本発明は、後部フレーム、この後部フレームの前方に配置される前部フレーム、及びこれら後部及び前部フレームの両端間を接続する左右一対の側部フレームを備えてシートクッションを支持するシートクッションフレームと、このシートクッションフレームの後部に連結されてシートバックを支持するシートバックフレームとよりなる、乗物用シートのフレーム構造の改良に関する。
かゝる乗物用シートのフレーム構造は、下記特許文献1に開示されるように知られている。
従来の乗物用シートのフレーム構造では、後部及び前部フレームの中央部間を1本の中央部フレームを介して連結している。こうしたものでは、シートバックフレームが後方から前向き荷重を下部に受ける場合には、その荷重は、中央部フレームにその軸方向に作用するので、中央部フレームは、圧縮応力により上記荷重を有効に支持することができるが、シートバックフレームが前向き荷重を上部(リクライニング機構よりも上方)に受ける場合には、シートバックフレームからリクライニング機構を介して後部フレームに大きな捩じりモーメントが作用するため、1本の中央部フレームによって後部フレームの捩じり剛性を強化するには、1本の中央フレームの充分な大径化が必要となり、軽量化が困難になる。
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、フレーム構造の効果的な強化が図り得る、前記乗物用シートのフレーム構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、後部フレーム、この後部フレームの前方に配置される前部フレーム、及びこれら後部及び前部フレームの両端間を接続する左右一対の側部フレームを備えてシートクッションを支持するシートクッションフレームと、このシートクッションフレームの後部に連結されてシートバックを支持するシートバックフレームとよりなる、乗物用シートのフレーム構造において、前記側部フレームを断面チャンネル形に形成し、同じく断面チャンネル形をなしていて前記後部フレームに固着されるピボットブラケットを、前記側部フレームの後端部に嵌合して固着したことを第1の特徴とする。
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記側部フレームと前記ピボットブラケットとは底部同士をボルトで締結されていることを第2の特徴とする。
さらに本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記側部フレームの左右の上縁に補強鍔が屈曲形成されていることを第3の特徴とする。
さらにまた本発明は、第3の特徴に加えて、前記補強鍔には、前記側部フレームの前側に配置されるカバー部材が、ボルトまたはクリップで固着されることを第4の特徴とする。尚、実施形態のレールカバー58は本発明のカバー部材に対応する。
さらにまた本発明は、第4の特徴に加えて、前記側部フレームの前端部には前方に開口する切欠きが設けられ、この切欠きに、前記カバー部材に設けられた凸部が係合することを第5の特徴とする。
さらにまた本発明は、第4又は第5の特徴に加えて、前記側部フレームには係止孔が設けられ、この係止孔に、前記カバー部材に設けられた係止爪が係合することを第6の特徴とする。
本発明の特徴によれば、側部フレームを断面チャンネル形に形成し、同じく断面チャンネル形をなしていて、後部フレームに固着されるピボットブラケットを側部フレームの後端部に嵌合して固着したので、後部フレームは、高剛性のピボットブラケットを介して高剛性の側部フレームに連結されることになり、後部フレームと側部フレームとの連結強度を強化することができる。
本発明の実施形態に係る自動車用後部シートの斜視図。
上記後部シートのフレーム系斜視図。
シートクッションフレームの下方から見た斜視図。
図3の4−4線断面図。
スライドロック装置の要部斜視図。
スライドロック装置のレリーズバー周りの斜視図。
レールカバー周りの斜視図。
図7の8矢視図(平面図)。
図8の9−9線断面図。
図9の10矢視図(底面図)。
レールカバーの係止爪周りの斜視図。
図1の12−12線拡大断面図。
図1の13−13線拡大断面図。
図2の12部拡大断面図。
図14の15−15線拡大断面図。
図2の16矢視図。
シートベルト用バックル周りの斜視図。
本発明の別の実施形態を示す、図15との対応図。
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。以下の説明において、前後、左右とは、本発明のシートを設置する自動車を基準にしていうものとする。
先ず、図1及び図2において、自動車のシートとしての後部シート1は、シートクッションフレーム2と、このシートクッションフレーム2上に搭載される、左右一対の着座部3aを有するシートクッション3と、シートクッションフレーム2の後端にリクライニング機構4を介して連結される左右一対のシートバック5とよりなっている。
シートクッションフレーム2は、図2〜図4に示すように、左右方向に延びるパイプ状の後部フレーム7と、この後部フレーム7の前方にそれと平行に配置される、後部フレーム7より小径のパイプ状の前部フレーム8と、これら後部及び前部フレーム7、8の左右端部同士を一体に連結する左右一対の側部フレーム9とを備える。後部フレーム7の左右両端部には、ピボットブラケット10が溶接される。各ピボットブラケット10は、断面チャンネル形をなしており(図4参照)、これが断面チャンネル形をなす側部フレーム9の内側に嵌合され、両者の底部同士をボルト11で締結することで、側部フレーム9は後部フレーム7に一体に連結される。側部フレーム9の左右の上縁には、補強鍔9aが屈曲形成されている。こうして、後部フレーム7は、高剛性のピボットブラケット10を介して高剛性の側部フレーム9に連結されることになり、後部フレーム7と側部フレーム9との連結強度が強化される。
また後部フレーム7の中央部には箱形の中間強度部材13が溶接される。この中間強度部材13は、互いに開放端部を嵌合して溶接される左右一対の部材半体13a,13bよりなっている。この中間強度部材13には上下一対の中央部フレーム14,15の後端が溶接される。その際、上方の中央部フレーム14の後端は、後部フレーム7の中心より上方位置で中間強度部材13の前面に溶接され、下方の中央部フレーム15の後端部は、上下に偏平に押し潰されて、後部フレーム7の中心より下方位置の中間強度部材13の下面に溶接される。
これら中央部フレーム14,15の前端部は、上下に偏平に押し潰されて、前部フレーム8の上面及び下面にそれぞれ溶接される。
中間強度部材13の左右両側壁に、リクライニング機構4の一端を支持するリクラニングブラケット24がそれぞれボルトで結合される。各リクライニング機構4の他端は、各シートバック5のシートバックフレーム12の一側部に溶接されるサイドフレーム71(後述する)に支持される。またシートバックフレーム12の一側部に溶接されるピボットブラケット32は、シートクッションフレーム2側のピボットブラケット10にピボット軸16を介して連結される。
シートクッションフレーム2には、格子状に配置される複数のワイヤ17が溶接され、これらワイヤ17によってシートクッション3の底板が支承される。
而して、例えば自車が後続車から追突され、後部の荷物室の荷物からシートバック5の上部に大きな前向き荷重を加えられたとすると、その荷重は、リクライニング機構4及び中間強度部材13を介して後部フレーム7に捩じりモーメントとして作用するが、中間強度部材13には、後部フレーム7の中心を挟んで上下に並ぶ上下一対の中央部フレーム14,15の後端部が溶接され、これら中央部フレーム14,15の前端部は、前部フレーム8の上下面に溶接されるので、中間強度部材13、中央部フレーム14,15及び前部フレーム8により1個のトラス構造が構成され、上記捩じりモーメントは、上方の中央部フレーム14に発生する圧縮応力と、下方の中央部フレーム15に発生する引っ張り応力とで支持されることになり、したがって後部フレーム7は、強力な捩じり剛性を持つことになり、後部フレーム7の捩じり変形を効果的に抑えることができる。
中間強度部材13即ち後部フレーム7の中央部に前向きの荷重が加えられた場合には、上下の中央部フレーム14,15に発生する圧縮応力により、後部フレーム7の曲げ剛性が強化されることで、後部フレーム7の曲げ変形を抑えることができる。
また下方の中央部フレーム15の後端部は、上下に偏平化されて左右の中間強度部材13の一方又は両方の下面に溶接されるので、その溶接範囲を広く確保して溶接部の強度を高めるのみならず、下方の中央部フレーム15の後端部と車体の床面との間隔を充分に確保することができる。
また上下の中央部フレーム14,15の前端部は、それぞれ上下に偏平化されて前部フレーム8の上下面に溶接されるので、それぞれの溶接範囲を広く確保して溶接部の強度を高めると共に、前部フレーム8周りのコンパクト化を図ることができ、また下方の中央部フレーム15の前端部と車体の床面との間隔を充分に確保することができる。
図17に示すように、左右の前記中間強度部材13の側壁には、シートベルトのタングプレートを接続するバックル18がそれぞれボルト19により連結される。左右のバックル18には、これらにタングプレートが接続されることを検出するセンサ(図示せず)がそれぞれ設けられており、これらセンサに接続されるリード線20が左右のバックル18の外側面より延出している。
下方の中央部フレーム15又は上方の中央部フレーム14には、上下の中央部フレーム14,15間に配置されるリード線ホルダ21が固着され、このリード線ホルダ21には、前記リード線20を保持する複数のクリップ22が装着される。左右のリード線20は、クリップ22に保持される後、1本に束ねられ、その端部にコネクタ23が接続される。このコネクタ23は、タングプレートのバックル18への接続の有無を表示する表示器に連なる別のコネクタ(図示せず)に接続されるものである。
このように、リード線20をクリップ22を介して支持するリード線ホルダ21は、下方の中央部フレーム15又は上方の中央部フレーム14に取り付けられると共に、上下の中央部フレーム14,15間に配置されるので、両中央部フレーム14,15間のデッドスペースをリード線ホルダ21の設置に有効利用することができる。
次に、図2及び図5において、前記シートクッションフレーム2の左右の側部フレーム9の下面には、前後方向に延びる左右一対の可動レール25がボルト締結され、これら可動レール25は、車体の床26に敷設されて前後方向に延びる左右一対の固定レール27に摺動可能に支持される。これら可動及び固定レール25、27間には、後部シート1を複数の前後調整位置で選択的にロックし得る公知のスライドロック機構28が設けられており、これらスライドロック機構28のロック状態を解除するレリーズレバー29が各可動レール25に軸支されると共に、各レリーズレバー29には、これをスライドロック機構28のロック作動方向に付勢するロックスプリング30が接続される。
また左右のレリーズレバー29には、共通1本のレリーズバー31の両端が連結される。このレリーズバー31は、1本の丸棒を屈曲させたもので、左右のレリーズレバー29から前方に延びる左右一対の腕部31aと、これら腕部31aの前端部間を一体に連結する杆部31bとよりなっており、その杆部31bは、シートクッション3の下部においてシートクッション3の前縁と平行に配置される。この杆部31bの、前記左右の着座部3aの中間位置に対応する中央部にはノブ33が連設される。このノブ33は、杆部31bの中央部前面よりシートクッション3の前面に臨むように突出するコ字状の握り部33aと、この握り部33aの左右両端よりそれぞれ杆部31b側に屈曲して左右外側方に延びる左右一対の支持部33bとよりなっており、その両支持部33bは、その略全長にわたり前記杆部31bに溶接される。
ノブ33の握り部33aは、左右の着座部3aに座る乗員の視界に入るので、乗員は、このノブ33の握り部33aを直ちに把持して上方へ引き上げることが可能であり、したがって、可動及び固定レール25、27等に触れて手を汚す心配もない。ノブ33の引き上げによれば、レリーズバー31が前記レリーズレバー29と共に上方へ揺動して、前記スライドロック機構28のロック状態を解除するので、可動レール25の前後摺動、即ち後部シート1の前後動が可能である。後部シート1の前後位置を調節した後、ノブ33を解放すると、ロックスプリング30の作用によりスライドロック機構28は作動して、後部シート1を調節位置にロックすることになる。
また上記のように、ノブ33の左右の支持部33bは、その略全長にわたり杆部31bに溶接されていて、杆部31bの剛性を効果的に強化するので、ノブ33への操作力は、レリーズバー31を介して左右のスライドロック機構28に同時に的確に伝達して、それらのロック状態を解除することができる。またレリーズバー31の剛性強化により、レリーズバー31の小径化が可能となり、その軽量化に寄与し得る。
図12及び図13に示すように、シートクッション3の下面には、前部フレーム8を受容する横溝部34が形成されており、この横溝部34内に前記レリーズバー31の杆部31bが配置される。またシートクッション3の中央部の前端部下面には、前記ノブ33の握り部33aが臨む切欠き部35(図1及び図13参照)が形成され、この切欠き部35に連なっていて、上方の中央部フレーム14を受容する縦溝部36がシートクッション3の下面に形成される。
シートクッション3のクッション部材38の表面を覆う表皮39において、クッション部材38の前端面を覆う表皮39の下端に、前記横溝部34を超えて後方へ延長する延長表皮40が接続され、この延長表皮40の後端に付設される第1フック41がシートクッションフレーム2のワイヤ17に係止される。こうして、横溝部34内のレリーズバー31の杆部31bは、表皮39に覆われることになる。
図6に示すように、前部フレーム8の中央部には、前記切欠き部35の直後に位置する規制板43が溶接され、この規制板43には、その下方に延びて前記ノブ33の握り部33a内に配置される規制リング44が溶接される。
図12に示すように、前記延長表皮40の前部中央には、前記切欠き部35に対応する開口部45が設けられ、ノブ33の握り部33aは、この開口部45を通して前方に露出する。開口部45の上縁には、開口部45を縦断する程に長い化粧片46が接続され、この化粧片46の中間部に、化粧片46より短い短片47が接続される。そして化粧片46の先端には面ファスナ48が、短片47の先端には第2フック49がそれぞれ付設される。また開口部45の下縁には第3フック50が付設される。
短片47は、切欠き部35の天井面に沿うように後方へ延びて第2フック49が規制板43に係止され、また第3フック50は規制リング44に係止される。また化粧片46は、短片47により後方へ引っ張られた後、下方に延びて握り部33a内を上方から下方へと通過した後、規制リング44及び杆部31bの中央部を覆いながら後方へ延びていき、面ファスナ48が延長表皮40の下面に接合される。こうして、切欠き部35内には、乗員が握り部33aを把持して上下操作するための、広くすっきりした操作空間51が画成される。
而して、ノブ33の握り部33aは、シートクッション3の中央部、即ち左右の着座部3aの中間位置の切欠き部35内の操作空間51に露出して、左右の着座部3aに座る何れの乗員からも視認し得ると共に、何れの乗員にも極力近接することになるので、何れの乗員もこの握り部33aを即座に把持して、レリーズバー31の引き上げ操作を的確に行い、スライドロック機構28のロック状態を解除することができ、切欠き部35の操作空間51が広いことゝ相俟ってノブ33の操作性は極めて良好である。
しかも、レリーズバー31は、ノブ33の支持部33bと共に延長表皮40に覆われので、レリーズバー31と、シートクッション3の下方に収納される他物との干渉を回避すると共に、乗員がシートクッション3の下面に手を回したとき、杆部31bに触れて手を汚すこともない。
また化粧片46は、規制リング44及び杆部31bの中央部を覆うので、美観を保つことができると共に、握り部33aを把持する乗員の手が杆部31bの中央部等に触れることを回避して手の汚れを防ぐことができる。
さらにレリーズバー31の杆部31bは、前部フレーム8を受容する、クッション部材38下面の横溝部34において、前部フレーム8の下方に配置されるので、乗員の体重によるシートクッション3の変形の影響を受けることなく、レリーズバー31の誤動作を防ぐことができる。しかも、杆部31bは、ノブ33の上下操作に伴ない横溝部34内で上下動するので、横溝部34の開放下面を覆う延長表皮40と干渉することもない。
再び図6において、前記規制板43には、その上面より起立して後方へ円弧状に屈曲するケーブルガイド53が固着され、このケーブルガイド53に支持されるボーデンケーブル54のアウタケーブル54aが、シートクッション3の下部を通ってその後方の荷物室まで延びてシートバックフレームに支持され、このアウタケーブル54aにガイドされるインナケーブル54bの前端部は、ケーブルガイド53の下方に延びて、前記レリーズバー31の中央部に付設される接続金具55に接続される。またインナケーブル54bの後端には、荷物室に臨む操作部材(図示せず)が接続される。その操作部材を介してインナケーブル54bを牽引すると、レリーズバー31が引き上げられ、スライドロック機構28のロック状態を解除することができる。このように、荷物室側でもレリーズバー31の引き上げ操作が可能であるので、スライドロック機構28のロック状態を解除して、後部シート1を前方へ移動させ、荷物室を拡大して使用し得る利便がある。
ケーブルガイド53の左右両側には、ケーブルガイド53を保護する一対の保護部材56が配設され、これら保護部材56は、前記規制板43と一体に形成されて前部フレーム8に溶接される。
次に、図7〜図11において、前記左右の各側部フレーム9には、可動及び固定レール25,27の前端部を覆う合成樹脂製のレールカバー58が取り付けられる。その取り付けのために、側部フレーム9の前端部には、前方に開口する切欠き59と、この切欠き59の後方に隣接する係止孔60とが設けられる。一方、レールカバー58は、可動及び固定レール25,27を、その前端面から内外両側面にわたり覆うU字状の内側カバー部58aと、この内側カバー部58aの外側面に間隙を置いて対向するように配置されるU字状の外側カバー部58bと、両カバー部58a,58bを一体に連結する共通の底部58cとよりなっており、両内側カバー部58a,58bの対向面間にわたり複数の補強リブ70が形成される。
内側カバー部58aには、側部フレーム9の前端部上面に当接する天井部61と、この天井部61から隆起して前記切欠き59に係合する凸部62と、この凸部62の後端部から上方に起立して前記係止孔60に下方から係合する係止爪63とが設けられる。
またU字状の外側カバー部58bの外側及び内側の後端部には、上方に突出する固定腕64,65がそれぞれ一体に形成され、外側の固定腕64は、前記側部フレーム9の外側面にボルト66又はクリップで固着され、内側の固定腕65は、側部フレーム9の前記側部フレーム9の補強鍔9aにボルト67又はクリップで固着される。各固定腕64,65の内側面又は外側面には、上下方向に延びる複数の補強リブ68が形成される。
このレールカバー58の取り付けに当たっては、先ず、後端を下向きにしたレールカバー58の傾斜姿勢で、内側カバー部58aの天井部61を側部フレーム9の前端部上面に載せて内側カバー部58aの凸部62を側部フレーム9の切欠き59に係合させ、次いで上記凸部62を支点としてレールカバー58を水平に回動すると、レールカバー58の係止爪63を側部フレーム9の係止孔60に係合させることができる。こうすることで、レールカバー58の前端部を、ボルト等の固着部材を使用することなく、側部フレーム9に固定することができる。
その後、外側の固定腕64を側部フレーム9の外側面にボルト66又はクリップで固着し、内側の固定腕65を、側部フレーム9の側部フレーム9の補強鍔9aにボルト67又はクリップで固着すれば、レールカバー58の後端部を側部フレーム9に固定することができ、これにより前記係止爪63の係止孔60からの離脱を防ぐことができる。
このように、レールカバー58は、側部フレームに確実に取り付けられながら、可動レール25の前後動に関係なく、固定及び可動レール27,25の前端部を覆うことができる。しかも構造を異にする各種レールの端部をも覆うことが可能であって汎用性が高い。
次に、図2,図14及び図15において、シートバックフレーム12のうち、左右内側のパイプ状の支柱部12aには、次のような補強構造が採用される。即ち、その支柱部12aには、断面コ字状のサイドフレーム71が、その開放面を内向きにして溶接される。その際、支柱部12aはサイドフレーム71内に収められてサイドフレーム71の後部側壁と溶接される。このサイドフレーム71の下端部は支柱部12aよりも下方に延びており、このサイドフレーム71の下端部が、前記リクラニングブラケット24と協同してリクライニング機構4を支持する。
また支柱部12a及びサイドフレーム71には補強部材72が溶接される。その際、補強部材72の後部側壁は支柱部12aの前面に溶接され、その前部側壁は、サイドフレーム71の前面と重ねられて溶接される。
こうして、シートバックフレーム12は、サイドフレーム71及びリクライニング機構4を介して中間強度部材13に支持されることになり、また支柱部12aの周囲には、サイドフレーム71及び補強部材72よりなる前後方向に長辺を持つ矩形断面の、断面係数が大なる補強構造73が構成され、これにより支柱部12aの前後方向の曲げ剛性が強化されるので、シートバックフレーム12、特に内側の支柱部12aは、後続車の追突時などに受ける大なる前後方向荷重に耐えることができる。
図2,図14及び図16において、サイドフレーム71の下端部には、その内側面側において、リクライニング機構4の従動解除レバー74が軸支され、この従動解除レバー74を上方へ揺動させると、リクライニング機構4のロック状態が解除されるようになっている。この従動解除レバー74は、シートバックフレーム12の上部に設けられるレバー支持プレート76の前面側に軸支される駆動解除レバー75にボーデンケーブル78のインナケーブル78aを介して接続される。
前記補強部材72の下端部からは、従動解除レバー74に向かって支持板79が延びており、この支持板79の下端には、ボーデンケーブル78のアウタケーブル78bの下端部を支持するアウタ支持部79aが形成される。また補強部材72の下端部側壁には、アウタケーブル78bの中間部をガイドするガイド溝80が形成される。このように、前記補強部材72は、前記支柱部12aを補強するのみならず、ボーデンケーブル78の支持及びガイドの役割をも果たすことができる。
図2及び図16に示すように、前記レバー支持プレート76の上部と側部とがシートバックフレーム12の梁部12cと左右外側の支柱部12bとにそれぞれ溶接される。シートバックフレーム12の左右の支柱部12a,12bには、これらを連結してシートバック5のクッション部材38を支承する複数のワイヤ81が溶接されており、その最上部のワイヤ81に上記レバー支持プレート76の背面が溶接される。その際、最上部のワイヤ81には、レバー支持プレート76の背面に傾いて当接するクランク部81aが形成され、そのクランク部81aがレバー支持プレート76の背面に溶接される。
このようにすると、シートバックフレーム12に溶接されるレバー支持プレート76の背面と最上部のワイヤ81の一般外周面との間隙にばらつきがあっても、最上部のワイヤ81を左右の支柱部12aに溶接する際、該ワイヤ81の両端部を左右の支柱部12aに当接した状態でクランク部81aを最上部のワイヤ81と共に適宜回転して、レバー支持プレート76の背面に当接させ、その当接状態で、該ワイヤ81の両端部を左右の支柱部12aに溶接すると共に、クランク部81aをレバー支持プレート76の背面に溶接することにより、前記間隙のばらつきに拘らず、レバー支持プレート76と最上部のワイヤ81との溶接が可能となる。こうして、レバー支持プレート76は、3個所をシートバックフレーム12及び最上部のワイヤ81に溶接され、その支持剛性を高めることができる。
このレバー支持プレート76に軸支される駆動解除レバー75には、前記ボーデンケーブル78のインナケーブル78aの上端の他、戻しスプリング82と、シートバック5の上端面より突出する解除操作部材83とが接続される。
而して、その解除操作部材83を戻しスプリング82の付勢力に抗して牽引すれば、駆動解除レバー75、インナケーブル78aを介して前記従動解除レバー74を上方へ揺動させ、リクライニング機構4のロック状態を解除し、シートバック5を傾動を可能にする。また解除操作部材83を解放すれば、リクライニング機構4はロック状態となってシートバック5を所望の角度に固定することができる。
次に、図18に示す本発明の別の実施形態について説明する。
この別の実施形態は、前記支柱部12a及びサイドフレーム71間を連結する補強部材72′は断面L字状に形成される。その際、補強部材72′の前部側壁は、前実施形態と同様にサイドフレーム71の前面と重ねられて溶接されるが、その後端部は、支柱部12aの側面に溶接される。
この別の実施形態によれば、断面係数が大なる補強構造73が構成され、これにより支柱部12aの前後方向の曲げ剛性が強化されると共に、L字状断面の補強部材72′の使用により軽量化を図ることができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、本発明を1人用の前部シートに適用することもできる
。また表皮39と延長表皮40を同一素材で構成することもできる。またレールカバー58の取り付け構造は、レールカバーにより固定及び可動レール27,25の後端部を覆う場合にも適用が可能である。
2・・・・・・シートクッションフレーム
3・・・・・・シートクッション
5・・・・・・シートバック
7・・・・・・後部フレーム
8・・・・・・前部フレーム
9・・・・・・側部フレーム
9a・・・・・補強鍔
10・・・・・ピボットブラケット
11,67・・ボルト
12・・・・・シートバックフレーム
58・・・・・カバー部材(レールカバー)
59・・・・・切欠き
60・・・・・係止孔
62・・・・・凸部
63・・・・・係止爪
本発明は、後部フレーム、この後部フレームの前方に配置される前部フレーム、及びこれら後部及び前部フレームの両端間を接続する左右一対の側部フレームを備えてシートクッションを支持するシートクッションフレームと、このシートクッションフレームの後部に連結されてシートバックを支持するシートバックフレームとよりなる、乗物用シートのフレーム構造の改良に関する。
かゝる乗物用シートのフレーム構造は、下記特許文献1に開示されるように知られている。
従来の乗物用シートのフレーム構造では、後部及び前部フレームの中央部間を1本の中央部フレームを介して連結している。こうしたものでは、シートバックフレームが後方から前向き荷重を下部に受ける場合には、その荷重は、中央部フレームにその軸方向に作用するので、中央部フレームは、圧縮応力により上記荷重を有効に支持することができるが、シートバックフレームが前向き荷重を上部(リクライニング機構よりも上方)に受ける場合には、シートバックフレームからリクライニング機構を介して後部フレームに大きな捩じりモーメントが作用するため、1本の中央部フレームによって後部フレームの捩じり剛性を強化するには、1本の中央部フレームの充分な大径化が必要となり、軽量化が困難になる。
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、フレーム構造の効果的な強化が図り得る、前記乗物用シートのフレーム構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、後部フレーム、この後部フレームの前方に配置される前部フレーム、及びこれら後部及び前部フレームの両端間を接続する左右一対の側部フレームを備えてシートクッションを支持するシートクッションフレームと、このシートクッションフレームの後部に連結されてシートバックを支持するシートバックフレームとよりなる、乗物用シートのフレーム構造において、前記後部フレームに、該後部フレームの中心を挟んで上下に並ぶ一対の中央部フレームの後端部を固着すると共に、この両中央部フレームの前端部を前記前部フレームの上下に固着したことを第1の特徴とする。
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記後部フレームには、前記シートバックフレームを支持する中間強度部材が設けられており、前記両中央部フレームは、前記中間強度部材の外周に固着されていることを第2の特徴とする。
さらに本発明は、第2の特徴に加えて、前記中間強度部材には、シートベルトを保持するためのバックルが取り付けられており、前記バックルの取付位置は、上下の前記両中央部フレームの間にあることを第3の特徴とする。
さらにまた本発明は、第1〜第3の何れかの特徴に加えて、前記中央部フレームは、少なくとも一方の端部に平面部を有することを第4の特徴とする。
さらにまた本発明は、第1〜第4の何れかの特徴に加えて、前記両中央部フレームの間には、他部材を取り付けるためのホルダが配置されていることを第5の特徴とする。尚、実施形態のリード線ホルダ21は本発明のホルダに対応する。
さらにまた本発明は、第1〜第5の何れかの特徴に加えて、前記両中央部フレーム間の幅は、後方に向かうにつれて大きくなることを第6の特徴とする。
さらに本発明は、第1〜第6の何れかの特徴に加えて、前記シートクッションフレームには、前記シートクッションを前後に移動させるスライド機構と、該スライド機構を動作させるスライドレバーとが設けられ、前記スライドレバーには前記シートクッションの前方に突出するノブが設けられて、前記両中央部フレームは前記ノブの左右方向の幅内に配置されることを第7の特徴とする。
さらにまた本発明は、第2〜第7の何れかの特徴に加えて、前記中間強度部材には、シートベルトを保持するためのバックルが取り付けられると共に、前記シートバックフレームがリクライニング機構を介して取り付けられることを第8の特徴とする。
さらにまた本発明は、第8の特徴に加えて、前記中間強度部材には、前記バックルと、前記リクライニング機構とが各々複数取り付けられることを第9の特徴とする。
さらにまた本発明は、後部フレーム、この後部フレームの前方に配置される前部フレーム、及びこれら後部及び前部フレームの両端間を接続する左右一対の側部フレームを備えてシートクッションを支持するシートクッションフレームと、このシートクッションフレームの後部に連結されてシートバックを支持するシートバックフレームと、前記シートクッションの下方に配置されて該シートクッションを前後方向に移動可能に支持するスライド機構と、前記シートクッションに取り付けられるシートベルトを保持するためのバックルと、を備える、乗物用シートのフレーム構造において、前記後部フレームに、前記後部フレームの中心を挟んで上下に並ぶ一対の中央部フレームの後端部を固着し、この両中央部フレームの前端部を前記前部フレームの上下に固着したことを第10の特徴とする。
本発明の特徴によれば、シートバックの上部に加えられた大きな前向き荷重が、後部フレームに捩じりモーメントとして作用しても、上記捩じりモーメントは、上方の中央部フレームに発生する圧縮応力と、下方の中央部フレームに発生する引っ張り応力とで支持されることになって、後部フレームが強力な捩じり剛性を持つことになるから、後部フレーム7の捩じり変形を効果的に抑えることができる。また、後部フレームの中央部に前向きの荷重が加えられた場合には、上下の中央部フレームに発生する圧縮応力により、後部フレームの曲げ剛性が強化されることで、後部フレームの曲げ変形を抑えることができる。
本発明の実施形態に係る自動車用後部シートの斜視図。
上記後部シートのフレーム系斜視図。
シートクッションフレームの下方から見た斜視図。
図3の4−4線断面図。
スライドロック装置の要部斜視図。
スライドロック装置のレリーズバー周りの斜視図。
レールカバー周りの斜視図。
図7の8矢視図(平面図)。
図8の9−9線断面図。
図9の10矢視図(底面図)。
レールカバーの係止爪周りの斜視図。
図1の12−12線拡大断面図。
図1の13−13線拡大断面図。
図2の12部拡大断面図。
図14の15−15線拡大断面図。
図2の16矢視図。
シートベルト用バックル周りの斜視図。
本発明の別の実施形態を示す、図15との対応図。
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。以下の説明において、前後、左右とは、本発明のシートを設置する自動車を基準にしていうものとする。
先ず、図1及び図2において、自動車のシートとしての後部シート1は、シートクッションフレーム2と、このシートクッションフレーム2上に搭載される、左右一対の着座部3aを有するシートクッション3と、シートクッションフレーム2の後端にリクライニング機構4を介して連結される左右一対のシートバック5とよりなっている。
シートクッションフレーム2は、図2〜図4に示すように、左右方向に延びるパイプ状の後部フレーム7と、この後部フレーム7の前方にそれと平行に配置される、後部フレーム7より小径のパイプ状の前部フレーム8と、これら後部及び前部フレーム7、8の左右端部同士を一体に連結する左右一対の側部フレーム9とを備える。後部フレーム7の左右両端部には、ピボットブラケット10が溶接される。各ピボットブラケット10は、断面チャンネル形をなしており(図4参照)、これが断面チャンネル形をなす側部フレーム9の内側に嵌合され、両者の底部同士をボルト11で締結することで、側部フレーム9は後部フレーム7に一体に連結される。側部フレーム9の左右の上縁には、補強鍔9aが屈曲形成されている。こうして、後部フレーム7は、高剛性のピボットブラケット10を介して高剛性の側部フレーム9に連結されることになり、後部フレーム7と側部フレーム9との連結強度が強化される。
また後部フレーム7の中央部には箱形の中間強度部材13が溶接される。この中間強度部材13は、互いに開放端部を嵌合して溶接される左右一対の部材半体13a,13bよりなっている。この中間強度部材13には上下一対の中央部フレーム14,15の後端が溶接される。その際、上方の中央部フレーム14の後端は、後部フレーム7の中心より上方位置で中間強度部材13の前面に溶接され、下方の中央部フレーム15の後端部は、上下に偏平に押し潰された平面部とされて、後部フレーム7の中心より下方位置の中間強度部材13の下面に溶接される。
これら中央部フレーム14,15の前端部は、上下に偏平に押し潰された平面部とされて、前部フレーム8の上面及び下面にそれぞれ溶接される。
中間強度部材13の左右両側壁に、リクライニング機構4の一端を支持するリクラニングブラケット24がそれぞれボルトで結合される。各リクライニング機構4の他端は、各シートバック5のシートバックフレーム12の一側部に溶接されるサイドフレーム71(後述する)に支持される。またシートバックフレーム12の一側部に溶接されるピボットブラケット32は、シートクッションフレーム2側のピボットブラケット10にピボット軸16を介して連結される。
シートクッションフレーム2には、格子状に配置される複数のワイヤ17が溶接され、これらワイヤ17によってシートクッション3の底板が支承される。
而して、例えば自車が後続車から追突され、後部の荷物室の荷物からシートバック5の上部に大きな前向き荷重を加えられたとすると、その荷重は、リクライニング機構4及び中間強度部材13を介して後部フレーム7に捩じりモーメントとして作用するが、中間強度部材13には、後部フレーム7の中心を挟んで上下に並ぶ上下一対の中央部フレーム14,15の後端部が溶接され、これら中央部フレーム14,15の前端部は、前部フレーム8の上下面に溶接されるので、中間強度部材13、中央部フレーム14,15及び前部フレーム8により1個のトラス構造が構成され、上記捩じりモーメントは、上方の中央部フレーム14に発生する圧縮応力と、下方の中央部フレーム15に発生する引っ張り応力とで支持されることになり、したがって後部フレーム7は、強力な捩じり剛性を持つことになり、後部フレーム7の捩じり変形を効果的に抑えることができる。
中間強度部材13即ち後部フレーム7の中央部に前向きの荷重が加えられた場合には、上下の中央部フレーム14,15に発生する圧縮応力により、後部フレーム7の曲げ剛性が強化されることで、後部フレーム7の曲げ変形を抑えることができる。
また下方の中央部フレーム15の後端部は、上下に偏平化された平面部とされて左右の中間強度部材13の一方又は両方の下面に溶接されるので、その溶接範囲を広く確保して溶接部の強度を高めるのみならず、下方の中央部フレーム15の後端部と車体の床面との間隔を充分に確保することができる。
また上下の中央部フレーム14,15の前端部は、それぞれ上下に偏平化された平面部とされて前部フレーム8の上下面に溶接されるので、それぞれの溶接範囲を広く確保して溶接部の強度を高めると共に、前部フレーム8周りのコンパクト化を図ることができ、また下方の中央部フレーム15の前端部と車体の床面との間隔を充分に確保することができる。
図17に示すように、左右の前記中間強度部材13の側壁には、シートベルトのタングプレートを接続するバックル18がそれぞれボルト19により連結される。左右のバックル18には、これらにタングプレートが接続されることを検出するセンサ(図示せず)がそれぞれ設けられており、これらセンサに接続されるリード線20が左右のバックル18の外側面より延出している。
下方の中央部フレーム15又は上方の中央部フレーム14には、上下の中央部フレーム14,15間に配置されるリード線ホルダ21が固着され、このリード線ホルダ21には、前記リード線20を保持する複数のクリップ22が装着される。左右のリード線20は、クリップ22に保持される後、1本に束ねられ、その端部にコネクタ23が接続される。このコネクタ23は、タングプレートのバックル18への接続の有無を表示する表示器に連なる別のコネクタ(図示せず)に接続されるものである。
このように、リード線20をクリップ22を介して支持するリード線ホルダ21は、下方の中央部フレーム15又は上方の中央部フレーム14に取り付けられると共に、上下の中央部フレーム14,15間に配置されるので、両中央部フレーム14,15間のデッドスペースをリード線ホルダ21の設置に有効利用することができる。
次に、図2及び図5において、前記シートクッションフレーム2の左右の側部フレーム9の下面には、前後方向に延びる左右一対の可動レール25がボルト締結され、これら可動レール25は、車体の床26に敷設されて前後方向に延びる左右一対の固定レール27に摺動可能に支持される。これら可動及び固定レール25、27間には、後部シート1を複数の前後調整位置で選択的にロックし得る公知のスライドロック機構28が設けられて、これら可動及び固定レール25、27およびスライドロック機構28はスライド機構Sを構成する。また、各可動レール25には、スライドロック機構28のロック状態を解除するレリーズレバー29が軸支されると共に、各レリーズレバー29には、これをスライドロック機構28のロック作動方向に付勢するロックスプリング30が接続される。
また左右のレリーズレバー29には、共通1本のレリーズバー31の両端が連結されて、これらレリーズレバー29とレリーズバー31とでスライドレバーLeが構成される。このレリーズバー31は、1本の丸棒を屈曲させたもので、左右のレリーズレバー29から前方に延びる左右一対の腕部31aと、これら腕部31aの前端部間を一体に連結する杆部31bとよりなっており、その杆部31bは、シートクッション3の下部においてシートクッション3の前縁と平行に配置される。この杆部31bの、前記左右の着座部3aの中間位置に対応する中央部にはノブ33が連設される。このノブ33は、杆部31bの中央部前面よりシートクッション3の前面に臨むように突出するコ字状の握り部33aと、この握り部33aの左右両端よりそれぞれ杆部31b側に屈曲して左右外側方に延びる左右一対の支持部33bとよりなっており、その両支持部33bは、その略全長にわたり前記杆部31bに溶接される。
ノブ33の握り部33aは、左右の着座部3aに座る乗員の視界に入るので、乗員は、このノブ33の握り部33aを直ちに把持して上方へ引き上げることが可能であり、したがって、可動及び固定レール25、27等に触れて手を汚す心配もない。ノブ33の引き上げによれば、レリーズバー31が前記レリーズレバー29と共に上方へ揺動して、前記スライドロック機構28のロック状態を解除するので、可動レール25の前後摺動、即ち後部シート1の前後動が可能である。後部シート1の前後位置を調節した後、ノブ33を解放すると、ロックスプリング30の作用によりスライドロック機構28は作動して、後部シート1を調節位置にロックすることになる。
また上記のように、ノブ33の左右の支持部33bは、その略全長にわたり杆部31bに溶接されていて、杆部31bの剛性を効果的に強化するので、ノブ33への操作力は、レリーズバー31を介して左右のスライドロック機構28に同時に的確に伝達して、それらのロック状態を解除することができる。またレリーズバー31の剛性強化により、レリーズバー31の小径化が可能となり、その軽量化に寄与し得る。
図12及び図13に示すように、シートクッション3の下面には、前部フレーム8を受容する横溝部34が形成されており、この横溝部34内に前記レリーズバー31の杆部31bが配置される。またシートクッション3の中央部の前端部下面には、前記ノブ33の握り部33aが臨む切欠き部35(図1及び図13参照)が形成され、この切欠き部35に連なっていて、上方の中央部フレーム14を受容する縦溝部36がシートクッション3の下面に形成される。
シートクッション3のクッション部材38の表面を覆う表皮39において、クッション部材38の前端面を覆う表皮39の下端に、前記横溝部34を超えて後方へ延長する延長表皮40が接続され、この延長表皮40の後端に付設される第1フック41がシートクッションフレーム2のワイヤ17に係止される。こうして、横溝部34内のレリーズバー31の杆部31bは、表皮39に覆われることになる。
図6に示すように、前部フレーム8の中央部には、前記切欠き部35の直後に位置する規制板43が溶接され、この規制板43には、その下方に延びて前記ノブ33の握り部33a内に配置される規制リング44が溶接される。
図12に示すように、前記延長表皮40の前部中央には、前記切欠き部35に対応する開口部45が設けられ、ノブ33の握り部33aは、この開口部45を通して前方に露出する。開口部45の上縁には、開口部45を縦断する程に長い化粧片46が接続され、この化粧片46の中間部に、化粧片46より短い短片47が接続される。そして化粧片46の先端には面ファスナ48が、短片47の先端には第2フック49がそれぞれ付設される。また開口部45の下縁には第3フック50が付設される。
短片47は、切欠き部35の天井面に沿うように後方へ延びて第2フック49が規制板43に係止され、また第3フック50は規制リング44に係止される。また化粧片46は、短片47により後方へ引っ張られた後、下方に延びて握り部33a内を上方から下方へと通過した後、規制リング44及び杆部31bの中央部を覆いながら後方へ延びていき、面ファスナ48が延長表皮40の下面に接合される。こうして、切欠き部35内には、乗員が握り部33aを把持して上下操作するための、広くすっきりした操作空間51が画成される。
而して、ノブ33の握り部33aは、シートクッション3の中央部、即ち左右の着座部3aの中間位置の切欠き部35内の操作空間51に露出して、左右の着座部3aに座る何れの乗員からも視認し得ると共に、何れの乗員にも極力近接することになるので、何れの乗員もこの握り部33aを即座に把持して、レリーズバー31の引き上げ操作を的確に行い、スライドロック機構28のロック状態を解除することができ、切欠き部35の操作空間51が広いことゝ相俟ってノブ33の操作性は極めて良好である。
しかも、レリーズバー31は、ノブ33の支持部33bと共に延長表皮40に覆われので、レリーズバー31と、シートクッション3の下方に収納される他物との干渉を回避すると共に、乗員がシートクッション3の下面に手を回したとき、杆部31bに触れて手を汚すこともない。
また化粧片46は、規制リング44及び杆部31bの中央部を覆うので、美観を保つことができると共に、握り部33aを把持する乗員の手が杆部31bの中央部等に触れることを回避して手の汚れを防ぐことができる。
さらにレリーズバー31の杆部31bは、前部フレーム8を受容する、クッション部材38下面の横溝部34において、前部フレーム8の下方に配置されるので、乗員の体重によるシートクッション3の変形の影響を受けることなく、レリーズバー31の誤動作を防ぐことができる。しかも、杆部31bは、ノブ33の上下操作に伴ない横溝部34内で上下動するので、横溝部34の開放下面を覆う延長表皮40と干渉することもない。
再び図6において、前記規制板43には、その上面より起立して後方へ円弧状に屈曲するケーブルガイド53が固着され、このケーブルガイド53に支持されるボーデンケーブル54のアウタケーブル54aが、シートクッション3の下部を通ってその後方の荷物室まで延びてシートバックフレームに支持され、このアウタケーブル54aにガイドされるインナケーブル54bの前端部は、ケーブルガイド53の下方に延びて、前記レリーズバー31の中央部に付設される接続金具55に接続される。またインナケーブル54bの後端には、荷物室に臨む操作部材(図示せず)が接続される。その操作部材を介してインナケーブル54bを牽引すると、レリーズバー31が引き上げられ、スライドロック機構28のロック状態を解除することができる。このように、荷物室側でもレリーズバー31の引き上げ操作が可能であるので、スライドロック機構28のロック状態を解除して、後部シート1を前方へ移動させ、荷物室を拡大して使用し得る利便がある。
ケーブルガイド53の左右両側には、ケーブルガイド53を保護する一対の保護部材56が配設され、これら保護部材56は、前記規制板43と一体に形成されて前部フレーム8に溶接される。
次に、図7〜図11において、前記左右の各側部フレーム9には、可動及び固定レール25,27の前端部を覆う合成樹脂製のレールカバー58が取り付けられる。その取り付けのために、側部フレーム9の前端部には、前方に開口する切欠き59と、この切欠き59の後方に隣接する係止孔60とが設けられる。一方、レールカバー58は、可動及び固定レール25,27を、その前端面から内外両側面にわたり覆うU字状の内側カバー部58aと、この内側カバー部58aの外側面に間隙を置いて対向するように配置されるU字状の外側カバー部58bと、両カバー部58a,58bを一体に連結する共通の底部58cとよりなっており、両内側カバー部58a,58bの対向面間にわたり複数の補強リブ70が形成される。
内側カバー部58aには、側部フレーム9の前端部上面に当接する天井部61と、この天井部61から隆起して前記切欠き59に係合する凸部62と、この凸部62の後端部から上方に起立して前記係止孔60に下方から係合する係止爪63とが設けられる。
またU字状の外側カバー部58bの外側及び内側の後端部には、上方に突出する固定腕64,65がそれぞれ一体に形成され、外側の固定腕64は、前記側部フレーム9の外側面にボルト66又はクリップで固着され、内側の固定腕65は、側部フレーム9の前記側部フレーム9の補強鍔9aにボルト67又はクリップで固着される。各固定腕64,65の内側面又は外側面には、上下方向に延びる複数の補強リブ68が形成される。
このレールカバー58の取り付けに当たっては、先ず、後端を下向きにしたレールカバー58の傾斜姿勢で、内側カバー部58aの天井部61を側部フレーム9の前端部上面に載せて内側カバー部58aの凸部62を側部フレーム9の切欠き59に係合させ、次いで上記凸部62を支点としてレールカバー58を水平に回動すると、レールカバー58の係止爪63を側部フレーム9の係止孔60に係合させることができる。こうすることで、レールカバー58の前端部を、ボルト等の固着部材を使用することなく、側部フレーム9に固定することができる。
その後、外側の固定腕64を側部フレーム9の外側面にボルト66又はクリップで固着し、内側の固定腕65を、側部フレーム9の側部フレーム9の補強鍔9aにボルト67又はクリップで固着すれば、レールカバー58の後端部を側部フレーム9に固定することができ、これにより前記係止爪63の係止孔60からの離脱を防ぐことができる。
このように、レールカバー58は、側部フレームに確実に取り付けられながら、可動レール25の前後動に関係なく、固定及び可動レール27,25の前端部を覆うことができる。しかも構造を異にする各種レールの端部をも覆うことが可能であって汎用性が高い。
次に、図2,図14及び図15において、シートバックフレーム12のうち、左右内側のパイプ状の支柱部12aには、次のような補強構造が採用される。即ち、その支柱部12aには、断面コ字状のサイドフレーム71が、その開放面を内向きにして溶接される。その際、支柱部12aはサイドフレーム71内に収められてサイドフレーム71の後部側壁と溶接される。このサイドフレーム71の下端部は支柱部12aよりも下方に延びており、このサイドフレーム71の下端部が、前記リクラニングブラケット24と協同してリクライニング機構4を支持する。
また支柱部12a及びサイドフレーム71には補強部材72が溶接される。その際、補強部材72の後部側壁は支柱部12aの前面に溶接され、その前部側壁は、サイドフレーム71の前面と重ねられて溶接される。
こうして、シートバックフレーム12は、サイドフレーム71及びリクライニング機構4を介して中間強度部材13に支持されることになり、また支柱部12aの周囲には、サイドフレーム71及び補強部材72よりなる前後方向に長辺を持つ矩形断面の、断面係数が大なる補強構造73が構成され、これにより支柱部12aの前後方向の曲げ剛性が強化されるので、シートバックフレーム12、特に内側の支柱部12aは、後続車の追突時などに受ける大なる前後方向荷重に耐えることができる。
図2,図14及び図16において、サイドフレーム71の下端部には、その内側面側において、リクライニング機構4の従動解除レバー74が軸支され、この従動解除レバー74を上方へ揺動させると、リクライニング機構4のロック状態が解除されるようになっている。この従動解除レバー74は、シートバックフレーム12の上部に設けられるレバー支持プレート76の前面側に軸支される駆動解除レバー75にボーデンケーブル78のインナケーブル78aを介して接続される。
前記補強部材72の下端部からは、従動解除レバー74に向かって支持板79が延びており、この支持板79の下端には、ボーデンケーブル78のアウタケーブル78bの下端部を支持するアウタ支持部79aが形成される。また補強部材72の下端部側壁には、アウタケーブル78bの中間部をガイドするガイド溝80が形成される。このように、前記補強部材72は、前記支柱部12aを補強するのみならず、ボーデンケーブル78の支持及びガイドの役割をも果たすことができる。
図2及び図16に示すように、前記レバー支持プレート76の上部と側部とがシートバックフレーム12の梁部12cと左右外側の支柱部12bとにそれぞれ溶接される。シートバックフレーム12の左右の支柱部12a,12bには、これらを連結してシートバック5のクッション部材38を支承する複数のワイヤ81が溶接されており、その最上部のワイヤ81に上記レバー支持プレート76の背面が溶接される。その際、最上部のワイヤ81には、レバー支持プレート76の背面に傾いて当接するクランク部81aが形成され、そのクランク部81aがレバー支持プレート76の背面に溶接される。
このようにすると、シートバックフレーム12に溶接されるレバー支持プレート76の背面と最上部のワイヤ81の一般外周面との間隙にばらつきがあっても、最上部のワイヤ81を左右の支柱部12aに溶接する際、該ワイヤ81の両端部を左右の支柱部12aに当接した状態でクランク部81aを最上部のワイヤ81と共に適宜回転して、レバー支持プレート76の背面に当接させ、その当接状態で、該ワイヤ81の両端部を左右の支柱部12aに溶接すると共に、クランク部81aをレバー支持プレート76の背面に溶接することにより、前記間隙のばらつきに拘らず、レバー支持プレート76と最上部のワイヤ81との溶接が可能となる。こうして、レバー支持プレート76は、3個所をシートバックフレーム12及び最上部のワイヤ81に溶接され、その支持剛性を高めることができる。
このレバー支持プレート76に軸支される駆動解除レバー75には、前記ボーデンケーブル78のインナケーブル78aの上端の他、戻しスプリング82と、シートバック5の上端面より突出する解除操作部材83とが接続される。
而して、その解除操作部材83を戻しスプリング82の付勢力に抗して牽引すれば、駆動解除レバー75、インナケーブル78aを介して前記従動解除レバー74を上方へ揺動させ、リクライニング機構4のロック状態を解除し、シートバック5を傾動を可能にする。また解除操作部材83を解放すれば、リクライニング機構4はロック状態となってシートバック5を所望の角度に固定することができる。
次に、図18に示す本発明の別の実施形態について説明する。
この別の実施形態は、前記支柱部12a及びサイドフレーム71間を連結する補強部材72′は断面L字状に形成される。その際、補強部材72′の前部側壁は、前実施形態と同様にサイドフレーム71の前面と重ねられて溶接されるが、その後端部は、支柱部12aの側面に溶接される。
この別の実施形態によれば、断面係数が大なる補強構造73が構成され、これにより支柱部12aの前後方向の曲げ剛性が強化されると共に、L字状断面の補強部材72′の使用により軽量化を図ることができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、本発明を1人用の前部シートに適用することもできる
。また表皮39と延長表皮40を同一素材で構成することもできる。またレールカバー58の取り付け構造は、レールカバーにより固定及び可動レール27,25の後端部を覆う場合にも適用が可能である。
2・・・・・・シートクッションフレーム
3・・・・・・シートクッション
4・・・・・・リクライニング機構
5・・・・・・シートバック
7・・・・・・後部フレーム
8・・・・・・前部フレーム
9・・・・・・側部フレーム
12・・・・・シートバックフレーム
13・・・・・中間強度部材
14,15・・中央部フレーム
18・・・・・バックル
21・・・・・ホルダ(リード線ホルダ)
33・・・・・ノブ
Le・・・・・スライドレバー
S・・・・・・スライド機構