JP2018163078A - てん輪 - Google Patents
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Abstract
【課題】てん輪の製作工程とてんぷの組立工程におけるてん輪の変形を抑制し、簡易な形状で、てん真に固定できるてん輪を提供する。【解決手段】てん輪は、環状リム部と、環状リム部の内側に設けられた連結ブリッジ部と、連結ブリッジ部にてん真が結合される軸孔と、を有し、連結ブリッジ部に変形を防止する補強材を結合した。【選択図】図6
Description
本発明は、機械式時計の脱進機の一部品であるてんぷの変形を抑制する構造とその製造方法に関する。
機械式時計において、ぜんまいのばね力によって蓄えられたエネルギーを一定量で解放していくために、うずまき形状を成しているひげぜんまいと、そのばね力を利用して往復運動をするてんぷ等の部品群を備えた調速機、及び脱進機といった構造が知られている。
てんぷは複数の部品から構成されており、一般的にはてん真に対して、てん輪、振座、ひげ玉といった部品が結合される。てん輪は、てんぷの慣性モーメントとひげぜんまいのばね定数に従った振動周期で、てん真を中心として往復運動を行っている。
てん輪は、外周に設けられた環状リム部とその内側に設けられた連結ブリッジ部から構成されるが、その連結ブリッジ部は厚みが薄く、幅が狭いため、形状加工時にツール等から受ける外力や、組立時において他部品から受ける外力により応力が発生し、変形をすることが知られている。
例えば、てん輪の変形により、てんぷの往復運動時に他部品との接触がおきる可能性があり、それはムーブメントの厚みが薄いものほど管理すべき要因となる。又、てん輪の変形によって重量バランスや慣性モーメントが設計値と異なり、少なからず設計上のてんぷ性能が発揮できなくなる可能性がある。
てん輪の変形は、てんぷの製造工程において想定以上の応力がてん輪にかかるために生じるが、その要因は様々であるため、加工と組み立ての過程で常にてん輪に加わる応力を監視して制御することは、非常に困難であり現実的ではない。
例えば、てん真とてん輪をカシメ結合する場合には、てん真の勘合部を外力によって塑性変形させ、てん輪を挟持するが、このてん真の変形によりてん輪中心穴の内面に半径方向の応力が生じ、てん輪が変形する可能性がある。しかし、この応力が掛からないようてん真に加える外力を弱めると、てん輪に対する挟持力が小さくなり、てん真の回転に対しててん輪の空回りや固定位置のずれが生じるため、てん輪の回転往復運動が一定にならず、周期の精度が保たれなくなる。従って、この応力の調整は非常に難しく、現実的にはてん輪とてん真との結合を優先して、てん真に外力を加えている。てん真がてん輪に対して空回りしてしまうと、てん輪を固定して、ひげ玉ないし振座を回転させることができないので、ひげ持ちと振石の角度調整を行うことができず、組立工程に支障を及ぼしてしまうのである。
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、てん輪の製作工程とてんぷの組立工程におけるてん輪の変形を抑制し、簡易な形状でてん真に固定できるてん輪を提供することである。
(1)環状リム部と、環状リム部の内側に設けられた連結ブリッジ部と、連結ブリッジ部にてん真が結合される軸孔と、を有し、連結ブリッジ部に変形を防止する補強材を結合
したことを特徴とするてん輪が提供される。
したことを特徴とするてん輪が提供される。
(2)(1)において、補強材の剛性は、前記連結ブリッジ部の剛性よりも高いことが好ましい。
(3)(1)又は(2)において、連結ブリッジ部は、塑性変形したてん真の一部を収容する前記軸孔の縦溝と、補強材を収容し前記てん輪の径方向の位置決めをする位置決め溝と、を有することが好ましい。
(4)(3)において、てん輪は、縦溝と位置決め溝とが連続して形成されていることが好ましい。
(5)(3)又は(4)において、てん輪は、縦溝の幅が位置決め溝の幅よりも狭いことが好ましい。
(6)(5)において、補強材は、てん輪の平面視で台形形状であることが好ましい。
(7)(3)又は(4)において、位置決め溝は、てん輪の円周方向、てん輪の厚み方向又はその双方の方向に、第1の段差を有することが望ましい。
(8)(7)の第1の段差は、リム部に設けられていることが好ましい。
(9)(3)、(4)、(7)又は(8)において、てん輪は、てん輪の円周方向、てん輪の厚み方向又はその双方の方向に、第2の段差を有する補強材を結合したことが好ましい。
(10)(1)〜(9)において、てん輪は、連結ブリッジ部と、補強材の一部又は複数の部位とが、結合部で結合していることが望ましい。
(11)(10)において、結合部は、縦溝からリム部までの長さ又は位置決め溝の長さに対して、その中央部に設けられていることが好ましい。
(12)(10)又は(11)において、てん輪は、補強材を連結ブリッジ部に結合する固定ピンを有し、固定ピンが慣性モーメントを調整する錘の固定部材として兼用されていることが好ましい。
本発明によれば、てん輪の製作、てんぷの組立時における変形を抑制し、てん真に対して簡易的な形状で固定できるてん輪を提供することができる。
本発明の第1の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
以下において、てん真つきてん輪とは、複数の部品から構成されるてんぷの中で、てん真とてん輪の2部品のみが結合されている状態を表す。
図1は、本発明に用いられるてん真2の断面図である。てん真2は、てんぷの中心軸となる部品であり、てん真2に対して、てん輪100と図示しない振座、ひげ玉などの部品が結合される。
図2は、図1のてん真肩部付近b部の拡大図であり、てん輪100と結合する際のてん真2の塑性変形の挙動を示したものである。
カシメ結合の方法としては、てん輪100とてん真2を組み合わせて、てん真肩部11に対して上方より外力を加えることで、回動軸の径方向に広がるようにてん真肩部11が塑性変形をする。これにより、てん真肩部側面12とてん輪の軸孔の内壁面7との間で挟持力が発生し、てん輪100とてん真2が結合される。ここで、本発明内で説明される塑性変形は、多少の弾性変形も含まれることは言うまでもない。
図3は、補強材300が結合されたてん輪100とてん真2との結合方法の一例を表す。
てん真の下ホゾ15をてん真受け13の軸孔に入れ、てん真フランジ16の底部17がてん真受け13と突き当たることで、てん輪厚み方向に関しててん真2の位置決めがなされる。次に、てん真肩部側面12がてん輪100の軸孔6を通るように、補強材300が結合されたてん輪100をてん真にセットする。このとき、てん輪100の軸孔6の径より、てん真肩部側面12の径の方が小さい関係になっている。てん真肩部11の上面側を
てん真カシメ具14で叩く、又は押すなどを行い、外力を加えることで、てん真肩部11は塑性変形を起こし、てん真肩部11は主に回転軸の径方向に広がる。これによりてん真肩部側面12とてん輪100の軸孔の内壁面7が接触し、てん真2にてん輪100が固定される。
てん真カシメ具14で叩く、又は押すなどを行い、外力を加えることで、てん真肩部11は塑性変形を起こし、てん真肩部11は主に回転軸の径方向に広がる。これによりてん真肩部側面12とてん輪100の軸孔の内壁面7が接触し、てん真2にてん輪100が固定される。
図4は、図3のf部周辺を拡大図したものであり、てん真2とてん輪100を結合させた際にてん真肩部11付近に生じる応力を模式的に示したものである。
てん真2とてん輪100をカシメ結合させる際には、図4に示すように、てん真肩部11に対して上方より外力を加えることで、てん真肩部側面12は回動軸の径方向へ塑性変形を起こすが、その変形度合いはてん輪厚み方向に関して一様ではない。例えば、てん真肩部11の上部近辺では塑性変形量が多いが、これにより上部から加わった応力が消費されるため、下方ほど伝達される応力が小さくなる。従って、てん輪軸孔の内壁面7に掛かる応力も、上部は大きく下部では小さくなり、連結ブリッジ部6に伝達する応力も上部側は大きく下部側では小さくなるため応力差が生じ、連結ブリッジ部5が下方に変形するのである。このように、てん真肩部側面12の回動軸の径方向に対する塑性変形度合いのばらつきによって、てん輪100に変形が生じる。
図5は、てん真肩部11を塑性変形させた際に、その変形度合いによるてん輪軸孔の内壁面7の上部へ掛かる応力を小さくなるようにした例である。てん真肩部側面12に傾斜eをつけることによって、図4のように上部方向からてん真肩部11に力が加わる際に、てん輪の軸孔内壁面7に対するてん真肩部側面12の径方向への変形量、すなわちてん輪軸孔の内壁面7へ掛かる応力は上部と下部で差が小さくなるが、そのてん真肩部11の形状が複雑になるため、形状寸法の精度を一定にすることは非常に難しい。
上記のようなてん輪100の変形は、てん真2とてん輪100を結合させる工程に限らず発生し得る。てん輪形状を形成するための、切削加工、せん断加工などの工程、あるいは組み立て工程において、上部方向からてん輪に外力をかける場合に、てん輪100にかかる外力の大きさ、方向は様々であり、てん輪に変形が起こる可能性が極めて高い。変形したてん輪は、変形量が微小なら修正して使用するが、大きく変形した場合はバランス修正が困難であるため廃棄せざるを得ない。
図6は、本発明による、補強材300が結合されているてん真つきてん輪の分解斜視図であり、図7は、本発明による、てん輪100の下面図である。図8は、てん輪100の軸孔6付近の拡大図である。
図6、図7において、100はてん輪、2はてん真、300は補強材である。
てん輪100の形状は大きく二つに分けられ、外周に設けられた環状リム部4と、その内側に設けられた連結ブリッジ部5から構成されている。連結ブリッジ部5の中心には、てん真2が結合される軸孔6が設けられており、軸孔6にてん真2をカシメ結合させることで、図8の軸孔の内壁面7とてん真2との間に挟持力が発生し結合される。
連結ブリッジ部5の下面側には、補強材300の位置決め溝800が設けてあり、その溝幅は補強材300の幅と同等か若干広い。補強材300は、位置決め溝800の両方の溝壁9に挟持されて連結ブリッジ5に固定されるか、補強材300が溝壁9に当接されていない場合は、接着剤によって連結ブリッジ5に固定される。この際、連結ブリッジ部5における補強材300の結合位置により、てん輪100の慣性モーメント、及びてん輪100の重量バランスを変動させ、てん輪100の振動周期に影響を与える可能性が多分にある。従って、補強材300は連結ブリッジ部5に設けた位置決め溝800に倣って接着
することで、てん輪100の厚さ方向、回転軸の径方向、および回転方向に対する補強材300の結合の位置決めは正確に行われ、てん輪100の慣性モーメント、及びてん輪100の重量バランスのバラツキを少なくすることが可能である。
することで、てん輪100の厚さ方向、回転軸の径方向、および回転方向に対する補強材300の結合の位置決めは正確に行われ、てん輪100の慣性モーメント、及びてん輪100の重量バランスのバラツキを少なくすることが可能である。
図8は、てん輪100の下面側から見た軸孔6付近の拡大図であり、連結ブリッジ部5の下面側に設けられた位置決め溝800が、軸孔6まで延長されている。これにより軸孔の内壁面7に縦溝10ができ、てん真2を軸孔6に組み込み、てん真2を塑性変形させた際に、径方向に広げられ塑性変形したてん真2の一部が、縦溝10に食い込むことによって、てん輪100の回転方向に対しててん真2に引っ掛かりが生じ、てん真2の塑性変形部の形状を複雑にすることなく、回転方向の固定力を増加させることができる。
位置決め溝800の幅は、軸孔6の縦溝10の付近では幅を狭くすることで、カシメによるてん真2の、縦溝10に入り込む塑性変形量が増すため、てん真2の固定力がさらに増大するのみならず、回転方向に対するてん輪100とてん真2との遊び量も少なくすることができる。また、位置決め溝800の幅をてん輪100の円周方向(あるいは円周の法線方向)に狭くすることで、図8のように位置決め壁23を持つ第1の段差を成形することもでき、これによっててん輪100と補強材300の結合時に、回動軸の径方向に対して補強材300の位置決めを行うことができる。この第1の段差は、軸孔6の縦溝10の付近に限定されず、位置決め溝800のどの位置にあっても補強材の位置決めすることができる。また、更にてん輪製作を容易するために、位置決め溝800は環状リム部5から軸孔6まで同じ幅であっても良く、これにより加工が簡易となる。
図9は、本発明にて用いられる補強材300の斜視図である。補強材300は、てん輪材料よりも剛性が大きい材料であり、てん輪100の連結ブリッジ部5の下面に接着結合されることで、てん輪100の変形を抑制する。好ましくは長方形のような寸法管理がしやすい単純形状が良いが、これに限定されない。
図10は、本発明の第一実施形態の変形例を示しており、図11はテーパ形状を持たせた多角形の補強材の一例を示している。補強材の形状は、台形型の多角形でも良く、その場合は補強材の位置決め溝も台形型の多角形にすると良い。
例えば、図10のように、溝壁9もてんぷ回動軸の径方向に対しテーパ形状を持たせることで、てん真2の回動軸の径方向、回転方向における補強材301の位置決め精度を向上させることができる。具体的には、補強材301の形状寸法がばらつくと、長方形形状の補強材300は位置決め溝との間にクリアランスが生じてしまい、定まった位置に固定することが難しくなるが、テーパ形状を持たせた多角形の補強材であれば、補強材301と位置決め溝801のクリアランスは、てん真2の回動軸の径方向の位置により決まってくるため、クリアランスの調整が容易であり、精度良く固定することが可能である。この場合、テーパ形状の向きは、図10のようにてん真2の回動軸の径方向に対して外側に行くほど幅が大きくなる向きにすることで、補強材301をてん輪側面から押し入れることができるので、補強材301の位置決め作業がしやすく好ましい。
例えば、補強材301は、テーパの向きがてん真回動軸の中心方向に向かって幅が大きくなる形状でもよく、補強材301を回動軸の径方向に押すことで、てん輪に設けられた位置決め溝と補強材が突き当り、補強材301の位置が決まる。そのような形状の補強材301の位置決めの一例として、てん輪を回転させて補強材301に遠心力を掛けることで容易に補強材の位置決めをすることができる。
図12は、本発明の第一実施形態のもう一つの変形例を示している。補強材は少なくとも1つの肩部を有しているような多角形でも良い。
例えば、てん輪100の連結ブリッジ部5の幅が狭い場合には、連結ブリッジ部5の溝に第1の段差をつけ位置決め壁23を成形する代わりに、図13のように補強材に対して、てん輪の円周方向(もしくは円周の法線方向)に第2の段差を設けてT字型とすることで、図12のように比較的てん輪面積が広い場所で回転中心方向に対する補強材の位置決め壁23を構成することができ、T字型補強材の肩部18と位置決め壁23とが勘合し、T字型補強材302をてん輪101に対して正確に位置決めすることができる。その結果として、幅の狭い連結ブリッジ部5への加工が不要となり、てん輪101の重量バランス、および慣性モーメントのばらつきを抑制し、てんぷの振動周期がズレてしまうことも防止できる。
T字型補強材302は、肩部がT字形以外だけでなく、図14のようにL字型等でもよく、補強材303の肩部18と位置決め溝の凹部とが1箇所以上で突き当たっていれば、回転中心方向に補強材303が移動することを抑制することができる。
図15は、本発明の第2の実施形態を示している。補強材を収容する位置決め溝803は、てん輪厚み方向に対して第1の段差29を設ける形状であっても良い。例として図16のように、てん真2の回動軸の径方向に対して、補強材300を位置決めしたい場所にてん輪厚み方向の第1の段差29を設けることで、てん輪102との接着時に補強材300は回転中心方向に突き当てて位置決めを行うことができる。このようなてん輪厚み方向に対する段差構造を設けることで、例えばてん輪連結ブリッジ部6が非常に細いなどにより、補強材を位置決めできるほどの第1の段差の幅を確保できない場合であっても、図15のように補強材300の結合位置を正確に決めることが可能となる。
図17は、本発明の第2実施形態の変形例を示しており、てん輪厚さ方向に対して第2の段差を設けた補強材304を結合させたてん輪の下面図であり、図18はその断面図である。また、図19はてん輪厚さ方向に第2の段差を設けた補強材304の一例である。
てん輪103下面の位置決め溝804は、回動軸の径方向へ対して補強材304を位置決めしたい場所に第1の段差30を設けることで、てん輪103との接着時に補強材304の第2の段差28と位置決め溝の第1の段差30が突き当たり、正確な位置決めを行うことができる。
てん輪103の連結ブリッジ部5の厚みが薄く、位置決め溝の第1の段差の高さを十分に確保できない場合は、厚みのある環状リム部4の下面で第1の段差を設ける構造にすることによって、位置決めすることができる。
これまで補強材を単体構造であるものとして説明してきたが、本発明の補強材は複数体であってもよい。補強材の厚み方向に第2の段差を有する形状の補強材を例にすると、図20(a)のように補強材305の厚み方向に対して複数体が結合していることで、構成部品同士の接触面が広いために結合しやすい。補強材305の複数体結合構造は、上記向上に限定されるものではなく、例えば、接合工程を簡易に行いたい場合や、補強材を結合させた時に2種類の補強材構成体が見えるようなデザインにしたい場合、図20(b)のように補強材306の平面方向に対して複数体が結合していても良い。
補強材の平面方向に第2の段差を有する場合も、その複数体の結合構造は制限されず、例として図20(c)のように、補強材307の平面方向に対して複数体が結合していても良い。
結合方法に関しては、好ましくは接着結合が良いが、接着の他にも補強材の一部に圧入
できる形状を成形して圧入結合を行っても良く、又、固定ピンのような第三の固定部材を利用した間接結合を行っても良い。
できる形状を成形して圧入結合を行っても良く、又、固定ピンのような第三の固定部材を利用した間接結合を行っても良い。
第1の実施形態では、縦溝を含めた位置決め溝にてん輪円周方向の第1の段差を設ける形態と、補強材にてん輪円周方向の第2の段差を設ける形態を説明し、第2の実施形態では、縦溝を含めた位置決め溝にてん輪厚み方向の第1の段差を設ける形態と、補強材にてん輪厚み方向の第2の段差を設ける形態を説明したが、これに限らず、縦溝を含めた位置決め溝にてん輪の円周方向と厚み方向の第1の段差を設けても良く、また、補強材にてん輪の円周方向と厚み方向の第2の段差を設けても良い。これにより、連結ブリッジに対する補強材の位置決めを、精度良く確実に行うことが可能になる。
てん輪100に補強材300を結合する方法は、溶接、接着、カシメ、温度に伴う膨張と収縮を利用した嵌合法、などいずれの方法でも良いが、てん輪に応力のかからない接着剤による固定方法が、より好ましい。例えば、機械的強度や耐熱性、接着性に優れているエポキシ樹脂系接着剤を利用するのが好ましい。しかし、接着剤の種類を特に限定するものではなく、作業時間を短縮するため接着工程が簡易になる接着剤を選択してもよい。
図21のように補強材308の接着面側に面取り部19を設けたり、てん輪、もしくは補強材に図22の接着剤だまり部20のような溝構造を設けることで、塗布量による接着剤厚みのばらつきを抑制し、より正確かつ強固にてん輪100と補強材309を結合させることができる。接着剤は必ずしもてん輪100と補強材309の接触面全面に塗布する必要は無く、例えば接触面の少なくとも一部が接着していればよい。
てん輪100と補強材300の結合方法について、第三の固定部材を用いてもよい。例えば、図23のように円筒棒上のピン21をてん輪104の連結ブリッジ部5に設置して、そのピン21と補強材310を圧入、又は塑性変形を利用したカシメ結合にて結合させても良い。例えば、図24のような慣性モーメント調整用錘22が設置されている構造のてんぷの場合は、加工効率を上げるために、その錘に利用されているピンを補強材310の結合ピンとして使用しても良い。
てん輪100と補強材300の結合について、接着よりも高い結合力が必要な場合は、溶接結合を行っても良い。一例を挙げると、レーザー溶接を用い、小さいスポットでの溶接を行うことで、加熱を局部加熱に留めることができ、短時間で溶接歪の少ない結合をすることができるので、てんぷの外観や性能に対する影響を少なく結合させることができる。
てん輪100と補強材300の結合箇所は、補強材300の一部をてん輪100に結合させても良いし、補強材300の全面を結合させても良いが、より前者の方が好ましい。この理由について、次に説明する。
てん輪100の製造工程には、てん輪100の表面処理工程、てん輪100の洗浄工程における過熱処理、てん真2とてん輪100のカシメ接合工程など、てん輪100の連結ブリッジ部5に対し、回転軸の径方向に外力の加わる工程が存在する。
てん輪100の連結ブリッジ部5に対し回転軸の径方向に外力が発生する工程の前に、あらかじめ補強材300の一部をてん輪100に結合させることで、図25のように、てん輪上面寄りでの応力と、てん輪下面寄りでの応力との間に差が発生したとしても、てん輪100と補強材300は一部のみで結合されているために、結合されていない接面ではてん輪100と補強材300は互いに影響を受けることなくスライドし、てん輪100の変形を生むことが無い。その一方で、てん輪100の厚み方向に関して外力が発生する時
は、補強材300の剛性によって、てん輪100の変形を抑制することができる。
は、補強材300の剛性によって、てん輪100の変形を抑制することができる。
図26は、てん真付きてん輪の断面図に、連結ブリッジ部5と補強材300を一部のみ結合する場合の、結合部の例を示したものである。
説明を容易にするために、連結ブリッジ部5における内径側のA点24、連結ブリッジ部5の縦溝10からリム部4までの長さか、もしくは位置決め溝800の長さに対する中央部であるB点26、連結ブリッジ部5における外径側のC点25、この3点における連結ブリッジ部5と補強材300の結合効果について説明する。
図2に示したような連結ブリッジ部5の構造では、B点付近がシェイプされていて幅が最も狭いため、てん輪100に対して下面方向に応力が加わった時に、連結ブリッジB点26付近の変形量が一番多くなる。従って、連結ブリッジB点26でてん輪100と補強材300を結合することによって、幅の狭いブリッジ部分の強度を著しく向上させることができ、連結ブリッジ全体の変形を大幅に抑制できる。
また、てん輪100にてん真2をかしめるときの様に、補強材300と連結ブリッジ部5の双方に応力が生じた際に、それぞれの変形量が異なったとしても、B点26でのみ、てん輪100と補強材300が結合されその他の部位は接合されていないため、それぞれ伸縮することができ変形量差による曲がりを生ずることは無い。更には、てん輪100と補強材300の材質が異なるために生じる温度による熱膨張差についても、同様の効果を得ることができる。
連結ブリッジA点24で補強材300と結合しても、上記のような変形量差による曲がりを防ぐことができるが、結合部位に対して最も遠い補強材の端までの距離が大きくなるため、図26の連結ブリッジ変形例27からわかるように、連結ブリッジC点25において補強材300にかかる力のモーメントが、連結ブリッジB点26付近で連結した場合より大きくなり、結合部分が破壊したり分離したりする可能性がある。これは、連結ブリッジC点25で補強材300と結合した場合も同様である。したがって、連結ブリッジB点26で補強材300と結合することが最も望ましいが、連結ブリッジ5と補強材300の結合面積を広くするなどにより、結合部分の強度を増すことができるなら、連結ブリッジA点24、あるいは、連結ブリッジC点25で補強材300と結合しても良い。
これまで説明の便宜上、A点、B点、C点のように点で接着位置を説明しているが、面による領域で接着を行う場合も含まれることはいうまでも無い。
てん輪100と補強材300を結合させる工程は、てん輪部品の形状成形加工中、表面処理加工中、洗浄工程、てん輪100とてん真2などの、てんぷ組立工程中、のいずれの段階でも良いが、好ましくはてん輪100の加工工程中の初期が良い。てん輪100と補強材300の結合工程が早い段階にあるほど、加工工程でのてん輪100の変形を抑制でき、又、その加工工程の条件を緩めることができる。
しかし、加工工程の初期にてん輪100と補強材300を接着材料により結合させると、後工程である超音波洗浄などで結合部分が剥離する可能性があるが、図19に示す補強材304の補強材段差壁28を、図18のように連結ブリッジ5と接着することで、接着面は外部と遮断されるため超音波や洗浄溶液による影響を受けにくくなり、補強材304の剥離を防止することができる。一方、圧入やカシメを利用して、てん輪100と補強材300を結合する場合は、部品の洗浄工程による影響は少ないので、なおさら洗浄工程前に結合させることが好ましい。
てん輪100と補強材300を接着剤により結合する場合は、てん輪100と補強材300の接着面を粗くし、摩擦を大きくすることで、接着時のてん輪100と補強材300の位置決めのズレを抑制することができる。例えば、補強材300、又はてん輪100に対してショットピーニング処理を行い、接着面を粗くすることで、部品の表面硬度を向上させることができ、かつ接着時のてん輪100と補強材300の位置決めのズレを抑制する効果がある。
補強材300は、てん輪材料より剛性が高い材料であれば良く、一例を挙げると、てん輪材料として黄銅が選択された場合は、補強材300を鉄系の材料にすることで、てん輪100より補強材300の材料の方が剛性の高い構成となり、補強材300を結合することでてん輪100の変形を抑制することができる。
ここまでてん輪に結合させる補強材の位置は、てん輪の下面側としてきたが、図27のように補強材はてん輪の上面に結合させても良い。その場合は、補強材に装飾を施し、てんぷ自体の外観を向上させることにより、美観の優れた時計を提供することが可能になる。
また、連結ブリッジ部5の構造を、位置決め溝と縦溝とが連続しているものとして説明してきたが、図28のように、位置決め溝と縦溝とが連続していない構造も、本発明に含まれる。
2 てん真
300 補強材
4 環状リム部
5 連結ブリッジ部
6 軸孔
7 軸孔の内壁面
800 位置決め溝
9 溝壁
10 縦溝
11 てん真肩部
28 補強材段差壁
300 補強材
4 環状リム部
5 連結ブリッジ部
6 軸孔
7 軸孔の内壁面
800 位置決め溝
9 溝壁
10 縦溝
11 てん真肩部
28 補強材段差壁
Claims (12)
- 環状リム部と、前記環状リム部の内側に設けられた連結ブリッジ部と、前記連結ブリッジ部にてん真が結合される軸孔と、を有し、前記連結ブリッジ部に変形を防止する補強材を結合したことを特徴とするてん輪。
- 前記補強材の剛性は、前記連結ブリッジ部の剛性よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のてん輪。
- 前記連結ブリッジ部は、塑性変形した前記てん真の一部を収容する前記軸孔の縦溝と、
前記補強材を収容し前記てん輪の径方向の位置決めをする位置決め溝と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のてん輪。 - 前記縦溝と前記位置決め溝とが連続して形成されていることを特徴とする請求項3に記載のてん輪。
- 前記縦溝の幅は、前記位置決め溝の幅よりも狭いことを特徴とする請求項3又は4に記載のてん輪。
- 前記補強材は、前記てん輪の平面視で台形形状であることを特徴とする請求項5に記載のてん輪。
- 前記位置決め溝は、前記てん輪の円周方向、前記てん輪の厚み方向又はその双方の方向に、第1の段差を有することを特徴とする請求項3又は4に記載のてん輪。
- 前記第1の段差は、前記リム部に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のてん輪。
- 前記てん輪の円周方向、前記てん輪の厚み方向又はその双方の方向に、第2の段差を有する前記補強材を結合したことを特徴とする請求項3、4、7又は8のいずれか1つに記載のてん輪。
- 前記連結ブリッジ部は、前記補強材の一部又は複数の部位と、結合部で結合していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のてん輪。
- 前記結合部は、前記縦溝から前記リム部までの長さ又は前記位置決め溝の長さに対して、その中央部に設けられていることを特徴とする請求項10に記載のてん輪。
- 前記補強材を前記連結ブリッジ部に結合する固定ピンを有し、前記固定ピンが慣性モーメントを調整する錘の固定部材として兼用されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のてん輪。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017061033A JP2018163078A (ja) | 2017-03-27 | 2017-03-27 | てん輪 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2017061033A JP2018163078A (ja) | 2017-03-27 | 2017-03-27 | てん輪 |
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JP2018163078A true JP2018163078A (ja) | 2018-10-18 |
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ID=63860456
Family Applications (1)
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2018163078A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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DE112019004285T5 (de) | 2018-08-31 | 2021-07-08 | Denso Corporation | Bordvorrichtung |
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2017
- 2017-03-27 JP JP2017061033A patent/JP2018163078A/ja active Pending
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