JP2018150766A - 鋼管矢板の防食構造体 - Google Patents

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義行 川瀬
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【課題】打設時において施工者の熟練の程度等が低かったとしても、また、打設後に腐食による減肉が生じても、防食構造体を鋼管矢板へ密着させることができ、さらに、フランジ部がないために流木や流氷のような漂流物の衝突や波浪等の外力による損傷を受け難い防食構造体の提供。
【解決手段】既設構造物の一部である鋼管矢板1の表面に形成する、少なくとも防食層25および耐食性金属板3ならびにこれらを鋼管矢板1に固定する固定手段4を含む防食構造体2であって、耐食性金属板3は、鋼管矢板1の断面半円形状の本体部分を覆う少なくとも一部に蛇腹構造361を備える本体部36と、本体部36の辺縁に形成された平坦部37とを含み、打設時および打設後において蛇腹構造361が収縮することで、鋼管矢板1の表面に密着するように構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は鋼管矢板の防食構造体に関する。
海洋構造物や河川構造物等の既設構造物の少なくとも一部として用いられる鋼管矢板は腐食しやすく、特に飛沫帯や干満帯において、その程度は顕著である。
そこで、従来、鋼管矢板の表面に防食構造体を設置して防食する方法が適用されている。このような防食方法の一つとして、鋼管矢板の表面に有機樹脂等からなる防食層を形成し、その表面に、さらに耐食性金属薄板を密着させ固定することで、防食構造体を設置する方法が知られている。
このような防食処理を施すことで、上記のような既設構造物に長期の防食性を付与することができる。また、繊維強化樹脂や発泡樹脂を用いて防食層を形成すれば、環境遮断性や耐衝撃性を付与することもできる。
このような防食方法は、例えば特許文献1〜3に記載されている。
従来の防食構造体について、図3を用いて説明する。
図3は、海洋構造物の一部である鋼管矢板1が護岸Gに設置されており、その鋼管矢板1の海S側(外側)に、従来の防食構造体2を取り付けた状態を示す概略断面図である。
なお、鋼管矢板1に対して海水等の水が存在するサイドを「外側」、その反対サイドを「内側」ともいう。よって図3に示す態様の場合、護岸Gに対して海S側が「外側」であり、その反対サイドが「内側」である。
図3において、鋼管矢板1は、長尺筒型鋼材で形成された断面半円形状の本体部分11と、2つの本体部分11に挟まれるように配置された連結部12とを有する。本体部分11を連結部12が連結することで、壁面状の構造物(既設構造物)を構成している。
また、連結部12は断面L字の山形鋼からなる雌型連結部122と、断面T字の2つのT形鋼からなる雄型連結部121とが連結してなる。このような連結部を一般的にL−T型という。図3に示す態様ではL−T型であるが、その他の連結部として、2つのパイプからなり、一方のパイプの周方向の一部が切断され、この切断部分に他方のパイプが装入されてなるP−P型や、パイプとT型鋼とが連結したP−T型等が知られている。
図3に示す防食構造体2は、鋼管矢板1の表面に形成された防食層25を備え、その外側にクッション層27を備え、さらにその外側に耐食性金属板3を備えている。耐食性金属板3は、2分割されていたものが中央のフランジ部31においてボルト33およびナット35を用いて結合されたものである。打設時に発生し得る継手部の寸法誤差へ対応するために、耐食性金属板3は2分割されたものをフランジ部31にて結合する態様であることが必要になる。
そして、固定手段4によって、防食層25、クッション層27および耐食性金属板3が鋼管矢板1の表面に密着するように固定されている。固定手段4は、固定板41と、ボルト44と、ワッシャー45と、ナット47とからなる。固定板41は連結部12(雌型連結部122)の表面に溶接固定されている。また、ボルト44は、固定板41に固定されて海S側に突出している。そして、防食層25、クッション層27および耐食性金属板3の端部(平坦部37)に設けた挿通孔にボルト44を挿通させ、さらに海S側からワッシャー45の挿通孔にボルト44を挿通させてからナット47を螺合する。
打設時に、ボルト33とナット35との締め付けの程度を調整することで、耐食性金属板3の鋼管矢板1の表面への密着の程度を調整する。
特開2013−28949号公報 特開2015−194215号公報 実開平6−1991号公報
上記のような従来の防食構造体は、その打設時において、施工者の熟練の程度等によってはフランジ部31での締め込み量が不適切になり、防食構造体の鋼管矢板1の表面への密着の程度が不足してしまう場合があった。また、打設時に発生する継手部の伸縮による寸法誤差や、打設後、時間の経過に伴って鋼管矢板が減肉する影響で、防食構造体の鋼管矢板への密着の程度が不足してしまう場合があった。さらに、流木や流氷のような漂流物のフランジ部への衝突や波浪の影響等によって、フランジ部が損傷し、防食構造体の鋼管矢板の表面への密着の程度が不足してしまう場合があった。
本発明は、打設時において施工者の熟練の程度等が低かったとしても、また、打設後に腐食による減肉が生じても、防食構造体を鋼管矢板へ密着させることができ、さらに、フランジ部がないために流木や流氷のような漂流物の衝突や波浪等の外力による損傷を受け難い防食構造体を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討し、上記課題を解決する方法を見出し、本発明を完成させた。
本発明は次の(1)〜(4)である。
(1)既設構造物の一部である鋼管矢板の表面に形成する、少なくとも防食層および耐食性金属板ならびにこれらを前記鋼管矢板に固定する固定手段を含む防食構造体であって、
前記耐食性金属板は、前記鋼管矢板の断面半円形状の本体部分を覆う、少なくとも一部に蛇腹構造部を備える本体部と、前記本体部の辺縁に形成された平坦部とを含み、
打設時および打設後において前記蛇腹構造部が収縮することで、前記鋼管矢板の表面に密着するように構成されている、防食構造体。
(2)前記固定手段は、前記鋼管矢板に固定される固定板と、前記固定板に固定されたボルトと、前記ボルトと螺合するナットとを含み、
前記固定板と前記平坦部との間に前記防食層が配置されていて、前記防食層および前記平坦部に前記ボルトを貫通させた後、前記ナットを螺合させることで前記鋼管矢板の表面に固定される、上記(1)に記載の防食構造体。
(3)前記耐食性金属と前記防食層との間に、さらにクッション層を有する、上記(1)または(2)に記載の防食構造体。
(4)前記防食層と前記クッション層との間に、さらに遮水シートを有する、上記(3)に記載の防食構造体。
本発明によれば、打設時において施工者の熟練の程度等が低かったとしても、また、打設後に腐食による減肉が生じても、防食構造体を鋼管矢板へ密着させることができ、さらに、フランジ部がないために流木や流氷のような漂流物の衝突や波浪等の外力による損傷を受け難い防食構造体を提供することができる。
護岸Gに設置された鋼管矢板の海側に、本発明の防食構造体を取り付けた状態を示す概略断面図である。 蛇腹構造部の概略断面図である。 護岸Gに設置された鋼管矢板の海側に、従来の防食構造体を取り付けた状態を示す概略断面図である。
本発明の防食構造体について説明する。
本発明の防食構造体は、既設構造物の一部である鋼管矢板の表面に形成するものである。また、本発明の防食構造体は、少なくとも防食層および耐食性金属板ならびにこれらを前記鋼管矢板に固定する固定手段を含む。
本発明の防食構造体において既設構造物とは、例えば海洋構造物、河川構造物、港湾構造物等であり、主に水(海水等)と接触する部位を備える既設の構造物である。このような既設構造物は海水等の水と接触する部位、例えば飛沫帯や干満帯に、鋼管矢板を有している場合がある。
本発明の防食構造体は、このような鋼管矢板を防食するために用いるものである。
本発明の防食構造体について、具体的な実施態様を示す図を用いて説明する。
図1は、海洋構造物である鋼管矢板1が護岸Gに設置されており、その鋼管矢板1の海S側(外側)に、本発明の防食構造体2を取り付けた状態を示す図であり、図2は、図11における蛇腹構造部361の拡大図(概略図)である。
図1では、図3を用いて説明した従来の態様(以下では「前述の従来態様」ともいう)と同じ部位には同じ符号を付けている。
以下では前述の従来態様と異なる部位について詳しく説明し、同様の部位については説明を簡略化する。
なお、前述の従来態様の場合と同様に、本発明の防食構造体において既設構造物に対して海水等の水が存在するサイドを「外側」、その反対サイドを「内側」ともいう。したがって、護岸Gに対して海S側が「外側」であり、その反対サイドが「内側」である。
図1において鋼管矢板1は、前述の従来態様と同様に、長尺筒型鋼材で形成された断面半円形状の本体部分11と、2つの本体部分11に挟まれるように配置された連結部12とを有し、本体部分11を連結部12が連結することで、壁面状の構造物(既設構造物)を構成している。なお、図1において鋼管矢板1の断面は略円形状であるが、このうちの約半分(半円形部分)を、鋼管矢板1における本体部分とする。
また、連結部12も前述の従来態様と同様であり、断面L字の山形鋼からなる雌型連結部122と、断面T字のT形鋼からなる雄型連結部121とが連結してなる。連結部は図1に示すL−T型の他、P−P型やP−T型等であってもよい。
図1に示す本発明の防食構造体2は、鋼管矢板1の表面に形成された防食層25を備え、その外側にクッション層27を備え、さらにその外側に耐食性金属板3を備えている。そして、固定手段4によって、防食層25、クッション層27および耐食性金属板3が鋼管矢板1の表面に密着するように固定されている。
<耐食性金属板>
本発明の防食構造体1が備える耐食性金属板3について説明する。
耐食性金属板3は、鋼管矢板1の本体部分11に沿った断面半円形状の本体部36と、その両端(辺縁)に形成された締め付け固定用の平坦部37とを有する。
そして、本体部36の少なくとも一部に蛇腹構造部361を有する。
蛇腹構造部361について図2を用いて説明する。図2には蛇腹構造部361の拡大断面図(概略図)である。
本発明の防食構造体2が有する蛇腹構造部は、その断面が図2に示すように、山と谷とが繰り返される態様である。山と谷との距離、すなわち、図2においてHで示す長さは1〜5mmであることが好ましく、2〜3mmであることがより好ましい。
図2に示す矢印の方向に力を加えることで蛇腹は縮む。耐食性金属板3を打設する際は、いったん蛇腹を縮ませた後、その逆方向に引っ張り、その状態を保ちながら、固定手段4によって鋼管矢板1の表面側に固定することが好ましい。そうすることで耐食性金属板3に、鋼管矢板1の表面に向かう方向の力が付与されるため、本発明の防食構造体2を鋼管矢板1の表面に密着させることができるからである。この場合、打設時において施工者の熟練の程度等が不足していても、防食構造体を鋼管矢板へ密着させることができる。また、打設時に発生する継手部の伸縮による寸法誤差や打設後、時間の経過に伴って鋼管矢板が減肉しても、防食構造体を鋼管矢板へ密着させることができる。
耐食性金属板の材質は特に限定されない。例えば耐食性金属として、チタン、チタン合金、ステンレス(例えばSUS316、SUS316L、SUS317、SUS317にCu、N等を添加して耐孔食性等を改善したもの等)が挙げられ、チタンまたはチタン合金であることが好ましい。
耐食性金属板の板厚も特に限定されないが0.3〜5.0mmが好ましく、1.0〜3.0mmがより好ましい。軽量であり施工時の取扱いが容易だからである。
また、耐食性金属板は2枚以上を接合したものであってもよい。
<防食層>
防食層25は鋼管矢板1の外側の表面に密着するように設けられる。
防食層は従来公知の防食剤を用いて形成することができる。例えば、市販の防食剤であるペトロラタム(ペトロラタムペースト、ペトロラタムシート)、エポキシ樹脂、酸化重合樹脂などを用いて防食層を形成することができる。例えばペトロラタムシートを耐食性金属の内側または鋼管矢板の表面に貼り付け、その外側または表面にペトロラタムペーストを塗布して防食層を形成することができる。
鋼管矢板の外側の表面に密着するように設ける防食層の量は、鋼管矢板の単位面積当たりの防食層の質量として、2.0〜4.0kg/m2であることが好ましく、2.0〜3.0kg/m2であることがより好ましく、2.0〜2.5kg/m2であることがより好ましく、2.0〜2.2kg/m2であることがさらに好ましい。
また、防食層の厚さは特に限定されないが、2〜5mmであることが好ましく、2〜4mmであることがより好ましく、2〜3mmであることがより好ましい。
<クッション層>
本発明の防食構造体は、防食層25と耐食性金属板3との間に、緩衝材からなるクッション層27を備えてもよい。
緩衝材としては、発泡ポリエチレンが挙げられる。
クッション層27の厚さは特に限定されないが、5〜20mmであることが好ましく、10〜15mmであることがより好ましい。
<遮水シート>
本発明の防食構造体は、防食層25とクッション層27との間に、さらに遮水シートを有してもよい。
遮水シートとして例えば従来公知のポリエチレンからなるシートを利用することができる。
<固定手段>
固定手段4は、固定板41と、ボルト44と、ワッシャー45と、ナット47とからなる。固定板41は連結部12(雌型連結部122)の表面に溶接固定されている。また、ボルト44は、固定板41に固定されて海S側に突出している。そして、防食層25、クッション層27および耐食性金属板3の端部に設けた挿通孔にボルト44を挿通させ、さらに海S側からワッシャー45の挿通孔にボルト44を挿通させてからナット47を螺合して固定する。
ボルト44と耐食性金属板3とが電気的に接触しないように適切に絶縁することが好ましい。
図1に示したような本発明の防食構造体は、打設時において施工者の熟練の程度等が低かったとしても防食構造体を鋼管矢板へ密着させることができる。また、打設時に発生する継手部の伸縮による寸法誤差や、打設後、時間の経過に伴って鋼管矢板が減肉しても、防食構造体を鋼管矢板へ密着させることができる。さらに、フランジ部がないために流木や流氷のような漂流物の衝突や波浪等の外力による損傷を受け難い。
1 鋼管矢板
11 本体部分
12 連結部
2 本発明の防食構造体
25 防食層
27 クッション層
3 耐食性金属板
31 フランジ部
33 ボルト
35 ナット
36 本体部
37 平坦部
4 固定手段
41 固定板
44 ボルト
45 ワッシャー
47 ナット
G 護岸
S 海
121,122 継手
361 蛇腹構造

Claims (4)

  1. 既設構造物の一部である鋼管矢板の表面に形成する、少なくとも防食層および耐食性金属板ならびにこれらを前記鋼管矢板に固定する固定手段を含む防食構造体であって、
    前記耐食性金属板は、前記鋼管矢板の断面半円形状の本体部分を覆う、少なくとも一部に蛇腹構造部を備える本体部と、前記本体部の辺縁に形成された平坦部とを含み、
    打設時および打設後において前記蛇腹構造部が収縮することで、前記鋼管矢板の表面に密着するように構成されている、防食構造体。
  2. 前記固定手段は、前記鋼管矢板に固定される固定板と、前記固定板に固定されたボルトと、前記ボルトと螺合するナットとを含み、
    前記固定板と前記平坦部との間に前記防食層が配置されていて、前記防食層および前記平坦部に前記ボルトを貫通させた後、前記ナットを螺合させることで前記鋼管矢板の表面に固定される、請求項1に記載の防食構造体。
  3. 前記耐食性金属と前記防食層との間に、さらにクッション層を有する、請求項1または2に記載の防食構造体。
  4. 前記防食層と前記クッション層との間に、さらに遮水シートを有する、請求項3に記載の防食構造体。
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