以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図面は、模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。便宜上、層状の部分の表面(すなわち断面でない面)にハッチングを付すことがある。
本開示の水晶デバイスおよび水晶素子は、いずれも上方または下方とされてよいものであるが、以下では、便宜上、図1および図2の紙面上方を上方とし、上面または下面等の用語を用いることがある。また、単に平面視または平面透視という場合において、特に断りがない限りは、上記のように便宜的に定義した上下方向においてみることとする。
図1および図2は、本実施形態に係る水晶デバイスに関する図である。図1は、本実施形態に係る水晶デバイスの斜視図であり、図2は、図1のA−A断面における断面図である。図3〜図5は、本実施形態に係る水晶素子に関する図である。図3は、本実施形態に係る水晶素子の斜視図である。図4は、本実施形態に係る水晶素子の上面の平面図であり、図5は、本実施形態に係る水晶素子の下面を上面側から平面透視した平面図である。図6および図7は、実験の結果に関するものとである。図6は、実験1において、Le/Weの範囲ごとの結果の対比を示した対比表である。
図7は、実験2において、d1の範囲ごとの結果の対比を示した対比表である。
(水晶デバイスの概略)
水晶デバイスは、全体として、略直方体形状となっている電子部品である。水晶デバイスは、例えば、長辺または短辺の長さが0.6mm〜2.0mmであり、上下方向の厚さが0.2mm〜1.5mmとなっている。
水晶デバイスは、例えば、凹部が形成されている基体110と、凹部に収容された水晶素子120と、凹部を塞ぐ蓋体130と、基体110に水晶素子を実装するためのバンプ(本実施形態では導電性接着剤140)と、からなる。
水晶素子120は、発振信号に生成される振動を生じる部分である。基体110および蓋体130は、水晶素子120を収容する空間を有している。基体110の凹部は、蓋体130により封止され、その内部は、例えば、真空とされ、または、適当なガス(例えば、窒素)が封入されている。
基体110は、例えば、基体110の主体となる基板部110aと、水晶素子120を実装するための一対の搭載パッド111と、水晶デバイスを不図示の回路基板等に実装するための複数の外部端子112と、を有している。
基体110は、主体となる基板部110aと、基板部110aの上面の縁部に沿って設けられている枠状の枠部110bと、から構成されており、凹部が形成されている。搭載パッド111は、金属等からなる導電層により構成されており、凹部の底面に位置している搭載パッド111と外部端子112とは、基板部110a内に配置された導体(図示せず)によって互いに電気的に接続されている。蓋体130は、例えば、金属から構成され、基体110の上面にシーム溶接等により接合されている。
水晶素子120は、例えば、水晶片121と、水晶片121に交番電圧を印加するための金属パターン122と、を有している。金属パターン122は、水晶片121の両主面の中央付近に設けられている一対の励振電極部123、および、励振電極部123から水晶片121の縁部まで延設されている接続配線部124からなる。
水晶素子120は、概略板状であり、その主面が、基体110の凹部の底面、具体的には、基板部110aの上面に対向するように、凹部内に収容される。そして、一対の接続配線部124の一部、具体的には、接続部124aが、一対のバンプ(本実施形態では導電性接着剤140)により、一対の搭載パッド111に電気的に接続される。これにより、水晶素子120は、基体110の基板部110aに片持ち梁のように支持される。また、一対の励振電極部123は、一対の接続配線部124、バンプ(本実施形態では導電性接着剤140)を介して搭載パッド111と電気的に接続され、ひいては、複数の外部端子112のいずれか二つと電気的に接続される。
バンプは、例えば、導電性接着剤140である。導電性接着剤140は、例えば、導電性フィラーが熱硬化性樹脂に混ぜ込まれて構成されている。
このようにして構成された水晶デバイスは、例えば、不図示の回路基板の実装面に基体110の下面を対向させて配置され、外部端子112が半田などにより回路基板のパッド(図示せず)に接合されることによって回路基板に実装される。回路基板には、例えば、発振回路が構成されている。発振回路は、外部端子112および搭載パッド111を介して、一対の励振電極部123に交番電圧を印加し発振信号を生成する。この際、発振回路は、例えば、水晶片121の厚みすべり振動のうち基本波振動を利用する。オーバートーン振動が利用されてもよい。
(水晶素子の概略構成)
図3は、本実施形態に係る水晶素子の斜視図である。図4は、本実施形態に係る水晶素子の上面の平面図であり、図5は、本実施形態に係る水晶素子の下面を上面側から平面透視した平面図である。
本実施形態では、水晶素子120を基体110に実装した場合、基体110の基板部110aの上面と略平行となっている面を、主面とする。また、水晶素子120から基板部110aへ向かう向きを下方向とし、基板部110aから水晶素子120へ向かう向きを上方向とする。
また、基板部110a側を向く水晶素子120の主面を水晶素子120の下面とし、水晶素子120の下面と反対側を向く水晶素子120の主面を水晶素子120の上面とする。
また、振動部121aの面のうち基板部110aの上面と略平行となっている面を振動部121aの主面とする。そして、振動部121aの主面であって基板部110a側を向く振動部121aの面を振動部121aの下面とし、振動部121aの下面と反対側を向く振動部121aの主面を振動部121aの上面とする。
また、周辺部121bの面のうち基板部110aの上面と略平行となっている面を周辺部121bの主面とする。具体的には、周辺部121bの平板部となる部分が周辺部121bの主面に該当している。周辺部121bの主面のうち基板部110aの上面側を向く面を、周辺部121bの下面とする。また、周辺部121bの下面と反対側を向く周辺部121bの主面を周辺部121bの上面とする。
また、本実施形態においては、水晶素子120の下面と水晶片121の下面とを同一の意味で用いており、同様に、水晶素子120の上面と水晶片121の上面とを同一の意味で用いている。
水晶素子120は、水晶片121と金属パターン122とから構成されている。
水晶片121は、いわゆるATカット板である。すなわち、水晶において、X軸(電気軸)、Y軸(機械軸)およびZ軸(光軸)からなる直交座標系XYZ系を、X軸回りに30°以上50°以下(一例として、35°15′)回転させて、直交座標系XY´Z´系を定義したとき、水晶片121の主面は、XZ´平面と平行となっている。
水晶片121は、略直方体形状の振動部121aと、振動部121aの外縁に沿って設けられ振動部121aより上下方向の厚みが薄い周辺部121bと、から構成されている。
振動部121aは、例えば、XZ´平面に平行な一対の主面を有する略薄型直方体であり、その主面は、X軸に平行な長辺およびZ´軸に平行な短辺を有する矩形である。この振動部121aの主面には、金属パターン122の一部、具体的には、励振電極部123が設けられている。金属パターン122に交番電圧を印加すると、励振電極部123に挟まれている振動部121aの部分が、逆圧電効果および圧電効果により、振動する。このとき、水晶片121では、主振動である厚みすべり振動および副次的な振動が生じている。
周辺部121bは、図示しないが、平板部と中間部とからなる。平板部は、周辺部121bにおいて、振動部121aの主面と略平行となっている面を有している部分である。そして、当該平板部の上下方向の厚みは、振動部121aの上下方向の厚みと比較して薄くなっている。
中間部は、図示していないが、水晶片121を平面視したとき、振動部121aと平板部との間に位置している。そして、当該中間部の上下方向の厚みは、振動部121aから平板部にかけて徐々に薄くなっている。従って、本実施形態では、特に図示しないが、水晶片121を、X軸およびY´軸に平行な面で断面視したとき、振動部121aと平板部との間に位置している斜面を含んでいる部分が、この周辺部121bの中間部に相当することとなる。
従って、水晶片121は、メサ型の形状となっている。このように水晶片121をメサ型の形状にすることで、平板状の水晶片を用いた場合と比較して、エネルギー閉じ込めを向上させることができ、主振動である厚みすべり振動が励振電極部123に挟まれている部分から漏れ伝搬する量を低減させることが可能となり、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させつつ電気的特性を向上させることができる。
また、このようにメサ型の水晶片121を用いることによって、平板状の水晶片を用いた場合と比較して、副次的な振動の一つである輪郭すべり振動を抑制させることができ、副次的な振動と主振動である厚みすべり振動とが結合することによる電気的特性の低下を、抑制することができる。つまり、このような形状にすることで、電気的特性を向上させることが可能となる。
水晶片121は、平面視して、略矩形形状となっており、その主面は、例えば、X軸に平行な長辺およびZ´軸に平行な短辺を有する矩形となっている。このような水晶片121は、X軸方向を長手方向とし、Y´軸方向を上下厚み方向とする。
ここで、水晶片121の外形がエッチングによって形成される場合、エッチングに対する水晶の異方性等によって比較的大きな誤差(系統誤差のようなもの)が生じる。当該誤差は、意図的に利用されていることもある。本開示の説明においては、このような誤差の存在は、無視するものとする。例えば、実際の水晶片121においては、側面が主面に直交せず傾斜していたり、側面が平面にならず外側に膨らむ形状となっていたりすることがあるが、そのような傾斜および/または膨らみの図示および説明は省略する。第三者の製品が本開示の技術に係るか否かを判断する場合においても、そのような誤差は無視されてよい。なお、偶然誤差のようなものが無視されてよいことはもちろんである。
周辺部121bにおける中間部および平板部を特に区別し図示していないのもこのためである。
また、本実施形態では、図4および図5に示したように、水晶片121の平面視における形状が矩形となっている。当該矩形は、長方形(本開示では正方形を含むものとする。正方形の場合には、所定の一辺を長辺とし、所定の一辺に接続している所定の他の一辺を短辺とする。励振電極部123においては、正方形は含まないものとする。)であり、一対の長辺と、一対の長辺の両端を結ぶ短辺とを有している。なお、本開示については、矩形または長方形は、角部が面取りされた形状を含むものとする(励振電極部123についても同様)。水晶片121では、例えば、主面は、XZ´平面に略平行な面であり、長辺はX軸に平行な辺であり、短辺はZ´軸に平行な辺である。
水晶片121における振動部121aの上下方向の厚みは、厚みすべり振動について所望の固有振動数(本実施形態では、振動周波数と説明する場合もある。)に基づいて設定される。例えば、厚みすべり振動の基本波振動を用いる場合において、固有振動数をF(MHz)とすると、この固有振動数Fに対応する振動部121aの上下方向の厚みt(μm)を求める基本式は、t=1670/Fである。なお、実際には、水晶片121における振動部121aの上下方向の厚みは、励振電極部123の重さ等も考慮して、基本式の値から微調整された値となる。
また、このような水晶片121は、接続配線部124の接続部124aが並んで設けられている水晶片121の所定の一辺を含む側面を平面視(側面視)したとき、水晶片121の所定の一辺を含む側面に、凹部125が形成されている。
水晶片121の所定の一辺を含む側面に形成されている凹部125は、例えば、第一凹部125a、第二凹部125bおよび第三凹部125cからなる。第一凹部125aは、水晶片121の所定の一辺の一端側であって水晶片121の下面に連なるように形成されている。第二凹部125bは、所定の一辺の他端側であって水晶片121の下面に連なるように形成されている。第三凹部125cは、例えば、水晶片121の所定の一辺の中点を通過しつつ水晶片121の上面および水晶片121の下面に連なるように形成されている。
このように、接続配線部124の接続部124aが並んで設けられている水晶片121の所定の一辺を含む側面に凹部125を形成することで、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、接続部124aがバンプ(本実施形態では導電性接着剤140)により接合(接着)されることとなるので、第一凹部125aおよび第二凹部125bが形成されている水晶片121の所定の一辺の両端部が接合(接着)されることとなる。別の観点では、凹部125が形成されている側面の両端部をバンプ(本実施形態では導電性接着剤140)により固定することができるといえる。
このため、接続部124aが設けられていない水晶片121の所定の一辺を含む側面に凹部を形成する場合と比較して、
副次的な振動の一つである屈曲振動の発生をより抑制させることが可能となる。この結果、副次的な振動の一つである屈曲振動が、主振動である厚みすべり振動に与える影響を低減でき、電気的特性を向上させることができる。
水晶片121の各種寸法の一例は、例えば、長辺の長さが550μm〜920μm、短辺の長さが350μm〜750μm、上下方向の厚みが20μm〜70μmとなっている。
このような水晶片121に設けられている金属パターン122は、水晶素子120の外部から交番電圧を印加するためのものである。金属パターン122は、一層となっていてもよいし、複数の金属層が積層されていてもよい。
本実施形態では、金属パターン122は、例えば、特に図示ないが、第一金属層、第一金属層上に積層されている第二金属層とからなる。
第一金属層は、水晶と密着性のよい金属が用いられ、例えば、ニッケル、クロム、ニクロムまたはチタンのいずれか一つが用いられる。第一金属層に水晶と密着性のよい金属を用いることで、水晶と密着しにくい金属を第二金属層に用いることができる。
第二金属層は、金属材料の中で電気抵抗率が低く、安定した材料が用いられ、例えば、金、金を主成分とする合金、銀、または、銀を主成分とする合金のいずれか一つが用いられる。電気抵抗率が低い金属を第二金属層に用いることで、金属パターン122自身の抵抗率を小さくすることができ、この結果、水晶素子120の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。また、安定した金属材料を用いることで、
水晶素子120の存在する周囲の空気と金属パターン122が反応し金属パターン122の重さが変化し水晶素子120の周波数が変化し電気的特性が変化することを低減させることができる。
金属パターン122は、励振電極部123および接続配線部124から構成されている。接続配線部124は、接続部124aと配線部124bとからなる。
励振電極部123は、水晶片121に交番電圧を印加するためのものである。励振電極部123は、一対となっており、水晶片121の両主面の中央付近、具体的には、振動部121aの中央部に互いが対向するように設けられている。励振電極部123は、平面視して、略矩形となっている。
接続配線部124は、接続部124aと配線部124bとからなり、水晶素子120の外部から励振電極部123に交番電圧を印加するためのものである。
接続部124aは、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、基体110に実装するためのものであり、基体110の基板部110aの上面に設けられている搭載パッド111とバンプ(本実施形態では導電性接着剤140)によって電気的に接着される。接続部124aは、一対となっており、基板部110aの搭載パッド111と対向する位置であって、水晶片121の一方の短辺の縁部に沿って二つ並んで設けられている。
また、接続部124aは、例えば、平面視して、振動部121aに対して+X軸方向側に位置している水晶片121の一方の短辺の縁部に沿って設けられている。従って、水晶片121の一方の短辺は、振動部121aに対して+X軸方向側に位置している水晶片121の短辺となる。このようにすることで、振動部121aに対して−X軸方向側に接続部124aを設けた場合と比較して、水晶素子120の周波数温度特性を向上させることができる。
配線部124bは、接続部124aと励振電極部123とを電気的に接続するためのものであり、一端が励振電極部123に接続されており、他端が接続部124aに接続されている。また、配線部124bは、別の観点では、励振電極部123から接続部124aまで延設されているといえる。また、配線部124bは、例えば、水晶片121の長辺と平行となるように延設されている。
このように接続配線部124bを設けることで、励振電極部123から接続部124aまでの配線部124bの長さを短くすることができ、配線部124b自身の抵抗を小さくすることが可能となる。ひいては、水晶素子120の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
このような水晶素子120は、前述したように、金属パターン122に交番電圧を印加すると、主振動である厚みすべり振動と、副次的な振動が生じる。この副次的な振動には、主振動である厚みすべり振動のメインの振動変位が同方向となっている輪郭すべり振動および屈曲振動の少なくとも二つが存在している。
主振動である厚みすべり振動は、すべり振動変位がX軸と平行な向きとなっており、励振電極部123の中央部での歪が最大となっている。これは、金属パターン122に交番電圧を印加したときの、励振電極部123における電荷分布がX軸に平行な向きでsin分布、Z´軸に平行な向きで一定分布となっているためである。従って、励振電極部123における電荷分布は、蒲鉾状の分布となっているといえる。主振動である厚みすべり振動は、
励振電極部123に電荷をより多く蓄積させることができる程、厚みすべり振動がしやすくなる。このように励振電極部123に電荷をより多く蓄積させる方法として、印加する交番電圧を大きくする、または、励振電極部123の面積を大きくするといった方法がある。主振動である厚みすべり振動をしやすくすることで、等価直列抵抗値が大きくなることを低減できるだけなく、電気的特性を向上させることが可能となる。
副次的な振動の一つに、輪郭すべり振動がある。輪郭すべり振動は、すべり振動の振動変位は、主振動である厚みすべり振動のメインの振動変位と同じ方向となっている。つまり、輪郭すべり振動のメインの振動変位は、X軸と平行な方向となっている。
また、前述した輪郭すべり振動とは異なる副次的な振動の一つである、屈曲振動がある。屈曲振動の振動変位は、主振動である厚みすべり振動のメインの振動変位と同じ方向となっている。つまり、屈曲のメインの振動変位は、X軸と平行な方向となっている。
このような水晶素子120は、平面視して、励振電極部123が矩形となっている。このとき、当該励振電極部123の長辺は、Z´軸に平行、つまり、水晶片121の短辺に平行となっており、当該励振電極部123の短辺は、X軸に平行、つまり、水晶片121の長辺に平行となっている。
ここで、水晶片121の短辺に平行な励振電極部123の辺の長さをWeとし、水晶片121の長辺に平行な励振電極部123の辺の長さをLeとする。
従って、本実施形態に係る水晶素子120は、We>Leとなっている。
また、本実施形態に係る水晶素子120は、0.90<Le/We<1.0となっている。
また、本実施形態に係る水晶素子120は、前述したように、水晶片121が振動部121aおよび周辺部121bから構成されている。振動部121aは、水晶素子120を平面視して、水晶片121の長辺に平行な二辺と水晶片121の短辺に平行な二辺とからなる略矩形となっている。
このような水晶片121を用いることにより、主振動である厚みすべり振動と副次的な振動の一つである輪郭すべり振動とが結合する量を低減させることができる。この結果、厚みすべり振動と輪郭すべり振動とが結合することにより、等価直列抵抗値が大きくなる、振動の周波数温度特性がなめらかな三次曲線からずれる、または、等価直列抵抗値の温度統制に著しい変動が生じるといった電気的特性の低下を抑制することが可能となる。
ここで、水晶片121の短辺に平行な振動部121aの辺の長さをWmとし、水晶片121の長辺に平行な振動部121aの辺の長さLmとする。
また、本実施形態に係る水晶素子120は、平面視して、Wm<Lmとなっている。
また、本実施形態に係る水晶素子120は、平面視して、Wm>WeかつLm>Leとなっている。従って、平面視して、励振電極部123の外縁が、振動部121aの外縁より内側に位置している。
また、本実施形態に係る水晶素子120は、水晶片121の長辺に平行な励振電極部123の辺と、当該長辺に隣接している振動部121aの辺であって水晶片121の長辺に平行な振動部121aの辺との距離をd1とすると、0.075>2×d1/Wm>0を満たしている。従って、d1とWmは、次の関係を満たしている。
0.0375Wm>d1>0
また、本実施形態に係る水晶素子120は、振動部121aの中心と励振電極部123の中心とが重なっている。また、本実施形態に係る水晶素子120は、水晶片121の一方の短辺から振動部121aの中心までの距離が、水晶片121の一方の短辺から水晶片121の中心までの距離よりも長くなっている。
ここで、振動部121aの中心とは、水晶素子120を平面視して、振動部121aの対角線の交点である。励振電極部123の中心とは、水晶素子120を平面視して、励振電極部123の対角線の交点である。水晶片121の中心とは、水晶素子120を平面視して、水晶片121の対角線の交点である。
また、水晶片121の一方の短辺とは、水晶素子120を平面視して、接続部124aが並んで設けられている水晶片121の短辺とする。
このように、水晶片121の一方の短辺から励振電極部123の中心までの距離を、水晶片121の一方の短辺から水晶片121の中心までの距離と比較して長くすることができる。別の観点では、接続部124aと励振電極部123の中心との距離を、接続部124aと水晶片121の中心との距離と比較して長くすることができる。従って、接続部124aをバンプ(本実施形態では導電性接着剤140)によって搭載パッド111と電気的に接続したことによる主振動である厚みすべり振動が阻害されることを低減させることが可能となる。
(実験1)
水晶素子120の周波数が27.12MHzのとき、種々の寸法を作製し、等価直列抵抗値検査、周波数温度特性検査、および、励振レベル依存性検査を行い、それぞれの検査における良品割合を調べる実験を行った。実験1の結果、Le<Weとなっていることが望ましいことが分かった。さらに、0.90<Le/We<1.00を満たしていることが、より望ましいことが分かった。
本実験では、第一サンプル〜第三サンプルを各50個ずつ作製した。
第一サンプルは、本実施例の一つであり、We>Leとなっており、0.90≧Le/Weとなっている。
第二サンプルは、本実施例の別の一つであり、We>Leとなっており、1.00>Le/We>0.90となっている。
第三サンプルは、比較例の一つであり、Le>Weとなっており、Le/We≧1.00となっている。
従って、第一サンプル〜第三サンプルにおいては、Le/Weが異なっている。それぞれのサンプルにおけるLe/Weの範囲は、次のようになっている。第一サンプル:0.90≧Le/We
第二サンプル:1.00>Le/We>0.90
第三サンプル:Le/We≧1.00
ここで、第一サンプル〜第三サンプルにおいては、水晶片121の長辺に平行な励振電極部123の辺の長さ、つまり、Leと、それに準じて変化する水晶片121の長辺に平行な振動部121aの辺の長さLmのみを変えている。
従って、第一サンプル〜第三サンプルにおいては、一定となるようにしているパラメータがある。なお、これらの一定とする各パラメータの値は、等価直列抵抗値を考慮した経験的に好適な値とした。一定となるようにしているパラメータは、水晶片121の長辺の長さ、水晶片121の短辺の長さ、水晶片121の短辺に平行な振動部121aの辺の長さWm、水晶片121の短辺に平行な励振電極部123の辺の長さWe、水晶片121の長辺に平行な振動部121aの辺から、
当該振動部121aの辺に隣接している励振電極部123の辺までの距離d1、および、水晶片121の短辺に平行な振動部121aの辺から、当該振動部121aの辺に隣接している励振電極部123の辺までの距離である。
なお、実験1における第一サンプル〜第三サンプルのそれぞれの寸法は、以下の通りとなっている。なお、繰り返しとなるがそれぞれの所定の値については、等価直列抵抗値を考慮した経験的に好適な値であり、第一サンプル〜第三サンプルにおいて、以下の値は、全て同じとなるようにしている。水晶片121の長辺の長さは、650μm〜920μmの所定の値となっている。
水晶片121の短辺の長さは、550μm〜690μmの所定の値となっている。
Wmは、350μm〜580μmの所定の値となっている。
Weは、250μm〜550μmの所定の値となっている。
d1は、5μm〜150μmの所定の値となっている。
水晶片121の短辺n平行な振動部121aの辺から、当該振動部121aの辺に隣接している励振電極部123の辺までの距離は、20μm〜150μmの所定の値となっている。
なお、本実験では、各公差は、次のようになっている。水晶素子120の周波数公差は、±0.5%となっている。また、それぞれの寸法の公差は、±5μmとなっている。
図6は、水晶素子120の周波数が27.12MHzのとき、種々の寸法を作製し、等価直列抵抗値検査、周波数温度特性検査、および、励振レベル依存性検査を行い、それぞれの検査における良品割合を調べ、判定を行った対比表である。
ここで、それぞれの検査について説明する。
等価直列抵抗値検査は、室温(25℃近辺)において、等価直列抵抗値を測定する検査である。等価直列抵抗値検査では、等価直列抵抗値が75Ω以下となっているものを良品とし、75Ωより大きいものを不良とし、良品となったものの数をサンプル数で割ったものから、良品割合を算出している。
本実験では、判定を行う際に、等価直列抵抗値が75Ωを基準としている。水晶素子120が実装されている水晶デバイスを用いて発振回路を形成する場合、要求される水晶素子120の等価直列抵抗値は、共振周波数や水晶デバイスの大きさによって異なるが、共振周波数が27.12MHzにおいて、等価直列抵抗値が75Ω以下であれば、移動通信機器(一例として、通信端末)に搭載される電子回路で、実用性のある発振回路を形成することができる。従って、本実験では、等価直列抵抗値が75Ω以下であることを指標とする。
周波数温度特性検査は、−15℃〜105℃の範囲内において、25℃のときの周波数に対してどのくらい周波数が変化しているか周波数温度特性を測定し、なめらかな3次曲線となっているものを良品、3次曲線からずれているものを不良とし、良品となったものの数をサンプル数で割ったものから良品割合を算出している。
本実験では、判定を行う際に、周波数温度特性が、なめらかな3次曲線となっているかどうかを判断基準としている。水晶素子120が実装されている水晶デバイスを発振器(例えば、温度補償型発振器)の場合には、出力周波数を一定にするためにこの周波数温度特性から補償を行っている。このため、周波数温度特性がなめらか3次曲線になっていない場合には、補償を行うことが困難となる。従って、本実験では、周波数温度特性が、なめらかな3次曲線となっていることを指標とする。
励振レベル依存性検査は、励振レベルを増加させたときの周波数の増減を調査し、励振でベルを高くしたときに周波数が増加したものを良品、周波数が低下したものを不良とし、良品となったものの数をサンプル数で割ったものから良品割合を算出している。
本実験では、判定を行う際に、励振レベルを増加させたときの周波数の増減を判断基準としている。一般的に、厚みすべり振動を主振動とする水晶素子を用いた水晶振動子は、水晶の応力と歪との関係が直線的でなく非直線成分も含んでいることに起因して、励振電流によって周波数が変化し、励振レベルを大きくしたときに周波数も増加する。従って、励振レベルを増加させたときに周波数が減少する場合には、主振動である厚みすべり振動が、別の要因、具体的には、
副次的な振動の影響を大きく受けているといえる。このため、本実験では、励振レベルを増加させたときに周波数の増減を指標とする。
本実験では、それぞれ作製した水晶素子における上記寸法を測定し、Le/Weを算出し、サンプル1〜サンプル3に分類した後、それぞれの検査を行った。
図6では、良品割合が80%以上100%未満のものを「○」、良品割合が50%以上80%未満のものを「△」、良品割合が50%以下のものを「×」とした。
サンプル1は、等価直列抵抗値検査においては、50%以上80%未満の範囲に属しており、判定が「△」となった。また、周波数温度特性検査および励振レベル依存性検査においては、いずれも80%以上100%未満となっており、判定が「○」となった。
サンプル2は、等価直列抵抗値検査、周波数温度特性検査、および、励振レベル依存性検査において、いずれも80%以上100%未満となっており、判定が「○」となった。
サンプル3は、等価直列抵抗値検査において、80%以上100%未満となっており、判定が「○」となった。また、周波数温度特性検査および励振レベル依存性検査においては、いずれも50%以上80%未満となっており、判定が「△」となった。
以上のことから、周波数温度特性および励振レベル依存性について効果が得られるため、Le>Weとなっていることが望ましいといえる。また、さらに、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させるために、1.00>Le/We>0.90であることがより望ましいといえる。
(実験2)
水晶素子120の周波数が27.12MHzのとき、種々の寸法を作製し、等価直列抵抗値検査を行い、検査における良品割合を調べる実験を行った。実験2の結果、0.075>(Wm−We)/Wm>0、つまり、0.035Wm>d1>0を満たしていることが望ましいことが分かった。
本実験では、第四サンプル〜第五サンプルを各50個ずつ作製した。
第四サンプルは、比較例の一つであり、0≧d1となっている。従って、第四サンプルは、We>Wmとなっている状態となっている。
第五サンプルは、本実施例であり、0.035Wm>d1>0となっている。
第六サンプルは、比較例の別の一つであり、d1>0.035Wmとなっている。
従って、第四サンプル〜第六サンプルにおいては、d1が異なっている。それぞれのサンプルにおけるd1の範囲は、次のようになっている。
第四サンプル:0≧d1
第五サンプル:0.035Wm>d1>0
第六サンプル:d1≧0.035Wm
ここで、第四サンプル〜第六サンプルにおいては、水晶片121の長辺に平行な振動部121aの辺から、この振動部121aの辺に隣接する励振電極部123の辺であって水晶片121の長辺に平行な励振電極部123の辺までの距離、つまり、d1の長さと、それに準じて変化する水晶片121の短辺に平行な振動部121aの辺の長さのみを変えている。
従って、第四サンプル〜第六サンプルにおいては、一定となるようにしているパラメータがある。なお、これらの一定とする各々のパラメータの値は、等価直列抵抗値を考慮した経験的に好適な値とした。一定となるようにしているパラメータは、水晶片121の長辺の長さ、水晶片121の短辺の長さ、水晶片121の長辺に平行な振動部121aの辺の長さLm、
水晶片121の長辺に平行な励振電極部123の辺の長さLe、
水晶片121の短辺に平行な励振電極部123の辺の長さWe、および、
水晶片121の短辺に平行な振動部121aの辺から、当該振動部121aの辺に隣接している励振電極部123の辺までの距離である。
なお、実験2における第四サンプル〜第六サンプルのそれぞれの寸法は、以下の通りとなっている。なお、繰り返しとなるがそれぞれの所定の値については、等価直列抵抗値を考慮した経験的に好適な値であり、第四サンプル〜第六サンプルにおいて、以下の値は、全て同じとなるようにしている。
水晶片121の長辺の長さは、650μm〜920μmの所定の値となっている。
水晶片121の短辺の長さは、550μm〜690μmの所定の値となっている。
Lmは、 535μm〜600μmの所定の値となっている。
Leは、450μm〜570μmの所定の値となっている。
Weは、250μm〜550μmの所定の値となっている。
水晶片121の短辺に平行な振動部121aの辺から、当該振動部121aの辺に隣接している励振電極部123の辺までの距離は、5μm〜150μmの所定の値となっている。
なお、本実験では、各公差は、次のようになっている。水晶素子120の周波数公差は、±0.5%となっている。また、それぞれの寸法の公差は、±5μmとなっている。
図7は、水晶素子120の周波数が27.12MHzのとき、種々の寸法を作製し、等価直列抵抗値検査を行い、良品割合を調べ、判定を行った対比表である。
等価直列抵抗値検査は、室温(25℃近辺)において、等価直列抵抗値を測定する検査である。等価直列抵抗値検査では、等価直列抵抗値が75Ω以下となっているものを良品とし、75Ωより大きいものを不良とし、良品となったものの数をサンプル数で割ったものから、良品割合を算出している。
本実験では、判定を行う際に、等価直列抵抗値が75Ωを基準としている。水晶素子120が実装されている水晶デバイスを用いて発振回路を形成する場合、要求される水晶素子120の等価直列抵抗値は、共振周波数や水晶デバイスの大きさによって異なるが、共振周波数が27.12MHzにおいては、等価直列抵抗値が75Ω以下であれば、移動通信機器(一例として、通信端末)に搭載される電子回路で、実用性のある発振回路を形成することができる。従って、本実験では、等価直列抵抗値が75Ω以下であることを指標とする。
本実験では、それぞれ作製した水晶素子における上記寸法、特に、d1を測定し、サンプル4〜サンプル6に分類した後、それぞれの検査を行った。
図7では、良品割合が80%以上100%未満のものを「○」、良品割合が50%以上80%未満のものを「△」、良品割合が50%以下のものを「×」とした。
サンプル4は、等価直列抵抗値検査において、良品割合が50%以下の範囲に属しており、判定が「×」となった。
サンプル5は、等価直列抵抗値検査において、良品割合が80%以上100%未満の範囲に属しており、判定が「○」となった。
サンプル6は、等価直列抵抗値検査において、良品割合が50%以上80%未満の範囲に属しており、判定が「△」となった。
以上のことから、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させるために、0.035Wm>d1>0、つまり、0.075>(Wm−We)/Wm>0を満たしていることが望ましいといえる。
以上の通り、本実施形態に係る水晶素子120は、平面視して略矩形となっている水晶片121と、水晶片121の両主面に設けられている略矩形の励振電極部123、および、励振電極部123から水晶片121の一方の短辺側の縁部まで延設されている接続配線部124からなる金属パターン122と、を備えている水晶素子120であって、水晶片121の短辺に平行な励振電極部123の辺の長さが、水晶片121に平行な励振電極部123の辺の長さより長くなっている。
前述したように、水晶片121の短辺に平行な励振電極部123の辺の長さをWeとし、水晶片121に平行な励振電極部123の辺の長さLeとすると、本実施形態に係る水晶素子120は、次の関係が成り立つ。
We>Le
前述しように、金属パターン122に交番電圧を印加したとき、水晶片121では、主振動である厚みすべり振動と、副次的な振動が生じている。副次的な振動には、輪郭すべり振動と屈曲振動の少なくとも二つの振動があるが、これらの振動は、振動変位が主振動である厚みすべり振動のメインの振動変位と同じ方向となっている。つまり、本実施形態に係る水晶素子120では、励振電極部123になるべく多くの電荷を蓄積させ主振動である厚みすべり振動を生じやすくしつつ、副次的な振動である輪郭振動および屈曲振動が生じにくくしている。
従って、本実施形態に係る水晶素子120のようにWe>Leにすることで、励振電極部123の面積を確保しつつ、副次的な振動、具体的には、輪郭すべり振動および屈曲振動が生じる量を低減させることができる。この結果、主振動である厚みすべり振動と副次的な振動とが結合することを抑制することができ、水晶素子120の電気的特性を向上させることが可能となる。
特に、水晶素子120の小型化、具体的には、水晶片121の長辺の長さが920μm以下のような場合には、副次的な振動の次数が低くなるため、主振動である厚みすべり振動をしている部分において副次的な振動である屈曲振動の影響が大きくなり、主振動である厚みすべり振動と副次的な振動とが結合しやすくなる傾向がある。本実施形態に係る水晶素子120のような構造をとることにより、副次的な振動を抑制することができ、結果、主振動である厚みすべり振動と副次的な振動とが結合することを低減させることが可能となり、
電気的特性を向上させることができる。つまり、本実施形態における水晶素子120は、水晶素子120が小型化した場合に、特に、有効であるといえる。
また、本実施形態に係る水晶素子120は、水晶片121が、略直方体形状の振動部121aと、振動部121aの縁部に沿って設けられ振動部121aの上下方向の厚みが薄い周辺部121bとからなり、水晶片121の短辺に平行な振動部121aの辺の長さが、水晶片121の短辺に平行な励振電極部123の辺の長さよりも長くなっている。
前述したように、水晶片121の短辺に平行な振動部121aの辺の長さをWmとすると、本実施形態に係る水晶素子120は、次の関係が成り立つ。
Wm>We
別の観点では、水晶素子120を平面視したとき、振動部121aの外縁より内側に、励振電極部123の外縁が存在しているといえる。このようにすることで、金属パターン122に交番電圧を印加したときに、励振電極部123に挟まれている部分から漏れ伝搬した主振動である厚みすべり振動が、振動部121aと周辺部121bとの境界部、具体的には、中間部において、反射し、この反射した振動が励振電極部123に挟まれている部分の振動に与える影響を低減させることが可能となる。この結果、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させつつ、電気的特性を向上させることができる。
また、振動部121aと周辺部121bとからなるメサ型の水晶片121を用いることにより、副次的な振動を抑制させることができ、副次的な振動と主振動である厚みすべり振動とが結合し、電気的特性が低下することを抑制することが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子120は、0.90<Le/We<1.00を満たしている。
このようにすることで、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させつつ、電気的な特性を向上させることが可能となる。例えば、0.90>Le/Weの場合、小型化した水晶素子においては、励振電極部123の面積の大きさが小さくなってしまう。このため、励振電極部123に蓄積される電荷の量が少なくなるため、主振動である厚みすべり振動が生じにくくなるため、等価直列抵抗値が大きくなってしまう虞がある。例えば、Le/We>1.00の場合には、副次的な振動である輪郭すべり振動および屈曲振動も生じやすくなってしまうため、
副次的な振動と主振動である厚みすべり振動とが結合し、電気的特性が低下する虞がある。また、実験1による実験結果からも効果が明らかである。従って、本実施形態では、0.90<Le/We<1.00となっていることが望ましい。
また、本実施形態に係る水晶素子120は、0.075>(Wm−We)/Wm>0を満たしている。
別の観点では、水晶片121の長辺に平行な励振電極部123の辺と、当該長辺に隣接している振動部121aの辺であって水晶片121の長辺に平行な振動部121aの辺との距離をd1とすると、0.075>2×d1/Wm>0を満たしている。従って、d1とWmは、次の関係を満たしているといえる。
0.0375Wm>d1>0
このようにすることで、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させつつ、電気的特性を向上させることが可能となる。例えば、0.075<(Wm−We)/Wmの場合、別の観点では、0.0375Wm<d1の場合、小型化した水晶素子においては、励振電極部123の面積の大きさが小さくなってしまう。このため、励振電極部123に蓄積される電荷の量が少なくなるめ、主振動である厚みすべり振動が生じにくくなるため、等価直列抵抗値が大きくなってしまう虞がる。例えば、(Wm−We)/Wm<0の場合、別の観点では、d1<0の場合、
平面視したときに、励振電極部123の外縁が振動部121aの外縁よりも外側に位置することとなり、金属パターン122に交番電圧を印加したときに、周辺部121bの中間部においても振動することとなる。このため、振動が複雑となり、等価直列抵抗値が大きくなりつつ電気的特性が低下する虞がある。また、実験2による実験結果からも効果が明らかである。従って、0.075>(Wm−We)/Wm>0、別の観点では、0.0375Wm>d1>0を満たしていることが望ましいといえる。
また、本実施形態に係る水晶素子は、平面視して、振動部121aの中心と励振電極部123の中心とが重なっており、水晶片121の一方の短辺から振動部121aの中心までの距離が、水晶片121の一方の短辺から水晶片121の中心までの距離よりも長くなっている。
前述したように、水晶片121の一方の短辺の縁部には、接続配線部124の接続部124aが二つ並んで設けられている。従って、別の観点では、接続部124aから振動部121aの中心までの距離が、接続部124aから水晶片121の中心までの距離と比較して長くなっているといえる。
このため、このようにすることで、バンプ(本実施形態では、導電性背着剤140)を用いて接続部124aと搭載パッド111とを電気的に接続させたときに、バンプにより励振電極部123に挟まれている部分の振動へ与える影響を低減させることが可能となる。この結果、励振電極部123に挟まれている部分の振動がバンプにより電気的に接続することにより阻害され等価直列抵抗値が大きくなり電気的特性が低下することを、低減させることができる。
本実施形態に係る水晶デバイスは、本実施形態に係る水晶素子120と、接続配線部124と導電性接着剤140で接着される搭載パッド111が設けられている基板部110aを有している基体110と、基体110と接合される蓋体130と、を備えている。
本実施形態に係る水晶素子120は、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させつつ電気的特性を向上させることができるので、このような水晶素子120を実装することで、本実施形態における水晶デバイスにおいても、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させつつ電気的特性を向上させることが可能となる。
本発明は、以下の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
水晶素子を有するデバイスは、水晶振動子に限定されない。例えば、水晶素子に加えて水晶素子に電圧を印加して発信信号を生成する集積回路素子(IC)を有する発振器であってもよい。また、例えば、水晶デバイスは、水晶素子の他にサーミスタ等の電子素子を有するものであってもよい。また、例えば、水晶デバイスは、恒温槽付きのものであってもよい。水晶デバイスにおいて、水晶素子を実装する基体の構造は、適宜構成されてもよい。例えば、基体は、上面および下面に凹部を有する断面H型であってもよい。
水晶素子は、振動部と周辺部とからなる水晶片を用いず、平板状の水晶片であってもよい。
また、水晶素子は、水晶片の所定の一辺を含む側面に、第一凹部、第二凹部および第三凹部からなる凹部が形成されている場合について説明しているが、いくつ凹部が形成されていてもよい。また、水晶片の所定の一辺を含む側面に凹部が形成されていなくてもよい。
水晶素子の接続部と基体の搭載パッドとが導電性接着剤によって電気的に接続されている場合について説明しているが、水晶素子を基体の基板部上に実装しつつ接続部と搭載パッドとを電気的に接続することができれば、例えば、金属バンプを用いてもよい。また、例えば、搭載パッドと接続部とを金属からなるワイヤ、具体的には、金ワイヤまたは銀ワイヤを用いてもよい。
接続配線部の配線部が水晶片の長辺と平行となるように励振電極部から延設されている場合について説明しているが、励振電極部と接続部とを電気的に接続することができれば、配線部の形状は問わない。
また、水晶素子は、水晶片の長辺に平行な励振電極部の二辺が水晶片の外縁に向かって膨らむ形状となっていてもよい。