JP2018173173A - インホイールモータ駆動装置 - Google Patents

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尚行 内山
鈴木 健一
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【課題】静粛性および耐久性に優れたインホイールモータ駆動装置を提供する。【解決手段】モータ部A、減速部Bおよび車輪用軸受部Cを保持するケーシング22を備え、モータ部Aが、ケーシング22に固定されたステータ23aと、転がり軸受36,36を介してケーシング22に回転自在に支持されるモータ回転軸24と、モータ回転軸24に装着されたロータ23bとを有するインホイールモータ駆動装置21において、転がり軸受36は、モータ部Aへの組込み前のラジアル内部すきまδが8〜25μmに設定されている。【選択図】図5

Description

本発明は、インホイールモータ駆動装置に関する。
従来のインホイールモータ駆動装置が、例えば下記の特許文献1に開示されている。インホイールモータ駆動装置は、装置全体をホイールの内部に収容する必要があることに加え、その重量や大きさが車両のばね下重量(走行性能)や客室スペースの広さに影響を及ぼすことから、装置全体をできるだけ軽量・コンパクト化する必要がある。そこで、特許文献1のインホイールモータ駆動装置では、駆動力を発生させるモータ部と、車輪に接続される車輪用軸受部との間に、モータ部の回転を減速して車輪用軸受部に伝達する減速部を設けることにより、モータ部、ひいては装置全体の小型化を図るようにしている。上記のモータ部、車輪用軸受部および減速部はケーシングに保持されており、ケーシングは図示しない懸架装置(サスペンション)を介して車体に取り付けられる。
さらに、上記のインホイールモータ駆動装置では、軽量・コンパクト化を推進しつつ、車輪用軸受部で必要とされる大きなトルクを得るために、モータ部に低トルクで高回転型(例えば15000min-1程度)のモータを採用すると共に、減速部にコンパクトで高い減速比が得られるサイクロイド減速機を採用している。
モータ部には、ケーシングに固定されたステータと、ステータの内側に径方向の隙間を介して対向配置されるロータと、外周にロータを装着し、ロータと一体回転するモータ回転軸とを備えるラジアルギャップモータが採用される。モータ回転軸は中空構造をなしており、転がり軸受によってケーシングに対して回転自在に支持されている。モータ回転軸は減速機入力軸とトルク伝達可能に連結されている。
特開2012−148725号公報
ところで、インホイールモータ駆動装置を搭載した車両(自動車)の速度は、0km/hから100km/h以上の高速域まで変化する。そのため、懸架装置周辺の共振周波数Rとn次強制振動成分や(n+α)次強制振動成分が交差するポイントS,S’(図7参照)では、可聴域の振動および車内騒音を引き起こし、乗員に不快感を与える可能性がある。従って、インホイールモータ駆動装置を搭載した車両の静粛性(NVH特性)を向上するためには、全ての振動の由来となる回転1次強制振動成分を抑制することが重要である。しかしながら、従来のインホイールモータ駆動装置では回転1次強制振動成分をはじめとする振動の抑制対策について十分に検討されておらず、改善の余地を残している。
また、インホイールモータ駆動装置の耐久性を向上し、その信頼性を高めることも求められている。
上記の実情に鑑み、本発明は、静粛性および耐久性に優れたインホイールモータ駆動装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するために、インホイールモータ駆動装置のうち、特にモータ部に着目して鋭意検討を重ねた結果見出された以下の知見に基づいている。
インホイールモータ駆動装置において、回転1次強制振動成分は、ロータを装着したモータ回転軸(以下、モータロータともいう)の回転に伴って生じる振動であり、1回転に1回の振動成分である。そのため、モータロータを回転自在に支持する転がり軸受の運転すきまを適正範囲に管理することが、モータロータの回転に伴う振動を抑制する上で、さらには転がり軸受の耐久寿命、ひいてはモータ部の耐久寿命を確保する上で有効であると考えられる。
ここで、転がり軸受は、その運転すきまを数μm程度の負すきまに管理した状態で運転することがその音響性能を高める(異音・振動の発生量を抑える)上で、また、その耐久寿命を確保する上で有利とされている。しかしながら、インホイールモータ駆動装置の駆動時においては、モータロータが上記のように高速回転する関係上、モータロータの回転を支持する転がり軸受の温度上昇量や、当該転がり軸受を構成する内外輪間の温度差が予想以上に大きくなり、これらの温度要因によって転がり軸受の運転すきまが大きく減少し易いことが判明した。運転すきまが大きく減少し、負すきまの程度が大きくなった状態で転がり軸受が継続使用されると、転がり軸受が早期に焼き付き、モータ部、ひいてはインホイールモータ駆動装置が早期に使用不能となる。
そこで、本願発明者らは鋭意検討を重ねた結果、モータロータを支持する転がり軸受は、運転すきまが数μm程度の正すきまとなるようにモータ部に組み込まれていることが、転がり軸受、ひいてはインホイールモータ駆動装置の静粛性向上(異音・振動の抑制)と耐久寿命の向上とを両立させる上で好ましいことを見出し、さらに、上記範囲の運転すきまを確保するためには、モータ部への組込み前のラジアル内部すきまを8〜25μmに設定すれば良いことを見出すに至った。
すなわち、上記の目的を達成するために創案された本発明は、モータ部、減速部および車輪用軸受部を保持するケーシングを備え、モータ部が、ケーシングに固定されたステータと、転がり軸受を介してケーシングに回転自在に支持されるモータ回転軸と、このモータ回転軸に装着されたロータとを有し、減速部が、モータ回転軸により回転駆動される減速機入力軸と、減速された減速機入力軸の回転を車輪用軸受部に伝達する減速機出力軸とを有するインホイールモータ駆動装置において、転がり軸受は、組込み前のラジアル内部すきまが8〜25μmであることを特徴とする。
上記のように、モータ回転軸を支持する転がり軸受の組込み前(モータ部への組込み前)のラジアル内部すきまが8μm以上であれば、運転時の温度上昇量(運転時における各部材の熱膨張量)を考慮しても転がり軸受の運転すきまが負すきまとなることがなくなり、運転すきまが常に正すきまとなるので、所望の耐久寿命を確保することができる。また、組込み前のラジアル内部すきまが25μm以下であれば、運転すきまが過剰に大きくなることを防止して、運転すきまを適正範囲に維持することができる。従って、モータロータの振れ回りに伴う回転1次強制振動成分の発生を効果的に抑制できることに加え、モータロータの軸方向の移動量を抑制できて、モータロータの軸方向移動に伴う異音や振動の発生を可及的に防止することができる。従って、本発明によれば、モータ回転軸を支持する転がり軸受の耐久性確保やモータ回転軸の振れ回り防止等を通じて、耐久性および静粛性に優れたインホイールモータ駆動装置を実現することができる。
上記の転がり軸受に軸方向の予圧を付与しておけば、予圧量に応じて運転すきまを適正範囲に維持し易くなるので、モータ回転軸(モータロータ)の振れ回り等に起因した振動の発生を一層効果的に抑制することができる。また、モータ回転軸は減速機入力軸を回転駆動する(モータ回転軸と減速機入力軸とはスプライン嵌合等によってトルク伝達可能に連結されている)ことから、モータ回転軸が回転するのに伴ってモータ回転軸に振動が生じると、モータ回転軸と減速機入力軸の連結部(スプライン嵌合部)でも歯面同士の摺動接触に伴う振動が生じるが、転がり軸受に軸方向の予圧を付与すれば、上記二軸の連結部における振動発生を可及的に防止することができる。
軸方向の予圧を、軸方向に弾性変形可能な弾性部材により付与するようにすれば、上記の軸方向の予圧をいわゆる定圧予圧とすることができる。定圧予圧は、例えばモータ回転軸と転がり軸受を保持する部材の材質が異なり、両者の熱膨張量に差がある場合であっても予圧量が変化せず、従って、転がり軸受の運転すきまを確実に適正範囲に維持することができるため、好適である。なお、採用可能な弾性部材としては、例えば、コイルスプリング、ウェーブスプリング、板バネ等を挙げることができる。
上記の転がり軸受を構成する転動体としては、セラミックボールを採用するのが好ましい。セラミックボールは、金属製のボールよりも軽量であることから、高速回転に伴う摩擦モーメント(発熱量)の増大を効果的に抑制し得ることに加え、転がり軸受、ひいてはインホイールモータ駆動装置の軽量化を図る上で有利となるからである。また、転動体としてセラミックボールを採用することにより、インホイールモータ駆動装置のような電気機器に使用する転がり軸受で問題となる磁界による損傷モードに対する耐性が向上する。
また、上記の転がり軸受を構成する保持器としては、樹脂製の保持器を採用するのが好ましい。これにより、転がり軸受、ひいてはインホイールモータ駆動装置を一層軽量化することができる。
モータ部に潤滑油を供給する潤滑機構を設けておけば、上記の転がり軸受を含め、モータ部の各所を適切に潤滑・冷却することができる。
以上の構成において、減速部は、減速機入力軸と、この減速機入力軸の偏心部に回転自在に保持され、減速機入力軸の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う公転部材と、この公転部材の外周部に係合して公転部材に自転運動を生じさせる外周係合部材と、公転部材の自転運動を、減速機入力軸の回転軸心を中心とする回転運動に変換して減速機出力軸に伝達する運動変換機構とを備えたものを採用できる。
以上より、本発明によれば、軽量・コンパクトでありながら、静粛性および耐久性に優れたインホイールモータ駆動装置を実現することができる。
本発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置を示す図である。 図1のO−O線矢視断面図である 図1の曲線板に作用する荷重を示す説明図である。 図1の回転ポンプの横断面図である。 モータ回転軸を支持する転がり軸受の概略断面図である。 ウェーブスプリングの縦断面図である。 共振周波数と強制振動成分との関係を示す説明図である。 電気自動車の概略平面図である。 図8の電気自動車を後方から見た概略断面図である。
図8および図9に基づいてインホイールモータ駆動装置を搭載した電気自動車11の概要を説明する。図8に示すように、電気自動車11は、シャーシ12と、操舵輪として機能する一対の前輪13と、駆動輪として機能する一対の後輪14と、左右の後輪14のそれぞれを駆動するインホイールモータ駆動装置21とを備える。図9に示すように、後輪14は、シャーシ12のホイールハウジング12aの内部に収容され、懸架装置(サスペンション)12bを介してシャーシ12の下部に固定されている。
懸架装置12bは、左右に延びるサスペンションアームによって後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットによって、後輪14が路面から受ける振動を吸収してシャーシ12の振動を抑制する。さらに、左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時等の車体の傾きを抑制するスタビライザが設けられる。懸架装置12bは、路面の凹凸に対する追従性を向上し、後輪14の駆動力を効率よく路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させることができる独立懸架式とするのが望ましい。
この電気自動車11では、左右のホイールハウジング12aの内部に、左右の後輪14それぞれを回転駆動させるインホイールモータ駆動装置21が組み込まれるので、シャーシ12上にモータ、ドライブシャフトおよびデファレンシャルギヤ機構等を設ける必要がなくなる。そのため、客室スペースを広く確保でき、しかも、左右の後輪14の回転をそれぞれ制御することができるという利点を備えている。
電気自動車11の走行安定性およびNVH特性を向上するためには、ばね下重量を抑える必要がある。また、電気自動車11の客室スペースを拡大するためには、インホイールモータ駆動装置21を小型化する必要がある。そこで、図1に示すように、本発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21を採用する。
本発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21を図1〜図6に基づいて説明する。図1に示すように、インホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速部Bと、減速部Bからの出力を後輪14に伝達する車輪用軸受部Cとを備え、これらはケーシング22に保持されている。また、詳細は後述するが、このインホイールモータ駆動装置21は、モータ部Aおよび減速部Bの各所に潤滑油を供給する潤滑機構を有する。モータ部Aと減速部Bはケーシング22に収納された状態で電気自動車11のホイールハウジング12a(図9参照)内に取り付けられる。本実施形態のケーシング22は、モータ部Aを収納した部分と、減速部Bを収納した部分とをボルトで締結したものであり、ボルトを取り外せば両部分は分割(分離)可能である。
モータ部Aは、ケーシング22に固定されているステータ23aと、ステータ23aの内側に径方向の隙間を介して対向配置されるロータ23bと、中空構造をなし、外周にロータ23bを装着したモータ回転軸24とを備えるラジアルギャップモータである。
モータ回転軸24は、その軸方向一方側(図1の右側であり、以下「インボード側」ともいう)および他方側(図1の左側であり、以下「アウトボード側」ともいう)の端部にそれぞれ配置された転がり軸受36,36によってケーシング22に対して回転自在に支持されている。転がり軸受36は、いわゆる深溝玉軸受であり、図5に概略構造を示すように、ケーシング22(インボード側の転がり軸受36は、厳密に言うとカバー71)の内径面に嵌合固定される外輪36aと、モータ回転軸24の外径面に嵌合固定される内輪36bと、外輪36aと内輪36bとの間に配置された複数のボール36cと、複数のボール36cを周方向に離間した状態で保持する保持器(図示せず)とを備える。
モータ回転軸24は、例えばSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、浸炭焼入れ焼戻しが施されることにより形成された硬化層を有する。詳細な図示は省略するが、硬化層は、モータ回転軸24のうち、少なくともロータ23bや転がり軸受36の内輪36bが嵌合固定される部位に形成される。これにより、ロータ23bや転がり軸受36の組み付けに伴うモータ回転軸24の変形や摩耗・損傷等が可及的に防止される。なお、モータ回転軸24のうち、硬化層が形成された部分の硬度はHRC62〜66.5程度とされ、芯部の硬度はHRC29〜38程度とされる。このように、モータ回転軸24は、その芯部が靱性を有するので、高速回転時の変形にも耐えることができる。
減速部Bは、モータ回転軸24により回転駆動される減速機入力軸25と、減速機入力軸25の回転を減速した上で車輪用軸受部Cに伝達する減速機出力軸28とを有する。減速機入力軸25は、その軸方向略中央部およびアウトボード側の端部が、それぞれ、転がり軸受37a,37bによって減速機出力軸28に対して回転自在に支持されている。減速機入力軸25は偏心部25a,25bを有する。2つの偏心部25a,25bは、偏心運動による遠心力を互いに打ち消し合うために、位相を180°異ならせるようにして設けられている。
モータ回転軸24と減速機入力軸25とはスプライン(セレーションを含む。以下同じ。)嵌合によって連結され、モータ部Aの駆動力が減速部Bに伝達される。モータ回転軸24と減速機入力軸25の連結部(スプライン嵌合部)は、減速機入力軸25がある程度傾いても、モータ回転軸24への影響を抑制するように構成されている。
減速部Bは、さらに、減速機入力軸25の偏心部25a,25bに回転自在に保持される公転部材としての曲線板26a,26bと、ケーシング22上の固定位置に保持され、曲線板26a,26bの外周部と係合する外周係合部材としての複数の外ピン27と、曲線板26a,26bの自転運動を減速機出力軸28の回転運動に変換する運動変換機構と、偏心部25a,25bの軸方向外側に隣接配置されたカウンタウェイト29,29とを備える。
減速機出力軸28は、フランジ部28aと軸部28bとを有する。フランジ部28aの端面には、減速機出力軸28の回転軸心を中心とする円周上に等間隔に内ピン31を固定する孔が形成されている。軸部28bは、車輪用軸受部Cのハブ輪32にスプライン嵌合によって連結され、減速部Bの出力を後輪14(図8,9参照)に伝達する。
図2に示すように、曲線板26aは、その外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有する。また、曲線板26aは、その両端面に開口する軸方向の貫通孔30a,30bを有する。貫通孔30aは、曲線板26aの自転軸心を中心とする円周上に等間隔で複数設けられており、後述する内ピン31を1本ずつ受け入れる。貫通孔30bは、曲線板26aの中心に設けられており、減速機入力軸25の偏心部25aに嵌合する。
曲線板26aは、転がり軸受41によって偏心部25aに対して回転自在に支持されている。転がり軸受41は、外径面に内側軌道面42aを有し、偏心部25aの外径面に嵌合した内輪42と、曲線板26aの貫通孔30bの内径面に直接形成された外側軌道面43と、内側軌道面42aと外側軌道面43の間に配置される複数の円筒ころ44と、円筒ころ44を保持する保持器(図示せず)とを備える円筒ころ軸受である。内輪42は、内側軌道面42aの軸方向両端部から径方向外側に突出する鍔部42bを有する。本実施形態の転がり軸受41では、偏心部25aとは別体に設けた内輪42に内側軌道面42aを形成しているが、偏心部25aの外径面に内側軌道面を直接形成することで内輪42を省略してもよい。詳細な図示および説明は省略するが、曲線板26bは、曲線板26aと同様の構造を有しており、曲線板26aを支持する転がり軸受41と同様の構造を有する転がり軸受によって偏心部25bに対して回転自在に支持されている。
図2に示すように、外ピン27は、減速機入力軸25の回転軸心を中心とする円周上に等間隔に設けられている。曲線板26a,26bが公転運動すると、曲線板26a,26bの外周部に形成した曲線形状の波形と外ピン27とが周方向で係合し、曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる。各外ピン27は、図1に示すように、そのインボード側およびアウトボード側の端部に配された転がり軸受(針状ころ軸受)61、および針状ころ軸受61を内周に保持した外ピンハウジング60を介してケーシング22に回転自在に支持されている。かかる構成により、外ピン27と曲線板26a,26bとの間の接触抵抗が低減される。
詳細な図示は省略しているが、外ピンハウジング60は、弾性支持機能を有する回り止め手段(図示せず)によってケーシング22に対してフローティング状態に支持されている。これは、車両の旋回や急加減速等によって生じる大きなラジアル荷重やモーメント荷重を吸収して、曲線板26a,26bの自転運動を減速機出力軸28の回転運動に変換する運動変換機構の構成部品(曲線板26a,26bや外ピン27等)の破損を防止するためである。
カウンタウェイト29は、略扇形状で、減速機入力軸25と嵌合する貫通孔を有し、曲線板26a,26bの回転によって生じる不釣合い慣性偶力を打ち消すために、各偏心部25a,25bと軸方向に隣接する位置に偏心部25a,25bと180°位相を変えて配置される。
図1に示すように、運動変換機構は、減速機出力軸28に保持された複数の内ピン31と、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aとで構成される。図2に示すように、内ピン31は、減速機出力軸28の回転軸心を中心とする円周上に等間隔に設けられており、そのアウトボード側の端部が減速機出力軸28に固定されている。減速機出力軸28は減速機入力軸25と同軸上に配置されているので、曲線板26a,26bの自転運動を、減速機入力軸25の回転軸心を中心とする回転運動に変換して減速機出力軸28に伝達する。また、内ピン31と曲線板26a,26bとの摩擦抵抗を低減するために、曲線板26a,26bの貫通孔30aの内周に針状ころ軸受31aが設けられている。
減速部Bには、スタビライザ31bが設けられている。スタビライザ31bは、円環形状の円環部31cと、円環部31cの内径面から軸方向に延びる円筒部31dとを含み、各内ピン31のインボード側の端部は、円環部31cに固定されている。これにより、曲線板26a,26bから一部の内ピン31に負荷される荷重はスタビライザ31bを介して全ての内ピン31によって支持されるため、内ピン31に作用する応力を低減させ、耐久性を向上させることができる。
図2に示すように、貫通孔30aは、複数の内ピン31それぞれに対応する位置に設けられ、貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(「針状ころ軸受31aを含む最大外径」を指す。以下同じ。)よりも所定寸法大きく設定されている。
ここで、モータ部Aの駆動時に曲線板26a、26bに作用する荷重の状態を図3に基づいて説明する。
減速機入力軸25に設けられた偏心部25aの軸心O2は、減速機入力軸25の軸心Oから偏心量eだけ偏心している。偏心部25aの外周には曲線板26aが取り付けられ、偏心部25aは曲線板26aを回転自在に支持するので、軸心O2は曲線板26aの軸心でもある。曲線板26aの外周部は波形曲線で形成され、径方向に窪んだ凹部34を周方向等間隔に有する。曲線板26aの周囲には、凹部34と係合する外ピン27が、軸心Oを中心として周方向に複数配設されている。
図3において、減速機入力軸25が紙面上で反時計周りに回転すると、偏心部25aは軸心Oを中心とする公転運動を行うので、曲線板26aの凹部34が外ピン27と周方向に順次当接する。この結果、曲線板26aは、複数の外ピン27から図中矢印で示すような荷重Fiを受けて、時計回りに自転する。
また、曲線板26aには貫通孔30aが軸心O2を中心として周方向に複数配設されている。各貫通孔30aには、軸心Oと同軸に配置された減速機出力軸28と結合する内ピン31が挿通されている。貫通孔30aの内径は内ピン31の外径よりも所定寸法大きいため、内ピン31は、曲線板26aの公転運動の障害とはならず、曲線板26aの自転運動を取り出して減速機出力軸28を回転させる。このとき、減速機出力軸28は、減速機入力軸25よりも高トルクかつ低回転数になり、曲線板26aは、複数の内ピン31から図中矢印で示すような荷重Fjを受ける。これらの複数の荷重Fi、Fjの合力Fsが減速機入力軸25にかかる。
合力Fsの方向は、曲線板26aの波形形状や凹部34の数などの幾何学的条件の他、遠心力の影響により変化する。具体的には、自転軸心O2と軸心Oとを結ぶ直線Yと直角であって自転軸心O2を通過する基準線Xと、合力Fsとの角度αは概ね30°〜60°で変動する。上記の複数の荷重Fi、Fjは、減速機入力軸25が1回転する間に荷重の方向や大きさが変化し、その結果、減速機入力軸25に作用する合力Fsも荷重の方向や大きさが変動する。そして、減速機入力軸25が1回転すると、曲線板26aの凹部34が減速されて1ピッチ時計回りに回転し、図3の状態になり、これを繰り返す。
図1に示すように、車輪用軸受部Cは、減速機出力軸28に連結されたハブ輪32と、ハブ輪32をケーシング22に対して回転自在に支持する車輪用軸受33とを備える。ハブ輪32は、円筒状の中空部32aとフランジ部32bとを有する。フランジ部32bにはボルト32cによって後輪14(図8,9参照)が連結固定される。減速機出力軸28の軸部28bとハブ輪32の中空部32aとはスプライン嵌合により連結され、これにより、減速機出力軸28の出力がハブ輪32に伝達される。
車輪用軸受33は、ハブ輪32の外径面に直接形成された内側軌道面33fおよび外径面の小径段部に嵌合された内輪33aを有する内方部材と、ケーシング22の内径面に嵌合固定された外輪33bと、内方部材と外輪33bの間に配置された複数の転動体(ボール)33cと、ボール33cを周方向に離間した状態で保持する保持器33dと、車輪用軸受33の軸方向両端部を密封するシール部材33eとを備えた複列アンギュラ玉軸受である。
次に潤滑機構を説明する。潤滑機構は、モータ部Aおよび減速部Bの各所に潤滑油を供給するものであって、図1に示すように、モータ回転軸24に設けた潤滑油路24aおよび潤滑油供給口24bと、減速機入力軸25に設けた潤滑油路25cおよび潤滑油供給口25d,25e,25fと、スタビライザ31bに設けた潤滑油路31eと、内ピン31に設けた潤滑油路31fと、ケーシング22に設けた潤滑油排出口22b、潤滑油貯留部22d、潤滑油路22eおよび潤滑油路45(45a〜45c)と、回転ポンプ51とを主な構成とする。図1中に示した白抜き矢印は潤滑油の流れる方向を示している。
潤滑油路24aは、モータ回転軸24の内部を軸方向に沿って延びており、この潤滑油路24aには、減速機入力軸25の内部を軸方向に沿って延びた潤滑油路25cが接続されている。潤滑油供給口25d,25eは、潤滑油路25cから減速機入力軸25の外径面に向かって径方向に延び、潤滑油供給口25fは、潤滑油路25cから減速機入力軸25の外端面に向かって軸方向に延びている。
ケーシング22に設けられた潤滑油排出口22bは、減速部B内部の潤滑油を排出するものであって、減速部Bの位置におけるケーシング22の少なくとも1箇所に設けられている。潤滑油排出口22bとモータ回転軸24の潤滑油路24aとは、潤滑油貯留部22d、潤滑油路22eおよび潤滑油路45を介して接続されている。そのため、潤滑油排出口22bから排出された潤滑油は、潤滑油路22eや循環油路45等を経由してモータ回転軸24の潤滑油路24aに還流する。なお、潤滑油吐出口22bと循環油路22eとの間に設けられた潤滑油貯留部22dは、潤滑油を一時的に貯留する機能を有する。
図1に示すように、ケーシング22に設けた循環油路45は、ケーシング22の内部を軸方向に延びる軸方向油路45aと、軸方向油路45aのインボード側の端部に接続されて径方向に延びる径方向油路45cと、軸方向油路45aのアウトボード側の端部に接続されて径方向に延びる径方向油路45bとで構成される。径方向油路45bは回転ポンプ51から圧送された潤滑油を軸方向油路45aに供給し、軸方向油路45aに供給された潤滑油は径方向油路45cを介してモータ回転軸24の潤滑油路24a、さらには減速機入力軸25の潤滑油路25cに供給される。
回転ポンプ51は、潤滑油貯留部22dの下流側に接続された潤滑油路22eと循環油路45との間に設けられており、潤滑油を強制的に循環させている。回転ポンプ51をケーシング22内に配置することによって、インホイールモータ駆動装置21全体としての大型化を防止することができる。
図4に示すように、回転ポンプ51は、減速機出力軸28の回転を利用して回転するインナーロータ52と、インナーロータ52の回転に伴って従動回転するアウターロータ53と、両ロータ52,53間の空間に設けられた複数のポンプ室54と、潤滑油路22eに連通する吸入口55と、循環油路45の径方向油路45bに連通する吐出口56とを備えるサイクロイドポンプである。
インナーロータ52は、回転中心c1を中心として回転し、アウターロータ53は、インナーロータ52の回転中心c1と異なる回転中心c2を中心として回転する。このように、インナーロータ52およびアウターロータ53はそれぞれ異なる回転中心c1、c2を中心として回転するので、ポンプ室54の容積は連続的に変化する。これにより、吸入口55からポンプ室54に流入した潤滑油は吐出口56から径方向油路45bに圧送される。
潤滑機構は、主に以上の構成を有しており、以下のようにしてモータ部Aおよび減速部Bの各所に潤滑油を供給することにより、モータ部Aおよび減速部Bの各所を潤滑・冷却する。
まず、モータ部Aのうち、ロータ23bおよびステータ23aへの潤滑油の供給は、主に、ケーシング22の循環油路45を介してモータ回転軸24の潤滑油路24aに供給された潤滑油の一部が、モータ回転軸24の回転に伴って生じる遠心力の影響を受けて潤滑油供給口24bから吐出されることにより行われる。すなわち、潤滑油供給口24bから吐出された潤滑油はロータ23bに供給され、その後、ステータ23aに供給される。また、モータ回転軸24のインボード側の端部を支持する転がり軸受36は、主に、循環油路45を流れる潤滑油の一部がケーシング22とモータ回転軸24との間から滲み出ることにより潤滑される。さらに、モータ回転軸24のアウトボード側の端部を支持する転がり軸受36は、主に、回転ポンプ51とケーシング22の間から滲み出た潤滑油により潤滑される。
次に、モータ回転軸24の潤滑油路24aを経由して減速機入力軸25の潤滑油路25cに流入した潤滑油は、減速機入力軸25の回転に伴う遠心力および圧力の影響を受けて潤滑油供給口25d,25e,25fから減速部Bに吐出され、その後、次のように流れてゆく。
潤滑油供給口25e,25fから吐出された潤滑油は、遠心力の作用により、減速機入力軸25を支持する転がり軸受37a,37bに供給される。さらに、潤滑油供給口25eから流出した潤滑油は、スタビライザ31b内の潤滑油路31eへ導かれて内ピン31内の潤滑油路31fへ至り、この潤滑油路31fから内ピン31を支持する転がり軸受(針状ころ軸受)31aに供給される。さらに、遠心力により、曲線板26a,26bと内ピン31との当接部分、曲線板26a,26bと外ピン27との当接部分、外ピン27を支持する転がり軸受61、減速機出力軸28を支持する転がり軸受46などを潤滑しながら径方向外側に移動する。
一方、潤滑油供給口25dから吐出された潤滑油は、曲線板26a,26bを支持する転がり軸受41(図2参照)に供給される。さらに、潤滑油供給口25e,25fから吐出された潤滑油と同様に、遠心力により、曲線板26a,26bと内ピン31との当接部分や、曲線板26a,26bと外ピン27との当接部分等を潤滑しながら径方向外側に移動する。
以上のような潤滑油の流れによって、減速部B内の各所が潤滑される。そして、ケーシング22の内壁面に到達した潤滑油は、潤滑油排出口22bから排出されて潤滑油貯留部22dに貯留される。このように、潤滑油排出口22bと回転ポンプ51に接続された潤滑油路22eとの間に潤滑油貯留部22dが設けられているので、特に高速回転時などに回転ポンプ51によって排出しきれない潤滑油が一時的に発生しても、その潤滑油を潤滑油貯留部22dに貯留しておくことができる。その結果、減速部Bの各所における発熱やトルク損失の増加を防止することができる。一方、特に低速回転時などには、潤滑油排出口22bに到達する潤滑油量が少なくなるが、このような場合であっても、潤滑油貯留部22dに貯留されている潤滑油を潤滑油路24a,25cに還流することができるので、モータ部Aおよび減速部Bに安定して潤滑油を供給することができる。
なお、減速部B内部の潤滑油は、遠心力に加え、重力によっても外側に移動する。したがって、このインホイールモータ駆動装置21は、潤滑油貯留部22dがインホイールモータ駆動装置21の下部に位置するように、電気自動車11に取り付けるのが望ましい。
インホイールモータ駆動装置21の全体構造は前述したとおりであり、本実施形態のインホイールモータ駆動装置21は、以下に示すような特徴的な構成を有する。
まず、モータ部Aにおいて、モータ回転軸24をケーシング22に対して回転自在に支持する転がり軸受(深溝玉軸受)36,36は、組込み前のラジアル内部すきまδ(図5参照)が8〜25μmに設定された上で、モータ部Aのケーシング22に組み込まれている。このように、転がり軸受36の組込み前のラジアル内部すきまδが8μm以上であれば、運転時の温度上昇量を考慮しても転がり軸受36の運転すきまが負すきまとなることがなくなり、運転すきまが常に正すきまとなる。また、組込み前のラジアル内部すきまδが25μm以下であれば、運転すきまが過剰に大きくなることが防止される。従って、上記構成を採用すれば、転がり軸受36,36の運転すきまを正すきまの範囲で適正値に維持することができるので、転がり軸受36に所望の耐久寿命を確保しつつ、ロータ23bを装着したモータ回転軸24の振れ回りに伴う回転1次強制振動成分の発生を効果的に抑制できる。さらには、モータ回転軸24の軸方向の移動量を抑制できて、モータ回転軸24の軸方向移動に伴う異音や振動の発生を可及的に防止することができる。
ここで、組込み前のラジアル内部すきまδについて詳述する。このラジアル内部すきまδとは、図5に示すように、転がり軸受(深溝玉軸受)36をモータ回転軸24又はケーシング22に組み込む前の状態で、外輪36a又は内輪36bの何れか一方を固定し、他方をラジアル方向に移動させたときの移動量を意味する。つまり、外輪36aの外側軌道面にボール36cを当接させた状態で内輪36bの内側軌道面とボール36cとの間に形成されるすきま、あるいは、内輪36bの内側軌道面にボール36cを当接させた状態で外輪36aの外側軌道面とボール36cとの間に形成されるすきまを意味する。図5は後者の様子を模式的に示している。
さらに、本実施形態では、転がり軸受36,36に予め軸方向の荷重(予圧)を与える。この場合、適当な予圧量を付与すれば、転がり軸受36の運転すきまを適正範囲内に維持し易くなるので、モータロータの振れ回り等に起因した振動の発生を一層効果的に抑制することができる。また、モータ回転軸24と減速機入力軸25とはスプライン嵌合によってトルク伝達可能に連結されていることから、モータ回転軸24の回転に伴ってモータ回転軸24に振動が生じると、モータ回転軸24と減速機入力軸25の連結部(スプライン嵌合部)でも歯面同士の摺動接触等に伴う振動が生じる可能性があるが、転がり軸受36,36に軸方向の予圧を付与すれば、上記二軸24,25の連結部における振動発生も可及的に防止することができる。
予圧を与える方法は、定位置予圧と定圧予圧に大別される。例えば、機械的に位置決めする方法は定位置予圧に属し、コイルスプリング、ウェーブスプリング、板バネ等の軸方向に弾性変形可能な弾性部材を用いる方法は定圧予圧に属する。モータ回転軸24の材質とケーシング22の材質が異なる場合に機械的に位置決めする方法を採用すると、モータ回転軸24とケーシング22の熱膨張差により予圧量、すなわち転がり軸受36の運転すきまが大きく変化する可能性があり、好ましくない。このため、本実施形態では、熱膨張差による軸方向変位の変動の影響を受けにくい定圧予圧を採用する。定圧予圧は、上述のような弾性部材を用いることで実現することができ、本実施形態では、図6に拡大して示すようなウェーブスプリング70を用いている。また、定圧予圧は、一般的な予圧量が好ましく、転がり軸受36の内輪36bが外嵌されるモータ回転軸24の軸径をdとした場合、予圧量を4d〜10d〔N〕の範囲に設定する。
図6は、ウェーブスプリング70の縦断面図である。このウェーブスプリング70は、板ばねをコイル状に巻いたもので、軸方向の中央部にウェーブ状に湾曲したばね部70aを有し、軸方向の両端部に平坦な座面70bを有する。図1に示すように、このウェーブスプリング70を圧縮状態でケーシング22(センタープラグ73)とインボード側の転がり軸受36との間に介在させることにより、転がり軸受36,36に軸方向の予圧(定圧予圧)を与える。
ここで、図1を参照しながら、ウェーブスプリング70を用いて一対の転がり軸受36,36に軸方向の定圧予圧を付与する方法を説明する。定圧予圧は、モータ部Aの組立が完了するのと同時に付与されるので、以下、モータ部Aの組立手順の概要を説明する。なお、モータ部Aの組立は、減速部Bのケーシング22とモータ部Aのケーシング22とを分離した状態で行われる。
まず、カバー71が取り外された状態のモータ部Aのケーシング22の内周にステータ23aを固定してから、アウトボード側(図1では左側)の転がり軸受36をケーシング22に組み込む。次いで、ロータ23bおよび回転センサ72のロータ72aを装着したモータ回転軸24をケーシング22の内周に挿入し、モータ回転軸24のアウトボード側の端部をケーシング22に予め組み込まれている転がり軸受36の内輪36bの内径に固定する。次いで、回転センサ72を装着したカバー71をケーシング22に組み付けてから、カバー71の内径面とモータ回転軸24の外径面との間にインボード側の転がり軸受36を組み込む。
そして、ウェーブスプリング70を装着したセンタープラグ73をカバー71に固定すると、モータ部Aの組立が完了する。このとき、ウェーブスプリング70のばね部70aは転がり軸受36の外輪36aとセンタープラグ73との間で軸方向に圧縮変形しているので、ばね部70aの弾性復元力によりインボード側の転がり軸受36の外輪36aがアウトボード側に押圧される。これにより、モータ回転軸24を支持する一対の転がり軸受36,36に軸方向の予圧(定圧予圧)が付与される。そのため、適当な弾性復元力を具備するウェーブスプリング70を選択使用すれば、モータ回転軸24を支持する転がり軸受36,36の運転すきまを適正範囲に維持・管理することができ、モータ回転軸24の振れ回りを抑制することができる。
モータ部Aの組立性を考慮した場合、本実施形態のようにインボード側にウェーブスプリング70を配置し、モータ部Aの組立の最終段階において予圧を付与する組立手順の方が、モータ回転軸24の動きを確認する上で好ましい。アウトボード側(図1の左側)にウェーブスプリング70を配置した場合、モータ部Aの組立時にウェーブスプリング70がロータ23bの陰に隠れてしまい、ウェーブスプリング70が所定態様で配置されているか否か(予圧が適切に付与されているか否か)の確認が難しいからである。
また、本実施形態では、転がり軸受36を構成するボール36cとしてセラミックボールを採用する。セラミックボールは、金属製のボールよりも軽量であることから、モータ回転軸24の高速回転に伴う摩擦モーメント(発熱量)の増大を効果的に抑制し得ることに加え、転がり軸受36、ひいてはインホイールモータ駆動装置21の軽量化を図る上で有利となる。また、セラミックボールを採用することにより、モータ部A(インホイールモータ駆動装置21)のような電気機器に使用する転がり軸受36で問題となる磁界による損傷モードに対する耐性が向上する。
さらに、転がり軸受36を構成する保持器として樹脂製の保持器を採用する。これにより、転がり軸受36、ひいてはインホイールモータ駆動装置21を一層軽量化することができる。なお、インホイールモータ駆動装置21の駆動時には、上記のように、モータ回転軸24が15000min-1程度で高速回転する関係上、転がり軸受36の構成部材も大きく昇温する。従って、転がり軸受36を構成する樹脂保持器としては、耐熱性に優れた樹脂を主成分とする樹脂材料で作製したものを選択使用するのが好ましく、具体的にはポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)等を主成分としたものを好ましく採用することができる。以上で例示した樹脂の中でも、ポリアミド46(PA46)やポリアミド66(PA66)等に代表されるポリアミド(PA)は、安価でありながら、比較的高い耐熱性を具備するため、特に好ましい。
もちろん、転がり軸受36の保持器として、樹脂保持器に替えて金属製の保持器(例えば、鉄製の保持器)を採用することも可能である。
以上の構成を有するインホイールモータ駆動装置21の全体的な作動原理を、図1および図2を参照しながら説明する。
モータ部Aでは、例えば、ステータ23aのコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石又は磁性体によって構成されるロータ23bが回転する。これに伴って、モータ回転軸24に連結された減速機入力軸25が回転すると、曲線板26a、26bは減速機入力軸25の回転軸心を中心として公転運動する。このとき、外ピン27は、曲線板26a,26bの外周部に設けられた曲線形状の波形と係合し、曲線板26a、26bを減速機入力軸25の回転とは逆向きに自転回転させる。
貫通孔30aに挿通された内ピン31は、曲線板26a,26bの自転運動に伴って貫通孔30aの内壁面と当接する。これにより、曲線板26a,26bの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26a,26bの自転運動のみが減速機出力軸28を介して車輪用軸受部Cに伝達される。このとき、減速機入力軸25の回転が減速部Bによって減速されて減速機出力軸28に伝達されるので、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、駆動輪(後輪)14に必要なトルクを伝達することが可能となる。
上記構成の減速部Bの減速比は、外ピン27の数をZA、曲線板26a,26bの外周部に設けた波形の数をZBとすると、(ZA−ZB)/ZBで算出される。図2に示す実施形態では、ZA=12、ZB=11であるので、減速比は1/11と非常に大きな減速比を得ることができる。
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。また、外ピン27および内ピン31を回転自在に支持する転がり軸受(針状ころ軸受)61,31aを設けたことにより、曲線板26a,26bと外ピン27および内ピン31との間の摩擦抵抗が低減されるので、減速部Bの伝達効率が向上する。
以上の構成により、軽量・コンパクトでありながら、静粛性(NVH特性)および耐久性に優れたインホイールモータ駆動装置21を実現することができる。従って、本実施形態のインホイールモータ装置21を電気自動車11に搭載すれば、ばね下重量を抑えることができる。その結果、走行安定性およびNVH特性に優れた電気自動車11を実現することができる。
以上、本発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21について説明を行ったが、インホイールモータ駆動装置21には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
例えば、以上で説明した実施形態においては、潤滑油供給口25dを偏心部25a,25bに設け、潤滑油供給口25e,25fを減速機入力軸25の軸方向途中位置および軸端に設けた例を示したが、これに限ることなく、減速機入力軸25の任意の位置に設けることができる。
また、以上では、回転ポンプ51としてサイクロイドポンプを採用したが、これに限ることなく、減速機出力軸28の回転を利用して駆動するあらゆる回転型ポンプを採用することができる。さらには、回転ポンプ51を省略して、遠心力のみによって潤滑油を循環させるようにしてもよい。
また、減速部Bの曲線板26a,26bを180°位相を変えて2枚設けた例を示したが、曲線板の枚数は任意に設定することができる。例えば、曲線板を3枚設ける場合は、120°位相を変えて設けるとよい。
また、以上では、減速機出力軸28に固定した内ピン31と、曲線板26a,26bに設けた貫通孔30aとで運動変換機構を構成したが、運動変換機構は、減速部Bの回転をハブ輪32に伝達可能な任意の構成とすることができる。例えば、曲線板に固定された内ピンと減速機出力軸に形成された穴とで運動変換機構を構成してもよい。
本実施形態における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから後輪14に伝達される。したがって、上述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。
また、モータ部Aに電力を供給してモータ部を駆動させ、モータ部Aからの動力を後輪14に伝達させる場合を示したが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、後輪14側からの動力を減速部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電してもよい。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、モータ部Aの駆動用電力や、車両に備えられた他の電動機器の作動用電力として活用することもできる。
また、インホイールモータ駆動装置21にはブレーキを追加することもできる。例えば、図1の構成において、ケーシング22を軸方向に延長してロータ23bの車幅方向内側に空間を形成し、この空間にロータ23bと一体的に回転する回転部材と、ケーシング22に回転不能にかつ軸方向に移動可能なピストンと、このピストンを作動させるシリンダとを配置すれば、車両停止時にピストンと回転部材とによってロータ23bをロックするパーキングブレーキとすることができる。また、ブレーキは、上記回転部材の一部に形成されたフランジおよびケーシング22側に設置された摩擦板をケーシング22側に設置されたシリンダで挟むディスクブレーキとすることもできるし、上記回転部材の一部にドラムを形成すると共に、ケーシング22側にブレーキシューを固定し、摩擦係合およびセルフエンゲージ作用で回転部材をロックするドラムブレーキとすることもできる。
また、以上では、モータ部Aにラジアルギャップモータを採用した構成に本発明を適用したが、本発明は、モータ部Aに、ステータとロータとを軸方向の隙間を介して対向させるアキシャルギャップモータを採用した場合にも好ましく適用できる。
さらに、本発明に係るインホイールモータ駆動装置は、後輪14を駆動輪とした後輪駆動タイプの電気自動車11のみならず、前輪13を駆動輪とした前輪駆動タイプの電気自動車や、前輪13および後輪14を駆動輪とした4輪駆動タイプの電気自動車に適用することもできる。なお、本明細書中で「電気自動車」とは、電力から駆動力を得る全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカー等をも含む。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
11 電気自動車
21 インホイールモータ駆動装置
22 ケーシング
23a ステータ
23b ロータ
24 モータ回転軸
25 減速機入力軸
28 減速機出力軸
36 転がり軸受
36a 外輪
36b 内輪
36c ボール(転動体)
70 ウェーブスプリング(弾性部材)
A モータ部
B 減速部
C 車輪用軸受部
δ 組込み前のラジアル内部すきま

Claims (7)

  1. モータ部、減速部および車輪用軸受部を保持するケーシングを備え、前記モータ部が、前記ケーシングに固定されたステータと、転がり軸受を介して前記ケーシングに回転自在に支持されるモータ回転軸と、このモータ回転軸に装着されたロータとを有し、前記減速部が、前記モータ回転軸により回転駆動される減速機入力軸と、減速された前記減速機入力軸の回転を前記車輪用軸受部に伝達する減速機出力軸とを有するインホイールモータ駆動装置において、
    前記転がり軸受は、組込み前のラジアル内部すきまが8〜25μmであることを特徴とするインホイールモータ駆動装置。
  2. 前記転がり軸受に軸方向の予圧が付与されていることを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
  3. 前記軸方向の予圧が、軸方向に弾性変形可能な弾性部材により付与されていることを特徴とする請求項2に記載のインホイールモータ駆動装置。
  4. 前記転がり軸受を構成する転動体がセラミックボールであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のインホイールモータ駆動装置。
  5. 前記転がり軸受を構成する保持器が樹脂製であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のインホイールモータ駆動装置。
  6. 前記モータ部に潤滑油を供給する潤滑機構をさらに有することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のインホイールモータ駆動装置。
  7. 前記減速部は、前記減速機入力軸と、この減速機入力軸の偏心部に回転自在に保持され、前記減速機入力軸の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う公転部材と、この公転部材の外周部に係合して公転部材に自転運動を生じさせる外周係合部材と、前記公転部材の自転運動を、前記減速機入力軸の回転軸心を中心とする回転運動に変換して前記減速機出力軸に伝達する運動変換機構とを備えた請求項1〜6の何れか一項に記載のインホイールモータ駆動装置。
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