JP2018170226A - 導電性積層体及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】基材との密着性に優れる被膜を有する導電性積層体の製造方法を提供すること。【解決手段】基材を溶剤で洗浄する工程と、基材の表面に紫外線を照射する工程と、基材上に銅含有粒子を含む組成物を配置する工程と、組成物を熱処理して、基材上に銅を含む被膜を形成する工程と、を備える、導電性積層体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性積層体及びその製造方法に関する。
導通を確保するための導電性積層体の形成方法として、金属粒子を含むインク、ペースト等の導電材料を用いて基材上に導電材料からなる被膜を形成する工程と、被膜を加熱して金属粒子を焼結させ、導電性を発現させる導体化工程とを含む方法が知られている。導電材料に含まれる金属粒子としては、金属の酸化を抑制して保存性を高めるために表面に被覆材としての有機物を付着させたものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特開2012−072418号公報 特開2012−226865号公報
しかし、金属粒子を焼結して形成された被膜は、基材によっては充分な密着性が得られず、導通が確保できない場合がある。近年用いられている基材は多様化しており、被膜の基材との密着性の向上が課題となっている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材との密着性に優れる被膜を有する導電性積層体の製造方法を提供することを主な目的とする。
本発明は、下記(1)〜(5)に示す導電性積層体の製造方法及び下記(6)に示す導電性積層体を提供する。
(1)基材を溶剤で洗浄する工程と、基材の表面に紫外線を照射する工程と、基材上に銅含有粒子を含む組成物を配置する工程と、組成物を熱処理して、基材上に銅を含む被膜を形成する工程と、を備える、導電性積層体の製造方法。
(2)銅含有粒子が、銅を含むコア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物と、を有し、有機物が、炭素数が7以下である炭化水素基を有するアルキルアミンを含む、(1)に記載の導電性積層体の製造方法。
(3)溶剤が、水又は有機溶剤を含む、(1)又は(2)に記載の導電性積層体の製造方法。
(4)紫外線を照射する工程が、空気雰囲気下で照射する工程である、(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性積層体の製造方法。
(5)熱処理の温度が、100℃〜250℃である、(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性積層体の製造方法。
(6)基材と、基材上に設けられた被膜と、を備え、被膜が、銅含有粒子を含む組成物を焼結してなる焼結体を含む、導電性積層体。
本発明によれば、基材との密着性に優れる被膜を有する導電性積層体の製造方法を提供することができる。また、このような製造方法によって得られる導電性積層体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「層」又は「膜」とは、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
本明細書において「積層体」とは、層を積み重ねることを示し、2つ以上の層が結合されていてもよく、2つ以上の層が着脱可能であってもよい。
本明細書において「導体化」とは、金属含有粒子を焼結させて導電性を有する物体に変化させることをいう。「導体」とは、導電性を有する物体をいい、より具体的には体積抵抗率が1000μΩ・cm以下である物体をいう。
(導電性積層体の製造方法)
本実施形態の導電性積層体の製造方法は、基材を溶剤で洗浄する工程(溶剤洗浄工程)と、基材の表面に紫外線を照射する工程(紫外線照射工程)と、基材上に銅含有粒子を含む組成物を配置する工程(組成物配置工程)と、組成物を熱処理して、基材上に銅を含む被膜を形成する工程(導体化工程)と、を備える。本実施形態の導電性積層体の製造方法は、必要に応じて、備えていてもよい。
本実施形態の導電性積層体の製造方法は、上記構成を採用することで、基材との密着性に優れる被膜を有する導電性積層体を得ることができる。また、銅を含むコア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物と、を有し、有機物が、炭素数が7以下である炭化水素基を有するアルキルアミンを含む銅含有粒子を用いることによって、低温でかつ簡略な工程で銅含有粒子を含む組成物を導体化して、導体(銅を含む被膜)を得ることができ、耐熱性が比較的低い基材上にも導体を形成可能となる。
その理由は以下のように推察される。密着性の低下の原因と考えられるものに、基材の表面に存在する有機汚染物質があり、これを効果的に除去する必要がある。基材を溶剤で洗浄する工程では、比較的大きな有機汚染物質及びその他の汚染物質が除去される。基材に紫外線を照射する工程では、溶剤での洗浄工程では除去できなかった微小な有機汚染物質を除去することができる。したがって、このような基材上で銅含有粒子を含む組成物を導体化した場合、得られる被膜は、基材との密着性に優れるものとなり得る。また、銅含有粒子が、銅を含むコア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物と、を有するものである場合、比較的低温での加熱、具体的には100℃〜250℃の温度で導体化が可能である。その結果、銅含有粒子を含む組成物を低温で導体化した場合においても、基材との密着性に優れるものとなり得る。
(溶剤洗浄工程)
溶剤洗浄工程では、基材に付着した汚染物質を除去することができる。汚染物質は有機汚染物質、無機汚染物質、金属汚染物質等が挙げられるが、洗浄方法、溶剤の種類等は、基材の形状、汚染の程度によって適宜選択することができる。
使用される基材の材質は、特に制限されず、導電性を有していても有していなくてもよい。例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、ニッケル、錫、コバルト、鉄、アルミニウム等の金属、これら金属の合金、酸化インジウム錫、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛、酸化インジウムガリウム亜鉛、ケイ素、炭化ケイ素、窒化ガリウム等の半導体、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス等のガラス、黒鉛、グラファイト等のカーボン材料、樹脂、紙などを挙げることができる。
銅含有粒子が、銅を含むコア粒子とコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物とを有するものである場合、低温で導体化が可能であるため、耐熱性が比較的低い材質からなる基材を用いることができる。このような材質としては、例えば、熱可塑性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。基材の形状は特に制限されず、板状、棒状、ロール状、フィルム状等であってもよい。
溶剤洗浄工程における洗浄方法は、基材にダメージを与えることなく、洗浄することができるものであれば、どのような方法であってもよい。洗浄方法の具体例としては、浸漬洗浄、撹拌洗浄、超音波洗浄、流水洗浄、スプレー洗浄等が挙げられる。これらの洗浄は、1種を単独で行っても、複数を併用して行ってもよい。また、溶剤洗浄工程後に溶剤を除去する工程をさらに備えていてもよい。溶剤を除去する工程としては、自然乾燥、加熱又は減圧による乾燥、窒素、アルゴン、空気等のガスを用いたブローによる乾燥などが挙げられるが、これらに限定されない。
溶剤洗浄工程で使用する溶剤は、水又は有機溶剤を含む。このような溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。また、市販の洗浄液、脱脂液等を使用してもよい。さらに、洗浄で使用する溶剤に界面活性剤等の添加剤を含んでもよい。
溶剤洗浄工程で使用する溶剤は、加熱したものを用いてもよい。溶剤を加熱する場合は、溶剤が揮発することを避ける観点から、加熱温度を50℃以下にすることが好ましい。加熱温度が50℃以下であると、溶剤の揮発量を抑えることができ、洗浄効率に優れる傾向にある。
溶剤洗浄工程の洗浄時間は、基材を洗浄することができるのであれば、とくに制限されず、適宜設定することができる。洗浄時間は、5秒〜3000秒であることが好ましく、10秒〜1000秒であることがより好ましく、15秒〜500秒であることがさらに好ましい。洗浄時間が5秒以上であると、基材に付着した汚染物質をより充分に洗浄することができる。洗浄時間が3000秒以下であると、効率の悪化を防ぐことができる。
(紫外線照射工程)
紫外線照射工程では、短波長光エネルギーが基材の表面上の有機汚染物質の結合を分解し、同時に紫外線により発生するオゾンから分離した活性酸素が有機汚染物質と化学的に結合し、有機汚染物質を二酸化炭素、水等の揮発性物質に変換することができる。紫外線照射工程は、より詳細には、第一の工程として、酸素分子が波長185nmの紫外線を吸収してオゾン分子を生成し、かつ短波長光エネルギーが有機汚染物質の結合を分解する。第二の工程として、生成したオゾン分子が波長254nmの紫外線を吸収して酸素分子と活性酸素を生成し、生成した活性酸素が有機汚染物質と結びついて二酸化炭素、水等の揮発性物質に分解反応して除去する。これにより、溶剤洗浄工程では除去することができなかった微小な有機汚染物質を除去することができる。さらに、基材が樹脂等の有機物である場合は、活性酸素が基材の表面と結びついて改質することができる。改質した表面の効果としては、例えば、基材の表面のぬれ性の向上、基材の表面と接する層との密着性の向上等が期待できる。
紫外線照射工程に使用する紫外線発生源は、特に制限されないが、オゾン及び活性酸素を効果的に生成することができる紫外線発生源であることが好ましい。そのような紫外線発生源として、低圧水銀ランプ等が挙げられる。紫外線発生源から発生する紫外線の照度は、0.5mW/cm〜1000mW/cmであることが好ましい。さらに、紫外線照射における雰囲気は、オゾン及び活性酸素を効果的に生成するため、酸素を含む雰囲気であればよく、空気雰囲気下が好適である。
本発明における紫外線照射工程において、紫外線発生源から基材までの距離は、有機汚染物質を除去できれば、特に制限されないが、1mm〜1000mmが好ましく、3mm〜500mmがより好ましく、5mm〜200mmがさらに好ましい。紫外線発生源から基材までの距離が1mm以上であると、基材に酸素が効率よく供給される傾向にある。一方、1000mm以下であると紫外線が基材の表面に効率よく照射される傾向にある。
紫外線照射工程における照射時間は、微小な有機汚染物質を除去できるのであれば特に制限されないが、5秒〜10000秒が好ましく、10秒〜5000秒がより好ましく、15秒〜3000秒がさらに好ましい。照射時間が5秒以上であると、微小な有機汚染物質を充分に除去できる傾向にある。また、10000秒以下であると、基材への影響を防ぐことができる傾向にある。また、紫外線照射工程では、基材は加熱しても、加熱しなくてもよいが、加熱することによって、微小な有機汚染物質を効果的に除去することができる。
(組成物配置工程)
基材上に銅含有粒子を含む組成物を配置する方法は、組成物を基材上に任意の形状で形成可能な手法であれば特に制限はない。このような方法として、インクジェット法、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、転写印刷法、オフセット印刷法、ジェットプリンティング法、ディスペンス法、ジェットディスペンス法、ニードルディスペンス法、カンマコート法、バーコート法、スリットコート法、ダイコート法、グラビアコート法、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法、ソフトリソグラフ法、ディップペンリソグラフ法、粒子堆積法、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、電着塗装法等を挙げることができる。
基材上に配置された銅含有粒子を含む組成物の形状は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。また、銅含有粒子を含む組成物からなる層を形成した場合、層の厚みは特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば0.2μm〜50μmであることが好ましい。導電性及び接続信頼性の観点から、0.8μm〜20μmであることがより好ましい。
銅含有粒子を含む組成物は、銅含有粒子を含むものである。組成物には、必要に応じて分散媒、樹脂成分等のその他の成分を含んでもよい。
銅含有粒子は、銅を含むコア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物と、を有するものであってもよい。このような銅含有粒子としては、例えば、特開2016−037627で開示される銅含有粒子等が挙げられる。
特開2016−037627で開示される銅含有粒子は、銅を含むコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物として、炭素数が7以下である炭化水素基を有するアルキルアミンを含む。有機物を構成するアルキルアミンの炭化水素基の鎖長は比較的短いため、比較的低い温度でも熱分解し易い。
炭素数が7以下である炭化水素基を有するアルキルアミンは、例えば、1級アミン、2級アミン、アルキレンジアミン等であってもよい。1級アミンとして具体的には、エチルアミン、2−エトキシエチルアミン、プロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ブチルアミン、4−メトキシブチルアミン、イソブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン等を挙げることができる。2級アミンとして具体的には、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルペンチルアミン等を挙げることができる。アルキレンジアミンとして具体的には、エチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ジアミノへキサン、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン等を挙げることができる。
銅を含むコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物は、炭素数が7以下である炭化水素基を有するアルキルアミン以外の有機物を含んでいてもよい。有機物全体に対する、炭素数が7以下である炭化水素基を有するアルキルアミンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
銅含有粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物は、その割合がコア粒子及び有機物の合計に対して0.1質量%〜20質量%であることが好ましい。有機物の割合が0.1質量%以上であると、充分な耐酸化性が得られる傾向にある。有機物の割合が20質量%以下であると、低温での導体化が可能となり得る。コア粒子及び有機物の合計に対する有機物の割合は0.3質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがさらに好ましい。
銅含有粒子の大きさは、長軸の長さの平均値が10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。導体化温度を低くする観点からは長軸の長さの平均値が20nm〜500nmであることがより好ましく、30nm〜500nmであることがさらに好ましい。銅含有粒子の長軸は、銅含有粒子に外接し、互いに平行である二平面の間の距離が最大となるように選ばれる二平面間の距離を意味する。銅含有粒子の長軸は、電子顕微鏡による観察等の公知の方法により、測定することができる。長軸の長さの平均値は、無作為に選択される200個の銅含有粒子について測定した長軸の長さの算術平均値を意味する。なお、電子顕微鏡像から無作為に銅含有粒子を選択する際には、粒子径が3nm未満である銅含有粒子は測定対象から除外する。
銅含有粒子の形状は特に制限されない。例えば、球状、長粒状、扁平状、繊維状等を挙げることができ、銅含有粒子の用途にあわせて選択できる。印刷用ペーストとして用いる観点からは、球状又は長粒状であることが好ましい。
銅含有粒子は、少なくとも銅を含み、必要に応じてその他の物質を含んでもよい。その他の物質としては、金、銀、白金、錫、ニッケル等の金属又はこれらの金属元素を含む化合物、還元性化合物又は有機物、酸化物、塩化物等を挙げることができる。導電性に優れる導体を形成する観点からは、銅含有粒子中の銅の含有率は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
表面の少なくとも一部が有機物によって被覆されている銅含有粒子は、空気中で保存している間も銅の酸化が抑制されており、酸化物の含有率が小さい。例えば、銅含有粒子中の酸化物の含有率は5質量%以下であってもよい。銅含有粒子中の酸化物の含有率は、例えばXRDによって測定することができる。
銅含有粒子の製造方法は特に制限されない。製造方法としては、例えば、特開2016−037626に開示される銅含有粒子の製造方法が挙げられる。
特開2016−037626に開示される銅含有粒子の製造方法は、銅前駆体として、炭素数が9以下である脂肪酸と銅との金属塩を使用するものである。これにより、銅前駆体としてシュウ酸銅等を用いる特許文献1に記載の方法と比較して、より沸点の低いアルキルアミンを反応媒として使用することが可能になると考えられる。その結果、得られる銅含有粒子の表面を被覆する有機物がより熱分解し易いものとなり、導体化を低温で実施することがより容易になる。
銅含有粒子を含む組成物は、必要に応じて、分散媒を含んでいてもよい。分散媒は、特に制限されず、導電インク、導電ペースト等の作製に一般に用いられる有機溶剤から用途に応じて選択できる。粘度調整の観点から、分散媒は、テルピネオール、イソボルニルシクロヘキサノール、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート等であってよい。
銅含有粒子を含む組成物は、必要に応じて、樹脂を含んでいてもよい。樹脂は、銅含有粒子を含む組成物を加熱して得られる被膜と基材との密着性を向上させ、被膜の酸化を抑制する観点から、熱硬化性樹脂であることが好ましく、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等であってもよい。銅含有粒子を含む組成物は、樹脂を硬化させるための硬化剤を含んでもよく、硬化を促進するための硬化促進剤を含んでいてもよい。さらに樹脂の分散性を向上されるため、銅含有粒子を含む組成物は、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤を含んでいてもよい。
銅含有粒子を含む組成物の粘度は、特に制限されず、用途に応じて選択できる。例えば、組成物をスクリーン印刷法によって薄膜を形成する場合、組成物の粘度は0.1Pa・s〜30Pa・sであることが好ましく、1Pa・s〜30Pa・sであることがより好ましい。組成物をスピンコート法によって薄膜を形成する場合、組成物の粘度は0.3mPa・s〜1000mPa・sであることが好ましく、1mPa・s〜800mPa・sであることがより好ましい。組成物の粘度はE型粘度計(東機産業株式会社製、製品名:VISCOMETER−TV22、適用コーンプレート型ロータ:3°×R17.65)を用いて測定される25℃における粘度を意味する。
銅含有粒子を含む組成物の製造方法は、特に限定されず、当該技術分野で通常用いられる方法を用いることができる。例えば、銅含有粒子及び必要に応じて含まれるその他の成分を分散媒中に分散処理することで調製することができる。分散処理は、石川式撹拌機、自転公転式撹拌機、超薄膜高速回転式分散機、ロールミル、超音波分散機、ビーズミル等のメディア分散機、ホモミキサー、シルバーソン撹拌機等のキャビテーション撹拌装置、アルテマイザー等の対向衝突装置を用いることができる。また、これらの分散処理は適宜組み合わせて用いてもよい。
(導体化工程)
導体化工程では、銅含有粒子を含む組成物を加熱することで、銅含有粒子を焼結させて導体化し、基材上に銅を含む被膜を形成する。これは、加熱により銅を含むコア粒子の表面を被覆する有機物が除去され、コア粒子同士が接触することで導体化が達成され得る。
導体化工程における熱処理温度は、導体化及び基材への影響の観点から、100℃〜250℃であることが好ましい。熱処理温度が100℃以上であると、充分な組成物の導体化及び充分な基材への密着性が得られる傾向にある。また、熱処理温度が250℃以下であると、基材への熱ダメージが大きく、導電性が抑制される傾向にある。また、基材が熱可塑性樹脂の場合、基材への熱ダメージを抑制しながら導体の密着性を得るためには、基材のガラス転移点に対して−40℃〜+40℃の範囲内で加熱することが好ましく、−30℃〜+30℃の範囲内で加熱することがより好ましく、−25℃〜+25℃で加熱することがさらに好ましい。
熱処理工程は一定の昇温速度で行っても、不規則に変化させてもよい。また、熱処理時間は特に限定されず、熱処理温度、熱処理雰囲気、銅含有粒子の量等を考慮して選択できる。熱処理時間は、充分な導電性と量産性を両立する観点から、5分〜120分であることが好ましい。熱処理時間が5分以上であると、充分な組成物の導体化が可能となり、120分以下であると、量産性の観点で好ましい。
熱処理工程における雰囲気は特に制限されず、通常の導体化処理で用いられる空気、窒素、アルゴン等から選択できる。予測しない反応を抑制するためには、窒素、アルゴン等の不活性ガスを使用するのが好ましい。
導電性積層体の製造方法は、必要に応じて、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、熱処理工程後に還元雰囲気中で加熱して生成した酸化物を還元する工程、熱処理工程後に光焼成で残存成分を除去する工程、熱処理工程後に荷重をかける工程等を挙げることができる。
(導電性積層体)
導電性積層体は、上述の導電性積層体の製造方法により得られる。導電性積層体は、基材と、前記基材上に設けられた被膜と、を備え、被膜が、銅含有粒子を含む組成物を焼結してなる焼結体を含む。導電性積層体の製造方法では、基材を溶剤で洗浄し、かつ基材に紫外線を照射しているため、基材の表面に汚染物質がほとんどないと考えられる。そのため、被膜と基材がより強く密着していると推察される。
被膜(焼結体)の体積抵抗率は、その用途に応じた最適値が要求される。一般的には、1000μΩ・cm以下であることが好ましく、950μΩ・cm以下であることがより好ましく、900μΩ・cm以下であることがさらに好ましい。
被膜(焼結体)の形状は、特に制限されず、薄膜状、バンプ状、パターン状等であってもよい。導電性積層体は、種々の電子部品の配線等に使用できる。特に、導電性積層体は低温で製造できるため、耐熱性の低い基材上に金属箔、接続用端子、配線パターン等を形成する用途に好適に用いられる。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[ノナン酸銅の合成]
水酸化銅(関東化学株式会社、特級)91.5g(0.94mmol)に1−プロパノール(関東化学株式会社、特級)150mLを加えて撹拌し、これにノナン酸(関東化学株式会社、90%以上)370.9g(2.34mmol)を加えた。得られた混合物を、セパラブルフラスコ中で90℃、30分間加熱撹拌した。得られた溶液を加熱したままろ過して未溶解物を除去した。その後放冷し、生成したノナン酸銅を吸引ろ過し、洗浄液が透明になるまでヘキサン洗浄した。得られた粉体を50℃の防爆オーブンで3時間乾燥してノナン酸銅(II)を得た。収量は340g(収率96質量%)であった。
[銅含有粒子の合成]
上記で得られたノナン酸銅(II)15.0g(0.04mol)と酢酸銅(II)無水物(関東化学株式会社、特級)7.2g(0.04mol)をセパラブルフラスコに入れ、1−プロパノール(関東化学株式会社、特級)85.0gとヘキシルアミン(東京化成工業株式会社、純度99%)32.1g(0.32mol)を添加し、オイルバス中80℃で加熱撹拌して溶解させた。氷浴に移し、内温が5℃になるまで冷却した後、ヒドラジン一水和物(関東化学株式会社、特級)8.0g(0.16mol)を脂肪酸銅の溶液に加え、氷浴中で撹拌した。尚、銅:ヘキシルアミンのモル比は1:4である。次いで、オイルバス中90℃で加熱撹拌した。その際、発泡を伴う還元反応が進み、10分以内で反応が終了した。セパラブルフラスコの内壁が銅光沢を呈し、溶液が暗赤色に変化した。遠心分離を4000rpm(回転/分)で10分間実施して固体物を得た。固形物をさらにヘキサンで洗浄する工程を2回繰り返し、酸残渣を除去して、銅光沢を有する銅含有粒子の粉体を含む銅ケークを得た。
[銅含有粒子を含む組成物の調製]
得られた銅ケーク(71質量部)、ウレタン樹脂溶液(商品名:ユリアーノU201、荒川化学工業株式会社)(11質量部)及びテルピネオール(17質量部)を、自転公転式撹拌機(商品名:あわとり錬太郎、株式会社シンキー)で混合して、銅含有粒子を含む組成物を調製した。
(実施例1)
基材として、スライドガラス(商品名:S9213、松浪硝子工業株式会社)をアセトン(関東化学株式会社、特級)中、室温(20℃)で1分間浸漬洗浄して、その後、窒素ブローでアセトンを除去した。次に、紫外線洗浄改質装置(商品名:PL16−110A、センエンジニアリング株式会社)を使用して、紫外線発生源からスライドガラスまでの距離を20mmに設定し、オゾン及び活性酸素を含む空気雰囲気下で5分間照射し、有機汚染物質を除去した基材を得た。上述の銅含有粒子を含む組成物を、基材上にバーコーターを用いて塗布し、組成物からなる組成物層を形成した。得られた組成物層を有する基材を焼成炉に入れて加熱して金属銅の薄膜を形成した。加熱は、空気雰囲気下、昇温速度40℃/分で130℃まで加熱し、30分間保持することによって行った。
得られた金属銅の薄膜を有する導電性積層体を硫酸水溶液(10vol%)に室温で1分間浸漬して生成した酸化物を除去した。その後室温で1分間水洗して、50℃で5分間乾燥した。得られた金属銅の薄膜の体積抵抗率を、4端針面抵抗測定器(商品名:ロレスタMCP−T610、株式会社三菱化学アナリテック)で測定した面抵抗値と、接触式の段差計(商品名:ET200、株式会社小坂製作所)で求めた膜厚とから計算した。結果を表1に示す。
得られた導電性積層体における金属銅の薄膜と基材との密着性を、JIS K5600(1999)に準拠して2mm角クロスカット試験で評価した。格子の目において、はがれがなければ「A」、カットの交差点における塗膜において、小さなはがれがあれば「B」、塗膜がカットの線に沿うように、交差点ではがれがあれば「C」、それ以上の部分的、全面的はがれがあれば「D」と評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
アセトンによる浸漬洗浄に代えて、エタノール(関東化学株式会社、特級)を用いて浸漬洗浄を行った以外は、実施例1と同様にして導電性積層体を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
アセトンによる浸漬洗浄に代えて、2−プロパノール(関東化学株式会社、特級)を用いて浸漬洗浄を行った以外は、実施例1と同様にして導電性積層体を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
基材に対してアセトンによる浸漬洗浄を行わなかった以外は、実施例1と同様にして導電性積層体を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
基材に対して紫外線照射を行わなかった以外は、実施例1と同様にして導電性積層体を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
基材に対してアセトンによる浸漬洗浄及び紫外線照射を行わなかった以外は、実施例1と同様にして導電性積層体を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2018170226
表1に示すとおり、実施例1〜3及び比較例1〜3の導電性積層体は、いずれも体積抵抗率が低い導体が形成されていた。しかし、金属銅の薄膜と基材との密着性の点において、実施例1〜3の導電性積層体は、比較例1〜3の導電性積層体よりも優れていることが判明した。これらの結果から、本発明の製造方法によって得られる導電性積層体が、基材と被膜との密着性に優れることが確認された。

Claims (6)

  1. 基材を溶剤で洗浄する工程と、
    前記基材の表面に紫外線を照射する工程と、
    前記基材上に銅含有粒子を含む組成物を配置する工程と、
    前記組成物を熱処理して、基材上に銅を含む被膜を形成する工程と、
    を備える、導電性積層体の製造方法。
  2. 前記銅含有粒子が、銅を含むコア粒子と、前記コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物と、を有し、
    前記有機物が、炭素数が7以下である炭化水素基を有するアルキルアミンを含む、請求項1に記載の導電性積層体の製造方法。
  3. 前記溶剤が、水又は有機溶剤を含む、請求項1又は2に記載の導電性積層体の製造方法。
  4. 前記紫外線を照射する工程が、空気雰囲気下で照射する工程である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性積層体の製造方法。
  5. 前記熱処理の温度が、100℃〜250℃である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性積層体の製造方法。
  6. 基材と、前記基材上に設けられた被膜と、を備え、
    前記被膜が、銅含有粒子を含む組成物を焼結してなる焼結体を含む、導電性積層体。
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