(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る水晶デバイスの斜視図であり、図2は、図1のA−A断面における断面図である。図3は、第一実施形態に係る水晶素子120の平面図であり、図4は、B−B断面における断面図である。
(水晶デバイスの概略構成)
水晶デバイスは、例えば、全体として略直方体形状となっている電子部品である。水晶デバイスは、例えば、長辺または短辺の長さが0.6mm〜2.0mmであり、上下方向の厚さが0.2mm〜1.5mmとなっている。
水晶デバイスは、例えば、凹部が形成される素子搭載部材110と、凹部に収容された水晶素子120と、凹部を塞ぐ蓋体130と、素子搭載部材110に水晶素子120を接着実装するための導電性接着剤140と、から構成される。
素子搭載部材110の凹部は、蓋体130によって封止され、その内部は、例えば、真空とされ、または適当なガス(例えば、窒素)が封入されている。
素子搭載部材110は、例えば、素子搭載部材110の主体となる基体110aと、基体110aの上面の縁部に沿って設けられている枠体110bと、水晶素子120を実装するための搭載パッド111と、水晶デバイスを不図示の回路基板等に実装するための外部端子112とからなる。素子搭載部材110には、基体110aの上面の縁部に沿って枠状の枠体110bが設けられ、凹部が形成されている。
基体110aおよび枠体110bは、セラミック等の絶縁材料からなる。搭載パッド111および外部端子112は、例えば、金属等からなる導電層により構成されており、基体110a内に配置された導体(図示せず)によって互いに電気的に接続されている。蓋体130は、例えば、金属から構成され、素子搭載部材110、具体的には、枠体110bの上面シーム溶接等により接合されている。
水晶素子120は、例えば、水晶片121に電圧を印加するための、一対の励振電極部123と、水晶素子120を搭載パッド111に実装するための一対の配線部124とを有している。
水晶片121は、いわゆるATカット水晶片である。すなわち、水晶において、X軸、Y軸およびZ軸からなる直交座標系XYZを、X軸回りに30°〜50°回転させて直交座標系XY´Z´を定義したときに、XZ´平面に平行に切り出された板状である。
一対の励振電極部123および一対の配線部124は、金属等からなる導電層により構成されている。一対の励振電極部123は、例えば、水晶片121の両主面の中央側に設けられている。一対の配線部124は、例えば、一対の励振電極部123からX軸方向の一方側(例えば、−X側)に延びており、水晶片121の所定の一辺の端部に沿って、一対の引出部125を有している。
水晶素子120は、主面を素子搭載部材110の基体110aの上面に対向させて、素子搭載部材110の凹部内に収容される。水晶素子120は、引出部125は、素子搭載部材110の基体110aの搭載パッド111に導電性接着剤140により接着される。これにより、水晶素子120は、素子搭載部材110に片持ち梁のように支持されている。また、一対の励振電極部123は、素子搭載部材110の一対の搭載パッド111と電気的に接続され、ひいては、素子搭載部材110の複数の外部端子112のいずれか二つと電気的に接続される。
このようにして構成された水晶デバイスは、例えば、不図示の回路基板の実装面に素子搭載部材110の下面を対向させて配置され、外部端子112が半田などにより回路基板のパッドに接合されることによって回路基板に実装される。回路基板には、例えば、発振回路が構成されている。発振回路は、外部端子112および搭載パッド111を介して一対の励振電極部125に交番電圧を印加して発振信号を生成する。このとき、発振回路は、例えば、水晶片121の厚みすべり振動うち基本波振動を利用する。
(水晶素子の形状)
水晶素子120は、直方体形状の水晶片121と、励振電極部123、配線部124および引出部125からなる金属パターン122と、から構成されている。
水晶片121は、略直方体形状のATカット水晶板が用いられている。このとき、水晶片121の上下方向の厚みは、例えば、20μm〜50μmとなっている。また、水晶片121の密度は、約2.65×103kg/m3となっている。また、一対の励振電極部123に交番電圧が印加され水晶片121の一部が振動しているときの、厚みすべり振動の基本波の音速(横波)は、3764m/sとなっている。
金属パターン122は、水晶片121の表面に設けられており、水晶素子120の外部から交番電圧を印加するためのものである。金属パターン122は、一対の励振電極部123、一対の配線部124、一対の引出部125からなる。
一対の励振電極部123は、水晶片121の両主面に設けられている。励振電極部123の上下方向の厚みは、配線部124の上下方向の厚みより厚くなっている。励振電極部123の上下方向の厚みは、水晶素子120の所望の周波数と水晶片121の板厚によって決定され、例えば、5μm〜30μmとなっている。具体的には、励振電極部123の上下方向の厚みは、周波数定数と呼ばれる1670を所望の周波数で割った商から水晶片121の上下方向の厚みを引き、2で割った商となる。
一対の励振電極部123は、アルミニウムからなり、密度が、約2.65×103kg/m3となっている。また、厚みすべり振動の基本波と振動が進む速度、音速(横波)は、3040m/sとなっている。従って、一対の励振電極部123の密度は、水晶片121と同じ密度であり、また、音速も水晶片121と近似した値となっている。
配線部124は、一端が励振電極部123に接続され、他端が水晶片121の所定の一辺の縁部にまで延設されている。また、引出部125は、導電層により構成されており、例えば、金、金を主成分とする金属、銀、銀を主性分とする金属が用いられている。
引出部125は、配線部124の他端に接続されており、水晶片121の所定の一辺に沿って二つ並んで設けられている。また、引出部125は、配線部124とともに一体的に形成されている。
水晶素子120は、引出部125に交番電圧が印加されると、配線部124を介して、励振電極部123に交番電圧が印加されることなり、逆圧電効果および圧電効果により励振電極部123に挟まれている水晶片121の一部が厚みすべり振動のうち基本波振動する。このとき、励振電極部123の密度が水晶片121の密度と同じとなっており、かつ、励振電極部123の音速が水晶片121の音速と近い値となっているため、励振電極部123と水晶片121との境界付近において、水晶片121の厚みすべり振動のうち基本波振動が励振電極部123に反射される量を低減させることができ、励振電極部123も水晶片121と一体的に振動させることが可能となる。この結果、励振電極部123を水晶片121と同様にみなすことができ、水晶素子120をメサ型の水晶片を用いた場合と同様にエネルギー閉じ込めが可能となる。
引出部125および配線部124に用いられる金を励振電極部123に用いた場合について説明する。金の密度は、18.9〜19.3×103kg/m3となっており、金の音速は1200m/sとなっている。従って、励振電極部123が金から構成されている場合には、水晶片121と励振電極部123との密度および音速が大きく異なっている。このため、水晶片121が厚みすべり振動うち基本波振動で振動する場合、水晶片121と金との音速が大きくことなるため、水晶片121と励振電極部123との境界において水晶片121で生じた厚みすべり振動のうち基本波振動が反射される量が多くなり、反射された厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片121の振動へ影響(例えば、反射された振動が水晶片121の厚みすべり振動のうち基本波振動と結合され周波数が変動しやすくなる場合や、反射された振動が水晶片121の振動を阻害し等価直列抵抗値が大きくなる場合)が生じてしまう。また、密度が大きくことなることから、水晶片121と励振電極部123とで振動の仕方が大きくことなるため、一体的に振動させることができない。このため、水晶片121が厚みすべり振動うち基本波振動で振動する場合、水晶片121と銀との音速が大きくことなるため、水晶片121で生じた厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片121と励振電極部123との境界で反射される量が多くなり、反射された厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片121の振動へ影響(例えば、反射された振動が水晶片121の振動と結合され周波数が変動しやすくなる場合や、反射された振動が厚みすべり振動のうち基本波振動を阻害し等価直列抵抗値が大きくなる場合)が生じてしまう。また、密度が大きくことなることから、水晶片121と励振電極部123とで振動の仕方が大きくことなるため、一体的に振動させることができない。つまり、第一実施形態では、水晶片121の音速および密度と略同一の材料を、励振電極部123に用いることで、水晶片121と励振電極部123とを一体的に振動させることができ期待した効果を得ることができる。
このような水晶素子120の製造方法について説明する。水晶素子120は、例えば、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、ウエハ状態で一部が連結されている水晶片121を形成する。次に、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術、スパッタリング技術または蒸着技術を用いて、配線部124および引出部125を形成する。最後に、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術、スパッタリング技術または蒸着技術を用いて、引出部124の一端に接続するように励振電極部123を形成する。なお、本実施形態では、水晶素子120をウエハ状態で製造する場合について説明しているが、例えば、個片化されている水晶片を用いて製造してもよい。
以上のとおり、第一実施形態に係る水晶素子120は、平板状の水晶片121と、水晶片121の両主面に設けられている一対の励振電極部123と、励振電極部123から水晶片121の縁部まで延設され、励振電極部123より上下方向の厚みが薄い配線部124と、配線部124に接続され水晶片121の縁部に設けられている引出部125と、からなり、励振電極部123がアルミニウムからなる。
このように、水晶片121の密度が同じで、かつ、厚みすべり振動のうちの基本波振動の音速と近い音速であるアルミニウムを励振電極部123に用いることで、水晶片121と励振電極部123との境界部分での厚みすべり振動のうちの基本波振動の反射を低減させることができ、励振電極部123に電圧を印加したときに、水晶片121と励振電極部123とを一体的に振動させることが可能となる。また、励振電極部123の上下方向の厚みを配線部124および引出部125の上下方向の厚みより厚くし、疑似的にメサ型の水晶片と同様の効果を得ることができる。また、励振電極部123にアルミニウムを用いることで、励振電極部123の形状を所望の形状にすることができる。このため、より振動エネルギーを閉じ込めることができ、さらには、不要振動の発生を低減させることができる。この結果、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、このような水晶素子120を用いた水晶デバイスに用いることによって、水晶素子120においてより振動エネルギーを閉じ込めることができ、さらには、不要振動の発生を低減させることができる。この結果、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
(第二実施形態)
図5は、第二実施形態に係る水晶素子220の平面図であり、図6は、図5のC−C断面における断面図である。
第二実施形態に係る水晶素子220は、励振電極部223が、第一金属層223aおよび第二金属層223bから構成されている点で、第一実施形態と異なる。
(水晶素子の形状)
水晶素子220は、直方体形状の水晶片221と、励振電極部223、配線部224および引出部225からなる金属パターン222と、から構成されている。
水晶片221は、略直方体形状のATカット水晶板が用いられている。このとき、水晶片221の上下方向の厚みは、例えば、20μm〜50μmとなっている。また、水晶片221の密度は、約2.65×103kg/m3となっている。また、一対の励振電極部223に交番電圧が印加され水晶片221の一部が振動しているときの、厚みすべり振動の基本波の音速(横波)は、3764m/sとなっている。
金属パターン222は、水晶片221の表面に設けられており、水晶素子220の外部から交番電圧を印加するためのものである。金属パターン222は、一対の励振電極部223、一対の配線部224および一対の引出部225からなる。
励振電極部223は、第一金属層223aと第一金属層223a上に積層される第二金属層223bとからなる。第一金属層223aの上下方向の厚みは、第二金属層223bの上下方向の厚みと比較して厚くなっている。
第一金属層223aは、アルミニウムからなり、密度が、約2.65×103kg/m3となっている。また、厚みすべり振動の基本波と振動が進む速度、音速(横波)は、3040m/sとなっている。従って、第一金属層223aの密度は、水晶片221と同じ密度であり、また、音速も水晶片221と近似した値となっている。第一金属層223aは、配線部224および引出部225の上下方向の厚みより厚くなっており、例えば、5μm〜30μmとなっている。第一金属層223aの上下方向の厚みは、水晶素子220の所望の周波数、水晶片221の板厚および第二金属層223bの上下方向の厚みによって決定される。具体的には、第一金属層223aの上下方向の厚みは、周波数定数とよばれる1670を、第二金属層223bの分を設けた場合の周波数変化量を水晶素子220の所望の周波数から引いた周波数値で割った商から、水晶片221の上下方向の厚みを引き、2で割った商となる。
第二金属層223bは、例えば、金、金を主成分とする金属、銀、銀を主成分とする金属のいずれか一つから構成されている。第二金属層223bは、その上下方向の厚みが、第一金属層223aの上下方向の厚みより薄く、例えば、0.05μm〜1.0μmの厚みとなっている。
配線部224は、一端が励振電極部223に接続され、他端が水晶片221の所定の一辺の縁部にまで延設されている。また、引出部224は、導電層により構成されている。配線部224は、例えば、励振電極部223の第二金属層223bと同じ金属材料からなる。
引出部225は、配線部224の他端に接続されており、水晶片221の所定の一辺に沿って二つ並んで設けられている。また、引出部225は、配線部224とともに一体的に形成されている。
水晶素子220は、引出部225に交番電圧が印加されると、配線部224を介して、励振電極部223に交番電圧が印加されることとなり、逆圧電効果および圧電効果により励振電極部223に挟まれている水晶片221の一部が厚みすべり振動のうち基本波振動する。このとき、励振電極部223の第一金属層223aの密度が水晶片221の密度と同じとなっており、かつ、励振電極部223の第一金属層223aの音速が水晶片221の音速と近い値となっているため、励振電極部225の第一金属層223aと水晶片221との境界付近において、水晶片221の厚みすべり振動うち基本波振動が励振電極部223の第一金属層223aに反射される量を低減させることができ、励振電極部223の第一金属層223aも水晶片221と一体的に振動させることが可能となる。この結果、励振電極部223の第一金属層223aを水晶片221と同様にみなすことができ、水晶素子220をメサ型の水晶片を用いた場合と同様にエネルギー閉じ込めが可能となる。
引出部225、配線部224および励振電極部223の第二金属層223bに用いられる金を励振電極部223の第一金属層223aに用いた場合について説明する。金の密度は、18.9〜19.3×103kg/m3となっており、金の音速は1200m/sとなっている。従って、励振電極部223の第一金属層223aが金から構成されている場合には、水晶片221と励振電極部223の第一金属層223aとの密度および音速が大きく異なっている。このため、水晶片221が厚みすべり振動うち基本波振動で振動する場合、水晶片221と金との音速が大きくことなるため、水晶片221で生じた厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片221と励振電極部223の第一金属層223aとの境界で反射される量が多くなり、反射された厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片221の振動へ影響(例えば、反射された振動が水晶片221の厚みすべり振動のうち基本波振動と結合され周波数が変動しやすくなる場合や、反射された振動が水晶片221の振動を阻害し等価直列抵抗値が大きくなる場合)が生じてしまう。また、密度が大きくことなることから、水晶片221と励振電極部223の第一金属層223aとで振動の仕方が大きくことなるため、一体的に振動させることができない。このため、水晶片221が厚みすべり振動うち基本波振動で振動する場合、水晶片221と銀との音速が大きくことなるため、水晶片221で生じた厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片221と励振電極部223の第一金属層223aとの境界で反射される量が多くなり、反射された厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片221の振動へ影響(例えば、反射された振動が水晶片221の振動と結合され周波数が変動しやすくなる場合や、反射された振動が厚みすべり振動のうち基本波振動を阻害し等価直列抵抗値が大きくなる場合)が生じてしまう。また、密度が大きく異なることから、水晶片221と励振電極部223の第一金属層223aとで振動の仕方が大きくことなるため、一体的に振動させることができない。つまり、第二実施形態では、水晶片221の音速および密度と略同一の材料を励振電極部223の第一金属層223aに用いることで、水晶片221と第一金属層223aとを一体的に振動させることがき、期待した効果を得ることができる。このとき、第一金属層223aと第二金属層223bとの境界において、厚みすべり振動の基本波振動が反射してしまうので、第二金属層223bの上下方向の厚みを十分に薄くすることが望ましい。
このような水晶素子220は、次のように製造される。まず、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、ウエハ状態で一部が連結されている水晶片121を形成する。次に、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いる。まず、水晶片121が連結されている水晶ウエハに、第一金属層と同じ金属(アルミニウム)からなる第一金属膜を設け、この第一金属層と同じ第一金属膜上に第二金属層と同じ金属からなる第二金属膜を設ける。次に、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術を用いて、励振電極部223、配線部224および引出部225となる部分を形成する。このようにフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、第一金属膜上に第二金属膜を設けた後に励振電極部223、配線部224および引出部225を形成することで、第一金属層223aが外部の空気と酸化または窒化し変質することを低減させることができる。
以上の通り、第二実施形態に係る水晶素子220は、平板状の水晶片221と、水晶片221の両主面に設けられている一対の励振電極部223と、励振電極部223から水晶片221の縁部まで延設され、励振電極部223より上下方向の厚みが薄い配線部224と、配線部224に接続され水晶片221の縁部に設けられている引出部225と、からなり、励振電極部223が第一金属層223aと第一金属層223a上に設けられている第二金属層223bとからなり、第一金属層223aがアルミニウムからなり、第二金属層223bが金、金を主成分とする金属、銀、銀を主成分とする金属のいずれか一つからなる。
このような構成にすることで、励振電極部223の第一金属層223aと水晶片221との境界付近におおいて、水晶片221の厚みすべり振動うち基本波振動が励振電極部223の第一金属層223aに反射される量を低減させることができ、励振電極部223の第一金属層223aも水晶片221と一体的に振動させることが可能となる。この結果、励振電極部223の第一金属層223aを水晶片221と同様にみなすことができ、水晶素子220をメサ型の水晶片を用いた場合と同様にエネルギー閉じ込めが可能となる。つまり、このように励振電極部223にアルミニウムを用いることで、励振電極部223内においても振動をするようにすることができ、メサ形状の水晶片と同様の効果を得ることが可能となる。また、励振電極部223にアルミニウムを用いることで、励振電極部223の形状を所望の形状にすることができる。このため、より振動エネルギーを閉じ込めることができ、さらには、不要振動の発生を低減させることができる。この結果、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、励振電極部223を第一金属層223aと第二金属層223bとから構成することで、酸素と反応し酸化しやすいアルミニウムを第一金属層223aに用いても、酸素と反応しにくい金、金を主成分とする金属、銀、銀を主成分とする金属を第二金属層に用いているので、励振電極部223が大気中の酸素と反応し水晶素子220の周波数が変動することを低減させることができる。
また、第二実施形態に係る水晶素子220は、引出部225および配線部224が、第二金属層223bと同一材料からなる。このようにすることで、励振電極部223の第二金属層223bと配線部224との境界での電気的特性の変化(例えば、周波数変動)を低減させることができる。別の観点では、第二金属層223b、引出部225および配線部224を同時に形成することができるともいえる。このため、水晶素子220を形成時に、第一金属層223a(第一金属膜)が空気中の酸素と反応し酸化することを第二金属層223b(第二金属膜)によって低減させることができる。また、第二金属層223bは、配線部224および引出部225を同時に形成することができるので、製造工程を簡略化することができる
また、このような水晶素子220を用いた水晶デバイスに用いることによって、水晶素子220においてより振動エネルギーを閉じ込めることができ、さらには、不要振動の発生を低減させることができる。この結果、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
(第三実施形態)
図7は、第三実施形態に係る水晶素子320の平面図であり、図8は、図7のD−D断面における断面図である。
第三実施形態に係る水晶素子320は、励振電極部323が、第一金属層323aおよび第二金属層323bから構成されている点で、第一実施形態と異なり、第二金属層323bがアルミニウムからなる点で第二実施形態と異なる。
(水晶素子の形状)
水晶素子320は、直方体形状の水晶片321と、励振電極部323、配線部324および引出部325からなる金属パターン322と、から構成されている。
水晶片321は、直方体形状のATカット水晶板が用いられている。このとき、水晶片321の上下方向の厚みは、例えば、20μm〜50μmとなっている。また、水晶片321の密度は、約2.65×103kg/m3となっている。また、一対の励振電極部323に交番電圧が印加され水晶片321の一部が振動しているときの、厚みすべり振動の基本波の音速(横波)は、3764m/sとなっている。
金属パターン322は、水晶片321の表面に設けられており、水晶素子320の外部から交番電圧を印加するためのものである。金属パターン322は、一対の励振電極部323、一対の配線部324および一対の引出部325からなる。
励振電極部323は、第一金属層323aと第一金属層323a上に積層される第二金属層323bとからなる。第一金属層223aの上下方向の厚みは、第二金属層323bの上下方向の厚みと比較して薄くなっている。
第一金属層323aは、第二金属層323bと水晶片321との密着強度を上げるためのものである。第一金属層323aは、例えば、ニッケル、チタン、ニクロム、クロムのいずれか一つの金属が選択されて用いられる。第一金属層323aは、例えば、その上下方向の厚みが50nm〜100nmとなっている。このように第一金属層323aの上下方向の厚みを50nm〜100nmにすることで、水晶片321で生じる厚みすべり振動のうちの基本波振動が第一金属層323aと水晶片321との境界で反射することを低減させることができる。このため、第一金属層323aが設けられていても、疑似的に、励振電極部323を第二金属層323bから構成されているようにみなすことができる。
第二金属層323bは、アルミニウムからなり、密度が約2.65×103kg/m3となっている。また、厚みすべり振動の基本波と振動が進む速度、音速(横波)は、3040m/sとなっている。従って、第二金属層323bの密度は、水晶片321と同じ密度であり、また、音速も水晶片321と近似した値となっている。第二金属層323bは、配線部324および引出部325の上下方向の厚みより厚くなっており、例えば、5μm〜30μmとなっている。第二金属層323bの上下方向の厚みは、水晶素子の320の所望の周波数、水晶片321の板厚および第一金属層323aの上下方向の厚みによって決定される。具体的には、第二金属層323bの上下方向の厚みは、周波数定数と呼ばれる1670を第一金属層323aが設けられた場合の周波数変化量を水晶素子320の所望の周波数から引いた周波数値で割った商から、水晶片321の上下方向の厚みを引き、2で割った商となる。
配線部324は、一端が励振電極部323に接続され、他端が水晶片321の所定の一辺の縁部にまで延設されている。また、引出部324は、導電層により構成されている。配線部324は、例えば、励振電極部323の第一金属層323aと同じ金属材料から設けられていてもよいし、金、金を主成分とする金属、銀、銀を主成分とする金属のいずれか一つから選択されて用いられていてもよい。
引出部325は、配線部324の他端に接続されており、水晶片321の所定の一辺に沿って二つ並んで設けられている。また、引出部325は、配線部324とともに一体的に形成されている。
水晶素子320は、引出部325に交番電圧が印加されると、配線部324を介して、励振電極部323に交番電圧が印加されることとなり、逆圧電効果および圧電効果により励振電極部323に挟まれている水晶片321の一部が厚みすべり振動のうち基本波振動をする。このとき、励振電極部323の第一金属層323aの上下方向の厚みが50nm〜100nmとなっているので、励振電極部323の第一金属層323aと水晶片321との境界において水晶片321の厚みすべり振動のうち基本波振動が第一金属層323aで反射される量を低減させることができる。つまり、第一金属層323aがないものとしてみなすことができる。また、励振電極部323の第二金属層323bの密度が水晶片321の密度と同じで、かつ、励振電極部323の第二金属層323bの音速が水晶片321の音速と近い値とすることで、第一金属層323aと第二金属層323bとの境界において、第一金属層323aを伝搬してきた水晶片321の厚みすべり振動のうち基本波振動が、第二金属層323bに反射する量を低減させることができ、第二金属層323bも水晶片321と一体的に振動させることが可能となる。この結果、励振電極部323も水晶片321と同様にみなすことができ、水晶素子320をメサ型の水晶片を用いた場合と同様にエネルギー閉じ込めすが可能となる。
引出部325および配線部324に用いられる金を励振電極部323の第二金属層323bに仮に用いた場合について説明する。金の密度は、18.9〜19.3×103kg/m3となっており、金の音速は1200m/sとなっている。従って、励振電極部323の第二金属層323bが金から構成されている場合には、水晶片321と励振電極部323の第二金属層323bとの密度および音速が大きく異なっている。このため、水晶片321が厚みすべり振動うち基本波振動で振動する場合、水晶片321と金との音速が大きくことなるため、水晶片321で生じた厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片321と励振電極部323の第二金属層323bとの境界で反射される量が多くなり、反射された厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片321の振動へ影響(例えば、反射された振動が水晶片321の厚みすべり振動のうち基本波振動と結合され周波数が変動しやすくなる場合や、反射された振動が水晶片321の振動を阻害し等価直列抵抗値が大きくなる場合)が生じてしまう。また、密度が大きくことなることから、水晶片321と励振電極部323の第二金属層323bとで振動の仕方が大きくことなるため、一体的に振動させることができない。このため、水晶片321が厚みすべり振動うち基本波振動で振動する場合、水晶片321と銀との音速が大きくことなるため、水晶片321で生じた厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片321と励振電極部323の第二金属層323bとの境界で反射される量が多くなり、反射された厚みすべり振動のうち基本波振動が水晶片321の振動へ影響(例えば、反射された振動が水晶片321の振動と結合され周波数が変動しやすくなる場合や、反射された振動が厚みすべり振動のうち基本波振動を阻害し等価直列抵抗値が大きくなる場合)が生じてしまう。また、密度が大きくことなることから、水晶片321と励振電極部323の第二金属層323bとで振動の仕方が大きくことなるため、一体的に振動させることができない。つまり、第三実施形態では、水晶片321の音速および密度と近似した値の材料を、励振電極部323の第二金属層323bに用いることで、期待した効果を得ることができる。
また、励振電極部323を覆うように、絶縁層323cが設けられている。絶縁層323cは、例えば、酸化ケイ素が用いられる。絶縁層323cを設けることで、励振電極部323の第二金属層323bが、酸素と反応し酸化することを低減させることができる。この結果、水晶素子320の電気的特性の変化(例えば、酸化することによる周波数変動)を低減させることが可能となる。また、絶縁層323cの上下方向の厚みは、例えば、50nm〜100nmとなっており、厚みすべり振動のうち基本振動へ影響を与えることが少ない膜厚となっている。
このような水晶素子320は、次のように製造される。また、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、ウエハ状態で一部が連結されている水晶片321を形成する。次に、水晶片321が連結されている水晶ウエハに、第一金属層323aと同じ金属からなる第一金属膜を設け、この第一金属膜上に第二金属層323bと同じ金属(アルミニウム)からなる第二金属膜を設け、さらに第二金属膜上に絶縁層と同じ材料からなる絶縁膜を設ける。フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、絶縁層323cが設けられている励振電極部323、配線部324および引出部325となる部分を形成する。このようにフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いることで、第二金属層323bが外部の空気と酸化または窒化し変質することを低減させることができる。
以上の通り、第三実施形態に係る水晶素子320は、平板状の水晶片321と、水晶片321の両主面に設けられている一対の励振電極部323と、励振電極部323から水晶片321の縁部まで延設され、励振電極部323より上下方向の厚みが薄い配線部324と、配線部324に接続され水晶片321の縁部に設けられている引出部325と、からなり、励振電極部323が第一金属層323aと第一金属層上323aに設けられている第二金属層323bとからなり、第二金属層323bがアルミニウムからなる。
このような構成にし、さらに、励振電極部323の第一金属層323aの上下方向の厚みが50nm〜100nmとすることで、励振電極部323の第一金属層323aと水晶片321との境界において水晶片321の厚みすべり振動のうち基本波振動が第一金属層323aで反射される量を低減させることができる。つまり、第一金属層323aがないものとしてみなすことができる。また、励振電極部323の第二金属層323bの密度が水晶片321の密度と同じで、かつ、励振電極部323の第二金属層323bの音速が水晶片321の音速と近い値とすることで、第一金属層323aと第二金属層323bとの境界において、第一金属層323aを伝搬してきた水晶片321の厚みすべり振動のうち基本波振動が、第二金属層323bに反射する量を低減させることができ、第二金属層323bも水晶片321と一体的に振動させることが可能となる。この結果、励振電極部323も水晶片321と同様にみなすことができ、水晶素子320をメサ型の水晶片を用いた場合と同様にエネルギー閉じ込めすが可能となる。
また、第三実施形態に係る水晶素子320は、励振電極部323の第二金属層323b上に絶縁膜323cが設けられている。励振電極部323の第二金属層323bが、酸素と反応し酸化することを低減させることができる。この結果、水晶素子320の電気的特性の変化(例えば、酸化することによる周波数変動)を低減させることが可能となる。
また、このような水晶素子320を用いた水晶デバイスに用いることによって、水晶素子320においてより振動エネルギーを閉じ込めることができ、さらには、不要振動の発生を低減させることができる。この結果、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の形態で実施されてよい。
水晶素子を有する水晶デバイスは、水晶振動子に限定されない。例えば、水晶素子に加えて。水晶素子に電圧を印加して発振信号を生成する集積回路素子(IC)を有する発振器であってもよい。また、例えば、水晶デバイスは、水晶素子の他に、サーミスタ等の他の電子素子を有するものであってもよい。また、水晶デバイスは、恒温槽付きのものであってもよい。水晶デバイスにおいて、水晶素子をパッケージングする素子搭載部材の構造は、適宜構成されてよい。例えば、パッケージは、上面および下面に凹部を有する断面H型のものであってもよい。
水晶素子の形状および寸法は、実施形態において例示したものに限定されず、適宜設定されてもよい。水晶片の形状、励振電極部の形状は、平面視して略矩形に限定されず、例えば、楕円形状であってもよい。