JP2018153754A - 触媒製造方法と触媒 - Google Patents

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良平 関
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Abstract

【課題】コアシェル構造を有するコアシェル金属が担持された触媒において、安定な発電性能を得る触媒の製造方法を提供すること。【解決手段】コア金属塩と錯化剤とを混合しコア金属錯体溶液を作製する工程と、シェル金属塩と錯化剤とを混合しシェル金属錯体溶液を作製する工程と、炭素粉末と分散剤とを混合し炭素粉末分散溶液を作製する工程と、上記コア金属錯体溶液と上記炭素粉末分散溶液とを混合し還元剤を投入する第1の還元工程と、上記シェル金属錯体溶液を投入後、還元剤を投入する第2の還元工程と、所定の温度にて乾燥する乾燥工程と、上記乾燥工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末に酸素を接触させる酸化工程と、上記酸化工程で得られた上記コアシェル金属粒子担持炭素粉末を酸性溶液に投入する酸性処理工程と、所定の温度にて乾燥・焼成する焼成工程と、を含む触媒製造方法を用いる。【選択図】図3A

Description

本発明は、コアシェル構造を有する白金族担持触媒の製造方法と触媒に関する。
固体高分子形をはじめとする燃料電池は、次世代の発電システムとして期待されており、中でも固体高分子形燃料電池は他の燃料電池と比較して動作温度が低く、コンパクトであるという利点から、家庭用、自動車用の電源としての利活用が期待されている。
そして、近年の燃料電池の普及に伴い、固体高分子形燃料電池用触媒に対して、単に活性に優れていることのみならず、様々な改善、特に触媒の低コスト化の観点から、触媒に使用される白金族の使用量、担体への担持量の低減が求められており、多数の検討がなされている。
その中で、近年注目されている技術として、コアシェル構造を有した触媒を用いることで白金の使用量を削減する技術が公知になっている。その一例として、コアシェル構造を有した触媒が開発されている。
ここでコアシェル構造について、図1A、図1Bを用いて説明する。安価な金属を用いたコア金属粒子1の表面に、燃料電池の触媒性能を発揮する貴金属(例えば白金)をシェル金属2として形成した構造を、コアシェル構造と述べる。具体的には、図1Aのように、コア金属粒子1の表面全体、もしくは、図1Bのようにコア金属の表面の一部にシェル金属2を形成した構造である。
コアシェル構造の実現手法として次の方法がある。例えばパラジウム塩と炭素粉末を混合・攪拌した後、還元・濾過・洗浄することで炭素粉末上にパラジウム粒子を担持させたパラジウム担持炭素粉末を得る。次に銅の前駆体を溶解した銅溶液中においてパラジウム担持炭素粉末に所定の電圧を印加させることで、パラジウム粒子の表面にCuを析出させる。
その後、濾過・洗浄させることでPd/Cuコアシェル構造を有した粒子が炭素粉末に担持されたPd/Cuコアシェル炭素粉末が得られる。次にPd/Cuコアシェル炭素粉末を白金前駆体を溶解させた溶液中に浸漬させることで、PtとCuのイオン化傾向の関係から、Cuが溶解・Ptが析出するため、Pd/Ptコアシェル構造を有した粒子が炭素粉末に担持されたPd/Ptコアシェル触媒が得られる(特許文献1)。
一方、コア金属を安価な金属、例えばFe、Ni、Cu、Coなどを用い、低コストを狙うことが知られている。
特開2012−157833号公報 特許第5699287号公報
特許文献1に示す触媒合成方法は、コア金属をカーボンに担持させる工程と、そのコア金属表面にCuを電析する工程、およびそのCuをPtと置換する工程で製造される。
しかしここで、カーボンに担持されたコア金属のすべてにおいて電析および置換が発生するわけではなく、コアシェル構造にならずコア金属のみの粒子の状態で存在するものがある。
図2を用いて説明する。図2は、カーボン担体の材質として多孔質なカーボンを用いた場合のコアシェル触媒の製造を示す図である。カーボン担体3の表面に存在するコア金属粒子1は、表面にシェル金属2を形成している。一方、カーボン担体3の細孔内部に存在するコア金属粒子1は、コアシェル構造を有さず、コア金属のみの状態になっている。
コア金属として、例えばFe、Ni、Cu、Coなどを使用し、コア金属のみの状態になっている粒子がカーボン担体上に存在すると、燃料電池としての性能に影響が発生する。具体的には、燃料電池の触媒として使用すると、使用する電位変化、および、使用時の触媒の環境により、コア金属が溶出し、触媒機能の特性劣化などを引き起こす。
例えばコア金属としてCuを用いた場合、発電中にCuの溶出と析出が起き、Cuが酸化されて非導電性の酸化銅となることで電気的抵抗成分になり、燃料電池の特性を劣化させる要因になる。
特許文献2において、コア金属を溶解する手段が示されているが、カーボン担体の細孔内部にコア金属のみの状態で存在するコア金属粒子については言及が無く、またコア金属がPdを含む金属の場合に限られている。
コア金属として比較的安定な金属、例えばPdを用いた場合、コア金属のみの状態になっている粒子がカーボン担体上に存在しても、触媒の特性に大きく影響することなく使用できる。しかし、Pdは希少金属であり、Ptよりは安価でも一般的な金属と比較すると高価であるため、コアシェル構造を有した触媒を用いる目的の低コスト化が十分には果たせない。
そこで本発明は、コアシェル金属の製造方法において、安価なコア金属を使用しても、シェルを形成しないコア金属粒子の残存を低減し、安定なコアシェル触媒を製造する方法と触媒を実現することを目的とする。
上記目的を達成させるために、コア金属塩と錯化剤とを混合しコア金属錯体溶液を作製する工程と、シェル金属塩と錯化剤とを混合しシェル金属錯体溶液を作製する工程と、炭素粉末と分散剤とを混合し炭素粉末分散溶液を作製する工程と、上記コア金属錯体溶液と上記炭素粉末分散溶液とを混合し還元剤を投入する第1の還元工程と、上記シェル金属錯体溶液を投入後、還元剤を投入する第2の還元工程と、所定の温度にて乾燥する乾燥工程と、上記乾燥工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末に酸素を接触させる酸化工程と、上記酸化工程で得られた上記コアシェル金属粒子担持炭素粉末を酸性溶液に投入する酸性処理工程と、所定の温度にて乾燥・焼成する焼成工程と、を含む触媒製造方法を用いる。
コア金属塩と錯化剤とを混合しコア金属錯体溶液を作製する工程と、シェル金属塩と錯化剤とを混合しシェル金属錯体溶液を作製する工程と、炭素粉末と分散剤とを混合し炭素粉末分散溶液を作製する工程と、上記コア金属錯体溶液と上記炭素粉末分散溶液と上記シェル金属錯体溶液とを混合し還元剤を投入する還元工程と、所定の温度にて乾燥する乾燥工程と、上記乾燥工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末に酸素を接触させる酸化工程と、上記酸化工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末を酸性溶液に投入する酸性処理工程と、所定の温度にて乾燥・焼成する焼成工程と、を含む触媒製造方法を用いる。
また、コア金属塩と錯化剤とを混合しコア金属錯体溶液を作製する工程と、シェル金属塩と錯化剤とを混合しシェル金属錯体溶液を作製する工程と、炭素粉末と分散剤とを混合し炭素粉末分散溶液を作製する工程とを有し、上記コア金属錯体溶液と上記炭素粉末分散溶液とを混合し還元剤を投入する第1の還元工程と、上記シェル金属錯体溶液を投入後、還元剤を投入する第2の還元工程と、所定の温度にて乾燥する乾燥工程と、上記乾燥工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末を、酸素雰囲気の酸性溶液に投入する酸化酸性処理工程と、所定の温度にて乾燥・焼成する焼成工程と、を含む触媒製造方法を用いる。
また、コア金属塩と錯化剤とを混合しコア金属錯体溶液を製造する工程と、シェル金属塩と錯化剤とを混合しシェル金属錯体溶液を製造する工程と、炭素粉末と分散剤とを混合し炭素粉末分散溶液を作製する工程とを有し、上記コア金属錯体溶液と上記炭素粉末分散溶液と上記シェル金属錯体溶液とを混合し還元剤を投入する還元工程と、所定の温度にて乾燥する乾燥工程と、上記乾燥工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末を、酸素雰囲気の酸性溶液に投入する酸化酸性処理工程と、所定の温度にて乾燥・焼成する焼成工程と、を含む触媒製造方法を用いる。
また、カーボン担体と、銅を含むコア金属とを含むコアシェル構造を有する触媒であって、上記コアシェル構造を形成しない銅の残渣量が、上記カーボン担体の重量の1%以下である触媒を用いる。
本発明によれば、安価なコア金属を用いたコアシェル構造を有する触媒を合成することができる。
従来のコアシェル構造の断面図 従来のコアシェル構造の断面図 従来のカーボンを用いた場合のコアシェル触媒の製造を示す部分断面図 実施の形態にかかるコアシェル金属担持触媒の製造工程概略図 実施の形態にかかるコアシェル金属担持触媒の製造工程概略図 実施の形態にかかる燃料電池の断面図 実施の形態にかかるコアシェル金属担持触媒の構造を示す図 実施の形態にかかる燃料電池の断面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の全ての図において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下、本実施の形態を詳細に説明するが、本実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
《実施形態》
<コアシェル金属担持触媒の製造方法>
燃料電池の構造におけるアノード電極もしくは、カソード電極に使用する白金族触媒として、本実施の形態のコアシェル金属担持触媒を用いる。
本実施の形態の実施形態にかかるコアシェル金属担持触媒の製造方法について図3Aを用いて説明する。
[1.コアシェル金属担持触媒の製造方法]
本実施の形態のコアシェル金属担持触媒の製造方法(以下適宜「本実施の形態の製造方法」と略称する。)は、概略以下である。
(1) コア金属粒子1の塩と錯化剤を溶液中で混合し、所定の条件(pH、温度、時間)で攪拌することで、コア金属粒子1となるコア金属の錯体を形成したコア金属粒子1の塩溶液を作成する。(工程1−1)
(2) 炭素粉末と分散剤を溶液中で混合し、所定条件(pH、温度、時間)で攪拌することで、炭素粉末分散溶液を作成する。(工程1−2)
(3) コア金属粒子1の塩溶液および前記炭素粉末分散溶液を混合後、所定条件(pH、温度、時間)にて攪拌し、還元剤と接触させることによりコア金属粒子1を還元させる。(工程1−3)
(4) (3)の溶液に、白金族塩と錯化剤を溶液中で混合し、所定の条件(pH、温度、時間)で攪拌すること作成した白金族塩溶液を混合し所定条件(pH、温度、時間)にて攪拌する。(工程1−4)
(5) さらに、還元剤と接触させることで、白金属塩を還元させコア金属粒子1の表面に白金族を含む金属層(シェル金属2)を形成したコアシェル金属粒子を担持したコアシェル金属担持触媒を合成する。または還元剤と接触させず、イオン化傾向の差でコアシェル金属担持触媒を合成する。(工程1−5)
(6) コアシェル金属担持触媒に酸素を接触させ、シェル金属2を形成していないコア金属粒子1、もしくはシェル金属2の形成が不完全なコア金属粒子1を酸化させて、酸性溶液で洗浄することで溶解させる。(工程1−6)
(7) コアシェル金属担持触媒を溶液から分離して乾燥処理し、必要に応じて熱処理などの後処理を加える。(工程1−7)
<特徴>
工程1−6により、シェル金属2を形成していないコア金属粒子1、もしくはシェル金属2の形成が不完全なコア金属を、炭素粉末の細孔内部に存在するものまで触媒から除去することで、安定なコアシェル触媒を実現することを主な特徴とする。
ここで図3A、図3Bの違いは、白金族塩溶液を投入するタイミングの違いを示しており、詳細については後述する。
なお、本実施の形態の製造方法は、固体高分子形燃料電池に使用される触媒に適用でき、コア金属塩及び白金族塩及び錯化剤並びに還元剤の種類、還元反応時のpHを制御することにより、金属塩の還元速度を制御し、コアシェル金属の粒子径や金属配合比などを制御することで、カソード電極触媒、アノード電極触媒などへ展開することが可能である。
材料コストを安くするために、触媒反応に寄与する白金をシェルに、コストが安い金属をコア金属に用いることが重要である。そこで本実施の形態の実施の形態では、コアシェル金属の一例として、コア金属に安価な銅を、シェル金属に白金を用いた場合におけるコアシェル金属担持触媒の製造方法を記述する。
<コアシェル金属担持触媒の製造方法の詳細>
[1−1.コア金属混合工程]
[コア金属塩111]
本実施の形態の製造方法に使用されるコア金属塩111(コア金属粒子1の塩)として銅化合物を用いる。銅の化合物としては、無機化合物(銅の酸化物、硝酸塩、硫酸塩等)、ハロゲン化物(銅の塩化物等)、有機酸塩(銅の酢酸塩等)、錯塩(銅のアンミン錯体等)、有機金属化合物(銅のアセトルアセトナート錯体等)等が挙げられる。
また、銅金属そのものを反応溶液中に溶解させて使用してもよい。
中でも、銅塩としては、ハロゲン化物、具体的には、銅の塩化物を用いることが特に好ましい。
なお、銅塩は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で組み合わせて用いてもよい。
[コア金属の錯化剤112]
本実施の形態の製造方法において、錯化剤112は極めて重要な因子である。
本実施の形態の製造方法は、錯化剤として、硫黄原子及び/又は窒素原子及び/又は酸素原子を含む有機化合物を使用することを特徴とする。
硫黄原子又は窒素原子又は酸素原子を含む錯化剤の例としては、有機酸、リン化合物、オキシム類、アミド類、アミン類、アルコール類等が挙げられる。
中でも、錯化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(Ethylenedinitrilotetraacetic acid)(略称EDTA:組成式C1016)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(hexadecyltrimethylammonium bromide)(略称CTAB:分子式C1942BrN)、ジエタノールアミン2(Diethanolamine)(略称DEA:分子式C11N)が、より好ましい。
なお、上記例示の各種の錯化剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[コア金属塩溶液113]
本実施の形態の製造方法では、コア金属塩111並びに錯化剤112を溶媒に溶解させた溶液(以下「コア金属塩溶液113」という。)を用いることを特徴とする。
溶媒の種類は、本実施の形態の課題を解決し効果を奏する限り何ら制限されないが、通常は水または有機溶媒が使用される。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。
中でも、溶媒としては、pHを制御しやすいという観点から、水が好ましく、特に蒸留水もしくは純水を用いることが好ましい。
なお、溶媒は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、コア金属塩溶液113はアルカリ性に調整することが好ましい。具体的には、反応液のpHを通常7以上、好ましくは8以上、更に好ましくは9以上とすることが望ましい。反応液のpHが低過ぎる、即ち、アルカリ性が弱過ぎると、コア金属錯体を安定に形成できない場合がある。
[PH調整剤]
コア金属塩溶液113のpHを調整する手法は制限されないが、通常はpH調整剤を用いる。pH調整剤としては、白金族塩中の白金族と配位しないか、或いは錯化剤によるコア金族の錯体形成を阻害しないほどの配位の程度が低い化合物であれば、その種類は制限されない。
pH調整剤の例としては、塩酸、硝酸、硫酸、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。中でも、硝酸、水酸化ナトリウム、塩酸が好ましい。
なお、pH調整剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記のように、溶媒にコア金属塩111及び錯化剤112及びpH調整剤を混合し、所定のpHに調整することで、コア金属に錯化剤112が配位したコア金属錯体の状態で溶媒中に溶解した、コア金属塩溶液113を得る。
なお、本実施の形態の製造方法では、コア金属塩及び錯化剤がコア金属塩溶液中に完全に溶解し、析出のない均一な溶液となるためには十分な時間をかけることが重要である。
以上の点が達成出来れば、コア金属塩111や錯化剤112やpH調整剤を溶解、混合する方法は、特に制限されるものではない。コア金属塩111や錯化剤112やpH調整剤を各々溶媒に溶解してから混合してもよく、コア金属塩及び錯化剤やpH調整剤を先に混合してから溶媒に溶解してもよい。
但し、コア金属塩溶液113における溶質の析出を防ぐために、溶媒に対するコア金属塩111及び錯化剤112の濃度や混合、溶解時の温度やpHを適切に選択することが望ましい。即ち、コア金属族塩溶液中におけるコア金属塩及び錯化剤及びpH調整剤の濃度を 、それぞれ、コア金属及び錯化剤の飽和溶解度以下の濃度とする。飽和溶解度は、コア金属塩及び錯化剤の種類や溶媒の種類、溶解時の温度等により異なるため、それに応じてコア金属塩及び錯化剤の濃度を選択すればよい。
一般に、コア金属塩溶液に対するコア金属塩111の濃度は、コア金属重量換算で、何れも通常0.001重量%以上、中でも0.005重量%以上、更には0.01重量%以上、また、通常10重量%以下、中でも5重量%以下、更には2重量%以下の範囲であることが好ましい。
また、コア金属塩111における金属原子の含有量の比率は、目的とするコア金属担持触媒の組成にほぼ一致した各コア金属原子仕込み比率とする。
コア金属塩111が有するコア金属原子に対する錯化剤112の使用量の比率は、コア金属塩111に配位する量論比以上が必要である。具体的に言えば、コア金属に配位する比率はpHと錯生成定数に依存するため所定の条件(pH等)下において適切な錯体が単独で生成することが可能となるだけの比率が必要である。錯化剤の比率が高過ぎると、溶解度の関係で結果的にコア金属濃度が低くなり、一回の操作で担持できるコア金属量が少なくなってしまう場合があり、また経済的にも好ましくない場合がある。一般的には 、量論比の通常1.0倍以上、また、通常10倍以下、中でも5倍以下、更には2倍以下 、特に1.5倍以下の範囲が好ましい。
なお、コア金属塩溶液113は、後述の還元反応を妨げない範囲において、上述のコア金属塩、錯化剤、及び溶媒に加え、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例としては、コア金属以外の安価な金属原子を有する金属塩等が挙げられる。なお、これらは一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[1−2.炭素粉末分散液工程]
[炭素粉末121]
本実施の形態に用いられる炭素粉末としては、比表面積が250〜1200m/gの炭素粉末121を適用することが望ましい。
250m/g以上とすることにより、触媒が付着する面積を増加させることができるので触媒粒子を高い状態で分散させ有効表面積を高くすることが可能となる。
一方、比表面積を1200m/gを超えると、電極を形成する際にイオン交換樹脂の進入しにくい超微細孔(約20Å未満)の存在割合が高くなり触媒粒子の利用効率が低くなる。
炭素粉末121としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。なお、これらは一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶媒の種類は、本実施の形態の課題を解決し効果を奏する限り何ら制限されないが、通常は水または有機溶媒が使用される。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。
中でも、溶媒としては、pHを制御しやすいという観点から、水が好ましく、特に蒸留水もしくは純水を用いることが好ましい。
なお、溶媒は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[炭素粉末分散液123]
本実施の形態では、炭素粉末121と溶媒の混合は、一般的な撹拌、混合器を用いて混合して、炭素粉末分散液123を得ることができる。この際、炭素粉末の溶媒への親和性を向上させる目的で、分散剤122を添加してもよい。
分散剤122としては、一般的な分散剤を用いることができるが、後段の工程であるコア金属およびシェル金属の還元反応において上記コア金属塩溶液113およびシェル金属塩溶液と混合される際に、コア金属錯体およびシェル金属錯体が沈澱または凝集しないようにすることが必要である。
また、炭素粉末分散液123は、前述のコア金属塩溶液がpH調整剤によりpHをアルカリ性に調整していることから、炭素粉末分散液も同様にアルカリ性に調整することが好ましい。具体的には、反応液のpHを通常7以上、好ましくは8以上、更に好ましくは9以上とすることが望ましい。反応液のpHが低過ぎる(即ち、アルカリ性が弱過ぎる)と、後段の白金族塩溶液との混合過程において錯体を形成できない場合がある。
pHを調整する手法は制限されないが、通常はpH調整剤を用いる。pH調整剤の例としては、塩酸、硝酸、硫酸、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。中でも、硝酸、水酸化ナトリウム、塩酸が好ましい。なお、pH調整剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[1−3.金属還元反応工程]
本実施の形態の製造方法は、図3Aのスキームに示すように、コア金属塩溶液113と炭素粉末分散液123を混合し、還元剤と接触させる。その後、コア金属を炭素粉末上へ担持させた後、その反応溶液に後述する白金族塩溶液を投入する。更に先に投入した還元剤もしくは異なる還元剤を新たに投入することでコア金属表面に白金族を有する層を形成するコアシェル構造を有する金属粒子を炭素粉末表面に担持させたコアシェル金属担持触媒を得ることを特徴とする。
ここで使用するコア金属の種類によっては、白金族塩溶液を投入後に接触させる還元剤がなくても、イオン化傾向の差によりコアシェル金属担持触媒を得ることも可能である。
また、本実施の形態の製造方法の別の手段として、図3Bのスキームに示すように、あらかじめ前述したコア金属塩溶液113と炭素粉末分散液123と白金族塩溶液を混合し、その後還元剤と接触させてコア金属および白金の還元反応を行なうことも可能である。その場合、本工程1−3を省略しても良い。
[還元剤131]
本実施の形態の製造方法に使用される還元剤は、コア金属塩溶液113および/もしくは炭素粉末分散液123の溶媒に可溶なものであれば、その種類は制限されない。
中でも、還元剤としては、ヒドラジン、L−アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
なお、上記例示の還元剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
還元剤の使用量としては、上記のコア金属塩溶液中に含有される全てのコア金属錯体を、十分にコア金属に還元できる量が好ましい。
一般的には、金属1当量に対して、通常1倍当量以上であればよく、還元反応の効率を考慮すれば、好ましくは1.2倍当量以上、より好ましくは1.5倍当量以上、更に好ましくは2倍当量以上が望ましい。また、未反応物の後処理等を考慮すると、上限としては通常、500倍当量以下、中でも100倍当量以下、更には40倍当量以下が好ましい。
コア金属塩溶液113と炭素粉末分散液123と還元剤131とを接触させる方法は制限されない。通常は、コア金属塩溶液113と炭素粉末分散液123を混合した混合溶液に還元剤を加えて攪拌し、コア金属の還元反応を行なえばよい。
なお、上述した混合溶液に還元剤を直接加えて混合してもよいが、混合溶液に対する混合、溶解を容易にするために、還元剤を予め所定の濃度になるように溶媒に溶解させておき、この溶液(以下、「還元剤溶液」という)を上述した混合溶液に加えてもよい。
この場合、溶媒としては、還元剤を溶解させることが可能なものであれば、その種類は制限されない。また、一種の溶媒を単独で用いてもよく、二種以上の溶媒を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。但し、通常はコア金属塩溶液113と同種の溶媒を用いることが望ましい。還元剤溶液における還元剤の濃度や、還元剤溶液の使用量も特に制限されない。還元剤溶液をコア金属塩溶液113に加えた場合に、コア金属塩溶液中の金属に対する還元剤の量が上記範囲を満たすように、適宜調整すればよい。
還元反応時の温度は、通常4℃以上、好ましくは10℃以上、また、通常沸点以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下の範囲である。
還元反応時の温度が高過ぎると、還元反応が速く進行する為、目的のコア金属化合物以外が生成する場合がある一方、温度が低過ぎると、還元力が弱すぎて目的のコア金属化合物を得ることができない場合がある。
[1−4.白金族塩溶液工程]
[白金族塩141]
本実施の形態の製造方法に使用される白金族塩141としては、無機化合物(白金族の酸化物、硝酸塩、硫酸塩等)、ハロゲン化物(白金族の塩化物等)、有機酸塩(白金族の酢酸塩等)、錯塩(白金族のアンミン錯体等)、有機金属化合物(白金族のアセトルアセトナート錯体等)等が挙げられる。また、白金族金属そのものを反応溶液中に溶解させて使用してもよい。
中でも、白金族塩としては、白金族を含有する無機化合物、白金族のハロゲン化物、又は白金族を含有する有機金属化合物を用いることが好ましく、具体的には、白金族の塩化物を用いることが特に好ましい。
なお、白金族塩は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で組み合わせて用いてもよい。
[錯化剤142]
本実施の形態の製造方法において、錯化剤142は極めて重要な因子である。
本実施の形態の製造方法は、錯化剤142として、硫黄原子及び/又は窒素原子を含む有機化合物を使用することを特徴とする。
硫黄原子又は窒素原子を含む錯化剤の例としては、有機酸、リン化合物、オキシム類、アミド類、アミン類、アルコール類等が挙げられる。
中でも、錯化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(Ethylenedinitrilotetraacetic acid)(略称EDTA:組成式C1016)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(hexadecyltrimethylammonium bromide)(略称CTAB:分子式C1942BrN)、ジエタノールアミン(Diethanolamine)(略称DEA:分子式CN)が、より好ましい。
なお、上記例示の各種の錯化剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[白金族塩溶液143]
本実施の形態の製造方法では、白金族塩141並びに錯化剤142を溶媒に溶解させた溶液(以下「白金族塩溶液143」という。)を用いることを特徴とする。
溶媒の種類は、本実施の形態の課題を解決し効果を奏する限り何ら制限されないが、通常は水または有機溶媒が使用される。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。
中でも、溶媒としては、pHを制御しやすいという観点から、水が好ましく、特に蒸留水もしくは純水を用いることが好ましい。
なお、溶媒は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、白金族塩溶液143はアルカリ性に調整することが好ましい。具体的には、反応液のpHを通常7以上、好ましくは8以上、更に好ましくは9以上とすることが望ましい。反応液のpHが低過ぎる、即ち、アルカリ性が弱過ぎると、白金族錯体を形成できない場合がある。
白金族塩溶液のpHを調整する手法は制限されないが、通常はpH調整剤を用いる。pH調整剤としては、白金族塩中の白金族と配位しないか、或いは錯化剤による白金族の錯体形成を阻害しないほどの配位の程度が低い化合物であれば、その種類は制限されない。
pH調整剤の例としては、塩酸、硝酸、硫酸、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。中でも、硝酸、水酸化ナトリウム、塩酸が好ましい。
なお、pH調整剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上述の溶媒に白金族塩141及び錯化剤142及びpH調整剤を混合し所定のpHに調整することで、白金族金属を錯化させ、白金族金属に錯化剤が配位した白金族錯体の状態で溶媒中に存在する白金族塩溶液143を得る。
なお、本実施の形態の製造方法では、白金族塩141及び錯化剤142が白金族塩溶液143中に完全に溶解し、析出のない均一な溶液となるためには十分な時間をかけることが重要である。
以上の点が達成出来れば、白金族塩141や錯化剤142やpH調整剤を溶解、混合する方法は、特に制限されるものではない。白金族塩141や錯化剤142やpH調整剤を各々溶媒に溶解してから混合してもよく、白金族塩141及び錯化剤142やpH調整剤を先に混合してから溶媒に溶解してもよい。
但し、白金族塩溶液143の析出を防ぐために、溶媒に対する白金族塩141及び錯化剤142の濃度や混合、溶解時の温度やpHを適切に選択することが望ましい。即ち、白金族塩溶液中における白金族塩141及び錯化剤142及びpH調整剤の濃度を 、それぞれ、白金族塩及び錯化剤の飽和溶解度以下の濃度とする。飽和溶解度は、白金族塩141及び錯化剤142の種類や溶媒の種類、溶解時の温度等により異なるため、それに応じて白金族塩141及び錯化剤142の濃度を選択すればよい。
一般に、白金族塩溶液143に対する白金族塩141の濃度は、白金族重量換算で、何れも通常0.001重量%以上、中でも0.005重量%以上、更には0.01重量%以上、また、通常10重量%以下、中でも5重量%以下、更には2重量%以下の範囲であることが好ましい。
また、白金族塩141における金属原子の含有量の比率は、目的とする白金族担持触媒の組成にほぼ一致した各白金族原子仕込み比率とする。
白金族塩141が有する白金族原子に対する錯化剤の使用量の比率は、白金族に配位する量論比以上であればよい。具体的に言えば、コア金属に配位する比率はpHと錯生成定数に依存するため所定の条件(pH等)下において適切な錯体が単独で生成することが可能となるだけの比率が必要である。錯化剤の比率が高過ぎると、溶解度の関係で結果的に白金族濃度が低くなり、一回の操作で担持できる白金族量が少なくなってしまう場合があり、また経済的にも好ましくない場合がある。一般的には 、量論比の通常1.0倍以上、また、通常10倍以下、中でも5倍以下、更には2倍以下 、特に1.5倍以下の範囲が好ましい。
なお、白金族塩溶液143は、後述の還元反応を妨げない範囲において、上述の白金族塩141、錯化剤142、及び溶媒に加え、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例としては、白金族以外の金属原子を有する金属塩等が挙げられる。なお、これらは一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、pH調整剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
pH調整剤を用いてpHを調整する手順は制限されない。還元反応が進行する前に、白金族塩が析出しない状態を保持したまま、反応液のpHを上記規定範囲内に調整することが出来ればよい。
なお、pH調整剤によるpHの調整は、一回で行なってもよいが、二回以上に分けて行なってもよい。
[1−5.金属還元反応工程]
本工程では、図3Aのスキームに示すように、工程1−3にてコア金属塩溶液中のコア金属に還元剤131を接触させることでコア金属を還元し、工程1−4で白金族塩溶液を追加投入した後、さらに還元剤151と接触させて白金の還元を行なうことで、コア金属表面へ白金を有する層を形成したコアシェル構造を有する金属を炭素粉末表面に担持させたコアシェル金属担持触媒を得ることを特徴とする。ここでコア金属の種類によっては、還元剤と接触させなくてもイオン化傾向の差によりコアシェル金属担持触媒を得ることができる。
または、図3Bのスキームに示すように工程1−3を実施しなかった場合、コア金属塩溶液113と炭素粉末分散液123と白金族塩溶液143を混合し、還元剤151と接触させることで、前述したコアシェル構造を有する金属を炭素粉末表面に担持させたコアシェル金属担持触媒を得ることを特徴とする。
[還元剤151]
本実施の形態の製造方法に使用される還元剤151は、白金族塩溶液143および/もしくはコア金属塩溶液113および炭素粉末分散液123の溶媒に可溶なものであれば、その種類は制限されない。
中でも、還元剤としては、ヒドラジン、L−アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
なお、上記例示の還元剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
還元剤の使用量としては、図3Aの製造方法では、白金族塩溶液143中に含有される全ての白金族錯体を、十分に白金族金属に還元できる量が好ましい。また図3Bの製造方法では、コア金属塩溶液113中に含有されるコア金属、および、白金族塩溶液143中に含有される全ての白金族錯体が十分にコア金属および白金族金属に還元できる量が好ましい。
一般的には、金属1当量に対して、通常1倍当量以上であればよく、還元反応の効率を考慮すれば、好ましくは1.2倍当量以上、より好ましくは1.5倍当量以上、更に好ましくは2倍当量以上が望ましい。また、未反応物の後処理等を考慮すると、上限としては通常、500倍当量以下、中でも100倍当量以下、更には40倍当量以下が好ましい。
なお、還元剤としてヒドラジンを使用する場合、ヒドラジンによる還元反応は還元される金属塩の種類やpH等、条件により還元反応が異なることが知られており、ヒドラジンの還元当量を一律で特定できないので、本実施の形態においては、ヒドラジン1モル当たり2当量とする。
コア金属塩溶液113と炭素粉末分散液123と白金族塩溶液143と還元剤151とを接触させる方法は制限されない。通常は、コア金属塩溶液113と炭素粉末分散液123と白金族塩溶液143を混合した混合溶液に還元剤151を加えて攪拌し、コア金属および白金族の還元反応を行なえばよい。
なお、上述した混合溶液に還元剤151を直接加えて混合してもよいが、混合溶液に対する混合、溶解を容易にするために、還元剤151を予め所定の濃度になるように溶媒に溶解させておき、この溶液(以下、「還元剤溶液」という)を上述した混合溶液に加えてもよい。
この場合、溶媒としては、還元剤を溶解させることが可能なものであれば、その種類は制限されない。また、一種の溶媒を単独で用いてもよく、二種以上の溶媒を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。但し、通常はコア金属塩溶液もしくは白金塩溶媒と同種の溶媒を用いることが望ましい。還元剤溶液における還元剤の濃度や、還元剤溶液の使用量も特に制限されない。還元剤溶液を白金族塩溶液143およびコア金属塩溶液113内の金属に対する還元剤の量が上記範囲を満たすように、適宜調整すればよい。
還元反応時の温度は、通常4℃以上、好ましくは10℃以上、また、通常沸点以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下の範囲である。
還元反応時の温度が高過ぎると、還元反応が速く進行する為、目的の白金族化合物以外が生成する場合がある一方、温度が低過ぎると、還元力が弱すぎて目的の白金族化合物を得ることができない場合がある。
[1−6.酸化酸性処理工程]
本工程では、図3Aのスキームに示すように、工程1−6にて以下の操作を行う。
工程1−5において製造したコアシェル金属担持触媒を形成した反応液から、コアシェル金属担持触媒を濾別、洗浄、乾燥させ、コアシェル金属担持触媒を固形物として得る。
次に得られたコアシェル金属担持触媒において、シェル金属2がコア金属粒子1の一部にしか存在しない粒子、もしくは、コア金属粒子1のみの状態で存在する粒子、つまり、(以降、コア金属の残渣と述べる。)に対し、酸素を触れさせた後、酸性溶液で除去する。ここでシェル金属がコア金属の一部にしか存在しない粒子とは、コア金属粒子の表面のうち、炭素粉末およびシェル金属に接している面積が50%以下である粒子のことを示している。
[酸素161]
本実施の形態の製造方法に使用される酸素161は、特に限定される必要はないが、以下の2つの方法が考えられ、単独もしくは組み合わせで実施することが可能である。
(1)コアシェル金属担持触媒の固形物を粉砕し、所定圧力の酸素もしくはAir雰囲気下で、所定温度にて所定時間さらした後、酸性溶液に投入する。
(2)コアシェル金属担持触媒を酸性溶液に投入し分散させた後、酸素もしくはAirをバブリングなどにより酸性溶液内へ供給しながら所定温度にて所定時間攪拌する。
[酸性溶液162]
本実施の形態の製造方法に使用される酸性溶液162は、特に限定される必要はないが、硝酸、硫酸、塩酸などの酸性溶液を用いることが可能である。ここで塩酸や硫酸は塩素や硫黄成分が残存し後から除去することを考えると、硝酸が望ましい。
ここでは、硝酸濃度0.1〜5mol/Lの水溶液中にコアシェル金属担持触媒を投入し攪拌させ、コア金属の残渣を除去する。
[1−7.後処理工程]
本工程では、上述の工程により得られたコアシェル金属担持触媒を分離するために濾過洗浄し、乾燥処理し、必要に応じて熱処理等の後処理工程を加える。
得られたコアシェル金属担持触媒を分離する方法としては、限定されるものではないが、例えば濾紙や濾布を用いた濾過法、遠心分離、沈降分離(デカンテーション等)等が挙げられる。中でも、一般的には濾過法が採用される。これらの手法は何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせで併用してもよい 。
分離されたコアシェル金属担持触媒を洗浄する場合、洗浄に用いる溶剤(洗浄溶剤)としては、コアシェル金属担持触媒と反応を生じるものや、コアシェル金属担持触媒の用途(触媒等の用途)に好ましからぬ影響を与えるものでない限り、限定されるものではないが、通常は上述の金属塩溶液に用いた溶媒と同種の溶媒が挙げられる。なお、洗浄溶剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分離(又は洗浄)後のコアシェル金属担持触媒を乾燥する場合、乾燥時の圧力は制限されるものではなく、常圧でも、減圧(又は真空)でも、加圧でもよいが、一般的には、常圧付近(常圧又は多少の加減圧)の条件下で乾燥を行なう。
乾燥方式としては、オーブン等の静置式乾燥、キルンやロータリーエバポレーターのような回転式乾燥、固定床気流乾燥、流動床乾燥、スプレードライヤー等の噴霧乾燥、ベルト炉等の移送型乾燥、フリーズドライ法等が挙げられるが、何れを用いてもよい。
乾燥方式の選定は処理量等に応じて決定されるが、何れの乾燥方式を用いる場合でも、ガスを流通させながら乾燥させるのが望ましい。
乾燥時に流通させるガスとしては、限定されるものではないが、経済的観点から、通常は空気、窒素等が使用される。また、コアシェル金属担持触媒の水素処理を行なう場合には、乾燥時に流通させるガスに水素を加えてもよい。
一方、乾燥後に水素処理をすることなくコアシェル金属担持触媒を所望の用途に用いる場合には、不活性ガスが好ましく、経済的観点からは窒素が好ましい。なお、これらのガスは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。また、高速に乾燥を行う観点からは、過熱水蒸気の流通下で乾燥を行なうことも好ましい。
乾燥時の温度も特に制限されない。残留する溶媒又は洗浄溶剤の融点以下で乾燥する凍結乾燥でも、残留する溶媒又は洗浄溶剤の融点から室温までの温度で乾燥する低温乾燥又は常温乾燥、室温よりも高い温度で残留する溶媒又は洗浄溶剤の蒸気圧を高める加熱乾燥の何れであってもよいが、一般的には加熱乾燥が用いられる。加熱乾燥の場合、乾燥温度は通常40℃以上、300℃以下の範囲である。流通させるガスが過熱水蒸気以外の場合には、急激な突沸を防ぐ観点から、残留する溶媒又は洗浄溶剤の沸点以下の温度で処理される。
乾燥後のコアシェル金属担持触媒に熱処理を行なう場合、熱処理の方式としては、オーブン等の静置式、キルンやロータリーエバポレーター等の回転式、固定床、流動床、ベルト炉等の移送式等が挙げられるが、何れを採用してもよい。
熱処理方式の選定は処理量等に応じて決定されるが、何れの熱処理方式を用いる場合でも、ガスを流通させながら乾燥させるのが望ましい。
流通させるガスとしては、酸素を含まないガスが好ましい。具体的には、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、水素等が挙げられる。これらのガスは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。中でも 、アルゴン、窒素又は水素を単独で、或いは混合物として用いることが好ましい。
熱処理の温度の下限は、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上である。
熱処理の温度の上限は、通常は白金族の融点以下であればよいが、高過ぎるとコア金属および白金族がシンタリングにより大きくなり 、金属表面積が低下することによって、得られたコアシェル金属担持触媒を使用した場合における触媒活性が低下する。従って、触媒の活性を向上させる観点からは、熱処理の温度の上限は、通常400℃以下、中でも350℃以下、更には300℃以下が好ましい。
<実施例>
更に本実施の形態におけるコアシェル金属担持炭素粉末の製造方法ついて、実施例を以下に示す。
まず、コア金属塩111としての塩化銅と、錯化剤112としての銅とに対して、モル数比で1〜50倍の錯化剤、pH調整剤として硝酸及び水酸化ナトリウムを用いる。上記コア金属塩、錯化剤を溶媒組成が10〜30wt%エタノール水溶液に溶解・分散させ、pH調整剤を用いてpHを10に調整することで錯体形成させ30℃で1〜12時間攪拌してコア金属塩溶液113を作製した(工程1−1)。
次に、炭素粉末121としてケッチェンブラックEC(ライオン社製)、分散剤122としてケッチェンブラックに対し重量比1〜50倍の分散剤を、pH調整剤として硝酸及び水酸化ナトリウムを用い、溶媒組成が10〜30wt%エタノール水溶液に溶解・分散させ、pH調整剤を用いてpHを調整することで炭素粉末分散液123を作成した(工程1−2)以降、ケッチェンブラックをカーボンと述べる。
次に還元剤を投入し、所定のpHでコア金属である銅を還元させた(工程1−3)。
次に白金族塩として六塩化白金酸、白金に対しモル数比で1〜50倍の錯化剤、pH調整剤として硝酸及び水酸化ナトリウムを用い、前記白金塩、錯体剤を溶媒組成が10〜30wt%エタノール水溶液に溶解・分散させ、pH調整剤を用いてpHを調整し30℃で2〜24時間攪拌して白金族錯体溶液を作成した(工程1−4)。
ここで攪拌時間は特に限定されるものではなく、錯形成の状態により調整するものである。
さらに工程1−3における前記コア金属塩溶液と炭素粉末分散液の混合液へ、工程1−4の白金族塩溶液を投入した。またあらかじめ10〜30wt%エタノール水溶液に、還元剤としてNaBHを溶解させ、pH調整剤として硝酸及び水酸化ナトリウムを添加して所定のpHに調整した還元剤溶液を調合した。
その後に、前記還元剤溶液を前記コア金属塩−粉末混合溶液内の白金に対して前記還元剤が1.5倍当量相当の前記還元剤溶液を前記コア金属‐炭素粉末−白金族塩混合溶液へ混合させ、30℃、1時間攪拌・放置することで、白金族金属が還元され、コア金属の表面に白金が析出することでコアシェル構造を有する金属が生成される。そのため表面にコアシェル金属が担持されたコアシェル金属担持炭素粉末の分散溶液が得られる。(工程1−5)
ここで還元剤は、必要に応じて投入しなくてもコアシェル構造を形成することも可能である。具体的に述べると、コア金属として銅を用いた場合、銅と白金は酸化還元電位差により、銅と白金の置換反応が発生することが知られている。その置換反応を用いて、還元剤を投入しなくてもコア金属である銅粒子の表面にシェル金属である白金が被覆したコアシェル金属粒子を形成することが可能である。
次に、コアシェル金属担持炭素粉末の分散溶液からコアシェル金属担持炭素粉末を濾過することで濾別し、十分な水で洗浄する。その後、所定の温度で乾燥させる。ここで温度は特に限定されるものではないが、30〜150℃で10min〜180min乾燥させた。また温度を高くしたくない場合は、減圧雰囲気にすることで乾燥することも可能である。
さらに乾燥後のコアシェル金属担持炭素粉末を酸素に接触させ、コア金属を酸化させた後、酸性溶液に接触させた。具体的には以下の2通りの方法で実施した。(工程1−6)
まず一つ目の方法について説明する。
コアシェル金属担持炭素粉末を、所定の圧力の酸素ガス雰囲気に所定の温度でさらし、酸素と接触させる。ここで圧力と温度は特に限定されるものではないが、0.2〜5atm、20〜80℃で1〜12hさらした。
ここで、あらかじめコアシェル金属担持炭素粉末を細粒状に粉砕しておくと効果が出やすく望ましい。また、コアシェル金属担持炭素粉末を酸素ガス雰囲気中で攪拌すると効果が出やすく望ましい。
その後、コアシェル金属担持炭素粉末を硝酸濃度0.1〜5mol/Lの硝酸水溶液に投入し、超音波を用いて分散させた後、30〜80℃で10min〜120min攪拌した。この酸化酸性処理の方法を、事前酸素接触法とする。
次に二つ目の方法について説明する。コアシェル金属担持炭素粉末を、硝酸濃度0.1〜5mol/Lの水溶液に投入し、超音波を用いて分散させた後、溶液内に酸素をバブリングして酸素リッチな雰囲気にする。酸素が十分存在する雰囲気の状態でコアシェル金属担持炭素粉末が分散された硝酸水溶液を30〜80℃で10min〜120min攪拌した。この酸化酸性処理の方法を、同時酸素接触法とする。
次に、工程1−6の処理の後、コアシェル金属担持炭素粉末を濾過により濾別させ、十分な水で洗浄し、減圧乾燥雰囲気で10min〜180min乾燥させた。その後、コアシェル金属担持炭素粉末に付着する不純物を除去する目的で150〜400℃で1h〜6h焼成し、最終形状のコアシェル金属担持炭素粉末を得た。(工程1−7)
<評価項目>
実施例の評価項目とし、コア金属Cuの残渣量評価方法と、コアシェル金属担持炭素粉末を燃料電池の触媒として利用したときの発電電圧評価方法を示す。
(コア金属Cuの残渣量評価)
工程1−1〜1−7を経て製造されたコアシェル金属担持炭素粉末を、硝酸濃度5mol/L以上の硝酸水溶液に投入し超音波分散させる。その後、80〜100℃で3h以上攪拌させたのち、硝酸水溶液内に溶解したCuの濃度を、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES法)を用いて定量的に評価する。その結果を基に、硝酸水溶液内全体に溶出したCuの重量を算出した。次にその量について、コアシェル金属担持炭素粉末中のカーボン重量に対する百分率を算出し、コア金属のであるCuの残渣量と定義した。
コア金属残渣量=
(溶出したCu重量/コアシェル金属担持炭素粉末中のカーボン重量)×100
(評価用の燃料電池セルの作製)
図4に示す燃料電池5の構造を有する発電評価装置を用いた。燃料電池5は、膜電極接合体10(以降MEA10と述べる)と、MEA10の両面に配置された一対の板状のアノードセパレータ20A、20Cとを有する。
アノード電極12A側に配置されたアノードセパレータ20Aには、アノードガス拡散層14Aと当接する主面に、燃料ガスを流すための燃料ガス流路21Aが設けられている。カソード電極12C側に配置されたカソードセパレータ20Cには、カソードガス拡散層14Cと当接する主面に、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路21Cが設けられている。
アノードセパレータ20Aと高分子電解質膜11との間には、燃料ガスが外部に漏れることを防ぐために、アノード触媒層13A及びアノードガス拡散層14Aの側面を覆うようにシール材としてアノードガスケット15Aが配置されている。また、カソードセパレータ20Cと高分子電解質膜11との間には、酸化剤ガスが外部に漏れることを防ぐために、カソード触媒層13C及びカソードガス拡散層14Cの側面を覆うようにシール材としてカソードガスケット15Cが配置されている。
この中で、MEA10の製造方法について説明する。具体的には、カソード電極12Cに本実施の形態における触媒を用い、燃料電池を構成し、その発電特性を検討するものである。カソード電極12Cの製造では、本実施の形態の比較例、実施例により製造したコアシェル金属担持炭素粉末を触媒として用い、所定比率に混合したエチルアルコール/水混合溶媒、もしくは2−プロパノール/n−プロパノール/水混合溶媒に分散させた。必要に応じて超音波を照射して分散させた。
次に、その分散溶液にイオノマーの5%溶液を所定量添加し攪拌混合した。ここでイオノマー量は、触媒を構成するカーボン重量に対し、0.5〜0.9倍相当になるように調整した。
次に、この混合溶液を、高分子電解質膜11へスプレー塗布し、白金量換算で0.05〜0.1mg/cmの所定量になるように調整して、塗布膜を形成した。
次に、この塗布膜を130〜170℃、5〜30kg/cmでホットプレスし、カソード電極を形成した。
アノード電極12Aは、アノード標準触媒としてTEC10E50E(田中貴金属製)を用い、カソード電極12Cと同等の製造方法で製造した。
完成したMEA10を用い、燃料電池5を構成して、以下の条件(実施例、比較例)で発電特性を評価した。
(燃料電池セルの発電電圧の評価)
ここで、MEA10の発電評価は、セル温度80℃、カソードおよびアノードの露点温度を65℃、酸素利用率、水素利用率を50〜80%。電流密度0.25mA/cmで発電させた電圧を発電電圧とした。ここで0.25mA/cmに設定した理由は、家庭用燃料電池で使用する電流密度を想定して設定している。しかし本実施の形態において、この電流密度について特に限定されるものではない。
<評価結果>
ここで工程1−6における、酸化酸性処理の条件を変化させた場合の評価結果を、表1に示し説明する。工程1−6以外は全ての条件で同様な処理を実施した。
Figure 2018153754
[比較例1]
酸化酸性処理を実施しない場合である。
[比較例2]
酸化酸性処理を実施せず、硝酸水溶液との接触のみ実施した場合である。硝酸水溶液は硝酸濃度1mol/Lとした。
[実施例1]
酸化酸性処理の方法として事前酸素接触法を用いた場合である。接触させる酸素ガスの圧力は0.2atmとした。また、硝酸水溶液は硝酸濃度1mol/Lとした。
[実施例2]
酸化酸性処理の方法として事前酸素接触法を用いた場合である。接触させる酸素ガスの圧力は1atmとした。また、硝酸水溶液は硝酸濃度1mol/Lとした。
[実施例3]
酸化酸性処理の方法として事前酸素接触法を用いた場合である。接触させる酸素ガスの圧力は2atmとした。また、硝酸水溶液は硝酸濃度1mol/Lとした。
[実施例4]
酸化酸性処理の方法として事前酸素接触法を用いた場合である。接触させる酸素ガスの圧力は3atmとした。また、硝酸水溶液は硝酸濃度1mol/Lとした。
[実施例5]
酸化酸性処理の方法として事前酸素接触法を用いた場合である。接触させる酸素ガスの圧力は1atmとした。また、硝酸水溶液は硝酸濃度3mol/Lとした。
[実施例6]
酸化酸性処理の方法として事前酸素接触法を用いた場合である。接触させる酸素ガスの圧力は1atmとした。また、硝酸水溶液は硝酸濃度5mol/Lとした。
[実施例7]
酸化酸性処理の方法として同時酸素接触法を用いた場合である。硝酸水溶液は硝酸濃度1mol/Lとし、酸素をバブリング供給しながら攪拌した。
[実施例8]
酸化酸性処理の方法として同時酸素接触法を用いた場合である。硝酸水溶液は硝酸濃度3mol/Lとし、酸素をバブリング供給しながら攪拌した。
[実施例9]
酸化酸性処理の方法として同時酸素接触法を用いた場合である。硝酸水溶液は硝酸濃度5mol/Lとし、酸素をバブリング供給しながら攪拌した。
<考察>
比較例1および比較例2では、Cu残渣量が多く、発電電圧が低いことが分かる。
実施例1〜8では、事前酸素接触法を用いることにより、Cu残渣量が減少することが確認できた。更に、接触させる酸素ガスの圧力が高いほどCu残渣量が減少する傾向が見られた。圧力が高くなることで、カーボン担体の細孔内部まで酸素が行き渡り、Cuがよく酸化されて、硝酸水溶液に溶出しやすくなったと推測する。また、Cu残渣量の減少に合わせて、発電電圧が高くなることが確認できた。
ここで、Cu残渣量の減少により、発電電圧が高くなる理由について図5と図6を用いて以下に説明する。
図5は、燃料電池で使用したカソード触媒層13Cにおける、Cu粒子31およびPtシェル32、カーボン担体3、酸化銅粒子34を示す図である。コアシェル構造を有さず、コア金属のみの状態になっていたCu粒子31は、使用時の電位変化や、供給されるガスおよび発電時の生成水などの環境変化によって、溶出と析出を起こす。この溶出と析出により、カーボン担体3の細孔内部に存在したCu粒子31は、細孔内部からカーボン担体3の表面へ移動する。この移動したCu粒子31は、カソード触媒層13Cに供給される酸素で容易に酸化され、酸化銅粒子34となる。
また、図6は、酸化銅粒子34が生じた燃料電池5を示す断面図である。Cu粒子31は、供給される酸化剤ガスおよび発電時にカソード触媒層13Cで生成された水によって、カソードガス拡散層14Cにも析出し、酸化銅粒子34として存在する。
酸化銅粒子34は非導電性であるため、カーボン担体3およびPtシェル32が接触する電子の移動系路上、およびカソードガス拡散層14Cに存在すると、電気的な抵抗成分となり、発電電圧の低下要因となる。
比較例1および比較例2においては、Cu残渣量が多いことから、使用時に残渣のCu粒子31から酸化銅粒子34が多く生じ、電気的な抵抗成分が増加して発電電圧が低くなったと考える。実施例1〜6においては、Cu残渣量が少ないことから、発電時に酸化銅粒子34が生じる量が少なく、電気的な抵抗成分が減少して、発電電圧が高くなったと考える。
なお、実施例3と実施例4から、Cu残渣量が1%を更に下回っても、発電電圧が更には高くならない傾向が見られた。これは、Cu残渣量1%以下では、残渣のCu粒子31から生じる酸化銅粒子34の量が、電気的な抵抗成分としては無視できるほど少ないものと推測する。
この結果から、事前酸素接触法において接触させる酸素ガスの圧力は、0.2atm以上、好ましくは2atm以上にすることが望ましい。
また、実施例2と実施例5および実施例6から、硝酸水溶液の硝酸濃度が5mol/Lでは、3mol/L以下よりも発電電圧が低くなる傾向が見られた。これは、硝酸濃度が高すぎると、カーボン担体表面が過度に化学処理されて劣化するためと推測する。
実施例7〜11では、同時酸素接触法を用いることにより、Cu残渣量が減少し、発電電圧が高くなることが確認できた。なお、事前酸素接触法を用いた場合と同様に、硝酸水溶液の硝酸濃度が5mol/Lでは、3mol/L以下よりも発電電圧が低くなる傾向が見られた。
この結果から、酸化酸性処理における硝酸水溶液の硝酸濃度は、0.1mol/L以上、好ましくは1mol/L以上にすることが望ましく、5mol/L以下、好ましくは3mol/L以下にすることが望ましい。
本発明のコアシェル構造を有する触媒の製造方法の用途は、特に制限されるものではないが、例えば固体高分子形燃料電池の電極触媒として用いることが可能である。
1 コア金属粒子
2 シェル金属
3 カーボン担体
5 燃料電池
10 MEA
11 高分子電解質膜
12A アノード電極
12C カソード電極
13A アノード触媒層
13C カソード触媒層
14A アノードガス拡散層
14C カソードガス拡散層
15A アノードガスケット
15C カソードガスケット
20A アノードセパレータ
20C カソードセパレータ
21A 燃料ガス流路
21C 酸化剤ガス流路
31 Cu粒子
32 Ptシェル
34 酸化銅粒子
111 コア金属塩
112 錯化剤
113 コア金属塩溶液
121 炭素粉末
122 分散剤
123 炭素粉末分散液
131 還元剤
141 白金族塩
142 錯化剤
143 白金族塩溶液
151 還元剤
161 酸素
162 酸性溶液

Claims (14)

  1. コア金属塩と錯化剤とを混合しコア金属錯体溶液を作製する工程と、
    シェル金属塩と錯化剤とを混合しシェル金属錯体溶液を作製する工程と、
    炭素粉末と分散剤とを混合し炭素粉末分散溶液を作製する工程と、前記コア金属錯体溶液と前記炭素粉末分散溶液とを混合し還元剤を投入する第1の還元工程と、
    前記シェル金属錯体溶液を投入後、還元剤を投入する第2の還元工程と、
    所定の温度にて乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末に酸素を接触させる酸化工程と、
    前記酸化工程で得られた前記コアシェル金属粒子担持炭素粉末を酸性溶液に投入する酸性処理工程と、
    所定の温度にて乾燥・焼成する焼成工程と、を含む触媒製造方法。
  2. コア金属塩と錯化剤とを混合しコア金属錯体溶液を作製する工程と、
    シェル金属塩と錯化剤とを混合しシェル金属錯体溶液を作製する工程と、
    炭素粉末と分散剤とを混合し炭素粉末分散溶液を作製する工程と、
    前記コア金属錯体溶液と前記炭素粉末分散溶液と前記シェル金属錯体溶液とを混合し還元剤を投入する還元工程と、
    所定の温度にて乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末に酸素を接触させる酸化工程と、
    前記酸化工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末を酸性溶液に投入する酸性処理工程と、
    所定の温度にて乾燥・焼成する焼成工程と、を含む触媒製造方法。
  3. 前記酸化工程で用いる酸素が、0.2〜5atmおよび20〜80℃の酸素ガスである請求項1および請求項2記載の触媒製造方法。
  4. 前記酸化工程で用いる酸素が、2〜5atmおよび20〜80℃の酸素ガスである請求項1および請求項2記載の触媒製造方法。
  5. コア金属塩と錯化剤とを混合しコア金属錯体溶液を作製する工程と、
    シェル金属塩と錯化剤とを混合しシェル金属錯体溶液を作製する工程と、
    炭素粉末と分散剤とを混合し炭素粉末分散溶液を作製する工程とを有し、
    前記コア金属錯体溶液と前記炭素粉末分散溶液とを混合し還元剤を投入する第1の還元工程と、
    前記シェル金属錯体溶液を投入後、還元剤を投入する第2の還元工程と、
    所定の温度にて乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末を、酸素雰囲気の酸性溶液に投入する酸化酸性処理工程と、
    所定の温度にて乾燥・焼成する焼成工程と、を含む触媒製造方法。
  6. コア金属塩と錯化剤とを混合しコア金属錯体溶液を製造する工程と、
    シェル金属塩と錯化剤とを混合しシェル金属錯体溶液を製造する工程と、
    炭素粉末と分散剤とを混合し炭素粉末分散溶液を作製する工程とを有し、
    前記コア金属錯体溶液と前記炭素粉末分散溶液と前記シェル金属錯体溶液とを混合し還元剤を投入する還元工程と、
    所定の温度にて乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程で得られたコアシェル金属粒子担持炭素粉末を、酸素雰囲気の酸性溶液に投入する酸化酸性処理工程と、
    所定の温度にて乾燥・焼成する焼成工程と、を含む触媒製造方法。
  7. 前記酸性溶液に酸素ガスをバブリング供給する請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒製造方法。
  8. 前記酸性溶液が0.1〜5mol/Lおよび30〜80℃の硝酸である請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒製造方法。
  9. 前記酸性溶液が1〜3mol/Lおよび30〜80℃の硝酸である請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒製造方法。
  10. 前記コア金属は、銅を含む金属である請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒製造方法。
  11. 前記シェル金属は、白金を含む金属である請求項1〜10のいずれか1項に記載の触媒製造方法。
  12. カーボン担体と、銅を含むコア金属とを含むコアシェル構造を有する触媒であって、
    前記コアシェル構造を形成しない銅の残渣量が、前記カーボン担体の重量の1%以下である触媒。
  13. 前記残渣量は、前記触媒を5mol/L以上の硝酸水溶液に投入し、80〜100℃で3h以上攪拌させたのち、硝酸水溶液中に溶解した銅の重量である請求項12記載の触媒。
  14. 前記コアシェル構造を形成しない銅とは、前記銅がシェル金属で覆われていない、または、一部覆われていない銅である請求項12または13記載の触媒。
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