JP2018154576A - アスパラガス抽出物の製造方法及びアスパラガス抽出物 - Google Patents
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Abstract
Description
<1> 以下の工程を有するアスパラガス抽出物の製造方法。
工程(1):原料アスパラガスを、温度80℃以上の条件で加熱処理する工程
工程(2):工程(1)で得られた加熱処理後のアスパラガスに抽出溶媒を接触させ、アスパラガス抽出物を得る工程
<2> 原料アスパラガスが、アスパラガスの切下部を含む前記<1>に記載のアスパラガス抽出物の製造方法。
<3> 工程(1)における加熱処理を、水蒸気共存下で行う前記<1>または<2>に記載のアスパラガス抽出物の製造方法。
<4> 工程(2)に供されるアスパラガスが、加熱処理後に減圧乾燥されたアスパラガスである、前記<1>から<3>のいずれかに記載のアスパラガス抽出物の製造方法。
<5> 工程(3)において、抽出溶媒が、エタノールまたはエタノールと水の混合溶媒である前記<1>から<4>のいずれかに記載のアスパラガス抽出物の製造方法。
<6> β‐ヘキソサミニダーゼ放出抑制活性、脱顆粒抑制活性及びIgE抑制活性の少なくとも1以上の活性を有するアスパラガス抽出物。
<7> 前記<6>に記載のアスパラガス抽出物を含有する医薬組成物。
<8> 前記<6>に記載のアスパラガス抽出物を含有するサプリメント。
<9> 前記<6>に記載のアスパラガス抽出物を含有する機能性食品。
<10> 前記<6>に記載のアスパラガス抽出物を含有する化粧料組成物。
工程(1):原料アスパラガスを、温度80℃以上の条件で加熱処理する工程
工程(2):工程(1)で得られた加熱処理後のアスパラガスに抽出溶媒を接触させ、アスパラガス抽出物を得る工程
工程(1)は、原料アスパラガスを、温度80℃以上の条件で加熱処理する工程である。
本発明において、「原料アスパラガス」は、一般に食用で用いられているアスパラガス・オフィシナリス(Asparagus officinalis)の茎部、切下部及び擬葉を含む概念である。
「茎部」は、アスパラガスの若茎の部分であり、可食部である。
また、「切下部」は、アスパラガスの規格外の根元部分とされる部分であり、通常、下から2cm程度である。これらは、通常廃棄されている。
また、「擬葉」は、茎部がさらに伸びた後、枝分かれしてできる茎であり、葉に代わり光合成で養分を作る部分である。
なお、工程(1)の加熱処理により原料アスパラガスの殺菌を同時に行うことができるという利点もある。
水分の共存下での加熱としては、水で煮込む方法や水蒸気で加熱する方法が挙げられる。このうち、アスパラガスの含有成分の流出が少ない、水蒸気で加熱する方法が好ましい。すなわち、工程(1)での好適な加熱条件のひとつは80℃以上(好適には90℃以上、100℃以上)で水蒸気共存下での加熱(いわゆる蒸焼の状態)である。
工程(2):工程(1)で得られた加熱処理後のアスパラガスに抽出溶媒を接触させ、アスパラガス抽出物を得る工程である。
加熱処理後のアスパラガスは、そのままあるいは適当な処理(粉砕等の加工や乾燥処理)をしたのちに抽出溶媒と接触させて、その含有成分が抽出される。
加熱処理後のアスパラガスは、未乾燥で抽出溶媒に接触させてもよく、乾燥した後に抽出溶媒を接触させてもよい。
乾燥工程に用いる手段としては特に制限はなく、公知の乾燥方法を採用すればよい。乾燥条件は、アスパラガス乾燥物を目的とする含水量になるように決定すればよい。例えば、温度70℃〜90℃で加熱乾燥する方法がある。
抽出溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ヘキサン、エチルアセテート、スクワラン等が挙げられる。なお、抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
これらの抽出溶媒は単独又はこれら2種以上の混合物として使用することができ、2種以上の溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。
このように抽出溶媒として水単独でなく、エタノールと水の混合溶媒とすることにより、β‐ヘキソサミニダーゼ放出抑制活性が向上する理由については、現在のところ完全に明らかではないが、極性の異なる水やエタノールとの相乗作用により、アスパラガス抽出物から、β‐ヘキソサミニダーゼ放出抑制活性等を有する含有成分が効率的に抽出されるものと推測される。なお、エタノール100体積%を抽出溶媒とすることもできる。
また、抽出物に含まれる残渣を取り除くため、濾過や遠心分離を行ってもよい。また、得られた抽出液はそのまま利用してもよいが、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
なお、この抽出操作は品質劣化を避けるために常温で行うのが好ましいが、抽出効率を上げるために加温状態にして行うことも可能である。また、必要に応じてアスパラガス抽出物の割合を高めるため、減圧濃縮や凍結乾燥により溶媒除去してもよい。
本発明のアスパラガス抽出物は、β‐ヘキソサミニダーゼ放出抑制活性、脱顆粒抑制活性及びIgE抑制活性の少なくとも1以上の活性を有することを特徴とする。本発明のアスパラガス抽出物は、上述した本発明の製造方法によって製造することができる。
本発明のアスパラガス抽出物は、そのまま使用してもよいし、さらに抽出、粉砕などの加工を行ってもよい。また、アスパラガス抽出物と任意の成分を組み合わせて、アスパラガス抽出物を含有する組成物としてもよい。任意成分の配合割合は、その目的に応じて適宜選択して決定することができる。
本発明のアスパラガス抽出物は、後述する実施例で示すようにβ‐ヘキソサミニダーゼ放出抑制活性、脱顆粒抑制活性、IgE(免疫グロブリンE;Immunoglobulin E)の抑制活性を有し、これらの活性に関連する抗アレルギー作用、抗炎症作用を有する。そのため、本発明のアスパラガス抽出物は、その有効量を薬学的に許容される基材とともに配合して医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」と記載する場合がある。)としてもよい。
本発明のサプリメントは、アスパラガス抽出物を含有する。本発明のサプリメントの形態は、特に制限されず、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態でよい。
本発明のサプリメントは、アスパラガス抽出物以外に、サプリメントとして通常使用される任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、アミノ酸,ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類;ミネラル類;糖類;無機塩類;クエン酸またはその塩;茶エキス;油脂;プロポリス、ローヤルゼリー、タウリン等の滋養強壮成分;ショウガエキス、高麗人参エキス等の生薬エキス;ハーブ類:コラーゲン等が挙げられる。
本発明のアスパラガス抽出物は、日常的に経口摂取しやすいように、各種の食品、飲料と混ぜて機能性食品とすることで、長期的に摂取することも容易である。
ここでいう「機能性食品」とは、一般食品に加えて、健康の維持の目的で摂取する食品および/又は飲料を意味し、保健機能食品である特定保健用食品や栄養機能食品や、健康食品、栄養補助食品、栄養保険食品等を含む概念である。この中でも保健機能食品である特定保健用食品や栄養機能食品が好ましい機能性食品の態様である。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等を添加していてもよい。
また、本発明のアスパラガス抽出物は、それ自体またはこれに他の成分を添加して食品添加剤として使用することも可能である。他の成分は、飲食品添加剤として使用可能であるならば特に制限はない。食品添加剤の添加対象となる飲料、食品についても任意であり、特に制限はない。
本発明の化粧料組成物は、上記アスパラガス抽出物を含有することを特徴とする。本発明のアスパラガス抽出物は、各種化粧料基材及び化粧料添加物に対して任意に配合できる。
後述する実験例における評価方法は以下の通りである。
(1)RBL-2H3細胞株を用いた脱顆粒試験(β‐ヘキソサミニダーゼ放出活性の評価)
5×105 cellsのラット好塩基球様細胞株RBL-2H3(JCRB)をTyrode Buffer(Sigma)で洗浄した後、サンプル溶液及び10μMのcalcium ionophore A23187(Sigma)を含むTyrode Bufferで懸濁し、37℃で30分間反応させた。その後、5分間氷冷し、反応を停止させ、遠心分離により上清を回収した。
回収した上清に2mMのp-nitrophenyl N-2-actyl-β-D-glucosamine /citrate buffer (pH4.5) (Sigma)を加え、37℃でインキュベートした。30分間静置後、carbonate buffer (pH10)を添加して反応を停止させ、吸光波長405nmでβ‐ヘキソサミニダーゼを検出、定量した。
また、β‐ヘキソサミニダーゼ放出活性を脱顆粒反応の指標として、アレルギー反応及び炎症反応への影響を評価した。
6週齢、オスのNC/Nga マウスを日本SLCから購入した。 これらのマウスは12時間の明暗転サイクルが保たれた SPF (Specific pathogen free) 環境下で飼育した。 給餌及び給水は自由摂取とした。
アスパラガス抽出物を検討するため、それぞれのサンプルを1日1回経口投与した。比較対照であるコントロール群にはサンプル溶媒のみを投与した。 マウスのアトピー性皮膚炎を誘導するため、まず剃毛した胸部及び腹部、フットパットにエタノール/アセトン (3:1,v/v) に溶解した5重量%ピクリルクロライド(東京化成工業)を塗布した。続いて4日目から実験終了時までオリーブオイル(Filippo Berio)に溶解した1重量%ピクリルクロライドを1週間に一度背部及び耳介に塗布し、アトピー性皮膚炎を誘発させた。1週間に1度皮膚炎症症状を、(i)発赤・出血、(ii)浮腫、(iii)脱毛・組織欠損、(iv)乾燥、(v)発疹を0(無し)、1(軽度)、2(中程度)、3(重度)で点数化し、評価した。
また、尾より採血しIgE抗体量をELISA kit (eBioscience)により測定した。
原料アスパラガスとして、佐賀県産アスパラガス(Asparagus officinalis)を使用した。当該原料アスパラガスを可食部の茎部(穂先から25cm)と、非可食部の切下部(根元部分、下から2cm)に切り分け、茎部をさらに上部(7cm)、中部(9cm)、下部(9cm)に切り分けた(図1の左図参照)。
評価1−1:アスパラガス茎部(可食部)からのアスパラガス抽出物(茎部、加熱水蒸気処理、50%エタノール抽出物)によるRBL-2H3の脱顆粒阻害の評価
上述したアスパラガス茎部の上部、中部及び下部をそれぞれ1cm程度に切り分け、5分間加熱水蒸気処理(100℃の水蒸気)した後、凍結乾燥(−10℃以下で凍結し、その後室温(約25℃)で減圧乾燥、以下においても同様)を行い、得られた乾燥物を粉砕してアスパラガスパウダーとした。
得られたアスパラガスパウダー2gを50%エタノールに加え、室温(約25℃)で4時間撹拌した。その後、10,000g、4℃の条件で1時間遠心分離した後、上澄み液を2号の濾紙で濾過し、抽出液を回収した。得られた抽出液はエバポレーターにより有機溶媒を除去した後に、凍結乾燥を行い、実験例1のアスパラガス抽出物(茎部、50%エタノール抽出物)を得た。
加熱水蒸気処理したアスパラガス茎部に代えて、加熱処理を行っていない未加熱のアスパラガス茎部を使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1(非加熱)のアスパラガス抽出物(茎部、50%エタノール抽出物)を得た。
比較例1である非加熱のアスパラガス抽出物では、コントロール群とほとんど差がなく、β‐ヘキソサミニダーゼの放出にほぼ影響を及ぼしていない。これに対し、加熱処理を行った実施例1(加熱処理)の抽出物では上部、中部、下部のいずれも、β‐ヘキソサミニダーゼの放出を阻害した。
なお、実施例1(加熱5分間)と同様に、3分間から15分間加熱処理を行ったアスパラガス抽出物についても同様にβ‐ヘキソサミニダーゼの放出を阻害活性が確認された(図示せず)。
佐賀県産アスパラガスの茎部を使用し、上記1−1と同様を得たアスパラガスパウダーとした。
得られたアスパラガスパウダー2gずつをそれぞれ100mLの超純水、50%エタノール、又は80%エタノールに加え、室温(約25℃)で4時間撹拌した。
その後、アスパラガスパウダーと溶媒の混合物を撹拌後に、10,000g、4℃の条件で1時間遠心分離した後、上澄み液を2号の濾紙で濾過し、それぞれの抽出液を回収した。
超純水を用いて得た抽出液は0.22μmフィルター(Nunc)にかけ、凍結乾燥を行い、得られた乾燥物をアスパラガス抽出物(水抽出物)とした。
50%エタノール、80%エタノールを用いて得た抽出液はエバポレーターにより有機溶媒を除去した後に、凍結乾燥を行い、アスパラガス抽出物とした。
いずれの抽出物も細胞試験を行う際はジメチルスルホキシド (DMSO、Wako)もしくは50%エタノールに溶解し、0.22μmフィルターにかけ、使用した。
水抽出物、50%及び80%エタノール抽出物は濃度依存的にβ‐ヘキソサミニダーゼの放出を有意に阻害していることがわかる。
原料として、アスパラガス茎部から、アスパラガス切下部に代えた以外は、実施例1のアスパラガス抽出物の製造方法と同様にして、実施例2のアスパラガス抽出物(切下部、50%エタノール抽出物)を得た。
図3(右図)に加熱処理したアスパラガス切下部(非可食部)のβ‐ヘキソサミニダーゼの放出を阻害活性の評価結果を示す。また、図3には茎部(可食部)の結果も併せて示した。原料であるアスパラガス茎部及び切下部の加熱処理は5分、7分、10分とした。
その結果、図3(右図)に示すように、アスパラガス切下部から作製したアスパラガス抽出物は可食部と同様にβ‐ヘキソサミニダーゼの放出を抑制していることが確認された。
また、水―エタノール混合溶媒を抽出溶媒とした場合、得られるアスパラガス抽出物が優れたβ‐ヘキソサミニダーゼの放出作用を示すことが確認された。
アスパラガス抽出物のアレルギー反応への影響を検討するため、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて皮膚炎症症状及び血中IgE濃度への影響を検討した。なお、アスパラガス抽出物として茎部の50%エタノール抽出物を使用した。
実験は、上記実験方法(2)アトピー性皮膚炎モデルマウスへの影響の評価の通り行った。
同様に、図5はマウス耳介の皮膚炎症スコア及び試験開始12週目の耳介の様子を示したものである。この結果からも、アスパラガス抽出物投与群は炎症スコアの上昇を抑え、著しく耳介の炎症症状の悪化を予防したことが確認された。
また、図6に示されるように、アスパラガス抽出物の経口投与による血中IgE濃度への影響を評価したところ、アスパラガス抽出物の経口投与は肥満細胞や好塩基球等の脱顆粒反応の引き金となる血中IgE濃度を低下させることが確認された。
Claims (10)
- 以下の工程を有することを特徴とするアスパラガス抽出物の製造方法。
工程(1):原料アスパラガスを、温度80℃以上の条件で加熱処理する工程
工程(2):工程(1)で得られた加熱処理後のアスパラガスに抽出溶媒を接触させ、アスパラガス抽出物を得る工程 - 原料アスパラガスが、アスパラガスの切下部を含む請求項1に記載のアスパラガス抽出物の製造方法。
- 工程(1)における加熱処理を、水蒸気共存下で行う請求項1または2に記載のアスパラガス抽出物の製造方法。
- 工程(2)に供されるアスパラガスが、加熱処理後に減圧乾燥されたアスパラガスである請求項1から3のいずれかに記載のアスパラガス抽出物の製造方法。
- 工程(2)において、抽出溶媒が、エタノールまたはエタノールと水の混合溶媒である請求項1から4のいずれかに記載のアスパラガス抽出物の製造方法。
- β‐ヘキソサミニダ−ゼ放出抑制活性、脱顆粒抑制活性及びIgE抑制活性の少なくとも1以上の活性を有することを特徴とするアスパラガス抽出物。
- 請求項6に記載のアスパラガス抽出物を含有することを特徴とする医薬組成物。
- 請求項6に記載のアスパラガス抽出物を含有することを特徴とするサプリメント。
- 請求項6に記載のアスパラガス抽出物を含有することを特徴とする機能性食品。
- 請求項6に記載のアスパラガス抽出物を含有することを特徴とする化粧料組成物。
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