JP2018154856A - 銀コート銅粉の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】容易かつ迅速な方法で、導電性ペーストや電磁波シールド等の金属フィラーとして使用したときに高い導電性を確保できる銀コート銅粉を的確に製造することができる方法を提供する。【解決手段】本発明は、樹枝状形状を呈する銀コート銅粉の製造方法であって、電解法により銅粉を製造する工程と、分光光度計により測定した銅粉の反射率と所定の反射率基準とに基づき、その銅粉の品質を検査する工程と、銅粉の品質を検査する工程で基準を満たした銅粉に銀を被覆する工程と、を備える。例えば、銅粉に銀を被覆する工程では、測定波長400nmでの反射率が9%以上である銅粉に対して銀を被覆する。【選択図】図1
Description
本発明は、表面に銀を被覆した銅粉(銀コート銅粉)の製造方法に関するものであり、導電性ペースト等の材料として用いられ、導電性を改善させることのできる平板状の粒子が集合した形状を有する銀コート銅粉の製造方法に関する。
電子機器における配線層や電極等の形成には、樹脂型ペーストや焼成型ペースト、電磁波シールド塗料のような、銀粉や銀コート銅粉等の金属フィラーを使用したペーストや塗料が多用されている。銀粉や銀コート銅粉の金属フィラーペーストは、各種基材上に塗布又は印刷され、加熱硬化あるいは加熱焼成の処理を受けて、配線層や電極等となる導電膜を形成する。
例えば、樹脂型導電性ペーストは、金属フィラーと、樹脂、硬化剤、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷され、100℃〜200℃で加熱硬化させて導電膜となり、配線や電極を形成する。樹脂型導電性ペーストは、熱によって熱硬化型樹脂が硬化収縮するために金属フィラーが圧着され相互に接触することで金属フィラー同士が重なり、その結果電気的に接続した電流パスが形成される。この樹脂型導電性ペーストは、硬化温度が200℃以下で処理することから、プリント配線板等の熱に弱い材料を用いる基板に使用されている。
一方、焼成型導電性ペーストは、金属フィラーと、ガラス、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷され、600℃〜800℃に加熱焼成して導電膜となり、配線や電極を形成する。焼成型導電性ペーストは、高い温度によって処理することで、金属フィラー同士が焼結して導通性が確保されるものである。この焼成型導電性ペーストは、このように高い焼成温度で処理されるため、樹脂材料を使用するようなプリント配線基板には使用できない点があるが、高温処理で金属フィラーが焼結することから低抵抗を実現することが可能となる。そのため、焼成型導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサの外部電極等に使用されている。
一方、電磁波シールドは、電子機器からの電磁気的なノイズの発生を防止するために使用されるもので、特に近年では、パソコンや携帯の筐体が樹脂製になったことから、筐体に導電性を確保するために、蒸着法やスパッタ法で薄い金属皮膜を形成する方法や、導電性の塗料を塗布する方法、導電性のシートを必要な箇所に貼り付けて電磁波をシールドする方法等が提案されている。その中でも、樹脂中に金属フィラーを分散させて塗布する方法や樹脂中に金属フィラーを分散させてシート状に加工してそれを筐体に貼り付ける方法では、加工工程において特殊な設備を必要とせず自由度に優れており多用されている。
しかしながら、このような金属フィラーを樹脂中に分散させて塗布する場合やシート状に加工する場合においては、金属フィラーの樹脂中における分散状態が一様にならないため、電磁波シールドの効率を得るために金属フィラーの充填率を高める等の方法が必要となる。ところが、その場合には、多量の金属フィラーの添加することによってシート重量が重くなると共に、樹脂シートの可撓性を損なう等の問題が発生していた。そのため、例えば特許文献1においては、それらの問題を解決するために平板状の金属フィラーを使用する方法が提案されており、このことによって、電磁波シールド効果に優れ、可撓性も良好な薄いシートを形成することができるとしている。
ここで、平板状の銅粉を作製するために、例えば特許文献2では、導電性ペーストのフィラーに適したフレーク状銅粉を得る方法が開示されている。具体的には、平均粒径0.5〜10μmの球状銅粉を原料として、ボールミルや振動ミルを用いて、ミル内に装填したメディアの機械的エネルギーにより機械的に平板状に加工するものである。
また、例えば特許文献3では、導電性ペースト用銅粉末、詳しくはスルーホール用及び外部電極用銅ペーストとして高性能が得られる円盤状銅粉末及びその製造方法に関する技術が開示されている。具体的には、粒状アトマイズ銅粉末を媒体攪拌ミルに投入し、粉砕媒体として1/8〜1/4インチ径のスチールボールを使用して、銅粉末に対して脂肪酸を重量で0.5〜1%添加し、空気中あるいは不活性雰囲気中で粉砕することによって平板状に加工するものである。
一方、これら導電性ペーストや電磁波シールド用に使用されている金属フィラーとしては、銀粉が多く用いられているが、低コスト化の流れにより、銀粉より安価な銅粉の表面に銀をコートすることで銀の使用量を低減させた銀コート銅粉を使用する傾向にある。
銅粉の表面に銀を被覆する方法としては、置換反応によって銅表面に銀を被覆する方法と、還元剤が含まれる無電解めっき溶液中で銀を被覆する方法がある。
置換反応によって銀を被覆する方法では、溶液中で銅が溶出するときに発生した電子によって銀イオンが還元されることで銅表面に銀の被膜が形成される。例えば特許文献4には、銀イオンが存在する溶液中に銅粉を投入することで、銅と銀イオンの置換反応によって銅表面に銀の被膜が形成される製造方法が開示されている。しかしながら、この置換反応による方法では、銅表面に銀の被膜が形成されると、それ以上の銅の溶解が進行しないため、銀の被覆量を制御できないという問題がある。
その問題を解決するために、還元剤が含まれた無電解めっき液で銀を被覆する方法がある。例えば特許文献5には、還元剤が溶存した溶液中で銅粉と硝酸銀との反応によって銀を被覆した銅粉を製造する方法が提案されている。
さて、銅粉としては、デンドライト状と呼ばれる樹枝状に析出した電解銅粉が知られており、形状が樹枝状になっていることから表面積が大きいことが特徴となっている。このようにデンドライト状の形状であることにより、これを導電膜等に用いた場合には、そのデンドライトの枝が重なり合い、導通が通りやすく、また球状粒子に比べて粒子同士の接点数が多くなることから、導電性ペースト等における導電性フィラーの量を少なくすることができるという利点がある。例えば、特許文献6及び7には、デンドライト状を呈した銅粉表面に銀を被覆した銀被覆銅粉が提案されている。
具体的に、特許文献6及び7には、デンドライト状により一層成長したものとして、主軸から分岐した長い枝が特徴のデンドライトが開示されており、その銀被覆銅粉は、従来のデンドライトよりも粒子同士の接点が多くなることで導通性が向上し、導電性ペースト等に用いると導電性粉末の量を少なくしても導電性を高めることができるとしている。
一方、樹枝状の銅粉を導電性ペーストや電磁波シールド用樹脂等の金属フィラーとして利用する場合に、その金属フィラーが樹枝状に発達した形状であると、樹枝状の銅粉同士が必要以上に絡み合ってしまうため、凝集が生じやすくなり、また流動性が低下して非常に扱い難くなり、生産性を低下させることの指摘が特許文献8に示されている。なお、特許文献8では、電解銅粉自体の強度を高めるため、電解銅粉を析出させるための電解液の硫酸銅水溶液中にタングステン酸塩を添加することで、電解銅粉自体の強度を向上させ、樹枝を折れ難くし、高い強度に成形することができるとしている。
このように、樹枝状の銅粉を導電性ペースト等の金属フィラーとして用いるのは容易でなく、ペーストの導電性の改善がなかなか進まない原因ともなっている。
導電性を確保するためには、3次元的な形状を有する樹枝状形状の方が粒状のものよりも接点を確保しやすく、導電性ペーストや電磁波シールドとして高い導電性を確保することが期待できる。しかしながら、従来のデンドライト状の形状を呈した銀被覆銅粉では、主軸から分岐した長い枝が特徴であるデンドライトであって、細長い枝状の形状であったことから、接点を確保する点から考えると構造が単純であり、より少ない銀被覆銅粉を用いて効果的に接点を確保する形状としては理想的な形状となっていない。
これらの問題を解決するために特許文献9には、直線的に成長した主幹と該主幹から分かれた複数の枝とを有する樹枝状の形状をなし、主幹及び枝は平板状の粒子が集合して構成される、銀コート銅粉が開示されている。この銀コート銅粉は、樹枝状であることの3次元的効果と、その樹枝状の形状を構成する粒子が平板状であることの効果により、銀コート銅粉同士の接点をより多く確保することができ、導電性ペーストや電磁波シールとして使用したときに高い導電性が得られるとされている。
ところで、例えば特許文献9に開示された銀コート銅粉は、フェナジン構造等を有する添加剤と、ノニオン界面活性剤と、塩化物イオンとを含有する硫酸酸性銅電解液から電解法により析出させた樹枝状銅粉(樹枝状形状を呈する銅粉)に銀を被覆して作製され、この樹枝状銅粉を構成する平板状の粒子の断面平均厚さや樹枝状銅粉の平均粒子径等の形状を表す指標は、電解液中の添加剤、ノニオン界面活性剤、塩化物イオン、銅イオンの各濃度に影響を受ける。これらの電解液中の濃度は、電解中の消耗や樹枝状銅粉取り出し時の付着により刻々と変化するため、樹枝状銅粉を析出させるに際しては、これらの濃度を適切な範囲に管理することが必要であったが、必ずしも樹枝状銅粉の形状が管理された状態にあるとは限られなかった。このことから、これら樹枝状銅粉に銀を被覆して銀コート銅粉を作製し、導電性ペーストや電磁波シールドの金属フィラーとして使用しても、所望の導電性が得られない場合があった。
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、容易かつ迅速な方法で、導電性ペーストや電磁波シールド等の金属フィラーとして使用したときに高い導電性を確保できる銀コート銅粉を的確に製造することができる方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、光を反射させやすい面を有する樹枝状銅粉の形状と反射率との間には相関関係があり、樹枝状銅粉の形状とこれを金属フィラーとして用いた場合の導電性との間には相関関係があることを見出した。そして、銀コート銅粉の製造過程においても、その反射率を指標とすることによって、樹枝状銅粉の品質を容易かつ迅速に検査でき、導電性ペーストや電磁波シールド等の金属フィラーとして使用したときに高い導電性を確保できる銀コート銅粉が得られことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、樹枝状形状を呈する銀コート銅粉の製造方法であって、電解法により銅粉を製造する工程と、分光光度計により測定した前記銅粉の反射率と所定の反射率基準とに基づき、該銅粉の品質を検査する工程と、前記銅粉の品質を検査する工程で基準を満たした銅粉に銀を被覆する工程と、を備える、銀コート銅粉の製造方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記銅粉の品質を検査する工程では、前記反射率の測定波長を300nm〜500nmとする、銀コート銅粉の製造方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第2の発明において、前記銅粉に銀を被覆する工程では、測定波長400nmでの反射率が9%以上である銅粉に対して銀を被覆する、銀コート銅粉の製造方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記銅粉を製造する工程において、銅イオンと、下記式(1)で表されるフェナジン構造を有する化合物からなる群、下記式(2)で表されるアゾベンゼン構造を有する化合物からなる群、及び下記式(3)で表されるフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群からそれぞれ選択される1種類以上、もしくは異なる群から選択される2種類以上と、ノニオン界面活性剤の1種類以上と、を含有する電解液を用いて電解により銅粉を製造する、銀コート銅粉の製造方法である。
[式(1)中、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8、R9は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SO3H、SO3塩、SO3エステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基であり、R5は、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SO3H、SO3塩、SO3エステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択された基であり、A−がハライドアニオンである。]
[式(2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SO3H、SO3塩、SO3エステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。]
[式(3)中、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SO3H、SO3塩、SO3エステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基であり、R3は、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SO3H、SO3塩、SO3エステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基であり、A−がハライドアニオンである。]
(5)本発明の第5の発明は、第4の発明において、前記電解液に、塩化物イオンを含有させる、銀コート銅粉の製造方法である。
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至5のいずれかの発明において、前記銅粉の品質を検査する工程は、前記銅粉を製造する工程において得られた銅粉をスラリーする工程と、前記スラリーを測定セルに移送して銅粉を沈降させる工程と、前記測定セルを分光光度計に装填し、沈降した銅粉の反射率を測定する工程と、を含む、銀コート銅粉の製造方法である。
(7)本発明の第7の発明は、第1乃至5のいずれかの発明において、前記銀コート銅粉は、直線的に成長した主幹と該主幹から分かれた複数の枝とを有する樹枝状の形状をなし、前記主幹及び前記枝は、走査電子顕微鏡(SEM)観察より求められる断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmである平板状の銅粒子が集合して構成され、該銅粒子の表面に銀が被覆されており、当該銀コート銅粉の平均粒子径(D50)が1.0μm〜100μmであり、前記銅粒子の平板状の面に対して垂直方向への最大高さが、該平板状の面の水平方向への最大長さに対して1/10以下である、銀コート銅粉の製造方法である。
(8)本発明の第8の発明は、第7の発明において、前記銀コート銅粉は、銀被覆量が、銀被覆した銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%である、銀コート銅粉の製造方法である。
(9)本発明の第9の発明は、第1乃至第8のいずれかの発明に係る製造方法により得られた銀コート銅粉を、全体質量に対しての20質量%以上の割合で混合する工程を含む、金属フィラーの製造方法である。
(10)本発明の第10の発明は、第9の発明に係る製造方法により得られた金属フィラーを、バインダ樹脂と、溶剤と混練する工程を含む、導電性ペーストの製造方法である。
本発明に係る銀コート銅粉の製造方法によれば、容易かつ迅速な方法で、導電性ペーストや電磁波シールド等の金属フィラーとして使用したときに高い導電性を確保できる銀コート銅粉を的確に得ることができる。
以下、本発明に係る銀コート銅粉の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書にて、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.樹枝状銀コート銅粉≫
本実施の形態に係る銀コート銅粉は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したとき、直線的に成長した主幹とその主幹から分かれた複数の枝とを有する樹枝状の形状をなし(以下、本実施の形態に係る銀コート銅粉を「樹枝状銀コート銅粉」ともいう)、その主幹及び枝は、特定の断面平均厚さを有する平板状の銅粒子が集合して構成され、これら平板状の銅粒子の表面に銀が被覆されている銀コート銅粉である。
本実施の形態に係る銀コート銅粉は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したとき、直線的に成長した主幹とその主幹から分かれた複数の枝とを有する樹枝状の形状をなし(以下、本実施の形態に係る銀コート銅粉を「樹枝状銀コート銅粉」ともいう)、その主幹及び枝は、特定の断面平均厚さを有する平板状の銅粒子が集合して構成され、これら平板状の銅粒子の表面に銀が被覆されている銀コート銅粉である。
具体的に、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉においては、その主幹及び枝が、SEM観察より求められる断面平均厚さが0.02μm〜0.5μmの平板状の銅粒子が集合して構成されており、当該銀コート銅粉の平均粒子径(D50)が1.0μm〜100μmである。そして、この樹枝状銀コート銅粉では、平板状の銅粒子のその平板状の面に対して垂直方向への高さが、水平方向への最大長さに対して1/10以下となっており、垂直方向への成長を抑制した平滑な面を有することを特徴としている。
本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉は、詳しくは後述するが、例えば、銅イオンを含む硫酸酸性の電解液に陽極と陰極を浸漬し、直流電流を流して電気分解することにより陰極上に析出させて得られた銅粉の表面に銀を被覆することで作製することができる。
図1及び図2は、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉の具体的な形状を模式的に示した図である。図1に示すように、樹枝状銀コート銅粉1は、直線的に成長した主幹2とその主幹2から分かれた複数の枝3とを有する樹枝状の形状をなす。なお、樹枝状銀コート銅粉1における枝3は、主幹2から分岐した枝3a、3bだけでなく、その枝3a、3bからさらに分岐した枝の両方を意味する。
そして、上述したように、主幹2及び枝3は、SEM観察より求められる断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmの平板状の銅粒子が集合して構成されている。このような平板状の銅粒子が形成されることは、後述するように、銅粉を電解析出させるに際して電解液中に添加した特定の添加剤が銅粒子の表面に吸着することで成長を抑制され、その結果として平板状に成長するものと考えられる。なお、このような平板状の銅粒子の表面に銀が被覆されることによって、銀コート銅粉1が構成されている。
ところが、例えば図2に示す平板状の面に対して垂直方向(図2中のZ方向)にも銅粉の成長が生じると、それぞれ成長した枝の銅粒子自体は平板状となるものの、垂直方向にも銅粒子が突起のように成長した銅粉が形成される。なお、図2は、平板状の面に水平な方向(平板方向)とその平板状の面に対して垂直な方向を示す図であり、平板方向とはX−Y方向を示し、垂直方向とはZ方向を示す。
銅粒子が垂直方向に成長すると、例えばその銅粉に基づいて作製された銀コート銅粉を導電性ペーストや導電塗料等の用途に利用した場合に、その垂直方向への銅粒子の成長により銅粉が嵩高くなるために充填密度が得られなくなり、導電性を十分に確保できなくなる問題が発生する。
これに対して、本実施の形態に係る銀コート銅粉1では、平板状の面に対して垂直方向への成長を抑制して、ほぼ平滑な面を有する銅粉となっている。具体的に、図2に示すように、銀コート銅粉1は、平板状の面に対して垂直方向への最大高さ(図2中の符号「5」)が、平板状の面の水平方向への長尺となる最大長さ(図2中の符号「4」)に対して1/10以下になる。なお、平板状の面に対して垂直方向への最大高さ5とは、平板状の面の厚さではなく、例えば平板状の面に突起が形成されている場合はその突起の高さであり、平板状の「面」を基準として厚さ方向とは逆方向の“高さ”のことを意味する。また、平板状の面に対して水平方向への最大長さ4とは、平板状の面の長軸長さを意味する。
ここで図3は、後述する実施例1にて得られた樹枝状銀コート銅粉についてのSEM(倍率5000倍)で観察したときの写真図である。この写真図に示されるように、平板状の面に対して垂直方向への成長が抑制されて、ほぼ平滑な面を有する樹枝状であって平板な銅粉となっていることが分かる。
このような垂直方向への成長が抑制された平板な銀コート銅粉1であることにより、銅粉同士の接触面積を大きく確保することができる。そして、その接触面積が大きくなることで、低抵抗、すなわち高導電率を実現することができる。このことにより、より一層に導電性に優れ、またその導電性を良好に維持することができ、導電性塗料や導電性ペーストの用途に好適に用いることができる。また、樹枝状銀コート銅粉1が平板状の銅粒子が集合して構成されていることにより、配線材等の薄型化にも貢献することができる。
上述したように、樹枝状銀コート銅粉1において主幹2及び枝3を構成する、銀が被覆された平板状の銅粒子1は、その断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmである。銀が被覆された平板状の銅粒子の断面平均厚さは、より薄い方が平板としての効果が発揮されることになる。すなわち、断面平均厚さが5.0μm以下である銀が被覆された平板状の銅粒子によって主幹2及び枝3が構成されることで、銅粒子同士、またそれにより構成される樹枝状銀コート銅粉1同士が接触する面積を大きく確保することができる。
なお、銀が被覆された平板状の銅粒子の断面平均厚さは、薄くなればなるほど、樹枝状銀コート銅粉1同士が接触する際における接点の数が少なくなってしまう。銀が被覆された銅粒子の断面平均厚さが0.02μm以上あれば、十分な接点の数を確保することができ、より好ましくは0.2μm以上であり、これにより接点の数を有効に増やすことができる。
また、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1においては、その平均粒子径(D50)が1.0μm〜100μmである。平均粒子径は、後述する電解条件を変更することで制御可能である。また、必要に応じて、ジェットミル、サンプルミル、サイクロンミル、ビーズミル等の機械的な粉砕や解砕を付加することによって、所望とする大きさにさらに調整することが可能である。なお、平均粒子径(D50)は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定することができる。
ここで、例えば特許文献1でも指摘されているように、樹枝状銀コート銅粉の問題点としては、導電性ペーストや電磁波シールド用の樹脂等の金属フィラーとして利用する場合に、樹脂中の金属フィラーが樹枝状に発達した形状であることにより、樹枝状の銅粉同士が絡み合って凝集が発生し、樹脂中に均一に分散しないことが挙げられる。また、その凝集により、ペーストの粘度が上昇して印刷による配線形成に問題が生じる。このことは、樹枝状銀コート銅粉の形状(粒子径)が大きいために発生するものであり、樹枝状の形状を有効に活かしながらこの問題を解決するためには、樹枝状銀コート銅粉の形状を小さくすることが必要となる。ところが、樹枝状銀コート銅粉の粒子径を小さくし過ぎると、その樹枝状形状を確保することができなくなる。そのため、樹枝状形状であることの効果、すなわち3次元的形状であることにより表面積が大きく成形性や焼結性に優れ、また枝状の箇所を介して強固に連結されて高い強度で成形できるという効果を確保するには、樹枝状銀コート銅粉が所定以上の大きさであることが必要となる。
この点において、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1では、その平均粒子径が1.0μm〜100μmであることにより、表面積が大きくなり、良好な成形性や焼結性を確保することができる。そして、この樹枝状銀コート銅粉1では、樹枝状の形状であることに加えて、主幹2及び枝3が平板状の銅粒子1の集合体により構成されているため、樹枝状であることの3次元的効果と、その樹枝状の形状を構成する銅粒子1が平板状であることの効果により、銅粉同士の接点をより多く確保することができる。
平板状の銀コート銅粉を作製する方法として、特許文献2や特許文献3に記載されているように、機械的な方法により平板状にする方法が示されている。この機械的な方法では、例えば球状銅粉を平板状にする場合には、機械的加工時に銅の酸化を防止する必要があるため、脂肪酸を添加し、空気中あるいは不活性雰囲気中で粉砕することによって平板状に加工している。しかしながら、完全に酸化を防止することができないことや、加工時に添加している脂肪酸がペースト化するときに分散性に影響を及ぼす場合があるため、加工終了後に除去することが必要となるが、その脂肪酸が機械加工時の圧力で銅表面に強固に固着する場合があり、完全に除去できないという問題が発生し、導電性ペーストや電磁波シールド用の樹脂等の金属フィラーとして利用する場合に酸化被膜や脂肪酸の付着が抵抗を大きくする原因となる。
これに対して、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1は、機械的な加工を行うことなく直接電解によって成長させて平板の形状にすることができるため、これまでの機械的な方法で問題となっていた酸化の問題や脂肪酸の残留による問題は発生せず、表面状態が良好な銅粉となり、電気導電性としては極めて良好な状態とすることができ、導電性ペーストや電磁波シールド用の樹脂等の金属フィラーとして利用する場合に低抵抗を実現できる。なお、この樹枝状銀コート銅粉1の製造方法については後で詳述する。
また、さらに低抵抗を実現するためには、金属フィラーの充填率が問題となる。より充填率を高めるためには平板状の樹枝状銀コート銅粉の平滑性が必要となる。つまり、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1の形態は、平板状の面に対して垂直方向への最大高さが、平板状の面に対して水平な方向への最大長さに対して1/10以下であることにより、平滑性が高く充填率が上昇すると共に、銅粉同士の面での接点が増加するため、さらに低抵抗が実現できる。
≪2.銀被覆量≫
本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1は、上述したように、断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmの平板状であって表面に銀が被覆されている銅粒子によって樹枝状に構成されたものである。以下に、銀コート銅粉の表面に対する銀被覆について説明する。
本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1は、上述したように、断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmの平板状であって表面に銀が被覆されている銅粒子によって樹枝状に構成されたものである。以下に、銀コート銅粉の表面に対する銀被覆について説明する。
樹枝状銀コート銅粉1は、銀被覆する前の樹枝状銅粉に、好ましくは銀被覆した当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%の割合で銀が被覆されたものであり、銀の厚さ(被覆厚み)としては0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下の極薄い被膜である。このことから、樹枝状銀コート銅粉1は、銀被覆する前の樹枝状銅粉の形状をそのまま保持した形状になる。したがって、銀を被覆する前の銅粉の形状と、銅粉に銀を被覆した後の銀コート銅粉の形状とは、両者共に樹枝状の形状を有している。
樹枝状銀コート銅粉1における銀の被覆量は、上述したように、銀被覆した当該銀コート銅粉1全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。銀の被覆量は、コストの観点からはできるだけ少ない方が好ましいが、少なすぎると銅粉表面に均一な銀の被膜が確保できず、導電性の低下の原因になる。そのため、銀の被覆量としては、銀被覆した当該銀コート銅粉1全体の質量100%に対して1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、銀の被覆量が多くなるとコストの観点から好ましくなく、また必要以上に銀が銅粉表面に被覆されると、樹枝状銀コート銅粉1を構成する銅粒子の表面の微細な凸部がなくなってしまう可能性がある。このことから、銀の被覆量としては、銀被覆した当該銀コート銅粉1全体の質量100%に対して50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
また、樹枝状銀コート銅粉1において、樹枝状銅粉の表面に被覆する銀の平均厚みとしては0.001μm〜0.1μm程度であり、0.005μm〜0.02μmであることが好ましい。銀の被覆厚みが平均で0.001μm未満であると、銅粉の表面に均一な銀の被覆を確保することができず、また導電性の低下の原因となる。一方で、銀の被覆厚みが平均で0.1μmを超えると、コストの観点から好ましくない。
このように樹枝状銅粉の表面に被覆する銀の平均厚みは、0.1μm以下であり、銀を被覆する前の樹枝状銅粉を構成する平板状の銅粒子の断面平均厚さ(0.02μm〜5.0μm)と比べて小さい。そのため、樹枝状銅粉の表面を銀で被覆する前後で、平板状の銅粒子の断面平均厚さは実質的に変化することはない。
樹枝状銀コート銅粉1の嵩密度としては、特に限定されないが、0.5g/cm3〜5.0g/cm3の範囲であることが好ましい。嵩密度が0.5g/cm3未満であると、銀コート銅粉1同士の接点を十分に確保できない可能性がある。一方で、嵩密度が5.0g/cm3を超えると、樹枝状銀コート銅粉1の平均粒子径も大きくなってしまい、すると表面積が小さくなって成形性や焼結性が悪化することがある。
また、樹枝状銀コート銅粉1では、特に限定されないが、そのBET比表面積の値が0.2m2/g〜5.0m2/gであることが好ましい。BET比表面積値が0.2m2/g未満であると、銀が被覆された銅粒子が上述したような所望の形状とはならないことがあり、高い導電性が得られないことがある。一方で、BET比表面積値が5.0m2/gを超えると、樹枝状銀コート銅粉1の表面の銀被覆が不均一となり高い導電性が得られない可能性がある。また、銀コート銅粉1を構成する銅粒子が細かくなりすぎてしまい、銀コート銅粉が細かいひげ状の状態となって、導電性が低下することがある。なお、BET比表面積は、JIS Z8830:2013に準拠して測定することができる。
なお、電子顕微鏡で観察したときに、得られた銀コート銅粉のうちに、上述したような形状の樹枝状銀コート銅粉が所定の割合で占められていれば、それ以外の形状の銀コート銅粉が混じっていても、その樹枝状銀コート銅粉のみからなる銅粉と同様の効果を得ることができる。具体的には、電子顕微鏡(例えば500倍〜20,000倍)で観察したときに、上述した形状の樹枝状銀コート銅粉が全銀コート銅粉のうちの80個数%以上、好ましくは90個数%以上の割合を占めていれば、その他の形状の銀コート銅粉が含まれていてもよい。
≪3.銀コート銅粉の製造方法≫
次に、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1の製造方法について説明する。以下では、樹枝状銀コート銅粉を構成する樹枝状銅粉の製造する工程、分光光度計により測定した前記銅粉の反射率と、所定の基準反射率とにより銅粉の品質を検査する工程、樹枝状銅粉に対して銀を被覆して樹枝状銀コート銅粉を得る工程、の順に説明する。
次に、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1の製造方法について説明する。以下では、樹枝状銀コート銅粉を構成する樹枝状銅粉の製造する工程、分光光度計により測定した前記銅粉の反射率と、所定の基準反射率とにより銅粉の品質を検査する工程、樹枝状銅粉に対して銀を被覆して樹枝状銀コート銅粉を得る工程、の順に説明する。
<3−1.銅粉の製造工程>
本実施の形態に係る樹枝状銅粉は、例えば、銅イオンを含有する硫酸酸性溶液を電解液として用いて所定の電解法により製造することができる。
本実施の形態に係る樹枝状銅粉は、例えば、銅イオンを含有する硫酸酸性溶液を電解液として用いて所定の電解法により製造することができる。
電解に際しては、例えば、金属銅を陽極(アノード)とし、ステンレス板やチタン板等を陰極(カソード)として設置した電解槽中に、上述した銅イオンを含有する硫酸酸性の電解液を収容し、その電解液に所定の電流密度で直流電流を通電することによって電解処理を施す。これにより、通電に伴って陰極上に微細な樹枝状銅粉を析出(電析)させることができる。特に、本実施の形態においては、銅イオン源となる水溶性銅塩を含有する硫酸酸性の電解液に特定の添加剤とノニオン界面活性剤と塩化物イオンとを添加することで、平板状の銅粒子が集合して構成された平板状の樹枝状銅粉を析出させることができる。
なお、本実施の形態に係る製造方法では、後述するように、銅粉が製造されたのち、その銅粉が、品質を検査する工程に供されて品質が管理されることから、特定の添加剤やノニオン界面活性剤や塩化物イオンのいずれか、もしくは全てを含有させていない硫酸酸性の電解液から析出させた樹枝状銅粉であってもよい。
(1)銅イオン
水溶性銅塩は、銅イオンを供給する銅イオン源であり、例えば硫酸銅五水和物等の硫酸銅、硝酸銅等が挙げられるが特に限定されない。また、酸化銅を硫酸溶液で溶解して硫酸酸性溶液にしてもよい。電解液中での銅イオン濃度としては、1g/L〜20g/L程度、好ましくは5g/L〜10g/L程度とすることができる。
水溶性銅塩は、銅イオンを供給する銅イオン源であり、例えば硫酸銅五水和物等の硫酸銅、硝酸銅等が挙げられるが特に限定されない。また、酸化銅を硫酸溶液で溶解して硫酸酸性溶液にしてもよい。電解液中での銅イオン濃度としては、1g/L〜20g/L程度、好ましくは5g/L〜10g/L程度とすることができる。
(2)硫酸
硫酸は、硫酸酸性の電解液とするためのものである。電解液中の硫酸の濃度としては、遊離硫酸濃度として20g/L〜300g/L程度、好ましくは50g/L〜150g/L程度とすることができる。この硫酸濃度は、電解液の電導度に影響するため、カソード上に得られる銅粉の均一性に影響する。
硫酸は、硫酸酸性の電解液とするためのものである。電解液中の硫酸の濃度としては、遊離硫酸濃度として20g/L〜300g/L程度、好ましくは50g/L〜150g/L程度とすることができる。この硫酸濃度は、電解液の電導度に影響するため、カソード上に得られる銅粉の均一性に影響する。
(3)添加剤
添加剤としては、フェナジン構造を有する化合物からなる群、アゾベンゼン構造を有する化合物からなる群、及びフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群のそれぞれの群から選択される化合物を少なくとも1種類以上を用いる。もちろん異なる群から選択される分子構造の異なる化合物を2種類以上併せて用いてもよい。本実施の形態においては、このような添加剤を、後述するノニオン界面活性剤と共に電解液に添加することによって、平板状の面に対して垂直方向への成長を抑えた銅粉、すなわち平滑な面を有する銅粉を製造することができる。
添加剤としては、フェナジン構造を有する化合物からなる群、アゾベンゼン構造を有する化合物からなる群、及びフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群のそれぞれの群から選択される化合物を少なくとも1種類以上を用いる。もちろん異なる群から選択される分子構造の異なる化合物を2種類以上併せて用いてもよい。本実施の形態においては、このような添加剤を、後述するノニオン界面活性剤と共に電解液に添加することによって、平板状の面に対して垂直方向への成長を抑えた銅粉、すなわち平滑な面を有する銅粉を製造することができる。
フェナジン構造を有する化合物、アゾベンゼン構造を有する化合物、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群から選択される添加剤の電解液中の濃度としては、添加する化合物の合計で1〜1000mg/L程度とすることが好ましい。
(フェナジン構造を有する化合物)
フェナジン構造を有する化合物は、下記式(1)によって表わすことができる。本実施の形態においては、下記式(1)で表されるフェナジン構造を有する化合物の1種類又は2種類以上を添加剤として含有させることができる。
ここで、式(1)中において、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8、R9は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SO3H、SO3塩、SO3エステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基である。また、R5は、水素、ハロゲン、アミノ、OH、−O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SO3H、SO3塩、SO3エステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択された基である。また、A−は、ハライドアニオンである。
フェナジン構造を有する化合物は、下記式(1)によって表わすことができる。本実施の形態においては、下記式(1)で表されるフェナジン構造を有する化合物の1種類又は2種類以上を添加剤として含有させることができる。
具体的に、フェナジン構造を有する化合物としては、例えば、5−メチルフェナジン−5−イウム、エルギノシンB、アエルギノシンA、5−エチルフェナジン−5−イウム、3,7−ジアミノ−5−フェニルフェナジン−5−イウム、5−エチルフェナジン−5−イウム、5−メチルフェナジン−5−イウム、3−アミノ−5−フェニル−7−(ジエチルアミノ)フェナジン−5−イウム、2,8−ジメチル−3,7−ジアミノ−5−フェニルフェナジン−5−イウム、1−メトキシ−5−メチルフェナジン−5−イウム、3−アミノ−7−(ジメチルアミノ)−1,2−ジメチル−5−(3−スルホナトフェニル)フェナジン−5−イウム、1,3−ジアミノ−5−メチルフェナジン−5−イウム、1,3−ジアミノ−5−フェニルフェナジン−5−イウム、3−アミノ−7−(ジエチルアミノ)−2−メチル−5−フェニルフェナジン−5−イウム、3,7−ビス(ジエチルアミノ)−5−フェニルフェナジン−5−イウム、2,8−ジメチル−3,7−ジアミノ−5−(4−メチルフェニル)フェナジン−5−イウム、3−(メチルアミノ)−5−メチルフェナジン−5−イウム、3−ヒドロキシ−7−(ジエチルアミノ)−5−フェニルフェナジン−5−イウム、5−アゾニアフェナジン、1−ヒドロキシ−5−メチルフェナジン−5−イウム、4H,6H−5−フェニル−3,7−ジオキソフェナジン−5−イウム、アニリノアポサフラニン、フェノサフラニン、ニュートラルレッド等が挙げられる。
(アゾベンゼン構造を有する化合物)
アゾベンゼン構造を有する化合物は、下記式(2)によって表わすことができる。本実施の形態においては、下記式(2)で表されるアゾベンゼン構造を有する化合物の1種類又は2種類以上を添加剤として含有させることができる。
アゾベンゼン構造を有する化合物は、下記式(2)によって表わすことができる。本実施の形態においては、下記式(2)で表されるアゾベンゼン構造を有する化合物の1種類又は2種類以上を添加剤として含有させることができる。
ここで、式(2)中において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SO3H、SO3塩、SO3エステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。
具体的に、アゾベンゼン構造を有する化合物としては、例えば、アゾベンゼン、4−アミノアゾベンゼン−4’−スルホン酸、4−(ジメチルアミノ)−4’−(トリフルオロメチル)アゾベンゼン、C.I.アシッドレッド13、マーキュリーオレンジ、2’,4’−ジアミノ−5’−メチルアゾベンゼン−4−スルホン酸ナトリウム、メチルレッド、メチルイエロー、メチルオレンジ、アゾベンゼン−2,4−ジアミン、アリザリンイエローGG、4−ジメチルアミノアゾベンゼン、オレンジI、サラゾスルファピリジン、4−(ジエチルアミノ)アゾベンゼン、オレンジOT、3−メトキシ−4−アミノアゾベンゼン、4−アミノアゾベンゼン、N,N,2−トリメチルアゾベンゼン−4−アミン、4−ヒドロキシアゾベンゼン、スダンI、4−アミノ−3,5−ジメチルアゾベンゼン、N,N−ジメチル−4−[(キノリン−6−イル)アゾ]ベンゼンアミン、o−アミノアゾトルエン、アリザリンイエローR、4’−(アミノスルホニル)−4−ヒドロキシアゾベンゼン−3−カルボン酸、コンゴーレッド、バイタルレッド、メタニルイエロー、オレンジII、ディスパースオレンジ3、C.I.ダイレクトオレンジ39、2,2’−ジヒドロキシアゾベンゼン、アゾベンゼン−4,4’−ジオール、ナフチルレッド、5−フェニルアゾベンゼン−2−オール、2,2’−ジメチルアゾベンゼン、C.I.モルダントイエロー12、モルダントイエロー10、アシッドイエロー、ディスパースブルー、ニューイエローRMF、ビストラミンブラウンG等が挙げられる。
(フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物)
フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物は、下記式(3)によって表わすことができる。本実施の形態においては、下記式(3)で表されるフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物の1種類又は2種類以上を添加剤として含有させることができる。
フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物は、下記式(3)によって表わすことができる。本実施の形態においては、下記式(3)で表されるフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物の1種類又は2種類以上を添加剤として含有させることができる。
ここで、式(3)中において、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SO3H、SO3塩、SO3エステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基である。また、R3は、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SO3H、SO3塩、SO3エステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。また、A−は、ハライドアニオンである。
具体的に、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物としては、例えば、3−(ジエチルアミノ)−7−[(4−ヒドロキシフェニル)アゾ]−2,8−ジメチル−5−フェニルフェナジン−5−イウム、3−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]アゾ]−7−(ジエチルアミノ)−5−フェニルフェナジン−5−イウム、ヤヌスグリーンB、3−アミノ−7−[(2,4−ジアミノフェニル)アゾ]−2,8−ジメチル−5−フェニルフェナジン−5−イウム、2,8−ジメチル−3−アミノ−5−フェニル−7−(2−ヒドロキシ−1−ナフチルアゾ)フェナジン−5−イウム、3−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]アゾ]−7−(ジメチルアミノ)−5−フェニルフェナジン−5−イウム、3−アミノ−7−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]アゾ]−5−フェニルフェナジン−5−イウム、2−(ジエチルアミノ)−7−[4−(メチルプロパルギルアミノ)フェニルアゾ]−9−フェニル−9−アゾニア−10−アザアントラセン、2−(ジエチルアミノ)−7−[4−(メチル4−ペンチニルアミノ)フェニルアゾ]−9−フェニル−9−アゾニア−10−アザアントラセン、2−(ジエチルアミノ)−7−[4−(メチル2,3−ジヒドロキシプロピルアミノ)フェニルアゾ]−9−フェニル−9−アゾニア−10−アザアントラセン等が挙げられる。
(4)界面活性剤
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤を含有させる。本実施の形態においては、上述した添加剤と共にノニオン界面活性剤を電解液中に添加することによって、平板状の面に対して垂直方向への成長を抑えた銅粉、すなわち平滑な面を有する銅粉を製造することができる。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤を含有させる。本実施の形態においては、上述した添加剤と共にノニオン界面活性剤を電解液中に添加することによって、平板状の面に対して垂直方向への成長を抑えた銅粉、すなわち平滑な面を有する銅粉を製造することができる。
ノニオン界面活性剤としては、1種類単独で又は2種類以上を併せて用いることができ、電解液中の濃度としては合計で1〜10000mg/L程度とすることができる。
ノニオン界面活性剤の数平均分子量としては、特に限定されないが、100〜200000であることが好ましく、200〜15000であることがより好ましく、1000〜10000であることがさらに好ましい。数平均分子量が100未満の界面活性剤であると、樹枝状を呈しない微細な電解銅粉が析出される可能性がある。一方で、数平均分子量が200000を超える界面活性剤であると、平均粒子径の大きな電解銅粉が析出して、比表面積が0.2m2/g未満の樹枝状銅粉しか得られない可能性がある。なお、本実施の形態において、数平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求めたポリスチレン換算の分子量とする。
ノニオン界面活性剤の種類としては、特に限定されないが、エーテル基を有する界面活性剤であることが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンイミン、プルロニック型界面活性剤、テトロニック型界面活性剤、ポリオキシエチレングリコール・グリセリンエーテル、ポリオキシエチレングリコール・ジアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール・アルキルエーテル、芳香族アルコールアルコキシレート、下記(x)式で表される高分子化合物等が挙げられ、これらのノニオン界面活性剤を1種単独で、又は2種以上を併せて用いることができる。
より具体的に、ポリエチレングリコールとしては、例えば下記式(i)で表されるものを用いることができる。
(式(i)中、n1は、1〜120の整数を示す。)
また、ポリプロピレングリコールとしては、例えば下記式(ii)で表されるものを用いることができる。
(式(ii)中、n1は、1〜90の整数を示す。)
また、ポリエチレンイミンとしては、例えば下記式(iii)で表されるものを用いることができる。
(式(iii)中、n1は、1〜120の整数を示す。)
また、プルロニック型界面活性剤としては、例えば下記式(iv)で表されるものを用いることができる。
(式(iv)中、n2及びl2は1〜30の整数を、m2は10〜100の整数を示す。)
また、テトロニック型界面活性剤としては、例えば下記式(v)で表されるものを用いることができる。
(式(v)中、n3は1〜200の整数を、m3は1〜40の整数を示す。)
また、ポリオキシエチレングリコール・グリセリルエーテルとしては、例えば下記式(vi)で表されるものを用いることができる。
(式(vi)中、n4、m4、及びl4はそれぞれ1〜200の整数を示す。)
また、ポリオキシエチレングリコール・ジアルキルエーテルとしては、例えば下記式(vii)で表されるものを用いることができる。
(式(vii)中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を示し、n5は2〜200の整数を示す。)
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール・アルキルエーテルとしては、例えば下記式(viii)で表されるものを用いることができる。
(式(viii)中、R3は水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を示し、m6又はn6は2〜100の整数を示す。)
また、芳香族アルコールアルコキシレートとしては、例えば下記式(ix)で表されるものを用いることができる。
(式(ix)中、m7は1〜5の整数、n7は1〜120の整数を示す。)
また、下記(x)式で表される高分子化合物を用いることができる。
(式(x)中、R1は、炭素数5〜30の高級アルコールの残基、炭素数1〜30のアルキル基を有するアルキルフェノールの残基、炭素数1〜30のアルキル基を有するアルキルナフトールの残基、炭素数3〜25の脂肪酸アミドの残基、炭素数2〜5のアルキルアミンの残基、又は水酸基を示す。また、R2及びR3は、水素原子又はメチル基を示す。また、m及びnは、1〜100の整数を示す。)
(5)塩化物イオン
塩化物イオンとしては、塩酸、塩化ナトリウム等の塩化物イオンを供給する化合物(塩化物イオン源)を電解液中に添加することによって含有させることができる。塩化物イオンは、上述した添加剤やノニオン界面活性剤と共に、析出する銅粉の形状制御に寄与する。電解液中の塩化物イオン濃度としては、特に限定されないが、1mg/L〜500mg/L程度とすることができる。
塩化物イオンとしては、塩酸、塩化ナトリウム等の塩化物イオンを供給する化合物(塩化物イオン源)を電解液中に添加することによって含有させることができる。塩化物イオンは、上述した添加剤やノニオン界面活性剤と共に、析出する銅粉の形状制御に寄与する。電解液中の塩化物イオン濃度としては、特に限定されないが、1mg/L〜500mg/L程度とすることができる。
樹枝状銅粉の製造方法においては、例えば、上述したような組成の電解液を用いて電解することによって陰極上に銅粉を析出生成させて製造する。電解方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、電流密度としては、硫酸酸性の電解液を用いて電解するにあたっては3A/dm2〜30A/dm2の範囲とすることが好ましく、電解液を攪拌しながら通電させる。また、電解液の液温(浴温)としては、例えば20℃〜60℃程度とすることができる。
上記説明したように、本実施の形態において、樹枝状銅粉は、銅イオンと、フェナジン構造を有する化合物からなる群、アゾベンゼン構造を有する化合物からなる群、及びフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群のそれぞれから選択される少なくとも1種以上、もしくは異なる群から選択される2種以上である添加剤と、ノニオン界面活性剤と、塩化物イオン等の成分を含有する硫酸酸性溶液を電解液として、電解法により陰極上に析出させて製造される。
したがって、電解液中の銅イオンは、電解による析出で消費されるため、銅イオン濃度は電解の時間経過と共に低下していく。また、添加剤やノニオン界面活性剤等の有機化合物は、電解により直接的に、又はその反応副生成物を介して間接的に、分解、消耗することもある。さらに、析出した銅粉を電解液から取り出す際に、これら電解液中の各成分が銅粉に付着して電解槽外に排出されることもある。このように、電解液中の各成分の濃度は、様々な要因で低下していくことから、銅粉が所望の樹枝状形状となるように管理幅を決めて、適宜各成分を補充することが一般的に行われる。
<3−2.銅粉の品質を検査する工程>
ここで、銅粉の形状と、これを金属フィラーとして用いた導電性ペーストより得られる被膜や電磁波シールド等の電気抵抗とは密接な関係がある。そのため、金属フィラーに用いられる銅粉(銀コート銅粉)の形状を適切に管理することは、品質保証の上で極めて重要である。これは、上記説明した通り、優れた導電性(低い電気抵抗)を得るためには、銅粉同士を面で接触させて、広い面積による接触で接点抵抗を低く抑えることが必要となるが、銅粉同士を面で接触させるためには銅粉の形状が特に重要であり、本実施の形態における銅粉のように、平板状の銅粒子が集合した樹枝状形状であれば、銅粉同士を面で接触させるのに極めて有利である。
ここで、銅粉の形状と、これを金属フィラーとして用いた導電性ペーストより得られる被膜や電磁波シールド等の電気抵抗とは密接な関係がある。そのため、金属フィラーに用いられる銅粉(銀コート銅粉)の形状を適切に管理することは、品質保証の上で極めて重要である。これは、上記説明した通り、優れた導電性(低い電気抵抗)を得るためには、銅粉同士を面で接触させて、広い面積による接触で接点抵抗を低く抑えることが必要となるが、銅粉同士を面で接触させるためには銅粉の形状が特に重要であり、本実施の形態における銅粉のように、平板状の銅粒子が集合した樹枝状形状であれば、銅粉同士を面で接触させるのに極めて有利である。
銅粉の形状は、電解液中の各成分の濃度のバランスに依存するものである。そのため、各成分の濃度管理幅を設定して適切に管理した場合でも、必ずしも得られる銅粉の形状が管理された状態にあるとは限られない。
そこで、本実施の形態に係る製造方法においては、得られた銅粉に銀を被覆する前に、銅粉の品質を検査する工程を有する。銅粉の品質とは、代表的にはその銅粉の形状が挙げられる。以下に、銅粉の品質(銅粉の形状)を検査する工程について、詳しく説明する。
具体的に、銅粉の品質を検査する工程は、銅粉をスラリー化する工程と、そのスラリー中の銅粉を沈降させる工程と、分光光度計を用いて沈降した銅粉の反射率を測定する工程と、銅粉の形状を判定する工程と、を含む。
<3−2−1.銅粉をスラリー化する工程>
銅粉をスラリー化する工程(以下、「銅粉スラリー化工程」ともいう)では、電解法により析出生成して得られた銅粉を水中に分散させ、銅粉の水スラリーとする。
銅粉をスラリー化する工程(以下、「銅粉スラリー化工程」ともいう)では、電解法により析出生成して得られた銅粉を水中に分散させ、銅粉の水スラリーとする。
電解法により陰極上に析出した銅粉は、陰極から掻き落として回収される。この回収された銅粉には、電解液の各成分が付着しており、後述する銅粉の反射率に影響する可能性があるため、洗浄処理を施すようにしてもよい。なお、洗浄処理としては、銅粉を洗浄液中に分散させ、撹拌しながら洗浄を行うことができる。洗浄液には、酸性溶液を用いても、純水を用いてもよく、洗浄後に銅粉のろ過、分離と、水洗とを適宜繰り返す。例えば、このように水洗の操作を繰り返すことによって、水中に銅粉が分散した水スラリーを得ることができる。なお、ろ過、分離と、水洗については、公知の方法を用いればよい。
<3−2−2.スラリー中の銅粉を沈降させる工程>
スラリー中の銅粉を沈降させる工程(以下、「沈降工程」ともいう)では、銅粉のスラリーを分取して分光光度計に装填できる測定セルに移送し、スラリー中の銅粉を沈降(充填)させる。
スラリー中の銅粉を沈降させる工程(以下、「沈降工程」ともいう)では、銅粉のスラリーを分取して分光光度計に装填できる測定セルに移送し、スラリー中の銅粉を沈降(充填)させる。
測定セルは、分光光度計に応じて適切に選択すればよいが、後述するように測定セルに充填された銅粉を固定化する工程での処理として遠心分離を採用する場合には、キャップ付きの測定セルを用いることが好ましく、スクリューキャップ付きの測定セルを用いることがより好ましい。キャップ付きの測定セルとすることで、遠心分離の操作を容易とすることができる。
沈降させる操作としては、デカンテーション等の公知の方法を用いればよい。後述するように、銅粉の反射率を分光光度計で測定するためには、装置に応じた所定の試料量が必要となる。1回の移送で必要量を確保できればよいが、1回の移送で必要量を確保できない場合には、溶媒である上澄み液を廃棄して、さらにスラリーを分取して測定セル内に追加で移送してから銅粉を沈降させる一連の操作を繰り返して、測定セルの底部に沈降して充填された銅粉の高さが分光光度計による測定に必要とされる量とする。
測定セルの底部に沈降(充填)した銅粉は、固定化させることが好ましい。測定セルの底部に沈降した銅粉を固定化することで、測定セルを輸送したり分光光度計に装填したりするときの振動等で銅粉が溶媒中に再分散することを防止することができ、さらに固定化により充填状態が均一化して密度も増すため、反射率の測定精度を向上させることができる。
固定化の方法としては、銅粉がさらに密に充填されればいずれの方法を用いてもよいが、遠心分離機に測定セルを装填して遠心分離により固定化することが好ましい。
なお、遠心分離の条件は、銅粉が容易に再分散せず、均一かつ密に充填されれば適宜設定すればよいが、例えば回転数を500rpm〜5000ppmとし、回転させる時間を10秒〜10分とした条件とすることができる。
<3−2−3.銅粉の反射率を測定する工程>
銅粉の反射率を測定する工程(以下、「反射率測定工程」ともいう)では、銅粉を固定化した測定セルを分光光度計に装填し、特定の波長における銅粉の反射率を測定する。
銅粉の反射率を測定する工程(以下、「反射率測定工程」ともいう)では、銅粉を固定化した測定セルを分光光度計に装填し、特定の波長における銅粉の反射率を測定する。
特定の波長における銅粉の反射率は、銅粉の材料が持つ固有の反射率に幾何学的な形状の影響が加味されたものとなる。具体的には、表面が平滑で平面を有する銅粉であればその反射率は高くなり、表面の凹凸が激しい銅粉であればその反射率は低くなる。したがって、このように反射率測定工程を設けることにより、板状、鱗片状、フレーク状等の比較的平面を多く有する銅粉や、それらが集合した樹枝状の形状を持つとされる銅粉が、所望の形状を有しているか否かを有効に評価することができる。
銅粉の反射率の測定に用いられる波長(測定波長)は、300nm〜500nmの紫外から可視光の領域とすることが好ましい。なお、以下では、測定波長が300nm〜500nmの反射率を「紫外可視反射率」ということもある。
例えば、バルクの銅の反射率は、波長が600nm以上の領域では80%程度以上と高いが、波長が500nm以下の領域では低下し、波長500nmでは50%程度、波長300nmでは30%程度とそれほど高くはない。バルクの銅で反射率が50%程度以下となる領域では幾何学的な形状の影響を受けやすくなり、平板状の粒子は入射光を反射させやすいことから、平板状の銅粒子が集合した樹枝状形状が発達するに従って反射率が高くなる傾向があり、銅粉の形状を検査するのに適している。一方、バルクの銅で反射率が高い波長の領域では、平板状の粒子でなくても反射率は高くなり、銅粉の形状の違いに対する反射率の差は小さく感度が低下するため、品質検査に用いるには適さない。
よって、測定波長の上限としては、500nm以下が好ましい。なお、測定波長の下限としては、特に限定されることはないが、広く用いられている紫外可視分光光度計の測定波長の仕様を鑑みて、300nm以上であれば銅粉の形状を有効に検査することができる。もちろん、測定波長を例えば200nmや250nmとして、銅粉を検査する工程の測定に用いることを妨げるものではない。
測定に用いられる分光光度計は、上記説明した通りの選択した測定波長の範囲を測定できる仕様であれば、市販の装置を適宜選択すればよく、例えば、紫外可視分光光度計を用いることができる。
ここで、反射率(%)は、次式により求められる、分光光度計に付属されている基準となる標準白板に対する相対反射率とすることが好ましい。
反射率(相対反射率)(%)
=(銅粉で反射した光量/標準白板で反射した光量)×100
反射率(相対反射率)(%)
=(銅粉で反射した光量/標準白板で反射した光量)×100
<3−2−4.銅粉の形状を判定する工程>
以上の通り、幾何学的に反射させやすい形状を有する銅粉ほど反射率は高くなる。したがって、本実施の形態に係る銀コート銅粉の製造方法では、測定された銅粉の反射率と、予め定められた所定の基準反射率とに基づき、銅粉が所望の形状を有しているか否かの判定を行って、銅粉の品質を検査し、品質の管理を行う。以下、銅粉の形状を判定する工程を、「形状判定工程」ともいう。
以上の通り、幾何学的に反射させやすい形状を有する銅粉ほど反射率は高くなる。したがって、本実施の形態に係る銀コート銅粉の製造方法では、測定された銅粉の反射率と、予め定められた所定の基準反射率とに基づき、銅粉が所望の形状を有しているか否かの判定を行って、銅粉の品質を検査し、品質の管理を行う。以下、銅粉の形状を判定する工程を、「形状判定工程」ともいう。
電解法により析出された銅粉では、上記説明した方法で測定波長300nm〜500nmとして紫外可視反射率を測定すると、5%〜35%程度の反射率を示す。そこで、形状判定工程では、例えば、測定波長400nmに対しては、基準反射率を9%とし、測定した銅粉の反射率が9%以上であるか否かを判定する。このことによって、反射率9%以上の銅粉は、平面上の面が発達した粒子形状であると判定することができる。
測定波長400nmでの銅粉の反射率の上限は、特に限定されるものではなく、バルクの銅の波長400nmでの反射率は40%程度であり、銅粉では実質的に30%以下となる。
また同様に、測定波長300nmに対しては、基準反射率を7.5%とし、測定した銅粉の反射率が7.5%以上であるか否かを判定する。このことによって、反射率7.5%以上の銅粉は、平面上の面が発達した粒子形状であると判定することができる。
測定波長300nmでの銅粉の反射率の上限は、特に限定されるものではなく、銅粉では実質的に25%以下となる。
また同様に、測定波長500nmに対しては、基準反射率を10%とし、測定した銅粉の反射率が10%以上であるか否かを判定する。このことによって、反射率10%以上の銅粉は、平面上の面が発達した粒子形状であると判定することができる。
測定波長500nmでの銅粉の反射率の上限は、特に限定されるものではなく、銅粉では実質的に35%以下となる。
なお、銅粉の品質基準(品質判定基準)として、所定の反射率に基づく基準を例示したが、これに限定されるものではない。
上述したように、樹枝状銅粉の形状と反射率との間には相関関係がある。そして、後述する実施例からも明らかなように、樹枝状銅粉(樹枝状銀コート銅粉)の形状と、その銅粉を導電性ペースト等に使用した場合の導電性とは相関関係がある。すなわち、例えば平板状の銅粒子が集合した樹枝状を呈する銅粉のうち、平板状の面が発達した粒子ほど、これらを金属フィラーとした導電性ペーストにより作製された被膜の比抵抗値(体積抵抗率)は低くなり、導電性が高くなる。したがって、測定波長を選択して基準反射率を設定し、測定した銅粉の反射率が基準反射率以上(又は超える)か否かを判定することにより、導電性ペースト等に用いる金属フィラーとしての品質(導電性)を満たすか否かの検査を行うことが可能となる。
このように、銅粉を分光光度計により測定し、測定される反射率を指標とすることによって、銅粉の品質を容易にかつ迅速に評価することができる。このことにより、銀コート銅粉を製造するに際しては、銅粉の表面に銀を被覆する工程に先立って、銅粉の品質を検査する工程を設けることにより、品質管理された銅粉を銀被覆処理に供することができる。その結果、得られた銀コート銅粉を導電性ペーストや電磁波シールド等の金属フィラーとして使用したときに、高い導電性を確保できる銀コート銅粉を的確に製造することができる。また、銀を被覆する前段において銅粉の品質を管理できるため、品質が劣る銅粉に対する銀の被覆操作を避けることができ、製造コストの低減にもつながる。
<3−3.銀を被覆する工程(銀コート銅粉の製造)>
本実施の形態においては、銅粉の品質を検査する工程で基準を満たした樹枝状銅粉の表面に銀を被覆する。例えば、還元型無電解めっき法や置換型無電解めっき法を用いて銀を被覆する。
本実施の形態においては、銅粉の品質を検査する工程で基準を満たした樹枝状銅粉の表面に銀を被覆する。例えば、還元型無電解めっき法や置換型無電解めっき法を用いて銀を被覆する。
樹枝状銅粉の表面に均一な厚みで銀を被覆するためには、銀めっきの前に洗浄を行うことが好ましく、樹枝状銅粉を洗浄液中に分散させ、撹拌しながら洗浄を行うことができる。この洗浄処理としては、酸性溶液中で行うのが好ましく、より好ましくは後述する還元剤にも用いられる多価カルボン酸を用いる。洗浄後には、樹枝状銅粉のろ過、分離と、水洗とを適宜繰り返して、水中に樹枝状銅粉が分散した水スラリーとする。なお、ろ過、分離と、水洗については、公知の方法を用いればよい。また、銀を被覆する工程で用いられる、銅粉が分散した水スラリーは、銅粉の品質を検査する工程で調整された水スラリーであってもよい。
具体的に、還元型無電解めっき法で銀コートする場合には、樹枝状銅粉を洗浄した後に得られた水スラリーに還元剤と銀イオン溶液を添加することによって、樹枝状銅粉の表面に銀を被覆させることができる。ここで、還元剤を水スラリーに予め添加して分散させた後に、その還元剤と樹枝状銅粉を含む水スラリーに銀イオン溶液を連続的に添加することによって、樹枝状銅粉の表面に銀をより均一に被覆させることができる。
還元剤としては、種々の還元剤を用いることができるが、銅の錯イオンを還元させることができない、還元力の弱い還元剤であることが好ましい。その弱い還元剤としては、還元性有機化合物を用いることができ、例えば、炭水化物類、多価カルボン酸及びその塩、アルデヒド類等を用いることができる。より具体的には、ぶどう糖(グルコース)、乳酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、グリコール酸、酒石酸ナトリウムカリウム、ホルマリン等が挙げられる。
樹枝状銅粉を含む水スラリーに還元剤を添加した後、十分に還元剤を分散させるために攪拌等を行うことが好ましい。また、水スラリーを所望のpHに調整するために、酸又はアルカリを適宜添加することができる。さらに、アルコール等の水溶性有機溶媒を添加することによって、還元剤である還元性有機化合物の分散を促進させてもよい。
連続的に添加する銀イオン溶液としては、銀めっき液として公知のものを用いることができるが、その中でも硝酸銀溶液を用いることが好ましい。また、硝酸銀溶液は、錯形成が容易であることから、アンモニア性硝酸銀溶液として添加するのがより好ましい。なお、アンモニア性硝酸銀溶液に用いるアンモニアは、硝酸銀溶液に添加したり、予め還元剤と共に水スラリーに添加して分散させておいたり、硝酸銀溶液とは別のアンモニア溶液として同時に水スラリーに添加したり、これらの組み合わせを含めていずれかの方法を用いればよい。
銀イオン溶液は、例えば樹枝状銅粉と還元剤とを含む水スラリーに添加するにあたり、比較的ゆっくりとした速度で徐々に添加することが好ましく、これにより均一な厚みの銀の被膜を樹枝状銅粉の表面に形成することができる。また、被膜の厚みの均一性を高めるためには、添加の速度を一定とすることがより好ましい。さらに、予め水スラリーに添加した還元剤等を別の溶液で調整して、銀イオン溶液と共に徐々に追加で添加するようにしてもよい。
このようにして、銀イオン溶液等を添加した水スラリーをろ過、分離して水洗を行い、その後乾燥させることで、樹枝状の銀コート銅粉1を得ることができる。これらのろ過以降の処理手段としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。
一方、置換型無電解めっき法で銀コートする方法は、銅と銀のイオン化傾向の違いを利用するものであり、溶液中で銅が溶解したときに発生する電子によって、溶液中の銀イオンを還元させて銅表面に析出させるものである。したがって、置換型の無電解銀めっき液は、銀イオン源として銀塩と、錯化剤と、伝導塩とが主要成分として構成されていれば銀コートが可能であるが、より均一に銀コートするためには必要に応じて界面活性剤、光沢剤、結晶調整剤、pH調整剤、沈殿防止剤、安定剤等を添加することができる。本実施の形態に係る銀コート銅粉の製造においても、そのめっき液としては特に限定されない。
より具体的に、銀塩としては、硝酸銀、ヨウ化銀、硫酸銀、ギ酸銀、酢酸銀、乳酸銀等を用いることができ、水スラリー中に分散した樹枝状銅粉と反応させることができる。めっき液中の銀イオン濃度としては、1g/L〜10g/L程度とすることができる。
また、錯化剤は、銀イオンと錯体を形成させるものであり、代表的なものとしてクエン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸等や、エチレンジアミン、グリシン、ヒダントイン、ピロリドン、コハク酸イミド等のN含有化合物、ヒドロキシエチリデン2ホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール、チオセミカルバジド等を用いることができる。めっき液中の錯化剤の濃度としては、10g/L〜100g/L程度とすることができる。
また、伝導塩としては、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、フタル酸等の有機酸、又はそれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等を用いることができる。めっき液中の伝導塩の濃度としては、5g/L〜50g/L程度とすることができる。
樹枝状銅粉の表面に銀を被覆する際の被覆量のコントロールは、例えば、置換型無電解めっき液の銀の投入量を変えることで制御することができる。また、被膜の厚みの均一性を高めるためには、添加の速度を一定とするのが好ましい。
このようにして、反応終了後のスラリーをろ過、分離して水洗を行い、その後乾燥させることで、樹枝状の銀コート銅粉を得ることができる。これらのろ過以降の処理手段としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いればよい。
≪4.導電性ペースト、電磁波シールド用導電性塗料、導電性シートの用途≫
本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1は、上述したように、主幹2と複数の枝3とを有する樹枝状の銀コート銅粉であり、主幹2及びその主幹2から分岐した複数の枝3とは断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmである平板状であって表面銀が被覆された銅粒子が集合して構成されている。また、当該樹枝状銀コート銅粉の平均粒子径(D50)は、1.0μm〜100μmである。このような樹枝状銀コート銅粉1では、樹枝状の形状であることにより表面積が大きくなり、成形性や焼結性に優れたものとなり、また樹枝状であってかつ所定の断面平均厚さを有する平板状の銅粒子から構成されていることにより、接点の数を多く確保することができ、優れた導電性を発揮する。
本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1は、上述したように、主幹2と複数の枝3とを有する樹枝状の銀コート銅粉であり、主幹2及びその主幹2から分岐した複数の枝3とは断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmである平板状であって表面銀が被覆された銅粒子が集合して構成されている。また、当該樹枝状銀コート銅粉の平均粒子径(D50)は、1.0μm〜100μmである。このような樹枝状銀コート銅粉1では、樹枝状の形状であることにより表面積が大きくなり、成形性や焼結性に優れたものとなり、また樹枝状であってかつ所定の断面平均厚さを有する平板状の銅粒子から構成されていることにより、接点の数を多く確保することができ、優れた導電性を発揮する。
しかも、この樹枝状銀コート銅粉1は、銅粒子の平板状の面に対して垂直方向への最大高さが、その平板状の面の水平方向への最大長さに対して1/10以下となっており、垂直方向への成長を抑制した平滑な面を有する銅粉である。このような樹枝状銀コート銅粉1によれば、より一層に銅粉同士の接点を増やすことができ、導電性を向上させることができる。
また、このような所定の構造を有する樹枝状銀コート銅粉1によれば、銅ペースト等とした場合であっても、凝集を抑制することができ、樹脂中に均一に分散させることが可能となり、またペーストの粘度上昇等による印刷性不良等の発生を抑制することができる。したがって、樹枝状銀コート銅粉1は、導電性ペースト等の用途に好適に用いることができる。
例えば導電性ペースト(銅ペースト)としては、本実施の形態に係る樹枝状コート銅粉を金属フィラー(銅粉)として含み、バインダ樹脂、溶剤、さらに必要に応じて酸化防止剤やカップリング剤等の添加剤と混練することによって作製することができる。
本実施の形態においては、金属フィラー中に、上述した樹枝状銀コート銅粉1が金属フィラー全体の質量100%に対して20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上の量の割合となるように混合させる。金属フィラー中の樹枝状銀コート銅粉1の割合を20質量%以上とすれば、例えばその金属フィラーを銅ペーストに用いた場合、樹脂中に均一に分散させることができ、またペーストの粘度が過度に上昇して印刷性不良が生じることを防ぐことができる。また、平板状の微細な銅粒子の集合体からなる樹枝状銀コート銅粉1であることにより、導電性ペーストとして優れた導電性を発揮させることができる。
なお、金属フィラーとしては、上述したように樹枝状銀コート銅粉1が20質量%以上の量の割合となるように混合されていればよく、その他は例えば1μm〜20μm程度の球状銅粉等を混ぜ合わせてもよい。
具体的に、バインダ樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。また、溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ターピネオール等の有機溶剤を用いることができる。また、その有機溶剤の添加量としては、特に限定されないが、スクリーン印刷やディスペンサー等の導電膜形成方法に適した粘度となるように、樹枝状銀コート銅粉1の粒度を考慮して添加量を調整することができる。
さらに、粘度調整のために他の樹脂成分を添加することもできる。例えば、エチルセルロースに代表されるセルロース系樹脂等が挙げられ、ターピネオール等の有機溶剤に溶解した有機ビヒクルとして添加される。なお、その樹脂成分の添加量としては、焼結性を阻害しない程度に抑える必要があり、好ましくは全体の5質量%以下とする。
また、添加剤としては、焼成後の導電性を改善するために酸化防止剤等を添加することができる。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えばヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。より具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましく、銀を被覆した銅への吸着力が高いクエン酸又はリンゴ酸が特に好ましい。酸化防止剤の添加量としては、酸化防止効果やペーストの粘度等を考慮して、例えば1〜15質量%程度とすることができる。
次に、電磁波シールド用材料として、本実施の形態に係る樹枝状銀コート銅粉1を金属フィラーとして利用する場合においても、特に限定された条件での使用に限られるものではなく、一般的な方法、例えば金属フィラーを樹脂と混合して使用することができる。
例えば、電磁波シールド用導電性シートの電磁波シールド層を形成するために使用される樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来使用されている、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等の各種重合体及び共重合体からなる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化型樹脂等を適宜使用することができる。
電磁波シールド材を製造する方法としては、例えば、上述したような金属フィラーと樹脂とを、溶媒に分散又は溶解して塗料とし、その塗料を基材上に塗布又は印刷することによって電磁波シールド層を形成し、表面が固化する程度に乾燥することで製造することができる。また、金属フィラーを導電性シートの導電性接着剤層に利用することもできる。
また、本実施の形態に係る銀コート銅粉1を金属フィラーとして利用して電磁波シールド用導電性塗料とする場合においても、特に限定された条件での使用に限られるものではなく、一般的な方法、例えば金属フィラーを樹脂及び溶剤と混合し、さらに必要に応じて酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤等と混合して混練することで導電性塗料として利用することができる。
このときに使用するバインダ樹脂及び溶剤についても、特に限定されたものではなく、従来使用されている塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂やフェノール樹脂等を利用することができる。また、溶剤についても、従来使用されているイソプロパノール等のアルコール類、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類等を利用することができる。まあ、添加剤としての酸化防止剤についても、従来使用されている脂肪酸アミド、高級脂肪酸アミン、フェニレンジアミン誘導体、チタネート系カップリング剤等を利用することができる。
以下、本発明の実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<評価方法>
下記実施例にて得られた銅粉について、以下の方法により、形状の観察、平均粒子径の測定、比表面積等の測定を行った。
下記実施例にて得られた銅粉について、以下の方法により、形状の観察、平均粒子径の測定、比表面積等の測定を行った。
(形状の観察)
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製,JSM−7100F型)により、所定の倍率の視野で任意に20視野を観察し、その視野内に含まれる銀コート銅粉を観察した。
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製,JSM−7100F型)により、所定の倍率の視野で任意に20視野を観察し、その視野内に含まれる銀コート銅粉を観察した。
(平均粒子径の測定)
得られた銀コート銅粉の平均粒子径(D50)については、レーザー回折・散乱法粒度分布測定器(日機装株式会社製,HRA9320 X−100)を用いて測定した。
得られた銀コート銅粉の平均粒子径(D50)については、レーザー回折・散乱法粒度分布測定器(日機装株式会社製,HRA9320 X−100)を用いて測定した。
(比抵抗値測定)
被膜の比抵抗値(体積抵抗率)については、低抵抗率計(三菱化学株式会社製,Loresta−GP MCP−T600)を用いて四端子法によりシート抵抗値を測定し、一方で、表面粗さ形状測定器(東京精密株式会社製,SURFCOM130A)により被膜の膜厚を測定して、シート抵抗値を膜厚で除することによって求めた。
被膜の比抵抗値(体積抵抗率)については、低抵抗率計(三菱化学株式会社製,Loresta−GP MCP−T600)を用いて四端子法によりシート抵抗値を測定し、一方で、表面粗さ形状測定器(東京精密株式会社製,SURFCOM130A)により被膜の膜厚を測定して、シート抵抗値を膜厚で除することによって求めた。
[実施例1]
<樹枝状銅粉の製造>
容量が100Lの電解槽に、電極面積が200mm×200mmのチタンの製電極板を陰極とし、電極面積が200mm×200mmの銅製の電極板を陽極として用いて、その電解槽中に電解液を装入し、これに直流電流を通電して銅粉を陰極板に析出させた。
<樹枝状銅粉の製造>
容量が100Lの電解槽に、電極面積が200mm×200mmのチタンの製電極板を陰極とし、電極面積が200mm×200mmの銅製の電極板を陽極として用いて、その電解槽中に電解液を装入し、これに直流電流を通電して銅粉を陰極板に析出させた。
このとき、電解液としては、銅イオン濃度が5g/L、硫酸濃度が100g/Lの組成のものを用いた。また、この電解液に、塩酸溶液(和光純薬工業株式会社製)を電解液中の塩化物イオン(塩素イオン)濃度として50mg/Lなるように添加した。また、この電解液には、添加剤としてフェナジン構造を有する化合物であるサフラニン(関東化学工業株式会社製)を電解液中の濃度で50mg/Lとなるように添加し、さらに、ノニオン界面活性剤である分子量1000のポリエチレングリコール(PEG)(和光純薬工業株式会社製)を電解液中の濃度で20mg/Lとなるように添加した。
そして、上述したような濃度に調整した電解液を、ポンプを用いて15L/minの流量で循環しながら、温度を25℃に維持し、陰極の電流密度が10A/dm2になるように通電して陰極板上に銅粉を析出させた。
陰極板上に析出した電解銅粉を、スクレーパーを用いて機械的に電解槽の槽底に掻き落として回収し、回収した銅粉を純水で洗浄した後、減圧乾燥器に入れて乾燥した。
<紫外可視反射率の測定>
電解槽の槽底に掻き落とした銅粉の一部を採取して、紫外可視反射率の測定に供した。測定までの手順は以下の通りである。
電解槽の槽底に掻き落とした銅粉の一部を採取して、紫外可視反射率の測定に供した。測定までの手順は以下の通りである。
すなわち、採取した銅粉の水スラリーをピペットで分取して測定セルであるスクリューキャップ付セルに移送し、デカンテーションして銅粉を沈降させ、上澄み液を廃棄した。そして、さらにピペットで分取された銅粉をスクリューキャップ付セル内に追加し、デカンテーションして銅粉を沈降させ、上澄み液を廃棄した。沈降した銅粉の高さが分光光度計での測定で必要とされる高さになるまでこの操作を繰り返して、スクリューキャップ付セルの底部からの高さが2cmになるまで測定セル内に銅粉を充填した。
次に、底部に銅粉が充填されたスクリューキャップ付(内径10mm)のセルを遠心分離機に装填し、3000rpmで1分間遠心分離して、充填状態を均一化してさらに密に充填して固定化した。
次に、スクリューキャップ付セルを紫外可視赤外分光光度計(日本分光(株)製V−770iRM)に装填し、波長400nmにおける銅粉の反射率を測定した。なお、反射率は、次式により求められる標準白板を基準とした相対反射率である。得られた反射率は10.2%であった。
反射率(%)=(銅粉で反射した光量/標準白板で反射した光量)×100
反射率(%)=(銅粉で反射した光量/標準白板で反射した光量)×100
<還元法による樹枝状銀コート銅粉の製造>
続いて、銅粉の表面に銀を被覆して銀コート銅粉を作製した。すなわち、得られた銅粉100gを3%酒石酸水溶液中で約1時間撹拌した後、ろ過、水洗して2リットルのイオン交換水中に分散させた。ここに、酒石酸6g、ぶどう糖6g、エタノール60mLを加え、さらに28%アンモニア水60mLを加えて攪拌し、その後、硝酸銀30gをイオン交換水4.5リットルに溶かした水溶液と、ぶどう糖30g、酒石酸30g、エタノール300mLをイオン交換水900mLに溶かした水溶液と、28%アンモニア水300mLとをそれぞれ60分間にわたり徐々に添加した。なお、このときの浴温は25℃であった。
続いて、銅粉の表面に銀を被覆して銀コート銅粉を作製した。すなわち、得られた銅粉100gを3%酒石酸水溶液中で約1時間撹拌した後、ろ過、水洗して2リットルのイオン交換水中に分散させた。ここに、酒石酸6g、ぶどう糖6g、エタノール60mLを加え、さらに28%アンモニア水60mLを加えて攪拌し、その後、硝酸銀30gをイオン交換水4.5リットルに溶かした水溶液と、ぶどう糖30g、酒石酸30g、エタノール300mLをイオン交換水900mLに溶かした水溶液と、28%アンモニア水300mLとをそれぞれ60分間にわたり徐々に添加した。なお、このときの浴温は25℃であった。
各水溶液の添加が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、銅粉の表面に銀が被覆された銀コート銅粉が得られた。図3に、得られた銀コート銅粉をSEM(倍率5,000倍)で観察した写真図を示す。この銀コート銅粉をSEMにより倍率5,000倍の視野で観察した結果、少なくとも90個数%以上の銀コート銅粉が、表面に均一に銀が被覆された平板状の銅粒子が密集して集合し、樹枝状形状を呈した樹枝状銀コート銅粉であった。また、その樹枝状銀コート銅粉を回収して銀被覆量を測定したところ、当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して銀被覆量は15.5質量%であった。
また、得られた樹枝状銀コート銅粉について、SEMにより観察しながら、平板状の銅粒子の断面平均厚さと、当該樹枝状銀コート銅粉の平板状の面に対して垂直方向に成長した最大長さと平板状の面に対して水平方向の長軸長さとの比を測定した。その結果、得られた樹枝状銀コート銅粉を構成する銅粒子は、断面平均厚さが1.0μmである平板状であった。また、その樹枝状銀コート銅粉の平均粒子径(D50)は17.8μmであった。そして、その銀コート銅粉の平板状の面から垂直方向に成長した最大長さと平板状の面に水平な方向(平板方向)の最大長さの比(垂直方向長さ/平板方向長軸長さ)は平均で0.067であった。
<導電性ペーストの作製>
作製した樹枝状銀コート銅粉55質量部に、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15質量部、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10質量部を混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことでペースト化した。得られた導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中で硬化させた。
作製した樹枝状銀コート銅粉55質量部に、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)15質量部、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10質量部を混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことでペースト化した。得られた導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中で硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値は、5.0×10−5Ω・cmであった。
[実施例2]
樹枝状銅粉の製造で、サフラニン濃度を10mg/Lとした以外は実施例1と同様の条件で電解銅粉を陰極板上に析出させた。この銅粉を純水で洗浄した後の水スラリーの一部をサンプリングして、実施例1と同様の条件で紫外可視反射率を測定した。反射率の測定結果は9.5%であった。
樹枝状銅粉の製造で、サフラニン濃度を10mg/Lとした以外は実施例1と同様の条件で電解銅粉を陰極板上に析出させた。この銅粉を純水で洗浄した後の水スラリーの一部をサンプリングして、実施例1と同様の条件で紫外可視反射率を測定した。反射率の測定結果は9.5%であった。
また、この銅粉を用いて実施例1と同様の条件で銀コート銅粉を作製した。得られた銀コート銅粉の銀被覆量は、当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して15.3質量%であった。
さらに、この銀コート銅粉についてSEMによる観察を行い、少なくとも80個数%以上の銀コート銅粉が、表面に均一に銀が被覆された平板状の銅粒子が密集して集合し、樹枝状形状を呈した樹枝状銀コート銅粉であることを確認した。その平板状の銅粒子の断面平均厚さは1.2μmであり、平板状の面に対して垂直方向に成長した最大長さと平板状の面に対して水平方向の長軸長さとの比は0.071であった。また樹枝状銀コート銅粉の平均粒子径(D50)は20.5μmであった。
当該樹枝状銀コート銅粉を、実施例1を同様の条件で導電性ペーストとし、この導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中で硬化させて被膜とした。この被膜の比抵抗値は8.4×10−5Ω・cmであった。これらをまとめて表1に示す。
[実施例3]
樹枝状銅粉の製造で、ポリエチレングリコール濃度を10mg/Lとした以外は実施例1と同様の条件で電解銅粉を陰極板上に析出させた。この銅粉を純水で洗浄した後の水スラリーの一部をサンプリングして、実施例1と同様の条件で紫外可視反射率を測定した。反射率の測定結果は9.2%であった。
樹枝状銅粉の製造で、ポリエチレングリコール濃度を10mg/Lとした以外は実施例1と同様の条件で電解銅粉を陰極板上に析出させた。この銅粉を純水で洗浄した後の水スラリーの一部をサンプリングして、実施例1と同様の条件で紫外可視反射率を測定した。反射率の測定結果は9.2%であった。
また、この銅粉を用いて、実施例1と同様の条件で銀コート銅粉を作製した。得られた銀コート銅粉の銀被覆量は、当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して15.2質量%であった。
さらに、この銀コート銅粉についてSEMによる観察を行い、少なくとも80個数%以上の銀コート銅粉が、表面に均一に銀が被覆された平板状の銅粒子が密集して集合し、樹枝状形状を呈した樹枝状銀コート銅粉であることを確認した。その平板状の銅粒子の断面平均厚さは1.5μmであり、平板状の面に対して垂直方向に成長した最大長さと平板状の面に対して水平方向の長軸長さとの比は0.075であった。また樹枝状銀コート銅粉の平均粒子径(D50)は22.3μmであった。
当該樹枝状銀コート銅粉を、実施例1を同様の条件で導電性ペーストとし、この導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中で硬化させて被膜とした。この被膜の比抵抗値は8.7×10−5Ω・cmであった。これらをまとめて表1に示す。
[実施例4]
樹枝状銅粉の製造で、サフラニン濃度0.1mg/Lとした以外は実施例1と同様の条件で電解銅粉を陰極板上に析出させた。この銅粉を純水で洗浄した後の水スラリーの一部をサンプリングして、実施例1と同様の条件で紫外可視反射率を測定した。反射率の測定結果は7.5%であった。
樹枝状銅粉の製造で、サフラニン濃度0.1mg/Lとした以外は実施例1と同様の条件で電解銅粉を陰極板上に析出させた。この銅粉を純水で洗浄した後の水スラリーの一部をサンプリングして、実施例1と同様の条件で紫外可視反射率を測定した。反射率の測定結果は7.5%であった。
また、この銅粉を用いて実施例1と同様の条件で銀コート銅粉を作製した。得られた銀コート銅粉の銀被覆量は、当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して15.5質量%であった。
さらに、この銀コート銅粉についてSEMによる観察を行い、表面に均一に銀が被覆された平板状の銅粒子が密集して樹枝状形状を呈した樹枝状銀コート銅粉が、多くても20個数%以下であることを確認した。また樹枝状銀コート銅粉の平均粒子径(D50)は20.3μmであった。
当該樹枝状銀コート銅粉を、実施例1を同様の条件で導電性ペーストとし、この導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中で硬化させて被膜とした。この被膜の比抵抗値は20.0×10−5Ω・cmであった。これらをまとめて表1に示す。
[実施例5]
樹枝状銅粉の製造で、ポリエチレングリコール濃度を0.1mg/Lとした以外は実施例1と同様の条件で電解銅粉を陰極板上に析出させた。この銅粉を純水で洗浄した後の水スラリーの一部をサンプリングして、実施例1と同様の条件で紫外可視反射率を測定した。反射率の測定結果は8.7%であった。
樹枝状銅粉の製造で、ポリエチレングリコール濃度を0.1mg/Lとした以外は実施例1と同様の条件で電解銅粉を陰極板上に析出させた。この銅粉を純水で洗浄した後の水スラリーの一部をサンプリングして、実施例1と同様の条件で紫外可視反射率を測定した。反射率の測定結果は8.7%であった。
また、この銅粉を用いて実施例1と同様の条件で銀コート銅粉を作製した。得られた銀コート銅粉の銀被覆量は、当該銀コート銅粉全体の質量100%に対して15.3質量%であった。
図4に、得られた銀コート銅粉についてSEM(倍率5,000倍)で観察した写真図を示す。この銀コート銅粉をSEMで観察した結果、表面に均一に銀が被覆された平板状の銅粒子が密集して樹枝状形状を呈した樹枝状銀コート銅粉が、多くても30個数%以下であることを確認した。また樹枝状銀コート銅粉の平均粒子径(D50)は23.4μmであった。
当該樹枝状銀コート銅粉を、実施例1を同様の条件で導電性ペーストとし、この導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中で硬化させて被膜とした。この被膜の比抵抗値は12.5×10−5Ω・cmであった。これらをまとめて表1に示す。
また、図5に、実施例1〜3及び実施例4,5にて測定された銅粉の反射率と、この銅粉を銀コート処理し、銀コート銅粉を金属フィラーとして用いた導電性ペーストにより作製した被膜の比抵抗値との関係を示す。図5より、銅粉の反射率と被膜の比抵抗値には負の相関関係があることがわかる。すなわち、上述したように、銅粉の反射率が高くなるほど、平板状の粒子が発達してそれらが集合した樹枝状の形状を呈するものとなり、そのような反射率の高い銅粉から最終的に得られる銀コート銅粉では、比抵抗値が減少している。このことは、平板状の銅粒子が発達するほど、被膜中にて接点が増えて導電性が高くなるためであると考えられる。
したがって、銅粉の紫外可視反射率を測定することで、最終製品の導電性ペーストとした時の導電性を予測することが可能となる。
また、測定波長400nmにおける銅粉の反射率が9%以上であれば、被膜の比抵抗値は10×10−5Ω・cm以下となり、より優れた導電性を示すことが分かる。よって、電解法にて作製された銅粉の反射率を測定する検査を行い、波長400nmにおいて9%以上の反射率を示した銅粉のみを次工程の銀を被覆する工程へ移送させれば、品質保証上極めて有効であることが分かる。
1 (樹枝状)銀コート銅粉
2 主幹
3,3a,3b 枝
4 平板状の面に対して水平方向(X−Y方向)への最大長さ
5 平板状の面(X−Y面)に対して垂直方向への最大高さ
2 主幹
3,3a,3b 枝
4 平板状の面に対して水平方向(X−Y方向)への最大長さ
5 平板状の面(X−Y面)に対して垂直方向への最大高さ
Claims (10)
- 樹枝状形状を呈する銀コート銅粉の製造方法であって、
電解法により銅粉を製造する工程と、
分光光度計により測定した前記銅粉の反射率と所定の反射率基準とに基づき、該銅粉の品質を検査する工程と、
前記銅粉の品質を検査する工程で基準を満たした銅粉に銀を被覆する工程と、
を備える、銀コート銅粉の製造方法。 - 前記銅粉の品質を検査する工程では、
前記反射率の測定波長を300nm〜500nmとする
請求項1に記載の銀コート銅粉の製造方法。 - 前記銅粉に銀を被覆する工程では、
測定波長400nmでの反射率が9%以上である銅粉に対して銀を被覆する
請求項2に記載の銀コート銅粉の製造方法。 - 前記銅粉を製造する工程において、
銅イオンと、
下記式(1)で表されるフェナジン構造を有する化合物からなる群、下記式(2)で表されるアゾベンゼン構造を有する化合物からなる群、及び下記式(3)で表されるフェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物からなる群からそれぞれ選択される1種類以上、もしくは異なる群から選択される2種類以上と、
ノニオン界面活性剤の1種類以上と、
を含有する電解液を用いて電解により銅粉を製造する
請求項1乃至3のいずれかに記載の銀コート銅粉の製造方法。
- 前記電解液に、塩化物イオンを含有させる
請求項4に記載の銀コート銅粉の製造方法。 - 前記銅粉の品質を検査する工程は、
前記銅粉を製造する工程において得られた銅粉をスラリーする工程と、
前記スラリーを測定セルに移送して銅粉を沈降させる工程と、
前記測定セルを分光光度計に装填し、沈降した銅粉の反射率を測定する工程と、を含む
請求項1乃至5のいずれかに記載の銀コート銅粉の製造方法。 - 前記銀コート銅粉は、
直線的に成長した主幹と該主幹から分かれた複数の枝とを有する樹枝状の形状をなし、
前記主幹及び前記枝は、走査電子顕微鏡(SEM)観察より求められる断面平均厚さが0.02μm〜5.0μmである平板状の銅粒子が集合して構成され、該銅粒子の表面に銀が被覆されており、
当該銀コート銅粉の平均粒子径(D50)が1.0μm〜100μmであり、
前記銅粒子の平板状の面に対して垂直方向への最大高さが、該平板状の面の水平方向への最大長さに対して1/10以下である、
請求項1乃至6のいずれかに記載の銀コート銅粉の製造方法。 - 前記銀コート銅粉は、銀被覆量が、銀被覆した銀コート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%である
請求項7記載の銀コート銅粉の製造方法。 - 請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法により得られた銀コート銅粉を、全体質量に対しての20質量%以上の割合で混合する工程を含む、金属フィラーの製造方法。
- 請求項9に記載の製造方法により得られた金属フィラーを、バインダ樹脂と、溶剤と混練する工程を含む、導電性ペーストの製造方法。
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JP2017050602A JP2018154856A (ja) | 2017-03-15 | 2017-03-15 | 銀コート銅粉の製造方法 |
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-
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