JP2019001861A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
一方近年、自動車、電気電子機器材料を中心に、部材の軽薄短小化、集積大型化が進み、材料の成形加工性はますます高いレベルで要求され、上述のようなスチレン系樹脂においても高い流動性が求められている。このような要求に対し、従来スチレン系樹脂の分子量を下げ流動性を向上させる手法が試みられているが、このような手法では強度の低下が著しく、満足できる部材を得ることができなかった。
また、一般に樹脂材料の物性を改質する方法として異種ポリマーをブレンドし用いる所謂ポリマーアロイ技術が良く知られており、上述のようなスチレン系樹脂においてはポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイ化が検討されている(例えば、特許文献1)。
本発明は、上記課題に鑑み創案されたもので流動性に優れるとともに、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性などの機械強度にも優れる熱可塑性樹脂組成物を得ることを目的とする。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[9]に存する。
[1] スチレン系樹脂と、芳香族ポリカーボネート樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
芳香族ポリカーボネート樹脂が、二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位を有し、
前記二価フェノール化合物(A)および/または前記一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位は、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)に由来する構造単位を含み、
前記二価フェノール化合物(A)に由来する構造単位の含有合計量に対する前記フェノ
ール化合物(X)に由来する構造単位の含有合計濃度が、1.5〜40mol%である熱可塑性樹脂組成物。
[2] 前記フェノール化合物(X)が、下記式(1)で表される二価フェノール化合物(a1)を含む[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〜500の整数を表す。
また、式(1)及び(2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7のうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。]
[3] 二価フェノール化合物(A)が、上記二価フェノール化合物(a1)と、下記式(3)で表される二価フェノール化合物(a2)を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
、X5は酸素原子またはNR14を表し、X6は炭素数1〜7のアルキレン基を表し、nは1〜500の整数を表す。また、式(3)及び(4)中、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜6の一価炭化水素基を表す。]
[4] 二価フェノール化合物(a1)が、下記式(5)で表されることを特徴とする[2]または[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
ことを特徴とする[1]〜[6]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8] スチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族ポリカーボネート樹脂を1質量部以上、95質量未満含むことを特徴とする[1]〜[7]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[9] ISO1133に準拠し、220℃、10kgfの条件で測定したMVRの値が、前記スチレン系樹脂のMVRの値に対し、5%以上高いことを特徴とする[1]〜[8]の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、後述のスチレン系樹脂100質量部に対し、後述の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を1質量部以上、95質量部未満含むことを特徴とする。芳香族ポリカーボネート樹脂の含有量が、前記下限未満の場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性が不十分であり、また前記上限以上の場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の強度が低下する傾向にあるため好ましくない。このような観点より、本発明の芳香族ポリカーボネートの含有量は、スチレン系樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以上であることが特に好ましく、20質量部以上であることが最も好ましい。また、90質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましく、75質量部以下であることが特に好ましく、70質量部以下であることが最も好ましい。
なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂を含む。本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるスチレン系樹脂(以下、単にスチレン系樹脂と呼ぶことがある)は、芳香族ビニル単量体を主成分として含む樹脂であり、このような芳香族ビニル単量体としては、スチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、α−メチルスチレン、o−,m−,p−メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン等が挙げられるが、これらの中でもスチレンが好ましい。
STYROLUTION社製「STYROLUTION PS」、「Absolan」、「Lulan」、「Lulan High Heat」、「NAS」、「Terlux」、「Zylar」、「Clearblend」、「Styrolux」、「K−Resin」、「Absolac」、「Absolac High Heat」、「Novodur」、「Novodur High Heat」、「Luran S」、「Styroflex」、「TERLURAN」、「LUSTRAN」、「LUSTRAN High
Heat」シリーズ、
PS Japan社製「PSJ−ポリスチレン GPPS」、「PSJ−ポリスチレン
HIPS」シリーズ、
東洋スチレン社製「トーヨースチロールGP」、「トーヨースチロールHI」シリーズ、
DIC社製「ディックスチレン」、「リューレックス」シリーズ、
日本A&L社製「ライタック」、「サンタック」、「クララスチック」、「ユニブライト」シリーズ
UMG ABS社製「UMG ABS」、「ダイヤラック」シリーズ
DENKA社製「デンカABS」、「デンカIP」シリーズ
テクノポリマー社製「テクノABS」、「テクノMUH」、「テクノAES」シリーズ
日本触媒社製「エポクロス」シリーズ
荒川化学工業社製「アラスター」シリーズ
NOVA Chemicals社製「Dylark」シリーズ
Chimei社製「ACRYSTEX」、「POLYLAC ABS」シリーズ
芳香族ビニル単量体を含む重合原料のための重合装置としては、完全混合型、プラグフロー型、循環装置を備えたプラグフロー型等の装置のいずれも好適に用いることができる。これらの中でも、組成分布の均一性から完全混合型重合装置が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位を有する。ここで、二価フェノール化合物(A)に由来する構造単位とは、ポリカーボネート樹脂を構成する基本的な繰返し単位を表し、一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位とは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端構造の1つを表す。
また、測定条件については特に制限はないが、重溶媒としては通常重クロロホルムを好適に使用することができるが、芳香族ポリカーボネート樹脂の特性に合わせ、重アセトン、重ジメチルスルホキシド、重ジクロロメタン等の重溶媒を適宜選択できる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物が重溶媒に溶解しづらい場合は、水酸化ナトリウムなどの強アルカリ条件でポリカーボネート樹脂を加水分解し、不溶物を濾過して得られたフェノール化合物をNMRで分析する方法も考えられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有する芳香族ポリカーボネートは、二価フェノール化合物(A)に由来する構造単位を有する。ここで二価フェノール化合物(A)は、分子骨格内にフェノール性水酸基を2つ有する化合物であれば特に制限なく、適宜選択し用いることができるが、なかでも下記式(1)で表される二価フェノール化合物(a1)および/または下記式(3)で表される二価フェノール化合物(a2)が好ましい。
X2の表す炭素数3〜18の二価炭化水素基としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウ
ンデシレン基、ドデシニレン基などが挙げられ、それぞれさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基などが挙げられる。さらに一部架橋構造を有していてもよい。
このようなX2を有する式(2)の二価の有機基の好ましい例としては、下記式(5)の有機基が挙げられる。
。
式(1)、(2)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7のうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。
上記炭素数1〜24の一価炭化水素基としては、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアリールアルキル基等が挙げられる。
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられる。
ピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル基、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基、
環状アルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
式(1)、(2)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、上述のようにそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7のうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。
。炭素数3〜18の二価炭化水素基としては、上述のX2が表す炭素数3〜18の二価炭
化水素基と同義である。また、X5は酸素原子またはNR14を表し、X6は炭素数1〜7のアルキレン基を表す。炭素数1〜7のアルキレン基としては、上述のX3が表す炭素数
1〜7のアルキレン基と同義である。また、また、nは1〜500の整数を表すが、なかでも5〜300であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。
二価フェノール化合物(a1)の具体例としては、なかでも下記式(6)〜(7)で表される化合物がより好ましく、(7)で表される化合物がさらに好ましい。
式(6)〜(7)中の炭素数7〜24のアルキル基としては、具体的には直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性をより効果的に高められるため、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
このような式(6)、(7)の具体例としては、下記表1に例示される化合物(6)−1〜(6)−20及び下記表2に例示される化合物(7)−1〜(7)−18が挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルブチル基、エチルプロピル基、エチルブチル基が挙げられる。なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
炭素数2〜6のアルケニル基としては、上記直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素二重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
1,4−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アリールアルキル類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメ
チルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド(フェノールフタレイン)、
2−メチルー3,3‘−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、
2−フェニルー3,3‘−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、
ジメチルシロキサン骨格を有するビスフェノール化合物等が挙げられる。
なお、二価フェノール化合物(a2)は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含有する芳香族ポリカーボネートは、一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位を有する。ここで一価フェノール化合物(B)は、分子骨格内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物であれば特に制限なく、適宜選択し用いることができるが、なかでも下記式(10)で表される一価フェノール化合物(b1)および/または下記式(11)で表される一価フェノール化合物(b2)が好ましい。
上記R15、R16、R17、R18及びR19が表す炭素数1〜24の一価炭化水素基としては、上述の式(1)、(2)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7が表す炭素数1〜24の一価炭化水素基と同義である。
式(10)で表される一価フェノール化合物(b1)としては、なかでもオクチルフェノール、ノニルフェノール、ペンタデシルフェノール、ペンタデシルフェノールモノエン、ペンタデシルフェノールジエン、ペンタデシルフェノールトリエンが好ましい。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも直鎖状、分岐状アルキル基であることが好
ましい。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルブチル基、エチルプロピル基、エチルブチル基が挙げられる。なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
また、炭素数1〜6のアルキル基としては、その一部がハロゲンで置換されたハロゲン化アルキル基であっても良い。
炭素数2〜6のアルケニル基としては、上記直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素二重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
炭素数2〜6のアルキニル基としては、上記直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の構造中に1つ以上の炭素−炭素三重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例としては、エニチル基が挙げられる。
炭素数6〜24のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基などが挙げられ、炭素数7〜25のアリールアルキル基等としては、ベンジル基、プロピリデンフェニル基などが挙げられる。
式(11)で表される一価フェノール化合物(b2)としては、なかでもフェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、フェニルフェノール、スチレン化フェノール、クミルフェノール等がなかでもフェノール、ブチルフェノール、クミルフェノールが好ましく、フェノール、tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールがより好ましく、フェノールがさらに好ましい。
塑性樹脂組成物の機械強度をより損なうことなく、より流動性を向上させることができ、さらには炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)の割合を制御しやすく、また比較的高い割合で含有させることができるというメリットを持つ。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、通常10,000〜100,000であることを特徴とする。粘度平均分子量が上記下限値未満の場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械物性が低下するため好ましくない。また粘度平均分子量が上記上限値を超える場合は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の流動性が極端に不十分となる傾向があるため好ましくない。このような観点より、本発明の熱可塑性樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上、さらに好ましくは19,000以上であり、特に好ましくは20,000以上である。また好ましくは80,000以下、より好ましくは40,000以下、さらに好ましくは30,000以下であり、特に好ましくは28,000以下である。
すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出される値を意味する。また固有粘度(極限粘度)[η]とは、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[ηsp]を
測定し、下記式により算出した値である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、公知の手法であれば特に制限はなく適宜選択し用いることができるが、二価フェノール化合物、及び任意で選択されるその他の一価フェノール化合物、多価フェノール化合物と、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって得られる。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;二価フェノール化合物のビスクロロホルメート体、二価フェノール化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
合物のビスカーボネート体、二価フェノール化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等の二価フェノール化合物のカーボネート体等が挙げられる。
このようなカーボネートエステルとしては、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチルフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート等の(置換)ジアリールカーボネートが挙げられるが、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。なお、これらのカーボネートエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
用いた場合は、フェノールに由来する末端構造を有するポリカーボネート樹脂が得られる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、従来から知られている重合法により製造することができ、その重合法としては、特に限定されるものではない。重合法の例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
界面重合法
反応に不活性な有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、原料の二価フェノール化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性及び湿熱安定性を向上させることができる。
なお、反応温度は、特に限定されないが、通常0〜40℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
次に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、カーボネートエステルと原料の二価フェノール化合物とのエステル交換反応を行う。
原料の二価フェノール化合物、及びカーボネートエステルは、上述の通りである。
反応形式は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。但しなかでも、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、スチレン系樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂と、必要に応じて配合されるその他の成分とを例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形等の熱加工によって熱可塑性樹脂組成物成形体として好適に用いることができる。このような熱可塑性樹脂組成物成形体の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形体の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等、また特殊な形状のもの等、各種形状のものが挙げられる。また、例えば表面に凹凸を有していたり、三次元曲面を有する立体的な形状のものであってもよい。
器筐体、情報端末筐体に好適に用いることができる。
式(9)で表される二価フェノール化合物(a1)の合成
フェノール(100重量部)を40℃に加温し融解させた後、濃塩酸(1.33重量部)を加えた。そこへ、ドデカナール(39.0重量部)およびトルエン(21.2重量部)の混合液を4時間かけて滴下した。滴下後、40℃で1時間熟成した後、炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止させた。反応混合物からフェノールを減圧留去した後、トルエンで抽出し、水で3回洗浄した。溶媒を留去した後、トルエンおよびヘプタンから晶析させることで、白色粉末として27.8重量部の目的化合物(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン)を得た。純度 99.0%、融点86℃であった。
なお、各分析条件は以下の通りである。
サンプル0.01質量部を1質量部のアセトニトリルに溶解させた。得られた溶液をHPLC分析装置(島津製作所製LC−2010)にて分析した。条件は以下の通りである。
カラム:inertsilODS3V(ジーエルサイエンス社製)
溶出溶媒:アセトニトリル/0.1質量%酢酸アンモニウム溶液
検出器:UV(254nm)
純度は、254nmにおける面積%から求めた。
Stuart Scientific社製SMP3融点測定装置を用いた。2℃/minの条件で昇温し、固体が全て融解した時点での温度を融点とした。
芳香族ポリカーボネート樹脂(PC1)の合成例
攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した第1反応器に、合成例1で合成された式(9)で表される二価フェノール化合物(a1)10mol部、三菱化学社製ビスフェノールA(二価フェノール化合物(a2))90mol部、三菱化学社製ジフェニルカーボネート(108mol部、キシダ化学社製炭酸セシウム 0.5×10−6mol部を仕込み、十分に窒素置換した後に、第1反応器内を1.33kPa(10Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を5回繰り返し、第1反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、300rpmで撹拌機を回転させ、熱媒ジャケット内の温度をコントロールして、第1反応器の内温を220℃に保った。そして、第1反応器の内部で行われるジヒドロキシ化合物とDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
芳香族ポリカーボネート樹脂(PC2)の合成例
合成例1で合成された式(9)で表される二価フェノール化合物(a1)30mol部、三菱化学社製ビスフェノールA(二価フェノール化合物(a2))70mol部とした他は、合成例2と同様に製造し、ペレット状の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC2)を得た。
芳香族ポリカーボネート樹脂(PC3)の合成例
合成例1で合成された式(9)で表される二価フェノール化合物(a1)を使用せず、三菱化学社製ビスフェノールA(二価フェノール化合物(a2))100mol部とした他は、合成例2と同様に製造し、ペレット状の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC3)を得た。
[粘度平均分子量(Mv)]
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、上述の通り、ウベローデ粘度計(森友理化工業社製)を使用し、20℃における塩化メチレン溶液の固有粘度(極限粘度)[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出した。表3にその値をそれぞれ示す。
芳香族ポリカーボネート樹脂のフェノール化合物(X)の割合は、試料70mgを重クロロホルム溶媒0.7mlに溶解し、Bruker社製AVANCE400型NMRを用いて、共鳴周波数400.1MHz、フリップ角45°、試料管回転速度15Hz、積算回数64回、1H NMRスペクトルを測定し、二価フェノール化合物、及び一価フェノール化合物に由来するピークを帰属し、それらのシグナル面積からそれぞれのモル比を求めた。表3にその値をそれぞれ示す。
下記表4に示したスチレン系樹脂と、上記表3に示した芳香族ポリカーボネート樹脂とを、下記表5に記載の割合(質量部)で配合、混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機(TEX30HSS)に供給し、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/h、バレル温度230℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷した後に、ペレタイザーを用いてペレット化し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
熱可塑性樹脂組成物の流動性は、MVR(メルトボリュームレート)で評価した。上述の方法で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて80℃で5時間予備乾燥後、東洋精機社製メルトインデクサーを用いて、ISO1133に準拠し、220℃、10kgfの条件でMVRの値を測定した。MVRの値が大きいほど、流動性が良好で成形性が優れることを表し、好ましい。
上述の方法で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて80℃で5時間予備乾燥後、230℃のシリンダー温度で、ISO527に準拠したダンベル試験片を成形し、該規格に準拠し引張試験を実施し、引張破断強度を測定した。
上述の方法で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて80℃で5時間予備乾燥後、230℃のシリンダー温度で、ISO178に準拠した試験片を成形し、該規格に準拠し曲げ試験を実施し、曲げ弾性率及び曲げ強度を測定した。
上述の方法で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて80℃で5時間予備乾燥後、230℃のシリンダー温度で、ISO179に準拠した試験片を成形し、R0.25のVノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した。
一方、スチレン系樹脂に対して、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)を含まない芳香族ポリカーボネート樹脂を配合した比較例2は、比較例1と比較し、強度は維持しているものの、流動性は悪化していることもわかる。
このことより、本発明のスチレン系樹脂100質量部に対し、特定の芳香族ポリカーボネート樹脂を配合することによりはじめて、流動性と強度が共に優れる熱可塑性樹脂が得
られることが明らかである。
Claims (9)
- スチレン系樹脂と、芳香族ポリカーボネート樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
芳香族ポリカーボネート樹脂が、二価フェノール化合物(A)および一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位を有し、
前記二価フェノール化合物(A)および/または前記一価フェノール化合物(B)に由来する構造単位は、炭素数7〜24のアルキル基を有するフェノール化合物(X)に由来する構造単位を含み、
前記二価フェノール化合物(A)に由来する構造単位の含有合計量に対する前記フェノール化合物(X)に由来する構造単位の含有合計濃度が、1.5〜40mol%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 前記フェノール化合物(X)が、下記式(1)で表される二価フェノール化合物(a1)を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〜500の整数を表す。
また、式(1)及び(2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜24の一価炭化水素基を表すが、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7のうち、少なくとも1つは、炭素数7〜24のアルキル基である。] - 二価フェノール化合物(A)が、上記二価フェノール化合物(a1)と、下記式(3)で表される二価フェノール化合物(a2)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
、X5は酸素原子またはNR14を表し、X6は炭素数1〜7のアルキレン基を表し、nは1〜500の整数を表す。また、式(3)及び(4)中、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜6の一価炭化水素基を表す。] - 二価フェノール化合物(a2)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンであることを特徴とする請求項3乃至5の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- スチレン系樹脂が、芳香族ビニル単量体に由来する構造単位、シアン化ビニル単量体に由来する構造単位、及びゴム質重合体に由来する構造単位とを有するABS樹脂であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- スチレン系樹脂100質量部に対し、芳香族ポリカーボネート樹脂を1質量部以上、95質量未満含むことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ISO1133に準拠し、220℃、10kgfの条件で測定したMVRの値が、前記スチレン系樹脂のMVRの値に対し、5%以上高いことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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