
二価フェノール化合物(A)
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有する芳香族ポリカーボネートは、二価フェノール化合物(A)に由来する構造単位を有する。ここで二価フェノール化合物(A)は、分子骨格内にフェノール性水酸基を2つ有する化合物であれば特に制限なく、適宜選択し用いることができるが、なかでも下記式(1)で表される二価フェノール化合物(a1)および/または下記式(3)で表される二価フェノール化合物(a2)が好ましい。
Figure 2019001861
Figure 2019001861
Figure 2019001861
Figure 2019001861
式(1)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または式(2)で表される二価の有機基の何れか1種を表し、式(2)中、Xは酸素原子またはNRを表し、Xは炭素数3〜18の二価炭化水素基を表し、Xは炭素数1〜7のアルキレン基を表す。
の表す炭素数3〜18の二価炭化水素基としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウ
ンデシレン基、ドデシニレン基などが挙げられ、それぞれさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基などが挙げられる。さらに一部架橋構造を有していてもよい。
このようなXを有する式(2)の二価の有機基の好ましい例としては、下記式(5)の有機基が挙げられる。
Figure 2019001861
の表す炭素数1〜7のアルキレン基としては、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、環状構造を有していてもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、t−ブチレン基、シクロブチレン基、1−メチル−シクロプロピレン基、2−メチル−シクロプロピレン基、n−ペンチレン基、1−メチル−n−ブチレン基、2−メチル−n−ブチレン基、3−メチル−n−ブチレン基、1,1−ジメチル−n−プロピレン基、1,2−ジメチル−n−プロピレン基、2,2−ジメチル−n−プロピレン基、1−エチル−n−プロピレン基、シクロペンチレン基、1−メチル−シクロブチレン基、2−メチル−シクロブチレン基、3−メチル−シクロブチレン基、1,2−ジメチル−シクロプロピレン基、2,3−ジメチル−シクロプロピレン基、1−エチル−シクロプロピレン基、2−エチル−シクロプロピレン基、n−ヘキシレン基、1−メチル−n−ペンチレン基、2−メチル−n−ペンチレン基、3−メチル−n−ペンチレン基、4−メチル−n−ペンチレン基、1,1−ジメチル−n−ブチレン基、1,2−ジメチル−n−ブチレン基、1,3−ジメチル−n−ブチレン基、2,2−ジメチル−n−ブチレン基、2,3−ジメチル−n−ブチレン基、3,3−ジメチル−n−ブチレン基、1−エチル−n−ブチレン基、2−エチル−n−ブチレン基、1,1,2−トリメチル−n−プロピレン基、1,2,2−トリメチル−n−プロピレン基、1−エチル−1−メチル−n−プロピレン基、1−エチル−2−メチル−n−プロピレン基、シクロヘキシレン基、1−メチル−シクロペンチレン基、2−メチル−シクロペンチレン基、3−メチル−シクロペンチレン基、1−エチル−シクロブチレン基、2−エチル−シクロブチレン基、3−エチル−シクロブチレン基、1,2−ジメチル−シクロブチレン基、1,3−ジメチル−シクロブチレン基、2,2−ジメチル−シクロブチレン基、2,3−ジメチル−シクロブチレン基、2,4−ジメチル−シクロブチレン基、3,3−ジメチル−シクロブチレン基、1−n−プロピル−シクロプロピレン基、2−n−プロピル−シクロプロピレン基、1−イソプロピル−シクロプロピレン基、2−イソプロピル−シクロプロピレン基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピレン基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピレン基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピレン基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピレン基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピレン基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピレン基及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピレン基、n−へプチレン基等が挙げられるが、なかでも、炭素数1乃至3のアルキレン基が好ましい
また、mは1〜500の整数を表すが、なかでも5〜300であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。
式(1)、(2)中のR、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R、R、R、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。
上記炭素数1〜24の一価炭化水素基としては、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアリールアルキル基等が挙げられる。
炭素数1〜24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性をより効果的に高められるため、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、メチルヘキシル基、メチルへプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルデシル基、メチルウンデシル基、メチルドデシル基、メチルトリデシル基、メチルテトラデシル基、メチルペンタデシル基、メチルヘキサデシル基、メチルヘプタデシル、メチルオクタデシル基、メチルノナデシル基、メチルイコシル基、メチルイコシル基、メチルヘンイコシル基、メチルドコシル基、メチルトリコシル基、
ジメチルブチル基、ジメチルペンチル基、ジメチルヘキシル基、ジメチルへプチル基、ジメチルオクチル基、ジメチルノニル基、ジメチルデシル、ジメチルウンデシル基、ジメチルドデシル基、ジメチルトリデシル基、ジメチルテトラデシル基、ジメチルペンタデシル基、ジメチルヘキサデシル基、ジメチルヘプタデシル、ジメチルオクタデシル基、ジメチルノナデシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルヘンイコシル基、ジメチルドコシル基、
トリメチルへプチル基、トリメチルオクチル基、トリメチルノニル基、トリメチルデシル、トリメチルウンデシル基、トリメチルドデシル基、トリメチルトリデシル基、トリメチルテトラデシル基、トリメチルペンタデシル基、トリメチルヘキサデシル基、トリメチルヘプタデシル基、トリメチルオクタデシル基、トリメチルノナデシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルヘンイコシル基、
エチルプロピル基、エチルブチル基、エチルペンチル基、エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基、エチルドコシル基、
プロピルブチル基、プロピルペンチル基、プロピルヘキシル基、プロピルへプチル基、プロピルオクチル基、プロピルノニル基、プロピルデシル、プロピルウンデシル基、プロ
ピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル基、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基、
ブチルペンチル基、ブチルヘキシル基、ブチルへプチル基、ブチルオクチル基、ブチルノニル基、ブチルデシル基、ブチルウンデシル基、ブチルドデシル基、ブチルトリデシル基、ブチルテトラデシル基、ブチルペンタデシル基、ブチルヘキサデシル基、ブチルヘプタデシル、ブチルオクタデシル基、ブチルノナデシル基、ブチルイコシル基、ブチルイコシル基が挙げられる。なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
環状アルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
炭素数2〜24のアルケニル基としては、上記直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素二重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、4,8,12−トリメチルトリデシル基が挙げられる。
炭素数1〜24のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、一部環状構造を有するアルコキシ基などが挙げられるが、なかでも直鎖状のアルコキシ基が好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基およびテトラデシルオキシ基、フェノキシ基などが挙げられる。
炭素数6〜24のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基などが挙げられ、炭素数7〜24のアリールアルキル基等としては、ベンジル基などが挙げられる。
式(1)、(2)中のR、R、R、R、R、R及びRは、上述のようにそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R、R、R、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。
このように炭素数7〜24のアルキル基を有することで、本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械強度を低下させることなく、流動性を向上させることができる。R、R、R、R、R、R、Rのうち全てが、炭素数が7未満の場合は、上述のような流動性向上効果が得られず、一方で、R、R、R、R、R、R、Rのいずれかが、炭素数が24を超える場合は、極端に耐熱性が低下し、さらには強度も低下するため好ましくない。このような観点より、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、上記式(1)、(2)中のR、R、R、R、R、R、Rのうち少なくとも1つは、炭素数8〜20のアルキル基を有することがより好ましく、炭素数9〜15のアルキル基を有することがさらに好ましく、炭素数9〜11のアルキル基を有することが特に好ましい。
式(3)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または式(3)で表される二価の有機基の何れか1種を表し、式(4)中、Xは炭素数3〜18の二価炭化水素基を表す
。炭素数3〜18の二価炭化水素基としては、上述のXが表す炭素数3〜18の二価炭
化水素基と同義である。また、Xは酸素原子またはNR14を表し、Xは炭素数1〜7のアルキレン基を表す。炭素数1〜7のアルキレン基としては、上述のXが表す炭素数
1〜7のアルキレン基と同義である。また、また、nは1〜500の整数を表すが、なかでも5〜300であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。
二価フェノール化合物(a1)の具体例としては、なかでも下記式(6)〜(7)で表される化合物がより好ましく、(7)で表される化合物がさらに好ましい。
Figure 2019001861
式(6)中、R、R、R、Rは、式(1)中のR、R、R、Rと同義であり、R、Rは、式(2)中のR、Rと同義であるが、R、R、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。
Figure 2019001861
式(7)中、R、R、R、Rは、式(1)中のR、R、R、Rと同義であり、R15は、炭素数7〜24のアルキル基を表す。
式(6)〜(7)中の炭素数7〜24のアルキル基としては、具体的には直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性をより効果的に高められるため、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルへプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルデシル基、メチルウンデシル基、メチルドデシル基、メチルトリデシル基、メチルテトラデシル基、メチルペンタデシル基、メチルヘキサデシル基、メチルヘプタデシル、メチルオクタデシル基、メチルノナデシル基、メチルイコシル基、メチルイコシル基、メチルヘンイコシル基、メチルドコシル基、メチルトリコシル基、
ジメチルヘキシル基、ジメチルへプチル基、ジメチルオクチル基、ジメチルノニル基、ジメチルデシル、ジメチルウンデシル基、ジメチルドデシル基、ジメチルトリデシル基、ジメチルテトラデシル基、ジメチルペンタデシル基、ジメチルヘキサデシル基、ジメチルヘプタデシル、ジメチルオクタデシル基、ジメチルノナデシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルヘンイコシル基、ジメチルドコシル基、
トリメチルへプチル基、トリメチルオクチル基、トリメチルノニル基、トリメチルデシル、トリメチルウンデシル基、トリメチルドデシル基、トリメチルトリデシル基、トリメチルテトラデシル基、トリメチルペンタデシル基、トリメチルヘキサデシル基、トリメチルヘプタデシル基、トリメチルオクタデシル基、トリメチルノナデシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルヘンイコシル基、
エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基、エチルドコシル基、
プロピルペンチル基、プロピルヘキシル基、プロピルへプチル基、プロピルオクチル基、プロピルノニル基、プロピルデシル、プロピルウンデシル基、プロピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル基、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基、
ブチルペンチル基、ブチルヘキシル基、ブチルへプチル基、ブチルオクチル基、ブチルノニル基、ブチルデシル基、ブチルウンデシル基、ブチルドデシル基、ブチルトリデシル基、ブチルテトラデシル基、ブチルペンタデシル基、ブチルヘキサデシル基、ブチルヘプタデシル、ブチルオクタデシル基、ブチルノナデシル基、ブチルイコシル基、ブチルイコシル基が挙げられる。なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
炭素数7〜24のアルキル基としては、なかでもn−へプチル基、n−オクチル基、エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基が好ましく、n−オクチル基、エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基がより好ましく、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基が特に好ましい。このようなアルキル基を持つことで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性と機械強度をより効果的に高めることができる。
このような式(6)、(7)の具体例としては、下記表1に例示される化合物(6)−1〜(6)−20及び下記表2に例示される化合物(7)−1〜(7)−18が挙げられる。
Figure 2019001861
Figure 2019001861
二価フェノール化合物(a1)としては、なかでも化合物(6)−1〜(6)−15がより好ましく、化合物(6)−3、化合物(6)−4及び、化合物(6)−5がさらに好ましく、下記式(8)、(9)で表される化合物であることが特に好ましく、化合物(9)であることが最も好ましい。このような二価フェノール化合物(a1)を選択することで、本発明の熱可塑性樹脂組物の流動性、強度が優れるだけでなく、色調、耐熱性にも優れるようになる。
Figure 2019001861
Figure 2019001861
前記式(3)、(4)中のR、R、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1〜6の一価炭化水素基を表す。上記炭素数1〜6の一価炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基等が挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルブチル基、エチルプロピル基、エチルブチル基が挙げられる。なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
環状アルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
炭素数2〜6のアルケニル基としては、上記直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素二重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、一部環状構造を有するアルコキシ基などが挙げられるが、なかでも直鎖状のアルコキシ基が好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
このような二価フェノール化合物(a2)としては、例えば、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
1,4−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アリールアルキル類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメ
チルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド(フェノールフタレイン)、
2−メチルー3,3‘−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、
2−フェニルー3,3‘−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、
ジメチルシロキサン骨格を有するビスフェノール化合物等が挙げられる。
なお、二価フェノール化合物(a2)は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
一価フェノール化合物(B)
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有する芳香族ポリカーボネートは、一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位を有する。ここで一価フェノール化合物(B)は、分子骨格内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物であれば特に制限なく、適宜選択し用いることができるが、なかでも下記式(10)で表される一価フェノール化合物(b1)および/または下記式(11)で表される一価フェノール化合物(b2)が好ましい。
Figure 2019001861
式(10)中、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R15、R16、R17、R18及びR19のうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。
上記R15、R16、R17、R18及びR19が表す炭素数1〜24の一価炭化水素基としては、上述の式(1)、(2)中のR、R、R、R、R、R及びRが表す炭素数1〜24の一価炭化水素基と同義である。
式(10)で表される一価フェノール化合物(b1)としては、なかでもオクチルフェノール、ノニルフェノール、ペンタデシルフェノール、ペンタデシルフェノールモノエン、ペンタデシルフェノールジエン、ペンタデシルフェノールトリエンが好ましい。
Figure 2019001861
式(11)中、R20、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は、炭素数7〜25のアリールアルキル基を表す。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも直鎖状、分岐状アルキル基であることが好
ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などが挙げられる。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルブチル基、エチルプロピル基、エチルブチル基が挙げられる。なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
環状アルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
また、炭素数1〜6のアルキル基としては、その一部がハロゲンで置換されたハロゲン化アルキル基であっても良い。
炭素数2〜6のアルケニル基としては、上記直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素二重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
また、炭素数2〜6のアルケニル基としては、その一部がハロゲンで置換されたハロゲン化アルケニル基であっても良い。
炭素数2〜6のアルキニル基としては、上記直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素三重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、エニチル基が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、一部環状構造を有するアルコキシ基などが挙げられるが、なかでも直鎖状のアルコキシ基が好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
炭素数6〜24のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基などが挙げられ、炭素数7〜25のアリールアルキル基等としては、ベンジル基、プロピリデンフェニル基などが挙げられる。
式(11)で表される一価フェノール化合物(b2)としては、なかでもフェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、フェニルフェノール、スチレン化フェノール、クミルフェノール等がなかでもフェノール、ブチルフェノール、クミルフェノールが好ましく、フェノール、tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールがより好ましく、フェノールがさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂は、上述の通り二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位を有するが、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)とは炭素数7〜24のアルキル基を有する二価フェノール化合物(A)すなわち二価フェノール化合物(a1)と、炭素数7〜24のアルキル基を有する一価フェノール化合物(B)すなわち一価フェノール化合物(b1)を指す。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、なかでも二価フェノール化合物(a1)と一価フェノール化合物(b2)からなる芳香族ポリカーボネート樹脂または二価フェノール化合物(a2)と一価フェノール化合物(b1)からなる芳香族ポリカーボネート樹脂であることがより好ましく、二価フェノール化合物(a1)と一価フェノール化合物(b2)からなる芳香族ポリカーボネート樹脂であることがさらに好ましい。このような二価フェノール化合物(A)と、一価フェノール化合物(B)を選択することで、本発明の熱可
塑性樹脂組成物の機械強度をより損なうことなく、より流動性を向上させることができ、さらには炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)の割合を制御しやすく、また比較的高い割合で含有させることができるというメリットを持つ。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量
本発明の熱可塑性樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、通常10,000〜100,000であることを特徴とする。粘度平均分子量が上記下限値未満の場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械物性が低下するため好ましくない。また粘度平均分子量が上記上限値を超える場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性が極端に不十分となる傾向があるため好ましくない。このような観点より、本発明の熱可塑性樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上、さらに好ましくは19,000以上であり、特に好ましくは20,000以上である。また好ましくは80,000以下、より好ましくは40,000以下、さらに好ましくは30,000以下であり、特に好ましくは28,000以下である。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を上記範囲に制御する際には、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)を制御してもよい。
なお本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒として塩化メチレンを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での固有粘度(極限粘度)[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、
すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出される値を意味する。また固有粘度(極限粘度)[η]とは、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[ηsp]を
測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2019001861
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、公知の手法であれば特に制限はなく適宜選択し用いることができるが、二価フェノール化合物、及び任意で選択されるその他の一価フェノール化合物、多価フェノール化合物と、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって得られる。
カーボネート形成性化合物の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート形成性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;二価フェノール化合物のビスクロロホルメート体、二価フェノール化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、下記式(12)で表される化合物であればよく、アリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類や二価フェノール化
合物のビスカーボネート体、二価フェノール化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等の二価フェノール化合物のカーボネート体等が挙げられる。
Figure 2019001861
式(12)中、Z及びZは、それぞれ独立に炭素数1〜30のアルキル基またはアリール基、アリールアルキル基を表す。以下、Z及びZが、アルキル基、アリールアルキル基のときジアルキルカーボネートと称し、アリール基のときジアリールカーボネートと称すことがある。なかでもジヒドロキシ化合物との反応性の観点よりZ及びZは、共にアリール基であることが好ましく、下記式(13)で表されるジアリールカーボネートでることがより好ましい。
Figure 2019001861
式(13)中、Z及びZは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、p及びqはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。
このようなカーボネートエステルとしては、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチルフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート等の(置換)ジアリールカーボネートが挙げられるが、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。なお、これらのカーボネートエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、前記のカーボネートエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法にて製造する場合、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端基には原料に用いるカーボネートエステルに由来する構造単位が導入される。すなわち、ジフェニルカーボネートをカーボネート形成化合物に
用いた場合は、フェノールに由来する末端構造を有するポリカーボネート樹脂が得られる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、従来から知られている重合法により製造することができ、その重合法としては、特に限定されるものではない。重合法の例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
界面重合法
まず、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、原料の二価フェノール化合物とカーボネート形成性化合物(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによって芳香族ポリカーボネートコポリマーを得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、二価フェノール化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
原料のジヒドロキシ化合物及びカーボネート形成性化合物は、前述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、原料のジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤としては、上記一価フェノール化合物(b1)及び一価フェノール化合物(b2)が好ましい。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組
み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、原料の二価フェノール化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性及び湿熱安定性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質(反応原料)、反応媒(有機溶媒)、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート形成性化合物としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤は原料の二価フェノール化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は、特に限定されないが、通常0〜40℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
溶融エステル交換法
次に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、カーボネートエステルと原料の二価フェノール化合物とのエステル交換反応を行う。
原料の二価フェノール化合物、及びカーボネートエステルは、上述の通りである。
原料の二価フェノール化合物とカーボネートエステル(前記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)との比率は所望の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、これらカーボネートエステルは、二価フェノール化合物と重合させる際に、原料の二価フェノール化合物に対して過剰に用いることが好ましい。すなわち、カーボネートエステルは、二価フェノール化合物に対して、1.01〜1.30倍量(モル比)であることが好ましく、1.02〜1.20倍量(モル比)であることがより好ましい。モル比が小さすぎると、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が大きすぎると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の生産が困難となる場合や、樹脂中のカーボネートエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となる場合がある。
溶融エステル交換法により本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に限定されず、従来から公知のものを使用できる。例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法において、反応温度は、特に限定されないが、通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は、特に限定されないが、通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
反応形式は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。但しなかでも、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体、リン含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒失活剤の使用量は、特に限定されないが、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常20当量以下、好ましくは10当量以下である。さらには、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、スチレン系樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂と、必要に応じて配合されるその他の成分とを例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
熱可塑性樹脂組成物成形体
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形等の熱加工によって熱可塑性樹脂組成物成形体として好適に用いることができる。このような熱可塑性樹脂組成物成形体の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形体の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等、また特殊な形状のもの等、各種形状のものが挙げられる。また、例えば表面に凹凸を有していたり、三次元曲面を有する立体的な形状のものであってもよい。
射出成形の方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
成形体の例を挙げると、各種自動車部材、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品が挙げられる。これらの中でも、特に自動車内装部材、電気電子機器筐体、OA機
器筐体、情報端末筐体に好適に用いることができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、下記の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。また、以下の説明において「部」とは、特に断らない限り質量基準に基づく「質量部」を表す。
(合成例1)
式(9)で表される二価フェノール化合物(a1)の合成
フェノール(100重量部)を40℃に加温し融解させた後、濃塩酸(1.33重量部)を加えた。そこへ、ドデカナール(39.0重量部)およびトルエン(21.2重量部)の混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、40℃で1時間熟成した後、炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止させた。反応混合物からフェノールを減圧留去した後、トルエンで抽出し、水で3回洗浄した。溶媒を留去した後、トルエンおよびヘプタンから晶析させることで、白色粉末として27.8重量部の目的化合物(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン)を得た。純度 99.0%、融点86℃であった。
なお、各分析条件は以下の通りである。
[純度]
サンプル0.01質量部を1質量部のアセトニトリルに溶解させた。得られた溶液をHPLC分析装置(島津製作所製LC−2010)にて分析した。条件は以下の通りである。
カラム:inertsilODS3V(ジーエルサイエンス社製)
溶出溶媒:アセトニトリル/0.1質量%酢酸アンモニウム溶液
検出器:UV(254nm)
純度は、254nmにおける面積%から求めた。
[融点]
Stuart Scientific社製SMP3融点測定装置を用いた。2℃/minの条件で昇温し、固体が全て融解した時点での温度を融点とした。
(合成例2)
芳香族ポリカーボネート樹脂(PC1)の合成例
攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した第1反応器に、合成例1で合成された式(9)で表される二価フェノール化合物(a1)10mol部、三菱化学社製ビスフェノールA(二価フェノール化合物(a2))90mol部、三菱化学社製ジフェニルカーボネート(108mol部、キシダ化学社製炭酸セシウム 0.5×10−6mol部を仕込み、十分に窒素置換した後に、第1反応器内を1.33kPa(10Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を5回繰り返し、第1反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、300rpmで撹拌機を回転させ、熱媒ジャケット内の温度をコントロールして、第1反応器の内温を220℃に保った。そして、第1反応器の内部で行われるジヒドロキシ化合物とDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、第1反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。系内を窒素で絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、予め200℃以上に加熱した移送配管を経由して、第1反応器内のオリゴマーを攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ並びに還流冷却管を具備した内温240℃の第2反応器に圧送した。次に、第2反応器内に圧送したオリゴマーを攪拌し、熱媒ジャケットにて内温を昇温し、第2反応器内を40分かけて絶対圧で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。その後、昇温を継続し、さらに40分かけて、内圧を絶対圧で13.3kPaから399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、昇温を続け、第2反応器内の絶対圧が70Pa(約0.5Torr)に到達後、70Paを保持し、重縮合反応を行った。第2反応器内の最終的な内部温度は255℃まで上昇させ、第2反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了し、反応器内を窒素で復圧後、圧力をかけ漕底から抜出し、水冷漕で冷却し、芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。その後、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂にパラトルエンスルホン酸ブチルを5ppm配合し、φ30mmの二軸押出機で溶融混練し、ストランド状にしたものをペレタイザーでカッティングし、ペレット状の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC1)を得た。
(合成例3)
芳香族ポリカーボネート樹脂(PC2)の合成例
合成例1で合成された式(9)で表される二価フェノール化合物(a1)30mol部、三菱化学社製ビスフェノールA(二価フェノール化合物(a2))70mol部とした他は、合成例2と同様に製造し、ペレット状の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC2)を得た。
(合成例4)
芳香族ポリカーボネート樹脂(PC3)の合成例
合成例1で合成された式(9)で表される二価フェノール化合物(a1)を使用せず、三菱化学社製ビスフェノールA(二価フェノール化合物(a2))100mol部とした他は、合成例2と同様に製造し、ペレット状の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC3)を得た。
芳香族ポリカーボネート樹脂の評価
[粘度平均分子量(Mv)]
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、上述の通り、ウベローデ粘度計(森友理化工業社製)を使用し、20℃における塩化メチレン溶液の固有粘度(極限粘度)[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出した。表3にその値をそれぞれ示す。
[フェノール化合物(X)の割合]
芳香族ポリカーボネート樹脂のフェノール化合物(X)の割合は、試料70mgを重クロロホルム溶媒0.7mlに溶解し、Bruker社製AVANCE400型NMRを用いて、共鳴周波数400.1MHz、フリップ角45°、試料管回転速度15Hz、積算回数64回、1H NMRスペクトルを測定し、二価フェノール化合物、及び一価フェノール化合物に由来するピークを帰属し、それらのシグナル面積からそれぞれのモル比を求めた。表3にその値をそれぞれ示す。
Figure 2019001861
熱可塑性樹脂組成物の製造
下記表4に示したスチレン系樹脂と、上記表3に示した芳香族ポリカーボネート樹脂とを、下記表5に記載の割合(質量部)で配合、混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX30HSS)に供給し、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/h、バレル温度230℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷した後に、ペレタイザーを用いてペレット化し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
Figure 2019001861
流動性評価
熱可塑性樹脂組成物の流動性は、MVR(メルトボリュームレート)で評価した。上述の方法で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて80℃で5時間予備乾燥後、東洋精機社製メルトインデクサーを用いて、ISO1133に準拠し、220℃、10kgfの条件でMVRの値を測定した。MVRの値が大きいほど、流動性が良好で成形性が優れることを表し、好ましい。
引張り強度
上述の方法で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて80℃で5時間予備乾燥後、230℃のシリンダー温度で、ISO527に準拠したダンベル試験片を成形し、該規格に準拠し引張試験を実施し、引張破断強度を測定した。
曲げ弾性率、曲げ強度
上述の方法で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて80℃で5時間予備乾燥後、230℃のシリンダー温度で、ISO178に準拠した試験片を成形し、該規格に準拠し曲げ試験を実施し、曲げ弾性率及び曲げ強度を測定した。
シャルピー衝撃強度
上述の方法で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて80℃で5時間予備乾燥後、230℃のシリンダー温度で、ISO179に準拠した試験片を成形し、R0.25のVノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した。
Figure 2019001861
Figure 2019001861
スチレン系樹脂に対して、本発明の炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)を特定量含む芳香族ポリカーボネート樹脂を含む実施例1〜4の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を含まない比較例1のスチレン系樹脂と比較し、強度は同等あるいは、それ以上に向上し、さらに流動性が大幅に向上しているのがわかる。
またスチレン系樹脂の種類を変えた実施例5〜8と比較例3を比較しても同様の傾向であることがわかる。
一方、スチレン系樹脂に対して、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)を含まない芳香族ポリカーボネート樹脂を配合した比較例2は、比較例1と比較し、強度は維持しているものの、流動性は悪化していることもわかる。
このことより、本発明のスチレン系樹脂100質量部に対し、特定の芳香族ポリカーボネート樹脂を配合することによりはじめて、流動性と強度が共に優れる熱可塑性樹脂が得
られることが明らかである。

Claims (9)

  1. スチレン系樹脂と、芳香族ポリカーボネート樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
    芳香族ポリカーボネート樹脂が、二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位を有し、
    前記二価フェノール化合物(A)および/または前記一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位は、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)に由来する構造単位を含み、
    前記二価フェノール化合物(A)に由来する構造単位の含有合計量に対する前記フェノール化合物(X)に由来する構造単位の含有合計濃度が、1.5〜40mol%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記フェノール化合物(X)が、下記式(1)で表される二価フェノール化合物(a1)を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2019001861
    Figure 2019001861
    [式(1)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または式(2)で表される二価の有機基の何れか1種を表す。式(2)中、Xは酸素原子またはNRを表し、Xは炭素数3〜18の二価炭化水素基を表し、Xは炭素数1〜7のアルキレン基を表し、mは1
    〜500の整数を表す。
    また、式(1)及び(2)中、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R、R、R、R、R、R、Rのうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。]
  3. 二価フェノール化合物(A)が、上記二価フェノール化合物(a1)と、下記式(3)で表される二価フェノール化合物(a2)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2019001861
    Figure 2019001861
    [式(3)中、Wは、単結合、酸素原子、硫黄原子、または式(3)で表される二価の有機基の何れか1種を表す。式(4)中、Xは炭素数3〜18の二価炭化水素基を表し
    、Xは酸素原子またはNR14を表し、Xは炭素数1〜7のアルキレン基を表し、nは1〜500の整数を表す。また、式(3)及び(4)中、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜6の一価炭化水素基を表す。]
  4. 二価フェノール化合物(a1)が、下記式(5)で表されることを特徴とする請求項2または3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2019001861
    [式(5)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表し、R15は炭素数7〜24のアルキル基を表す。]
  5. 二価フェノール化合物(a1)が、下記式(6)であることを特徴とする請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2019001861
  6. 二価フェノール化合物(a2)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンであることを特徴とする請求項3乃至5の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. スチレン系樹脂が、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位、シアン化ビニル単量体に由来する構造単位、及びゴム質重合体に由来する構造単位とを有するABS樹脂であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. スチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族ポリカーボネート樹脂を1質量部以上、95質量未満含むことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. ISO1133に準拠し、220℃、10kgfの条件で測定したMVRの値が、前記スチレン系樹脂のMVRの値に対し、5%以上高いことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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