JP2018172177A - 高純度薬品容器用ポリエチレン及び高純度薬品容器 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、半導体製造分野においては、ウェハ洗浄やエッチング等の工程において、各種洗浄液やフッ酸、過酸化水素水等の高純度薬品が使用されているが、半導体回路の集積度の向上とともに、これらの薬品中の不純物や微粒子に対する低減化の要求が一層厳しくなっており、この厳しい要求を満足させるために、これらの薬品を充填する容器に対するクリーン化の要求も年々高まっている。また、上記の要求とともに、これら薬品を充填する容器の大型化、高耐久性化等の要求も高まっている。
(1)密度(d)が0.950〜0.965g/cm3である。
(2)温度190℃、荷重21.6kgで測定されるメルトフローレート(HLMFR)が5〜20g/10分である。
(3)−20℃で測定されるシャルピー衝撃強度が7kJ/m2以上である。
(4)210℃で測定される溶融張力(MT)が80mN以上である。
(5)定ひずみESCRが40時間以上である。
(6)ノルマルヘキサン抽出量が0.20質量%以下である。
(7)灰分が20質量ppm以下である。
(8)レオメータにて測定される190℃、0.01rad/秒におけるtanδが1.00〜1.60である。
(9)レオメータにて測定される伸長粘度(ηe)(単位:Pa・s)及び剪断粘度(ηs)(単位:Pa・s)が下記の関係式(A)を満たす。
ηe≧16.5×ηs0.980 式(A)
(10)レオメータにて測定される伸長粘度(ηe)(単位:Pa・s)と剪断粘度(ηs)(単位:Pa・s)の比(ηe/ηs)が13.5〜21.0である。
(11)レオメータにて測定される伸長粘度(ηe)(単位:Pa・s)が60,000〜100,000である。
(12)直径0.2mm以上のフィッシュアイが150個/0.02m2以下である。
(13)ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が7.0を超え15.0以下である。
(14)リン系酸化防止剤が無添加である。
本発明の高純度薬品容器用ポリエチレンは、密度(d)が0.930〜0.950g/cm3、HLMFRが0.1〜2g/10分であるエチレン重合体(A)25〜49質量%、及び密度(d)が0.960〜0.970g/cm3、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分であるエチレン重合体(B)51〜75質量%を必須成分として含み、下記特性(1)〜(7)を有することを特徴とする。
(1)密度(d)が0.950〜0.965g/cm3である。
(2)温度190℃、荷重21.6kgで測定されるメルトフローレート(HLMFR)が5〜20g/10分である。
(3)−20℃で測定されるシャルピー衝撃強度が7kJ/m2以上である。
(4)210℃で測定される溶融張力(MT)が80mN以上である。
(5)定ひずみESCRが40時間以上である。
(6)ノルマルヘキサン抽出量が0.20質量%以下である。
(7)灰分が20質量ppm以下である。
また、本発明のポリエチレンは、特に、大型の容器に適し、大型の容器の成形においてしばしば課題となるシャークスキンが発生しにくく、かつ充填された薬液に対して長期間に渡って微粒子の溶出量が小さい大型高純度薬品容器を提供することができる。
ここで規定するシャークスキンとは、Rheol.Acta,2003,42,p.544−556、POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,2012,52,p.1968−1977、及び、POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,MARCH 2002,Vol.42,No.3,p.611−633等に定義されている流動の不安定現象の一種であり、緩和時間分布が狭いと発生しやすく、粘度が高いと発生しやすい。また、成形条件に依存することも知られており、高速成形において発生しやすく、特に大型容器の成形で発生し易い傾向にある。
シャークスキンは、ポリエチレンの分子量分布を広くしたり、緩和時間分布を広げることにより抑制することができる。また、成形においても、高温成形、低速成形することによって抑制可能であるが、樹脂が劣化することや、成形サイクルが低下するという問題がある。
本発明のポリエチレンは、高分子量成分であるエチレン重合体(A)と低分子量成分であるエチレン重合体(B)の組成割合において、エチレン重合体(A)よりもエチレン重合体(B)の組成割合を上記範囲内のように適度に大きくすることによって、緩和時間分布を適度に広げ、且つ、エチレン重合体(A)とエチレン重合体(B)の粘度差が大きくなり過ぎることによるフィッシュアイの増加を抑制し、シャークスキンの発生を抑制することができ、且つ、樹脂の劣化、及び、成形サイクルの低下を抑制することができる。
本発明の高純度薬品容器用ポリエチレンは、エチレン単独重合体又はエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体からなり、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセンが挙げられ、更に好ましくは1−ブテンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の重合方法により得られたエチレン重合体は、溶媒中に溶け込んだ分子量が低いポリエチレン(ワックス)を除去することが好ましい。ワックスを除去する方法としては、遠心分離機による除去、溶媒による洗浄による除去等が挙げられる。ワックスを除去することにより、成形加工時のワックス由来による成形機の汚れを抑えることが出来るだけでなく、成形された製品からのワックスの溶出等を抑えることも出来る。
本発明のポリエチレンは、密度(d)が、下限値は0.950g/cm3以上、好ましくは0.951g/cm3以上、より好ましくは0.952g/cm3以上であり、上限値は0.965g/cm3以下、好ましくは0.963g/cm3以下、より好ましくは0.960g/cm3以下である。密度が0.950g/cm3以上では、成形容器からの充填内溶液への溶出ポリマー成分が減少し、内溶液のクリーン性を向上させると共に剛性が向上する。また、密度が0.965g/cm3以下であると、容器の耐衝撃性が向上すると共にESCRが向上する。
密度は、JIS−K6922−1,2:1997年に準じて測定することができる。
密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができる。
本発明のポリエチレンは、温度190℃、荷重21.6kgで測定されるメルトフローレート(HLMFR)は下限値が5g/10分以上、好ましくは6g/10分以上、より好ましくは7g/10分以上、さらにより好ましくは9g/10分を超え、特に好ましくは12g/10分以上であり、上限値が20g/10分以下、好ましくは18g/10分以下、より好ましくは16g/10分以下である。
HLMFRが、5g/10分以上では流動性が向上し、吐出性能が向上し、容器の生産性が向上する。また、20g/10分以下であると耐ドローダウン性が向上し、容器成形性が良好となると共にESCRが向上する。
HLMFRは、JIS−K6922−2:1997年に準拠して測定することができる。HLMFRは、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。即ち、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより、分子量を下げた結果として、HLMFRを大きくすることができ、重合温度を下げることにより、分子量を上げた結果として、HLMFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより、分子量を下げた結果として、HLMFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより、分子量を上げた結果として、HLMFRを小さくすることができる。
本発明のポリエチレンは、−20℃で測定されるシャルピー衝撃強度の下限値が7kJ/m2以上、好ましくは10kJ/m2以上、より好ましくは13kJ/m2を超え、さらにより好ましくは14kJ/m2以上である。シャルピー衝撃強度が7kJ/m2以上であると、成形品の耐衝撃性が向上する。シャルピー衝撃強度の上限値は特に制限ないが、通常は30kJ/m2以下である。
シャルピー衝撃強度は、JIS K−7111(2004年)に準拠し、タイプ1の試験片を作製し、打撃方向はエッジワイズ、ノッチのタイプはタイプA(0.25mm)として、恒温槽で冷却し、−20℃で測定することができる。
シャルピー衝撃強度は、分子量、および分子量分布によりその値を制御することができる。即ち、分子量を高くすればシャルピー衝撃強度は高くなる。また、分子量分布を狭くし、低分子量の成分を減少させればシャルピー衝撃強度は高くなる。
本発明のポリエチレンは、210℃で測定される溶融張力(MT)が80mN以上であり、好ましくは100mN以上である。
溶融張力(MT)が80mN以上であることにより成形時のドローダウンが小さくなり成形しやすくなる。
溶融張力(MT)は、東洋精機製作所社製キャピログラフを使用し、ノズル径2.095mmφ、ノズル長8.00mm、流入角180°、設定温度210℃で、ピストン押出速度10.0mm/分、引取速度4.0m/分の条件で測定することができる。
溶融張力(MT)は、ポリエチレンの分子量、および分子量分布により調整することができ、通常、分子量を高くすれば溶融張力を大きくすることができる。また、分子量分布を広くし、高分子量の成分を多くすれば溶融張力は高くなる。
本発明のポリエチレンは、定ひずみESCRが60時間以上である。物性バランス、容器蓋要求性能から定ひずみESCRの下限値は、好ましくは100時間を超え、より好ましくは130時間を超え、さらに好ましくは140時間以上であり、上限値は、400時間以下が好ましい。これは一定ひずみ下での耐環境応力亀裂(ストレスクラック)性であり、具体的にはJIS−K6922−2:1997に従い作成された圧縮成形シートより、ASTM D 1693−01に準拠し、38×13×1.9mmの寸法の板を打ち抜き、ノッチを入れた試料を用い、50℃の温度条件で、イゲパール(CO−630)10vol%溶液中で測定されるものである。
この定ひずみESCRが60時間以上では、応力により容器蓋が破壊されにくく、内容物の液漏れを抑制できる。また、400時間以下であるものは、耐ストレスクラック性を良くすることができ、且つ、高剛性と容器蓋成形に適した流動性を両立させることができる。
本発明のポリエチレンは、ノルマルヘキサン抽出量が0.20質量%以下、好ましくは0.20質量%未満、より好ましくは0.10質量%以下である。
ノルマルヘキサン抽出量が0.20質量%以下であると、成形品のクリーン性が向上する。ノルマルヘキサン抽出量の下限値は特に制限されないが、少なければ少ないほど好ましい。
ノルマルヘキサン抽出量は、ソックスレー抽出器を用い、樹脂2gをノルマルヘキサン溶媒400mlで2時間抽出し、全樹脂に対する抽出分の質量%で示す。
本発明のポリエチレンは、灰分が20質量ppm以下である。
本発明のポリエチレンは、灰分が好ましくは15質量ppm以下である。
灰分が20質量ppm以下であると、成形品の容器から灰分由来の成分が内溶液へ溶出するのを抑制し、内溶液のクリーン性を向上させることができ、高純度薬品容器としての性能が向上する傾向がある。
灰分は、JIS K2272−1985に準拠し求めることができる。
灰分は、触媒の種類、助触媒の種類などで調整可能である。触媒としては、活性が高いものでないと、この要件を達成することが難しく、上述のマグネシウム、チタンを含む固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを組み合わせてなる触媒系が好ましい。
本発明のポリエチレンは、レオメータにて測定される190℃、0.01rad/秒におけるtanδが1.00〜1.60であることが好ましく、より好ましくは1.36〜1.59である。
レオメータにて測定される190℃、0.01rad/秒におけるtanδの測定は、熱プレスにより調整した試料を用い、レオメータ(Rheometrics社製Ares)を用い、190℃、角速度0.01rad/秒おける貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の測定を行い、tanδ(=G”/G’)を算出することができる。
本発明のポリエチレンは、レオメータにて測定される伸長粘度(ηe)(単位:Pa・s)及び剪断粘度(ηs)(単位:Pa・s)が下記の関係式(A)を満たすことが好ましい。
ηe≧16.5×ηs0.980 式(A)
ポリエチレンの伸長粘度ηe及び剪断粘度ηsが式(A)を満たすと、剪断粘度見合いの伸長粘度が高く、当該ポリエチレンの緩和時間分布が広いこと示す。緩和時間分布が広いと、成形品表面のシャークスキンが表れにくくなるため大型容器の成形性に優れる。
ポリエチレンの伸長粘度ηe及び剪断粘度ηsは、流入圧力損失法を用い、Cogswellの理論[Polymer Engineering Science、12巻、64−73頁(1972)]に基づいて、下記の条件で測定を行なうことにより求めることができる。
即ち、伸長粘度(ηe)及び伸長歪み速度(dε/dt)は、Cogswell(POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,JANUARY,1972,Vol.12,No.1)によって提唱されている以下の式(B)〜(D)を用いて算出することができる。
ηe=[9(n+1)2P0 2]/[32ηs(dγ/dt)2] 式(B)
dε/dt=4σs(dγ/dt)/[3(n+1)P0] 式(C)
σs=k(dγ/dt)n 式(D)
ここで、ηeは伸長粘度、ηsは剪断粘度、dγ/dtは剪断歪み速度、dε/dtは伸長歪み速度、σsは剪断応力、kは定数、式(D)の指数nは、メルトフラクチャーやスリップスティックの発生しない剪断速度領域における、剪断応力と剪断歪み速度がべき乗則に従うと仮定し、二次関数でフィッティングを行うことにより求められる。P0はキャピラリー長0のダイで生じる圧力損失であり、2つ以上の長さの異なるキャピラリーを用いた測定結果のBaglay補正により求められる。
なお、伸長粘度ηeとして、伸長歪み速度10s−1のときの値を内挿により求めた値を用い、剪断粘度ηsとして、剪断歪み速度10s−1のときの値を用いて求めることができる。
測定装置:Bohlin Instruments社製レオメータRH2000
測定温度:190℃
ロングダイ:長さ16mm、直径1mm、流入角180°
ショートダイ:長さ0.25mm、直径1mm、流入角180°
本発明のポリエチレンが関係式(A)を満たすためには、高分子量成分であるエチレン重合体(A)と低分子量成分であるエチレン重合体(B)の分子量と組成割合により調整することができる。
本発明のポリエチレンは、レオメータにて測定される伸長歪み速度10s−1における伸長粘度(ηe)(単位:Pa・s)及び剪断歪み速度10s−1における剪断粘度(ηs)(単位:Pa・s)の比(ηe/ηs)が13.5〜21.0の範囲を満たすことが好ましい。
本発明に用いられるポリエチレンの伸長粘度と剪断粘度の比(ηe/ηs)が前記範囲内にあると、成形時のシャークスキンの発生を抑制することができ、比表面積の増加によるクリーン度の低下を防ぐことができる。
伸長粘度と剪断粘度の比(ηe/ηs)は、好ましくは14.0〜20.0であり、更に好ましくは14.5〜19.0、より更に好ましくは15.0〜18.0である。この伸長粘度と剪断粘度の比(ηe/ηs)が上記下限値より小さいと、伸長粘度の低下により成形品表面にシャークスキンが発生しやすくなる為、比表面積の増加により内溶液への接触面積が増加しクリーン度が低下する恐れがある。一方、伸長粘度と剪断粘度の比(ηe/ηs)が上記上限値より大きいと、伸長粘度が高くなりすぎるため、メルトフラクチャーやスリップが発生しやすくなり、成形品外観の維持と成形が困難になるおそれがある。
ポリエチレンの伸長粘度とせん断粘度の比(ηe/ηs)は、高分子量成分であるエチレン重合体(A)と低分子量成分であるエチレン重合体(B)の分子量と組成割合により調整することができる。
本発明のポリエチレンは、レオメータにて測定される伸長歪み速度10s−1における伸長粘度(ηe)(単位:Pa・s)が60,000〜100,000Pa・sの範囲を満たすことが好ましい。
本発明に用いられるポリエチレンの伸長粘度(ηe)が前記範囲内にあると、成形時における耐ドローダウン性とメルトフラクチャーの抑制を両立することができる。
伸長粘度(ηe)は、好ましくは65,000〜95,000Pa・s、更に好ましくは68,000〜90,000Pa・s、より更に好ましくは70,000〜85,000Pa・sである。この伸長粘度が上記下限値より小さいと、成形時のドローダウンが発生しやすくなり、大型中空成形に適さない恐れがある。一方、伸長粘度が上記上限値より大きいと、伸長粘度が高くなりすぎるため、メルトフラクチャーやスリップが発生しやすくなり、成形品外観の維持と成形が困難になるおそれがある。
ポリエチレンの伸長粘度(ηe)は、ポリエチレンの流動性や高分子量成分であるエチレン重合体(A)と低分子量成分であるエチレン重合体(B)の分子量と組成割合により調整することができる。
本発明のポリエチレンは、直径0.2mm以上のフィッシュアイが150個/0.02m2以下であることが好ましい。
フィッシュアイが150個/0.02m2以下であることにより、成形品の内表面が平滑になり、内容液に接触する比表面積を小さくすることができるため、微粒子や金属の溶出を抑制することができる。
フィッシュアイは、40mmφ、スクリュ有効長(L/D)=26の単軸押出機を備えた空冷インフレーション成形機を用い、ブロー比3、引き取り速度15m/分の条件で、厚み25μm、折径235mmのインフレーションフィルムを作成し、CCD検出方式の検出器を用い0.2mm以上のフィッシュアイ数を計測することができる。
本発明のポリエチレンは、GPCにより求められるMw/Mnは、好ましくは7.0を超え15.0以下、より好ましくは9〜13、さらに好ましくは10〜12である。
GPCにより測定される分子量分布(Mw/Mn)は、重合体の各種物性、成形性の改良に関わり、成形品の外観等の改良にも関係する。
本発明のポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)が前記範囲内にあると、より優れた成形性を発揮することができる。また、前記分子量分布(Mw/Mn)が7.0を超えると、製品外観が優れる点、成形時の樹脂圧力が適切になって、シャークスキンなどの流動不安定現象を生じ難くなり、外観不良を抑制しやすい点から好ましい。一方、前記分子量分布(Mw/Mn)が15.0以下であると、成形品のピンチオフ形状が悪化することを抑制し、成形品としての衝撃強度を良好にしやすい。
[測定条件]
使用機種:日本ウォーターズ社製Alliance GPCV2000型
測定温度:145℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
カラム:昭和電工社製Shodex HT−806M ×2本+同 HT−G
流速:1.0mL/分
注入量:0.3mL
4mLバイアル瓶に試料3mg及びオルトジクロロベンゼン(0.1mg/mLの1,2,4−トリメチルフェノールを含む)3mLを秤り採り、樹脂製スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、温度150℃に設定したセンシュー科学社製SSC−9300型高温振とう機を用いて2時間溶解を行う。溶解終了後、不溶成分がないことを目視で確認する。
[較正曲線の作成]
4mLガラス瓶を4本用意し、それぞれに下記(1)〜(4)の組み合わせの単分散ポリスチレン標準試料又はn−アルカンを0.2mgずつ秤り採り、続いてオルトジクロロベンゼン(0.1mg/mLの1,2,4−トリメチルフェノールを含む)3mLを秤り採り、樹脂製スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、温度150℃に設定したセンシュー科学社製SSC−9300型高温振とう機を用いて2時間溶解を行う。
(1)Shodex S−1460,同S−66.0,n−エイコサン
(2)Shodex S−1950,同S−152,n−テトラコンタン
(3)Shodex S−3900,同S−565,同S−5.05
(4)Shodex S−7500,同S−1010,同S−28.5
試料溶液が入ったバイアル瓶を装置にセットし、前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1秒でクロマトグラム(保持時間と示差屈折計検出器の応答のデータセット)を記録する。得られたクロマトグラムから各ポリスチレン標準試料の保持時間(ピーク頂点)を読み取り、分子量の対数値に対してプロットする。ここで、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの分子量は、それぞれ600及び1200とする。このプロットに非線形最小自乗法を適用し、得られた4次曲線を較正曲線とする。
前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1秒でクロマトグラムを記録する。
このクロマトグラムから、森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)第4章p.51〜60に記載の方法で微分分子量分布曲線及び平均分子量値(Mn、Mw及びMz)を算出する。但し、dn/dcの分子量依存性を補正するため、クロマトグラムにおけるベースラインからの高さHを下記の式にて補正する。クロマトグラムの記録(データ取り込み)及び平均分子量計算は、Microsoft社製OS Windows(登録商標)XPをインストールしたPC上で自社製プログラム(Microsoft製Visual Basic6.0で作成)を用いて行う。
H’=H/[1.032+189.2/M(PE)]
なお、ポリスチレンからポリエチレンへの分子量変換は、下記の式を用いる。
M(PE)=0.468×M(PS)
エチレン系重合体のMw/Mnは、触媒の種類の影響を受け易く、一般にフィリプス触媒によれば分子量分布が広く、メタロセン触媒によれば分子量分布が狭く、チーグラー触媒によればその中間的な分子量分布を有する重合体となる。
本発明のポリエチレンは、リン系酸化防止剤が無添加であることが好ましい。リン系酸化防止剤が無添加であることにより、高純度薬品容器として用いることができ、例えば、半導体の製造用に用いる薬品等の容器として用いることができる。
本発明のポリエチレンは、Tiの含有量がポリエチレン全体に対して1.5質量ppm以下が好ましく、更に好ましくは1.0質量ppm以下、好適には0.9質量ppm以下である。当該割合が1.5質量ppm以下であると、成形品へのTiの溶出量を減少させ、高純度薬品容器としての性能が向上する傾向がある。
Tiの含有量は、石英製ビーカーに試料約0.5gを採取し、これに2mlの硫酸を添加し、加熱して試料を炭化後、加熱しながら、無色〜淡黄色の透明な溶液が得られるまで、「加熱、放冷、硝酸添加」を繰り返し、冷却後、純水により50mlに定容、更に10倍に希釈して、ICP−MS(Inductively Coupled Plasma − Mass Spectrometry(誘導結合プラズマ質量分析法))により目的の金属元素を測定し、試料中濃度に換算することにより求めることができる。
当該含有量は、触媒の種類、助触媒の種類などで調整可能である。触媒としては、活性が高いものでないと本発明の要件を達成することが難しく、上述のマグネシウム、チタンを含む固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを組み合わせてなる触媒系が好ましい。
本発明のポリエチレンは、Alの含有量がポリエチレン全体に対して3.0質量ppm以下が好ましく、更に好ましくは2.0質量ppm以下、好適には1.6質量ppm以下である。当該割合が3.0質量ppm以下であると、成形品へのAlの溶出量を減少させ、高純度薬品容器としての性能が向上する傾向がある。
Alの含有量は、石英製ビーカーに試料約0.5gを採取し、これに2mlの硫酸を添加し加熱して試料を炭化後、加熱しながら、無色〜淡黄色の透明な溶液が得られるまで、「加熱、放冷、硝酸添加」を繰り返し、冷却後、純水により50mlに定容、更に10倍に希釈して、ICP−MSにより目的の金属元素を測定し、試料中濃度に換算することにより求めることができる。
当該含有量は、触媒の種類、助触媒の種類などで調整可能である。触媒としては、活性が高いものでないと本発明の要件を達成することが難しく、上述のマグネシウム、チタンを含む固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを組み合わせてなる触媒系が好ましい。
本発明のポリエチレンは、密度(d)が0.930〜0.950g/cm3、HLMFRが0.1〜2g/10分であるエチレン重合体(A)25〜49質量%、及び密度(d)が0.960〜0.970g/cm3、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分であるエチレン重合体(B)51〜75質量%を必須成分とすることにより、特性(1)〜(7)を同時に満足する。
エチレン重合体(A)の組成割合が25質量%以上であれば、規定のHLMFRを満たすために高分子量の成分であるエチレン重合体(A)の分子量を極端に大きくする必要がなく、低分子量の成分であるエチレン重合体(B)との分子量差を小さくすることができ、粘度差が小さくなるため、本発明のポリエチレンにおいて、HLMFRが規定の範囲内でエチレン重合体(A)の適度な分散を維持することができ、フィッシュアイの発生を抑制でき、且つ、良好な成形性と、耐環境応力亀裂性を達成することができる。
一方、エチレン重合体(A)の組成割合が49質量%以下であれば、本発明のポリエチレンの分子量分布が適度に広くなり、緩和時間分布を広げ、シャークスキンの発生を抑制することができる。
本発明に用いられるエチレン重合体(A)は、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体である。エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体の製造方法は後述する。
エチレン重合体(A)は、密度が、下限値は0.930g/cm3以上、好ましくは0.933g/cm3以上、更に好ましくは0.935g/cm3以上であり、上限値は0.950g/cm3以下、好ましくは0.945g/cm3以下、更に好ましくは0.940g/cm3以下である。
エチレン重合体(A)の密度は、前述の本発明のポリエチレンの特性(1)の密度と同様の方法で測定することができる。
エチレン重合体(A)の密度が0.930g/cm3以上であると、成形品の所望の剛性が得られ、一方、0.950g/cm3以下であると、耐久性が向上する。
エチレン重合体(A)の密度の調整は、例えば、エチレンと共重合させるα−オレフィンの量を変化させることによって行うことができ、α−オレフィンの量を増加させると小さくすることができる。
エチレン重合体(A)のHLMFRが0.1g/10分以上であると、成形時に所望の流動性が得られ、成形安定な状態となる。HLMFRが2g/10分以下であると、耐衝撃性が向上する傾向がある。
エチレン重合体(A)のHLMFRの調整は、エチレン重合中に共存させる連鎖移動剤(水素等)の量を変化させるか、重合温度を変化させることによって、調整することができ、水素の量を増加させる又は重合温度を高くすることにより、大きくすることができる。
本発明に用いられるエチレン重合体(B)は、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体である。
エチレン重合体(B)は、密度が、下限値は0.960g/cm3以上、好ましくは0.961g/cm3以上、更に好ましくは0.962g/cm3以上であり、上限値は0.970g/cm3以下、好ましくは0.969g/cm3以下、更に好ましくは0.968g/cm3以下である。
エチレン重合体(B)の密度は、前述の本発明のポリエチレンの特性(1)の密度と同様の方法で測定することができる。
エチレン重合体(B)の密度が0.960g/cm3以上であると、成形品の所望の剛性が得られ、一方、0.970g/cm3以下であると、耐衝撃性が向上する。
エチレン重合体(B)の密度の調整は、例えば、エチレンと共重合させるα−オレフィンの量を変化させることによって行うことができ、α−オレフィンの量を増加させると小さくすることができる。
エチレン重合体(B)のMFRが1g/10分以上では、流動性が向上し、所望の押出特性が得られるため好ましい。一方、エチレン重合体(B)のMFRが50g/10分以下であると、所望の耐衝撃性が得られるため好ましい。
なお、MFRは、JIS K6922−2:1997に準拠して測定することができる。
エチレン重合体(B)のMFRは、主にエチレン重合体(B)の製造時の水素量により調整することができる。
本発明のポリエチレンに含まれるエチレン重合体は、通常の一段重合で重合して得ることもできるが、条件を変えて重合した成分を混合したり、逐次多段重合による組成物として製造することもできる。
本発明において、前記エチレン重合体(A)及びエチレン重合体(B)が、重合触媒の存在下、少なくとも二基の重合反応器を組み合わせた多段重合により、少なくとも一方の重合反応器でエチレン単独重合体が重合され、少なくとも他の重合反応器でエチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとのエチレン共重合体が重合されることが好ましい。
本発明の高純度薬品容器用ポリエチレンは、ブロー成形、射出成形、押出成形、回転成形等の公知の成形方法により容器状に成形することにより高純度薬品容器とすることができる。特に、クリーンルーム内に設置したブロー成形機を使用し、フィルターで微粒子を取り除いたエアーをブローエアーに用いたブロー成形方法は、クリーンな容器を製造するのに好ましい。
高純度薬品容器の形状は、特に限定されない。
高純度薬品容器の内容積は、特に限定されないが、好ましくは、5L〜1000L、より好ましくは、10L〜500L、更に好ましくは20L〜300Lである。
(1)密度(d):
JIS−K6922−1,2:1997に準拠して測定した。
(2)温度190℃、荷重21.6kgで測定されるメルトフローレート(HLMFR):
JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
(3)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR):
JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
JIS K−7111(2004年)に準拠し、タイプ1の試験片を作製し、打撃方向はエッジワイズ、ノッチのタイプはタイプA(0.25mm)として、恒温槽で冷却し、−20℃で測定した。
東洋精機製作所社製キャピログラフを使用し、ノズル径2.095mmφ、ノズル長8.00mm、流入角180°、設定温度210℃で、ピストン押出速度10.0mm/分、引取速度4.0m/分の条件で測定した。
JIS−K6922−2:1997準拠し、圧縮成形シートの作成を行い、ASTM D 1693−01に準拠し、試験液としてイゲパール(CO−630)10vol%溶液を用い、50℃の温度条件で測定を行い、対数確率紙にプロットを行い、50%亀裂発生時間(F50)を求めた。
ソックスレー抽出器を用い、樹脂2gをノルマルヘキサン溶媒400mlで2時間抽出した。全樹脂に対する抽出分の質量%で示した。
JIS K2272−1985に準拠し測定した。
レオメータにて測定される190℃、0.01rad/秒におけるtanδの測定は、熱プレスにより調整した試料を用い、レオメータ(Rheometrics社製Ares)を用い、190℃、角速度0.01rad/秒おける貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の測定を行い、tanδ(=G”/G’)を算出した。測定時の条件は下記に記す。
[測定条件]
装置:Rheometrics社製Ares
冶具:直径25mmパラレルプレート、プレート間隔約1.7mm
測定温度:190℃
歪み:5%
ポリエチレンの伸長粘度ηe及び剪断粘度ηsは、流入圧力損失法を用い、Cogswellの理論[Polymer Engineering Science、12巻、64−73頁(1972)]に基づいて、下記の条件で測定を行なうことにより求めた。
即ち、伸長粘度(ηe)及び伸長歪み速度(dε/dt)は、Cogswellによって提唱されている以下の式(B)〜(D)を用いて算出した。
ηe=[9(n+1)2P0 2]/[32ηs(dγ/dt)2] 式(B)
dε/dt=4σs(dγ/dt)/[3(n+1)P0] 式(C)
σs=k(dγ/dt)n 式(D)
ここで、ηeは伸長粘度、ηsは剪断粘度、dγ/dtは剪断歪み速度、dε/dtは伸長歪み速度、σsは剪断応力、kは定数、式(D)の指数nは、メルトフラクチャーやスリップスティックの発生しない剪断速度領域における、剪断応力と剪断歪み速度がべき乗則に従うと仮定し、二次関数でフィッティングを行うことにより求めた。P0はキャピラリー長0のダイで生じる圧力損失であり、2つ以上の長さの異なるキャピラリーを用いた測定結果のBaglay補正により求めた。
なお、伸長粘度ηeとして、伸長歪み速度10s−1のときの値を内挿により求めた値を用い、剪断粘度ηsとして、剪断歪み速度10s−1のときの値を用いて求めた。
測定装置:Bohlin Instruments社製レオメータRH2000
測定温度:190℃
ロングダイ:長さ16mm、直径1mm、流入角180°
ショートダイ:長さ0.25mm、直径1mm、流入角180°
フィッシュアイは、40mmφ、スクリュ有効長(L/D)=26の単軸押出機を備えた空冷インフレーション成形機を用い、ブロー比3、引き取り速度15m/分の条件で、厚み25μm、折径235mmのインフレーションフィルムを作成し、CCD検出方式の検出器を用い0.2mm以上のフィッシュアイ数を計測した。
下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
[測定条件]
使用機種:日本ウォーターズ社製Alliance GPCV2000型
測定温度:145℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
カラム:昭和電工社製Shodex HT−806M ×2本 + 同 HT−G
流速:1.0mL/分
注入量:0.3mL
4mLバイアル瓶に試料3mg及びオルトジクロロベンゼン(0.1mg/mLの1,2,4−トリメチルフェノールを含む)3mLを秤り採り、樹脂製スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、温度150℃に設定したセンシュー科学製SSC−9300型高温振とう機を用いて2時間溶解を行った。溶解終了後、不溶成分がないことを目視で確認した。
[較正曲線の作成]
4mLガラス瓶を4本用意し、それぞれに下記(1)〜(4)の組み合わせの単分散ポリスチレン標準試料又はn−アルカンを0.2mgずつ秤り採り、続いてオルトジクロロベンゼン(0.1mg/mLの1,2,4−トリメチルフェノールを含む)3mLを秤り採り、樹脂製スクリューキャップ及びテフロン(登録商標)製セプタムで蓋をした後、温度150℃に設定したセンシュー科学製SSC−9300型高温振とう機を用いて2時間溶解を行った。
(1)Shodex S−1460,同S−66.0,n−エイコサン
(2)Shodex S−1950,同S−152,n−テトラコンタン
(3)Shodex S−3900,同S−565,同S−5.05
(4)Shodex S−7500,同S−1010,同S−28.5
試料溶液が入ったバイアル瓶を装置にセットし、前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1sでクロマトグラム(保持時間と示差屈折計検出器の応答のデータセット)を記録した。得られたクロマトグラムから各ポリスチレン標準試料の保持時間(ピーク頂点)を読み取り、分子量の対数値に対してプロットした。ここで、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの分子量は、それぞれ600及び1200とした。このプロットに非線形最小自乗法を適用し、得られた4次曲線を較正曲線とした。
前述の条件にて測定を行い、サンプリング間隔1sでクロマトグラムを記録した。このクロマトグラムから、森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)第4章p.51〜60に記載の方法で微分分子量分布曲線及び平均分子量値(Mn、Mw及びMz)を算出した。ただし、dn/dcの分子量依存性を補正するため、クロマトグラムにおけるベースラインからの高さHを下記の式にて補正した。クロマトグラムの記録(データ取り込み)及び平均分子量計算は、Microsoft社製OS Windows(登録商標)XPをインストールしたPC上で自社製プログラム(Microsoft製Visual Basic6.0で作成)を用いて行った。
H’=H/[1.032+189.2/M(PE)]
なお、ポリスチレンからポリエチレンへの分子量変換は、下記の式を用いた。
M(PE)=0.468×M(PS)
石英製ビーカーに試料約0.5gを採取し、これに2mlの硫酸を添加し加熱して試料を炭化後、加熱しながら、無色〜淡黄色の透明な溶液が得られるまで、「加熱、放冷、硝酸添加」を繰り返した。冷却後、純水により50mlに定容、更に10倍に希釈して、ICP−MSにより目的の金属元素を測定し、試料中濃度に換算した。
石英製ビーカーに試料約0.5gを採取し、これに2mlの硫酸を添加し加熱して試料を炭化後、加熱しながら、無色〜淡黄色の透明な溶液が得られるまで、「加熱、放冷、硝酸添加」を繰り返した。冷却後、純水により50mlに定容、更に10倍に希釈して、ICP−MSにより目的の金属元素を測定し、試料中濃度に換算した。
小型多層ブロー成形機であるタハラ社製TP−5を用い、温度200℃、スクリュー回転数40rpm、ダイス径18mm、コア径15mmでの1時間あたりの吐出量及び、樹脂圧力を測定した。吐出量が15kg/hr以上でありかつ樹脂圧力が25MPa以下であるものを「〇」、それ以外のものを「×」とした。
吐出性と同一条件にて、パリソン長が12cmと60cmに達する時間を測定し、下記の計算式により、ドローダウン率を算出した。
ドローダウン率=(パリソン長が60cmに達する時間)/(パリソン長が12cmに達する時間)
ドローダウン率が4.5以上であるものを「〇」、それ以外のものを「×」とした。
上記ブロー成形した内容積500mLボトルをクリーンルーム内で安水(三菱化学社製電子工業用ELアンモニア水;29%アンモニア水溶液)にて5回洗浄後、容器に安水を充填し3ヶ月間放置後に0.2μm以上の微粒子の数をリオン社製KL−25型液体微粒子カウンターで測定した。
微粒子が100個以下であるものを「〇」、それ以外のものを「×」とした。
上記ブロー成形した内容積500mLボトルをクリーンルーム内で安水にて5回洗浄後、容器に安水を充填し3ヶ月間放置後にTi、Alの濃度測定を行った。金属溶出量が10質量ppb以下であるものを「〇」、それ以外のものを「×」とした。
<押出ストランドの作成>
インテスコ社製キャピラリーレオメータを使用し、ノズル径5mmφ、ノズル長10mm、流入角90°、設定温度190℃、低速条件としてピストン押出速度300mm/分(見かけのせん断速度:29sec−1)、高速条件としてピストン押出速度1000mm/分(見かけのせん断速度:97sec−1)の条件で押出した後、水冷し評価用ストランドを作成した。
<表面粗さ測定>
キーエンス社製超深度カラー3D形状測定顕微鏡を用い、10倍の対物レンズでストランドの長さ方向に連続で10視野を取込み、JIS B 0601−1994に準拠して面粗さの測定を実施した。
上記ブロー成形で得られた500mL容器の内表面および外表面の目視確認により判定した。シャークスキンの発生が認められなかったものを「○」、シャークスキンの発生が認められたものを「×」とした。
<大型容器の成形>
日本製鋼所製NB150多層中空成形機を用い、3層条件で内層/中間層/外層の比率を20/40/40質量%に固定し、各押出機は190℃の設定温度で、全て同じポリエチレン樹脂を流すことで単一組成の成形品とし、製品質量8.5kgの40L容器の成形を実施した。
上記ブロー成形で得られた40L容器の内表面の目視確認により判定した。シャークスキンの発生が認められなかったものを「○」、シャークスキンの発生が認められたものを「×」とした。
表面粗さ測定で得られた算術平均粗さ:Ra値の大きさで判定した。Ra値が20μmより小さいのものをシャークスキンの抑制効果が高いと判断し「○」、Ra値が20μm以上のものを「×」とした。
大型ブロー成形性、耐ドローダウン性、微粒子溶出性、金属溶出量、成形品肌、表面粗さ、シャークスキン抑制効果の全ての評価が良好なものを「○」、それ以外のものを「×」とした。
(A)固体触媒の調製
Mg(OEt)2を75gとTi(OBu)3Clを755gとn−C4H9OHを185gとを150℃で6時間混合して均一化し、冷却後ノルマルヘキサンを所定量加えて均一溶液にした。
次いで、所定温度にてエチルアルミニウムセスキクロライドを2285g滴下し1時間攪拌した。
更に、ノルマルヘキサンにて洗浄を繰り返して固体触媒1100gを得た。
上記固体触媒を用いて、0.6m3の反応器を2基直列に接続した装置を用いて連続重合を行った。
第1重合槽には、ノルマルヘキサン70kg/時、トリエチルアルミニウム1.5g/時、上記固体触媒成分を0.70g/時、エチレンを34kg/時、及び水素を連続的に供給し、重合温度90℃、気相中の水素を対エチレン濃度比で1.1モル/モルに保って連続重合を行った。
第2重合槽には第1重合槽の重合体スラリーを連続的に供給すると共に、ノルマルヘキサン47kg/時、エチレン28kg/時を連続的に供給し、重合温度を80℃、気相中の水素を対エチレン濃度で0.16モル/モル、ブテンを対エチレン濃度で0.026モル/モルに保って第2段目の重合を行った。
得られた重合スラリーは円心分離器にて固液分離を行い、乾燥工程を経て、ポリエチレンパウダーを得た。
得られたポリエチレンパウダーは添加剤を一切使用せずに、日本製鋼所製CIM90二軸混練機を用い、回転数300rpm、スロット幅25mm、処理量280kg/時の条件で混練後、120mmφ単軸押出機で樹脂温度278℃の条件でペレツト化し、物性測定を行った。
物性測定の結果を表1に示す。
上記で得られたポリエチレンを小型多層ブロー成形機であるタハラ社製TP−5を用い、温度200℃、スクリュー回転数40rpmでピンチオフ長さが底部直径の95%になるように適宜ダイコアを選択しながら、500mLボトルを成形した。ブロー成形性の評価結果及び成形品の評価結果を表1に示す。
得られたポリエチレンは、ポリエチレン樹脂由来の微粒子や重合触媒成分由来の金属溶出成分が少なく、かつ成形時の耐ドローダウン性や吐出性等の成形性に優れ、しかもESCRに優れていた。
表1に示す特性を有するエチレン重合体(A)及びエチレン重合体(B)を製造し、その後、表1に示す特性を有するポリエチレンを製造したこと以外は実施例1と同様に行った。
当該ポリエチレンの物性及び評価結果を表1に示した。得られたポリエチレンは、ポリエチレン樹脂由来の微粒子や重合触媒成分由来の金属溶出成分が少なく、かつ成形時の耐ドローダウン性や吐出性等の成形性に優れ、しかもESCRに優れていた。
特開2015−183130号公報の実施例1に準じてポリエチレンのパウダーを得、本願実施例1のペレット化条件と同様にしてポリエチレン樹脂とそのブロー成形容器を得た。ポリエチレンの物性と容器の評価結果を表1に示す。
表1に示す特性を有するポリエチレンを製造したこと以外は実施例1と同様にして、そのブロー成形容器を得た。ポリエチレンの物性と容器の評価結果を表1に示す。
特開2015−183130号公報の比較例2に準じてポリエチレンのパウダーを得、本願実施例1のペレット化条件と同様にしてポリエチレン樹脂とそのブロー成形容器を得た。ポリエチレンの物性と容器の評価結果を表1に示す。
表1に示す実験結果を参酌しながら、実験結果を説明する。
表1から明らかなように、所定の割合で必須成分を含み、且つ、密度、メルトフローレート等の特性が本発明の要件を満たすポリエチレンからなる容器は、大型ブロー成形性に優れ、容器の剛性、クリーン性に優れていた(実施例1〜3)。
一方、比較例1では、耐ドローダウン性や吐出性等の成形性に優れ、ESCRや耐衝撃性等の物性とクリーン性のバランスに優れるものの、エチレン重合体(A)およびエチレン重合体(B)の組成比率が本発明の要件を満たさないため、大型容器の成形においてシャークスキンが発生しやすく、大型容器の成形において内表面肌が荒れ、長期の微粒子や金属溶出への影響が心配される結果であった。
比較例2では、エチレン重合体(A)およびエチレン重合体(B)の組成比率が本発明の要件を満たさないため、シャークスキンの改質効果は十分ではなく、大型容器の成形において内表面肌が荒れ、長期の微粒子や金属溶出への影響が心配される結果であった。
比較例3では、比較例1に比べて分子量分布が広く、かつ流動性が高くなっているため、500ml程度の小型容器におけるシャークスキンの改善効果は確認されたが、大型の成形におけるシャークスキンの改質効果は十分ではなく、大型容器の成形において内表面肌が荒れ、長期の微粒子や金属溶出への影響が心配される結果であった。
また、比較例4ではHLMFRが本発明の要件を外れるため、溶融張力が低下し、耐ドローダウン性が低下し、大型中空成形には適さない結果であった。
図1に示すように、実施例1〜3はいずれも関係式(A)の条件を満たすことがわかる。
一方、比較例1〜4はいずれも関係式(A)の条件を満たさないことがわかる。
表1に示すように、関係式(A)の条件を満たす実施例1〜3は、成形品表面のシャークスキンが表れにくく、耐ドローダウン性が良好で、且つ、大型容器の成形性に優れることが実証された。
したがって、関係式(A)の条件を満たすことは、成形品表面のシャークスキンが表れにくく、耐ドローダウン性が良好で、且つ、大型容器の成形性に優れることの指標となる。
図2は、伸長粘度(ηe)と剪断粘度(ηs)の比とHLMFRの関係を示すグラフである。
図2に示すように、実施例1〜3は伸長粘度(ηe)と剪断粘度(ηs)の比とHLMFRとのバランスに優れていることがわかる。
したがって、実施例1〜3は、伸長粘度(ηe)と剪断粘度(ηs)の比が所望の値を有するため、成形時のシャークスキンの発生を抑制することができ、且つ、比表面積の増加によるクリーン度の低下を防ぐことができ、さらに、所望のHLMFRを有するため、大型容器の成形性に優れることがわかる。
Claims (10)
- 密度(d)が0.930〜0.950g/cm3、HLMFRが0.1〜1g/10分であるエチレン重合体(A)25〜49質量%、及び密度(d)が0.960〜0.970g/cm3、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分であるエチレン重合体(B)51〜75質量%を必須成分として含み、下記特性(1)〜(7)を有する高純度薬品容器用ポリエチレン。
(1)密度(d)が0.950〜0.965g/cm3である。
(2)温度190℃、荷重21.6kgで測定されるメルトフローレート(HLMFR)が5〜20g/10分である。
(3)−20℃で測定されるシャルピー衝撃強度が7kJ/m2以上である。
(4)210℃で測定される溶融張力(MT)が80mN以上である。
(5)定ひずみESCRが40時間以上である。
(6)ノルマルヘキサン抽出量が0.20質量%以下である。
(7)灰分が20質量ppm以下である。 - 更に下記の特性(8)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン。
(8)レオメータにて測定される190℃、0.01rad/秒におけるtanδが1.00〜1.60である。 - 更に下記の特性(9)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン。
(9)レオメータにて測定される伸長粘度(ηe)(単位:Pa・s)及び剪断粘度(ηs)(単位:Pa・s)が下記の関係式(A)を満たす。
ηe≧16.5×ηs0.980 式(A) - 更に下記の特性(10)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン。
(10)レオメータにて測定される伸長粘度(ηe)(単位:Pa・s)と剪断粘度(ηs)(単位:Pa・s)の比(ηe/ηs)が13.5〜21.0である。 - 更に下記の特性(11)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン。
(11)レオメータにて測定される伸長粘度(ηe)(単位:Pa・s)が60,000〜100,000である。 - 更に下記の特性(12)を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン。
(12)直径0.2mm以上のフィッシュアイが150個/0.02m2以下である。 - 更に下記の特性(13)を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン。
(13)ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が7.0を超え15.0以下である。 - 更に下記の特性(14)を満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン。
(14)リン系酸化防止剤が無添加である。 - 請求項1〜8のいずれか一項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレンの成形体であることを特徴とする高純度薬品容器。
- 内容積が5L〜1000Lであることを特徴とする請求項9に記載の高純度薬品容器。
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