JP2018154667A - ポリマー及びその製造方法、並びに光学材料 - Google Patents
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Description
本発明のポリマーは、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とが共重合した構造を有する。即ち、本発明のポリマーは、木の幹と枝は存在せず、樹状に発達したハイパーブランチポリマーである。
また、前記特許文献2(特表2013−542305号公報)に開示された星形ポリマーでは、加工性が改善されているものの、機械特性を維持することができないという知見に基づくものである。
更に、前記非特許文献1(「坂口雄太、2012、PNIPAAm系ハイドロゲルの力学的特性の向上と評価に関する研究、三重大学大学院工学研究科博士前期課程、機械工学専攻、生体システム工学研究室」)に開示された刺激応答性ポリマーでは、三次元網目構造が構築されるとその形状が固定化されるため、二次加工ができないという知見に基づくものである。
また、前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物と前記一般式(3)で表される化合物とを重合した後に精製処理を行うことにより、ハロゲン原子をそれぞれ水素原子に置き換えることが可能である。そのため、ハロゲン原子を含む材料が好まれない用途にも用いることができる。
前記LCST特性は、ポリマーと水が共存する環境において、所定の温度以上ではポリマーと水は相溶しないが、所定の温度未満では相溶するという特性である。前記pH応答性は、ポリマーと水が共存する環境において、所定のpH以上ではポリマーと水は相溶しないが、所定のpH未満では相溶するという特性である。
核磁気共鳴分光装置(例えば、日本電子株式会社製、JOEL−ECS−400K)を用いて、得られた各ポリマーについて、核磁気共鳴分光分析を行う。重合度:nについて、核磁気共鳴分光分析(=1H−NMR)により各部位の水素数を測定して算出する。具体的には、開始剤由来の1Hの積分値総和(水素の数)と、繰り返し単位由来の1Hの積分値総和の比率から算出することができる。
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(例えば、日本分光株式会社製、FT/IR 4200)を用いて、得られたポリマーを同定することができる。
[0000]
また、ポリマーの屈折率及びポリマーのアッベ数は、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
また、前記ポリマーの数平均分子量、重量平均分子量、及び分子量分布は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により算出することができる。
前記重量平均分子量が30,000以上500,000以下では、温度応答性が高く、かつ良好な機械特性及び加工性を示す。また、前記重量平均分子量が50,000以上300,000以下では、温度応答性が向上し、かつ機械特性及び加工性も向上する。更に、前記重量平均分子量が100,000以上200,000以下では、温度応答性が極めて高く、かつ極めて良好な機械特性、及び加工性を示す。
前記重量平均分子量が30,000未満であると、機械特性が劣ることがあり、また、重量平均分子量が500,000を超えると、加工性が劣化する場合が多い。
本発明のポリマーの製造方法は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物を共重合させるものである。
前記構造式(1)で表される化合物26.4mgと、前記構造式(2)で表される化合物678.6mgと、前記構造式(3)で表される化合物261.2mgと、臭化銅(I)0.017gとを重合管に秤取る。
この重合管を脱気処理して酸素を除去し、窒素雰囲気下、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.025gと水1mLを重合管に加え、0℃で15分間攪拌する。攪拌後の重合管にクロロホルムを1mL加えて希釈したものをジエチルエーテルで再沈殿処理し、ろ別した固形物を乾燥することにより、本発明のポリマーが得られる。
本発明の光学材料は、本発明のポリマーを含む。
本発明のポリマーは、優れた刺激応答性、機械特性、及び加工性を備えるため、種々の光学材料の用途に好適に用いることができる。例えば、前記ハイパーブランチポリマーを任意の形状に加工することにより、光スイッチング材料や調光材料等の光学材料を提供することができる。
具体的な光スイッチング材料として、光の伝播を温度で制御できる機能を有する光スイッチング素子が挙げられる。光スイッチング素子は、露光部と組み合わせることにより、温度センサーデバイスを構成することができる。
また、調光材料は、光の透過率を温度で制御できる機能を有する。即ち、前記ハイパーブランチポリマーをフィルム状に加工したのち水と共存させ、透明基板や透明フィルムで挟みこみ封止することで、所定の温度以上で白濁し、所定の温度未満で透明となる特殊なプレートを提供することができる。
下記構造式(1)で表される化合物26.4mgと、下記構造式(2)で表される化合物678.6mgと、下記構造式(3)で表される化合物261.2mgと、臭化銅(I)0.017gと、を重合管に秤取った。
この重合管を脱気処理して酸素を除去し、窒素雰囲気下でN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.025gと水1mLを重合管に加え、0℃で15分間攪拌した。攪拌後の重合管にクロロホルムを1mL加えて希釈したものをジエチルエーテルで再沈殿処理し、ろ別した固形物を乾燥し、実施例1のポリマーを得た。
また、フィルムの温度応答性評価としてはアッベ屈折率計にて屈折率の温度変化を評価したところ、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低く、良好な温度応答性を示した。
なお、ポリマーの屈折率及びポリマーのアッベ数は、以下の分光エリプソメトリーにより測定した。
分光エリプソメータ(株式会社堀場製作所製、1H3LNWWP)を用いて、得られたポリマーの屈折率を測定した。具体的には、ポリマーをPGMEに溶解させ、スピンコートによりシリコンウエハ上に薄膜を形成して、波長632.8nmの光源を用いて測定した。また、光源をそれぞれ、波長587.56nm、486.13nm、及び656.27nmのものに変更して測定した屈折率をそれぞれnd、nF、及びnCとし、ポリマーのアッベ数を下記数式(C)により算出した。
[数式(C)]
アッベ数=(nd−1)/(nF−nC)
実施例1において、前記構造式(1)で表される化合物26.4mgを264.0mgに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のポリマーを得た。
また、フィルムの温度応答性評価としてはアッベ屈折率計にて屈折率の温度変化を評価したところ、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低く、良好な温度応答性を示した。
実施例1において、前記構造式(1)で表される化合物26.4mgの代わりに、下記構造式(5)で表される化合物30.8mgを用い、前記構造式(3)で表される化合物261.2mgの代わりに、下記構造式(6)で表される化合物(新中村化学社製、AM−90G)911.8mgを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3のポリマーを得た。
また、フィルムの温度応答性評価としてはアッベ屈折率計にて屈折率の温度変化を評価したところ、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低く、良好な温度応答性を示した。
実施例1において、前記構造式(5)で表される化合物30.8mgを308.0mgに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4のポリマーを得た。
得られたポリマーの温度応答性評価については、水溶液の温度応答性は市販の直鎖型PNIPAMよりも低い温度で吸光度が上昇しはじめ、また、測定温度範囲における最大の吸光度は、直鎖型PNIPAMよりも高く良好な温度応答性を示した。
また、フィルムの温度応答性評価としてはアッベ屈折率計にて屈折率の温度変化を評価したところ、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低く、良好な温度応答性を示した。
実施例1において、前記構造式(3)で表される化合物261.2mgを、下記構造式(4)で表される化合物4,804mgに変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1のポリマーを得た。
また、フィルムの温度応答性は、測定温度範囲において上に凸の放物線を描き、最大の屈折率を示す温度は、直鎖型PNIPAMよりも20℃以上低いが、5℃における屈折率と40℃における屈折率の差は、実施例のポリマーより小さい値であった。
カリックス[4]レゾルシンアレーンをテトラヒドロフランに溶解し、トリエチルアミンを加えた。
次に、系内を10℃未満に冷却し温度を維持したまま、2−ブロモイソブチリルブロマイドを滴下して30分間程度攪拌した後、40℃で12時間攪拌した。反応液から析出物をろ過して取り除いた。ろ液をクロロホルムで希釈して有機層とし、これを炭酸水素ナトリウム水溶液で2回程度、塩化水素水溶液にて1回、純水にて3回洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。固形物をろ別後、減圧濃縮し、メタノールに滴下して白色固体を得、これをろ別して開始剤を得た。
各ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、TG−DSCシステムTAS−100(理学電機株式会社製)を用いて、以下の方法により測定した。
まず、ポリマー約10mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットした。室温(25℃)から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置し、室温までポリマーを冷却して10min放置した。その後、窒素雰囲気下、150℃まで昇温速度10℃/minで加熱して示差走査熱量計(DSC)によりDSC曲線を計測した。得られたDSC曲線から、TG−DSCシステムTAS−100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移温度(Tg)近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点からガラス転移温度(Tg)を算出した。
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により、各ポリマーの重量平均分子量を測定した。
測定条件は、次のとおりである。
・装置:HLC−8220(東ソー株式会社製)
・カラム:Shodex asahipak GF−510 HQ + GF−310×2(昭和電工株式会社製)TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶離液:20mM リチウムブロミド、20mMリン酸含有ジメチルホルムアミド溶液
・流速:0.5mL/分
・検出器:HLC−8200 内蔵RI−UV−8220 濃度0.5質量%のポリマー1mLを装置にセットし、上記の条件で測定したポリマーの分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してポリマーの重量平均分子量(Mw)を算出した。
温度応答速度の評価は、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V−660DS)を用いて評価した。得られたポリマー2.0mgを蒸留水20mLに溶解させ、40℃に加温し、400nmにおける吸光度を1秒間ごとに測定した。測定開始から測定値の変化が5%以内になった時点の測定時間を飽和時間とし、下記基準からの評価点を求めた。
[評価点]
0点:飽和時間が10秒間以上
1点:飽和時間が8秒間以上10秒間未満
3点:飽和時間が7秒間
5点:飽和時間が6秒間
7点:飽和時間が5秒間
10点:飽和時間が4秒間以下
衝撃試験により、機械特性及び加工性を評価した。
衝撃試験としては、得られたポリマー200mgを、直径20mmの円盤状に圧縮成形したのち、30cmの高さからガラスプレート上へ自由落下させた。着地したポリマー成形物のうち、最も大きさの大きいものの重量を測定し、下記の数式(D)に従って重量変化率を測定した。
[数式(D)]
重量変化率(%)=[(落下前重量(g)−最も大きさの大きいものの重量(g))/落下前重量(g)]×100
[評価基準]
0点:所定の円盤状に圧縮成形できない
1点:重量変化率が80%以上
2点:重量変化率が75%以上80%未満
3点:重量変化率が65%以上75%未満
4点:重量変化率が65%未満
総合評価は、温度応答速度の評価点と機械特性及び加工性の評価点を合計し、下記基準で評価した。
[評価基準]
A:合計点が10点以上
B:合計点が7点以上10点未満
C:合計点が5点以上7点未満
D:合計点が5点未満
E:いずれか一方に0点がある場合
また、比較例1〜2の総合評価がいずれもD以下であるのに対して、実施例1〜4では総合評価がいずれもB以上となった。
このように、実施例1〜4のポリマーは、水素結合による強固な分子間及び分子内結合と、低いガラス転移点と、刺激応答性部位を同時に有しており、優れた温度応答性、機械特性及び加工性を両立している。そのため、光スイッチング素子等の光学材料に適用することができる。
また、実施例1〜4のポリマーは、いずれも高い屈折率とアッベ数を示しており、光学材料の用途に適している。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物が共重合した構造を有することを特徴とするポリマーである。
[一般式(1)]
[一般式(2)]
[一般式(3)]
<2> 重量平均分子量が30,000以上500,000以下である前記<1>に記載のポリマーである。
<3> 重量平均分子量が50,000以上300,000以下である前記<2>に記載のポリマーである。
<4> 前記一般式(1)中のXが、臭素原子である前記<1>から<3>のいずれかに記載のポリマーである。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする光学材料である。
<6> 下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物を共重合させることを特徴とするポリマーの製造方法である。
[一般式(1)]
[一般式(2)]
[一般式(3)]
<7> 前記一般式(1)中のXが、臭素原子である前記<6>に記載のポリマーの製造方法である。
<8> 前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物の重合反応が、遷移金属触媒及びアミン系配位子の存在下で行われる前記<6>から<7>のいずれかに記載のポリマーの製造方法である。
<9> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする調光材料である。
<10> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする光スイッチング材料である。
Claims (7)
- 下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物が共重合した構造を有することを特徴とするポリマー。
[一般式(1)]
[一般式(2)]
[一般式(3)]
- 重量平均分子量が30,000以上500,000以下である請求項1に記載のポリマー。
- 前記一般式(1)中のXが、臭素原子である請求項1から2のいずれかに記載のポリマー。
- 請求項1から3のいずれかに記載のポリマーを含むことを特徴とする光学材料。
- 下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物を共重合させることを特徴とするポリマーの製造方法。
[一般式(1)]
[一般式(2)]
[一般式(3)]
- 前記一般式(1)中のXが、臭素原子である請求項5に記載のポリマーの製造方法。
- 前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(3)で表される化合物と、を含む混合物の重合反応が、遷移金属触媒及びアミン系配位子の存在下で行われる請求項5から6のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
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JP2000514479A (ja) * | 1996-07-10 | 2000-10-31 | カーネギー メロン ユニヴァーシティー | 原子転移ラジカル重合を用いる新規のホモ―及びコポリマーの調製 |
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