JP2021004776A - 調速装置及び機械式時計 - Google Patents
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Abstract
【課題】ひげゼンマイのばね特性の個体差があっても、時計の歩度の個体差を抑制することができる調速装置及び機械式時計を提供する。【解決手段】調速装置10は、円筒部50を有し、円筒部50の周壁53に、円筒部50の軸C1に平行に延びた軸孔51に貫通した側孔52が形成されたひげ持ち70又はひげ持ち70′と、渦巻き状に形成され、渦巻きの外周側の端部31が側孔52に通されて、その端縁31aが周壁53の内周面50bに突き当てられて位置決めされたひげゼンマイ30と、側孔52及び軸孔51に充填されて、ひげゼンマイ30をひげ持ち70に固定した接合部材80と、を備え、ひげ持ちは、側孔52に沿った、ひげ持ち固定長Lが互いに異なるように設定された複数種類のひげ持ち70,70′のうち、ひげゼンマイ30の既知のばね特性に対応して選択されたものである。【選択図】図5
Description
本発明は、調速装置及び機械式時計に関する。
機械式時計の歩度(時計の進み又は遅れの度合い)は、調速装置によって設定されている。調速装置は、てんぷと、ひげゼンマイを有している。
てんぷは、てん真に固定されていて、てん真を中心とした円環状に形成されている。ひげゼンマイは、渦巻き状に形成されていて、その中心側の端部は、ひげ玉を介しててん真に固定され、外周側の端部はひげ持ちを介しててんぷ受けに固定されている。
ひげ持ちは、円筒部を有し、その円筒部の周壁には、円筒部の外周面から、円筒部の内部に貫通した側孔が形成されている。そして、ひげゼンマイの一端を、側孔を通じて円筒部の外側から内部まで差し入れ、側孔及び円筒部の中心孔に接着剤を充填することにより、ひげゼンマイの一端を円筒部に固定している(例えば、特許文献1参照)。
ひげゼンマイは、ひげ持ちに固定された一端とひげ玉に固定された他端との間の部分が相対的に回転することで、巻き締められたり、巻き解かれたりを交互に繰り返して振動する。そして、両端の間の部分の長さ(有効ひげゼンマイ長さ)によって、ひげゼンマイの振動の周期が決まり、歩度が規定される。このため、ひげゼンマイの一端を円筒部に差し入れる長さにばらつきが生じると、有効ひげゼンマイ長さに差が出て、歩度がばらつくという問題がある。
特許文献1に記載の技術は、ひげゼンマイの一端縁を、円筒部の内周面に突き当てて接着剤で固定する構造によって、円筒部の穴に差し入れるひげゼンマイの長さを一定にすることができ、有効ひげゼンマイ長さを一定にする組み立てを実現している。
しかし、ひげゼンマイは、渦巻きの巻き状態の差などによって、ばね特性に個体差がある。このため、仮に有効ひげゼンマイ長さが同一となるように組み立てられた複数のてんぷであっても、それらのてんぷの歩度が同一になるとは限らない。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、ひげゼンマイのばね特性の個体差があっても、時計の歩度の個体差を抑制することができる調速装置及び機械式時計を提供することを目的とする。
本発明の第1は、円筒部を有し、前記円筒部の周壁に、前記円筒部の中心軸に平行に延びた軸孔に貫通した側孔が形成されたひげ持ちと、渦巻き状に形成され、渦巻きの外周側の一端が前記側孔に通されて、前記一端の端縁が前記周壁の内周面に突き当てられて位置決めされたひげゼンマイと、前記側孔及び前記軸孔に充填されて、前記ひげゼンマイを前記ひげ持ちに固定した接合部材と、を備え、前記ひげ持ちは、前記側孔に沿った、前記円筒部の外周面から前記ひげゼンマイが突き当てられた前記円筒部の内周面までの長さが互いに異なるように設定された複数種類のひげ持ちのうち、前記ひげゼンマイの既知のばね特性に対応して選択されたものである調速装置である。
本発明の第2は、円筒部を有し、前記円筒部の周壁に、前記円筒部の中心軸に平行に延びた軸孔に貫通した側孔が形成されたひげ持ちと、渦巻き状に形成され、渦巻きの外周側の一端が前記側孔に通されて、前記一端の端縁が前記周壁の内周面に突き当てられて位置決めされたひげゼンマイと、前記側孔及び前記軸孔に充填されて、前記ひげゼンマイを前記ひげ持ちに固定した接合部材と、を備え、前記ひげ持ちは、前記側孔が前記周壁の周方向の互いに異なる複数の位置に形成され、前記側孔に沿った、前記円筒部の外周面から前記ひげゼンマイが突き当てられた前記円筒部の内周面までの長さが互いに異なるように、前記内周面が形成され、前記ひげゼンマイは、複数の前記側孔のうち、前記ひげゼンマイの既知のばね特性に対応して選択された前記側孔に固定されている調速装置である。
本発明の第3は、本発明に係る調速装置を備えた機械式時計である。
本発明に係る調速装置及び機械式時計によれば、ひげゼンマイのばね特性の個体差があっても、時計の歩度の個体差を抑制することができる。
以下、本発明に係る調速装置及びこの調速装置を備えた機械式時計の実施形態について、図面を用いて説明する。
<実施形態1>
図1は本発明の一実施形態である調速装置(てんぷ)10を備えた機械式時計100の外観を示す平面図である。図示の機械式時計100は、ケース91の内部に、調速装置10をはじめとしたムーブメント、文字板92、及び時針93、分針94、秒針95等の指針を備えている。
図1は本発明の一実施形態である調速装置(てんぷ)10を備えた機械式時計100の外観を示す平面図である。図示の機械式時計100は、ケース91の内部に、調速装置10をはじめとしたムーブメント、文字板92、及び時針93、分針94、秒針95等の指針を備えている。
図2は図1に示した機械式時計100に備えられた調速装置10を示す斜視図、図3は図2に示した調速装置10の平面図である。機械式時計100に備えられた調速装置10は、図2,3,5に示すように、てんわ20と、ひげゼンマイ30と、てんぷ受け41と、ひげ持ち受け42と、ひげ持ち70(又はひげ持ち70′)と、ひげゼンマイ30をひげ持ち70(又はひげ持ち70′)に固定する接合部材80と、を備えている。
接合部材80は、接着剤(エポキシ系、アクリル系、ウレタン系など)やろう材(アルミ系合金、銅系合金、銀系合金など)などを適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、熱による膨張収縮の影響を考慮すると常温又は常温に近い温度で硬化する接着剤を用いることが好ましい。
てんわ20は、円環状に形成されたリム21と、その円環の中心とリム21とを繋いだアーム22とを備えている。アーム22における円環の中心には、てんわ20の回転軸となるてん真が固定されている。てん真は、てんぷ受け41等の軸受けにより、回転自在に支持されている。
ひげゼンマイ30は、細長い帯状の特殊合金を渦巻き状に形成したものである。ひげゼンマイ30の、渦巻きの中心側の端部はてん真に固定されたひげ玉に固定され、渦巻きの外周側の端部31(一端)は、ひげ持ち受け42に保持された後述のひげ持ち70に固定されている。
ひげ持ち受け42は、てんぷ受け41に固定されている。ひげ持ち受け42には、ねじ49によって、ひげ持ち70が保持されている。
図4はひげ持ち受け42に保持されたひげ持ち70の一例を示す斜視図、図5は図4に示したひげ持ち70の底面図である。図6は図5に示したひげ持ち70とは異なる別のひげ持ち70′を示す底面図である。
ひげ持ち70は、図4,5に示すように、六角柱部60と円筒部50とが、共通の軸C1に沿って並んで一体に形成されている。六角柱部60は、正三角柱の周面の、正三角形の頂部に対応した3つの角部が、円柱周面又は平面で面取りされたように六角柱状に形成されている。
六角柱部60は、図2,3に示すように、ひげ持ち受け42に形成された保持孔43に、ねじ49によって固定される。具体的には、六角柱部60は、その周面のうち、正三角柱の3つの周面に対応した3つの平面部61,62,63を有するが、六角柱部60が保持孔43に挿入された状態で、3つの平面部61,62,63のうち1つの平面部62に、ひげ持ち受け42に取り付けられたねじ49の先端が突き当たる。ねじ49は、てんわ20の中心(てん真)に向かう半径方向に沿って配置され、六角柱部60は、平面部62が、ねじ49に直交する面となる姿勢で配置されている。
そして、ねじ49がさらにねじ込まれることにより、六角柱部60の他の2つの平面部61,63が、保持孔43の内周面(2つの平面部61,63に対応した、平面視で、角度60[°]に設定された空間を仕切る面)に押し付けられて、六角柱部60は、ひげ持ち受け42に保持して固定される。
なお、本実施形態1のひげ持ち70における六角柱部60は、ひげ持ち70がひげ持ち受け42に固定される被固定部としての機能を有する部分であり、そのように被固定部としての機能を発揮する部分であれば、六角柱状の形状である必要はなく、他の形状を呈するものであってもよい。
円筒部50は、円柱の軸C1方向に延びた軸孔51が形成されて円筒状の外観を有する。軸孔51は、円柱の中心の軸C1に対して半径方向(軸C1に直交する方向)にオフセットして形成されている。円筒部50は、軸孔51に面した内周面50bと円柱の外周面50aとによって、それらの間に形成された周壁53を有している。
円筒部50は、円柱の軸C1方向に延びた軸孔51が形成されて円筒状の外観を有する。軸孔51は、円柱の中心の軸C1に対して半径方向(軸C1に直交する方向)にオフセットして形成されている。軸孔51は、軸C1に平行な軸C2を中心とした円を断面とする円柱状の空間である。
なお、円筒部50は、円柱に、軸C1に平行な軸孔51が形成していればよく、軸孔51は、軸に直交する面による断面が円形であってもよいし、円形以外の形状(三角形や四角形等の多角形や楕円形、星形等)であってもよい。
円筒部50の半径(軸C1から円筒部50の外周面50aまでの寸法)はR1であり、軸孔51の直径はD1(半径はD1/2)であり、軸C1と軸C2とのオフセット量(オフセットした長さ)はL1である。円筒部50は、その外周面50aと軸孔51に面した内周面50bとによって形成された周壁53を有している。そして、オフセット量L1は、周壁53の厚さR1−D1/2よりも小さい(L1<R1−D1/2)。
また、円筒部50は、半径方向に周壁53を、外周面50aから内周面50bまで貫通した側孔52が形成されている。この側孔52は、外周面50aに対して軸孔51がオフセットした方向に沿って、周壁53の厚さ(外周面50aから内周面50bまでの寸法d1)が最も厚くなる側に形成されている。すなわち、側孔52からみて、軸孔51のオフセット方向は、軸C1から遠ざかった方向となっている。
なお、側孔52は、六角柱部60の3つの平面部61,62,63のうち、ねじ49が突き当てられる平面部62に対して略平行になるように形成されている。したがって、側孔52は、中心側の端部がひげ玉に固定されたひげゼンマイ30の延びた方向(渦巻きの周方向)と略一致する。
そして、図4,5に示すように、この側孔52に、側孔52の延びた方向とほぼ一致して延びた、ひげゼンマイの30の外周側の端部31が通されて、その端部31の端縁31aが、側孔52の延びた先の、周壁53の内周面50bに突き当てられて位置決めされている。
軸孔51及び側孔52には、ひげゼンマイ30の端部31が位置決めされた状態で、接合部材80が充填されていて、この接合部材80による接合作用(接着作用を含む)により、ひげゼンマイ30は円筒部50に固定されている。
ここで、ひげゼンマイ30の外周側の端部31は、側孔52及び軸孔51に挿入された部分が接合部材80によって固められているため、この固められた部分は、ひげゼンマイとして機能しない。
つまり、ひげゼンマイ30のうち、側孔52及び軸孔51に挿入されて固定された長さ(ひげ持ち固定長)L(=R1+L1+D1/2)の部分、すなわち、円筒部50の外周面50aからひげゼンマイ30の端縁31aが突き当てられた円筒部50の内周面50bまでの長さの部分は弾性変形しない。
ひげゼンマイ30は、周期的な弾性変形により、ひげゼンマイとして機能するため、弾性変形しない部分は、ひげゼンマイとして機能しない。ひげゼンマイとして機能するのは、ひげゼンマイ30の全長のうち、ひげ玉に固定された部分及びひげ持ち70に固定された部分を除いた弾性変形する部分である。ひげゼンマイ30のうち、実際に弾性変形する部分の長さを有効ひげゼンマイ長さという。
そして、有効ひげゼンマイ長さは、調速装置10の歩度を規定する。すなわち、有効ひげゼンマイ長さが所定の基準長さに対応して、調速装置10が所定の基準歩度となる場合、有効ひげゼンマイ長さが基準長さよりも短いときは、調速装置10の歩度は基準歩度よりも進み、有効ひげゼンマイ長さが基準長さよりも長いときは、調速装置10の歩度は基準歩度よりも遅れる。
ところで、理論的には、前述した有効ひげゼンマイ長さが等しい複数のひげゼンマイは、それらのひげゼンマイをそれぞれ用いた複数の調速装置の歩度は等しい。しかし、実際に製造された現実のひげゼンマイ30は、渦巻きの巻き具合の差や、材質の均一度の差などによって個体差がある。このひげゼンマイ30の個体差により、有効ひげゼンマイ長さが等しくても、弾性変形のばね定数(ばね特性の一例)に差異が生じ、これらのひげゼンマイ30をそれぞれ用いた複数の調速装置10の歩度に差異が生じて、必ずしも等しい歩度にならない。
本実施形態1の調速装置10は、このようにひげゼンマイ30の個体差があっても、調速装置10の歩度のばらつきを抑制するものである。
具体的には、ひげゼンマイ30が固定されるひげ持ちは、ひげ持ち固定長Lが互いに異なるように予め設定された複数種類のものが用意されている。そのような複数種類のひげ持ちとして、例えば、図5に示したひげ持ち70と図6に示したひげ持ち70′との2種類が予め用意されている。
図6に示したひげ持ち70′は、ひげ持ち70の六角柱部60と同じ六角柱部60と、ひげ持ち70の円筒部50に類似した円筒部50′とを備えている。
円筒部50′も、ひげ持ち70の円筒部50と同様の軸孔51と側孔52とが形成されていて、円筒部50′の半径がR1、円筒部50′の軸孔51の直径がD1である点も、円筒部50と同じであるが、軸孔51のオフセット量が、円筒部50とは異なっている。
すなわち、円筒部50′の軸孔51も、円柱の中心の軸C1に対して半径方向(軸C1に直交する方向)にオフセットして形成されているが、軸C1と軸孔51の軸C2とのオフセット量はL2である。
そして、円筒部50′の側孔52は、外周面50aに対して軸孔51がオフセットした方向に沿って、周壁53の厚さ(外周面50aから内周面50bまでの寸法d2)が最も薄くなる側に形成されている。すなわち、側孔52からみて、軸孔51のオフセット方向は、軸C1よりも近づいた方向となっている。
この結果、ひげ持ち70′のひげ持ち固定長L(=R1−L2+D1/2)は、ひげ持ち70のひげ持ち固定長L(=R1+L1+D1/2)に比べて短くなり、ひげ持ち70′の有効ひげゼンマイ長さは、ひげ持ち70の有効ひげゼンマイ長さよりも長い。
本実施形態1の調速装置10は、ひげゼンマイ30と、ひげ持ち70又はひげ持ち70′とが組み合わされたものとなる。
つまり、調速装置10として組み合わされるひげゼンマイ30のばね定数は予め測定されていて、その測定によって既知となったばね定数に対応して、用意されている2種類のひげ持ち70及びひげ持ち70′のうちいずれか一方のひげ持ち70又はひげ持ち70′が選択されて、その選択されたいずれかのひげ持ち70又はひげ持ち70′とひげゼンマイ30とが組み合わされて、本実施形態1の調速装置10が構成されている。
ひげゼンマイ30のばね定数に対応したひげ持ち70又はひげ持ち70′の選択は、具体的には、以下のように決定される。すなわち、ひげゼンマイ30の、測定によって既知となったばね定数が、基準となるひげゼンマイのばね定数(設計値のばね定数)よりも大きいときは、そのひげゼンマイ30の振動周期が基準となるひげゼンマイの振動周期よりも短くなる。このため、そのひげゼンマイ30を用いた調速装置10は、歩度が進む方向になる。
この場合、ひげゼンマイ30を用いた調速装置10の歩度を、基準となるひげゼンマイを用いた調速装置の歩度に近づけるために、このひげゼンマイ30に組み合わされるひげ持ちとして、ひげゼンマイ30の有効ひげゼンマイ長さが相対的に長くなるひげ持ち70が選択されて、ひげゼンマイ30とひげ持ち70とが組み合わされて調速装置10が構成されている。
このように、本実施形態1の調速装置10は、ひげゼンマイ30に組み合わされたひげ持ちが、ひげ持ち固定長Lが互いに異なるように設定された2種類のひげ持ち70,70′のうち、ひげゼンマイ30の既知のばね定数に対応して選択されたひげ持ち70であるため、ひげゼンマイ30のばね定数に個体差があっても、調速装置10の歩度(機械式時計100の歩度)の個体差(ばらつき)を抑制することができる。
なお、ひげゼンマイ30の、測定によって既知となったばね定数が、基準となるひげゼンマイのばね定数よりも小さいときは、そのひげゼンマイ30の振動周期が基準となるひげゼンマイの振動周期よりも長くなる。このため、そのひげゼンマイ30を用いた調速装置10は、歩度が遅れる方向になる。
この場合、ひげゼンマイ30を用いた調速装置10の歩度を、基準となるひげゼンマイを用いた調速装置の歩度に近づけるために、このひげゼンマイ30に組み合わされるひげ持ちとして、ひげゼンマイ30の有効ひげゼンマイ長さが相対的に短くなるひげ持ち70′が選択されて、ひげゼンマイ30とひげ持ち70′とが組み合わされて調速装置10が構成されていればよい。
なお、ばね定数が設計値に等しい基準となるひげゼンマイは、軸孔51のオフセット量がゼロ(L1,L2=0)であるひげ持ちと組み合わされたときに、基準となる歩度(進みや遅れが生じない歩度)になるものとする。
そのように構成された調速装置10は、ひげゼンマイ30に組み合わされたひげ持ちが、ひげ持ち固定長Lが互いに異なるように設定された2種類のひげ持ち70,70′のうち、ひげゼンマイ30の既知のばね定数に対応して選択されたひげ持ち70であるため、ひげゼンマイ30のばね定数に、基準とは異なるばらつきである個体差があっても、調速装置10の歩度の個体差(ばらつき)を抑制することができる。
また、本実施形態1の機械式時計100は、上述した調速装置10を備えているため、ひげゼンマイ30のばね定数に基準とは異なるばらつきである個体差があっても、歩度の個体差(ばらつき)を抑制することができる。
なお、本発明に係る調速装置及び機械式時計は、ひげゼンマイ30のばね定数が直接的に既知であるものに限定されず、ばね定数と対応関係のある他の物理量が既知であるものであってもよい。この場合、そのような他の物理量と対応関係とに基づいて、ひげゼンマイのばね定数を間接的に既知とすることができるため、ひげゼンマイのばね特性が既知である本発明に係る調速装置及び機械式時計の要旨に含まれる。
本実施形態1の調速装置10及び機械式時計100は、用意されている、ひげ持ち固定長Lが互いに異なる複数種類のひげ持ちが、2つのひげ持ち70,70′のみであるが、本発明に係る調速装置及び機械式時計は、ひげ持ち固定長Lが互いに異なる複数種類のひげ持ちは2つに限定されず、ひげ持ち固定長Lが互いに異なる3つ以上のひげ持ちであってもよい。
そのように、ひげ持ち固定長Lが互いに異なる複数種類のひげ持ちの数が多いほど、ひげゼンマイのばね定数の個体差に対応して選択されたひげ持ちと組み合わせた調速装置及び機械式時計の歩度のばらつきの幅を抑制することができる。
この場合、用意されている複数種類のひげ持ちのうちに、軸孔51のオフセット量がゼロ(L1,L2=0)であるひげ持ちを含めてもよい。軸孔51のオフセット量がゼロ)であるひげ持ちは、ばね定数が設計値に略等しいひげゼンマイに対応することができる。
本実施形態1の調速装置10及び機械式時計100は、ひげ持ち固定長Lが互いに異なるひげ持ち70,70′を、軸孔51の、円筒部50,50′の軸C1から半径方向へのオフセット量L1,L2が互いに異なるものを適用したが、本発明に係る調速装置及び機械式時計は、軸孔51の、円筒部50,50′の軸C1から半径方向へのオフセット量を同一としつつ、軸孔51の直径が互いに異なる複数種類のひげ持ちを適用して、ひげ持ち固定長Lが互いに異なる複数種類のひげ持ちとしてもよい。
また、本発明に係る調速装置及び機械式時計は、ひげ持ち固定長Lが互いに異なる複数種類のひげ持ちを、軸孔51の、円筒部50,50′の軸C1から半径方向へのオフセット量及び軸孔51の直径の両方が互いに異なる複数種類のひげ持ちを適用して、ひげ持ち固定長Lが互いに異なるものとしてもよい。
<変形例1>
なお、軸孔51の、円筒部50,50′の軸C1から半径方向へのオフセット量及び軸孔51の直径の両方が互いに異なる複数種類のひげ持ちを適用して、ひげ持ち固定長Lが互いに異なるものとした場合、これら複数種類のひげ持ちについては、周壁53のうち側孔52が形成された部分の側孔52に沿った厚さd2が互いに等しく設定されたものであることが好ましい。
なお、軸孔51の、円筒部50,50′の軸C1から半径方向へのオフセット量及び軸孔51の直径の両方が互いに異なる複数種類のひげ持ちを適用して、ひげ持ち固定長Lが互いに異なるものとした場合、これら複数種類のひげ持ちについては、周壁53のうち側孔52が形成された部分の側孔52に沿った厚さd2が互いに等しく設定されたものであることが好ましい。
図7は図6に示したひげ持ち70′とは異なる別のひげ持ち70″を示す、図6相当の底面図である。図7に示したひげ持ち70″は、図6のひげ持ち70′に対して、軸孔51の、円筒部50′,50″の軸C1から半径方向へのオフセット量L2,L3及び軸孔51の直径D1,D2の両方が互いに異なることにより、ひげ持ち固定長Lがひげ持ち70′のひげ持ち固定長Lと異なる。
なお、ひげ持ち70″における六角柱部60は、ひげ持ち70′における六角柱部60と同一であり、ひげ持ち70″における円筒部50″の半径R1は、ひげ持ち70′における円筒部50′の半径R1と同じである。しかも、ひげ持ち70′とひげ持ち70″とは、周壁53のうち側孔52が形成された部分の側孔52に沿った厚さd2が互いに等しく設定されたものである。
上述した実施形態1の調速装置10の変形例1は、ひげゼンマイ30と組み合わされるひげ持ちとして、2つのひげ持ち70′,70″が用意されていて、ひげゼンマイ30とひげ持ち70′又はひげ持ち70″とが組み合わされたものである。
これら2つのひげ持ち70′とひげ持ち70″とは、ひげ持ち固定長Lが互いに異なるため、実施形態1と同様に、ひげゼンマイ30の既知のばね定数に対応して、いずれか一方のひげ持ち70′又はひげ持ち70″が選択されて、そのひげゼンマイ30と組み合わされた調速装置10を構成し、実施形態1と同様の作用、効果を得ることができる。
しかも、この変形例1の調速装置10を構成するひげゼンマイ30と選択的に組み合わされるひげ持ち70′,70″は、側孔52の長さ(側孔52に沿った周壁の厚さ)がいずれもd2で互いに等しい。そして、この側孔52及び軸孔51には、接合部材80が充填されるが、側孔52に充填された接合部材80は、その表面張力により、円筒部50′,50″の外周面50aからそれぞれ盛り上がった状態で硬化する。この表面張力で盛り上がる寸法は、側孔52の長さに対応した寸法となる。
ここで、2つのひげ持ち70′,70″は、側孔52の長さが等しいため、ひげ持ち70′において接合部材80の盛り上がった寸法と、ひげ持ち70″において接合部材80の盛り上がった寸法とは等しい。
接合部材80が外周面50aから盛り上がって硬化すると、その盛り上がった長さ分だけ、ひげゼンマイ30の有効ひげゼンマイ長さが短くなる。したがって、2つのひげ持ち70′,70″は、接合部材80の表面張力による有効ひげゼンマイ長さに対する影響に差異が無い。
これに対して、実施形態1の調速装置10において、ひげゼンマイ30と組み合わされるひげ持ち70とひげ持ち70′とは、側孔52の長さが互いに等しくない(ひげ持ち70の側孔52の長さはd1であり、ひげ持ち70の側孔52の長さはd2である。)ため、ひげ持ち70において接合部材80の盛り上がった寸法と、ひげ持ち70′において接合部材80の盛り上がった寸法とは等しくない。
したがって、2つのひげ持ち70,70′は、ひげ持ち固定長Lによる差異に加えて、接合部材80の表面張力による盛り上がった寸法の差異も考慮して、ひげゼンマイ30と組み合わせるべきひげ持ち70又はひげ持ち70′を選択する必要がある。
このように、変形例1においては、接合部材80の表面張力による盛り上がった寸法の差異を考慮することなく、ひげゼンマイ30と組み合わせるべきひげ持ち70′又はひげ持ち70″を選択することができる。
<実施形態2>
実施形態1の調速装置10及び機械式時計100は、ひげゼンマイ30と組み合わされるひげ持ちとして、ひげ持ち固定長Lが互いに異なる2つのひげ持ち70,70′又は2つのひげ持ち70′,70″が用意されていて、それらのひげ持ちからいずれか1つのひげ持ち70若しくはひげ持ち70′又はひげ持ち70′若しくはひげ持ち70″が選択されたてひげゼンマイと組み合わされている。すなわち、1つのひげ持ちには、1つのひげ持ち固定長Lのみが設定されている。
実施形態1の調速装置10及び機械式時計100は、ひげゼンマイ30と組み合わされるひげ持ちとして、ひげ持ち固定長Lが互いに異なる2つのひげ持ち70,70′又は2つのひげ持ち70′,70″が用意されていて、それらのひげ持ちからいずれか1つのひげ持ち70若しくはひげ持ち70′又はひげ持ち70′若しくはひげ持ち70″が選択されたてひげゼンマイと組み合わされている。すなわち、1つのひげ持ちには、1つのひげ持ち固定長Lのみが設定されている。
しかし、本発明に係る調速装置及び機械式時計は、この形態に限定されず、1つのひげ持ちが、互いに異なる複数種類のひげ持ち固定長を有するものとし、その複数種類のひげ持ち固定長のうちから、ひげゼンマイ30の既知のばね定数に対応するひげ持ち固定長Lの部分を選択して、ひげゼンマイ30と組み合わせた実施形態2の構成としてもよい。
図8は3つの互いに異なるひげ持ち固定長LA1,LA2,LA3を有する単一のひげ持ち170を示す図4相当の斜視図、図9は図8に示したひげ持ち170を示す図6,7,8相当の底面図である。
実施形態2の調速装置10及び機械式時計100は、ひげゼンマイ30と、図8,9に示したひげ持ち170とを備えている。ひげ持ち170は、実施形態1に示したひげ持ち70と同様に、ひげ持ち受け42に固定される。
ひげ持ち170は、ひげ持ち70における六角柱部60と同じ六角柱部160と、ひげ持ち70における円筒部50に類似した円筒部150とを備えている。円筒部150は、その周壁153に、円筒部150の軸C1に平行に延びた軸孔151に貫通した3つの側孔152a,152b,152cが形成されている。
3つの側孔152a,152b,152cは、軸C1回りに等角度間隔(本実施形態2では、角度120[°]間隔)で配置され、いずれの側孔152a,152b,152cも、軸C1を通る、円筒部150の半径方向に延びて形成されている。
ここで、六角柱部160の3つの平面部161,162,163は正三角柱の周面であるため、これら3つの平面部161,162,163も軸C1回りの等角度間隔(角度120[°]間隔)で形成されている。したがって、平面部161と側孔152b、平面部162と側孔152c、平面部163と側孔152aは、いずれも軸C1回りの角度位置関係が等しく設定されている。
これにより、ひげ持ち170をひげ持ち受け42に固定するに際して、平面部161をねじ49(図3参照)で固定する向きとしたときは、ひげゼンマイ30の外周側の端部31は、平面部161に対応した側孔152bに通される。同様に、平面部162をねじ49で固定する向きとしたときは、ひげゼンマイ30の外周側の端部31は、平面部162に対応した側孔152cに通される。同様に、平面部163をねじ49で固定する向きとしたときは、ひげゼンマイ30の外周側の端部31は、平面部163に対応した側孔152aに通される。
そして、いずれの側孔152a,152b,152cにひげゼンマイ30の端部31が通された場合も、その端部31が通された側孔152a,152b,152cの向きを、端部31に対して等しくすることができる。
また、軸孔151は、3つの側孔152a,152b,152cにそれぞれ沿った、円筒部150の外周面150aからひげゼンマイが突き当てられる円筒部150の内周面150bまでの長さが互いに異なるように形成されている。
すなわち、軸孔151は、図9に示すように平面視で略三角形に形成され、この三角形の頂点部A1が側孔152aの延びた線上に形成され、三角形の頂点部A2が側孔152bの延びた線上に形成され、三角形の頂点部A3が側孔152cの延びた線上に形成されている。
そして、側孔152aに沿った、外周面150aから頂点部A1に対応した内周面150bまでの長さ(ひげ持ち固定長)LA1と、側孔152bに沿った、外周面150aから頂点部A2に対応した内周面150bまでの長さ(ひげ持ち固定長)LA2と、側孔152cに沿った、外周面150aから頂点部A3に対応した内周面150bまでの長さ(ひげ持ち固定長)LA3と、互いに異なる長さとなっている。具体的には、LA2<LA1<LA3である。
本実施形態2の調速装置10は、ひげゼンマイ30と、このひげゼンマイ30の既知のばね定数に対応して、ひげゼンマイ30の端部31を通す側孔が、3つの側孔152a,152b,152cから選択されて、ひげゼンマイ30の端部31の端縁31aが内周面150bに突き当てて位置決めされているひげ持ち170とを備えた構成となる。
3つの側孔152a,152b,152cからのいずれか1つの側孔の選択は、具体的には、以下のように決定される。すなわち、ひげゼンマイ30の、測定によって既知となったばね定数が、基準となるひげゼンマイのばね定数(設計値のばね定数)よりも大きいときは、ひげゼンマイ30の有効ひげゼンマイ長さが相対的に長くなる、ひげ持ち固定長LA2の側孔152bが選択されて、ひげゼンマイ30とひげ持ち170の側孔152bとが組み合わされて調速装置10が構成されている。
このとき、六角柱部160の平面部161が、ねじ49に突き当てられる面となるような向きで、ひげ持ち170はひげ持ち受け42に取り付けられる。
このように、本実施形態2の調速装置10は、ひげゼンマイ30に組み合わされたひげ持ち170の側孔が、ひげ持ち固定長が互いに異なるように設定された3種類の側孔152a,152b,152cのうち、ひげゼンマイ30の既知のばね定数に対応して選択された側孔152bであるため、ひげゼンマイ30のばね定数に個体差があっても、調速装置10の歩度(機械式時計100の歩度)の個体差(ばらつき)を抑制することができる。
ひげゼンマイ30の、測定によって既知となったばね定数が、基準となるひげゼンマイのばね定数よりも小さいときは、有効ひげゼンマイ長さが相対的に短くなる、ひげ持ち固定長LA3の側孔152cが選択されて、ひげゼンマイ30とひげ持ち170の側孔152cとが組み合わされて調速装置10が構成されている。
このとき、六角柱部160の平面部162が、ねじ49に突き当てられる面となるような向きで、ひげ持ち170はひげ持ち受け42に取り付けられる。
このように、本実施形態2の調速装置10は、ひげゼンマイ30に組み合わされたひげ持ち170の側孔が、ひげ持ち固定長が互いに異なるように設定された3種類の側孔152a,152b,152cのうち、ひげゼンマイ30の既知のばね定数に対応して選択された側孔152cであるため、ひげゼンマイ30のばね定数に個体差があっても、調速装置10の歩度(機械式時計100の歩度)の個体差(ばらつき)を抑制することができる。
なお、ばね定数が設計値と略等しいひげゼンマイ(基準となるひげゼンマイとばね定数が略等しいひげゼンマイ)は、ひげ持ち固定長が、ひげ持ち固定長LA2より長く、かつひげ持ち固定長LA3よりも短いLA1の側孔152aが選択されて、ひげゼンマイ30とひげ持ち170の側孔152aとが組み合わされて調速装置10が構成されている。
このとき、六角柱部160の平面部163が、ねじ49に突き当てられる面となるような向きで、ひげ持ち170はひげ持ち受け42に取り付けられる。
このように、本実施形態2の調速装置10は、ひげゼンマイ30に組み合わされたひげ持ち170の側孔が、ひげ持ち固定長が互いに異なるように設定された3種類の側孔152a,152b,152cのうち、ひげゼンマイ30の既知のばね定数に対応して選択されたいずれか1つの側孔であるため、ひげゼンマイ30のばね定数に個体差があっても、調速装置10の歩度(機械式時計100の歩度)の個体差(ばらつき)を抑制することができる。
また、本実施形態2の機械式時計100は、上述した調速装置10を備えているため、ひげゼンマイ30のばね定数に基準とは異なるばらつきである個体差があっても、歩度の個体差(ばらつき)を抑制することができる。
しかも、本実施形態2の調速装置10及び機械式時計100は、ひげゼンマイ30に組み合わされるひげ持ちとして、複数種類のものを用意することなく、1種類のひげ持ち170だけで、ひげゼンマイ30の複数種類のばね定数に対応することができるため、ひげ持ち170の仕分け管理の手間を抑制することができる。
また、本実施形態2の調速装置10及び機械式時計100は、ひげ持ち170の六角柱部160の側孔152aと平面部163との軸C1回りの角度位置関係、側孔152bと平面部161との軸C1回りの角度位置関係、側孔152cと平面部162との軸C1回りの角度位置関係が等しく設定されているため、ひげゼンマイ30の端部31が挿入される側孔がいずれの側孔152a,152b,152cであっても、六角柱部160がひげ持ち受け42に固定された状態での、側孔152a,152b,152cの向きと端部31の向きとの関係を等しくすることができる。
<変形例1>
図10は図9に示したひげ持ち170における軸孔151を、断面が円形の軸孔251に代えた変形例1のひげ持ち270を示す、図9相当の底面図である。
図10は図9に示したひげ持ち170における軸孔151を、断面が円形の軸孔251に代えた変形例1のひげ持ち270を示す、図9相当の底面図である。
実施形態2の調速装置10及び機械式時計100は、軸孔151が、三角形状の断面形状を有するひげ持ち170を備えていたが、このひげ持ち170に代えて、例えば図10に示すように、六角柱部260と円筒部250とを有し、円筒部250が、軸C1からオフセットした円形状の軸孔251を備えた変形例1のひげ持ち270を備えてもよい。
図10に示したひげ持ち270は、ひげ持ち170の軸孔151に対応する軸C1に沿って延びた軸孔251、側孔152a,152b,152cに対応する周壁253に形成された側孔252a,252b,252cがそれぞれ形成されている。
そして、軸孔251には、ひげ持ち170の軸孔151の頂点部A1に対応する当接部A1′、軸孔151の頂点部A2に対応する当接部A2′、軸孔151の頂点部A3に対応する当接部A3′がそれぞれ形成されている。側孔252aは当接部A1′に対応し、側孔252aのひげ持ち固定長(外周面250aから、突き当たる内周面250bまでの寸法)はLA1、側孔252bは当接部A2′に対応し、側孔252bのひげ持ち固定長はLA2、側孔252cは当接部A3′に対応し、側孔252cのひげ持ち固定長はLA3である。
このように構成されたひげ持ち270とひげゼンマイ30とを有する変形例1の調速装置10及び機械式時計100によっても、実施形態2の調速装置10及び機械式時計100と同様の作用、効果を奏することができる。なお、実施形態2のひげ持ち170は、頂点部A1,A2,A3が当接部A1′,A2′,A3′は異なって、近傍周囲の内周面250bよりも凹んだ凹部であるため、当接部A1′,A2′,A3′に比べて、突き当たったひげゼンマイ30の端部31の端縁31aが周方向にずれにくいという効果がある。
<変形例2>
図11は図9に示したひげ持ち170における軸孔151を、断面が四角形の軸孔351に代え、六角柱部160を八角柱状の八角柱部360に代えた変形例2のひげ持ち370を示す、図9相当の底面図である。
図11は図9に示したひげ持ち170における軸孔151を、断面が四角形の軸孔351に代え、六角柱部160を八角柱状の八角柱部360に代えた変形例2のひげ持ち370を示す、図9相当の底面図である。
実施形態2の調速装置10及び機械式時計100は、軸孔151が、三角形状の断面形状を有するひげ持ち170を備えていたが、このひげ持ち170に代えて、例えば図11に示すように、軸C1に直交する断面が四角形状の軸孔351を有する円筒部350と、八角柱部360とを備えた変形例2のひげ持ち370を適用することもできる。
図11に示した変形例2のひげ持ち370の八角柱部360は、正四角柱の周面に対応した4つの平面部361,362,363,364を有している。また、ひげ持ち370の円筒部350は、ひげ持ち170の円筒部150の軸孔151に対応する軸C1に沿って延びた軸孔351、周壁353に形成された側孔152a,152b,152cに対応する4つの側孔352a,352b,352c、352dがそれぞれ形成されている。
そして、軸孔351には、図19に示した軸孔151の3つの頂点部A1,A2,A3と同様の4つの頂点部A1,A2,A3,A4が形成されている。側孔352aは頂点部A1に対応し、側孔352aのひげ持ち固定長(外周面350aから、突き当たる内周面350bまでの寸法)はLA1、側孔352bは頂点部A2に対応し、側孔352bのひげ持ち固定長はLA2、側孔352cは頂点部A3に対応し、側孔352cのひげ持ち固定長はLA3、側孔352dは頂点部A4に対応し、側孔352dのひげ持ち固定長はLA4である。
そして、ひげ持ち固定長LA1,LA2,LA3,LA4は互いに異なる長さとなっている。具体的には、LA3<LA2<LA1<LA4である。
このように構成されたひげ持ち370とひげゼンマイ30とを備えた変形例2の調速装置10及び機械式時計100によれば、ひげゼンマイ30に組み合わされたひげ持ち370の側孔が、ひげ持ち固定長が互いに異なるように設定された4種類の側孔352a,352b,352c,352dのうち、ひげゼンマイ30の既知のばね定数に対応して選択されたいずれか1つの側孔であるため、ひげゼンマイ30のばね定数に個体差があっても、調速装置10の歩度(機械式時計100の歩度)の個体差(ばらつき)を抑制することができる。
しかも、変形例2の調速装置10及び機械式時計100は、ひげゼンマイ30に組み合わされるひげ持ちとして、複数種類のものを用意することなく、1種類のひげ持ち370だけで、ひげゼンマイ30の複数種類のばね定数に対応することができるため、ひげ持ち370の仕分け管理の手間を抑制することができる。
さらに、変形例2の調速装置10及び機械式時計100は、ひげ持ち固定長の異なる側孔の数を4つとして、実施形態2及び変形例1における側孔の数(3つ)よりも増加させているため、ひげゼンマイ30のばね定数のばらつきに、より精度よく対応して、ばらつきの幅を少なくした歩度に調整することができる。
また、変形例2の調速装置10及び機械式時計100は、ひげ持ち370の八角柱部360の側孔352aと平面部364との軸C1回りの角度位置関係、側孔352bと平面部361との軸C1回りの角度位置関係、側孔352cと平面部362との軸C1回りの角度位置関係、側孔352dと平面部363との軸C1回りの角度位置関係が等しく設定されている。
したがって、ひげゼンマイ30の端部31が挿入される側孔がいずれの側孔352a,352b,352c、352dであっても、八角柱部360がひげ持ち受け42に固定された状態での、側孔352a,352b,352c,352dの向きと端部31の向きとの関係を等しくすることができる。
なお、変形例2の調速装置10及び機械式時計100は、ひげ持ち370の側孔352aと側孔352cとが一直線上に対向せず、側孔352bと側孔352dとが一直線上に対向しない配置で形成されているが、側孔352aと側孔352cとを軸C1方向に互いにずらした配置とした場合は、側孔352aと側孔352cとを図11の底面視において一直線上に対向した配置とすることができ、側孔352bと側孔352dとを軸C1方向に互いにずらした配置とした場合は、側孔352bと側孔352dとを図11の底面視において一直線上に対向した配置とすることができる。
10 調速装置
30 ひげゼンマイ
31 端部
31a 端縁
50 円筒部
50a 外周面
50b 内周面
51 軸孔
52 側孔
53 周壁
70,70′ ひげ持ち
80 接合部材
100 機械式時計
C1 軸
C2 軸
L ひげ持ち固定長
30 ひげゼンマイ
31 端部
31a 端縁
50 円筒部
50a 外周面
50b 内周面
51 軸孔
52 側孔
53 周壁
70,70′ ひげ持ち
80 接合部材
100 機械式時計
C1 軸
C2 軸
L ひげ持ち固定長
Claims (5)
- 円筒部を有し、前記円筒部の周壁に、前記円筒部の中心軸に平行に延びた軸孔に貫通した側孔が形成されたひげ持ちと、
渦巻き状に形成され、渦巻きの外周側の一端が前記側孔に通されて、前記一端の端縁が前記周壁の内周面に突き当てられて位置決めされたひげゼンマイと、
前記側孔及び前記軸孔に充填されて、前記ひげゼンマイを前記ひげ持ちに固定した接合部材と、を備え、
前記ひげ持ちは、前記側孔に沿った、前記円筒部の外周面から前記ひげゼンマイが突き当てられた前記円筒部の内周面までの長さが互いに異なるように設定された複数種類のひげ持ちのうち、前記ひげゼンマイの既知のばね特性に対応して選択されたものである調速装置。 - 前記複数種類のひげ持ちは、
前記軸孔が、前記円筒部の中心軸から半径方向にオフセットして形成され、そのオフセットした長さ及び前記軸孔の半径のうち少なくとも一方が互いに異なるように形成され、
前記側孔が、前記軸孔がオフセットされた方向に沿って形成されて、前記側孔に沿った、前記円筒部の外周面から前記ひげゼンマイが突き当てられた前記円筒部の内周面までの長さが互いに異なるように設定されたものである請求項1に記載の調速装置。 - 前記複数種類のひげ持ちは、前記軸孔が、前記円筒部の中心軸から半径方向にオフセットして形成され、そのオフセットした長さ及び前記軸孔の半径の両方が互いに異なるように形成され、かつ、前記周壁のうち前記側孔が形成された部分の前記側孔に沿った厚さが互いに等しく設定されたものである請求項2に記載の調速装置。
- 円筒部を有し、前記円筒部の周壁に、前記円筒部の中心軸に平行に延びた軸孔に貫通した側孔が形成されたひげ持ちと、
渦巻き状に形成され、渦巻きの外周側の一端が前記側孔に通されて、前記一端の端縁が前記周壁の内周面に突き当てられて位置決めされたひげゼンマイと、
前記側孔及び前記軸孔に充填されて、前記ひげゼンマイを前記ひげ持ちに固定した接合部材と、を備え、
前記ひげ持ちは、
前記側孔が前記周壁の周方向の互いに異なる複数の位置に形成され、
前記側孔に沿った、前記円筒部の外周面から前記ひげゼンマイが突き当てられた前記円筒部の内周面までの長さが互いに異なるように、前記内周面が形成され、
前記ひげゼンマイは、複数の前記側孔のうち、前記ひげゼンマイの既知のばね特性に対応して選択された前記側孔に固定されている調速装置。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の調速装置を備えた機械式時計。
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JP2019118047A JP2021004776A (ja) | 2019-06-26 | 2019-06-26 | 調速装置及び機械式時計 |
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JP2019118047A Pending JP2021004776A (ja) | 2019-06-26 | 2019-06-26 | 調速装置及び機械式時計 |
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