JP2018177656A - 殺軟体動物剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた殺軟体動物性を備える殺軟体動物剤の提供。【解決手段】バチルス・チューリンゲンシスTK−E6(FERM P−17981菌株)が産生するCryタンパク質の一種であるパラスポリン2Ab1(Cry46Ab1)及び/又はそのアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、殺軟体動物作用を有するタンパク質。【選択図】なし

Description

本発明は、殺軟体動物剤に関する。
スクミリンゴガイやチャコウラナメクジ、カワヒバリガイなどの軟体動物は、農業や水系環境に悪影響を及ぼすため、効果的な駆除法が求められる。
スクミリンゴガイは1980年代に食用目的で日本に持ち込まれ、その後、養殖場などから逃げ出したものや放棄されたものなどが野生化してイネを加害し始めた。さらに、この貝からヒトにも寄生する広東住血線虫が見つかり、農作物ばかりでなく衛生環境にも害を与える生物として、駆除が望まれるようになって来ている。
スクミリンゴガイの水田における発生面積は、全国で統計が取られ始めた1993年には4万3千ヘクタールであったが、2012年には11万ヘクタールになり、増加傾向は止まっていない。また、イネの被害面積は、最後に統計が取られた2001年では九州地方を中心に1万ヘクタールにおよんでいる(発生面積は6万8千ヘクタール)。2001年以降の被害データは取られていないが、生息域が年々広がっていることから被害面積も増加していると思われる。地球温暖化や休耕田の増加などスクミリンゴガイの繁殖に都合のよい条件が増え、被害も増加することが予想されるため、その効果的な駆除法の確立が急がれる。
スクミリンゴガイの駆除には化学農薬であるメタアルデヒド粒剤、IBP粒剤やカルタップ粒剤などが使われているが、溶出や流失を伴うため水中での効果はあまり期待できない。また、合鴨や鯉といった天敵利用は、その管理が難しいためほとんど広まっていない。
チャコウラナメクジは1950年代に米軍物資に紛れ込んで侵入したと考えられている。やすり状の歯舌で葉や茎を削り取るように食害する。アブラナ科作物や家庭菜園での被害が大きい。チャコウラナメクジの防除は、誘引トラップによる捕殺やメタアルデヒド剤などを用いた誘殺が行われるが、効果はそれほど高くない。
カワヒバリガイは輸入シジミ類に混入し、中国や朝鮮半島から運ばれたと考えられている。農業水利施設の取水口や導水管に足糸で大量に付着し、詰まらせるなどの被害が報告されている。本種に対する有効な駆除法は、まだ無い。
以上のとおり、軟体動物は農業や水系環境に悪影響を及ぼすが、その効果的な駆除法は確立されていなかった。
次に、後述するとおり、本発明の殺軟体動物剤は、Cry46Ab1(あるいはそのアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、殺軟体動物作用を有するタンパク質)を有効成分とするものである。
そこで、このCry46Ab1に関連する従来の技術水準についても、以下に説明しておく。
まず、本発明者は、双翅目昆虫特異的な殺虫活性を有する細菌として、双翅目昆虫特異的な殺虫活性を有するバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis。以下、「Bt」と略記することがある)TK−E6(FERM P−17981菌株)を提案した(特許文献1参照。)。
Btは、自然界では土壌や植物葉上などに広く生息しているグラム陽性の好気性桿菌である。近縁種には、一般的なモデル生物として扱われるバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis。以下、「B.subtilis」と略記することがある)、食中毒菌として知られているバチルス・セレウス(Bacillus cereus)、ボウフラに殺虫性を示すバチルス・スフェリカス(Bacillus sphaericus)などがいる。
Btは胞子形成期に、菌体内に胞子とともにクリスタルと呼ばれるタンパク質の結晶顆粒(本明細書において「顆粒」とは「微小粒状物」を指す。以下、同様。)を形成する。クリスタルの構成タンパク質は、Cryと呼ばれる。Cryタンパク質には、Cry毒素とCyt毒素、及びパラスポリン(parasporin)の3つがある。
Cyt毒素は、約30kDaのタンパク質で脊椎動物、無脊椎動物を問わず、非特異的な活性をもっている。
Cry毒素は、130kDaタイプのものと70kDaタイプのものがあり、高い選択毒性をもち殺虫性を示すものが見つかっている。Cry毒素の種類によって対象とする昆虫目が異なっている。殺虫活性の仕組みの詳しい作用機構は解明されていないが、Bt内で産出されたCry毒素が、感受性昆虫に摂取された後、腸内のアルカリ性消化液によりクリスタルが部分分解され活性型毒素となり、毒素は中腸上皮細胞上にある受容体と結合、オリゴマー化され細胞膜に孔が形成され、消化管細胞に浸透圧の錯乱がおこり、細胞を破壊する。その結果、腸における栄養の吸収が困難となり、昆虫は衰弱して餓死するとされている。
パラスポリンは、Bt及び近縁の細菌が産生するCryタンパク質のうち、溶血活性を持たないが、ガン細胞に選択的な細胞損傷活性を示すものと定義され、もともとは殺虫性を示さないBtから発見された(非特許文献2、非特許文献3など参照。)。
パラスポリンは、アミノ酸配列の相同性により1〜6のグループがあり、それぞれ、Parasporin1(=Cry31A),Parasporin2(=Cry46A),Parasporin3(=Cry41A),Parasporin4(=Cry45A),Parasporin5(=Cry64A),Parasporin6(=Cry63A)と命名されている。
そして、上述したBt.TK−E6が、Parasporin2Ab1(=Cry46Ab1)をコードする遺伝子(cry46Ab1)を有すること、そして、Cry46Ab1は、プロテイナーゼKにより約30kDaの活性型となり、MOLT−4細胞に対して強い細胞損傷能を示すことが報告されている(非特許文献4参照。)。
しかし、現在まで、パラスポリンの殺軟体動物活性に関する報告はなく、Parasporin2Ab1とアミノ酸配列の相同性が高いParasporin2Aa1に関する報告においても、軟体動物に対する致死性に関する記述は見当たらない(非特許文献5など参照。)。
なお、本発明者は、Cry46Ab1が双翅目昆虫殺虫活性を有することを発見し、用途発明として特許出願している(特願2016−216238)。
特許第4753108号公報
Bernardi D, Salmeron E, Horikoshi RJ, Bernardi O, Dourado PM, Carvalho RA, et al. (2015) "Cross-Resistance between Cry1 Proteins in Fall Armyworm (Spodoptera frugiperda) May Affect the Durability of Current Pyramided Bt Maize Hybrids in Brazil", PLoS ONE 10(10): e0140130. doi:10.1371/journal.pone.0140130 Mizuki, E. et al. "Parasporin, a Human Leukemic Cell-Recognizing Parasporal Protein of Bacillus thuringiensis", Clin. Diagn. Lab. Immunol., 7, 625-634 (2000) Ito, A. et al. " A Bacillus thuringiensis Crystal Protein with Selective Cytocidal Action to Human Cells", THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY (2004) 279, 21282-21286 Hayakawa, T. et al. "Parasporin-2Ab, a Newly Isolated Cytotoxic Crystal Protein from Bacillus thuringiensis", CURRENT MICROBIOLOGY Vol. 55 (2007), pp. 278-283 Kitada, S. et al. " Cytocidal Actions of Parasporin-2, an Anti-tumor Crystal Toxin from Bacillus thuringiensis ", THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY (2006) 281, 26350-26360
上記に見るように、軟体動物は農業や水系環境に悪影響を及ぼすが、その効果的な駆除法は確立されていない。
そこで、本発明は、優れた殺軟体動物性を備える殺軟体動物剤を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を備える。
すなわち、本発明に係る殺軟体動物剤は、下記(a)及び/又は下記(b)のタンパク質を有効成分とする。
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号1のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、殺軟体動物作用を有するタンパク質
本発明に係る殺軟体動物剤は強い殺軟体動物性を発揮する。
また、本発明に係る殺軟体動物剤の有効成分であるタンパク質は、Bt菌体内で不溶性のタンパク質顆粒として生産させることができる。そのため、水田等に散布しても溶解せずに、拡散し難い顆粒として留まるので、溶解や流出による希釈や損失がないという利点もある。また、顆粒であるために軟体動物が餌として摂取しやすい。
本発明に係る殺軟体動物剤の有効成分であるタンパク質は、従来のBt菌における3ドメイン型のCry毒素とは構造が異なり、Cryファミリー間の保存配列が見られるblock領域をもたず、アミノ酸配列の類似性も低い。
従って、構造の相違により、殺活性機構も従来と異なると推測される。
なお、本発明に係る殺軟体動物剤の有効成分であるタンパク質は、Cry46Ab1(=Paraporin2Ab1)であり、ガン細胞に特異的な細胞損傷作用を示すが、生物に対する殺活性はないと思われていたものであり、また、Bt.TK−E6が生産するクリスタル中のタンパク質には含まれていないため、その強い殺軟体動物性を発見することは極めて困難であったといえる。
実施例1で使用したプラスミド(pHY300PLK)の構造を示す図である。 実施例1で使用したプラスミド(pPcyt1A)の構造を示す図である。 実施例1、比較例1,2のそれぞれについて、本培養前と本培養24時間後の培養液中の菌体の様子を位相差顕微鏡で観察した結果を示す写真である。 実施例1、比較例1,2のそれぞれについて、SDS−PAGEの結果を示す写真である。 実施例1、比較例1,2のそれぞれについて、ウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。
以下、本発明に係る殺軟体動物剤について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明に係る殺軟体動物剤は、下記(a)及び/又は下記(b)のタンパク質(以下、「本発明に係る殺軟体動物活性タンパク質」ということがある)を有効成分とする。
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質(Cry46Ab1)
(b)配列番号1のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、殺軟体動物作用を有するタンパク質
本発明に係る殺軟体動物活性タンパク質は、当該タンパク質をコードする遺伝子を用い、周知の遺伝子組換え技術により製造することができる。
具体的には、例えば、以下の工程により製造することができる。
(1)本発明に係る殺軟体動物活性タンパク質をコードする遺伝子を調製する。
(2)発現ベクターに上記遺伝子を導入したプラスミドを構築する。
(3)宿主細胞を上記プラスミドで形質転換して組換え宿主細胞を形成する。
(4)上記組換え宿主細胞を培養して本発明に係る殺軟体動物活性タンパク質を産生させる。
(5)上記殺軟体動物活性タンパク質を回収・確認する。
まず、遺伝子の調製(上記(1))について説明する。
上述のとおり、Bt.TK−E6は、cry46Ab1遺伝子を有している。なお、cry46Ab1の塩基配列は、近畿大学生物理工学部分子生化学研究室内で決定された(GenBank:AB136914)(配列番号2)。
そこで、プライマーを用いて、cry46Ab1又はその変異遺伝子のゲノムDNAを鋳型DNAとし、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことにより、標的DNA断片(本発明に係る殺軟体動物活性タンパク質をコードする遺伝子)を増幅させることができる。
プライマーは、標的DNA断片の塩基配列に基づいて適宜設計すればよい。
なお、cry46Ab1の変異遺伝子は、従来公知の手法によりcry46Ab1に変異を導入することで得ることができる。
例えば、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutanTM−Super Express Km(TAKARA社製)やKOD−Plus−Mutagenesis Kit(TOYOBO社製))などを用いて変異導入を行うことができる。
次に、発現ベクターへの遺伝子の導入(上記(2))について説明する。
本発明に係る殺軟体動物活性タンパク質をコードする遺伝子を導入する発現ベクターは、少なくとも、プロモーター領域と、その下流に配置されるターミネーター領域を備える。
プロモーター領域は、例えば、宿主が大腸菌の場合、trpプロモーター、lacプロモーター等、宿主が枯草菌の場合、SPOプロモーター、aprEプロモーター等が挙げられる。
ターミネーター領域は、例えば、大腸菌の場合、ρ因子非依存的転写終結ではG−C塩基対に富んだ逆位反復配列と、それに続くTの連続配列から成り、逆位反復配列におけるステム−ループ構造の形成によりRNAポリメラーゼがDNA鎖から外れて転写を終わらせる。ρ因子依存的転写終結ではステム−ループ構造があまり大きくないので、ρ因子がRNAポリメラーゼを外す手助けをして転写を終わらせる。
プロモーター領域とターミネーター領域とは、制限酵素認識部位を介して連結されている。この連結箇所を制限酵素で切断し、その間に、本発明に係る殺軟体動物活性タンパク質をコードする遺伝子を導入することで、目的のプラスミドを構築することができる。
プロモーター領域には、プロモーターの近傍にリボソーム結合部位(SD配列)が含まれる。
発現ベクターには、プロモーター領域とターミネーター領域の他、形質転換体選択のためのマーカー遺伝子が含まれていることが好ましい。
本発明者は、cyt1Aのプロモーター領域とcry4Aのターミネーター領域をSphI部位を介して連結したBt細胞用発現ベクターpPcyt1Aについて報告しているが(武部聡ら、B.thuringiensis細胞用発現ベクターpPcyt1Aの構築、近畿大学先端技術総合研究所紀要(10),pp.29−36,2005年)、この発現ベクターは、本発明において好適に用いることができる。
次に、宿主細胞の形質転換(上記(3))について説明する。
宿主細胞としては、上記プラスミドにより形質転換され、目的のタンパク質を発現させることができるものであれば、特に限定されない。
例えば、本発明の技術分野において通常使用される細菌(大腸菌、枯草菌、バチルス・チューリンゲンシス等)又はその変異株(例えば、殺軟体動物活性タンパク質を生産しないバチルス・チューリンゲンシス株)などが挙げられる。
上記プラスミドの宿主細胞への導入は、例えば、大腸菌の場合、塩化カルシウム法や電気穿孔法等、枯草菌の場合、電気穿孔法やプロファージ等により行うことができる。
特に、上記Bt細胞用発現ベクターpPcyt1Aに殺軟体動物活性タンパク質をコードする遺伝子を導入し、クリスタルを生産しないBt細胞に導入することで、効率良く目的の殺軟体動物活性タンパク質を発現させることができる。
上記組換え宿主細胞を培養することで、本発明に係る殺軟体動物活性タンパク質を産生させることができる(上記(4))。
例えば、抗生物質テトラサイクリン20μg/mLを含む胞子形成培地(例えば、SSM培地)に上記組換え宿主細胞を植菌し、30℃において振盪培養すると24時間後以降に菌体内に胞子とともに殺軟体動物活性タンパク質顆粒が形成される。
次いで、細胞培養により産生したタンパク質を回収し、検出・確認する(上記(5))。
タンパク質の回収は、従来公知の方法、例えば、細胞培養後、破砕し、公知の分離方法により分離することによって行うことができる。
分離方法としては、例えば、遠心分離、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどが挙げられる。分離操作上必要であれば、タンパク質を可溶化しても良い。本発明に係る殺軟体動物活性タンパク質は水に不溶であるが、アルカリ条件下では可溶化し、水溶液になる。
また、タンパク質の検出・確認の方法としては、例えば、SDS−PAGE、ウエスタンブロッティングなどが挙げられる。
以下、実施例を用いて、本発明について詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実験材料〕
<菌株>
以下の菌株を用いた。
(1)Bt.TK−E6
近畿大学生物理工学部分子生化学研究室にて単離された菌株である(受託番号FERM P−17981)。
(2)バチルス・チューリンゲンシス亜種クルスターキー(Bacillus thuringiensis subsp.kurstaki) CRY(−)B
クリスタル非生産株であり、Bacillus Genetic Stock Center(BGSC)より入手した菌株である(BGSCNo.4D11)。
以下、「Btk CRY(−)B」と略記することがある。
<プラスミド>
以下のプラスミドを用いた。
(1)pHY300PLKベクター
大腸菌(Escherichia coli。以下、「E.coli」と略記することがある)とB.subtilisの両方へDNA形質導入できるタカラバイオ社のシャトルベクターである(図1参照。)。B.subtilisと同様にB.thuringiensisへのDNA形質導入も可能である。
E.coliのプラスミドpACYC177とストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)のプラスミドpAMα1由来のDNAより構築されている。薬剤耐性マーカーはアンピシリン耐性遺伝子とテトラサイクリン耐性遺伝子であり、E.coli中では両者が発現するが、B.subtilis中ではテトラサイクリン耐性遺伝子のみが発現する。
BalI、BamHI、BanI、BglI、BglII、BstPI、EcoRI、EcoRV、HindIII、HpaI、SalI、SmaI、PvuI、XbaIの制限酵素切断部位を1ヵ所ずつ持っている。
(2)pPcyt1Aベクター
pHY300PLKのEcoRI−XbaI部位にBti由来のcyt1Aプロモーター領域とcry4Aターミネーター領域を制限酵素SphI認識部位でつないだ断片を挿入した、Bt細胞用発現ベクターである(図2参照。)。
cyt1Aプロモーター領域は配列番号3の塩基配列からなり、cry4Aターミネーター領域は配列番号4の塩基配列からなる。
上記プロモーターはσ35、σ28の2つの認識配列を持っており、転写活性が高くなる時期の異なる2つのプロモーターの働きにより、長い間mRNAの細胞内濃度を高く維持できると考えられる。
また、上記ターミネーターは、どの読み枠においても終始コドンが入ることを確認し、本来のcry4Aの終始コドンより上流から、ステムループ構造の下流までを用いた。
上記プロモーター、ターミネーター部位は、公知の手法に従い、PCRにより調製し、制限酵素消化後にpHY300PLKにクローニングした。
SphI部位に外来遺伝子のORFを挿入することで転写できる。cyt1AのSD配列により、SphI部位内にあるATGから翻訳される。
これにより、Bt細胞内で胞子形成期にタンパク質を大量に発現させることができる。
<試薬>
用いた試薬を下表1に示す。
<培地>
以下に示す培地を用いた。
(1)LB培地(Luria bertani medium)
Bacto(商標) トリプトン 10.0g
Bacto(商標) 酵母エキス 5.0g
NaCl 10.0g
寒天 15.0g
にsH2O(滅菌水。以下、同様。)を1000mLとなるまで加え、オートクレーブした。
ただし、LB液体培地作製の場合は寒天を加えない。
<アガロースゲル電気泳動>
(1)1%アガロースゲル
アガロース 0.25g
0.5×TBE緩衝液 25mL
からなる。
(2)0.5×TBE緩衝液(泳動用緩衝液)
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 5.4g
ホウ酸 2.75g
エチレンジアミン4酢酸・2Na 0.375g
にsH2Oを加えて1000mLにした。
(2)SSM培地(Schaeffer's sporulation medium)
ニュートリエントブロス(Nutrient Broth) 8.0g
MgSO4・7H2O 0.25g
KCl 1.0g
にH2Oを1000mLとなるまで加え、オートクレーブした。
その後、
1mM FeSO4 1.0mL
10mM MnCl2 1.0mL
1mM CaCl2 1.0mL
を加えた(これらの試薬はいずれもフィルター滅菌済み)。
<抗生物質>
テトラサイクリンストック20mg/mLを用いた。溶媒はエタノールであり、−30℃で保存した。
<可溶化緩衝液>
(1)50mM炭酸バッファー
30mMのNa2CO3及び20mMのNaHCO3からなる(pH10.5)。
<SDS−PAGE>
(1)12%分離ゲル
30%アクリルアミド/ビス混合液 4.0mL
sH2O 3.4mL
WIDE RANGEゲル調製用緩衝液 2.5mL
10%ペルオキソ二硫酸アンモニウム 0.1mL
テトラメチルエチレンジアミン 0.006mL
からなる。
(2)3%濃縮ゲル
30%アクリルアミド/ビス混合液 0.2mL
sH2O 1.28mL
WIDE RANGEゲル調製用緩衝液 0.5mL
10%ペルオキソ二硫酸アンモニウム 0.02mL
テトラメチルエチレンジアミン 0.002mL
からなる。
(3)グリシンバッファー
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 3.0g
グリシン 14.4g
SDS 1.0g
にsH2Oを1000mLとなるまで加えて調製した。
(4)2×サンプルバッファー
1M トリス塩酸緩衝液(pH6.8) 0.91mL
SDS 0.4g
グリセロール 2.0mL
2−メルカプトエタノール 1.2mL
ブロモフェノールブルー 1mg
にsH2Oを1000mLとなるまで加えて調製した。
<ウエスタンブロット>
(1)一次抗体
Cry46Ab1のアミノ酸配列から19アミノ酸残基(配列番号1の第195〜213番目)を化学合成したペプチドをウサギに免役して作製したポリクローナル抗体(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社)
(2)二次抗体
抗ウサギIgG(H+L)ヤギポリクローナル抗体(HRP標識)(フナコシ)を用いた。
(3)5×転写バッファー
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 121g
グリシン 570g
SDS 20g
にsH2Oを4000mLとなるまで加えて調製した。
(4)0.5×転写バッファー
5×転写バッファー 90mL
メタノール 180mL
sH2O 630mL
からなる。
(5)ブロッキングバッファー
10×ブロッキングバッファー 4.0mL
10×マレイン酸 4.0mL
sH2O 32mL
からなる。
(6)洗浄バッファー
10×洗浄バッファー 20mL
sH2O 180mL
からなる。
(7)検出バッファー
10×検出バッファー 4.0mL
sH2O 36mL
からなる。
(8)染色液
クマシーブリリアントブルー(CBB)R250を用いた。
(9)脱色液
酢酸 10mL
メタノール 50mL
sH2O 400mL
からなる。
<生物検定の使用生物>
(1)スクミリンゴガイ
和歌山県岩出市郊外の水田において採取した。
(2)チャコウラナメクジ
近畿大学生物理工学部キャンパス内で採取した。
(3)ヒメダカ
市中ペットショップより購入した。
〔実施例1〕
<遺伝子の調製>
(1)cry46Ab1の塩基配列の決定
cry46Ab1の塩基配列は近畿大学生物理工学部研究室で決定された(GenBank:AB136914)。cry46Ab1のORF(915bp、終止コドンを含む)(配列番号2)から推測されるタンパク質は、304アミノ酸残基、33kDaの大きさである。
(2)プライマー設計
cry46Ab1の塩基配列に基づき、次の通り、プライマーを設計した。
センス鎖プライマー:5’−GCATGCAAATGTATTATACTACCCAAGTAACAGG−3’(配列番号5)
アンチセンス鎖プライマー:5’−GCATGCTAATCCAATTGTTTGTTGTATTTGT−3’(配列番号6)
センス鎖プライマーは、cry46Ab1のORFの開始コドン(ATG)を含む26ntの5’側にSphI部位(GCATGC)を付加し、間に2塩基(AA)挿入してフレームを合わせたものである。
また、アンチセンス鎖プライマーは、cry46Ab1のORFの終止コドン(TAA)より上流25ntの相補鎖の5’にSphI部位を付加したものである。
(3)PCR
Bt.TK−E6のゲノム画分(巨大プラスミドを含む)を鋳型とし、上記プライマーを用いてTaKaRa ExTaq(タカラバイオ社製)で30サイクル行った。
反応液は、
10×ExTaqバッファー 5μl
dNTP (250μM each) 4μl
2.0μM センス鎖プライマー 5μl
2.0μM アンチセンス鎖プライマー 5μl
50μg/mL 鋳型DNA 2μl
ExTaq(5U/μl) 0.25μl
にH2Oを50μlとなるまで加えて調製した。
<上記遺伝子の発現ベクターへの導入>
PCR産物を大腸菌用TAクローニングベクター「pGEM−T easy」(プロメガ株式会社製)に連結し、大腸菌DH5αに導入した。この菌を培養して調製したプラスミドpGEM−T easy−cry46Ab1におけるcry46Ab1のORFの塩基配列を調べ、変異等がないことを確認した。このプラスミドを制限酵素SphIで消化した後、アガロースゲル電気泳動(1%ゲル濃度、0.5×TBE緩衝液(pH8.0))により、cry46Ab1のORF断片を分離、回収して挿入断片とした。ベクターpPcyt1AはSphIで消化した後、脱リン酸酵素Alkaline Phosphatase(Shrimp)(SAP)(タカラ社製)により、5’末端の脱リン酸処理を行った。このベクターにcry46Ab1ORFの挿入断片をDNA Ligation Kit <Mighty Mix>(タカラ社製)を用いて連結し、大腸菌DH5αに導入した。
組換え体の中からcry46Ab1ORFが正方向(ベクターのプロモーターの向きとORFの転写方向が一致)に挿入されたクローンを選抜し、その組換えプラスミドをpPcyt1A−cry46Ab1とした。
<組換え宿主細胞の形成>
pPcyt1A−cry46Ab1をもつ大腸菌DH5αをLB培地(75μg/mLアンピシリンを含む)3mLに植菌し、37℃で一晩振盪培養した。この培養液からpPcyt1A−cry46Ab1を抽出し、電気穿孔法によりクリスタル非生産株のBtk CRY(−)B(BGSC No.4D11)に導入した。テトラサイクリン耐性を獲得した菌をLB培地(20μg/mLテトラサイクリンを含む)で一晩培養し、培養液にグリセロールを15%になるように添加したものをグリセロールストックとして−80℃に保存した。
<菌体の培養によるタンパク質の産生>
上記pPcyt1A−cry46Ab1/Btk CRY(−)Bのグリセロールストック(−80℃)をLB寒天培地(20μg/mLテトラサイクリンを含む)に画線し、30℃で24時間培養した。
次いで、以下の通り、前培養を行った。
すなわち、形成されたシングルコロニーを、LB培地(20μg/mLテトラサイクリンを含む)5mL(L字管)に植菌し、30℃で50rpml6時間モノード振盪培養した。
次いで、以下の通り、本培養を行った。
すなわち、1L容スクリューフラスコ(ひだ付きフラスコ)にSSM培地100mL(20μg/mLテトラサイクリンを含む)を作製し、前培養液全量(5mL)を加えて400rpmで30℃、24時間振盪培養した。菌体が胞子を形成しているのを検鏡で確認した後、ファルコンチューブ(50mL)2本に分注し、集菌(3,000rpm,4℃,10分)した。
<タンパク質の回収及び試料液の作製>
上記集菌後、菌体を1mMペファブロックSC/sH2O10mLに懸濁し、ソニケーターSONIFER450D(BRANSON社製)を用いて超音波破砕した。菌体が破砕されていることを検鏡で確認した後、遠心分離(10,000rpm,4℃,10分)を行い、沈殿(不溶タンパク質と胞子を含む)を得た。これを1mMペファブロックSCを含むWashI(2%Triton X−100、0.5M NaCl)10mLに完全に懸濁した後、遠心分離(10,000rpm,4℃,10分)で回収する洗浄を3回繰り返し、さらに、1mMペファブロックSCを含むWashII(0.5M NaCl)10mLに完全に懸濁した後、遠心分離(10,000rpm,4℃,10分)で回収する洗浄を3回繰り返した。
その後、沈殿を1mMペファブロックSC/sH2O1mLに懸濁したものを試料液として、−30℃で冷凍保存した。
<試料液の可溶化及び濃度測定>
目的のCry46Ab1は水には不溶であるが、アルカリ条件下では可溶化し、水溶液になる。
そこで、上記試料液50μlに50mM炭酸バッファー(pH10.5)150μlを加え、37℃で1時間保温した。その後、遠心分離(室温,15,000rpml0分)し、上清(可溶化したタンパク質を含む)を新しいチューブに移した。
20mg/mLのBSA標準溶液を、50mM炭酸バッファー(pH10.5)を用いて希釈し、0,50,100,200,300,400,500μg/mLのBSA標準溶液を作製した。それぞれ20μlをエッベンチューブに取り、Coomassie Protein Assay Reagentを1mL加えてよく混合し、波長595nmにおける吸光度を測定して検量線を作製した。
可溶化したタンパク質を4μl取り、50mM炭酸バッファーを16μl加え、さらに、Coomassie Protein Assay Reagentを1mL加えてよく混合した。波長595nmにおける吸光度を測定し、BSAの検量線から試料液の可溶化タンパク質濃度を求めた。
<タンパク質の検出及び確認>
pPcyt1A−cry46Ab1/Btk CRY(−)Bが胞子形成期に菌体内につくる不溶性タンパク質画分にCry46Ab1が含まれることを、SDS−PAGE及び抗Cry46Ab1抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、以下の通り検出・確認した。
(1)SDS−PAGE
(a)電気泳動用ポリアクリルアミドゲルの作成
ATTO社製ラピダス・ミニスラブ電気泳動装置(AE−6500)を用い12%分離ゲル、3%濃縮ゲルのポリアクリルアミドゲルを作製した。
(b)サンプル調製
Cry46Ab1試料液を炭酸バッファーによるアルカリ可溶化処理後、処理液全体(遠心分離前液)、遠心分離(室温,15,000rpml0分)後の上清、沈殿の各サンプルに分けた。
各サンプルに含まれるタンパク質量が5μgになるように計算し、50mM炭酸バッファーを加えて液全量を10μlにした。各サンプルに2×サンプルバッファーを10μl加え、5分間煮沸した後、全量をSDS−PAGEに用いた。
(2)ウエスタンブロットによるCry46Ab1の検出
(a)一次抗体の作製
(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社の「シンプル抗体作製サービス」)
Cry46Ab1のアミノ酸配列のうちN−末端から195番目のアルギニンから213番目のアラニンまで(配列番号1の第195〜213番目)の19アミノ酸残基を化学合成し、ウサギに免疫した。1週間ごとに3回抗原を投与し、最終投与から2週間後に採血した。
(b)メンブレン前処理
PVDF(ポリフッ化ビニリデン)メンブレンをメタノールに10分間浸し、親水化した。
(c)メンブレンへのタンパク質転写
Cry46Ab1試料のSDS−PAGE後、タンパク質のPVDFメンブレンへの転写をミニトランスブロット(登録商標)セル装置(BIO−RAD社製)を用いてウェット式転写で行った。ゲルと同サイズにカットしたメンブレン、ろ紙をゲルとスポンジとともに0.5×転写バッファーに浸し平衡化した。転写装置の陽極側からスポンジ、ろ紙、メンブレン、ゲル、ろ紙、スポンジの順にセットした。45V,100mA,4℃,16時間通電し、転写を行った。転写後のPVDFメンブレンをクマシーブリリアントブルー(CBB)R250に浸し、揺らしながら2分以上染色した。その後、染色液を脱色液30mLに交換し、PVDFメンブレンのバックグラウンド部分が十分に脱色されるまで、3回脱色液を交換して脱色を行った。最後に純水でメンブレンを十分にすすぎ、脱色反応を止めた。このメンブレンを写真に撮り、SDS−PAGE泳動像とした。
(d)ブロッキング
脱色したPVDFメンブレンをハイブリ・バッグ(コスモ・バイオ社製)に入れ、さらにブロッキングバッファー20mLを入れて30分間揺らしながらメンブレンのブロッキングを行った。
(e)一次抗体反応
ブロッキング後、一次抗体20μlをバッグ内のバッファーに加え、30分揺らしながら反応させた。バッグ内の液を除いた後、余剰の一次抗体を除くため洗浄バッファー30mLをバッグ内に加え、10分間揺らして液を捨てる洗浄作業を3回繰り返した。
(f)二次抗体反応
一次抗体反応の洗浄作業終了後、バッグ内にブロッキングバッファー20mLを入れ、二次抗体2μlを加えて30分間揺らしながら反応させた。バッグ内の液を除いた後、余剰の二次抗体を除くため洗浄バッファー30mLをバッグ内に加え、10分間揺らして液を捨てる洗浄作業を3回繰り返した。メンブレンをバッグから取り出して検出バッファー40mLに浸し、10分揺らしながら反応させた。
(g)Cry46Ab1の検出
検出バッファーから取り出したPVDFメンブレン全体にCDP−STAR 200μlをかけ、ハイブリ・バッグに入れて空気を抜いて密閉した。暗所でX線フィルム用カセッテにハイブリ・バッグに密封したPVDFメンブレンとの化学発光用フィルムHyperfilm(GE Healthcare Life Sciences社)を重ねて入れ、10分感光させた。フィルムを取り出して現像液に8分間浸け揺らし現像した。水道水で現像液を洗い流し、定着液に5分間浸けた。フィルムの余白部分の色が抜けたことを確認し、水道水で洗浄した。
<生物検定>
(スクミリンゴガイを用いた検定)
1ウェルに17ml入る6穴プレートにスクミリンゴガイ稚貝(殻長3mm)を10匹ずつ入れイオン交換水500μlを加えた。
試料液をイオン交換水で希釈し、2倍希釈系列を作製した。これを1ウェルあたり500μl加え、計1mlにした。
ネガティブコントロールとして調製サンプルを入れないウェルを用意した。
各ウェルについて、48時間後の致死数を数えた。
(チャコウラナメクジを用いた検定)
試料液をイオン交換水で希釈して2倍希釈系列を作製し、これをナメクジ用飼料に混合し、検体(ナメクジ)に与えた。
毒素液(固体懸濁液)の水分は飼料(粉末)に吸収されるので、用いた液量から毒素量を計算し、毒の強さは半数致死量(Lethal Dose,50%)(LD50)で表記する。
ナメクジ用飼料はテトラフィン(金魚のエサ、Tetra社製)とビール酵母粉末(日本ガーリック株式会社製)を1:1(重量比)で混合し、乳鉢ですりつぶしたものを用いた。
また、ナメクジは貝殻をもたず、体長も一定しないので、アッセイに用いる検体は重さで大きさをそろえた。
アッセイ法の手順は、以下のとおりである。
1.プラスティックカップを必要数量用意する。
2.カップ(約30mL)の底に水で濡らした濾紙を敷く。
3.キャベツを適当な大きさ(一辺3cm程度の四角形)にハサミで切り、濾紙の上に置く。
4.ナメクジ用飼料を極小スプーンで大盛り1杯キャベツの上に置き、真ん中にくぼみをつくる(希釈試料液を入れるため)。
5.くぼみに希釈液を50μL入れる。5分くらい置いておくと、飼料にしみ込む。
6.ナメクジ(体重0.2g)を各アッセイ容器に1匹ずつ入れる。
7.容器にパラフィルムでフタをし、暗がりに置く。
8.3日後(72時間)まで一日ごとに観察し、致死数をカウントする。
(ヒメダカを用いた検定)
24穴プレートの1ウェルに、採取後1日間エアレーションしておいたイオン交換水と希釈した希釈試料液を加え計1mLになるよう調製した。ネガティブコントロールとしてイオン交換水のみを入れたウェルを用意した。
各ウェルに鮮化後7日目、体長4〜5mmのヒメダカ1匹ずつを入れ、24時間後に死魚数を測定した。
〔比較例1〕
pPcyt1A−cry46Ab1/Btk CRY(−)Bの代わりに、cry46Ab1遺伝子の供与菌であるBt.TK−E6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、菌体の培養によるタンパク質の産生、タンパク質の回収及び試料液の作製、試料液の可溶化及び濃度測定並びにタンパク質の検出及び確認の各実験を行った。
〔比較例2〕
pPcyt1A−cry46Ab1/Btk CRY(−)Bの代わりに、cry46Ab1を持たないpPcyt1A/Btk CRY(−)Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、菌体の培養によるタンパク質の産生、タンパク質の回収及び試料液の作製、試料液の可溶化及び濃度測定並びにタンパク質の検出及び確認の各実験を行った。
〔結果及び考察〕
<顕微鏡観察の結果及び考察>
実施例1、比較例1,2における本培養前と、本培養24時間後の培養液中の菌体の様子を位相差顕微鏡で観察した結果は、図3に示す通りであった。
比較例1,2における顕微鏡観察では、いずれの菌も、本培養前には胞子は無く、本培養24時間後に菌体内に胞子の形成を確認できた。また、本培養における菌体数の増加はほとんど見られなかった。
実施例1において、pPcyt1A−cry46Ab1/Btk CRY(−)Bの本培養24時間後の菌体内には胞子の他に黒い固まり(インクルージョンボディ)が認められた。このインクルージョンボディは、比較例1(Bt.TK−E6)において、本培養24時間後の菌体内で形成されたクリスタルより小さかった。この大きさの違いは形成するCryタンパク質の種類によるものと考えられる。すなわち、pPcyt1A−cry46Ab1/Btk CRY(−)Bが産生するCryはCry46Ab1のみであるのに対し、Bt.TK−E6ではCry32グループが多数発現する。この違いが大きさに現れたとみている。
一方、比較例2(pPcyt1A/Btk CRY(−)B)において、本培養24時間後の菌体内には、胞子は形成されていたが、インクルージョンボディは観察されなかった。
従って、実施例1において見られたインクルージョンは、Cry46Ab1由来のものと考えられる。
<タンパク質の検出及び確認の結果及び考察>
(1)SDS−PAGE
実施例1、比較例1,2について、SDS−PAGEによるタンパク質の分画を行った結果は、図4に示すとおりである。
図4下部に示す通り、レーン1〜5は実施例1に関し、レーン1は本培養24時間後の菌体を超音波破砕して得た不溶画分の全体、レーン2は可溶化処理後の上清、レーン3は可溶化処理後の上清を100倍に希釈したもの、レーン4は可溶化処理後の上清を1000倍に希釈したもの、レーン5は可溶化処理後の沈殿を示す。
レーン6−8は比較例1に関し、レーン6は本培養24時間後の菌体を超音波破砕して得た不溶画分の全体、レーン7は可溶化処理後の上清、レーン8は可溶化処理後の沈殿を示す。
レーン9−11は比較例2に関し、レーン9は本培養24時間後の菌体を超音波破砕して得た不溶画分の全体、レーン10は可溶化処理後の上清、レーン11は可溶化処理後の沈殿を示す。
実施例1(pPcyt1A−cry46Ab1/Btk CRY(−)B)における不溶画分の可溶化処理後上清サンプルでは、Cry46Ab1の分子量33kDaの位置にバンドが見られた(レーン2)。このサンプルの100倍希釈液でも薄いバンドが確認できたが、1000倍希釈液では確認できなかった(レーン3,4)。
比較例1(Bt.TK−E6)における不溶画分可溶化処理後沈殿サンプル(レーン8)でも分子量33kDaの位置にバンドが見られるが、このバンドについては、後述の通り、ウエスタンブロットにおいてCry46Ab1抗体が認識しなかったためCry46Ab1ではないと推測される。
また、比較例2(pPcyt1A/Btk CRY(−)B)では、可溶化後上清及び、沈殿のいずれにも33kDaのタンパク質は見られなかった。
実施例1で、不溶化画分の可溶化処理後上清サンプル及び100倍希釈液(レーン2、3)の90kDa付近に見られるバンドは、Cry46Ab1がオリゴマー化したものと考えられる。
比較例1で、25kDa、33kDa、45kDa、90kDaの位置に見られるバンドは(レーン6−8)、胞子由来のタンパク質であると考えられる。また、レーン6,7の150kDa付近に見られるバンドはクリスタル由来の分子量144kDaのCry32である。
(2)ウエスタンブロットによるCry46Ab1の検出
ウエスタンブロットは、SDS−PAGEで確認した33kDaのタンパク質がCry46Ab1であるのかを確かめるために行った。
結果は図5に示すとおりである。なお、各レーンについては、図5下部に示しているとおりであり、図4と同様である。
目的とするCry46Ab1タンパク質は分子量33kDaで、SDS−PAGEと同様にウエスタンブロットでもバンドが確認できた。不溶タンパク質可溶化後上清・沈殿のサンプルでも同様にバンドを確認した。SDS−PAGEと同様に、全体液、可溶タンパク質可溶化後上清・沈殿で90kDa付近のバンドが確認でき、また懸濁液と可溶化処理後沈殿では100kDa以上の分子量で、バンドが確認された。これらのタンパク質はCry46Ab1抗体が認識したため、Cry46Ab1がオリゴマー化したものではないかと考えられる。
比較例1(Bt.TK−E6)においては、上述の通り、不溶画分可溶化処理後沈殿サンプル(レーン8)において分子量33kDaの位置にバンドが見られたが、ウエスタンブロットでは同様のバンドが確認できなかったことから、Bt.TK−E6の不溶タンパク質にはCry46Ab1が含まれていないと判断される。
<生物検定の結果>
実施例1について、スクミリンゴガイに対する生物検定の結果を下表2に示す。
表2より、Cry46Ab1のスクミリンゴガイに対するLC50は0.294μg/mL(0.222−0.384)であった(カッコ内数値は95%信頼限界)。
実施例1について、チャコウラナメクジに対する生物検定の結果を下表3に示す。
表3より、Cry46Ab1を1.03μg以上用いるとチャコウラナメクジに対する致死効果が現れ、体重0.2gに対してLD50は1.94μgであった。
実施例1について、ヒメダカに対する生物検定の結果を下表4に示す。
表4より、ヒメダカの検定では、385ng/mL以下でも殺活性はみられなかった。従って、ヒメダカに対しては、食毒性の致死効果はないといえる。
このように、本発明に係る殺軟体動物活性タンパク質は、軟体動物の駆除に有効であり、他方、メダカなどの魚類への影響(致死作用)は認められなかった。

Claims (1)

  1. 下記(a)及び/又は下記(b)のタンパク質を有効成分とする、殺軟体動物剤。
    (a)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号1のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、殺軟体動物作用を有するタンパク質
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