[第1実施形態]
第1実施形態に係る発熱部材、加熱装置、定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。
〔全体構成〕
図1には、第1実施形態の画像形成装置10が示されている。なお、以下の説明では、図1に矢印Yで示す方向を装置高さ方向、矢印Xで示す方向を装置幅方向とする。また、装置高さ方向及び装置幅方向のそれぞれに直交する方向(Zで示す)を装置奥行き方向とする。そして、画像形成装置10を正面視して、装置高さ方向、装置幅方向、装置奥行き方向をY方向、X方向、Z方向と記載する。さらに、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれ一方側と他方側を区別する必要がある場合は、画像形成装置10を正面視して、上側をY側、下側を−Y側、右側をX側、左側を−X側、奥側をZ側、前側を−Z側と記載する。
画像形成装置10は、箱状の筐体11を有する。また、画像形成装置10は、搬送手段の一例としての搬送部12と、現像剤像形成手段の一例としての画像形成部14と、制御ユニット16と、定着装置20とを有する。搬送部12は、ロール対13を含んで構成されている。また、搬送部12は、搬送経路A、反転搬送路Bに沿って、被加熱体及び記録媒体の一例としての用紙Pを搬送する。制御ユニット16は、画像形成装置10の各部の動作を制御する。なお、制御ユニット16は、後述する複数の発熱部54(図4参照)の発熱状態を制御する制御部18を含んで構成されている。
画像形成部14は、一例として、4つの画像形成ユニット15を有している。また、画像形成部14は、搬送部12によって搬送される用紙P上に、公知の電子写真方式である帯電、露光、現像、転写の各工程を行うことで、トナーTを用いて、現像剤像の一例としてのトナー像Gを形成する。トナーTは、現像剤の一例である。定着装置20は、画像形成部14で形成されたトナー像Gを加熱及び加圧して用紙Pに定着する。
〔要部構成〕
次に、定着装置20について説明する。
図2に示す定着装置20は、一例として、定着ベルト22と、加圧ロール24と、支持部26と、押圧部28と、付勢部32と、加熱装置40とを有する。加熱装置40は、後述するように、発熱部材42を有している。
(定着ベルト)
定着ベルト22は、定着回転体の一例であり、ポリイミドなどの耐熱性樹脂からなる基層と、該基層上に積層されたフッ素樹脂からなる表層とを有するフィルム状の部材が、表層を外側にして無端状に形成された構成とされている。基層の厚さは、例えば80μmとされ、表層の厚さは、例えば30μmとされている。また、定着ベルト22は、搬送経路Aに対してトナー像G側にZ方向を軸方向として、該軸周りに回転可能に配置されており、後述する加圧ロール24が回転駆動されることによって周回(従動回転)する。そして、定着ベルト22は、回転しながら後述する発熱部54(図4参照)の発熱により加熱され、用紙P上のトナー像Gを用紙Pに定着するようになっている。
定着ベルト22における後述する加圧ロール24と押圧部28とに挟み込まれた部位を接触部23と称する。接触部23は、柔軟に変形可能となっている。なお、定着ベルト22は、外力が作用しない状態で支持されたときには、フィルム状の部材の剛性によってほぼ円筒状となる構成とされている。このときの定着ベルト22の外径は、一例として、30mmとされている。定着ベルト22のZ方向の幅は、用紙PのZ方向の幅よりも大きい寸法とされており、一例として、320mmとされている。後述する支持部26、押圧部28及び付勢部32は、定着ベルト22の内側に配置されている。定着ベルト22の内周面には、他の部材との接触による摩擦力を抑えるために図示しないオイルが塗布されている。
(加圧ロール)
加圧ロール24は、金属製の芯材24Aの外周面に弾性層24Bが形成され、弾性層24Bの外周面に表層24Cが積層された構成とされている。弾性層24Bは、一例として、シリコンスポンジ層とされ、表層24Cは、フッ素樹脂層とされている。また、加圧ロール24は、図示しないモータ及び伝達ギヤを含む駆動部によって回転駆動される。この駆動部が加圧ロール24を回転駆動することにより、定着ベルト22が、加圧ロール24の回転に同期して周回移動(従動)される。
(支持部)
支持部26は、Z方向を長手方向とする金属製で長尺の支持部材で構成されている。また、支持部26は、Z方向から見た場合に、接触部23に向けて開口する逆U字状に形成されている。
(押圧部)
押圧部28は、接触部23に対して定着ベルト22の回転方向における上流側に配置された第1押圧部材29と、下流側に配置された第2押圧部材31とを有する。第1押圧部材29と第2押圧部材31とは、支持部26によって連結されている。また、第1押圧部材29と第2押圧部材31とは、定着ベルト22の回転方向に隙間をあけて配置されている。この隙間が形成されていることにより、定着ベルト22の接触部23が柔軟に変形可能とされている。第1押圧部材29のX側の面には、ネジ25を用いて発熱部材42の一端部が固定される被固定部29Aが形成されている。また、第1押圧部材29の−X側の面には、凹部29Bが形成されている。第2押圧部材31の−X側の端部には、X側に向けて窪んだスリット31Aが形成されている。
(付勢部)
付勢部32は、接触部23の上流側端部の付近に配置された第1付勢部33と、接触部23とは反対側(X側)に配置された第2付勢部34とを有する。第1付勢部33は、耐熱性樹脂からなり、Z方向に延びると共に円弧状の曲面が発熱部材42に接触する第1接触部材33Aと、第1接触部材33Aを発熱部材42に向けて付勢するコイルバネ33Bとを有する。コイルバネ33Bの一端部は、第1押圧部材29の凹部29Bに取付けられている。このように、第1付勢部33は、接触部23における用紙Pの入口付近において、発熱部材42を定着ベルト22の内周面に向けて付勢している。
第2付勢部34は、支持部26のX側の面に設けられている。具体的には、第2付勢部34は、Z方向に延びると共に円弧状の曲面が定着ベルト22の内周面に接触する第1接触部材34Aと、第1接触部材34Aを定着ベルト22に向けて付勢する板バネ34Bとを有する。第2付勢部34が定着ベルト22に付勢力を作用させることにより、定着ベルト22には、周方向に張力が作用している。なお、第2付勢部34による付勢力は、第1付勢部33による付勢力よりも大きい。
<加熱装置>
加熱装置40は、定着ベルト22の内側に配置された発熱部材42と、発熱部材42に給電して発熱部材42を発熱させる給電手段の一例としての給電部46とを有する。なお、給電部46と発熱部材42とは、ケーブル44及びケーブル45により接続されている。
(発熱部材)
図3に示す発熱部材42は、一例として、Z方向を長手方向とする矩形状に形成された弾性変形可能な部材を部分的に屈曲させた構成とされている。また、発熱部材42は、Z方向と直交する方向に沿って、一端側から順に、第1固定部42Aと、第1屈曲部42Bと、円弧部42Cと、接触部42Dと、第2屈曲部42Eと、第2固定部42Fとを有する。なお、図3に示す発熱部材42は、接触部42Dが加圧された状態で示されているため、接触部42Dが平坦となっている。
図2に示すように、発熱部材42の各部の配置関係については、発熱部材42が定着ベルト22の内側で第1押圧部材29及び第2押圧部材31に固定された状態で、発熱部材42を−Z側からZ方向に見た状態で説明する。
第1固定部42Aは、Y方向及びZ方向に沿った平坦部とされており、第1押圧部材29の被固定部29AにX側から重ねられ、ネジ25を用いて第1押圧部材29に固定されている。第1屈曲部42Bは、第1固定部42Aの−Y側の端部が−X側に屈曲された部位である。円弧部42Cは、第1屈曲部42Bから1/4円弧状に湾曲された部位である。また、円弧部42Cの接触部42Dに近い側の部位は、第1付勢部33によって、定着ベルト22に向けて付勢されている。
接触部42Dは、定着ベルト22の内周面(接触部23)に接触する部位である。また、接触部42Dの短手方向の一部は、第1押圧部材29の−X側の端面と、第2押圧部材31の−X側の端面とに接触している。第2屈曲部42Eは、接触部42DのY側の端部がX側に屈曲された部位である。第2固定部42Fは、第2押圧部材31のスリット31Aに嵌め込まれて、接着剤により第2押圧部材31に固定されている。このように、発熱部材42は、第1押圧部材29及び第2押圧部材31に固定され、定着ベルト22の接触部23の内周面に接触している。そして、定着ベルト22の接触部23は、平坦な形状とされている。
図4には、発熱部材42をZ方向及びY方向に沿って広げた状態が模式的に示されている。なお、図4では、発熱部材42のZ方向の長さをY方向の長さに比べて縮小して示している。発熱部材42は、一例として、基材となるシート本体52と、複数(一例として5つ)の発熱部54と、5つの第1電極56と、1つの第2電極58と、4つの電流抑制部62とを有する。ここでは、発熱部材42を構成する各部材の厚さ方向をX方向として説明する。
シート本体52は、一例として、厚さが25μm程度のポリイミド樹脂製とされている。また、シート本体52は、後述する端子部56C、58Cを除いて、発熱部54、第1電極56、第2電極58及び電流抑制部62を両面から覆っている。言い換えると、発熱部材42では、端子部56C、58Cがシート本体52に対して露出されている。さらに、シート本体52には、発熱部材42を押圧部28(図2参照)にネジ25(図2参照)を用いて取り付けるための取付孔43が形成されている。
複数の発熱部54は、それぞれシート状(板状)に形成されている。また、複数の発熱部54は、Z方向の幅が異なる複数種類の用紙P(図1参照)上におけるトナー像Gの形成可能領域(Z方向の幅が最も大きい用紙PCに対応した領域)と対向するように、定着ベルト22のZ方向に並べられている。Z方向は、定められた方向の一例である。また、複数の発熱部54は、一例として、互いに同様の構成とされており、図4では、それぞれY方向に長い矩形状の部位として示されている。
図5に示すように、発熱部54は、ナノカーボンの一例としての複数のカーボンナノチューブCを含んで構成されている。カーボンナノチューブC単体は、1本の糸状(紐状)に形成されている。発熱部54では、複数のカーボンナノチューブCが絡み合った状態となっているため、この状態を繊維状と称する。ナノカーボンは、固体炭素材料のうち、原子位置を規定可能なものであり、ナノメートルの大きさの構造をもつカーボン(炭素)からなる物質の総称である。ナノカーボンには、カーボンナノチューブCの他に、グラフェンが含まれる。
また、発熱部54は、一例として、スクリーン印刷法により形成されている。スクリーン印刷法は、印刷したいパターンについて、予め電極用、発熱体用というように印刷領域毎に製版を作成しておき、電極用インク、発熱部用インクを順次、重ね印刷で形成する方法である。製版は、枠体にスクリーンを張り、スクリーンに感光液を塗布した後で残したい箇所に光を照射して硬化させ、光が照射されなかった部位を洗い流すことで行われる。
発熱部54の形成に用いた発熱部用インク(ペースト)は、一例として、溶媒となるN-メチルピロリドン(以後、NMPと称する)にポリイミド前駆体(ポリイミドワニス)とカーボンナノチューブCとを含有させた構成とされている。具体的には、NMP溶媒にポリイミド前駆体を混ぜた溶液と、NMP溶媒にカーボンナノチューブCを混ぜた溶液とを混ぜ合わせることで作成している。これは、それぞれの粉末をまとめてNMPに混ぜるよりも各分散質が均一に近い濃度のインクが作れるためである。
本実施形態では、一例として、予め形成されたシート本体52の一部(厚さ方向の中央よりも一方側の板状部)への発熱部用インクの塗布において、塗布時の発熱部用インクの厚さを100μm程度とした。なお、スクリーン印刷後、乾燥工程及び焼結工程によって発熱部用インク中の溶媒成分が揮発するため、形成された発熱部54の体積は減少する。このため、本実施形態では、焼成工程後の発熱部54の厚さが5μm以上30μm以下の範囲内となるように、塗布時の発熱部用インクの厚さを設定してある。
また、本実施形態では、一例として、発熱部54の焼成について、乾燥工程、仮焼成工程、本焼成工程により行った。乾燥工程では、焼成対象物を室温(25℃)で10分放置した。仮焼成工程では、焼成対象物を100℃のオーブンで10分間焼成した。本焼成工程では、焼成対象物を250℃で30分焼成した後で、360℃で30分真空プレスすることで焼成(焼結)を行い、30℃まで冷却させてから大気解放させた。なお、各条件は、使用するポリイミド前躯体によって変わる。なお、複数の発熱部54の具体的な形成方法については後述する。
図4に示す第1電極56は、一例として、樹脂に導電粒子を混合したものを溶媒中に分散させた電極用インク(例えば銀ペースト)をシート本体52の一部へ塗布(印刷)し、加熱することにより形成されている。また、第1電極56は、一例として、Z方向に長く発熱部54と接触する接触部56Aと、接触部56AのZ方向中央部から発熱部54側とは反対側に突出された突出部56Bと、突出部56Bに形成されシート本体52に対して露出する端子部56Cとを有する。
第2電極58は、複数の発熱部54を介して第1電極56側とは反対側に設けられている。また、第2電極58は、第1電極56と同じ電極用インクを既述のシート本体52の一部へ塗布(印刷)し、加熱することにより形成されている。さらに、第2電極58は、一例として、Z方向に長く発熱部54と接触する接触部58Aと、接触部58AのZ方向中央部から発熱部54側とは反対側に突出された突出部58Bと、突出部58Bに形成されシート本体52に対して露出する端子部58Cとを有する。端子部58Cは、接地される。
電流抑制部62は、Z方向に隣り合い接触する2つの発熱部54のZ側端部と−Z側端部とで構成されている。言い換えると、電流抑制部62は、2つの発熱部54の境界に配置されており、カーボンナノチューブC(図5参照)を含んでいる。ここで、発熱部54の中央部では多くのカーボンナノチューブCが絡み合っているが、電流抑制部62では、隣り合う一の発熱部54と他の発熱部54との間でカーボンナノチューブCが分断されている。つまり、電流抑制部62におけるカーボンナノチューブCの接触点の数は、発熱部54の中央部におけるカーボンナノチューブCの接触点の数に比べて少ない。
カーボンナノチューブCの接触点の数が少ないということは、電流が流れ難くなることを意味する。発熱部54のZ方向の中央部の電気抵抗(発熱部54単体の電気抵抗)を第1電気抵抗R1〔Ω〕と称し、電流抑制部62の電気抵抗を第2電気抵抗R2〔Ω〕と称する。ここで、R1<R2となっている。つまり、電流抑制部62は、第1電気抵抗R1に比べて隣り合う2つの発熱部54の間の第2電気抵抗R2が高くなるように、複数の発熱部54の間に配置されている。そして、電流抑制部62は、一の発熱部54から他の発熱部54へ流れる電流を抑制するようになっている。
発熱部材42について、以後の説明において、複数の発熱部54を区別する必要がある場合には、発熱部54A、発熱部54B、発熱部54Cと称して区別する。ここで、Z方向の中央に位置する1つの発熱部54を発熱部54Aと称する。また、発熱部54Aに対してZ側、−Z側に隣り合う2つの発熱部54を発熱部54Bと称する。さらに、2つの発熱部54Bに対して発熱部54A側とは反対側(両端側)に位置する2つの発熱部54を発熱部54Cと称する。なお、複数の発熱部54を区別する必要が無い場合は、単に発熱部54と称する。
<複数の発熱部及び電流抑制部の形成方法>
図7(A)、(B)、(C)、(D)には、シート本体52の一部及び複数の発熱部54について、厚さ方向の断面が模式的に示されている。図7(A)に示すように、シート本体52の一部を基材として、シート本体52上にZ方向に間隔dz(中心値で示す)をあけて発熱部用インクIhをスクリーン印刷(塗布)する。間隔dzの大きさは、1つの発熱部54(図4参照)のZ方向の幅とほぼ同じ大きさとされている。
なお、スクリーン印刷を行うと、発熱部用インクIhの粘度にもよるが、印刷後の端部形状が重力の作用によって垂直状態から斜めに崩れる(断面が矩形状から台形状となる)。本実施形態におけるスクリーン印刷では、スクリーン印刷時の製版からのインク透過率、スクリーン印刷後の形状変化(重力により台形状に崩れるときの動粘度、乾燥によって面積が収縮する割合、基材に対する濡れ性)をもとに、発熱部用インクIhを選定した。具体的には、発熱部用インクIhとして、500mpa・s以上10000mpa・s以下の範囲内の粘度を持つインクを用いた。粘度は、一般的に粘性式で表される。液体における粘度は、レイノルズ方程式、アンドレードの式などにより導出される。ポリイミド膜については、プラズマ処理を施すことにより濡れ性が改善することが分かっている。
続いて、塗布された発熱部用インクIhに対して、既述の乾燥工程及び仮焼成工程を行う。これにより、図6(A)及び図7(B)に示すように、シート本体52上にZ方向に間隔をあけた1つの発熱部54Aと2つの発熱部54Cとが形成される。
続いて、図6(B)及び図7(C)に示すように、シート本体52上の発熱部54Aと発熱部54Cとの間(間隔をあけた部位)に発熱部用インクIhを塗布する。そして、塗布された発熱部用インクIhに対して、既述の乾燥工程及び仮焼成工程を行う。これにより、図4に示すように、シート本体52上に発熱部54A、54B、54Cが形成される。ここで、発熱部54Aと発熱部54Bとが隣り合う部位、発熱部54Bと発熱部54Cとが隣り合う部位は、発熱部54単体に比べてカーボンナノチューブC(図5参照)の接触点の数が少ない電流抑制部62となる。
続いて、既述の本焼成工程を行った後で、シート本体52上に既述の方法により第1電極56及び第2電極58を形成し、発熱部54A、54B、54C、第1電極56の一部及び第2電極58の一部にポリイミド前駆体PI(図7(D)参照)を塗布して焼成する。これにより、図4及び図7(D)に示すように、発熱部材42が出来上がる。以上、説明したように、複数の発熱部54を複数回に分けて形成(スクリーン印刷)することにより、電流抑制部62が形成される。そして、電流抑制部62は、隣り合う発熱部54を電気的に分離させる。
図7(D)に示すように、電流抑制部62は、Z方向と発熱部54の厚さ方向とに直交する方向(用紙Pの搬送方向)から見た場合に、厚さ方向に対して交差する斜め方向に配置されている。電流抑制部62が斜め方向に配置されているということは、言い換えると、隣り合う発熱部54のZ方向の端部が発熱部材42の厚さ方向に重なっていることを意味する。
(ケーブル)
図2に示すケーブル44は、発熱部材42の複数の第1電極56の端子部56C(図4参照)と給電部46とを接続している。ケーブル45は、第2電極58の端子部58C(図4参照)と給電部46とを接続すると共に接地されている。
(給電部)
給電部46は、図示しない電源を含んで構成されており、ケーブル44、45を用いて各発熱部54に給電するようになっている。また、給電部46は、後述する制御部18によって、どの発熱部54に給電を行うかが制御されている。
<制御部>
図1に示す制御部18は、制御ユニット16内に設けられており、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、記憶部などを有する。CPUは、コンピュータの一例であり、画像形成装置10の全体的な動作を司る。
図4に示す発熱部材42に対して、制御部18(図1参照)は、複数(一例として5つ)の発熱部54の動作を制御する。具体的には、制御部18は、用紙PのZ方向の幅が広くなるときに、給電部46(図2参照)から給電される複数の発熱部54の数を増やす制御を行うように設定されている。ここで、制御部18では、Z方向の幅が最も小さい用紙PAに画像形成を行う場合には、給電部46から発熱部54Aのみに給電させる設定とされている。
また、制御部18(図1参照)では、Z方向の幅が2番目に大きい用紙PBに画像形成を行う場合には、給電部46から発熱部54A及び発熱部54B(3つの発熱部54)に給電させる設定とされている。さらに、制御部18では、Z方向の幅が最も大きい用紙PCに画像形成を行う場合には、給電部46から発熱部54A、発熱部54B及び発熱部54C(5つの発熱部54)に給電させる設定とされている。
〔作用〕
次に、第1実施形態の作用について説明する。
図4に示す発熱部材42では、隣り合う発熱部54の間に電流抑制部62が形成されているため、一の発熱部54から隣の発熱部54へ流れる電流が抑制される。言い換えると、一の発熱部54に給電して発熱させた場合に、複数の発熱部54が一体とされている構成と比べて、隣の発熱部54が発熱することが抑制される。これにより、各発熱部54における発熱量が制御される。
さらに、発熱部材42では、各発熱部54における発熱量が制御され、隣り合う発熱部54をZ方向に近づけることが可能となる。つまり、発熱部材42では、複数の発熱部54のZ方向の間隔を狭くすることが可能となるので、複数の発熱部54の間にスリットが形成されているものと比べて、Z方向の一部でスリットによって発熱量が低下することが抑制される。このように、発熱部材42では、複数の発熱部54の間にスリットが形成されているものと比べて、隣り合う発熱部54の境界に温度低下が生じること(熱の均一性が部分的に低下すること)が抑制される。
また、発熱部材42では、カーボンナノチューブC(図5参照)の接触点の数を、発熱部54におけるカーボンナノチューブCの接触点の数に比べて少なくすることで、電流抑制部62を形成している。ここで、電流抑制部62は、複数の発熱部54を複数回に分けてスクリーン印刷、乾燥及び焼成することで形成されているので、電流抑制部62を発熱部54に含まれる材料とは異なる材料で形成した構成に比べて、使用する材料の数が減る。
本実施形態の発熱部材42に対する比較例として、電流抑制部62が厚さ方向に真っ直ぐ配置されている構成では、電流が流れ難い部位が厚さ方向に沿って直線状に配置されることになり、この直線状の部位において、発熱量が低下する可能性がある。一方、本実施形態の発熱部材42では、用紙の搬送方向(図4に示すY方向)から見た場合に、電流抑制部62がX方向に対して斜め方向に配置されている。言い換えると、隣り合う発熱部54のZ方向の端部が、発熱部材42の厚さ方向に重なっている。このため、電流抑制部62が形成されている部位では、一の発熱部54及び他の発熱部54の少なくとも一方が発熱することになる。このように、発熱部材42では、電流抑制部62が形成された部位においても発熱する。これにより、電流抑制部62が厚さ方向に沿って配置されている構成に比べて、Y方向に移動する用紙Pへの発熱部材42からの熱供給量に、Z方向でムラが生じるのを抑制することができる。
図2に示す加熱装置30では、発熱部材42において、隣り合う発熱部54の境界に温度低下が生じることが抑制される。ここで、例えば、図4に示す発熱部54Aを発熱させて用紙PAを加熱した後で、発熱部54A、54B及び54Cを発熱させて用紙PCを加熱したとする。この場合に、加熱装置30では、電流抑制部62を有さない構成に比べて、各電流抑制部62において用紙PCに供給される熱量の低下が抑制される。つまり、加熱装置30では、スリットが形成された発熱部材を用いた構成に比べて、幅が広い用紙PCを加熱するときの用紙PCへの熱供給量が不足することが抑制される。
図2に示す定着装置20では、加熱装置30において幅が広い用紙PC(図4参照)を加熱するときの用紙PCへの熱供給量が部分的に不足することが抑制される。このため、定着装置20では、スリットが形成された発熱部材を用いた構成に比べて、用紙PCにトナーT(図1参照)を定着するときのトナーTへの熱供給量が不足することが抑制される。
図1に示す画像形成装置10では、用紙Pへの熱供給量が部分的に不足することが抑制される。このため、スリットが形成された発熱部材を用いた構成に比べて、トナーTへの熱供給量不足に起因するトナー像G(画像)の欠陥(例えば、コールドオフセットによる画像抜け、色ムラなど)が抑制される。
<第1変形例>
図8(D)には、第1実施形態の発熱部材42(図4参照)の第1変形例である発熱部材70が示されている。発熱部材70は、第1実施形態の画像形成装置10、定着装置20及び加熱装置30(図1参照)において、発熱部材42(図2参照)に換えて設けられている。画像形成装置10、定着装置20及び加熱装置30における発熱部材70以外の構成は、第1実施形態と同様である。
発熱部材70は、基材となるシート本体52と、5つの発熱部54と、第1電極56及び第2電極58(図4参照)と、電流抑制部72とを有する。電流抑制部72は、Z方向に隣り合い接触する2つの発熱部54のZ側端部と−Z側端部との間に、さらに、ポリイミド前駆体からなる絶縁層を形成した構成とされている。これにより、電流抑制部72では、カーボンナノチューブC(図5参照)が分断されている。
つまり、電流抑制部72におけるカーボンナノチューブCの接触点の数は、発熱部54におけるカーボンナノチューブCの接触点の数に比べて少ない。なお、電流抑制部72の電気抵抗(図示省略)を第3電気抵抗R3〔Ω〕として、既述の第1電気抵抗R1、第2電気抵抗R2と比べると、R1<R2<R3となっている。
発熱部材70の形成方法の一例として、図8(A)に示すように、シート本体52上にZ方向に間隔をあけて発熱部用インクIhをスクリーン印刷(塗布)する。そして、印刷された発熱部用インクIhのZ方向の端部(傾斜面)に、ポリイミド前駆体Kを塗布する。ポリイミド前駆体Kは、粘度が低いと薄膜化し易い。続いて、塗布された発熱部用インクIh及びポリイミド前駆体Kに対して、既述の乾燥工程及び仮焼成工程を行う。これにより、図8(B)に示すように、ポリイミド前駆体Kの膜が形成された複数の発熱部54が、Z方向に間隔をあけて形成される。
続いて、図8(C)に示すように、間隔をあけた部位に発熱部用インクIhを塗布して既述の乾燥工程及び仮焼成工程を行う。これにより、シート本体52上にZ方向に並んだ複数の発熱部54が形成される。ここで、ポリイミド前駆体Kが形成された部位は、発熱部54単体に比べてカーボンナノチューブC(図5参照)の接触点の数が少ない電流抑制部72となる。
続いて、既述の本焼成工程を行った後で、シート本体52上に第1電極56及び第2電極58(図4参照)を形成し、各発熱部54、第1電極56の一部及び第2電極58の一部にポリイミド前駆体PIを塗布して焼成する。これにより、図8(D)に示すように、発熱部材70が出来上がる。
得られた発熱部材70では、電流抑制部72によって、一の発熱部54から隣の発熱部54へ流れる電流が抑制される。これにより、各発熱部54における発熱量が制御される。さらに、発熱部材70では、複数の発熱部54の間隔を狭くする(複数の発熱部54を近づける)ことが可能となるので、複数の発熱部54の間にスリットが形成されているものと比べて、Z方向の一部でスリットによって発熱量が低下することが抑制される。つまり、発熱部材70では、複数の発熱部54の間にスリットが形成されているものと比べて、隣り合う発熱部54の境界に温度低下が生じることが抑制される。
<第2変形例>
図9(D)には、第1実施形態の発熱部材42(図4参照)の第2変形例である発熱部材80が示されている。発熱部材80は、第1実施形態の画像形成装置10、定着装置20及び加熱装置30において、発熱部材42(図2参照)に換えて設けられている。画像形成装置10、定着装置20及び加熱装置30における発熱部材80以外の構成は、第1実施形態と同様である。
発熱部材80は、基材となるシート本体52と、5つの発熱部54と、第1電極56及び第2電極58(図4参照)と、電流抑制部82とを有する。電流抑制部82は、Z方向に隣り合い接触する2つの発熱部54のZ側端部と−Z側端部との間に、さらに、ポリイミド前駆体Kからなる絶縁層を形成した構成とされている。これにより、電流抑制部82では、カーボンナノチューブC(図5参照)が分断されている。なお、電流抑制部82の電気抵抗(図示省略)を第4電気抵抗R4〔Ω〕として、既述の第1電気抵抗R1、第2電気抵抗R2と比べると、R1<R2<R4となっている。また、発熱部材80は、各発熱部54の上面又は下面にもポリイミド前駆体Kからなる絶縁層が形成された構成とされている。
図9(A)、(B)、(C)、(D)には、発熱部材80の形成工程が示されている。発熱部材80の形成工程は、発熱部用インクIhをスクリーン印刷(塗布)した後で、シート本体52も含めた表面全体にインクジェットやエアブラシなどの手段を用いてポリイミド前駆体Kを塗布して仮焼成した点が、発熱部材70(図8(D)参照)と異なる。なお、表面全体にポリイミド前駆体Kを塗布した以外の工程については、発熱部材70の形成工程と同様であるため、説明を省略する。
得られた発熱部材80では、電流抑制部82によって、各発熱部54における発熱量が制御される。さらに、発熱部材80では、複数の発熱部54の間にスリットが形成されているものと比べて、隣り合う発熱部54の境界に温度低下が生じることが抑制される。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る発熱部材、加熱装置、定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図10には、第2実施形態の発熱部材90が示されている。発熱部材90は、第1実施形態の画像形成装置10、定着装置20及び加熱装置30において、発熱部材42(図2参照)に換えて設けられている。画像形成装置10、定着装置20及び加熱装置30における発熱部材90以外の構成は、第1実施形態と同様である。
発熱部材90は、一例として、基材となるシート本体52と、8つの発熱部92と、4つの第1電極94と、4つの第2電極96と、4組の中継部97と、7つの電流抑制部98とを有する。ここでは、発熱部材90を構成する各部材の厚さ方向をX方向、発熱部材90の長手方向(定められた方向)をZ方向、発熱部材90の短手方向(定着ベルト22(図2参照)の周方向)をY方向として説明する。
8つの発熱部92は、それぞれシート状(板状)に形成されている。また、8つの発熱部92は、複数種類の用紙P(図1参照)上におけるトナー像Gの形成可能領域と対向するように、Z方向に並べられている。また、8つの発熱部92は、X方向から見た場合に、Z側端及び−Z側端に配置された2つの台形状の発熱部92Aと、2つの発熱部92Aの間に配置された6つの矩形状の発熱部92Bとで構成されている。さらに、発熱部92は、発熱部54(図4参照)と同様の材料で構成されている。つまり、発熱部92は、複数のカーボンナノチューブC(図5参照)を含んで構成されている。また、発熱部92は、発熱部54(図4参照)と同様に、スクリーン印刷法により形成されている。
発熱部92A及び発熱部92Bは、それぞれの図示しない中心軸線がY方向に対して交差する斜め方向に沿うように、Y方向に対して斜めに傾けて配置されている。言い換えると、発熱部92A及び発熱部92Bは、X方向から見た場合に、Z方向と交差する。さらに、発熱部92A及び発熱部92Bは、Z方向の端部がそれぞれ接触している。言い換えると、8つの発熱部92は、Z方向に隣り合う発熱部92の一方のZ側端部と、他方の−Z側端部とがY方向から見た場合に重なるように配置されている。
第1電極94は、発熱部材90のZ方向中央よりもZ側に配置された1つの発熱部92Aと3つの発熱部92Bとに対して1つずつ設けられている。第1電極94の形成方法は、既述の第1電極56(図4参照)と同様である。また、第1電極94は、発熱部92A、92Bと接触する接触部94Aと、接触部94AのZ方向中央部から突出された突出部94Bと、突出部94Bに形成されシート本体52に対して露出する端子部94Cとを有する。
第2電極96は、発熱部材90のZ方向中央よりも−Z側に配置された1つの発熱部92Aと3つの発熱部92Bとに対して1つずつ設けられている。また、それぞれの第2電極96は、1つにまとめられている。第2電極96の形成方法は、既述の第2電極58(図4参照)と同様である。また、第2電極96は、発熱部92A、92Bと接触する接触部96Aと、1つにまとめられた突出部96Bと、突出部96Bに形成されシート本体52に対して露出する端子部96Cとを有する。端子部96Cは、接地される。
中継部97は、発熱部材90のZ方向中央に対してZ側、−Z側に配置された1組の発熱部92A、3組の発熱部92Bについて、第1電極94側又は第2電極96側とは反対側の部位をそれぞれ1組ずつ接続している。
電流抑制部98は、Z方向に隣り合い接触する2つの発熱部92のZ側端部と−Z側端部とで構成されている。言い換えると、電流抑制部98は、2つの発熱部92の境界部として形成されている。電流抑制部98におけるカーボンナノチューブC(図5参照)の接触点の数は、発熱部92単体におけるカーボンナノチューブCの接触点の数に比べて少ない。このため、発熱部92単体の第1電気抵抗をR1、電流抑制部98の第2電気抵抗をR2とすると、R1<R2となっている。
また、電流抑制部98は、Z方向と交差する(Z方向に対して鋭角の角度θAで交差する)交差方向に延びている。さらに、電流抑制部98は、Z方向と発熱部92の厚さ方向とに直交する方向(用紙Pの搬送方向)から見た場合に、厚さ方向に対して交差する斜め方向に配置されている。電流抑制部98が斜め方向に配置されているということは、言い換えると、隣り合う発熱部92のZ方向の端部が、発熱部材90の厚さ方向に重なっている。
〔作用〕
次に、第2実施形態の作用について説明する。
発熱部材90では、電流抑制部98によって、一の発熱部92から隣の発熱部92へ流れる電流が抑制される。これにより、各発熱部92における発熱量が制御される。さらに、発熱部材90では、複数の発熱部92の間隔を狭くすることが可能となるので、複数の発熱部92の間にスリットが形成されているものと比べて、Z方向の一部でスリットによって発熱量が低下することが抑制される。つまり、発熱部材90では、複数の発熱部92の間にスリットが形成されているものと比べて、隣り合う発熱部92の境界に温度低下が生じることが抑制される。
加えて、発熱部材90において、電流抑制部98が、Z方向と交差する交差方向に延びている。このため、Y方向に移動する用紙Pにおいて加熱され難い部位が少なくなるので、発熱部92がY方向に沿って延びている構成に比べて、Y方向に移動する用紙Pへの発熱部材90からの熱供給量に、Z方向でムラが生じることが抑制される。
また、発熱部材90において、Y方向から見た場合に、電流抑制部98が斜め方向に配置されている。このため、電流抑制部98が形成されている部位では、一の発熱部92及び他の発熱部92の少なくとも一方が発熱することになる。このように、発熱部材90では、電流抑制部98が形成された部位においても発熱する。これにより、電流抑制部98がX方向に沿って配置されている構成に比べて、Y方向に移動する用紙Pへの発熱部材90からの熱供給量に、Z方向でムラが生じることが抑制される。なお、加熱装置30、定着装置20、画像形成装置10における作用は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る発熱部材、加熱装置、定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図11には、第3実施形態の発熱部材100が示されている。発熱部材100は、第1実施形態の画像形成装置10、定着装置20及び加熱装置30において、発熱部材42(図2参照)に換えて設けられている。画像形成装置10、定着装置20及び加熱装置30における発熱部材100以外の構成は、第1実施形態と同様である。
発熱部材100は、一例として、基材となるシート本体52と、5つの発熱部102と、5つの第1電極56と、1つの第2電極58と、4つの電流抑制部104とを有する。ここでは、発熱部材100を構成する各部材の厚さ方向をX方向、発熱部材100の長手方向(定められた方向)をZ方向、発熱部材100の短手方向(定着ベルト22(図2参照)の周方向)をY方向として説明する。
5つの発熱部102は、それぞれシート状(板状)に形成されている。また、複数の発熱部102は、複数種類の用紙P(図1参照)上におけるトナー像Gの形成可能領域と対向するように、Z方向に並べられている。なお、5つの発熱部102は、5つの第1電極56に合わせて配置されているが、外観上は1つの発熱部として視認される。発熱部102は、発熱部54(図4参照)と同様に複数のカーボンナノチューブCを含んで構成されている。
電流抑制部104は、Z方向に隣り合い接触する2つの発熱部102のZ側端部と−Z側端部とで構成されている。言い換えると、電流抑制部104は、2つの発熱部102の境界部として形成されている。なお、発熱部材100の外観上は、電流抑制部104が視認されない。電流抑制部104は、含まれるカーボンナノチューブCの異方性によって形成されており、外観上は発熱部102との差異が見られないためである。電流抑制部104におけるカーボンナノチューブCの接触点の数は、発熱部102単体におけるカーボンナノチューブCの接触点の数に比べて少ない。このため、発熱部102単体の第1電気抵抗をR1、電流抑制部104の第2電気抵抗をR2とすると、R1<R2となっている。
発熱部102及び電流抑制部104の形成方法の一例について説明する。ここでは、発熱部用インクに電場を作用させることで、異方性を発現させる方法を用いる。まず、長手方向の長さが短い(例えば1μm程度の)単層のカーボンナノチューブCを既述のNMP溶媒に分散させた溶液にポリイミド前駆体を混ぜ合わせて発熱部用インクとする。異方性を発現させるために、カーボンナノチューブCは、絡み合っている状態から1本ずつに分離しておく必要がある。異方性を発現させるためにはインク粘度は低いほうがよく、一例として、500mPa・sの単層カーボンナノチューブ含有インクを用いてスクリーン印刷を行う。なお、インク粘度が500mPa・sよりも低い場合は、インクジェット方式により印刷を行うとよい。
スクリーン印刷を行うときに、印刷領域に電場を作用させる。カーボンナノチューブCの異方性を発現させるためには、電界強度、周波数、印加時間を制御する。なお、周波数を50Hz、500Hz、5kHzで比較すると、周波数が高い5kHzにおいて、異方性が発現しやすい。印加時間については、5分、10分、15分で比較すると、10分が好ましい。
以上、説明した方法で形成された発熱部材100において、電流抑制部104におけるカーボンナノチューブCのZ方向に対する第1配向角度θ1は、発熱部102におけるカーボンナノチューブCのZ方向に対する第2配向角度θ2よりも小さい異方性を有する。なお、図11では、第1配向角度θ1で斜めに並ぶ複数のカーボンナノチューブCを含む部位が電流抑制部104を表しており、第2配向角度θ2で縦に並ぶ複数のカーボンナノチューブCを含む部位が発熱部102を表している。
〔作用〕
次に、第3実施形態の作用について説明する。
発熱部材100では、電流抑制部104によって、一の発熱部102から隣の発熱部102へ流れる電流が抑制される。これにより、各発熱部102における発熱量が制御される。さらに、発熱部材100では、複数の発熱部102の間隔を狭くすることが可能となるので、複数の発熱部102の間にスリットが形成されているものと比べて、Z方向の一部でスリットによって発熱量が低下することが抑制される。つまり、発熱部材100では、複数の発熱部102の間にスリットが形成されているものと比べて、隣り合う発熱部102の境界に温度低下が生じることが抑制される。
加えて、発熱部材100では、一度に発熱部用インクを塗布した後で電場を作用させることで、複数の発熱部102及び複数の電流抑制部104が形成される。このため、複数回に分けて発熱部102を形成した構成に比べて、隣り合う発熱部102の厚さの差が小さくなる。言い換えると、発熱部材100では、絡み合ったカーボンナノチューブCを用いる構成に比べて、電流抑制部104に段差が形成されることが抑制される。なお、加熱装置30、定着装置20、画像形成装置10における作用は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る発熱部材、加熱装置、定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図12(B)には、第4実施形態の発熱部材110が示されている。発熱部材110は、第1実施形態の画像形成装置10、定着装置20及び加熱装置30において、発熱部材42(図2参照)に換えて設けられている。画像形成装置10、定着装置20及び加熱装置30における発熱部材110以外の構成は、第1実施形態と同様である。
発熱部材110は、一例として、基材となるシート本体52と、5つの発熱部112と、5つの第1電極114と、1つの第2電極116と、4つの電流抑制部118とを有する。ここでは、発熱部材110を構成する各部材の厚さ方向をX方向、発熱部材110の長手方向(定められた方向)をZ方向、発熱部材110の短手方向(定着ベルト22(図2参照)の周方向)をY方向として説明する。
発熱部112は、シート状(板状)に形成されている。また、発熱部112は、複数種類の用紙P(図1参照)上におけるトナー像Gの形成可能領域と対向するように、Z方向に5つ並べられている。具体的には、発熱部112は、Z方向の両外側に配置された2つの発熱部112Aと、2つの発熱部112Aの間でZ方向に並ぶ3つの発熱部112Bとで構成されている。また、発熱部112は、発熱部54(図4参照)と同様に複数のカーボンナノチューブC(図5参照)を含んで構成されている。さらに、発熱部112は、一例として、スクリーン印刷法により形成されている。
2つの発熱部112Aは、それぞれX方向から見た場合にZ方向の外側を上底とし内側を下底とする台形状に形成されている。言い換えると、2つの発熱部112Aは、それぞれZ方向の内側から外側へ向けてY方向の長さが徐々に短くなる形状とされている。3つの発熱部112Bは、それぞれX方向から見た場合にZ方向を短手方向としY方向を長手方向とする矩形状に形成されている。
第1電極114は、2つの発熱部112Aに対して1つずつ設けられた外側電極114Aと、3つの発熱部112Bに対して1つずつ設けられた内側電極114Bとを有する。第1電極114の形成方法は、既述の第1電極56(図4参照)と同様である。また、それぞれの第1電極114は、発熱部112A、112Bと接触する接触部115Aと、接触部115AのZ方向中央部から突出された突出部115Bと、突出部115Bに形成されシート本体52に対して露出する端子部115Cとを有する。
第2電極116は、2つの発熱部112A及び3つの発熱部112Bに対して1つ設けられている。第2電極116の形成方法は、既述の第2電極58(図4参照)と同様である。また、第2電極116は、発熱部112A、112Bと接触する接触部116Aと、接触部116AのZ方向中央部から突出された突出部116Bと、突出部116Bに形成されシート本体52に対して露出する端子部116Cとを有する。端子部116Cは、接地される。
ここで、発熱部材110では、Z方向における最も外側に配置された第1電極114(外側電極114A)と第2電極116との第1間隔d1が、Z方向における内側に配置された第1電極114(内側電極114B)と第2電極116との第2間隔d2よりも狭い。なお、発熱部112Aが台形状であるため、第1間隔d1については、発熱部112AにおけるZ方向の中央位置でのY方向の長さを代表値として示している。
電流抑制部118は、Z方向に隣り合い接触する2つの発熱部112のZ側端部と−Z側端部とで構成されている。言い換えると、電流抑制部118は、2つの発熱部112の境界部として形成されている。なお、発熱部材110の外観上は、電流抑制部118は視認されない。電流抑制部118におけるカーボンナノチューブC(図5参照)の接触点の数は、発熱部112単体におけるカーボンナノチューブCの接触点の数に比べて少ない。このため、発熱部112単体の第1電気抵抗をR1、電流抑制部118の第2電気抵抗をR2とすると、R1<R2となっている。
発熱部材110、第1電極114、第2電極116及び電流抑制部118の形成方法は、形成位置及び角度を除いて第1実施形態と同様である。図12(A)に示すように、シート本体52上に2つの発熱部112Aと中央の1つの発熱部112Bとをスクリーン印刷及び仮焼成にて形成する。続いて、図12(B)に示すように、残りの2つの発熱部112Bをスクリーン印刷及び仮焼成にて形成し、第1電極114及び第2電極116を第1実施形態と同様の方法で形成する。
〔作用〕
次に、第4実施形態の作用について説明する。
図12(B)に示す発熱部材110では、電流抑制部118によって、一の発熱部112から隣の発熱部112へ流れる電流が抑制される。これにより、各発熱部112における発熱量が制御される。さらに、発熱部材110では、複数の発熱部112の間隔を狭くすることが可能となるので、複数の発熱部112の間にスリットが形成されているものと比べて、Z方向の一部でスリットによって発熱量が低下することが抑制される。つまり、発熱部材110では、複数の発熱部112の間にスリットが形成されているものと比べて、隣り合う発熱部112の境界に温度低下が生じることが抑制される。
一般的に、Z方向に複数並んだ発熱部のZ方向両外側の端部は、隣接する発熱部が無いため、隣接する部位に熱が奪われて、結果的に発熱部の熱量が不足する可能性がある。ここで、発熱部材110では、第1間隔d1が第2間隔d2よりも狭い。これにより、第1電極114と第2電極116との間に流れる電流量については、発熱部112Aの方が発熱部112Bに比べて多くなる。
つまり、発熱部材110では、第1電極114に給電した場合に、発熱部112Aの発熱量は、発熱部112Bの発熱量よりも多くなる。これにより、第1間隔d1と第2間隔d2とがZ方向で同じである構成に比べて、発熱部112Aの発熱量が発熱部112Bの発熱量に比べて不足することが抑制される。
さらに、発熱部材110では、各発熱部112の単位面積あたりの抵抗値が一律であっても、第1電極114と第2電極116と間隔を変えることで発熱量が調整される。これにより、発熱部112において部分的に発熱量を変える場合に、単位面積当たりの抵抗値が異なる発熱部用インクを用意する必要がなくなる。なお、加熱装置30、定着装置20、画像形成装置10における作用は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態に係る発熱部材、加熱装置、定着装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図13には、画像形成装置10(図1参照)において用紙Pを収容する箱状の収容部材121が示されている。収容部材121は、Y方向から見た場合にX方向を長手方向としZ方向を短手方向とする矩形状の底板121Aと、Y方向を高さ方向として底板121Aの外縁に直立した側板121Bとを有する。底板121Aには、発熱部材42が設けられている。なお、画像形成装置10、定着装置20、加熱装置30及び発熱部材42については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、図13では、シート本体52(図4参照)の図示を省略している。
発熱部材42は、底板121AのX方向の中央でZ方向を長手方向として配置されている。ここで、一例として、底板121A上に既述の用紙PBが収容された場合には、発熱部54A、54Bが発熱するようになっている。また、底板121A上に既述の用紙PCが収容された場合には、発熱部54A、54B及び54Cが発熱するようになっている。なお、底板121A上には、用紙PのZ方向のずれを抑制する図示しないガイド板が設けられている。発熱部材42は、収容部材121に収容された用紙Pの余分な水分を蒸発させる(除湿する)ために、収容部材121に設けられている。
〔作用〕
次に、第5実施形態の作用について説明する。
収容部材121において、底板121A上に用紙PBが収容された場合に、給電部46(図2参照)が発熱部材42に給電して、発熱部54A、54Bが発熱する。これにより、用紙PBが除湿される。また、底板121A上に用紙PCが収容された場合に、給電部46が発熱部材42に給電して、発熱部54A、54B及び54Cが発熱する。これにより、用紙PCが除湿される。このように、発熱部材42(加熱装置30)は、定着装置20(図2参照)だけでなく、用紙Pの収容部にも用いられる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
<変形例>
図14(A)には、第1実施形態の第3変形例としての発熱部材120が示されている。発熱部材120は、第1実施形態の発熱部材42(図4参照)について、第2電極58を第1電極56側に配置することで、各電極を発熱部材42の一方側にまとめた構成とされている。図14(B)に示すように、発熱部材120は、基材122と、第1絶縁部124と、発熱部54と、第1電極56と、中継電極126と、第2電極128と、第2絶縁部132と、電流抑制部62(図14(A)参照)とを有する。
基材122は、一例として、ステンレス鋼製で矩形状のシート材で構成されている。なお、基材122の短手方向をY方向、長手方向をZ方向とし、厚さ方向をX方向とする。基材122のX方向の上側には、ポリイミド製の第1絶縁部124が形成されている。第1絶縁部124の−Y側でかつ基材122のX側には、第2電極128が形成されている。第2電極128は、銀ペーストを用いて形成されている。また、第1絶縁部124のY側でかつ基材122のX側には、中継電極126が形成されている。中継電極126は、銀ペーストを用いて形成されている。
第1絶縁部124及び中継電極126のX方向の上側には、発熱部54が形成されている。発熱部54のY側端部は、第1絶縁部124のY側端部よりも−Y側に位置している。そして、第1絶縁部124上でかつ発熱部54のY側には、第2電極128と接触しないように第1電極56が形成されている。ポリイミド製の第2絶縁部132は、第1電極56が露出するように、基材122、発熱部54及び中継電極126を覆っている。このように、金属製の基材122及び中継電極126を用いることで、第2電極128を第1電極56側に配置することが可能となる。
発熱部材120では、給電される第1電極56と接地される第2電極128とがY方向の一方側(−Y側)にまとめられる。これにより、定着装置20(図2参照)において、発熱部材120のY側を固定する必要がなくなる。つまり、発熱部材120のY側が自由端として配置可能となるので、発熱部材120を固定するために必要な部材の数が減る。
<他の変形例>
発熱部用インクIhの塗布について、スクリーン印刷やインクジェットに限らず、スピンコート又はエアブラシを用いて塗布してもよい。各発熱部材に用いる絶縁体としては、ポリイミド樹脂以外の耐熱性樹脂や、ガラスを用いてもよい。なお、ガラスを用いた場合は、ポリイミド樹脂のように湾曲させることが難しいため、定着ベルト22と加圧ロール24とが接触する接触部の直線部分のみに配置すればよい。
第1実施形態の発熱部材42をY方向から見た場合に、電流抑制部62が斜め方向ではなくX方向に沿って(垂直方向に)に配置されていてもよい。さらに、発熱部材42において、カーボンナノチューブCに換えてグラフェンやカーボンブラックを用いてもよい。
グラフェンは、既述のナノカーボンの分類に含まれ、異方性を有する。また、グラフェンは、シート構造であり、グラフェン間は接触点の数で導電率が決まる。具体的には、グラフェンは、シート内の平面方向には熱伝導性が良く、グラフェン同士が重なっている部分は平面に比べて熱が伝わりにくい性質を有する。グラフェンを用いて形成した発熱部の端部(複数の発熱部の境界部分)におけるグラフェンの接触点は、中央部より少なくなるため、電流抑制部が形成される。配向角度は、塗布後の真空加圧焼成の圧力により方向を補正する。
カーボンブラックは、固体炭素材料のうち非晶質のものの分類に含まれ、異方性を有する。また、カーボンブラックは、塗布前の溶液内でストラクチャと言われる集合体(塊)を形成しており、絡み合った状態で存在している。複数の発熱部の形成において、カーボンブラックを含む溶液を塗布した後の端部(複数の発熱部の境界部分)では、ストラクチャが切れることにより接触点の数が減り、電流抑制部が形成される。
第2実施形態の発熱部材90をY方向から見た場合に、電流抑制部98が斜め方向ではなくX方向に沿って(垂直方向に)に配置されていてもよい。さらに、発熱部材90において、カーボンナノチューブCに換えてグラフェンやカーボンブラックを用いてもよい。
第3実施形態の発熱部材100において、Z方向の両端部の第1電極56と第2電極58との間隔を、Z方向の中央部の第1電極56と第2電極58との間隔よりも狭くしてもよい。また、電流抑制部104を形成するときに電場を作用させる方向を制御することによって、電流抑制部104をX方向から見た場合に電流抑制部104がZ方向に対して交差する構成としてもよい。さらに、この構成について、電流抑制部104を形成するときに電場を作用させる方向を制御することによって、Z方向とX方向とに直交するY方向から見た場合に、電流抑制部104がX方向に対して交差する斜め方向に配置される構成としてもよい。
第4実施形態の発熱部材110をY方向から見た場合に、電流抑制部118が斜め方向ではなくX方向に沿って(垂直方向に)に配置されていてもよい。さらに、発熱部材42において、カーボンナノチューブC(絡み合う繊維状の構造)に換えて、グラフェン(ハニカム状の構造)やカーボンブラック(粒子が融着した構造)を用いてもよい。また、発熱部材110において、電流抑制部118がZ方向と交差する交差方向(斜め方向)に延びていてもよい。この構成において、電流抑制部118がX方向に沿う構成、カーボンナノチューブCに換えてグラフェンやカーボンブラックを用いた構成及び電流抑制部118がZ方向と交差する交差方向に延びる構成のうち、少なくとも1つを除いた構成としてもよい。
上記の発熱部材42、70、80、90、100、110、120及び各変形例の構成を、画像形成装置10、定着装置20、加熱装置30に用いてもよい。また、これらの発熱部材について、第2電極を第1電極側に配置してもよい。