本発明者は、物品の製造において、部材の接着に際して接着剤および両面粘着テープのそれぞれが有する上述した課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、2液分別塗布型接着剤をシート化した接着シートを用いることで、上述した接着剤および両面粘着テープの欠点を補いつつ、双方が持つ利点を活かした部材の接着が可能であることを知得した。
2液分別塗布型接着剤を用いた物品の製造方法では、例えば特許文献2および3で開示されるように、通常、2種類の液状材料を各部材の被着面に分別塗布した後、各部材の液状材料塗布面同士を接触させて常温硬化させることで、部材同士を貼り合せて行う。しかし、塗布接着法による物品の製造方法は、上述した問題を有する。
これに対し、本発明者は、2液分別塗布型接着剤を用い、一方の液状材料から形成された接着層を有する接着シートと、他方の液状材料である接着剤組成物とが一対になった接着剤セットを開発した。そして、一方の部材には接着シートを貼り、他方の部材には接着剤組成物を塗布し、一方の部材の接着層の面と他方の部材の接着剤組成物の塗布面とを接触させたところ、塗布接着法と同様に常温硬化が進み、部材を強固に接着することが可能となることを見出した。また、上記接着剤セットを用いることで、塗布接着法よりも物品の製造が簡便となることを見出した。なお、特許文献2〜5には、2液分別塗布型接着剤のシート化については、開示も示唆もされていない。
さらに、本発明者は、上記接着剤セットによれば、接着剤を比較的低い温度で硬化させることができることから、上記部材の反りや浮きの発生を抑制することができ、材質や膨張率差に因らず、様々な部材を組合せて貼り合わせることが可能であることを見出した。例えば、熱硬化型接着剤をシート状にした接着シートは、材質や膨張率の大きく異なる部材を貼り合わせると、接着剤の加熱硬化の際に部材の反りや浮きが生じるという問題があるため、貼合する部材の組合せが材質等により制限されてしまう。特に、金属部材とプラスチック部材とを貼り合せる場合に、上記の問題が顕著化する。これに対し、2液分別塗布型接着剤から得られる接着剤セットによれば、比較的低い温度での硬化が可能であるため、上述したような不具合の発生を抑えることができる。
さらに、本発明者は、上記接着剤セットを用いた接着方法について検討を行い、接着シートと液状の接着剤組成物とが一対になった接着剤セットは、接着シートと接着剤組成物とで形態が異なることから、部材に対する適性を高めたり、接着シートおよび接着剤組成物に含まれる接着剤成分の反応性を高めたりすることができることを見出した。
本開示の接着剤セットおよび物品の製造方法は、上述したこれらの知見に基づく。以下、本開示の接着剤セットおよび物品の製造方法について、詳細に説明する。なお、本明細書内において、第1部材および第2部材のことを、単に部材と称する場合がある。
I.接着剤セット
まず、本開示の接着剤セットについて説明する。本開示の接着剤セットは、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を備える第1接着シートとを有する接着剤セットであって、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物および上記第1接着シートは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図1(a)、(b)は、本開示の接着剤セットにおける第1接着シートの一例を示す模式図である。接着剤セットは、液状の第1接着剤組成物(図示なし)と第1接着シート12とが一対になったものである。第1接着シート12は第1接着層24を備える。第1接着剤組成物(図示なし)および第1接着シート12は、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層24に含まれる第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して、強い接着力を発現し、強固に接着可能となるように構成されている。第1接着シート12は、セパレータ23と、セパレータ23の少なくとも一方の面側に設けられた第1接着層24とを備えていてもよく、図1(a)で示すように、第1接着層の片面にセパレータを有していてもよく、図1(b)で示すように、第1接着層の両面にセパレータを有していてもよい。
図2は、本開示の接着剤セットを用いた物品の製造方法の一実施形態の一例を示す工程図であり、図1(a)に示す第1接着シート12を有する接着剤セットを用いる例である。まず、図2(a)に示すように、第1部材1に、第1接着剤組成物を塗布する。また、別途、図2(b)に示すように、第2部材2に、第1接着シート12の第1接着層24の一方の面が貼り合されてなる、第1接着シート付部材30を準備する。続いて、図2(c)〜(d)に示すように、第1部材1の第1接着剤組成物22の塗布面と、第1接着シート付部材30の第1接着層24の他方の面とを、セパレータ23を剥離して、貼り合せる。このとき、第1接着剤組成物22および第1接着層24が接触すると、第1接着剤組成物22中の成分と第1接着層24中の成分とが相互に拡散して、第1接着剤組成物22に含まれる第1接着剤成分および第1接着層24に含まれる第2接着剤成分は、互いに接触することにより、硬化反応が生じ、接着性が向上する。そして、硬化反応の完了により、第1接着剤組成物22および第1接着層24は、図2(d)に示すように、強い接着力を発現した硬化接着層3となり、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、物品10が得られる。
本開示の接着剤セットによれば、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着シートの第1接着層に含まれる第2接着剤成分は、互いが接触することより硬化することができ、硬化により発現される強い接着力をもって強固に接着することができる。
第1接着剤組成物および第1接着シートで構成される接着剤セットは、2液分別塗布型接着剤の一方の液状材料から形成された第1接着層と、他方の液状材料である第1接着剤組成物とが分別されている。このように2液分別塗布型接着剤の一方の液状材料をシート化することで、以下の効果を有することができる。
通常、2液分別塗布型接着剤を用いて2つの部材を貼り合わせる場合、各液状材料をそれぞれの部材に塗布する必要があるところ、一方の液状材料が予めシート化されていることで、使用の際に、液状材料の混合の必要が無く、一方の液状材料については塗布時の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出しを防ぐことができる。また、一方の液状材料がシート化されていることで、厚みによる管理を行うことができ、第1接着シートを部材と貼り合わせることで、部材上に第1接着層を必然的に配置させることができる。このため、物品の製造時の品質管理の面からも優れている。さらに、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料は、互いに接触することで硬化反応が進むところ、一方の液状材料が分別されてシート化されていることで、保管中に硬化反応が進まないため、第1接着シート単体での長期保管が可能である。このため、接着剤セットは、物品の製造のタイミングに応じて使用することが可能である。加えて第1接着シートは、被着面の大きさや形状に合せたサイズ調整が可能である。また、一方の液状材料がシート化されていることで、第1接着シートおよび第1接着剤組成物は形態が異なるようになるため、判別を容易にすることができ、施工時の作業ミスを防ぐことができる。
また、本開示においては、第1接着剤組成物と第1接着シートとで形態が異なるため、適性を考慮して部材に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することができる。例えば、第1接着剤組成物は、流動性を有するため、コンクリート材料や木材等の接着剤の染み込みにより接着強度を高くすることが可能な部材、凹凸面や多孔質面を有する部材等に適している。一方、例えば、第1接着シートは、流動性が低いため、位置精度や厚み精度が良く、取り扱いが容易である。したがって、部材に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することにより、部材に対する適性を高めることができる。例えば、従来、異種部材を接着する場合には、各部材に応じて適した接着剤が異なるため、十分な接着強度が確保できない場合があったが、本開示においては、部材に対する適性を高めることができるので、接着強度を確保することが可能である。
また、第1接着剤組成物は液状であるため、第1接着剤組成物および第1接着シートの第1接着層が接触した際に、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分を拡散しやすくすることができ、反応性を高めることが可能である。例えば、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料がそれぞれシート化された一対の接着シートを用い、2つの接着シートを接触させて硬化させる場合と比較して、第1接着剤成分および第2接着剤成分を拡散しやすくすることができ、反応性を向上させ硬化速度を速くすることができる。
以下、接着シートの各構成について説明する。
A.第1接着剤組成物および第1接着層
第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、第1接着層は第2接着剤成分を含有しており、第1接着剤成分および第2接着剤成分は、互いに接触することにより硬化して接着することができる。以下、第1接着剤組成物および第1接着層の材料および性状について説明する。
1.材料
第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分は、互いに接触することにより硬化して接着することができる。
ここで、接着剤成分とは、硬化反応に寄与する成分をいう。例えば、硬化性有機化合物、硬化性無機材料、硬化剤、触媒、開始剤、硬化促進剤、還元剤、酸又はアルカリ成分、酸発生剤、塩基発生剤、吸水剤等が挙げられる。
第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分と第1接着層に含まれる第2接着剤成分とは、接触により硬化反応が開始し、各成分が相互に拡散するにつれて硬化反応が進むことで、実質的に均一な硬化が可能となる。
第1接着剤成分および第2接着剤成分の組合せは、特に限定されないが、例えば、硬化性有機化合物を第1接着剤成分とし、硬化剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物および潜在性硬化剤を第1接着剤成分とし、触媒や還元剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物および開始剤を第1接着剤成分とし、還元剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物および開始剤を第1接着剤成分とし、硬化性有機化合物および還元剤を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性無機材料を第1接着剤成分とし、水分や触媒を第2接着剤成分とする組合せ、硬化性有機化合物およびph反応付与成分を第1接着剤成分とし、酸又はアルカリ成分を第2接着剤成分とする組合せ等が挙げられる。また、第1接着剤成分および第2接着剤成分の組合せは、これらの逆であってもよい。
第1接着剤組成物および第1接着層は、例えば、第1接着剤成分を含有する液状材料と、第2接着剤成分を含有する液状材料と、の2種類から構成される2液分別塗布型接着剤の各液状材料を用いて得ることができる。上記2液分別塗布型接着剤としては、従来公知の組成が挙げられる。具体的には、アクリル化合物およびラジカル重合開始剤を含有するA液と、レドックス重合触媒の還元剤を含有するB液と、から構成されるプライマー型のアクリル接着剤(SGA)、アクリル化合物およびラジカル重合開始剤を含有するA液と、アクリル化合物およびレドックス重合触媒の還元剤を含有するB液と、から構成される2液主剤型のアクリル接着剤(SGA)、ポリオール化合物を含有するA液と、ポリイソシアネート化合物を含有するB液と、から構成されるウレタン接着剤、エポキシ化合物を含有するA液と、ポリアミドやポリチオール、イミダゾール等の硬化剤を含有するB液と、から構成されるエポキシ接着剤、シリコーン低重合体等のシリコーン化合物を含有するA液と、白金触媒を含有するB液と、から構成されるシリコーン接着剤等が挙げられる。なお、2液分別塗布型接着剤はこれらに限定されず、被着体の材質等に応じて適宜選択することが可能である。また、2液分別塗布型接着剤に限らず、ポリマーセメント等の2液硬化型塗料等を用いることも可能である。
以下、第1接着剤組成物および第1接着層の材料について説明する。
(1)第1接着剤成分および第2接着剤成分
第1接着剤成分および第2接着剤成分は、少なくともいずれか一方が、硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する。以下、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合について説明する。第1接着剤成分および第2接着剤成分は、通常、異なる組成を有する。
(a)第1接着剤成分
第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分は、第1接着層に含まれる第2接着剤成分と硬化反応を生じるものであってもよく、第2接着剤成分の存在により、第1接着剤成分に含まれる成分同士が硬化反応を生じるものであってもよい。第1接着剤組成物および第1接着層に2液分別塗布型接着剤を用いる場合は、第1接着剤成分は、通常、2液分別塗布型接着剤における主剤成分を少なくとも含む。
上記第1接着剤成分としては、例えば、硬化性有機化合物、硬化性無機材料、これらと併用されるその他の材料等が挙げられる。上記第1接着剤成分は、硬化性有機化合物または硬化性無機材料の一方を含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。
(i)硬化性有機化合物
硬化性有機化合物としては、公知の2液分別塗布型接着剤に用いられる硬化性有機化合物が挙げられ、例えば、エポキシ化合物、アクリル化合物、ポリオール化合物、シリコーン低重合体等のシリコーン化合物、メラミン化合物、フェノール化合物混合物、シリル化合物等が挙げられる。これらは、第1接着剤組成物を適用する被着体の材質に応じて適宜選択することが可能である。例えば、被着体の材質が、木材、セラミック、コンクリート、金属であれば、硬化性有機化合物は、エポキシ化合物やポリオール化合物とすることができる。また、例えば、被着体の材質が、ポリプロピレンやポリエチレン等の難接着材料であれば、硬化性有機化合物は、シリコーン化合物やアクリル化合物とすることができる。また、アクリル化合物は材料の自由度が高く、金属、木材、ABS等の有機物にも広く使用が可能である。
第1接着剤成分がエポキシ化合物を含む場合、上記エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することができ、一般にエポキシ接着剤に使用されるエポキシ化合物を用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、脂肪族系エポキシ化合物、グリコール系エポキシ化合物、ペンタエリスリトール系エポキシ化合物、芳香族系エポキシ化合物、ウレタン変性エポキシ化合物やゴム変性エポキシ化合物等の変性エポキシ化合物、その他特開2009−167251号公報で開示されるエポキシ化合物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられていてもよく、2種以上用いられていてもよい。
第1接着剤成分に含まれるエポキシ化合物は、液状エポキシ化合物であってもよく、固形エポキシ化合物であってもよい。液状エポキシ化合物は、常温で液状のエポキシ化合物をいい、固形エポキシ化合物は常温で固形のエポキシ化合物をいう。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物であれば、主鎖のビスフェノール骨格が1以上3以下であれば、常温で液状とすることができ、主鎖のビスフェノール骨格が2以上10以下であれば、常温で固形とすることができる。
第1接着剤組成物においては、液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の少なくとも一方が含まれていればよいが、両方が含まれていてもよい。第1接着剤組成物が液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物を含む場合は、それぞれの分子量および配合量を調整することで、硬化前の粘着性や硬化後の接着力を調整することができる。
上記液状エポキシ化合物の質量平均分子量およびエポキシ当量は、第1接着剤組成物と第1接着層との接触に際して要求される硬化速度に応じて適宜設定することができる。例えば、液状エポキシ化合物の質量平均分子量(Mw)は200以上900以下の範囲内とすることができる。また、このとき、エポキシ当量(g/eq.)は100以上500以下の範囲内とすることができる。上記の範囲とすることで、第1接着剤組成物と第1接着層とを接触させた際に、第1接着剤組成物に含まれる液状エポキシ化合物が他方の第1接着層側へ浸透しやすくなり、硬化速度を速めることができる。また、硬化後の耐久性、接着力を向上させることができる。
また、固形エポキシ化合物の質量平均分子量およびエポキシ当量は、第1接着剤組成物の塗布面にかかるせん断応力の大小や応力のかかる方向に応じて適宜設定することができる。例えば、固形エポキシ化合物の質量平均分子量(Mw)は900以上6000以下の範囲内とすることができる。上記の範囲とすることで、耐久性、粘着力を向上させることができる。また、このとき、エポキシ当量(g/eq.)は450以上5000以下の範囲内とすることができる。上記の範囲とすることで、凝集力や製膜性が向上し、せん断応力に強くなるからである。また、硬化後の耐久性、接着力を向上させることができる。
質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。また、エポキシ当量は、JIS K7236:2009(エポキシ化合物のエポキシ当量の求め方)に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む化合物のグラム数である。
第1接着剤組成物がエポキシ化合物として液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の両方を含む場合、液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の配合比は、要求される粘着性および凝集力に応じて設定することができる。強粘着性もしくは低凝集力の第1接着剤組成物の塗布層とするためには、第1接着剤組成物中の液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の合計量(100質量%)に対して、上記液状エポキシ化合物の含有量は50質量%以上、中でも60質量%以上とすることができ、また、95質量%以下、中でも90質量%以下とすることができる。液状エポキシ化合物の含有量は、固形エポキシ化合物の含有量よりも多くすることができる。一方、弱粘着性もしくは高凝集力の第1接着剤組成物の塗布層とするためには、第1接着剤組成物中の液状エポキシ化合物および固形エポキシ化合物の合計量(100質量%)に対して、上記液状エポキシ化合物の含有量は20質量%以上、中でも30質量%以上とすることができ、また、70質量%以下、中でも60質量%以下とすることができる。第1接着剤組成物中の液状エポキシ化合物の含有量は、固形エポキシ化合物の含有量以下とすることができる。なお、一般に、接着層は、粘着力が強いほど凝集力が低く柔軟性を有する層となり、一方、粘着力が弱いほど凝集力が高く硬い層となる。
上記第1接着剤成分がアクリル化合物を含む場合、上記アクリル化合物は、アクリル単量体、アクリル重合体のいずれであってもよい。また、アクリル重合体は、アクリル低重合体、アクリル高重合体のいずれであってもよい。例えば、特開2008−248111号公報や特開2016−175195号公報に開示されるアクリル化合物が挙げられる。
また、上記第1接着剤成分がポリオール化合物を含む場合、上記ポリオール化合物は、分子中に複数個の水酸基を有すればよく、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
上記第1接着剤成分がメラミン化合物、フェノール化合物混合物、またはシリル化合物を含む場合、これらの化合物については、一般的な2液分別塗布型接着剤に用いられる化合物と同様とすることができる。
中でも、上記第1接着剤成分はエポキシ化合物を含んでいてもよい。硬化後の凝集力や接着力が高く、木材、コンクリート、セラミック等の広域な材質に対して高強度に接着することが可能であるからである。
また、上記第1接着剤成分はアクリル化合物を含んでいてもよい。例えばアクリル化合物を適宜選択することにより、被着体に応じて第1接着剤組成物の物性を調整することができるため、例えば異種部材を接着する場合に適している。また、アクリル化合物は、耐候性、透明性が良好であるという利点を有する。
(ii)硬化性無機材料
硬化性無機材料としては、例えば、水を触媒として硬化する水硬化性無機材料を用いることができる。上記水硬化性無機材料として具体的には、ポルトランドセメント、アルミナセメント、耐酸セメント、スラグセメント、ローマンセメント、マグネシアセメント等のセメント類、石膏、石灰、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
(iii)その他の成分
第1接着剤成分は、硬化性有機化合物や硬化性無機材料等の他に、例えば、硬化剤、触媒、開始剤、硬化促進剤、還元剤等を含むことができる。これらの材料は、通常、対となる第1接着層に含有される第2接着剤成分とは異なる材料とすることができ、硬化性有機化合物や硬化性無機材料の種類、第1接着層に含まれる第2接着剤成分の種類に応じて適宜選択することができる。
例えば、第1接着剤組成物が第1接着剤成分として硬化性有機化合物を含む場合であって、上記硬化性有機化合物がアクリル化合物である場合、第1接着剤成分は、アクリル化合物の他に、例えばラジカル重合開始剤を含むことができる。この場合、対となる第1接着層は、第2接着剤成分として、例えばレドックス重合触媒の還元剤を含む、あるいはアクリル化合物およびレドックス重合触媒の還元剤を含むことができる。具体的には、特開2008−308531号公報で開示される過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤が挙げられる。
また例えば、第1接着剤組成物が第1接着剤成分として硬化性有機化合物を含む場合であって、上記硬化性有機化合物がエポキシ化合物である場合、第1接着剤成分は、エポキシ化合物の他に、一般にエポキシ化合物に配合されるフェノール化合物、アミン化合物、チオール化合物等の硬化剤、ジシアンジアミド、マイクロカプセル型アミン類や包接触媒、ヒドラジド類等の潜在性硬化剤、カチオン触媒型硬化剤等の硬化剤を含むことができる。この場合、対となる第1接着層は、第2接着剤成分として、例えば脂肪族ジメチルウレア、芳香族ジメチルウレア等の硬化触媒、イミダゾール、リン系触媒、ポリアミン類等を含むことができる。
(b)第2接着剤成分
第1接着層に含有される第2接着剤成分は、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分と直接反応するものであってもよく、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分の硬化反応を誘発または促進させるものであってもよい。第2接着剤成分としては、第1接着剤成分の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、硬化剤、酸又はアルカリ成分、硬化促進剤、酸発生剤、塩基発生剤、触媒、吸水剤等が挙げられる。
第1接着剤成分がエポキシ化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば硬化剤が挙げられる。上記硬化剤として具体的には、イミダゾール化合物、フェノール化合物、アミン化合物、ポリアミド化合物、酸無水物、イソシアネート化合物、チオール化合物等が挙げられる。中でも、上記硬化剤はイミダゾール化合物とすることができる。イミダゾール化合物は、室温でのエポキシ化合物との反応性がよく、また、硬化後のガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性、耐久性に優れるとともに、分子量が小さい化合物が多い。このため、第1接着剤組成物と第1接着層とを接触させた際に、第1接着層に含まれる硬化剤がエポキシ化合物を含有する他方の第1接着剤組成物へと移行しやすくなり、接触による硬化反応が起こり易くなるからである。
第1接着剤成分がアクリル化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば触媒、還元剤、開始剤等が挙げられる。具体的には、特開2008−308531号公報で開示される過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤、特開2008−81691号公報で開示されるレドックス重合触媒の還元剤が挙げられる。
また、第1接着剤成分がアクリル化合物を含む場合、第2接着剤成分もアクリル化合物を含んでいてもよい。この場合、第1接着剤成分および第2接着剤成分に含まれるアクリル化合物は同じであってもよく、異なってもよい。第1接着剤成分および第2接着剤成分に含まれるアクリル化合物が異なる場合には、例えばアクリル化合物を適宜選択することにより、被着体に応じて第1接着剤組成物および第1接着層の物性を調整することができるため、異種部材を接着する場合に適している。また、第1接着剤成分および第2接着剤成分に含まれるアクリル化合物が異なる場合には、第1接着剤組成物および第1接着層にそれぞれ要求される機能に応じて、アクリル化合物を適宜選択することができる。例えば、後述の物品の製造方法の第5実施形態および第7実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層を積層する場合、第1部材側の第1接着剤組成物には接着性能が求められ、最表面に配置される第1接着層には保護機能が求められる。この場合、最表面に配置される第1接着層のほうが硬化後に硬くなるように、アクリル化合物を適宜選択することで、第1接着層にハードコート性を付与することができる。また、例えば後述の物品の製造方法の第6実施形態および第8実施形態に記載するように、第2部材上に第1接着層および第1接着剤組成物の塗布層を積層する場合、最表面に配置される第1接着剤組成物の塗布層のほうが硬化後に硬くなるように、アクリル化合物を適宜選択することで、第1接着剤組成物にハードコート性を付与することができる。
第1接着剤成分がポリオール化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば硬化剤が挙げられる。具体的には、ポリイソシアネート化合物が挙げられ、中でも、ポリオール化合物との反応性に優れることから、MDI、粗製MDI、TDI等の芳香族ポリイソシアネートとすることができる。
第1接着剤成分がシリコーン化合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば白金触媒が挙げられる。
第1接着剤成分がメラミン化合物またはフェノール化合物混合物を含む場合の第2接着剤成分としては、例えば、硫酸水溶液含有ハイドロゲル、水酸化ナトリウム含有ハイドロゲル等の酸又はアルカリ成分が挙げられる。
第1接着剤成分がシリル化合物もしくは硬化性無機材料を含む場合の第2接着剤成分としては例えば、固体状液体分散コロイドが挙げられる。具体的には、ハイドロゲル、吸水性重合体、ゼラチン等が挙げられる。上記の第2接着剤成分は、これらに含まれる水分により硬化することができる。
上記第2接着剤成分の含有量は、第1接着剤組成物と第1接着層とが接触した際に、第1接着剤成分と十分に反応することが可能な量とすることができ、第1接着剤成分および第2接着剤成分の組合せや種類に応じて適宜設定が可能である。例えば、第1接着剤成分がエポキシ化合物を含み、上記第2接着剤成分が硬化剤としてイミダゾール化合物を含む場合、上記第1接着層中のイミダゾール化合物の含有量としては、エポキシ化合物のエポキシ当量にもよるが、例えば、エポキシ化合物100質量部に対し、中でも0.1質量部以上30質量部以下の範囲内、特に1質量部以上20質量部以下の範囲内とすることができる。上記第1接着層中のイミダゾール化合物の含有量が多すぎると、被着体との密着が弱くなる場合があり、一方、上記含有量が少なすぎると、硬化不良の要因となる場合があるからである。なお、第1接着剤成分に含有される硬化性有機化合物がエポキシ化合物以外の材料である場合、第2接着剤成分の含有量は、汎用の2液硬化型接着剤を使用する際の2液硬化時の一般的な配分から大きく外れることがなければ特段の問題はない。
以上、少なくとも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合について説明したが、少なくとも第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合には、その逆とすることができる。
第1接着剤成分および第2接着剤成分の一方のみが硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する場合、第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有してもよく、第2接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有してもよいが、中でも第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有することができる。この場合、硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有する接着剤成分を含むもののほうが、硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含有しない接着剤成分を含むものよりも、厚みを大きくすることができる。そのため、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分が硬化性有機化合物や硬化性無機材料等を含むことにより、第1接着剤組成物の塗布厚みを大きくすることができる。したがって、例えば凹凸面や多孔質面を有する部材に適用する場合には、凹凸面や多孔質面に対しても十分な塗布厚みとすることができる。
(2)第2相溶性重合体成分
第1接着層は、第2接着剤成分に対して相溶性を有する第2相溶性重合体成分をさらに含むことができる。その理由は以下の通りである。
2液分別塗布型接着剤は、通常、2種類の液状材料をそれぞれ塗布後、すぐに互いを接触硬化させて用いられるが、各液状材料は製膜性に劣るため、所望の厚みでそれぞれシート化し分別保存しようとすると、長期間シート形状を保持することが困難であるという問題がある。これに対し、液状材料の成分に対して相溶性を有する第2相溶性重合体成分を含有させることで、製膜性を向上させることができ、長期間シート形状を保持することが可能となる。また、上記液状材料を塗布して形成した第1接着層においては、上記液状材料の成分は可塑剤として機能するため、液状材料の成分を含む第1接着層に更に第2相溶性重合体成分を加えることで、第1接着層全体が可塑化され、第2相溶性重合体成分による粘着性や柔軟性が発揮される。これにより、硬化前の粘着性や被着体への密着性の向上を図ることが可能となり、また、硬化後の第1接着層の靭性が向上し且つ接着力をより高めることができる。
ここで、第2接着剤成分に対して相溶性を有するとは、上記第2接着剤成分、中でも、上記硬化性有機化合物との親和性がよく、上記第2接着剤成分と任意の割合で混合した場合に、相分離しないことをいう。第1接着層において、上記第2相溶性重合体成分が第2接着剤成分に対して相溶していることは、例えば、第1接着層の透明性が高いこと、第1接着層のヘイズ値が低いこと、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)により第1接着層の表面もしくは断面を観察したときに、層内にミクロンサイズの島が発生していないこと、等から確認することができる。後述する第1接着剤組成物においても同様である。
特に、第1接着剤組成物または第1接着層が、第1接着剤成分または第2接着剤成分として、エポキシ化合物、アクリル化合物、およびポリオール化合物のいずれかの硬化性有機化合物を含む場合に、上記第2相溶性重合体成分による効果がより高く発揮され得る。例えば、第1接着剤組成物または第1接着層に含まれる硬化性有機化合物がアクリル化合物の場合、架橋密度が高くなる傾向にあるところ、第2相溶性重合体成分を含むことで、アクリル化合物の主鎖を長くすること、すなわち架橋密度を低くすることができ、第1接着層に柔軟性を付与することが可能となる。第1接着剤組成物または第1接着層に含まれる硬化性有機化合物がエポキシ化合物の場合の、上記第2相溶性重合体成分による効果の発現については、後述する。
また、上記第2相溶性重合体成分は、さらに第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分に対して相溶性を有することができる。第1接着剤成分に対して相溶性を有するとは、上記第1接着剤成分との親和性がよく、第1接着剤組成物と第1接着層とが接触し、上記第1接着剤成分と任意の割合で混合した場合に相分離しないことをいう。
第2相溶性重合体成分は、第2接着剤成分との相溶性が良好な重合体を含むものであれば特に限定されない。上記重合体は、極性基を有していてもよい。極性基としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ニトリル基、アミド基等が挙げられる。
中でも、上記第2相溶性重合体成分は、アクリル重合体を含む成分、すなわち相溶性アクリル重合体含有成分とすることができる。
上記相溶性アクリル重合体含有成分は、上記アクリル重合体がアクリル酸エステル単量体の単独重合体であり、上記単独重合体を2種以上含む混合成分であってもよく、上記アクリル重合体が2種以上のアクリル酸エステル単量体で構成される共重合体であり、共重合体を1以上含む成分であってもよい。また、上記相溶性アクリル重合体含有成分が、上記単独重合体と上記共重合体との混合成分であってもよい。アクリル酸エステル単量体の「アクリル酸」には、メタクリル酸の概念も含まれる。具体的には、上記相溶性アクリル重合体含有成分は、メタクリレートの重合体とアクリレートの重合体との混合物であってもよく、アクリレート−アクリレート、メタクリレート−メタクリレート、メタクリレート−アクリレート等で構成されるアクリル酸エステル重合体であってもよい。中でも上記アクリル重合体含有成分は、2種以上のアクリル酸エステル単量体の共重合体((メタ)アクリル酸エステル共重合体)を含むことができる。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体成分としては、例えば、特開2014−065889号公報に記載の単量体成分が挙げられる。上記単量体成分は、上述した極性基を有していてもよい。エポキシ化合物との相溶性が向上し、粘着力および硬化後の接着力を高めることができるからである。上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、エチルアクリレート−ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、エチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。なお、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の「アクリル酸」には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の「メタクリル酸」を含む。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、ブロック共重合体を挙げることができ、さらにメタクリレート−アクリレートで構成されるアクリル系ブロック共重合体を挙げることができる。アクリル系ブロック共重合体を構成するアクリレートやメタクリレートは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジジル等が挙げられる。これらの「アクリル酸」には、メタクリル酸も含まれる。
メタクリレート−アクリレートの共重合体の具体例としては、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート(MMA−BA−MMA)共重合体等のアクリル系共重合体が挙げられる。MMA−BA−MMA共重合体には、ポリメチルメタクリレート−ポリブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレート(PMMA−BA−MMA)のブロック共重合体も含まれる。このようなアクリル系共重合体は、製膜性が向上し、被着面に対して十分な接着性を示すことができる。
アクリル重合体は、極性基を有していなくてもよく、また一部に上述した極性基を導入した変性物であってもよい。上記変性物は、エポキシ化合物との相溶性がさらに向上するため、接着強度がより向上する。
中でも、第2相溶性重合体成分は、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下である第1重合体部分と、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上である第2重合体部分とを有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体とすることができる。このような(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、柔らかいセグメントとなる第1重合体部分と、硬いセグメントとなる第2重合体部分とを有する。このような共重合体を添加することにより、第1接着層は、被着面に対する浮きや剥がれを有効に抑制することができ、また、硬化後の靭性が向上して接着力をより高めることができるからである。
上記の効果の発現は、以下のように推定できる。従来の接着剤では、靱性や柔軟性を付与するために、主剤となる硬化性有機化合物、例えばエポキシ化合物の他に、アクリル重合体を添加することが行われていたが、上記アクリル重合体の添加により接着剤自体の耐熱性が低下していた。これに対し、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体のような、柔らかいセグメントと、硬いセグメントとを併せ持つアクリル重合体を用いることで、硬いセグメントが耐熱性に寄与し、柔らかいセグメントが靱性ないし柔軟性に寄与するため、硬化後の第1接着層は、靱性を有しかつ優れた接着性を保持することができると考えられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分および第2重合体部分の少なくとも一方は、硬化性有機化合物に対して相溶性を有する。第1重合体部分が硬化性有機化合物に対して相溶性を有する場合には、柔軟性を高めることができる。また、第2重合体部分が硬化性有機化合物に対して相溶性を有する場合には、凝集性や靱性を高めることができる。
第1重合体部分または第2重合体部分の一方が硬化性有機化合物に対して相溶性を有さない場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、硬化性有機化合物に対して相溶性を有する重合体部分である相溶部位と、硬化性有機化合物に対して相溶性を有さない重合体部分である非相溶部位とを有することになる。この場合、硬化性有機化合物を含む接着剤組成物に、アクリル重合体として上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を添加すると、相溶部位が硬化性有機化合物と相溶し、非相溶部位が硬化性有機化合物と相溶しないため、相分離が起こる。その結果、硬化後の第1接着層では、海島構造が発現する。海島構造としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の種類、(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分および第2重合体部分の相溶性、極性基導入による変性の有無によって異なり、例えば、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が海、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が島であるような海島構造や、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が海、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が島であるような海島構造、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が海、硬化性有機化合物の硬化物が島であるような海島構造が挙げられる。硬化後の第1接着層は、このような海島構造を有することで、応力を分散させやすくすることができるので、界面破壊を避けることができ、優れた接着性を維持することができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、中でもブロック共重合体とすることができ、特に、相溶部位を重合体ブロックA、非相溶部位を重合体ブロックBとするA−B−Aブロック共重合体とすることができる。さらには、第1重合体部位が非相溶部位、第2重合体部分が相溶部位であり、第1重合体部分を重合体ブロックB、第2重合体部分を重合体ブロックAとするA−B−Aブロック共重合体とすることができる。アクリル重合体としてこのようなA−B−Aブロック共重合体を用いることにより、硬化後の第1接着層内では、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が海、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が島であるような海島構造の場合には、島部分を小さくすることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の非相溶部位が海、硬化性有機化合物の硬化物および(メタ)アクリル酸エステル共重合体の相溶部位が島であるような海島構造の場合や、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が海、硬化性有機化合物の硬化物が島であるような海島構造の場合には、海部分を小さくすることができる。そのため、硬化後の接着層内では、見かけ上、硬化性有機化合物およびアクリル重合体が相溶した状態となる。このような見かけ上の相溶状態が発現されることにより、硬化後の第1接着層は、さらに応力を分散させやすくすることができるので、界面破壊を避けることができ、優れた接着性を維持することができる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、第1重合体部分または第2重合体部分の一部に上述の極性基を導入した変性物であってもよい。硬化後の第1接着層の耐熱性がより向上するとともに、硬化性有機化合物との相溶性も向上するため、接着性が向上する。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分のTgは、10℃以下であり、−150℃以上10℃以下の範囲内、中でも−130℃以上0℃以下の範囲内、特に−110℃以上−10℃以下の範囲内とすることができる。
なお、第1重合体部分のTgは、「POLYMERHANDBOOK第3版」(John Wiley & Sons,Ink.発行)に記載された各単独重合体のTg(K)を基にして、下記式で計算により求めることができる。
1/Tg(K)=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・・+Wn/Tgn
Wn;各単量体の質量分率
Tgn;各単量体の単独重合体のTg(K)であり、ポリマーハンドブック(3rd Ed.,J.Brandrup and E.H.Immergut,WILEY INTERSCIENCE)中の値など、一般に公開されている掲載値を用いればよい。後述の第2重合体部分のTgも同様である。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第1重合体部分は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、中でも単独重合体とすることができる。第1重合体部分を構成する単量体成分および重合体成分は、Tgが所定の範囲である第1重合体部分を得ることができる単量体成分および重合体成分であればよく、例えばアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル単量体や、酢酸ビニル、アセタール、ウレタン等の他の単量体、上述の極性基を含む極性基含有単量体、EVA等の共重合体が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第2重合体部分のTgは、20℃以上であり、20℃以上150℃以下の範囲内、中でも30℃以上150℃以下の範囲内、特に40℃以上150℃以下の範囲内とすることができる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体に含まれる第2重合体部分は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、中でも単独重合体とすることができる。第2重合体部分を構成する単量体成分は、Tgが所定の範囲である第2重合体部分を得ることができる単量体成分であればよく、例えばメタクリル酸メチル等のアクリル酸エステル単量体や、アクリルアミド、スチレン、塩化ビニル、アミド、アクリロニトリル、酢酸セルロース、フェノール、ウレタン、塩化ビニリデン、塩化メチレン、メタクリロニトリル等の他の単量体、上述の極性基を含む極性基含有単量体が挙げられる。
上記の第1重合体部分および第2重合体部分を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の具体例としては、上記のMMA−BA−MMA共重合体等が挙げられる。
上記第2相溶性重合体成分の質量平均分子量は、第1接着層に要求される粘着性や凝集力に応じて適宜設定することができるが、上記第2接着剤成分の質量平均分子量、中でも硬化性有機化合物の質量平均分子量よりも大きくすることができる。第2相溶性重合体成分に製膜性を任せ、硬化性有機化合物は可塑成分として働く必要があるからである。また、第2相溶性重合体成分は第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分と相溶することが望ましいからである。具体的には、上記第2相溶性重合体成分の質量平均分子量は、1万以上90万以下の範囲内、中でも3万以上50万以下の範囲内とすることができる。第2相溶性重合体成分の質量平均分子量が小さすぎると、3次元架橋が支配的となり、靱性が低下する場合があり、一方、大きすぎると、相溶性が悪くなるため強度が低下する。上記第2相溶性重合体の質量平均分子量は、GPC(溶離液:THF、標準物質:PS、試料:20μL、流量:1mL/min、カラム温度:40℃)により測定することができる。
上記第1接着層中の第2相溶性重合体成分の含有量は、第2相溶性重合体成分の種類、第2接着剤成分の種類、第1接着層に要求される粘着性、凝集性、粘性等に応じて適宜調整することが可能である。例えば、第1接着層が、第2接着剤成分として、アクリル化合物、エポキシ化合物等の硬化性有機化合物を含み、第2相溶性重合体成分として上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む場合、硬化性有機化合物100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量が4質量部以上100質量部以下の範囲内とすることができる。この割合で両者を配合すると、第1接着層は、接触硬化前の段階で、硬化性有機化合物中に、ナノオーダーレベルの微粒子状にアクリル重合体が分散した構造が発現し、見かけ上の相溶状態が発現される。そして、上記第1接着層は、第1接着剤組成物との接触により、見かけ上の相溶状態を維持しながら硬化することで、優れた接着強度を発揮することができる。また、硬化後の第1接着層が上記の構造を有することで、被着体との界面からの水の侵入を抑制でき、さらに優れた接着保持特性を有することができる。
また例えば、第1接着層が、第2接着剤成分として、硬化性有機化合物や硬化性無機材料を含まない場合、第1接着層中の第2相溶性重合体成分の含有量は、第1接着層中の第2接着剤成分100質量部に対して10質量部以上200質量部以下の範囲内、中でも20質量部以上100質量部以下の範囲内とすることができる。第2相溶性重合体成分の分子量等に応じて好適な含有量は異なるが、おおよそ上記の範囲内とすることができる。第2相溶性重合体成分の含有量が少なすぎると、第1接着層の製膜性や接着性が不良となる場合があり、一方、上記含有量が多すぎると、第1接着層の強度低下の要因となる場合がある。
(3)第1相溶性重合体成分
第1接着剤組成物は、第1接着剤成分に対して相溶性を有する第1相溶性重合体成分をさらに含むことができる。また、上記第1相溶性重合体成分は、さらに第1接着層に含まれる第2接着剤成分に対して相溶性を有することができる。その理由および第1相溶性重合体成分の具体例、および第1相溶性重合体成分の含有量については、上述の第2相溶性重合体成分と同様であるため、ここでの説明は省略する。第1接着剤組成物または第1接着層が、第1接着剤成分または第2接着剤成分として、エポキシ化合物、アクリル化合物、およびポリオール化合物のいずれかの硬化性有機化合物を含む場合、上記第1相溶性重合体成分による効果がより高く発揮され得る。
第1相溶性重合体成分の質量平均分子量は、上記第1接着剤成分の質量平均分子量、中でも硬化性有機化合物の質量平均分子量よりも大きくすることができる。その理由、具体的な質量平均分子量の範囲、およびその測定方法については、上述した第2相溶性重合体成分と同様であるため、ここでの説明は省略する。
第1接着剤組成物に含まれる第1相溶性重合体成分と、第1接着層に含まれる第2相溶性重合体成分とは、同一の成分であってもよく、異なる成分であってもよい。第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が同一の成分である場合には、同一の成分が最も相拡散がしやすいため、反応速度の点で有利だからである。また、コスト面でも有利である。第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が同一の成分である場合、中でも、アクリル重合体を含む同一の成分とすることができる。このとき、上記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体とすることができ、中でもアクリル系共重合体またはその変性物、特にMMA−BA−MMA共重合体またはその変性物とすることができる。また、上記アクリル重合体は、中でも所定の第1重合体部分および第2重合体部分を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体またはその変性物とすることができる。その理由については、上述の第2相溶性重合体成分の項で説明した理由と同様である。
また、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が異なる成分である場合には、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分を適宜選択することで、被着体に応じて第1接着剤組成物および第1接着層の物性を調整することができるため、異種部材を接着する場合に適している。
また、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分が異なる成分である場合、第1接着剤組成物および第1接着層にそれぞれ要求される機能に応じて、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分を適宜選択することができる。例えば、後述の物品の製造方法の第5実施形態および第7実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層を積層場合、第1部材側の第1接着剤組成物には接着性能が求められ、最表面に配置される第1接着層には保護機能が求められる。この場合、最表面に配置される第1接着層のほうが硬化後に硬くなるように、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分を適宜選択することで、第1接着層にハードコート性を付与することができる。また、例えば後述の物品の製造方法の第6実施形態および第8実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着層および第1接着剤組成物の塗布層を積層する場合、最表面に配置される第1接着剤組成物の塗布層のほうが硬化後に硬くなるように、第1相溶性重合体成分および第2相溶性重合体成分を適宜選択することで、第1接着剤組成物にハードコート性を付与することができる。
(4)その他の成分
第1接着剤組成物および第1接着層は他に、シリカやガラスビーズ等の無機粒子や、連鎖移動剤、難燃剤、増粘剤、放熱剤、絶縁剤、導電剤、強度向上のための繊維(特にチョップド繊維等)、シリコーン化合物等の粘着付与剤、酸化防止剤、反応抑制剤等の任意の成分を含んでいてもよい。
第1接着剤組成物および第1接着層は、着色剤を含んでいてもよい。例えば、後述の物品の製造方法の第5実施形態および第7実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層を積層する場合や、後述の物品の製造方法の第6実施形態および第8実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着層および第1接着剤組成物の塗布層を積層する場合、第1接着剤組成物および第1接着層の少なくとも一方が着色剤を含むことにより、視認性を高めることができ、接着剤セットを適用した箇所の確認が容易になるとともに、接着剤セットを適用する部材を保護することができる。着色剤としては、例えば、カーボンブラック等の顔料、染料等が挙げられる。中でも、着色剤は顔料とすることができる。着色剤として顔料を含むことで、顔料に紫外線を吸収させて部材の紫外線劣化を防ぐことができるからである。
また、後述の物品の製造方法の第5実施形態および第7実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層を積層する場合や、後述の物品の製造方法の第6実施形態および第8実施形態に記載するように、第1部材上に第1接着層および第1接着剤組成物の塗布層を積層する場合、第1接着剤組成物および第1接着層の少なくとも一方は、例えば、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、赤外線反射剤等の耐候剤を含むことができる。これにより、部材を保護したり、硬化後の第1接着剤組成物および第1接着層の経時劣化を抑制したりすることができる。
また、第1接着剤組成物は、必要に応じて溶剤を含むことができる。
2.性状
第1接着剤組成物および第1接着層は、透明であってもよく不透明であってもよいが、透明とすることができる。第1接着剤組成物および第1接着層に含まれる成分が十分に相溶し、粘着性等の所望の機能を発揮可能となるからである。
第1接着層は、硬化前に粘着性を有していてもよく、有さなくてもよいが、粘着性を有していることができる。光硬化型や熱硬化型の接着剤は、硬化完了まで養生する必要であるため、上記接着剤を介して部材を貼り合わせてから所望の養生時間、押圧等によりその貼り合せ状態を保持しなければならず、貼合工程の作業が煩雑化してしまう。これに対し、第1接着層が粘着性を有することで、接触硬化が完了するまでの間、第1接着層が有する粘着力により、貼り合せ状態を保持しながら硬化養生することができる。なお、本明細書内において、「第1接着層の粘着性」とは、特段の事情が無い限り、接触前(硬化前)の第1接着層が有する粘着性をいう。
ここで、「粘着」とは「接着」に含まれる概念である。粘着は一時的な接着現象の意味として用いられるのに対し、接着は実質的に永久的な接着現象の意味として用いられる点で区別されることがある(岩波書店 理化学辞典第5版)。「粘着性」および「粘着力」とは、感圧により接着する性質およびそのときの接着力を指す。第1接着層が粘着性を有するとは、接触硬化前の第1接着層が、部材を仮固定できる程度の接着力(粘着力)を有することを意味する。すなわち、硬化前の第1接着層は、硬化後よりも弱い接着力を有する。
接触前(硬化前)の第1接着層の粘着力は、第1接着層の種類、被着体の種類および配置態様に応じて適宜設定することができる。第1接着層は、被着体に対する粘着力が、少なくとも0.05N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内とすることができ、中でも0.1N/インチ以上、40N/インチ以下の範囲内とすることができる。
第1接着層は、粘着力の大きさに応じて、さらに強粘着性、中粘着性、弱粘着性に分類することができる。具体的には、粘着力が5N/インチ以上、50N/インチ以下の範囲内を強粘着性、1N/インチ以上、5N/インチ未満の範囲内を中粘着性、0.05N/インチ以上、1N/インチ未満の範囲内を弱粘着性とすることができる。中粘着性は、用途や物性に応じて強粘着性または弱粘着性に含めることができる。第1接着層の粘着性は、厚みや、組成等を調整することで調整が可能である。
第1接着層は、粘着力が強いほど凝集力が低く柔軟性を有する層となり、一方、粘着力が弱いほど凝集力が高く硬い層となる。第1接着層が強粘着性である場合には、第1接着剤組成物の塗布層に密着しやすくなり、第1接着層および第1接着剤成分に含まれる成分が互いに移行しやすくなるため、接触による硬化反応が進みやすくなり、反応性を向上させることが可能である。また、第1接着層が弱粘着性である場合には、第1接着層の取扱性が良くなり、作業性を向上させることができるとともに、一度貼り合せても硬化反応が完了する前であれば、第1接着剤組成物の塗布層と第1接着層との接着面での剥離および貼り直しが可能となり、リワーク性を向上させることができる。また、第1接着層が中粘着性である場合には、反応性、作業性、リワーク性がいずれも良好となる。
第1接着層の被着体に対する粘着力は、以下の方法で測定することができる。なお、両面側にセパレータが設けられていない第1接着シートは、離型フィルムであるセパレータ(例えば、ニッパ社製 PETセパレータPET28×IJ0)を貼り付けてから測定する。まず、第1接着層の両面にセパレータが設けられた第1接着シートを縦25.4mm、横150mmのサイズに裁断し、一方のセパレータを剥離して、露出させた第1接着層上にPETフィルム(東洋紡社製A4100)を手動ローラーを用いて貼り合わせる。その後、もう片方のセパレータを剥離し、露出させた第1接着層上にSUS板(304BA、被着面:研磨面、試料:縦25.4mm、横150mm)を、手動ローラーを用いて貼り合せる。その後、PETフィルム付きの第1接着層をSUS板から20mm程、手で剥離し、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、型番:RTF−1150H)を用いて、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)および粘着力の試験法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠した条件(引張速度:300mm/分、剥離距離:150mm、剥離角:180°)で、SUS板面に対する粘着力(N/インチ)を測定することができる。なお、1インチは25.4mmである。
ここで、上記「少なくとも」とは、最低限の範囲の粘着力を有していれば、第1接着層を被着体と貼り合わせたときに、その貼り合わせ状態を保持することができる粘着力である範囲を意味する。そして、第1接着層がこの範囲の粘着力を有する間は、被着体は第1接着層に対して好ましく貼り合わせることができる。
また、第1接着剤組成物を被着体に塗布して形成される第1接着剤組成物の塗布層は、硬化前に粘着性を有していてもよく、有さなくてもよいが、粘着性を有することができる。なお、その理由については、上述の通りである。
第1接着剤組成物の塗布層の被着体に対する粘着力は、以下の方法で測定することができる。まず、SUS板上に、第1接着剤組成物を乾燥塗布量が50g/m2程度になるように塗布し、少なくとも1時間風乾させた後、第1接着剤組成物の塗布面にPETフィルム(例えば、東洋紡社製、A4100、厚み100μm)をゴムローラーで貼り付ける。その後、幅25mm、長さ200mmの切れ込みを入れ、PETフィルムの端部を50mm程剥離する。剥離したPETフィルムの端部に引張試験機(株式会社イマダ社製、デジタルフォースゲージ ZTS)を取り付け、引張速度:200mm/分、剥離角:90°の条件で剥離する。その際の最大点応力を第1接着剤組成物の塗布層の粘着力とする。
また、第1接着剤組成物および第1接着層は、接触硬化により硬化接着層となる。硬化接着層については後述する。
B.第1接着シート
第1接着シートは、第1接着層を有していればよいが、第1接着層の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータを有していてもよい。
1.第1接着層
第1接着層は、セパレータの少なくとも一方の面側に設けられている場合、例えばセパレータの少なくとも一方の面側に全面に設けられていてもよく、パターン状に設けられていてもよい。
第1接着層は、セパレータの少なくとも一方の面側に全面に設けられている場合、図3(a)、(b)に例示するように、第1接着層24を厚み方向に切断する切込部25を有し、この切込部25により画定される複数の第1接着部24aを有していてもよい。この場合には、接着剤セットを用いて第1部材および第2部材を接着する場合において、図4(b)に例示するように、予め各第1接着部24aにそれぞれ第2部材2を貼り合せて、第1接着シート付部材30を準備することができる。第1接着シートは位置精度や厚み精度が良いため、第2部材および第1接着部を精度良く貼り合せることができる。また、第1接着層は第1接着剤組成物と接触するまでは硬化反応が進まないことから、予め第1接着シート付部材を作製し、貼合工程前まで長期間保管することができ、部材を貼り合せるタイミングに応じて、第1接着シート付部材を使用することができる。なお、図3(b)は図3(a)のA−A線断面図である。また、図4については後述する。
上記の場合、第1接着層は切込部によって厚み方向に切断されており、複数の第1接着部はそれぞれ切込部によって画定される。切込部により画定される第1接着部の大きさおよび形状としては、被着体の被着面の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。
また、上記の場合、第1接着層の少なくとも一方の面側にはセパレータが配置される。第1接着層の片面にセパレータが配置されている場合には、第1接着層は切込部によって厚み方向に切断されているが、セパレータは切断されないようにすることができる。また、第1接着層の両面にセパレータが配置されている場合、一方のセパレータは切断されないようにすることができ、他方のセパレータは第1接着層と同じ位置で厚み方向に切断されていてもよく、切断されていなくてもよい。
また、第1接着層は、図5(a)、(b)に例示するように、第1接着層24がセパレータ23の少なくとも一方の面側にパターン状に設けられている場合、パターン状の複数の第2接着部24bを有することができる。この場合にも、接着剤セットを用いて第1部材および第2部材を接着する場合において、図6(b)に例示するように、予め各第2接着部24bにそれぞれ第2部材2を貼り合せて、第1接着シート付部材30を準備することができる。そのため、上記の場合と同様の利点を有する。なお、図5(b)は図5(a)のA−A線断面図である。また、図6については後述する。
ここで、パターン状とは、セパレータの少なくとも一方の面側において、第1接着層が設けられている部分と、第1接着層が設けられていない部分とを有する状態をいう。
上記の場合、第2接着部の大きさおよび形状としては、被着体の被着面の大きさおよび形状に応じて適宜調整される。
第1接着層の厚みは、被着体の種類等に応じて適宜設定することができ、第1接着剤組成物と第1接着層との接触による硬化反応に必要な量の各成分を含有することが可能とすることができる。具体的には、第1接着層の厚みは、2μm以上、中でも5μm以上、特に10μm以上、さらには20μm以上とすることができる。また、上記厚みは、200μm以下、中でも150μm以下、特に100μm以下とすることができる。
また、被着体の被着面が粗面である場合は、第1接着層の厚みは大きくすることができ、具体的には、上記被着面の凹凸の高低差以上の厚みとすることができる。第1接着層が上記被着面の凹凸の高低差以上の厚みを有さない場合は、第1接着層が凹凸に追従できず、第1接着層と被着面との接着面積が少なくなるため、所望の期間、被着体を保持することができなくなるからである。
2.セパレータ
セパレータは、第1接着層から剥離可能であれば特に限定されず、第1接着層を保護することが可能な程度の強度を有することができる。このようなセパレータとしては、例えば、離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、セパ紙、剥離フィルム、剥離紙等の従来公知のものを用いることができる。具体的には、ポリプロピレンやポリエチレン、フッ素フィルム等が挙げられる。また、セパレータは、上記に例示した単層で離型性を有していてもよいが、上質紙、コート紙、含浸紙、プラスチックフィルム等の離型紙用基材の片面または両面に離型層を形成した積層体を用いてもよい。離型層としては、離型性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、シリコーン化合物、有機化合物変性シリコーン化合物、フッ素化合物、アミノアルキド化合物、メラミン化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物、長鎖アルキル化合物等がある。これらの化合物は、エマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれもが使用できる。
被着体の被着面が粗面である場合は、上記セパレータが柔軟性を有することができる。第1接着シートを被着体に貼り合わせる際に、第1接着層の伸びにセパレータも追従することが可能となるからである。このようなセパレータとしては、例えばPEフィルム等が挙げられる。
上記セパレータは、第1接着層に含有される材料の種類や被着体を貼り合わせる施工環境に応じて、遮光性を有していてもよい。貼合工程までの間に第1接着層が紫外線等の照射を受けて劣化するのを抑制することができるからである。遮光性を有するセパレータとしては、例えば、アルミ箔セパレータ、アルミ蒸着フィルムや紙セパレータ、着色セパレータ、紫外線吸収剤入りのフィルムセパレータ等が挙げられる。
また、上記セパレータは、第1接着層と接する面に易剥離処理が施されていてもよい。
被着体に貼り付ける前の第1接着シートは、第1接着層の両面にセパレータを有していてもよい。第1接着層の両面にセパレータを有する場合、各面に配置されるセパレータは同一であってもよく異なってもよいが、一方が軽剥離性を有し、他方が重剥離性を有することができる。
3.第1接着シート
第1接着シートは、枚葉であってもよく、長尺であってもよい。
第1接着シートは、例えば2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料の一方、具体的には、第2接着剤成分を含む接着剤組成物をセパレータの片面に塗布し、乾燥することで形成することができる。接着剤組成物は必要に応じて溶剤を含むことができる。
接着剤組成物の塗布方法は特に限定されず、公知の印刷法やコーティング法を用いることができる。第1接着層をセパレータの片面にパターン状に形成する場合には、セパレータの片面に接着剤組成物をパターン状に塗布すればよい。このような塗布方法としても特に限定されず、公知の印刷法やコーティング法を用いることができる。また、塗布層の乾燥条件は、塗布層中に含まれている溶剤を十分揮発させることができる程度の条件で行うことができ、組成に応じて適宜設定することができる。
また、第1接着層に切込部を形成する場合、切込部の形成方法としては、例えばハーフカット加工、ピンホール処理、レーザー加工等を用いることができる。第1接着層の両面にセパレータが配置される場合には、一方のセパレータの片面に第1接着層を形成した後、第1接着層上に他方のセパレータを配置する前に、第1接着層に切込部を形成してもよく、一方のセパレータの片面に第1接着層を形成し、第1接着層上に他方のセパレータを配置した後に、第1接着層および他方のセパレータに切込部を形成してもよい。さらに、第1接着層に切込部を形成した後、切込部により画定される複数の第1接着部以外の部分を除去することにより、セパレータの片面に第1接着層をパターン状に設けることもできる。
第1接着シートは、接着剤組成物をセパレータの片面に塗布し乾燥して第1接着層を形成後、上記第1接着層上に他のセパレータを配置することで、第1接着層の両面にセパレータを有することも可能である。
C.接着剤セット
接着剤セットは、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を備える第1接着シートとを有していればよいが、例えば液状の第2接着剤組成物をさらに有していてもよく、あるいは第2接着層を備える第2接着シートをさらに有していてもよい。
接着剤セットが、液状の第1接着剤組成物と、液状の第2接着剤組成物と、第1接着層を備える第1接着シートとを有する場合、液状の第2接着剤組成物は第3接着剤成分を含有し、第1接着剤組成物と第2接着剤組成物と第1接着シートとは、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成され、第2接着剤組成物に含まれる第3接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成される。なお、第3接着剤成分は第1接着剤成分と同様とすることができ、第2接着剤組成物は第1接着剤組成物と同様とすることができる。
また、接着剤セットが、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を備える第1接着シートと、第2接着層を備える第2接着シートとを有する場合、第2接着層は第4接着剤成分を含有し、第1接着剤組成物と第1接着シートと第2接着シートとは、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成され、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第2接着層に含まれる第4接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成される。なお、第4接着剤成分は第2接着剤成分と同様とすることができ、第2接着シートの第4接着剤成分以外の成分や構成等については第1接着シートと同様とすることができる。
II.物品の製造方法
次に、本開示の物品の製造方法について説明する。本開示の物品の製造方法においては、上述の接着剤セットを用いることができる。なお、接着剤セットについては、上記の「I.接着剤セット」に詳述したので、ここで説明は省略する。
本開示の物品の製造方法は、8つの実施形態に大別される。以下、各実施形態に分けて説明する。
A.物品の製造方法の第1実施形態
物品の製造方法の第1実施形態は、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートとを用い、第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第1部材に、上記第1接着剤組成物を塗布する塗布工程と、上記第2部材に、上記第1接着シートの上記第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する準備工程と、上記第1部材の上記第1接着剤組成物の塗布面と、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面とを貼り合せる貼合工程と、を有し、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物および上記第1接着シートは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図2は、物品の製造方法の第1実施形態の一例を示す工程図である。図2に例示するように、まず、第1部材1に、第1接着剤組成物22を塗布する(図2(a)、塗布工程)。また、別途、第1接着シート付部材30を準備する(図2(b)、準備工程)。第1接着シート付部材30は、第2部材2に、第1接着シート12の第1接着層24の一方の面が貼り合されてなる。図2(b)に示すように、第1接着シート12は、第1接着層24の少なくとも一方の面側に配置されたセパレータ23を有していてもよい。続いて、第1部材1の第1接着剤組成物22の塗布面と、第1接着シート付部材30の第1接着層24の他方の面とを貼り合せる(図2(c)〜(d)、貼合工程)。第1接着シート付部材30が、第1接着層24の他方の面にセパレータ23を有する場合は、セパレータ23を剥離して貼合する。このとき、第1接着剤組成物22および第1接着層24が接触すると、第1接着剤組成物22中の成分と第1接着層24中の成分とが互いに拡散して、第1接着剤組成物22に含まれる第1接着剤成分および第1接着層24に含まれる第2接着剤成分が互いに接触することにより、硬化反応が生じ、接着性が向上する。そして硬化反応の完了により、第1接着剤組成物22および第1接着層24は、強い接着力を発現した硬化接着層3となり(図2(d))、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、第1部材1、硬化接着層3、および第2部材2を有する物品10が得られる。
物品の製造方法の第1実施形態によれば、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面と第1接着シート付部材が有する第1接着層とを貼り合せることで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって部材同士を貼り合わせることができる。また、第1接着シート付部材は、第2部材に第1接着シートが貼り合わされているため、2液型接着剤のような2液の混合が不要であり、部材同士の貼り合わせを簡便に行うことが可能である。加えて、第1接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらにまた、第1接着層は第1接着剤組成物と接触するまでは硬化反応が進まないことから、貼合工程前までは、第1接着シート付部材として長期間、分別保管することができ、貼り合わせるタイミングに応じて、第1接着シート付部材の第1接着層を第1接着剤組成物に接触させることができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料の一方をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
また、本実施形態の物品の製造方法は、第1部材および第2部材の種類や、部材同士を貼り合せた際の被着面(接着面)の方向、第1接着剤組成物および第1接着層の粘着性の程度に応じた施工が可能である。以下、本実施形態の物品の製造方法を用いた施工例について、例を挙げて説明する。
本実施形態の物品の製造方法を用いた施工例の第1例は、第1部材および第2部材の被着面(接着面)が鉛直面または法線面となる施工例である。図7に示す例では、第2部材2の被着面が鉛直面となっている。なお、図7中の符号については、図2中の符号と同様である。
上記の例において、被着面は、鉛直面または法線面に対して、−45度以上+45度以下の範囲内、中でも−30度以上+30度以下の範囲内、特に−15度以上+15度以下の範囲内とすることができる。上記被着面の場合、貼合工程において第1部材の表面の第1接着剤組成物の塗布面と第2部材の表面の第1接着層とを貼り合せると、鉛直方向または法線方向にせん断応力が掛かる。しかし、第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層がそれぞれ所望の粘着力および凝集力を有することで、第1接着剤組成物と第1接着層との接触による硬化反応が進み十分な接着力が発現されるまでの間、第1部材と第2部材との貼り合せ状態を保持することができ、せん断応力が掛ることによる部材の剥離を抑制することができる。また、経時により粘着力が低下しても、その間に硬化反応が進むことで発現した強い接着力により、第1部材と第2部材とを強固に接着保持することが可能となる。また、第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層間の粘着力を調整することで、第1接着剤組成物および第1接着層の硬化前であれば、貼合後に貼り直すことも可能となる。さらに、第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層間を高粘性または低粘性とすることで、貼り合せた状態で被着面に対して平行移動させることができ、位置調整が可能となる。
本実施形態の物品の製造方法を用いた施工例の第2例は、第1部材および第2部材の被着面(接着面)が水平面となる施工例である。図8に示す例では、第2部材2の被着面が水平面となっている。なお、図8中の符号については、図2中の符号と同様である。
上記の例において、被着面は、水平面に対して、−45度以上+45度以下の範囲内、中でも−30度以上+30度以下の範囲内、特に−15度以上+15度以下の範囲内とすることができる。上記被着面の場合、第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層がそれぞれ所望の粘着力および凝集力を有することで、第1接着剤組成物および第1接着層の接触による硬化反応が進むまでの間、第1部材と第2部材との貼り合せ状態を保持することができる。また、硬化後は第1部材と第2部材とが強固に接着されることから、水平方向にせん断応力を受けても第1部材と第2部材との位置ズレを生じにくくすることができる。また、第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層間の粘着力を調整することで、第1接着剤組成物および第1接着層の硬化前であれば、貼合後に貼り直すことも可能となる。さらに、第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層間を高粘性または低粘性とすることで、貼り合せた状態で被着面に対して平行移動させることができ、位置調整が可能となる。
また、第1接着剤組成物と第1接着シートとは形態が異なるため、適性を考慮して部材の種類に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することができる。そのため、例えば第1部材および第2部材が異種部材である場合や、第1部材が凹凸面や多孔質面を有する場合に有用である。
また、第1接着剤組成物は液状であるため、第1接着剤組成物および第1接着シートの第1接着層が接触した際に、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分を拡散しやすくすることができ、反応性を高めることが可能である。
以下、物品の製造方法の第1実施形態における各工程、ならびに第1部材および第2部材について説明する。
1.塗布工程
物品の製造方法の第1実施形態における塗布工程は、第1部材に、第1接着剤組成物を塗布する工程である。
第1接着剤組成物の塗布方法は特に限定されず、公知の印刷法やコーティング法を用いることができる。また、第1接着剤組成物を塗布した後、乾燥させてもよい。乾燥条件は、第1接着剤組成物中に含まれている溶剤を十分揮発させることができる程度の条件で行うことができ、組成に応じて適宜設定することができる。
第1接着剤組成物は、第1部材にベタ塗りしてもよく、パターン状に塗布してもよい。中でも、作業性の面から、ベタ塗りとすることができる。
また、第1接着剤組成物を塗布する領域の大きさは、後述の貼合工程での第1接着層の被着面の大きさと同じであってもよく、それよりも大きくてもよい。中でも、第1接着剤組成物は、第1接着層と比較して位置精度に劣ることから、第1接着剤組成物を塗布する領域の大きさは、第1接着層の被着面の大きさよりも大きくすることができる。特に、例えば図4および図6に示すように、第1部材1が第2部材2よりも大きい場合には、第1接着剤組成物を塗布する領域の大きさは、第1接着層の被着面の大きさよりも大きくすることができる。この場合、図4(e)や図6(e)に例示するように、第1接着剤組成物22の第1接着層(図4では第1接着部24a、図6では第2接着部24b)と接触しない部分は硬化接着層3にならないが、経時的に取れてしまうと考えられる。
また、上述の「I.接着剤セット」に記載したように、第1接着剤組成物の塗布層は、硬化前に粘着性を有していてもよく、有さなくてもよいが、粘着性を有することができる。
第1接着剤組成物の塗布層の厚みは、部材の種類等に応じて適宜設定することができる。具体的には、第1接着剤組成物の塗布層の厚みは、2μm以上、中でも5μm以上、特に20μm以上とすることができる。また、上記厚みは、200μm以下、中でも150μm以下、特に100μm以下とすることができる。
また、第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層の厚みは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
2.準備工程
物品の製造方法の第1実施形態における準備工程は、第2部材に、第1接着シートの第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する工程である。
塗布工程および準備工程は、順不同で行うことができるが、準備工程を先に行うことができる。第1接着層は第1接着剤組成物と接触するまでは硬化反応が進まないことから、予め第1接着シート付部材を作製し、貼合工程前まで長期間保管することができ、第1部材および第2部材を貼り合せるタイミングに応じて、第1接着シート付部材を使用することができる。
第1接着シート付部材は、第1接着シートの第1接着層の一方の面に、1つの第2部材が貼り合わされているものであってもよく、第1接着シートの第1接着層の一方の面に、複数の第2部材が貼り合されている、多面付け第1接着シート付部材であってもよい。
準備工程では、第2部材に第1接着シートが予め貼合されている第1接着シート付部材を準備してもよい。既製の第1接着シート付部材を用いることで、物品の製造に際し、第1接着シート付部材を作製する必要がなく、時間の短縮を図ることができるからである。
また、準備工程は、セパレータと上記セパレータの少なくとも一方の面側に設けられた第1接着層とを有する第1接着シートを用い、第1接着層のセパレータが配置されていない面を第2部材に貼合する第1接着シート貼合工程を有していてもよい。
準備工程が第1接着シート貼合工程を有する場合、第1接着シートの第1接着層は、第1接着層を厚み方向に切断する切込部を有し、切込部により画定される第1接着部を有していてもよい。この場合、第1接着シート貼合工程では、第1接着部の一方の面に、第2部材を貼り合せることができる。この場合、第1接着シートの第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、図3(a)、(b)に例示するように複数の第1接着部24aを有していてもよい。第1接着層が複数の第1接着部を有する場合、第1接着シート貼合工程では、図4(b)に例示するように、複数の第1接着部24aの一方の面に、複数の第2部材2をそれぞれ貼り合せることができる。第1接着層は位置精度や厚み精度が良いことから、第2部材および第1接着部を精度良く貼り合せることができる。
また、準備工程が第1接着シート貼合工程を有する場合、第1接着シート貼合工程では、第1接着層の一方の面に、複数の第2部材を貼り合せて、多面付け第1接着シートを作製してもよい。
さらに、準備工程が第1接着シート貼合工程を有する場合、第1接着シートの第1接着層は、パターン状の第2接着部を有していてもよい。この場合、第1接着シート貼合工程では、第2接着部の一方の面に、第2部材を貼り合せることができる。この場合、第1接着シートの第1接着層は、1つの第2接着部を有していてもよく、図5(a)、(b)に例示するように複数の第2接着部24bを有していてもよい。第1接着層が複数の第2接着部を有する場合、第1接着シート貼合工程では、図6(b)に例示するように、複数の第2接着部24bの一方の面に、複数の第2部材2をそれぞれ貼り合せることができる。第1接着層は位置精度や厚み精度が良いことから、第2部材および第2接着部を精度良く貼り合せることができる。
第2部材と第1接着シートとの貼合方法は、第1接着シートの形態に応じて適宜選択することができる。第1接着層の片面にセパレータが配置された第1接着シートを用いる場合であれば、例えば、第1接着層を巻内面としてロール状に巻回された第1接着シートロールを用い、第1接着シートロールから必要量を巻き出して、第1接着層側を第2部材に配置した後切断して貼り合せることができる。また、第1接着層の両面にセパレータが配置された第1接着シートを用いる場合であれば、枚葉の第1接着シートを用い、第1接着シートの一方のセパレータを剥離して第1接着層を露出させ、その上に第2部材を貼り合せることができる。
第1接着シート貼合工程において、第1接着シートは第2部材の被着面全域に貼り合せてもよく、第2部材の被着面の周縁に枠形状に貼り合せてもよい。第1接着シートを貼り合せる際は、スキージ等を用いて第2部材と第1接着シートの第1接着層との接着面に気泡が入らないようにすることができる。
第1接着シート貼合工程において、第1接着層が粘着性を有する場合は、アイロンなどを用いて加熱圧着して貼り合わせてもよく、軽く振動を与えながらローラーを用いて加圧して貼り合わせてもよい。第1接着層が第2部材の隙間に入り込みやすくなり、第1接着シートと第2部材との貼合強度を高めることができる。
さらに、上記第1接着シート貼合工程においては、第1接着シートの第1接着層が所定の粘着力を有する場合、第1部材の貼り合せ位置を決める位置決め工程を有することが可能である。第1接着層が所望の粘着力を示すことで、貼合工程を行う際に第1部材の貼り合せ位置が所望の位置となるように、準備工程において第2部材上で第1接着シートを貼り直すことが可能となるからである。例えば、第1接着シートの第1接着層が所望の粘着力を示せば、準備工程は、第1接着シート貼合工程と、第1部材の貼り合せ位置を決める位置決め工程と、の両方を含むことができる。このとき、第1接着シートと貼り合せる第2部材は、固定部材とすることができる。
3.貼合工程
物品の製造方法の第1実施形態における貼合工程は、上記第1部材の上記第1接着剤組成物の塗布面と、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面とを貼り合せる工程である。本工程において、上記第1接着剤組成物および上記第1接着層は、互いに接触することにより硬化が進み、接触硬化により形成される硬化接着層が強い接着力を発現することができ、部材同士を接着することができる。
第1接着シート付部材において、第1接着層の第2部材側とは反対側にセパレータが配置されている場合は、第1接着シート付部材のセパレータを剥離し、露出した第1接着層の表面と第1接着剤組成物の塗布面とを貼り合せる。
上記第1部材の上記第1接着剤組成物の塗布面と上記第1接着シート付部材の上記第1接着層との貼り合せ方法としては、特に限定されず、例えば、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面と、第1接着シート付部材の第1接着層とを向かい合わせて、直上方向から貼り合せる方法を用いることができる。また、他の貼り合せ方法としては、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面と、第1接着シート付部材の第1接着層とを向かい合わせて、一方を他方の被着面に対して平行方向にスライド移動させて貼り合せることができる。上記の貼り合せ方法は、第1部材と第2部材との貼り合せ面が水平面となる場合に適している。
第1接着シート付部材が多面付け第1接着シート付部材である場合には、多面付け第1接着シート部材から、1つの第2部材を有する部分を切り出して、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面に貼り合せることができる。
また、上記準備工程が、図3(a)、(b)に例示するような第1接着層24の片面にセパレータ23が配置され、第1接着層24が、第1接着層24を厚み方向に切断する切込部25を有し、切込部25により画定される第1接着部24aを有する第1接着シート12を用い、図4(b)に例示するように第1接着部24aのセパレータ23が配置されていない面に、第2部材2を貼り合せる第1接着シート貼合工程を有する場合、貼合工程では、図4(c)〜(e)に例示するように、第1接着シート付部材30のセパレータ23から、第1接着部24aおよび第2部材2が順に積層された第1接着部付部材31を剥離して、第1接着部付部材31の第1接着部24aの面を、第1部材1の第1接着剤組成物22の塗布面に貼り合せることができる。この場合、第1接着シートの第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、複数の第1接着部を有していてもよい。
さらに、上記準備工程が、図5(a)、(b)に例示するような第1接着層24の片面にセパレータ23が配置され、第1接着層24がパターン状の第2接着部24bを有する第2シート12を用い、図6(b)に例示するように第2接着部24bのセパレータ23が配置されていない面に、第2部材2を貼り合せる第1接着シート貼合工程を有する場合、貼合工程では、図6(c)〜(e)に例示するように、第1接着シート付部材30のセパレータ23から、第2接着部24aおよび第2部材2が順に積層された第2接着部付部材32を剥離して、第2接着部付部材32の第2接着部24bの面を、第1部材1の第1接着剤組成物22の塗布面に貼り合せることができる。この場合、第1接着シートの第1接着層は、1つの第2接着部を有していてもよく、複数の第2接着部を有していてもよい。
本工程は、第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層間の粘着力の強弱に応じて、第1接着剤組成物が塗布された第1部材と第1接着シート付部材との貼合に際し、一方を貼り直して位置決めする位置決め工程を有していてもよい。
第1接着剤組成物および第1接着層は、接触により硬化反応を生じることができる。第1接着剤組成物および第1接着層の硬化温度は、常温を含むことができ、例えば5℃以上180℃以下の範囲内で設定することができる。なお、常温とは23℃をいう。硬化温度が常温を含むことで、加熱や冷却を行わなくてもよいようにできるため、物品の製造を簡便にすることができる。
また、第1接着剤組成物および第1接着層は、接触状態で加熱して硬化を促進させてもよい。加熱温度は、第1接着剤組成物および第1接着層の組成に応じて適宜設定することができるが、例えば、30℃以上120℃以下の範囲内とすることができ、中でも40℃以上80℃以下の範囲内とすることができる。加熱温度が高すぎると、第1接着剤組成物および第1接着層のフロー性が大きくなり、接着剤が被着面からはみ出してしまい、はみ出た状態で硬化が進むことで外観不良の原因となる場合があるからである。また、低分子の単量体成分等の第1接着剤組成物や第1接着層に含まれる成分によっては、高温下で臭気が発生する。一方、加熱温度が低すぎると、硬化促進効果があまり得られず、工程時間の短縮が図りにくい場合がある。
また、第1接着剤組成物および第1接着層は、貼り合せ後、所望の時間養生させることができる。第1接着剤組成物に含有される成分および第1接着層に含有される成分の拡散が進み、十分に硬化させることで強い接着力を発現することができるからである。養生時間は、第1接着剤組成物および第1接着層の組成に応じて適宜設定することができるが、例えば、0.5時間以上72時間以下の範囲内とすることができる。養生時間が短すぎても、貼り合わせのやり直しがきかず、一方、養生時間が長すぎても、工程時間が伸びてしまう。
第1接着剤組成物および第1接着層は、接触による硬化反応が完了すると、硬化接着層となる。硬化接着層は、第1接着剤組成物および第1接着層にそれぞれ含まれる第1接着剤成分および第2接着剤成分が反応して硬化してなる硬化物層である。硬化接着層は、単一層であってもよいし、第1接着剤組成物および第1接着層の接触界面が残存していてもよい。
上記硬化接着層は、その強い接着力をもって第1部材と第2部材とを強固に貼り合せることができ、その状態を長時間保持可能な接着力を有することができ、中でも、せん断引張強度を高くすることができる。経時でせん断応力が掛る場合であっても、第1部材と第2部材との固定を長期間保持することができ、部材の剥がれを抑制することができるからである。
4.第1部材および第2部材
第1部材および第2部材は、同じ種類の部材であってもよく、異なる種類の部材であってもよい。第1接着剤組成物と第1接着シートとは形態が異なるため、適性を考慮して部材に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することができる。そのため、第1部材および第2部材が異なる種類の部材である場合に有用である。また、第1部材および第2部材が同じ種類の部材である場合でも、第1部材が凹凸面や多孔質面を有する場合に有用である。
異なる種類の部材としては、例えば材料、性質、性状、機能、形態等が異なる部材を挙げることができる。第1部材および第2部材の材料が異なる場合、異種材料の組合せとしては、例えば金属材料と有機材料との組合せ、金属材料とコンクリート材料との組合せ、金属材料とセラミック材料との組合せ、コンクリート材料と有機材料との組合せ、セラミック材料と有機材料との組合せ、有機材料と木材との組合せ、有機材料と布や皮との組合せ、異種の金属材料の組合せ、異種の有機材料の組合せ等が挙げられる。また、第1部材および第2部材の形態が異なる場合、異種形態の組合せとしては、例えば成形品や板(ボード)とフィルムとの組合せが挙げられる。具体的には、金属材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等が挙げられる。また、有機材料としては、ABS、ポリイミド、ポリプロピレン、炭素繊維強化複合材料(CFRP)やガラス繊維強化複合材料(GFRP)等の繊維強化複合材料(FRP)等が挙げられる。
中でも、第1部材の材料を、コンクリート材料、木材、または繊維質材料とし、第2部材の材料を、金属材料、または有機材料とすることができる。第1接着剤組成物が塗布される第1部材の材料が上記の材料である場合には、第1接着剤組成物が染み込むことにより、接着強度を高めることができるからである。
また、第1部材の被着面が凹凸面や多孔質面等の粗面であり、第2部材の被着面が平滑面である等、第1部材の表面粗さが第2部材の表面粗さよりも大きくてもよい。第1接着剤組成物が塗布される第1部材の表面粗さが大きい場合には、第1接着剤組成物が第1部材の被着面の凹凸や孔に追従することにより、接着強度を高めることができるからである。
B.物品の製造方法の第2実施形態
物品の製造方法の第2実施形態は、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートとを用い、第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第1部材に、上記第1接着剤組成物を塗布する塗布工程と、上記第1部材の上記第1接着剤組成物の塗布面に、上記第1接着シートの上記第1接着層の一方の面を貼り合せる第1接着シート貼合工程と、上記第1接着シートの上記第1接着層の他方の面に、上記第2部材を貼り合せる第2部材貼合工程と、を有し、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物および上記第1接着シートは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図9は、物品の製造方法の第2実施形態の一例を示す工程図である。図9に例示するように、まず、第1部材1に、第1接着剤組成物を塗布する(図9(a)、塗布工程)。次に、第1部材1の第1接着剤組成物22の塗布面に、第1接着シート12の第1接着層24の一方の面を貼り合せる(図9(b)、第1接着シート貼合工程)。図9(b)に示すように、第1接着シート12は、第1接着層24の少なくとも一方の面側に配置されたセパレータ23を有していてもよい。第1接着剤組成物22に含まれる第1接着剤成分および第1接着層24に含まれる第2接着剤成分は、互いに接触することにより、硬化することができる。次に、第1接着シート12の第1接着層24の他方の面に、第2部材2を貼り合せる(図9(c)、第2部材貼合工程)。第1接着層24の他方の面にセパレータ23が配置されている場合は、セパレータ23を剥離して行う。第2部材貼合工程において、第1接着剤組成物22および第1接着層24は、接触による硬化反応が完了することで強い接着力を発現した硬化接着層3となり、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、第1部材1、硬化接着層3および第2部材2を有する物品10が得られる。なお、図9(c)中のPは、第1接着剤組成物22および第1接着層24の接触により硬化した領域(硬化領域)を示す。
物品の製造方法の第2実施形態によれば、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面と第1接着シートの第1接着層とを貼り合わせることで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって部材同士を貼り合わせることができる。また、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面に第1接着シートが貼り合わせて積層されることから、2液型接着剤のような2液を混合する必要がなく、貼り合わせを簡便に行うことが可能である。加えて、第1接着シートを用いることから、第1接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらにまた、第2部材側には第1接着層が設けられていないことから、第2部材の取り扱いが容易となる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料の一方をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
また、第1接着剤組成物と第1接着シートとは形態が異なるため、適性を考慮して部材の種類に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することができる。そのため、例えば第1部材および第2部材が異種部材である場合や、第1部材が凹凸面や多孔質面を有する場合に有用である。
また、第1接着剤組成物は液状であるため、第1接着剤組成物および第1接着シートの第1接着層が接触した際に、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分を拡散しやすくすることができ、反応性を高めることが可能である。
第1部材および第2部材については、上述の物品の製造方法の第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。以下、本実施形態の物品の製造方法における各工程について説明する。
1.塗布工程
物品の製造方法の第2実施形態における塗布工程は、第1部材に、第1接着剤組成物を塗布する工程である。塗布工程については、上述の物品の製造方法の第1実施形態の塗布工程と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.第1接着シート貼合工程
物品の製造方法の第2実施形態における第1接着シート貼合工程は、上記第1部材の上記第1接着剤組成物の塗布面に、第1接着シートの上記第1接着層の一方の面を貼り合せる工程である。本工程は、上記第1部材の第1接着剤組成物の塗布面に、セパレータと上記セパレータの片面側に設けられた第1接着層とを有する第1接着シートの上記セパレータが配置されていない面を貼合する工程とすることができる。
上記第1接着層は、粘着力または凝集力を調整することで、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面に貼り合せる際に、貼り直しが可能となり、また、後述する貼合工程において、第2部材の貼り直しも可能となる。また、上記第1接着層は低粘性または高粘性とすることで、後述する貼合工程において、第1接着層に第2部材を貼り合せる際に、第1接着層の被着面に対して第2部材を平行方向にスライド移動させて貼り合せることが可能となる。
上記第1部材の上記第1接着剤組成物の塗布面に、第1接着シートの上記第1接着層の一方の面を貼り合せる方法としては、特に限定されない。例えば、第1接着層の片面にセパレータが配置され、第1接着層を巻内面としてロール状に巻回された第1接着シートロールを用い、上記第1接着シートロールから必要量巻き出して、上記第1接着層を上記第1接着剤組成物の塗布面に貼合した後切断する方法を用いることができる。また、上記第1接着層の両面にセパレータが配置された枚葉の第1接着シートを用い、上記第1接着シートの一方のセパレータを剥離して、露出した第1接着層と上記第1接着剤組成物の塗布面とを貼り合せる方法を用いることができる。
本工程において、第1接着剤組成物および第1接着層は、接触により硬化反応が進むが、後述する第2部材貼合工程前に硬化が完了しないようにすることができる。第1接着層に第2部材を貼り合せることが困難となるからである。
3.第2部材貼合工程
物品の製造方法の第2実施形態における第2部材貼合工程は、上記第1接着シートの上記第1接着層の他方の面に、第2部材を貼り合せる工程である。
上記第1接着層の他方の面と上記第2部材とを貼り合わせる方法としては、特に限定されない。例えば、第1部材上に配置された上記第1接着層の被着面に対して、直上方向から第2部材を貼り合せることができる。また、第1接着層が低粘性または高粘性を示す場合、第1接着層が配置された第1部材または第2部材のうち、一方の部材を固定し、他方の部材を固定された上記一方の部材の被着面に対して平行方向にスライド移動させて貼り合せることができる。このようなスライド移動による貼り合せ方法は、第1部材と第2部材との貼り合せ面が水平面となる場合に適している。
本工程は、第1接着シート貼合工程において第1接着剤組成物の塗布面および第1接着層を貼り合せてから、養生時間内に行うことで、第1接着剤組成物および第1接着層の接触による硬化反応が完了するまでの間、第1接着層の粘着性により第2部材を固定することができる。また、上記硬化反応の完了により、第2部材を強固に固定することができる。さらに、養生の間、作業者が他の施工を行うことができる。中でも、本工程は、第1接着剤組成物および第1接着層が接触してから0.5時間以内に行うことができる。硬化が進むと第2部材に対する接着強度が低下する懸念があるからである。また、上記第1接着層の他方の面に上記第2部材を貼り合せた後、加熱して硬化反応を促進させてもよい。養生時間、硬化温度および加熱温度については、上述の「A.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した内容と同様である。
本工程において、第1接着剤組成物および第1接着層の接触による硬化反応が完了すると、第1接着剤組成物および第1接着層が強固に接着して、第1部材と第2部材との間に硬化接着層が形成される。硬化接着層の詳細および本実施形態の物品の製造方法において説明しない内容については、上述の「A.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した内容と同様である。
C.物品の製造方法の第3実施形態
物品の製造方法の第3実施形態は、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートとを用い、第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第2部材に、上記第1接着シートの上記第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する準備工程と、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面に、上記第1接着剤組成物を塗布する塗布工程と、上記第1接着シート付部材の上記第1接着剤組成物の塗布面に、上記第1部材を貼り合せる第1部材貼合工程と、を有し、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物および上記第1接着シートは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図10は、物品の製造方法の第3実施形態の一例を示す工程図である。図10に例示するように、まず、第1接着シート付部材30を準備する(図10(a)、準備工程)。第1接着シート付部材30は、第2部材2に、第1接着層24を有する第1接着シート12の第1接着層24の一方の面が貼り合されてなる。図10(a)に示すように、第1接着シート12は、第1接着層24の少なくとも一方の面側に配置された第1セパレータ23を有していてもよい。次に、第1接着シート付部材30の第1接着層24の他方の面に、第1接着剤組成物を塗布する(図10(b)、塗布工程)。第1接着層24の他方の面にセパレータ23が配置されている場合は、セパレータ23を剥離して行う。第1接着剤組成物22に含まれる第1接着剤成分および第1接着層24に含まれる第2接着剤成分は、互いに接触することにより、硬化することができる。次に、第1接着シート付部材30の第1接着剤組成物22の塗布面に、第1部材1を貼り合せる(図10(c)、第1部材貼合工程)。第1部材貼合工程において、第1接着剤組成物22および第1接着層24は、接触による硬化反応が完了することで強い接着力を発現した硬化接着層3となり、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、第1部材1、硬化接着層3および第2部材2を有する物品10が得られる。なお、図10(c)中のPは、第1接着剤組成物22および第1接着層24の接触により硬化した領域(硬化領域)を示す。
物品の製造方法の第3実施形態によれば、第2部材に貼り合せた第1接着層上に第1接着剤組成物を塗布することで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって部材同士を貼り合わせることができる。また、第2部材に貼り合せた第1接着層上に第1接着剤組成物を塗布して積層することから、2液型接着剤のような2液を混合する必要がなく、貼り合わせを簡便に行うことが可能である。加えて、第1接着シートを用いることから、第1接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらにまた、第1部材側には第1接着剤組成物が塗布されていないことから、第1部材の取り扱いが容易となる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料の一方をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
また、第1接着剤組成物と第1接着シートとは形態が異なるため、適性を考慮して部材の種類に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することができる。そのため、例えば第1部材および第2部材が異種部材である場合や、第1部材が凹凸面や多孔質面を有する場合に有用である。
また、第1接着剤組成物は液状であるため、第1接着剤組成物および第1接着シートの第1接着層が接触した際に、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分を拡散しやすくすることができ、反応性を高めることが可能である。
第1部材および第2部材については、上述の物品の製造方法の第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。以下、本実施形態の物品の製造方法における各工程について説明する。
1.準備工程
物品の製造方法の第3実施形態における準備工程は、第2部材に、第1接着シートの第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する工程である。準備工程については、上述の物品の製造方法の第1実施形態の準備工程と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.塗布工程
物品の製造方法の第3実施形態における塗布工程は、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面に、上記第1接着剤組成物を塗布する工程である。第1接着剤組成物の塗布方法および第1接着剤組成物の塗布層については、上述の「A.物品の製造方法の第1実施形態 2.塗布工程」の項で説明したので、ここでの説明は省略する。
第1接着シート付部材において、第1接着層の第2部材側とは反対側にセパレータが配置されている場合は、第1接着シート付部材のセパレータを剥離し、露出した第1接着層の表面に第1接着剤組成物を塗布する。
上記準備工程が、上記第1実施形態の準備工程と同様に、図3(a)、(b)に例示するような第1接着層24の片面にセパレータ23が配置され、第1接着層24が、第1接着層24を厚み方向に切断する切込部25を有し、切込部25により画定される第1接着部24aを有する第2シート12を用い、図4(b)に例示するように第1接着部24aのセパレータ23が配置されていない面に、第2部材2を貼り合せる第1接着シート貼合工程を有する場合、塗布工程では、図4(c)に例示するように、第1接着シート付部材30のセパレータ23から、第1接着部24aおよび第2部材2が順に積層された第1接着部付部材31を剥離した後、図示しないが、第1接着部付部材の第2接着部の面に第1接着剤組成物を塗布することができる。
また、上記準備工程が、上記第1実施形態の準備工程と同様に、図5(a)、(b)に例示するような第1接着層24の片面にセパレータ23が配置され、第1接着層24がパターン状の第2接着部24bを有する第1接着シート12を用い、図6(b)に例示するように第2接着部24bのセパレータ23が配置されていない面に、第2部材2を貼り合せる第1接着シート貼合工程を有する場合、塗布工程では、図6(c)に例示するように、第1接着シート付部材30のセパレータ23から、第2接着部24bおよび第2部材2が順に積層された第2接着部付部材32を剥離した後、図示しないが、第2接着部付部材の第2接着部の面に第1接着剤組成物を塗布することができる。
本工程において、第1接着剤組成物および第1接着層は、接触により硬化反応が進むが、後述する第1部材貼合工程前に硬化が完了しないようにすることができる。第1接着剤組成物の塗布面に第1部材を貼り合せることが困難となるからである。
3.第1部材貼合工程
物品の製造方法の第3実施形態における第1部材貼合工程は、上記第1接着シート付部材の上記第1接着剤組成物の塗布面に、第1部材を貼り合せる工程である。
上記第1接着シート付部材の上記第1接着剤組成物の塗布面と上記第1部材とを貼り合わせる方法としては、特に限定されない。例えば、第2部材上に配置された上記第1接着剤組成物の塗布面に対して、直上方向から第1部材を貼り合せることができる。
本工程は、塗布工程において第1接着層の他方の面に第1接着剤組成物を塗布してから、養生時間内に行うことで、第1接着剤組成物および第1接着層の接触による硬化反応が完了するまでの間、第1接着剤組成物の塗布層の粘着性により第1部材を固定することができる。また、上記硬化反応の完了により、第1部材を強固に固定することができる。さらに、養生の間、作業者が他の施工を行うことができる。中でも、本工程は、第1接着剤組成物および第1接着層が接触してから0.5時間以内に行うことができる。硬化が進むと第1部材に対する接着強度が低下する懸念があるからである。また、上記第1接着剤組成物の塗布面に上記第1部材を貼り合せた後、加熱して硬化反応を促進させてもよい。養生時間、硬化温度および加熱温度については、上述の「A.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した内容と同様である。
本工程において、第1接着剤組成物および第1接着層の接触による硬化反応が完了すると、第1接着剤組成物および第1接着層が強固に接着して、第1部材と第2部材との間に硬化接着層が形成される。硬化接着層の詳細および本実施形態の物品の製造方法において説明しない内容については、上述の「A.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した内容と同様である。
D.物品の製造方法の第4実施形態
物品の製造方法の第4実施形態は、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートとを用い、第1部材および第2部材を貼り合せる物品の製造方法であって、上記第1接着シートの上記第1接着層の一方の面に、上記第1接着剤組成物を塗布し、多層接着シートを準備する準備工程と、上記多層接着シートの上記第1接着剤組成物の塗布面に、上記第1部材を貼り合せる第1貼合工程と、上記多層接着シートの上記第1接着層の他方の面に、上記第2部材を貼り合せる第2貼合工程と、を有し、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物および上記第1接着シートは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図11は、物品の製造方法の第4実施形態の一例を示す工程図である。図11に例示するように、まず、第1接着シート12の第1接着層24の一方の面に、第1接着剤組成物22を塗布し、多層接着シート40を準備する(図11(a)、準備工程)。図11(a)に示すように、第1接着シート12は、第1接着層24の少なくとも一方の面側に配置されたセパレータ23を有していてもよく、この場合、第1接着層24の他方の面(第1接着剤組成物22を塗布する面と反対側の面)にセパレータ23が配置されていてもよい。次に、多層接着シート40の第1接着剤組成物22の塗布面に、第1部材1を貼り合せる(図11(b)、第1貼合工程)。また、多層接着シート40の第1接着層24の他方の面に、第2部材2を貼り合せる(図11(c)、第2貼合工程)。多層接着シート40の第1接着層24の他方の面にセパレータ23が配置されている場合、第2貼合工程は、セパレータ23を剥離して行う。多層接着シート40において、第1接着剤組成物22および第1接着層24は、互いに接触しており、第1貼合工程および第2貼合工程中に、第1接着剤組成物22中の成分と第1接着層24中の成分とが拡散して、硬化反応が生じて、強い接着力を発現することができる。第1接着剤組成物22および第1接着層24は、硬化反応の完了により硬化接着層3となり(図11(c))、硬化接着層3を介して第1部材1および第2部材2を強固に貼り合せることができる。これにより、第1部材1、硬化接着層3、および第2部材2を有する物品10が得られる。なお、図11(b)、(c)中のPは、第1接着剤組成物22および第1接着層24の接触により硬化した領域(硬化領域)を示す。
図11(a)で例示した準備工程では、第1接着シート12の第1接着層24の一方の面に第1接着剤組成物を塗布して多層接着シート40を形成する多層接着シート形成工程を含んでいる。多層接着シート形成工程については後述する。
物品の製造方法の第4実施形態によれば、予め第1接着シートの第1接着層上に第1接着剤組成物を塗布して多層接着シートを準備し、上記多層接着シートに対して各部材を貼り合わせることで、部材同士の貼合時間の短縮を図ることができ、また、硬化により発現される強い接着力をもって部材同士を貼り合わせることができる。さらに、上記多層接着シートを用いるため、2液型接着剤のような2液の混合が不要であり、部材同士の貼り合わせを簡便に行うことが可能である。加えて、第1接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料の一方をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
また、第1接着剤組成物と第1接着シートとは形態が異なるため、適性を考慮して部材の種類に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することができる。そのため、例えば第1部材および第2部材が異種部材である場合や、第1部材が凹凸面や多孔質面を有する場合に有用である。
また、第1接着剤組成物は液状であるため、第1接着剤組成物および第1接着シートの第1接着層が接触した際に、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分を拡散しやすくすることができ、反応性を高めることが可能である。
第1部材および第2部材については、上述の物品の製造方法の第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。以下、本実施形態の物品の製造方法の各工程について説明する。
1.準備工程
物品の製造方法の第4実施形態における準備工程は、第1接着シートの上記第1接着層の一方の面に、第1接着剤組成物を塗布し、多層接着シートを準備する工程である。
多層接着シートは、第1接着層の第1接着剤組成物の塗布面とは反対側の面にセパレータを有していてもよい。
上記多層接着シートは、上記第1接着剤組成物と上記第1接着層との接着界面において、硬化領域を有していてもよい。上記硬化領域とは、上記第1接着剤組成物および上記第1接着層のそれぞれに含有される成分が拡散して硬化した領域をいう。
本工程においては、別工程にて第1接着シートの第1接着層の一方の面に第1接着剤組成物が予め塗布された多層接着シートを準備してもよい。また、本工程は、セパレータと上記セパレータの少なくとも一方の面側に設けられた第1接着層とを有する第1接着シートを用い、第1接着シートの第1接着層の一方の面に、第1接着剤組成物を塗布して多層接着シートを形成する多層接着シート形成工程を有していてもよい。
多層接着シート形成工程では、例えば、第1接着層の両面にセパレータを有する第1接着シートを準備し、上記第1接着シートの一方の上記セパレータを剥離して、露出した上記第1接着層の一方の面に第1接着剤組成物を塗布して、多層接着シートを準備することができる。
また、多層接着シート形成工程では、例えば、上記第1接着層の片面にセパレータを有し、第1接着層を巻内面としてロール状に巻回された第1接着シートロールを準備し、巻き出して、所望の形状に切り出した後、上記第1接着シートの上記第1接着層の一方の面に第1接着剤組成物を塗布し、多層接着シートを準備することができる。
多層接着シートを準備後、すぐに後述する貼合工程を行わない場合は、多層接着シートは、第1接着剤組成物および第1接着層の接触による硬化反応が進行しないように、低温環境下で保管することができる。上記低温環境下とは5℃以下の環境下をいい、多層接着シートは、中でも−20℃以上5℃以下の冷蔵庫もしくは冷凍庫に保管することができる。
2.第1貼合工程および第2貼合工程
物品の製造方法の第4実施形態における第1貼合工程は、上記多層接着シートの上記第1接着剤組成物の塗布面に、上記第1部材を貼り合せる工程である。また、物品の製造方法の第4実施形態における第2貼合工程は、上記多層接着シートの上記第1接着層の他方の面に、上記第2部材を貼り合せる工程である。第1貼合工程および第2貼合工程は順不同に行うことができる。
上記多層接着シートにおいて、上記第1接着層の他方の面にセパレータが配置されている場合は、上記セパレータを剥離して露出した上記第1接着層に、上記第2部材を貼合することができる。
第1貼合工程および第2貼合工程は、準備工程から第1接着剤組成物および第1接着層の接触による硬化反応が完了するまでの間に行うことができる。第1接着剤組成物および第1接着層の硬化が進むと、部材を貼り合わせることが困難になる場合があるからである。準備工程において、上記多層接着シートが低温環境下に保管されない場合は、第1接着剤組成物および第1接着層が接触してから0.5時間以内に行うことができる。また、準備工程において、上記多層接着シートが低温環境下に保管されている場合は、低温環境下から解放されてから養生時間の間に行うことができる。養生時間については、上述の「A.物品の製造方法の第1実施形態」の項で説明した内容と同様とすることができる。
3.その他
その他、第1接着剤組成物の塗布層および第1接着層の物性を利用した貼合方法や、上記第1接着剤組成物および第1接着層の接触硬化反応により形成される硬化接着層等、本実施態様の物品の製造方法において説明しない内容については、上述の「A.物品の製造方法の第1実施形態」、「B.物品の製造方法の第2実施形態」および「C.物品の製造方法の第3実施形態」の項で説明した内容と同様とすることができる。
E.物品の製造方法の第5実施形態
物品の製造方法の第5実施形態は、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートとを用いる物品の製造方法であって、第1部材に、上記第1接着剤組成物を塗布する塗布工程と、上記第1部材の上記第1接着剤組成物の塗布面に、上記第1接着シートの上記第1接着層の一方の面を貼り合せる第1接着シート貼合工程と、を有し、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物および上記第1接着シートは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図12は、物品の製造方法の第5実施形態の一例を示す工程図である。物品の製造方法の第5実施形態は、塗布工程(図12(a))および第1接着シート貼合工程(図12(b))を有する。図12(a)および(b)は、上述した図9(a)および(b)と同様である。第1接着剤組成物22および第1接着層24は、硬化反応の完了により硬化接着層3となる(図12(c))。図12(c)で示すように、第1接着シート貼合工程後、硬化接着層3の第1部材1とは反対側の面に、第1接着シート12のセパレータ23が配置されている場合は、セパレータ23を剥離してもよい。これにより、第1部材1および硬化接着層3を少なくとも有する物品10が得られる。
物品の製造方法の第5実施形態によれば、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面と第1接着シートの第1接着層とを貼り合わせることで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって第1部材と第1接着剤組成物および第1接着層とを一体化することができる。また、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面に第1接着シートを貼り合せて積層することから、2液型接着剤のような2液を混合する必要がなく、物品の製造を簡便に行うことが可能である。加えて、第1接着シートを用いることから、第1接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、第1接着層の中に他の部材を含浸させる、または第1接着剤組成物および第1接着層の接触界面に他の部材を配置することで、硬化接着層により上記他の部材を保持し、固定することができ、また、上記他の部材により第1部材の補修または補強等することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料の一方をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
また、第1接着剤組成物と第1接着シートとは形態が異なるため、適性を考慮して部材の種類に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することができる。そのため、例えば第1部材が凹凸面や多孔質面を有する場合に有用である。
また、第1接着剤組成物は液状であるため、第1接着剤組成物および第1接着シートの第1接着層が接触した際に、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分を拡散しやすくすることができ、反応性を高めることが可能である。
本実施形態の物品の製造方法は、第2部材貼合工程を行わないこと以外は、上述の「B.物品の製造方法の第2実施形態」の項で説明した内容と同様とすることができる。以下、本実施形態の物品の製造方法の各工程について説明する。
1.塗布工程
物品の製造方法の第5実施形態における塗布工程は、第1部材に、第1接着剤組成物を塗布する工程である。塗布工程については、上述の物品の製造方法の第1実施形態の塗布工程と同様であるため、ここでの説明は省略する。第1部材は固定されていてもよい。
2.第1接着シート貼合工程
物品の製造方法の第5実施形態における第1接着シート貼合工程は、上記第1部材の上記第1接着剤組成物の塗布面に、第1接着シートの第1接着層の一方の面を貼り合せる工程である。第1接着シート貼合工程は、上述の物品の製造方法の第2実施形態の第1接着シート貼合工程と同様とすることができる。
第1接着シートは、予め第1接着層の一方の面(第1接着剤組成物側の面)に、他の部材が配置されていてもよく、第1接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。本工程において第1接着剤組成物と第1接着シートの第1接着層とが接触硬化することで、他の部材を硬化接着層中に包含することが可能となるからである。例えば図13に示すように、第1接着シート貼合工程において、第1接着層24中に他の部材4が含浸されている第1接着シート12を用い、第1部材1の第1接着剤組成物22の塗布面に、この第1接着シート12の第1接着層24の一方の面を貼り合せる場合には、硬化接着層3中に他の部材4が包含されている物品10を得ることができる。
第1接着シートは、第1接着層の少なくとも一方の面側に配置されたセパレータを有し、第1接着層が、第1接着層を厚み方向に切断する切込部を有し、切込部により画定される第1接着部を有していてもよい。また、第1接着層は、1つの第1接着部を有していてもよく、複数の第1接着部を有していてもよい。この場合、第1接着部の一方の面を、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面に貼り合せることができる。
上記の場合であって、図14(b)に例示するような第1接着層24の両面にセパレータ23が配置され、第1接着層24および一方のセパレータ23が、第1接着層24および一方のセパレータ23を厚み方向に切断する切込部25を有し、第1接着層24が切込部25により画定される第1接着部24aを有する第1接着シート12を用いる場合、本工程では、図14(b)〜(d)に例示するように、第1接着シート12の他方のセパレータ23から、第1接着部24aおよび一方のセパレータ23を剥離して、第1接着部24aの一方の面を、第1部材1の第1接着剤組成物22の塗布面に貼り合せることができる。この場合、第1接着層は位置精度や厚み精度が良いことから、第1接着部を精度良く貼り合せることができる。
また、第1接着シートは、第1接着層の少なくとも一方の面側に配置されたセパレータを有し、第1接着層が、パターン状の第2接着部を有していてもよい。また、第1接着層は、1つの第2接着部を有していてもよく、複数の第2接着部を有していてもよい。この場合、第2接着部の一方の面を、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面に貼り合せることができる。
上記の場合であって、第1接着層の両面にセパレータが配置され、第1接着層がパターン状の第2接着部を有する第1接着シートを用いる場合、第1接着シートの他方のセパレータから、第2接着部および一方のセパレータを剥離して、第2接着部の一方の面を、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面に貼り合せることができる。この場合、上記の場合と同様の利点を有する。
第1接着シートは、第1接着層の他方の面(第1接着剤組成物側と反対側の面)にセパレータを有し、上記セパレータの上記第1接着層側表面が賦形面であってもよい。セパレータの第1接着層側表面を賦形面とすることで、図12(b)、(c)で例示するように、第1接着剤組成物22および第1接着層24との接触硬化後、第1接着層24上に配置されていたセパレータ23を剥離することにより、硬化接着層3表面にセパレータ23の賦形面の形状が賦形された物品10を得ることができ、意匠性を付与することができるからである。
本工程は、第1接着シートの上記第1接着層の一方の面を貼り合せる前に、第1部材の第1接着剤組成物の塗布面に、他の部材を配置する工程を有していてもよい。その理由については、先に述べた理由と同様である。
3.第2接着剤組成物塗布工程
物品の製造方法の第5実施形態は、上記第1接着シート貼合工程後、上記第1接着層の他方の面に、第2接着剤組成物を塗布する第2接着剤組成物塗布工程を有していてもよい。
この場合、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートと、液状の第2接着剤組成物とが用いられ、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第2接着剤組成物は第3接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物と上記第1接着シートと上記第2接着剤組成物とは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成され、上記第3接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
第2接着剤組成物塗布工程では、例えば図15に示すように、第1部材1上に配置された第1接着層24の他方の面に第2接着剤組成物28を塗布する。第1接着剤組成物22と第1接着層24と第2接着剤組成物28とは、硬化反応の完了により硬化接着層3となる。
第2接着剤組成物の塗布方法は、上記第1接着剤組成物の塗布方法と同様とすることができる。
また、上記第1接着シート貼合工程において、第1接着層24中に他の部材4が含浸されている第1接着シート12を用いる場合であって、第2接着剤組成物塗布工程を行う場合には、例えば図15に示すような、硬化接着層3中に他の部材4が包含されている物品10を得ることができる。
4.その他
本実施形態の製造方法においては、第1接着剤組成物および第1接着層の少なくとも一方が、顔料を含んでいてもよい。また、第2接着剤組成物塗布工程を行う場合には、第1接着剤組成物、第2接着剤組成物および第1接着層の少なくとも1つが、顔料を含んでいてもよい。物品の製造方法をインフラ構造物の製造方法に適用する場合において、補修した箇所がどこであるかを遠くからでも視認しやすくすることができ、また、顔料を含むことで、下地を保護することができるからである。
F.物品の製造方法の第6実施形態
物品の製造方法の第6実施形態は、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートとを用いる物品の製造方法であって、第1部材に、上記第1接着シートの上記第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する準備工程と、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面に、上記第1接着剤組成物を塗布する塗布工程と、を有し、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物および上記第1接着シートは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図16は、物品の製造方法の第6実施形態の一例を示す工程図である。物品の製造方法の第6実施形態は、準備工程(図16(a))および塗布工程(図16(b))を有する。図16(a)および(b)は、上述した図10(a)および(b)と同様である。第1接着剤組成物22および第1接着層24は、硬化反応の完了により硬化接着層3となる(図16(c))。これにより、図16(c)で示すように、第1部材1および硬化接着層3を少なくとも有する物品10が得られる。
物品の製造方法の第6実施形態によれば、第2部材に貼り合せた第1接着層上に第1接着剤組成物を塗布することで、接触により硬化反応が進み、硬化により発現される強い接着力をもって第2部材と第1接着層および第1接着剤組成物とを一体化することができる。また、第2部材に貼り合せた第1接着層上に第1接着剤組成物を塗布して積層することから、2液型接着剤のような2液を混合する必要がなく、物品の製造を簡便に行うことが可能である。加えて、第1接着シートを用いることから、第1接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、第1接着層の中に他の部材を含浸させる、または第1接着剤組成物および第1接着層の接触界面に他の部材を配置することで、硬化接着層により上記他の部材を保持し、固定することができ、また、上記他の部材により第2部材の補修または補強等することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料の一方をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
また、第1接着剤組成物と第1接着シートとは形態が異なるため、適性を考慮して部材の種類に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することができる。そのため、例えば第1部材が凹凸面や多孔質面を有する場合に有用である。
また、第1接着剤組成物は液状であるため、第1接着剤組成物および第1接着シートの第1接着層が接触した際に、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分を拡散しやすくすることができ、反応性を高めることが可能である。
本実施形態の物品の製造方法は、第1部材貼合工程を行わないこと以外は、上述の「C.物品の製造方法の第3実施形態」の項で説明した内容と同様とすることができる。以下、本実施形態の物品の製造方法の各工程について説明する。
1.準備工程
物品の製造方法の第6実施形態における準備工程は、第1部材に、上記第1接着シートの上記第1接着層の一方の面が貼り合されている、第1接着シート付部材を準備する工程である。準備工程は、上述の物品の製造方法の第3実施形態の準備工程と同様とすることができる。
第1接着シートは、予め第1接着層の一方の面(第1部材側の面)またはその反対側の面に、他の部材が配置されていてもよく、第1接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。本工程において第1接着剤組成物と第1接着シートの第1接着層とが接触硬化することで、他の部材を硬化接着層中に包含することが可能となるからである。例えば図16(a)に示すように、第1接着層24中に他の部材4が含浸されている第1接着シート12を用いる場合には、硬化接着層3中に他の部材4が包含されている物品10を得ることができる。
2.塗布工程
物品の製造方法の第6実施形態における塗布工程は、上記第1接着シート付部材の上記第1接着層の他方の面に、上記第1接着剤組成物を塗布する工程である。塗布工程は、上述の物品の製造方法の第3実施形態の塗布工程と同様とすることができる。
本工程は、第1接着剤組成物を塗布する前に、第1接着シートの第1接着層の他方の面に、他の部材を配置する工程を有していてもよい。その理由については、先に述べた理由と同様である。
3.第2接着シート貼合工程
物品の製造方法の第6実施形態は、上記塗布工程後、上記第1接着剤組成物の塗布面に、第2接着シートの第2接着層の一方の面を貼り合せる第2接着シート貼合工程を有していてもよい。
この場合、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートと、第2接着層を有する第2接着シートとが用いられ、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第2接着層は第4接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物と上記第1接着シートと上記第2接着シートとは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成され、上記第1接着剤成分および上記第4接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
第2接着シート貼合工程では、例えば図17(a)に示すように、第1部材1上に配置された第1接着剤組成物22の塗布面に、第2接着シート13の第2接着層26の一方の面を貼り合せる。第2接着シート13は、第2接着層26の少なくとも一方の面側にセパレータ27を有していてもよい。第1接着剤組成物22と第1接着層24と第2接着層26とは、硬化反応の完了により硬化接着層3となる(図17(b))。図17(b)に示すように、第2接着シート貼合工程後、硬化接着層3の第1部材1とは反対側の面に、第2接着シート13のセパレータ27が配置されている場合は、セパレータ27を剥離してもよい。これにより、第1部材1および硬化接着層3を少なくとも有する物品10が得られる。
第2接着シートの貼合方法は、上記第1接着シートの貼合方法と同様とすることができる。
第2接着シートは、予め第2接着層の一方の面(第1部材側の面)に、他の部材が配置されていてもよく、第2接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。本工程において第1接着層と第1接着剤組成物と第2接着層とが接触硬化することで、他の部材を硬化接着層中に包含することが可能となるからである。例えば図17(a)に示すように、第2接着層26中に他の部材5が含浸されている第2接着シート13を用いる場合には、図17(b)に示すように、硬化接着層3中に他の部材5が包含されている物品10を得ることができる。また、第2接着層は第1接着剤組成物と接触するまでは硬化反応が進まないことから、例えば第2接着層中に他の部材が含浸された第2接着シートや、第2接着層の一方の面に他の部材が配置された第2接着シートは、第2接着シート貼合工程前まで長期間保管することができ、第1部材に貼り合せるタイミングに応じて、第2接着シートを使用することができる。
図17に示す例においては、第1接着層24中に他の部材4が含浸され、第2接着層26中に他の部材5が含浸されているが、第1接着層および第2接着層の一方の接着層中に他の部材が含浸されていてもよく、両方の接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。
4.その他
本実施形態の製造方法においては、第1接着剤組成物および第1接着層の少なくとも一方が、顔料を含んでいてもよい。また、第2接着シート貼合工程を行う場合には、第1接着剤組成物、第1接着層および第2接着層の少なくとも1つが、顔料を含んでいてもよい。その理由については、上記物品の製造方法の第5実施形態に述べた理由と同様である。
G.物品の製造方法の第7実施形態
物品の製造方法の第7実施形態は、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートとを用いる物品の製造方法であって、上記第1接着シートの上記第1接着層の一方の面に、上記第1接着剤組成物を塗布し、多層接着シートを準備する準備工程と、上記多層接着シートの上記第1接着剤組成物の塗布面に、第1部材を貼り合せる貼合工程と、を有し、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物および上記第1接着シートは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図18は、物品の製造方法の第7実施形態の一例を示す工程図である。物品の製造方法の第7実施形態は、準備工程(図18(a))および貼合工程(図18(b))を有する。図18(a)および(b)は、上述した図11(a)および(b)と同様である。第1接着剤組成物22および第1接着層24は、硬化反応の完了により硬化接着層3となる(図18(c))。図18(c)で示すように、貼合工程後、硬化接着層3の第1部材1とは反対側の面に、第1接着シート12のセパレータ23が配置されている場合は、セパレータ23を剥離してもよい。これにより、第1部材1および硬化接着層3を少なくとも有する物品10が得られる。なお、図18(b)中のPは、第1接着剤組成物22および第1接着層24の接触により硬化した領域(硬化領域)を示す。
物品の製造方法の第7実施形態によれば、予め第1接着シートの第1接着層上に第1接着剤組成物を塗布して多層接着シートを準備し、上記多層接着シートに対して部材を貼り合わせることで、貼合時間の短縮を図ることができ、また、硬化により発現される強い接着力をもって第1部材と第1接着剤組成物および第1接着層とを一体化することができる。さらに、上記多層接着シートを用いるため、2液型接着剤のような2液の混合が不要であり、物品の製造を簡便に行うことが可能である。加えて、第1接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、第1接着層の中に他の部材を含浸させる、または第1接着剤組成物および第1接着層の接触界面に他の部材を配置することで、硬化接着層により上記他の部材を保持し、固定することができ、また、上記他の部材により第1部材の補修または補強等することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料の一方をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
また、第1接着剤組成物と第1接着シートとは形態が異なるため、適性を考慮して部材の種類に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することができる。そのため、例えば第1部材が凹凸面や多孔質面を有する場合に有用である。
また、第1接着剤組成物は液状であるため、第1接着剤組成物および第1接着シートの第1接着層が接触した際に、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分を拡散しやすくすることができ、反応性を高めることが可能である。
本実施形態の物品の製造方法は、第2部材貼合工程を行わないこと以外は、上述の「B.物品の製造方法の第4実施形態」の項で説明した内容と同様とすることができる。以下、本実施形態の物品の製造方法の各工程について説明する。
1.準備工程
物品の製造方法の第7実施形態における準備工程は、第1接着シートの上記第1接着層の一方の面に、第1接着剤組成物を塗布し、多層接着シートを準備する工程である。準備工程は、上述の物品の製造方法の第4実施形態の準備工程と同様とすることができる。
第1接着シートは、予め第1接着層の一方の面(第1接着剤組成物側の面)に、他の部材が配置されていてもよく、第1接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。第1接着剤組成物と第1接着層とが接触硬化することで、他の部材を硬化接着層中に包含することが可能となるからである。例えば図18(a)に示すように、第1接着層24中に他の部材4が含浸されている第1接着シート12を用いる場合には、図18(c)に示すように、硬化接着層3中に他の部材4が包含されている物品10を得ることができる。また、第1接着層は第1接着剤組成物と接触するまでは硬化反応が進まないことから、例えば第1接着層中に他の部材が含浸された第1接着シートや、第1接着層の一方の面に他の部材が配置された第1接着シートは、準備工程前まで長期間保管することができ、第1部材に貼り合せるタイミングに応じて、第1接着シートを使用することができる。
第1接着シートは、第1接着層の他方の面(第1接着剤組成物側と反対側の面)にセパレータを有し、上記セパレータの上記第1接着層側表面が賦形面であってもよい。セパレータの第1接着層側表面を賦形面とすることで、第1接着剤組成物および第1接着層の接触硬化後、第1接着層上に配置されていたセパレータを剥離することにより、硬化接着層表面にセパレータの賦形面の形状が賦形された物品を得ることができ、意匠性を付与することができるからである。
本工程は、第1接着シートの第1接着層の一方の面に第1接着剤組成物を塗布する前に、第1接着層の一方の面に、他の部材を配置する工程を有していてもよい。その理由については、先に述べた理由と同様である。
2.貼合工程
物品の製造方法の第7実施形態における貼合工程は、上記多層接着シートの上記第1接着剤組成物の塗布面に、第1部材を貼り合せる工程である。貼合工程は、上述の物品の製造方法の第4実施形態の第1部材貼合工程と同様とすることができる。
3.その他
本実施形態の製造方法においては、第1接着剤組成物および第1接着層の少なくとも一方が、顔料を含んでいてもよい。その理由については、上記物品の製造方法の第5実施形態に述べた理由と同様である。
H.物品の製造方法の第8実施形態
物品の製造方法の第8実施形態は、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートとを用いる物品の製造方法であって、上記第1接着シートの上記第1接着層の一方の面に、上記第1接着剤組成物を塗布し、多層接着シートを準備する準備工程と、上記多層接着シートの上記第1接着層の他方の面に、第1部材を貼り合せる貼合工程と、を有し、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物および上記第1接着シートは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図19は、物品の製造方法の第8実施形態の一例を示す工程図である。物品の製造方法の第8実施形態は、準備工程(図19(a))および貼合工程(図19(b))を有する。図19(a)は、上述した図11(a)と同様である。図19(b)は、多層接着シートの上記第1接着層の他方の面に、第2部材ではなく、第1部材を貼り合せること以外は、上述した図11(b)と同様である。第1接着剤組成物22および第1接着層24は、硬化反応の完了により硬化接着層3となる(図19(c))。これにより、第1部材1および硬化接着層3を少なくとも有する物品10が得られる。なお、図19(b)中のPは、第1接着剤組成物22および第1接着層24の接触により硬化した領域(硬化領域)を示す。
物品の製造方法の第8実施形態によれば、予め第1接着シートの第1接着層上に第1接着剤組成物を塗布して多層接着シートを準備し、上記多層接着シートに対して部材を貼り合わせることで、貼合時間の短縮を図ることができ、また、硬化により発現される強い接着力をもって第1部材と第1接着剤組成物および第1接着層とを一体化することができる。さらに、上記多層接着シートを用いるため、2液型接着剤のような2液の混合が不要であり、物品の製造を簡便に行うことが可能である。加えて、第1接着層の厚み管理が可能となり、接着剤の塗布ムラや塗布忘れ、被着面からのはみ出し等の不具合の発生を抑制することができる。さらに、第1接着層の中に他の部材を含浸させる、または第1接着剤組成物および第1接着層の接触界面に他の部材を配置することで、硬化接着層により上記他の部材を保持し、固定することができ、また、上記他の部材により第1部材の補修または補強等することができる。このように、2液分別塗布型接着剤の2種類の液状材料の一方をシート化することで、塗布接着法よりも物品の製造を簡便化することができる。
また、第1接着剤組成物と第1接着シートとは形態が異なるため、適性を考慮して部材の種類に応じて第1接着剤組成物および第1接着シートを適宜選択することができる。そのため、例えば第1部材が凹凸面や多孔質面を有する場合に有用である。
また、第1接着剤組成物は液状であるため、第1接着剤組成物および第1接着シートの第1接着層が接触した際に、第1接着剤組成物に含まれる第1接着剤成分および第1接着層に含まれる第2接着剤成分を拡散しやすくすることができ、反応性を高めることが可能である。
本実施形態の物品の製造方法は、第2部材貼合工程を行わず、多層接着シートの第1接着層の他方の面に、第2部材ではなく、第1部材を貼り合せること以外は、上述の「B.物品の製造方法の第4実施形態」の項で説明した内容と同様とすることができる。以下、本実施形態の物品の製造方法の各工程について説明する。
1.準備工程
物品の製造方法の第8実施形態における準備工程は、第1接着シートの上記第1接着層の一方の面に、第1接着剤組成物を塗布し、多層接着シートを準備する工程である。準備工程については、上記第7実施形態の準備工程と同様とすることができる。
また、準備工程は、第1接着剤組成物の塗布後、第1接着シートの第1接着剤組成物の塗布面に、第2接着シートの第2接着層の一方の面を貼り合せて、多層接着シートとしてもよい。
この場合、液状の第1接着剤組成物と、第1接着層を有する第1接着シートと、第2接着層を有する第2接着シートとが用いられ、上記第1接着剤組成物は第1接着剤成分を含有し、上記第1接着層は第2接着剤成分を含有し、上記第2接着層は第4接着剤成分を含有し、上記第1接着剤組成物と上記第1接着シートと上記第2接着シートとは、上記第1接着剤成分および上記第2接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成され、上記第1接着剤成分および上記第4接着剤成分が互いに接触することにより硬化して接着するように構成されている。
図20は、物品の製造方法の第8実施形態の他の例を示す工程図である。まず、第1接着シート12の第1接着層24の一方の面に、第1接着剤組成物22を塗布した後、第1接着シート12の第1接着剤組成物22の塗布面に、第2接着シート13の第2接着層26の一方の面を貼り合せて、多層接着シート50を準備する(図20(a)〜(b)、準備工程)。第2接着シート13は、第2接着層26の少なくとも一方の面側にセパレータ27を有していてもよく、この場合、第2接着層26の他方の面にセパレータ27が配置されていてもよい。次に、多層接着シート50の第1接着層24の他方の面に、第1部材1を貼り合せる(図20(c)、貼合工程)。多層接着シート50の第2接着層の他方の面にセパレータ27が配置されている場合には、貼合工程は、セパレータ27を剥離して行う。第1接着剤組成物22と第1接着層24と第2接着層26とは、硬化反応の完了により硬化接着層3となる(図20(d))。図20(d)に示すように、貼合工程後、硬化接着層3の第1部材1とは反対側の面に第2接着シート13のセパレータ27が配置されている場は、セパレータ27を剥離してもよい。これにより、第1部材1および硬化接着層3を少なくとも有する物品10が得られる。なお、図20(c)中、Pは、第1接着層24および第1接着剤組成物22の接触により硬化した領域(硬化領域)を示し、Qは、第1接着剤組成物22および第2接着層26の接触により硬化した領域(硬化領域)を示す。
第2接着シートの貼合方法は、上述の物品の製造方法の第5実施形態の第1接着シートの貼合方法と同様とすることができる。
第2接着シートは、予め第2接着層の一方の面(第1部材側の面)に、他の部材が配置されていてもよく、第2接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。第1接着層と第1接着剤組成物と第2接着層とが接触硬化することで、他の部材を硬化接着層中に包含することが可能となるからである。例えば図20(a)に示すように、第2接着層26中に他の部材5が含浸されている第2接着シート13を用いる場合には、図20(c)に示すように、硬化接着層3中に他の部材5が包含されている物品10を得ることができる。また、第2接着層は第1接着剤組成物と接触するまでは硬化反応が進まないことから、例えば第2接着層中に他の部材が含浸された第2接着シートや、第2接着層の一方の面に他の部材が配置された第2接着シートは、準備工程前まで長期間保管することができ、第1部材に貼り合せるタイミングに応じて、第2接着シートを使用することができる。
図20に示す例においては、第1接着層24中に他の部材4が含浸され、第2接着層26中に他の部材5が含浸されているが、第1接着層および第2接着層の一方の接着層中に他の部材が含浸されていてもよく、両方の接着層中に他の部材が含浸されていてもよい。
2.貼合工程
物品の製造方法の第8実施形態における貼合工程は、上記多層接着シートの上記第1接着層の他方の面に、第1部材を貼り合せる工程である。貼合工程は、上述の物品の製造方法の第4実施形態の第1部材貼合工程において、多層接着シートの第1接着層の他方の面に、第2部材ではなく、第1部材を貼り合せること以外は、同様とすることができる。
3.その他
本実施形態の製造方法においては、第1接着剤組成物および第1接着層の少なくとも一方が、顔料を含んでいてもよい。また、準備工程にて第2接着シートも用いる場合には、第1接着剤組成物、第1接着層および第2接着層の少なくとも1つが、顔料を含んでいてもよい。その理由については、上記物品の製造方法の第5実施形態に述べた理由と同様である。
I.用途
物品の製造方法は、様々な分野の物品の製造方法に用いることができ、その用途は限定されないが、中でも、加熱や光照射が困難な物品の製造方法として用いることができる。具体的には、物品の製造方法は、建築物品、インフラ(インフラストラクチャー)構造物、自動車、電子部品に適用することができる。
1.建築物品
建築物品の製造方法には、第1実施形態から第4実施形態までのいずれかの物品の製造方法を用いることができる。
建築物品としては、例えば、家屋、ビル、建物、塔等の一般に建築業界で施工される建築構造物、これらに用いられる複合建材等が挙げられる。
第1部材および第2部材は、建築物品を構成する建材であり、その種類に応じて適宜選択される。上記建材は被着面を有すれば、その形態は特に限定されない。
上記建材は、例えば、無機材料、有機材料、またはこれらを組み合わせた複合材料、積層材料から構成されていてもよい。第1部材および第2部材の材質は、同一であってもよく異なってもよく、使用環境や用途等に応じて、適宜選択して組み合わせることができる。
有機材料で形成された有機建材としては、例えば、木質板、有機物板等が挙げられる。木質板としては、例えば杉、檜、松、ラワン、チーク等の樹木で構成される木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。また、無機材料で形成された無機建材としては、例えば、スレート板やケイカル板、石膏ボード、レンガ、コンクリート、セメントモルタル、金属材料、セラミック材料等が用いられる。
上記建材としては、建築施工において公知のものが挙げられる、具体的には、既存の建築構造物の柱、梁、天井、壁、床などの躯体、新たに建築構造物を施工する際に躯体を構成するのに用いられる床板、壁板、天井板等の建築部材、躯体や建築部材を下地としてその表面に貼り合せて用いる表装材等が挙げられる。表装材としては、例えば、ビニル壁紙、織物壁紙、紙壁紙、無機質壁紙、化粧フィルム、タイル、パネル、化粧板等の壁装材、タイル、リノリウム、フローリングブロック、フローリング、クッションフロアー、フローリングボード等の化粧床材が挙げられる。
第1部材および第2部材の組合せとしては、例えば、一方を表装材とし、他方を建築構造物の躯体とすることができる。具体的には、第1部材および第2部材の一方が壁装材であり、他方が建築構造物の壁であってもよく、一方が化粧床材であり、他方が建築構造物の床であってもよい。また、第1部材および第2部材の一方を建築構造物の躯体とし、他方を別の建築構造物の躯体とすることができる。2種類の躯体間を第1接着剤組成物および第1接着層を介して貼り合せることで、硬化接着層を溶接やボルト固定の代替とすることができる。
2.インフラ構造物
インフラ構造物には、上述の物品の製造方法を用いることができ、中でも第5実施形態から第8実施形態までのいずれかの物品の製造方法を用いることができる。
インフラ構造物としては、例えば、橋梁、橋脚、トンネル、法面、道路舗装、河川管理施設、砂防堰堤、砂防床固工、下水管梁、下水処理場、港湾施設、空港、公営住宅、集合住宅、一般住宅、都市公園、官庁施設、海岸堤防、航路標識、道路標識、信号機、架線、送信設備、送電設備等が挙げられる。
例えば、第2部材を貼り付けることにより第1部材が補修または補強されたインフラ構造物とすることができる。また、第2部材を用いず、第1接着シートが有する第1接着層に補修または補強部材(以下、補修・補強部材と略する。)が含まれている、または、第1接着層表面に補修・補強部材が配置されていることで、補修・補強部材を内包した硬化接着層により、第1部材が補修または補強されたインフラ構造物とすることができる。また、例えば、インフラ構造物である第1部材に、第2部材としてセンサ装置を取り付けることができる。また、第2部材を用いず、第1接着シートが有する第1接着層にセンサ装置が含まれている、または、第1接着層表面にセンサ装置が配置されていることで、センサ装置を内包した硬化接着層を、インフラ構造物である第1部材に取り付けることができる。
第1部材および第2部材は、インフラ用部材であればよく、被着面を有していれば、その形態は特に限定されない。インフラ用部材としては、例えば、補修または補強前のインフラ構造物あるいはセンサ装置の取付前のインフラ構造物(以下、対象インフラ構造物)や、補修・補強部材、センサ装置等が挙げられる。インフラ構造物の製造方法においては、インフラ用部材である第1部材および第2部材のうち、一方は対象インフラ構造物であり、対象インフラ構造物は、固定されていてもよい。
補修・補強部材としては、従来公知の部材を用いることができ、例えば、第1接着層中に含浸可能な部材が挙げられる。具体的には、補強用途では、アラミド繊維、炭素繊維、ビニロン繊維、PET繊維等を挙げることができる。また、機能を付与できる補修用途では、広告用看板、塗装フィルム、防水シート、吸水シート、耐紫外線シート、保水シート、着色シート等を挙げることができる。なお、補強には、ヒビを隠したり、凹凸を消したりする補修を含み、さらに強度向上、保水、表面保護、加飾等の機能を付与するものも含む。
センサ装置は、インフラ用部材に貼り付けて、インフラ用部材の状態変化を検知するものである。センサ装置としては、例えばセンサ部と、RFタグとを備えるものが挙げられる。センサ部には、例えば慣性力(加速度、角速度)、歪み、音響波、超音波、電磁波等の物理量を検知することができるものが用いられる。センサ部としては、貼り付けるインフラ用部材の種類や材質に応じて従来公知のセンサ部を使用することができ、例えば、加速度センサ、角速度センサ、音響センサ、表面弾性波センサ、超音波センサ、歪みセンサ、GPS(グローバルポジションシステム)センサ、距離センサ(測距センサ)等を用いることができる。具体的には、センサ部は、インフラ構造物の振動、剥落、ひび割れ、位置ずれ、傾き、歪み等の変化を検知することができる。例えば、特開2016−194441号公報に開示されるセンサ装置を使用することができる。
また、センサ装置は、例えばコンクリート製のインフラ用部材に貼り付けて、その表面の状態変化を検知するものであってもよい。例えばコンクリート表面のクラックの発生やその成長、コンクリート表面の水分濃度や塩分等のイオン濃度の変化等を検知するものが用いられる。具体的には、導電性線材、光ファイバー、繊維含浸プラスチックフィルム、市販のひび割れ検知センサ(東京測器研究所社製 KZCA−A)等の従来公知のセンサ装置を使用することができる。また、例えば、特開2015−087351号公報に開示されるコンクリート異常検知部材を使用することもできる。
3.自動車
自動車の製造方法には、上述した物品の製造方法の第1実施形態から第4実施形態までのいずれかを用いることができる。
自動車の製造方法においては、第1部材および第2部材を自動車用部材として、双方を第1接着剤組成物および第1接着層を介して貼り合わせることができる。
第1部材および第2部材は、自動車用部材であればよく、被着面を有していれば、その形態は特に限定されない。自動車用部材とは、自動車車体および上記自動車車体に取り付けられる自動車部品をいい、内装材、外装材の何れであってもよい。自動車部品は、一般に自動車に用いられる部品であれば特に限定されず、例えば、エンブレムなどの装飾部材、ピラー等の構造部材等が挙げられる。
上記自動車用部材の材料は、自動車の部位に応じて適宜選択することができ、例えば、無機材料、金属材料、セラミック材料、有機材料、またはこれらを組み合わせた複合材料や積層材料等が挙げられる。第1部材および第2部材の材質は、同一であってもよく異なってもよく、適宜選択して組み合わせることができる。第1部材および第2部材の材質の組合せとしては、例えば、ABSやCFRPなどの有機材料と金属類との組合せ、アルミとチタンとの組合せ等の異種金属の組合せ等が挙げられる。
4.電子部品
電子部品には、上述した物品の製造方法の第1実施形態から第4実施形態までのいずれかを用いることができる。
電子部品において、上述の物品の製造方法は、例えば、MEMS、チップ等の電子部品の固定や、基板同士の接合等に適用することができる。また、接着剤セットは、ダイボンディングフィルムとして利用することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示して、本開示をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
下記組成の接着剤組成物Aを調製した。
・液状ビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量:190g/eq.、分子量:380、三菱化学株式会社製、商品名:jER828) 85質量部
・固形ビスフェノールA型エポキシ化合物(分子量:5000、三菱化学株式会社製、商品名:jER1009) 15質量部
・アクリル重合体(極性基付与メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートトリブロック共重合体、アルケマ社製、商品名:M22N) 10質量部
・酢酸エチル(DICグラフィックス社製) 43質量部
また、下記組成の接着剤組成物Bを調製した。
・2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成社製) 100質量部
・アクリル重合体(極性基付与メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートトリブロック共重合体、アルケマ社製、商品名:M22N) 80質量部
・酢酸エチル(DICグラフィックス社製) 187質量部
片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム(膜厚:38μm、東セロ株式会社製、商品名:SP−PET−03)を用い、その剥離処理面に、上記接着剤組成物Aを塗工後の厚さが50μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて、第1接着層を形成した。これにより、第1接着シートを得た。
次に、コンクリート板に、上記接着剤組成物Bを塗布量が200g/m2になるよう塗布し、30分間乾燥させた。その後、コンクリート板の接着剤組成物Bの塗布面に、第1接着シートの第1接着層の面を貼り付けた。続いで、第1接着シートのセパレータを剥離して、第1接着層の面を露出させ、その面にひび割れセンサを貼り合わせた。現場で要した時間は、接着剤組成物Bの乾燥時間(30分間)に加えて3分間程度であった。硬化後の接着剤の物性に特に問題はなかった。
[比較例1]
まず、コンクリート板に、2液型プライマー(コニシ社製、E810LW)を塗布量が200g/m2になるよう塗布し、1日養生した。その後、2液混合型エポキシ系接着剤(コニシ社製、クイック5)を準備し、主剤と硬化剤とを精密天秤にて軽量し、所定の割合となるよう主剤と硬化剤と混合し、1〜2分間十分に撹拌した。次いで、混合した2液混合型エポキシ系接着剤を、刷毛を用いてプライマー処理済みのコンクリート板に塗布した後、ひび割れセンサを貼り合わせた。現場で要した時間は、プライマー養生の時間(1日間)に加えて15分間程度がかかった。また、接着剤が液状であるため、センサが動かないように接着剤が硬化するまでガムテープ等で仮固定する必要があった。
[比較例2]
片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム(膜厚:38μm、東セロ株式会社製、商品名:SP−PET−03)を用い、その剥離処理面に、上記接着剤組成物Aを塗工後の厚さが50μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥オーブンにて80℃で2分間乾燥させて、第1接着層を形成した。これにより、第1接着シートを得た。
また、上記接着剤組成物Bを用いて、第1接着シートの作製と同様にして、第2接着シートを作製した。
コンクリート板に、第1接着シートの第1接着層の面を貼り付けた後、第1接着シートのセパレータを剥離して第1接着層の面を露出させ、その面に第2接着シートの第2接着層を貼り合わせた。その後、第2接着シートのセパレータを剥離して第2接着層の面を露出させ、その面にひび割れセンサを貼り付けた。しかし、コンクリート板表面の凹凸に対して第1接着層がしっかりと密着しておらず、センサが剥がれてしまった。