しかし、従来の天井構造では、地震による地震動が建築物に加わった場合、垂設部材に水平方向の力が掛かり、垂設部材が垂設箇所から離脱又は破断してしまうという問題があった。
そこで、本発明は、垂設部材に取り付ける垂設部材用金具及び当該垂設部材用金具を用いて天井構造の落下を防止する天井落下防止構造を提供することを目的とする。
請求項1記載の本発明は、所定部分から垂設された垂設部材に挟持した状態で取り付けられる垂設部材用金具であって、前記垂設部材用金具は、第1の挟持片と第2の挟持片からなり、前記第1及び第2の挟持片は、前記垂設部材を挟持可能な挟持部と、前記垂設部材用金具にワイヤー部材を取り付ける取付部と、前記垂設部材を前記挟持部で挟持した状態で固定する固定手段とを備えたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、前記挟持部に前記垂設部材を保持する溝部を備えたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、天井裏構造に垂設された垂設部材に取り付けられる請求項1又は2に記載の垂設部材用金具と、前記取付部に取り付けられたワイヤー部材とを備え、前記ワイヤー部材を前記天井裏構造に係止したことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、前記垂設部材における前記垂設部材用金具の取付位置より上部に脱落防止金具を備えたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、天井裏構造に垂設された垂設部材と、前記垂設部材に相互に離間した状態で取り付けられた請求項1又は2に記載の一対の垂設部材用金具である上部垂設部材用金具及び下部垂設部材用金具と、前記上部垂設部材用金具の取付部と前記下部垂設部材用金具の取付部を連結するワイヤー部材とを備えたことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、前記上部垂設部材用金具は、前記天井裏構造における前記垂設部材の垂設箇所に固定したものとすることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、天井裏構造に垂設された垂設部材と、前記天井裏構造から離間した状態で前記垂設部材に取り付けられた請求項1又は2に記載の垂設部材用金具と、前記天井裏構造の前記垂設部材の周囲に一又は複数垂設された補助用垂設部材と、前記補助用垂設部材と前記垂設部材用金具の取付部とを連結するワイヤー部材とを備えたことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、前記垂設部材が天井裏構造に垂設された一側垂設部材と、前記一側垂設部材の下部に連結された他側垂設部材からなり、前記上部垂設部材用金具が前記一側垂設部材に取り付けられ、前記下部垂設部材用金具が前記他側垂設部材に取り付けられることを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、前記垂設部材が天井裏構造に垂設された一側垂設部材と、前記一側垂設部材に防振部材を介して連結された他側垂設部材からなり、前記上部垂設部材用金具が前記一側垂設部材に取り付けられ、前記下部垂設部材用金具が前記他側垂設部材に取り付けられることを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、天井裏構造に垂設された垂設部材と、請求項1又は2に記載の一対の垂設部材用金具と、垂設部材に取り付けられる垂設部材側連結金具と、前記垂設部材用金具と前記垂設部材側連結金具を連結するワイヤー部材とを備え、前記垂設部材が天井裏構造に垂設された一側垂設部材と、前記一側垂設部材の下部に連結された他側垂設部材からなり、前記垂設部材用金具が前記一側垂設部材に取り付けられ、前記垂設部材側連結金具が前記他側垂設部材に取り付けられることを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、天井裏構造に垂設された垂設部材と、請求項1又は2に記載の一対の垂設部材用金具と、垂設部材に取り付けられる垂設部材側連結金具と、前記垂設部材用金具と前記垂設部材側連結金具を連結するワイヤー部材とを備え、前記垂設部材が天井裏構造に垂設された一側垂設部材と、前記一側垂設部材に防振部材を介して連結された他側垂設部材からなり、前記上部垂設部材用金具が前記一側垂設部材に取り付けられ、前記垂設部材側連結金具が前記他側垂設部材に取り付けられることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、垂設部材用金具は、垂設部材に取り付け可能であるとともに、ワイヤー部材を取り付けることができる。垂設部材用金具を第1の挟持片と第2の挟持片からなる分割可能な構成とすることで、垂設部材の上部が天井裏構造に垂設されていたり、垂設部材の下部に天井構造が吊り下げ保持されているような垂設部材の両側の構成に関係なく、垂設部材の途中に取り付けることができる。
請求項2の発明によれば、垂設部材への取付状態が強固な垂設部材用金具を提供することができる。
請求項3の発明によれば、天井裏構造から垂設部材が離脱してしまっても、ワイヤー部材を介して垂設部材用金具が天井裏構造に接続されているため、垂設部材用金具に保持された垂設部材はワイヤー部材によって天井裏構造に吊り下げ保持され、垂設部材以下の天井構造の落下が防止される。
請求項4の発明によれば、天井裏構造から脱落した垂設部材が垂設部材用金具を摺動しても、脱落防止金具が垂設部材用金具に係止して、垂設部材の垂設部材用金具からの脱落を防止する。
請求項5の発明によれば、一対の垂設部材用金具間で垂設部材が破断しても、ワイヤーを介して一対の垂設部材用金具が接続されているため、垂設部材はワイヤーによって吊り下げ保持され、垂設部材以下の天井構造の落下が防止される。
請求項6の発明によれば、垂設部材用金具を天井裏構造における垂設部材の垂設箇所に固定したことで、地震による地震動が建築物に加わった場合、垂設部材に水平方向の力が掛かり、天井裏構造の垂設箇所から垂設部材が離脱することを防止することができる。
請求項7の発明によれば、垂設部材用金具より上部で垂設部材が破断しても、ワイヤー部材を介して垂設部材用金具と補助用垂設部材が接続されているため、垂設部材用金具に保持された垂設部材はワイヤー部材によって補助用垂設部材に吊り下げ保持され、垂設部材以下の天井構造の落下が防止される。
請求項8の発明によれば、連結部分が破損しても、一側垂設部材から天井裏構造が脱落するのを防止することができる。
請求項9の発明によれば、防振部材が破損しても、一側垂設部材から天井裏構造が脱落するのを防止することができる。
請求項10の発明によれば、連結部分が破損しても、一側垂設部材から天井裏構造が脱落するのを防止することができる。
請求項11の発明によれば、防振部材が破損しても、一側垂設部材から天井裏構造が脱落するのを防止することができる。
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
以下、図1〜8を参照して、本発明の実施例1について説明する。図1に示すように、本実施例の吊り天井構造は、形鋼1に全ねじ状の吊りボルトからなる垂設部材2が溶接等によって所定間隔を空けて複数垂設されており、垂設部材2の下部にアルミ製スパンドレル等や石膏ボード等の天井パネルからなる天井材3や照明・音響・空調の各種機器(図示せず)が吊り下げ保持されている。
本実施例の吊り天井構造100は、図3及び図4に示すように、それぞれ長手方向に沿って溝部101が形成された断面略C形状の溝形鋼からなる複数の野縁部材102と、垂設部材2に略S型形状の金具からなる公知のハンガー等の吊り下げ手段103を介して接続された断面略C形状の形鋼からなる野縁受部材104とを、互いに直交させて一体化して天井下地材を形成し、野縁部材102の下面に天井材3をビス等の図示しない固定手段によって取り付けて構成するものである。
野縁受部材104と野縁部材102の固定には、野縁受部材104を間に挟んで野縁部材102に取り付けられる2つの野縁用取付金具105と、野縁用取付金具105同士を連結するワイヤー部材106が用いられる。ワイヤー部材106は、両側にボルトからなる雄螺子部107を備えている。
野縁用取付金具105は、野縁部材102の開口縁108に係止可能な係止部109と、雄螺子部107が螺着可能な螺子孔からなる固定部(図示せず)とを備えている。
そして、ワイヤー部材106によって野縁受部材104の上部を押さえ付けた状態で、野縁受部材104を間に挟んで配置された2つの野縁用取付金具105の係止部109を開口縁108に係止させるとともに、ワイヤー部材106の雄螺子部107を固定部に螺着すると野縁受部材104と野縁部材102の固定が完了する。
また、垂設部材2と野縁受部材104はワイヤー部材110によって連結されている。詳しくは、垂設部材2に取り付けられた垂設部材側連結金具111にワイヤー部材110の一方を取り付け、ワイヤー部材110の他方を野縁受部材104に括り付けて固定している。ワイヤー部材110は垂設部材2を間に挟んだ両側に設けられている。この場合、吊り下げ手段103が破損しても垂設部材2から野縁受部材104が脱落するのを防止することができる。尚、ワイヤー部材106,110の本数、野縁用取付金具105及び垂設部材側連結金具111の構成については適宜変更可能である。
本実施例の垂設部材2に取り付けられる垂設部材用金具4は、図7及び図8に示すように、垂直な縦片部からなる挟持部5と、水平な横片部からなる取付部6とからなる側面視略L型の金具からなる一対の挟持片7A,7B(以下、第1の挟持片7A、第2の挟持片7Bという)を有した分割可能な構造としている。
挟持部5は、板状部材の水平方向の両端を互いに近接するように折り返した二重構造としており、前述の折り返した両端の合わせ目を挟持部5の中央部分に設けており、この合わせ目に沿って、平面視略半円弧状の溝部8が上下方向に連続して形成されている。2つの挟持片7A、7Bに形成された挟持部5の溝部8同士を合わせると、垂設部材2が嵌合可能な平面視略円形状の溝が形成される。また、溝部8には螺子溝9が形成されている。
挟持部5には、水平方向に貫通して形成された固定孔10が溝部8を挟んで2箇所設けられている。尚、固定孔10は3箇所以上設けてもよい。
取付部6は、挟持部5の下端を直角に折り曲げて水平方向と平行に形成された平面視略半円状を有しており、螺子溝が形成された取付孔11が垂直方向に貫通させて3箇所設けられている。
取付部6の取付孔11には、ワイヤー部材12が取り付け可能となっている。ワイヤー部材12は、一方に取付孔11に螺着可能な雄螺子部13を備え、他方には環状部14を備えている。本実施例では取付孔11が3箇所設けられているが、取付孔11の数は、取り付けるワイヤー部材12の数に応じて適宜変更可能である。
雄螺子部13は、取付孔11に螺着可能なボルト13Aの中心に形成された貫通孔13Bに、ボルト13Aの頭部13C側からワイヤー部材12の一方を挿通した状態で、ワイヤー部材12の一方にボルト13の軸部13Dの下端に係止可能な抜け止め部材13Eを備えている。貫通孔13Bの頭部13C側の縁部には面取部13Fを設けている。
そして、挟持片7A、7Bを垂設部材2の側面に挟持させた状態で固定する固定手段として、固定孔10に装着されるボルト15・ナット16を備えている。
本実施例の垂設部材用金具4は、一枚の板状部材から形成されているが、挟持部5と取付部6との連結強度が十分に確保できれば、挟持部5と取付部6とを別部材から形成して両者を接合してもよい。第1の挟持片7Aの挟持部5と取付部6は、第2の挟持部5と取付部6と同一の形状である必要はないものとする。
また、垂設部材2における形鋼1と垂設部材用金具4の途中に脱落防止金具17を装着する。ここで脱落防止金具17は、垂設部材2の側面全周を覆い、垂設部材2の外径を増大させるものであれば、特に限定されるものではない。
尚、垂設部材2は全ネジ以外に丸棒などの棒状部材でもよく、例えば挟持部5によって挟持可能な形状であれば、板状部材やその他の形状との組み合わせであっても特に限定されるものではない。また、溝部8には螺子溝を有していなくともよいものとする。
次に、垂設部材用金具4を用いた天井落下防止構造の施工方法について説明する。先ず、形鋼1に溶接等により固定された垂設部材2の両側に、環状部14に雄螺子部13を挿通させてワイヤー部材12を括り付ける。
次に、各挟持片7A、7Bの溝部8を垂設部材2の側面に嵌合させて、挟持片7A、7Bの挟持部5によって垂設部材2を挟持させた状態で、各固定孔10に挿通されたボルト15にナット16を装着して、垂設部材用金具4を挟持部5が下側となるようにして垂設部材2に取り付ける。ここで、垂設部材用金具4は、形鋼1から離間した状態で垂設部材2に取り付けられる。
最後に、ワイヤー部材12の雄螺子部13を垂設部材用金具4の取付孔11に螺着して、ワイヤー部材12を垂設部材用金具4に取り付ける。
次に、前記構成について、その作用を説明する。地震による地震動が建築物に加わった場合、垂設部材2に水平方向の力が掛かり、形鋼1に溶接された垂設部材2が溶接個所Wから離脱してしまっても、ワイヤー部材12を介して垂設部材用金具4が形鋼1に接続されているため、垂設部材用金具4に保持された垂設部材2はワイヤー部材12によって形鋼1に吊り下げ保持され、垂設部材2以下の天井構造の落下が防止される。
垂設部材用金具4は、ワイヤー部材12に対して、抜け止め部材13Eが軸部13Dの下端に係止するまで落下する。この場合、ワイヤー部材12に対して垂設部材用金具4が垂直下向きに落下した場合に、貫通孔13Bと垂設されたワイヤー部材12の向きが一致しているので、抜け止め部材13Eが軸部13Dの下端に係止するまでの貫通孔13Bに対するワイヤー部材12の摺動動作が滑らかとなり、垂設部材用金具4の落下時の衝撃を抑制したり、ワイヤー部材12の破断を防ぐことができる。また、貫通孔13Bの頭部13C側の縁部に面取部13Fを設けたことで、ワイヤー部材12の破断をより一層防ぐことができる。
また、形鋼1から脱落した垂設部材2が垂設部材用金具4の挟持部5間を摺動しても、脱落防止金具17が垂設部材用金具4に係止して、垂設部材2の垂設部材用金具4からの脱落を防止する。
さらに、挟持部5を二重構造としたことで、ボルト15・ナット16による締付けによる挟持部5の変形を防ぎ、挟持部5による垂設部材2の挟持状態を強固なものとすることができる。
垂設部材用金具4を挟持部5が下側となるようにして垂設部材2に取り付けることで、既存の垂設部材2に対して下から垂設部材用金具4を取り付ける際に挟持部5を確認しながらボルト15・ナット16の締め付けを行うことが容易となる。
以上のように、本実施例では、所定部分である形鋼1から垂設された垂設部材2に挟持した状態で取り付けられる垂設部材用金具4であって、垂設部材用金具4は、第1の挟持片7Aと第2の挟持片7Bからなり、第1及び第2の挟持片7A、7Bは、垂設部材2を挟持可能な挟持部5と、垂設部材用金具4にワイヤー部材12を取り付ける取付部6と、垂設部材2を挟持部5で挟持した状態で固定する固定手段としてボルト15・ナット16とを備えたことにより、垂設部材2の所望の位置に垂設部材用金具4を取り付けることができる。また、垂設部材用金具4にはワイヤー部材12を取り付けることができる。また、垂設部材用金具4を第1の挟持片7Aと第2の挟持片7Bからなる分割可能な構成とすることで、垂設部材2の上部が天井裏構造に垂設されていたり、垂設部材2の下部に天井構造が吊り下げ保持されているような垂設部材2の両側の構成に関係なく、垂設部材2の途中に取り付けることができるので、新設の垂設部材2に限らず、既存の垂設部材2に本実施例の垂設部材用金具4を取り付けることができる。
また、本実施例では、挟持部5に垂設部材2を保持する溝部8を備えたことにより、全ねじ状の吊りボルトである垂設部材2のねじ部と、溝部8に形成された螺子溝9が螺合するため、垂設部材2への取付状態が強固な垂設部材用金具4を提供することができる。
また、本実施例では、天井裏構造である形鋼1に垂設された垂設部材2に取り付けられる垂設部材用金具4と、形鋼1に取り付けられたワイヤー部材12とを備え、ワイヤー部材12を形鋼1に係止している。
この場合、形鋼1から垂設部材2が離脱してしまっても、ワイヤー部材12を介して垂設部材用金具4が形鋼1に接続されているため、垂設部材用金具4に保持された垂設部材2はワイヤー部材12によって形鋼1に吊り下げ保持され、垂設部材2以下の天井材3等の天井構造の落下を防止することができる。
また、本実施例では、垂設部材2における垂設部材用金具4の取付位置より上部に脱落防止金具17を備えたことにより、形鋼1から脱落した垂設部材2が垂設部材用金具4を摺動しても、脱落防止金具17が垂設部材用金具4に係止して、垂設部材2の垂設部材用金具4からの脱落を防止することができる。
図9は、本発明の実施例2を示しており、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例では、例えば屋根の勾配に合せて傾斜させた形鋼1にワイヤー部材12が取り付けられている。そして、取り付けたワイヤー部材12が形鋼1の傾斜に沿って移動しないように、形鋼1には、ずれ防止部材1Aを備えている。
ずれ防止部材1Aは、ワイヤー部材12が係止される係止部1Bと、ずれ防止部材1Aをビス又は溶接等で形鋼1に固定する固定部1Cとを備えた金具からなる。
係止部1Bは内部にワイヤー部材12を挿通可能なコ字型形状に折り曲げ形成されており、係止部1Bの両側を水平方向に延設して固定部1Cを備えている。
図10は、本発明の実施例3を示しており、上記実施例1及び2と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例では、下面に凹凸を有する天井スラブ29に垂設部材2を垂設した状態を示している。この場合、天井スラブ29の凹部29Aの中央からずらして垂設部材2が垂設されており、狭い側に取り付けされる第1の挟持片7Aの取付部6Aは、第2の挟持片7Bの取付部6とは異なる形状とすることで、狭い空間や、既存の天井裏の設備機器を避けて垂設部材用金具4の設置を可能としている。尚、取付部6,6Aの平面視形状は半円弧に限定されることはなく、三角形、四角形等の多角形や曲線形状、これらを組み合わせた形状としてもよいものとする。
図11〜図15は、本発明の実施例4を示しており、上記実施例1〜3と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例の天井落下防止構造では、形鋼1にワイヤー部材12を取り付けるための形鋼用金具18を備えている。形鋼用金具18は、内側金具19と、外側金具20と、内側金具19と外側金具20とを連結する固定手段としてのアイボルト21とを備えている。
内側金具19は、長手方向の寸法を形鋼1の開口22の幅より大きく形成された平面視略コ字型状に折り曲げ形成された金具であり、中央に螺子孔23を備えており、アイボルト21が螺着される。
外側金具20は、形鋼1の開口22に挿入可能な一対の挿入片24と、挿入片24を連結し形鋼1のリップ部25間に架設可能な架設部26を備え、内側金具19に外嵌可能な平面視略コ字型状に折り曲げ形成された金具である。架設部26の中央には螺子孔23より大きな径に形成された貫通孔27が形成されている。
次に、形鋼用金具18を用いた天井落下防止構造の施工方法について説明する。内側金具19と外側金具20で形鋼1のリップ部25を挟持した状態で、外側金具20の貫通孔27に挿通されたアイボルト21を内側金具19の螺子孔23に螺着して、形鋼用金具18を形鋼1に取り付ける。最後に、アイボルト21のリング部28に括り付けたワイヤー部材12を垂設部材用金具4に取り付ける。本実施例上の効果としては、形鋼1の周囲に他の構造物が接近して設けられており、上記実施例1のようにワイヤー部材12を形鋼1に直接括り付けることができない場合であっても、開口22を有する形鋼1にワイヤー部材12を取り付けることができる。
図16及び図17は、本発明の実施例5を示しており、上記実施例1〜4と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例の吊り天井構造は、建築物の天井裏構造としてのコンクリート製の天井スラブ29に全ねじ状の吊りボルトからなる垂設部材2が所定間隔を空けて複数垂設されており、垂設部材2の下部にアルミ製スパンドレル等や石膏ボード等の天井パネルからなる天井材3や照明・音響・空調の各種機器Dが吊り下げ保持されている。
次に、垂設部材用金具4を用いた本実施例の天井落下防止構造の施工方法について説明する。先ず、垂設部材2上部の天井スラブ29への打設箇所に垂設部材用金具4(以下、上部垂設部材用金具30と呼称する)を取り付ける。ここで、上部垂設部材用金具30は、取付部6を天井スラブ29に埋め込む方式の、あと施工型のカプセル方式や注入方式等の接着系アンカーボルト、所謂ケミカルアンカーボルト31(以下、あと施工アンカーと呼称する)によって、天井スラブ29に取り付けられる。尚、取付部6の天井スラブ29への取り付けは、ケミカルアンカーが好ましいが、ケミカルアンカー以外の各種あと施工アンカー(金属系アンカー、ホールインアンカーなど)や、コンクリート釘による施工でもよいものとする。
次に、垂設部材2における上部垂設部材用金具30から離間した下部にもう一つの垂設部材用金具4(以下、下部垂設部材用金具32と呼称する)を取り付ける。
最後に、両端に雄螺子部13を備えたワイヤー部材12の雄螺子部13を上部垂設部材用金具30及び下部垂設部材用金具32の取付孔11に螺着して、ワイヤー部材12を介して上部垂設部材用金具30と下部垂設部材用金具32を接続する。
次に、前記構成について、その作用を説明する。地震による地震動が建築物に加わった場合、垂設部材2に水平方向の力が掛かり、上部垂設部材用金具30と下部垂設部材用金具32の間で垂設部材2が破断しても、ワイヤー部材12を介して上部垂設部材用金具30と下部垂設部材用金具32が接続されているため、下部垂設部材用金具32に保持された垂設部材2はワイヤー部材12によって上部垂設部材用金具30に吊り下げ保持され、垂設部材2以下の天井構造の落下が防止される。
また、天井スラブ29から脱落した垂設部材2が下部垂設部材用金具32の挟持部5間を摺動していっても、脱落防止金具17が下部垂設部材用金具32に係止して、垂設部材2の下部垂設部材用金具32からの脱落を防止する。
以上のように本実施例では、天井裏構造である天井スラブ29に垂設された垂設部材2と、垂設部材2に相互に離間した状態で取り付けられた上部垂設部材用金具30と下部垂設部材用金具32と、取付部6、6同士を連結するワイヤー部材12とを備えている。
この場合、上部垂設部材用金具30と下部垂設部材用金具32間で垂設部材2が破断しても、ワイヤー部材12を介して上部垂設部材用金具30と下部垂設部材用金具32が接続されているため、垂設部材2はワイヤー部材12によって吊り下げ保持され、垂設部材2以下の天井構造の落下が防止される。
また、本実施例では、一対の垂設部材用金具4の一方である上部垂設部材用金具30は、天井スラブ29における垂設部材2の垂設箇所に固定したことにより、地震による地震動が建築物に加わった場合、垂設部材2に水平方向の力が掛かり、天井裏構造の垂設箇所から垂設部材2が離脱することを防止することができる。
図18及び図19は、実施例6を示しており、上記実施例1〜5と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。
本実施例の天井落下防止構造の施工方法について説明する。先ず、垂設部材2の周囲の天井スラブ29に一又は複数のあと施工型のカプセル方式や注入方式等の接着系アンカーボルト、所謂ケミカルアンカーボルト35(以下、あと施工アンカーと呼称する)を打設する。
あと施工アンカー35は、天井スラブ29へのコーン破壊の範囲(図18中、破線で表示)が垂設部材2に影響を及ぼさない程度に垂設部材2から離間して打設されている。また、各あと施工アンカー35は、垂設部材2を中心に対称に設けられている。
次に、垂設部材2における天井スラブ29から離間した下部へ垂設部材用金具4を挟持部5が下側となるようにして取り付ける。
最後に、あと施工アンカー35に取付金具36を介して装着されたワイヤー部材37を垂設部材用金具4の取付部6に形成されたワイヤー挿通孔37Aに挿通して取り付け、ワイヤー部材37を介して垂設部材用金具4とあと施工アンカー35を接続する。
次に、前記構成について、その作用を説明する。地震による地震動が建築物に加わった場合、垂設部材2に水平方向の力が掛かり、垂設部材用金具4より上部で垂設部材2が破断しても、ワイヤー部材37を介して垂設部材用金具4とあと施工アンカー35が接続されているため、垂設部材用金具4に保持された垂設部材2はワイヤー部材37によってあと施工アンカー35に吊り下げ保持され、垂設部材2以下の天井構造の落下が防止される。
また、天井スラブ29から脱落した垂設部材2が垂設部材用金具4を摺動していっても、脱落防止金具17が取付部6に係止して、垂設部材2の垂設部材用金具4からの脱落を防止する。
また、上述の垂設部材2の破断とともに、一のあと施工アンカー35が天井スラブ29のコーン破壊によって脱落しても、他のあと施工アンカー35によって垂設部材用金具4が吊り下げ保持される。
以上のように本実施例では、天井裏構造である天井スラブ29に垂設された垂設部材2と、天井スラブ29から離間した状態で垂設部材2に取り付けられた垂設部材用金具4と、天井スラブ29の垂設部材2の周囲に一又は複数垂設された補助用垂設部材であるあと施工アンカー35と、あと施工アンカー35と垂設部材用金具4の取付部6とを連結するワイヤー部材37とを備えている。
この場合、垂設部材用金具4より上部で垂設部材2が破断しても、ワイヤー部材37を介して垂設部材用金具4とあと施工アンカー35が接続されているため、垂設部材用金具4に保持された垂設部材2はワイヤー部材37によってあと施工アンカー35に吊り下げ保持され、垂設部材2以下の天井構造の落下が防止される。
また、本実施例上の効果として、あと施工アンカー35を垂設部材2の周囲に複数垂設したことにより、垂設部材2の破断とともに、一のあと施工アンカー35が天井スラブ29から脱落しても、他のあと施工アンカー35によって垂設部材用金具4が吊り下げ保持される。
図20は、実施例7を示しており、上記実施例1〜6と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例の天井落下防止構造の施工方法について説明する。先ず、垂設部材2の周囲の天井スラブ29に一又は複数のあと施工型のカプセル方式や注入方式等の接着系アンカーボルト、所謂ケミカルアンカーボルト38(以下、あと施工アンカーと呼称する)を打設する。
あと施工アンカー38は、天井スラブ29に垂設部材2から離間して打設されている。また、各あと施工アンカー38は、垂設部材2を中心に対称に設けられている。
次に、垂設部材2における天井スラブ29から離間した下部へ垂設部材用金具4を挟持部5が下側となるようにして取り付ける。
最後に、あと施工アンカー38にアイボルト又はアイナット等のリング部材39を介して装着されたワイヤー部材12を垂設部材用金具4の取付部6に取り付け、ワイヤー部材12を介して垂設部材用金具4とあと施工アンカー38を接続する。
次に、前記構成について、その作用を説明する。地震による地震動が建築物に加わった場合、垂設部材2に水平方向の力が掛かり、垂設部材用金具4より上部で垂設部材2が破断しても、ワイヤー部材12を介して垂設部材用金具4とあと施工アンカー38が接続されているため、垂設部材用金具4に保持された垂設部材2はワイヤー部材12によってあと施工アンカー38に吊り下げ保持され、垂設部材2以下の天井構造の落下が防止される。
また、天井スラブ29から脱落した垂設部材2が垂設部材用金具4の挟持部5間を摺動していっても、脱落防止金具17が取付部6に係止して、垂設部材2の垂設部材用金具4からの脱落を防止する。
また、上述の垂設部材2の破断とともに、一のあと施工アンカー38が天井スラブ29のコーン破壊によって脱落しても、他のあと施工アンカー38によって垂設部材用金具4が吊り下げ保持される。
以上のように本実施例では、天井裏構造である天井スラブ29に垂設された垂設部材2と、天井スラブ29から離間した状態で垂設部材2に取り付けられた垂設部材用金具4と、天井スラブ29の垂設部材2の周囲に一又は複数垂設された補助用垂設部材であるあと施工アンカー38と、あと施工アンカー38と垂設部材用金具4の取付部6とを連結するワイヤー部材12とを備えている。
この場合、垂設部材用金具4より上部で垂設部材2が破断しても、ワイヤー部材12を介して垂設部材用金具4とあと施工アンカー38が接続されているため、垂設部材用金具4に保持された垂設部材2はワイヤー部材12によってあと施工アンカー38に吊り下げ保持され、垂設部材2以下の天井構造の落下が防止される。
図21は、実施例8を示しており、上記実施例1〜7と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例の天井落下防止構造の施工方法について説明する。本実施例の垂設部材2は、型鋼1側に垂設された一側垂設部材2Aの下部と、天井材3や各種機器を吊り下げ保持する他側垂設部材2Bの上部とを溶接等によって連結されている。一側垂設部材2Aに垂設部材用金具4が取り付けられるとともに、他側垂設部材2Bには垂設部材側連結金具111が取り付けられており、垂設部材用金具4と垂設部材側連結金具111とをワイヤー部材12によって連結されている。本実施例では、垂設部材用金具4と垂設部材側連結金具111の連結において、ワイヤー部材12を2本と垂設部材側連結金具111を2個使用しているが、ワイヤー部材12と垂設部材側連結金具111を使用する数は適宜変更可能である。また、ワイヤー部材12を螺着する取付孔11も任意に選択可能である。また、垂設部材用金具4は上下何れの向きに取り付けてもよい。
このように一側垂設部材2Aと他側垂設部材2Bとを連結している連結部分2Cにおいて、この連結部分2Cを間に挟んで、一側垂設部材2Aと他側垂設部材2Bをワイヤー部材12によって連結することで、連結部分2Cが破損しても、一側垂設部材2Aから野縁受部材104が脱落するのを防止することができる。
図22は、実施例9を示しており、上記実施例1〜8と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例の天井落下防止構造の施工方法について説明する。本実施例では、型鋼1側に垂設された一側垂設部材2Aの下部と、天井材3や各種機器を吊り下げ保持する他側垂設部材2Bの上部とを防振部材としての防振ゴム2Dによって連結されている。一側垂設部材2Aに垂設部材用金具4が取り付けられるとともに、他側垂設部材2Bには垂設部材側連結金具111が取り付けられており、垂設部材用金具4と垂設部材側連結金具111とをワイヤー部材12によって連結されている。本実施例では、垂設部材用金具4と垂設部材側連結金具111の連結において、ワイヤー部材12を2本と垂設部材側連結金具111を2個使用しているが、ワイヤー部材12と垂設部材側連結金具111を使用する数は適宜変更可能である。また、ワイヤー部材12を螺着する取付孔11も任意に選択可能である。また、垂設部材用金具4は上下何れの向きに取り付けてもよい。
このように一側垂設部材2Aと他側垂設部材2Bとを連結している防振ゴム2Dを間に挟んで、一側垂設部材2Aと他側垂設部材2Bをワイヤー部材12によって連結することで、防振ゴム2Dのような一側垂設部材2Aと他側垂設部材2Bを連結している中継部材が破損しても、一側垂設部材2Aから野縁受部材104が脱落するのを防止することができる。
図23は、実施例10を示しており、上記実施例1〜9と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例の天井落下防止構造の施工方法について説明する。本実施例の垂設部材2は、型鋼1側に垂設された一側垂設部材2Aの下部と、天井材3や各種機器を吊り下げ保持する他側垂設部材2Bの上部とを溶接等によって連結されている。一側垂設部材2Aに垂設部材用金具4が取り付けられるとともに、他側垂設部材2Bには垂設部材用金具4が取り付けられており、垂設部材用金具4と垂設部材用金具4とをワイヤー部材12によって連結されている。本実施例では、垂設部材用金具4と垂設部材用金具4の連結において、ワイヤー部材12を2本使用しているが、使用する数は適宜変更可能である。また、ワイヤー部材12を螺着する取付孔11も任意に選択可能である。また、垂設部材用金具4は上下何れの向きに取り付けてもよい。
このように一側垂設部材2Aと他側垂設部材2Bとを連結している連結部分2Cにおいて、この連結部分2Cを間に挟んで、一側垂設部材2Aと他側垂設部材2Bをワイヤー部材12によって連結することで、連結部分2Cが破損しても、一側垂設部材2Aから野縁受部材104が脱落するのを防止することができる。
図24は、実施例11を示しており、上記実施例1〜10と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例の天井落下防止構造の施工方法について説明する。本実施例では、型鋼1側に垂設された一側垂設部材2Aの下部と、天井材3や各種機器を吊り下げ保持する他側垂設部材2Bの上部とを防振部材としての防振ゴム2Dによって連結されている。一側垂設部材2Aに垂設部材用金具4が取り付けられるとともに、他側垂設部材2Bには垂設部材用金具4が取り付けられており、垂設部材用金具4と垂設部材用金具4とをワイヤー部材12によって連結されている。本実施例では、垂設部材用金具4と垂設部材用金具4の連結において、ワイヤー部材12を2本使用しているが、使用する数は適宜変更可能である。また、ワイヤー部材12を螺着する取付孔11も任意に選択可能である。また、垂設部材用金具4は上下何れの向きに取り付けてもよい。
このように一側垂設部材2Aと他側垂設部材2Bとを連結している防振ゴム2Dを間に挟んで、一側垂設部材2Aと他側垂設部材2Bをワイヤー部材12によって連結することで、防振ゴム2Dのような一側垂設部材2Aと他側垂設部材2Bを連結している中継部材が破損しても、一側垂設部材2Aから野縁受部材104が脱落するのを防止することができる。
尚、本発明は本実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本実施例の垂設部材は、天井裏構造から垂設されたものと説明しているが、天井裏構造に垂設されるものに限定されるものではない。