以下、本発明の透過型スクリーンおよび背面投射型表示装置について説明する。
A.透過型スクリーン
本発明の透過型スクリーンは、光源側から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示する部材であって、観察側から入射する光を遮光する遮光機能、および観察側に絵柄を表示する絵柄機能を有し、パターン状の開口部を有する光学機能層と、上記光学機能層の上記開口部に配置されたパターン状の光拡散部とを備える部材である。
本発明の透過型スクリーンを構成する光学機能層と光拡散部とを有する積層体は、その少なくとも一部が湾曲していても良い。具体的には、観察側の面が三次元曲面をなす湾曲形状を有していても良い。ここで、三次元曲面とは、例えば、観察者側に凸となる三次元曲面や、光源側に凸となる三次元曲面、さらには、異なる位置において観察者側に凸となる曲面と光源側に凸となる曲面との双方を組み合わせた三次元曲面等が挙げられる。一方、上記積層体は、湾曲していなくても良い。この場合、上記積層体は、平面形状を有することとなる。なお、本明細書で示す図3以外の図面は、いずれも透過型スクリーンが湾曲していない例である。また、本発明における積層体は、光学機能層と光拡散部とを含む構成を指し、いくつかの部材が積層された構成のみを指すものではない。
以下、本発明の透過型スクリーンを、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
図1(a)は、本発明の透過型スクリーンを用いた背面投射型表示装置の一例を示す概略模式図である。また、図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。本発明の透過型スクリーンは、図1(a)に例示するように、透過型スクリーン100の一方の面側から、映像光原10から投射された映像光L10を他方の面側に透過して映像を表示することができる。他方の面側から観察者20が透過型スクリーン100を観察することで、観察者20は、当該映像を視認することができる。
図1(a)、(b)に示す本発明の透過型スクリーン100は、映像光を投射していない場合にも、観察側から後述する絵柄部1aに描画された絵柄を表示することができる。また、透過型スクリーン100は、図1(a)の拡大図および図1(b)に示すように、平面視上多数の開口部Rを有することにより、映像光L10を投射した際に、開口部Rから映像光L10を透過して観察側に映像を表示することが可能となる。
図1(a)、(b)に示す本発明の透過型スクリーン100は、次のような構成を有する。すなわち、図1(a)、(b)に示す本発明の透過型スクリーン100は、透明基材3の一方の面側に、透過型スクリーン100の観察側から入射する光を遮光する遮光機能、および上記観察側に絵柄を表示する絵柄機能を有し、パターン状の開口部Rを有する光学機能層1を備える。また、光学機能層1の開口部Rには、パターン状の光拡散部2を備える。さらに、光学機能層1および光拡散部2の観察側の面には、表面機能層4を備える。なお、図1(a)、(b)に示す光学機能層1は、絵柄機能を有する絵柄部1a、遮光機能を有する絵柄遮光部1bおよび遮光部1cの三層構成を有する例について示している。
本発明によれば、光学機能層の開口部に光拡散部を配置することにより、次のような効果を奏する。まず、従来の透過型スクリーンは、光拡散部が光源側の面または観察側の面に配置された構成を有する。図8(a)は、従来の透過型スクリーンを用いた背面投射型表示装置の一例を示す概略図である。また、図8(b)、(c)は、図8(a)のA’−A’線断面図に相当し、それぞれ従来の透過型スクリーンの構成を示す。
図8(b)は、光拡散部2が、透過型スクリーン100’の観察側の面に配置された例を示す概略断面図である。図8(b)に示すように、光拡散部2が透過型スクリーン100’の観察側の面に配置された場合、映像光L10は、開口部Rを透過して光拡散部2により拡散される。これにより、図8(a)に示すように映像光L10を透過型スクリーン100’に投射した際には、観察者20による映像の視認性が向上すると考えられる。一方、図8(b)に示すように、光拡散部2が透過型スクリーン100’の観察側の面に配置された場合には、観察側から透過型スクリーン100’に入射した外光L20は、遮光機能を有する光学機能層1に反射して、外光L20が入射した側の面から出射する際に、光拡散部2により拡散される。そうすると、映像光L10を透過型スクリーン100’に投射していないときに、絵柄機能を有する光学機能層1により表示される絵柄が、光拡散部2によって拡散された外光L20により、白くぼやけて見えてしまうおそれがある。
また、図8(c)は、光拡散部2が、透過型スクリーン100’の光源側の面に配置された例を示す概略断面図である。図8(c)に示すように、光拡散部2が透過型スクリーン100’の光源側の面に配置された場合、透過型スクリーン100’に入射した映像光L10は、光拡散部2により拡散される。これにより、開口部Rに入射するはずの映像光L10の一部が迷光となり、当該迷光が、開口部Rに隣接する光学機能層1が形成された光学機能層形成領域へと入射する場合がある。このとき、光学機能層形成領域へと入射した光は、光学機能層によって反射し、透過型スクリーン100’の光源側から出射されてしまうという問題が生じる。上述のような問題が生じると、映像光の透過型スクリーンの透過効率が低下し、映像光の視認性が損なわれるおそれがある。
本発明の発明者等は、上述した課題について検討を重ねた結果、光拡散部を所定の位置とすることで、映像光を投射していないときには絵柄が良好に視認され、かつ映像光を投射しているときには映像光による映像が良好に視認されるという新たな知見を得た。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、図1(a)、(b)に示すように、光拡散部2を、光学機能層1に形成されたパターン状の開口部R内に形成することにより、上述した課題を解消することができる。具体的には、図1(a)に示すように、映像光L10を透過型スクリーン100に投射した際には、図1(b)に示すように、観察側から透過型スクリーン100に入射した外光L20は、遮光機能を有する光学機能層1に反射して、外光L20が入射した側の面から出射する。このとき、図8(b)で説明したように、外光L20が、遮光機能を有する光学機能層1に反射して、外光L20が入射した側の面から出射する際に、光拡散部2により拡散されるといった現象を抑制することができる。これにより、映像光L10を透過型スクリーン100に投射していないときに、絵柄機能を有する光学機能層1により表示される絵柄が、光拡散部2によって拡散された外光L20により、白くぼやけて見えてしまうといった課題を解消することができる。
また、本発明は、図1(b)に示すように、透過型スクリーン100に入射した映像光L10は、開口部Rに入射した後に光拡散部2により拡散されることになる。したがって、開口部Rに入射するはずの映像光L10の一部が迷光となることを抑制することができる。これにより、図8(c)で説明したように、迷光が、開口部Rに隣接する光学機能層1が形成された光学機能層形成領域へと入射して反射し、透過型スクリーン100’の光源側から出射されてしまうという現象を抑制することができる。このような本発明によれば、結果として、映像光の透過型スクリーンの透過効率が低下し、映像光の視認性が損なわれるといった課題を解消することができる。
さらに、本発明の透過型スクリーンは、光拡散部をパターン状に設けることにより、次のような効果を奏する。すなわち、透過型スクリーンは、近年様々な用途が提案されていることに伴い、より薄型にする試みがなされている。図8(b)、(c)に示す従来の透過型スクリーン100’を薄型にする場合には、例えば、光拡散部2の厚みを薄くすることが想定される。しかしながら、光拡散部が有する光拡散機能は、光拡散部の厚みに起因するため、光拡散部の厚みを薄くするには限界がある。これに対し、本発明の透過型スクリーンの場合、図1(b)に示すように、光学機能層1の開口部にパターン状に光拡散部2を形成することができるため、光拡散部2の厚みは、光学機能層1の厚みに相当する分だけ確保することができる。したがって、本発明によれば、図8(b)、(c)に示す従来の透過型スクリーン100’に比べて、光拡散部2が有する光拡散機能を維持しつつ、厚みの薄い透過型スクリーンとすることができる。
さらにまた、本発明の透過型スクリーンは、パターン状に光拡散部を形成することができる。したがって、透過型スクリーンを構成する各部材の成型性の差の影響を受けにくくなる。具体的には、各部材が、三次元成型時にちぎれる等の破損が生じにくく、また、各部材の形状に歪みが生じるといった不具合の発生を抑制することができる。
以下、本発明の透過型スクリーンについて詳細に説明する。
1.光拡散部
本発明における光拡散部は、後述する光学機能層の開口部に配置されるパターン状の部材である。
本発明における光拡散部は、通常、光透過性を有する部材である。光拡散部が有する光透過性は、本発明の透過型スクリーンに映像光を投射した際に、映像光が光拡散部を透過することができる程度の光透過性であることが好ましい。ここで、光拡散部の具体的な光透過性としては、例えば、全光線透過率が60%以上の範囲内であることが好ましく、中でも80%以上の範囲内であることが好ましく、特に90%以上の範囲内であることが好ましい。透過型スクリーンに映像光を投射した際に、より多くの映像光を観察側に出射することができるため、映像光により表示される映像の視認性が向上する。なお、光拡散部の全光線透過率は、例えば、JIS K7361−1:1997に準拠する方法により測定することができる。
本発明における光拡散部は、例えば、粒子状の光拡散材を透明樹脂中に分散することで得ることができる。なお、本発明においては、透明樹脂を用いた場合について説明するが、透明樹脂の代わりにガラスを用いても良く、さらには、固体に限らず液体や液晶等の流動体を用いることも可能である。
粒子状の光拡散材と透明樹脂とは、互いに異なる屈折率を有する。透明樹脂の屈折率としては、例えば、1.45以上1.60以下の範囲内とすることができる。一方、光拡散材の屈折率は、上述した透明樹脂の屈折率との間に所定の差を有していれば良く、透明樹脂の屈折率に応じて適宜選択することができるが、例えば、光拡散材の屈折率は、1.30以上2.40以下の範囲内で選択することが好ましく、中でも1.40以上1.60以下の範囲内で選択することが好ましい。また、透明樹脂と光拡散材との屈折率差の絶対値としては、例えば、0.01以上0.20以下の範囲内とすることが好ましい。屈折率差の絶対値が上記範囲内であることにより、所望のヘイズ値を有する透過型スクリーンを得ることができる。
光拡散部に用いられる透明樹脂は、例えば、光学的な透明性を有する樹脂であれば良く、具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂や、ポリカーボネート樹脂、メチルメタクリレート・スチレン樹脂、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等が挙げられる。また、これら透明樹脂には、必要に応じて、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、着色剤等の各種添加剤が1種または2種以上添加されていても良い。
光拡散部に用いられる光拡散材としては、例えば、プラスチックビーズ等の有機フィラーが挙げられ、特に、透明度の高い材料が好ましい。プラスチックビーズとしては、例えば、メラミン樹脂製、アクリル樹脂製、アクリロニトリルスチレン樹脂製、ポリカーボネート樹脂製等のものを適用可能である。また、シリコン系ビーズも光拡散材として使用可能である。さらに、所望する拡散機能等に合わせて、これらの光拡散材を適宜選択し、所定の割合で組み合わせる等して使用可能である。
粒子状の光拡散材とは、例えば、球状、扁平状、不定形状、星型形状、金平糖形状等の形状の光拡散材を包含する。また、粒子状の光拡散材は、例えば、中空粒子、コアシェル状粒子であっても良い。
粒子状の光拡散材の平均粒子径は、例えば、1μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましく、中でも、5μm以上30μm以下の範囲内であることが好ましい。粒子状の光拡散材の平均粒子径が上記下限を有することにより、光拡散機能を十分に発揮することができ、光拡散部を映像光が透過して視認される映像の視認性の低下を抑制することができる。また、粒子状の光拡散材の平均粒子径が上記上限を有することにより、光拡散部の光透過性の低下を抑制し、ギラツキによるコントラストの低下を抑制することができる。なお、光拡散材の平均粒子径は、一般的な方法により測定することができるため、ここでの記載は省略する。
光拡散部における粒子状の光拡散材の含有量は、光拡散部に用いられる透明樹脂の屈折率や光拡散材の屈折率、粒子状の光拡散材の平均粒子径、光拡散部の厚み、粒子状の光拡散材の透明樹脂中での分散状態等に応じて適宜調整することができる。例えば、透明樹脂100質量部に対して、粒子状の光拡散材が0.3質量部以上20質量部以下の範囲内とすることができ、中でも、1質量部以上10質量部以下の範囲内であることが好ましい。光拡散部における粒子状の光拡散材の含有量が、上記下限を有することにより、光拡散部が所望の光拡散機能を発揮することが可能となる。また、光拡散部における粒子状の光拡散材の含有量が、上記上限を有することにより、光拡散部の光透過性の低下を抑制することができる。
光拡散部の厚みは、光拡散部に用いられる粒子状の光拡散材の平均粒子径や含有量、透明樹脂の屈折率や光拡散材の屈折率等に応じて適宜調整することができる。本発明においては、光拡散部が所望の光拡散機能を発揮することができる程度の厚みであることが好ましい。具体的な光拡散部の厚みとしては、例えば、0.05mm以上1.5mm以下の範囲内であることが好ましく、中でも0.1mm以上1.0mm以下の範囲内であることが好ましい。光拡散部の厚みが上記下限を有することにより、光拡散部が所望の光拡散機能を発揮することができる。また、光拡散部の厚みが上記上限を有することにより、透過型スクリーンに映像光を投射した際に表示される映像がぼやけたり、解像度が低下したりする等の視認性の低下を抑制することができる。なお、ここでの光拡散部の厚みとは、光拡散部の厚み方向の長さが最大となる距離を指す。
本発明における光拡散部は、上述のように所望の光拡散機能を発揮することができる程度の厚みを有することが好ましいが、その際、例えば図2に示すように、光拡散部2の厚みは、隣接する光学機能層1の厚みよりも厚くても良い。なお、図2では、光拡散部2および光学機能層1の観察側の面において、光拡散部2が突出している例を示したが、例えば、後述する図6(b)および図7に示すように、光拡散部2および光学機能層1の光源側の面において、光拡散部2が突出していても良い。
光拡散部は、所定のヘイズ値を有することが好ましい。光拡散部の具体的なヘイズ値としては、例えば、60%以下の範囲内であることが好ましい。光拡散部のヘイズ値が上記範囲内であることにより、透過型スクリーンに映像光を投射した際に表示される映像がぼやけるといった視認性の低下を抑止することができる。なお、光拡散部のヘイズ値は、例えば、JIS K7105:1981に準拠して測定することができる。
2.光学機能層
本発明における光学機能層は、観察側から入射する光を遮光する遮光機能、および観察側に絵柄を表示する絵柄機能を有し、パターン状の開口部を有する部材である。
ここで、「観察側から入射する光を遮光する遮光機能」とは、例えば、観察側から入射する光が光学機能層を透過することによって、透過型スクリーンに映像光が投射されていないときに、光学機能層により表示される絵柄の視認性が低下しない程度の遮光機能であることをいう。したがって、具体的な遮光機能については、透過型スクリーンの用途等に応じて異なるが、例えば、全光線透過率が、30%以下の範囲内であることが好ましく、中でも15%以下の範囲内であることが好ましく、特に5%以下の範囲内であることが好ましい。また、ここでいう遮光機能は、透過型スクリーンに投射される映像光を遮ることができる機能であることが好ましい。そのため、映像光の波長に応じて、上述した全光線透過率は決まる。そこで、遮光機能については、例えば、分光透過率により規定することも可能である。分光透過率により規定される数値範囲は、上述した全光線透過率の数値範囲と同様とすることができる。なお、分光透過率は、日本分光製 V−7100 紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。また、分光透過率の他にも、Y値やL*値により遮光機能を規定することができる。Y値やL*値は、分光透過率から算出することができ、また、コニカミノルタ製 CS−100A 色彩輝度計を用いて測定することができる。なお、分光透過率からY値やL*値を算出する方法については、公知の式から算出する方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
また、「観察側に絵柄を表示する絵柄機能」とは、観察側から光学機能層を観察した際に、所定の絵柄が表示される機能をいう。ここでの絵柄については、本発明の透過型スクリーンの用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
本発明における光学機能層は、パターン状の開口部を有する部材である。光学機能層が有するパターン状の開口部は、通常、図1(a)、(b)に示すように、光学機能層1の平面視上多数形成される。本発明においては、パターン状の開口部が多数形成されることにより、透過型スクリーンに映像光を投射した際に、当該開口部から映像光を観察側へと透過することが可能となる。これにより、観察者は、観察側に透過された映像光により所定の映像を視認することが可能となる。
光学機能層の平面視上、開口部の領域とそれ以外の領域との面積比は、透過型スクリーンに映像光を投射したときに、映像光を観察側へと透過し、観察者が映像を十分に視認することができる程度の面積比であって、かつ、透過型スクリーンに映像光を投射していないときには、観察側から光学機能層の絵柄機能により表示される絵柄を、観察者が十分に視認することができる程度の面積比であることが好ましい。そのため、光学機能層の平面視上、開口部の領域とそれ以外の領域との面積比は、透過型スクリーンの用途等に応じて適宜調整することができる。具体的な上記面積比としては、例えば、開口部の領域とそれ以外の領域とが、1:6以上6:1以下の範囲内であることが好ましく、中でも1:4以上4:1以下の範囲内であることが好ましく、特に1:4以上1:1以下の範囲内であることが好ましい。
光学機能層におけるパターン状の開口部の平面視形状は、透過型スクリーンに映像光を投射したときに、映像光を観察側へと十分に透過するという機能を発揮できるような形状であることが好ましい。具体的な開口部の平面視形状としては、例えば円形状や矩形状、格子状等が挙げられる。なお、通常は円形状である。また、ここでの円形状には、楕円形状等も含まれる。さらに、光学機能層における開口部は、通常、多数形成される。そのため、多数ある開口部の平面視形状が同じであっても良く、異なっていても良い。
光学機能層におけるパターン状の開口部の平面視形状の大きさは、上述した面積比を満たす程度の大きさであることが好ましい。開口部の平面視形状が円形である場合の具体的な大きさとしては、例えば、直径を5mm以下、中でも0.2mm以下、特に0.05mm以下とすることができる。また、開口部の大きさは、0.01mm以上とすることができる。開口部の大きさを上記範囲内とすることにより、開口部が観察者によって視認され、絵柄部により表示される絵柄の視認性が低下するのを抑制することができる。また、隣接する開口部の間隔は、開口部の大きさ等に応じて適宜調整することができるが、例えば、所定の開口率を満たすように、隣接する開口部の間隔を設定することが好ましい。具体的には、開口率を50%以下、中でも25%以下とすることができる。また、開口率は5%以上とすることができる。なお、ここで、隣接する開口部の間隔とは、例えば図1(a)の符号Wで示す距離を指す。一方、光学機能層におけるパターン状の開口部の平面視形状が格子状である場合、開口部の具体的な大きさとしては、例えば、格子の1辺の長さを4mm以下とすることができる。また、光学機能層におけるパターン状の開口部の平面視形状が短冊形状である場合、開口部の具体的な大きさとしては、例えば、短冊の幅を4mm以下とし、隣接する短冊状の開口部の間隔を4mm以下とすることができる。
本発明における光学機能層の厚みは、上述した遮光機能および絵柄機能を有する程度の厚みであれば良い。なお、具体的な光学機能層の厚みは、光学機能層を構成する絵柄部および遮光部の厚みに応じて適宜調整することができるため、記載は省略する。
本発明における光学機能層は、上述した遮光機能および絵柄機能を有していれば良い。このような光学機能層としては、例えば、遮光機能および絵柄機能のいずれをも兼ねた単一の層から構成されていても良く、あるいは、少なくとも遮光機能を有する層および絵柄機能を有する層を含む複数の層から構成されていても良い。すなわち、本発明における光学機能層は、絵柄機能を有する絵柄部と遮光機能を有する遮光部とを有していても良い。このとき、絵柄部および遮光部は、観察側から順に積層される。
ここで、「絵柄部および遮光部は、観察側から順に積層される」とは、観察者が透過型スクリーンを観察したときに、絵柄部に描かれた所定の絵柄を視認することができる位置に絵柄部が配置され、当該絵柄部の光源側の面に遮光部が配置されていることを意味する。このとき、絵柄部と遮光部との間には、必要に応じてその他の部材を有していても良い。その他の部材としては、例えば絵柄遮光部が挙げられる。絵柄遮光部についての説明は後述するため、ここでの記載は省略する。
以下、光学機能層を構成する遮光部および絵柄部について説明する。
(1)遮光部
本発明における遮光部は、遮光機能を有する層である。すなわち、例えば、図1(b)に示すように、遮光部1cは、光学機能層1の光源側に配置され、映像光L10が、光学機能層1を透過することを抑制することができる。映像光が光学機能層を透過しないことにより、光学機能層が有する絵柄機能により映像光が着色されるのを抑制し、観察者による映像の視認性の低下を抑制することができる。
遮光部の材料は、所望の遮光機能を発揮することができる材料であれば良く、特に限定されない。例えば、光吸収材や着色材を含有する樹脂材料が挙げられる。光吸収材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩等が挙げられる。また、着色材としては、例えば、グレー系や黒色系等の暗色系の染料や顔料等が挙げられる。さらに、樹脂材料としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
遮光部の厚みは、所望の遮光機能を発揮できる程度の厚みであることが好ましい。具体的な遮光部の厚みとしては、例えば、10μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましく、中でも30μm以上150μm以下の範囲内であることが好ましい。遮光部の厚みが上記範囲内であることにより、所望の遮光機能を発揮することができ、かつ光学機能層の厚みが嵩むことを抑制することができる。
遮光部が有する全光線透過率については、上述した遮光機能の説明で記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
(2)絵柄部
本発明における絵柄部は、絵柄機能を有する層である。すなわち、図1(b)に示すように、絵柄部1aは、光学機能層1において最も観察側に配置され、映像光L10が投射されていないときに、観察側に絵柄を表示することができる。
絵柄部の材料は、所望の絵柄を描画することができるような材料であることが好ましい。本発明においては、通常、印刷法を用いて絵柄が描画される。そのため、絵柄部の材料には、印刷法に用いることが可能な材料を選択することが好ましい。このような材料としては、例えば、無機顔料や有機顔料等が挙げられる。無機顔料としては、例えば、フェロシアン化鉄、酸化鉄、カドミウム系顔料、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。また、有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ色素系顔料、アゾレーキ系顔料、スタロシアニン系顔料、ケレート系顔料、ニトロ系顔料、ジオインジゴー系顔料、アンスラキノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、スレン系顔料、ジオキサジン系顔料としては縮合型アゾ系顔料等が挙げられる。なお、これらの顔料は、必要に応じて2種以上を混合して用いても良い。
絵柄部の上記材料には、必要に応じて、充填剤、可塑剤、分散剤、潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防黴剤等の添加剤を適宜用いることができる。
絵柄部の厚みは、絵柄部により表示される絵柄や、透過型スクリーンの用途や大きさ等に応じて、適宜調整することができる。絵柄部の具体的な厚みとしては、例えば、1μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましく、中でも、1.5μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。
(3)絵柄遮光部
本発明における光学機能層は、必要に応じて絵柄遮光部を有していても良い。絵柄遮光部は、上述した絵柄部の絵柄が透けるのを抑制するための層であり、いわゆる裏打ち機能を有する層である。図1(b)に示すように、絵柄遮光部1bは、絵柄部1aと遮光部1cとの間に配置することができる。絵柄遮光部を有することにより、絵柄部により表示される絵柄が透けるのを抑制し、絵柄の視認性の低下を抑制することができる。
本発明における絵柄遮光部は、例えば絵柄部により表示される絵柄の色合いが淡色である場合に、好適である。絵柄部により表示される絵柄の色合いが淡色である場合、絵柄が透けるのを抑制するためには、絵柄部の厚みを厚くする必要がある。一方、絵柄部の厚みが厚くなり過ぎると、透過型スクリーンの厚み自体が厚くなってしまう傾向にある。このような場合に、絵柄遮光部を設けることで、絵柄部の厚みを厚くすることなく、絵柄が透けるのを抑制することが可能となる。
絵柄遮光部の材料としては、絵柄部により表示される絵柄が透けるのを抑制することができるような材料であることが好ましい。絵柄部の材料としては、例えば、着色材を含有する樹脂材料が挙げられる。なお、絵柄遮光部に用いられる着色材の色合いは、絵柄部により表示される絵柄の色合いに応じて適宜選択することができ、具体的な材料については、一般的に公知の着色材を用いることができるため、ここでの記載は省略する。また、絵柄遮光部に用いられる樹脂材料については、上述した「(1)遮光部」の項に記載した樹脂材料と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
絵柄遮光部の厚みは、絵柄部により表示される絵柄が透けるのを抑制するという機能を発揮することができる程度の厚みであることが好ましい。また、絵柄遮光部の厚みは、絵柄遮光部が呈する色合い等に応じて適宜調整することができる。絵柄遮光部の具体的な厚みとしては、例えば、1μm以上30μm以下の範囲内であることが好ましく、中でも、3μm以上15μm以下の範囲内であることが好ましい。
3.フレネルレンズ層
本発明におけるフレネルレンズ層は、光学機能層と光拡散部とを有する積層体の光源側の面に配置される部材である。また、フレネルレンズ層は、観察側の面が三次元曲面をなす湾曲形状を有する。したがって、フレネルレンズ層を有する場合、通常、上記積層体も、観察側の面が三次元曲面をなす湾曲形状を有することとなる。
図3に示すように、本発明におけるフレネルレンズ層30は、例えば、フレネル基材部31と、フレネル基材部31の光源側の面に一体に形成され、単位レンズが複数配列されたフレネルレンズ部32とを有する。
以下、本発明におけるフレネルレンズ層を構成するフレネルレンズ部およびフレネル基材部について説明する。
(1)フレネルレンズ部
本発明におけるフレネルレンズ部は、観察者によって観察される映像、特に、観察者によって透過型スクリーンの斜め方向から観察される場合の映像の明るさのバラつきを低減することができる機能を有することが好ましい。このようなフレネルレンズ部は、屈折型のフレネルレンズであっても良く、全反射型のフレネルレンズであっても良い。本発明においては、中でも全反射型のフレネルレンズであることが好ましい。屈折型のフレネルレンズである場合に比べて、背面投射型表示装置の奥行き方向における透過型スクリーンと光源との距離を短くすることができ、背面投射型表示装置を薄型に設計することができる。
フレネルレンズ部の材料としては、例えば、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂の他、電子線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。
なお、この他のフレネルレンズ部に関する詳細な説明については、公知のフレネルレンズ部と同様とすることができ、例えば、特許第6010890号、特開2013−152370号公報、特許第2812413号および特許第2869939号に開示された内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
(2)フレネル基材部
本発明におけるフレネル基材部は、上述したフレネルレンズ部を支持する部材であり、通常、シート状の部材である。
フレネル基材部の材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、メタクリル酸メチル・ブタジエン・スチレン、メタクリル酸メチル・スチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン等が挙げられる。
フレネル基材部の厚みは、フレネルレンズ層の設計に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上4mm以下の範囲内とすることができる。
本発明におけるフレネル基材部は、光拡散機能を有していても良い。この場合、フレネル基材部は、光拡散材を含有することが好ましい。なお、光拡散材については、上記「1.光拡散部」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
4.透明基材
本発明の透過型スクリーンは、上述した光拡散層および光学機能層を支持するための透明基材を有していても良い。透明基材は、透過型スクリーンの光源側に配置しても良く、あるいは観察側に配置しても良いが、通常は、例えば図1(b)に示すように、透明基材3を透過型スクリーン100の光源側に配置する。
本発明における透明基材は、透過型スクリーンに映像光を投射した際に、映像光の透過を妨げない程度の透明性を有することが好ましい。具体的な透明基材の透明性としては、例えば、可視光透過率が80%以上であることが好ましく、中でも90%以上であることが好ましい。なお、透明基材の可視光透過率については、例えば、JIS K7361−1に準拠したプラスチック−透明基材の全光透過率の試験方法により測定することができる。
本発明における透明基材の材料としては、上述したような所定の可視光透過率を有する材料を選択することが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂等の樹脂フィルム、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等のガラスが挙げられる。なお、本発明における透明基材は、上述した材料の他にも、必要に応じて紫外線吸収剤、熱線吸収剤等を含んでいても良い。
本発明における透明基材の厚みは、上述した光拡散層および光学機能層を支持することができる程度の厚みを有することが好ましい。具体的な透明基材の厚みとしては、例えば、0.1mm以上4.0mm以下の範囲内であることが好ましく、中でも1.0mm以上2.0mm以下の範囲内であることが好ましい。透明基材の厚みが上記範囲であることにより、所望の支持性を得ることができ、また、透明基材の厚みが厚すぎることにより迷光が生じて二重像が生じるといった不具合の発生を抑制することができる。
本発明における透明基材は、例えば、透過型スクリーンを転写するための転写基材であっても良い。この場合、例えば図4(a)に示す透過型スクリーン100のように、透明基材3としての転写基材7上に、光学機能層1および光拡散部2を配置することができる。また、図4(a)に示す透過型スクリーン100は、転写基材7が配置された側を透過型スクリーンの観察側として用いる設計であるため、光学機能層1は、転写基材7側から絵柄部1a、絵柄遮光部1bおよび遮光部1cが積層される。さらに、図4(a)に示す透過型スクリーン100は、図4(b)に示すように、透過型スクリーン100の光源側の面を、粘着層9を介して被着体40に貼り付けて用いることができる。透過型スクリーン100を被着体40に貼り付けた後は、最終的に転写基材7は剥離される。なお、図4(a)、(b)に示すように、透明基材3を転写基材7として用いる場合には、転写基材7の剥離を容易に行うための剥離層8を備えていても良い。また、図4(a)、(b)に示すように、透過型スクリーン100の観察側には、表面機能層4として、光学機能層1の観察側の面を保護するためのハードコート機能を有する表面保護層4aが配置されていても良い。表面機能層についての説明は後述するため、ここでの記載は省略する。
透明基材が転写基材である場合、転写基材の材料は、上記透明基材の材料として記載した材料と同様とすることができるが、転写基材を容易に剥離するという観点から、所定の可撓性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。
また、透明基材が転写基材である場合に、転写基材の剥離を容易に行うための剥離層を備えていても良い。なお、剥離層については、一般的に公知のものと同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
本発明の透過型スクリーンは、必要に応じて、観察者側から見てその中央が窪むような凹状の曲面、すなわち光源側に凸となる曲面を有するように湾曲して形成されていても良い。このように湾曲した透過型スクリーンを得る場合、通常、透過型スクリーンの支持体としての機能を有する透明基材を、曲面を有するように湾曲させた形状に成形し、その後、湾曲した透明基材上に、光学機能層や光拡散部を追従させて積層する方法を採用することができる。透明基材を、曲面を有するように湾曲させた形状に成形する方法としては、例えば、インサート成型法や、射出成型法等が挙げられる。なお、インサート成型法や射出成型法については、例えば、特開2012−032513号公報に開示された内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
5.表面機能層
本発明の透過型スクリーンは、必要に応じて表面機能層を有していても良い。本発明においては、例えば、図1(b)に示すように、表面機能層4を透過型スクリーン100の観察側の最外層に配置することができる。
本発明における表面機能層が有する機能としては、例えば、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、紫外線吸収機能、防汚機能等の少なくとも1つの機能を指す。本発明においては、表面機能層がハードコート機能を有する表面保護層であることが好ましい。
本発明における表面保護層は、所定の硬度を有することが好ましい。具体的な硬度としては、例えば、JIS K 600−5−4(1994)で規定される鉛筆硬度試験で「HB」以上の硬度であることが好ましい。表面保護層が所望のハードコート機能を発揮することができるからである。
本発明における表面保護層の材料としては、例えば、所望のハードコート機能を発揮し、本発明の透過型スクリーンを保護することができるような材料であることが好ましい。具体的な表面保護層の材料は、例えば、電離放射線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。ここで、電離放射線硬化性樹脂は、少なくとも電離放射線硬化性樹脂モノマー、電離放射線硬化性樹脂オリゴマー、またはそれらの混合物を含む樹脂をいう。なお、本発明における表面保護層にその他の機能を付与する場合には、上記材料の他にも、表面保護層に適宜添加剤等を含有することができる。
本発明における表面保護層の厚みは、例えば、所望のハードコート機能を発揮できる程度の厚みであることが好ましく、本発明の透過型スクリーンの用途等に応じて適宜調整することができる。具体的な表面保護層の厚みとしては、例えば、0.05μm以上2μm以下の範囲内とすることができる。
6.その他
以下、透過型スクリーンの物性、および製造方法について説明する。
(1)透過型スクリーンの物性
本発明の透過型スクリーンは、所定のヘイズ値を有することが好ましい。透過型スクリーンの具体的なヘイズ値としては、例えば、20%以上95%以下の範囲内であることが好ましく、中でも30%以上60%以下の範囲内であることが好ましい。透過型スクリーンのヘイズ値が上記下限を有することにより、映像光を投射した際に、鮮明な映像を表示することが可能となる。また、透過型スクリーンのヘイズ値が上記上限を有することにより、光学機能層の開口部を通して反対側を観察することが可能となる。透過型スクリーンのヘイズ値は、例えば、光拡散部の厚みや、光拡散部に含まれる粒子状の光拡散材の含有量等に応じて適宜調整することができる。なお、透過型スクリーンのヘイズ値は、例えば、JIS K7136:2000に準拠して測定することができる。
本発明の透過型スクリーンは、所定の透明性を有することが好ましい。透過型スクリーンの具体的な透明性としては、例えば全光線透過率が60%以上であることが好ましく、中でも80%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。なお、透過型スクリーンの全光線透過率は、例えば、JIS K7361−1:1997に準拠して測定することができる。
(2)製造方法
本発明の透過型スクリーンを製造する方法は、上述したような所定の構成を有する透過型スクリーンを得ることができる方法であれば良く、一般的に公知の方法を採用することができる。例えば、まず、基材上に光学機能層をパターン状に配置し、その後、基材が露出した領域に光拡散部を形成することで、本発明の透過型スクリーンを製造する方法が挙げられる。あるいは、基材上に光拡散部をパターン状に配置した光拡散基材を形成し、その後、光拡散基材の光拡散部が配置された側の面において、基材が露出した領域に光学機能層を印刷法により形成することで、本発明の透過型スクリーンを製造する方法が挙げられる。また、各層を積層する際に転写法も用いることができる。例えば、光学機能層を予め剥離フィルム等の全面に形成し、次いで、光学機能層の剥離フィルム等とは反対側の面に、接着層をパターン状に形成する。なお、このとき形成されるパターン状の接着層は、後に形成される光学機能層における開口部となる。そのため、光学機能層に形成する開口部の大きさに合わせて接着層を形成することが好ましい。続いて、パターン状の接着層を基材に貼り付け、剥離フィルム等を光学機能層から剥離することで、光学機能層において、接着層が形成された領域が基材に転写し、開口部が形成された光学機能層が形成できる。また別の方法としては、例えば、転写される基材の表面において、光学機能層の開口部に対応する領域に離型処理を施すことで、当該領域だけ光学機能層が転写されず、開口部を有する光学機能層を形成することができる。本発明においては、製造工程の簡略化の観点から、特に、基材上に光拡散部をパターン状に配置した光拡散基材を形成し、その後、光拡散基材の光拡散部が配置された側の面において、基材が露出した領域に光学機能層を印刷法により形成する方法を採用することが好ましい。
以下、基材上に光拡散部をパターン状に配置した光拡散基材を形成し、その後、光拡散基材の光拡散部が配置された側の面において、基材が露出した領域に光学機能層を印刷法により形成することで透過型スクリーンを製造する、本発明の透過型スクリーンの製造方法について説明する。
すなわち、本発明の透過型スクリーンの製造方法は、光源側から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示する透過型スクリーンを製造する方法であって、基材上に、パターン状の光拡散部が配置された光拡散基材を準備する準備工程と、上記光拡散基材の上記光拡散部が配置された側の面に、観察側から入射する光を遮光する遮光機能、および観察側に絵柄を表示する絵柄機能を有する光学機能層を、パターン状に形成する光学機能層形成工程とを有し、上記光学機能層形成工程は、上記光拡散基材の、上記光拡散部が配置された側の上記基材が露出した領域に、上記光学機能層を形成するための光学機能層形成用塗工液をパターン状に塗布する工程であり、上記光学機能層形成用塗工液は、上記光拡散基材の、上記光拡散部が配置された側の上記基材が露出した領域と、上記光拡散部との濡れ性の違いにより、パターン状に塗布される方法である。
本発明の透過型スクリーンの製造方法について、図を参照しながら説明する。図5(a)、(b)は、本発明の透過型スクリーンの製造方法の一例を示す工程図である。本発明の透過型スクリーンの製造方法は、図5(a)に示すように、基材6上に、パターン状の光拡散部2が配置された光拡散基材12を準備する準備工程を有する。また、本発明は、準備工程の後に、図5(b)に示すように、光拡散基材12の光拡散部2が配置された側の面に、観察側から入射する光を遮光する遮光機能、および観察側に絵柄を表示する絵柄機能を有する光学機能層1を、パターン状に形成する光学機能層形成工程を有する。本発明における光学機能層形成工程は、光拡散基材12の、光拡散部2が配置された側の基材6が露出した領域に、光学機能層1を形成するための光学機能層形成用塗工液をパターン状に塗布する工程である。また、光学機能層形成用塗工液は、光拡散基材12の、光拡散部2が配置された側の基材6が露出した領域と、光拡散部2との濡れ性の違いにより、パターン状に塗布される。なお、図5(a)、(b)は、基材6が透明基材3である場合の例を示している。そのため、図5(a)、(b)の場合には、基材6側が、光源10側となり、光学機能層1は、基材6側から順に、遮光部1c、絵柄遮光部1bおよび絵柄部1aが積層される。図5(a)、(b)において説明していない符号については、上述した図1(a)、(b)と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
図6(a)、(b)は、本発明の透過型スクリーンの製造方法の他の例を示す工程図である。図6(a)、(b)は、基材が表面機能層4である場合の例を示している。そのため、図6(a)、(b)の場合には、基材6側が、観察者20の観察側となり、光学機能層1は、基材6側から順に、絵柄部1a、絵柄遮光部1bおよび遮光部1cが積層される。なお、図6(a)、(b)のその他の説明は図5(a)、(b)と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
本発明においては、図6(a)、(b)に示すように、基材6が表面機能層4である場合、光拡散部2の厚みは、光学機能層1の厚みよりも厚く設計することができる。図7は、図6(b)の符号Xで示す領域の拡大図であるが、図7に示すように、光拡散部2が光学機能層の表面から凸状に突き出していても良い。光拡散部の厚みが厚いことにより、光拡散部を設けることによる視野角特性を顕著なものとすることができるからである。
本発明の透過型スクリーンの製造方法は、光拡散基材を準備する準備工程および光学機能層形成工程を有することにより、簡易な方法で所定の構成を有する透過型スクリーンを得ることができる。具体的には、光学機能層形成工程において、光拡散基材の、光拡散部が配置された側の基材が露出した領域と、光拡散部との濡れ性の違いにより、光学機能層形成用塗工液をパターン状に塗布することができるため、パターン状の光学機能層の形成を容易に行うことができる。また、光学機能層を構成する各層の位置合わせが不要となるため、高い位置精度で、高品質な透過型スクリーンを得ることができる。
以下、上述した本発明の透過型スクリーンの製造方法について、各工程に分けて説明する。
(a)準備工程
本発明の準備工程は、基材上に、パターン状の光拡散部が配置された光拡散基材を準備する工程である。
本工程における基材は、図5(a)、(b)に示すように透明基材3であっても良く、図6(a)、(b)に示すように、表面機能層4であっても良い。なお、本工程における基材、光拡散部および表面機能層についての説明は、上記「1.光拡散部」、「3.透明基材」および「5.表面機能層」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
本工程において、基材上に光拡散部をパターン状に形成する方法は、所望の光拡散基材が得られる方法であれば特に限定されないが、例えば、粒子状の光拡散材を、透明樹脂へ分散した塗料を、グラビアコート、ロールコート、ビードコート、スプレイコート、インクジェット等公知の方法を用いて塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
(b)光学機能層形成工程
本発明の光学機能層形成工程は、光拡散基材の光拡散部が配置された側の面に、観察側から入射する光を遮光する遮光機能、および観察側に絵柄を表示する絵柄機能を有する光学機能層を、パターン状に形成する工程である。また、光学機能層形成工程は、光拡散基材の、光拡散部が配置された側の前記基材が露出した領域に、光学機能層を形成するための光学機能層形成用塗工液をパターン状に塗布する工程であり、光学機能層形成用塗工液は、光拡散基材の、光拡散部が配置された側の前記基材が露出した領域と、光拡散部との濡れ性の違いにより、パターン状に塗布することができる。
なお、本工程における光学機能層についての説明は、上記「2.光学機能層」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
本工程において、光拡散基材の、光拡散部が配置された側の前記基材が露出した領域に、光学機能層形成用塗工液をパターン状に塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、ロールコート、ビードコート、スプレイコート、インクジェット等公知の方法が挙げられる。なお、本工程において用いられる光学機能層形成用塗工液は、光学機能層の構成材料に溶剤を含有することで得ることができる。溶剤については、一般的な溶剤を用いることができるため、ここでの記載は省略する。
本工程においては、上述した方法により光学機能層形成用塗工液を塗布する際、光拡散基材の光拡散部が配置された側の、基材が露出した面と、光拡散部との濡れ性の違いによりパターニングを行うことができる。ここでいう「濡れ性の違い」とは、光学機能層形成用塗工液を光拡散基材の光拡散部が配置された側の面に塗布した際に、光拡散部が配置された領域以外の領域に選択的に光学機能層形成用塗工液が塗布されるような、濡れ性の違いを意味する。
光拡散基材の光拡散部が配置された側の、基材が露出した領域と、光拡散部とは、上述のような所定の濡れ性の違いを有する。濡れ性の違いを発現させる方法としては、例えば、光拡散基材の光拡散部が配置された側の、基材が露出した領域に表面処理を行い、当該領域に親液性を発現させる方法や、あるいは、光拡散部に表面処理を行い、光拡散部に撥液性を発現させる方法が挙げられる。
(c)その他の工程
本発明の透過型スクリーンの製造方法は、上述した工程の他にも、必要に応じてその他の工程を有していても良い。
本発明においては、例えば、図5(a)、(b)に示すように、基材6が透明基材3である場合には、透過型スクリーン100の観察側の面に表面機能層を配置する工程を有していても良い。表面機能層を配置する方法としては、所定の位置に表面機能層を配置することができる方法であれば特に限定されないが、例えば、表面機能層を構成する材料を溶剤に溶解して得られた表面機能層形成用塗工液を、マイクログラビアコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーター、ロールコーター等のコーターを用いて直接塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。なお、表面機能層形成用塗工液を乾燥した後に、必要に応じて光照射または加熱工程を行っても良い。
本発明においては、例えば、図6(a)、(b)に示すように、基材6が表面機能層4である場合には、透過型スクリーン100の光源側の面に透明基材を配置する工程を有していても良い。透明基材を配置する方法としては、例えば、接着層により透明基材を貼り付ける方法が挙げられる。なお、このとき用いられる接着層については、スクリーンに用いることができる一般的なものと同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
B.背面投射型表示装置
本発明の背面投射型表示装置は、映像光を出射する映像光源と、上記映像光源からの上記映像光を透過して観察側に出射する上述の透過型スクリーンとを備えた装置である。
本発明の背面投射型表示装置の図面の説明は、上述した図1(a)、(b)と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
本発明の背面投射型表示装置は、上述した透過型スクリーンを有することにより、映像光を投射していないときに所定の画像を表示することができる背面投射型表示装置であって、光拡散部を用いて視野角による視認性の低下を抑制するとともに、光拡散部を用いることによる視認性の低下を抑制することが可能な背面投射型表示装置を提供することができるという効果を奏する。なお、本発明の効果についての詳細な説明は、上記「A.透過型スクリーン」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
以下、本発明の背面投射型表示装置について詳細に説明する。
1.透過型スクリーン
本発明の透過型スクリーンは、上記「A.透過型スクリーン」の項に記載した部材と同様である。すなわち、本発明における透過型スクリーンは、光源側から投射された映像光を観察側に透過して映像を表示する部材であって、観察側から入射する光を遮光する遮光機能、および観察側に絵柄を表示する絵柄機能を有し、パターン状の開口部を有する光学機能層と、上記光学機能層の上記開口部に配置されたパターン状の光拡散部とを備える部材である。
本発明における透過型スクリーンを構成する各部材については、上記「A.透過型スクリーン」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
2.映像光源
本発明における映像光源は、映像光を出射する部材である。
本発明において映像光源から出射される映像光は、透過型スクリーンに直接投射しても良く、鏡等で反射させてから透過型スクリーンに投射しても良い。
本発明における映像光源には、従来から公知である光源、例えばLEDと称されるLight Emitting Diodeや、レーザーを利用したピコプロジェクタ等の小型の光源、DMDを用いた単管方式の光源等を用いることができる。また、本発明における映像光源は、照明器具と、照明器具を覆う照明器具カバーとを有し、照明器具カバーに、映像光として表示しようとする絵柄が描画された部材であっても良い。さらに、本発明における映像光源は、例えばOHPシートのように、透明なフィルムに対して透明性の高い印刷を施した固定画像と、遮光部とを備えた部材であっても良い。この場合、例えば、白色光源から出射された光が固定画像を透過することで、透過光が、固定画像が有する色となり、一方、白色光源から出射された光の一部が遮光部により遮られる。このように、固定画像、遮光部および単色の光源を有する部材であって、固定画像および遮光部により明暗表示するもの(マスキング)に対して、単色の光源を背面から照らして透過させる部材を映像光源とし、上記透過光を透過型スクリーンに投射しても良い。
3.用途
本発明の背面投射型表示装置の用途について説明する。
本発明の背面投射型表示装置の用途としては、例えば、自動車の内装、外装の用途が挙げられる。具体的には、ディスプレイ表示器や警告ランプ、ルームランプ、フットランプ、イルミネーションランプ等、車幅灯、ヘッドライト、テールランプ、ウインカー等としての用途が挙げられる。
また、本発明の背面投射型表示装置の用途としては、例えば、住宅、商業用施設への用途が挙げられる。具体的には、案内板、広告、看板等のディスプレイとしての用途、照明器具、窓、ショーウインドウ等の採光または照明としての用途等が挙げられ、さらには、壁、扉、仕切り等の埋め込みディスプレイとしての用途が挙げられる。
さらに、本発明の背面投射型表示装置の用途としては、例えば、家具への用途が挙げられる。具体的には、テレビの加飾用途や、キッチン、浴室、寝室、ドアホン等のディスプレイとしての用途、表示器を埋め込んだ家具、家電、机、椅子、棚、間仕切り、タンス、ゲタ箱、ベッド等。掃除機、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ洗濯機等への用途が挙げられる。
さらにまた、本発明の背面投射型表示装置の用途としては、例えば、避難経路、火災報知機、警告灯等の警告表示としての用途が挙げられる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
[実施例]
透明基材として、200mm×300mmの大きさの汎用アクリルフィルムを準備した。透明基材の厚みは、75μmであった。次に、透明基材の一方の面に、フレキソ印刷法を用いて、絵柄部、絵柄遮光部、遮光部をこの順で印刷し、光学機能層を得た。なお、このとき、光学機能層にパターン状の開口部を形成するため、絵柄部、絵柄遮光層、遮光部の各層をパターン印刷した。なお、開口部は、50μm径の非印刷部を100ミクロンピッチで格子状に配置することで形成した。また、絵柄部は、汎用のカラーインキ2層により構成され、それぞれ厚みは1μmであった。さらに、絵柄遮光部には、汎用の白インキ(白顔料含有)を用い、厚みは5μmであった。さらにまた、遮光部には、汎用の黒インキ(黒顔料含有)を用い、厚みは3μmであった。
次に、得られた光学機能層の開口部内に、光拡散部をフレキソ印刷により印刷した。光拡散部にはバインダーに酸化チタンを分散させた樹脂を用いた。光拡散部は、開口が埋まるように、厚みが10μm程度となるように重ねて印刷することで得た。以上により、透明基材側を観察側とする透過型スクリーンを得た。
透過型スクリーンの透明基材とは反対側の面から、汎用のプロジェクタ(2000ANSIlumen)による映像投影できるように、プロジェクタとスクリーンを配置し、プロジェクタの反対側の面から明室内(700lxの明るさ)にて観察した。その結果、プロジェクタがOFFのときは、絵柄が余計に拡散せず鮮明な絵柄が観察された。一方、プロジェクタをONにし、画像を投影したところ、適度に散乱し視野角の広い映像が観察できた。