以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、本開示による内部抵抗算出方法が適用される二次電池10および計測装置20の一例を模式的に示す図である。
二次電池10は、正極11と、負極12と、それらをイオン的に結合する電解質13と、正極11に接続された正極端子14と、負極12に接続された負極端子15とを備える。図1には正極11および負極12がそれぞれ1枚ずつ設けられているが、実際には正極11および負極12がそれぞれ複数枚ずつ設けられる。なお、二次電池10は、正極11、負極12および電解質13が図示しないケースに収納された状態であっても、ケースに収納される前の状態であってもよい。
計測装置20は、正極計測端子21,22と、負極計測端子23,24と、リード線25〜28と、演算装置29とを備える。
正極計測端子21,22の各々は、二次電池10の正極端子14と電気的に接触可能に構成される。正極計測端子21,22は、リード線25,26によって、演算装置29の端子T1,T2にそれぞれ接続される。
負極計測端子23,24の各々は、二次電池10の負極端子15と電気的に接触可能に構成される。負極計測端子23,24は、リード線27,28によって、演算装置29の端子T3,T4にそれぞれ接続される。
計測装置20は、交流インピーダンス法によって二次電池10の内部抵抗(直流抵抗)を算出する。具体的には、ユーザが正極計測端子21,22を二次電池10の正極端子14に接触させ、かつ負極計測端子23,24を二次電池10の負極端子15に接触させた状態で、内部抵抗の算出処理を開始させるための操作を行なうと、計測装置20に含まれる演算装置29は、端子T1,T4間(すなわち二次電池10の電極11,12)に交流信号を印加するとともに、端子T2,T3間(すなわち二次電池10の電極11,12)の応答波形を計測することによって交流信号に対する応答信号を計測する。そして、演算装置29は、交流信号および応答信号から二次電池10の内部インピーダンスの実数成分を算出し、算出された実数成分を二次電池10の内部抵抗とする。
以下では、演算装置29が、内部抵抗を算出する際に、二次電池10に交流電流信号を印加し、交流電流信号に対する応答電圧信号を計測する場合について説明する。なお、演算装置29が、内部抵抗を算出する際に、二次電池10に交流電圧信号を印加し、交流電圧信号に対する応答電流信号を計測するようにしてもよい。
本実施の形態による演算装置29は、内部抵抗を算出する際に、二次電池10に印加する交流電流信号の周波数fを、1Hz以下かつ0.1Hz以上の範囲に含まれる単一の値に設定している。以下、この点について詳しく説明する。
図2は、従来の交流インピーダンス法によって計測された二次電池10の内部インピーダンスを複素平面上にコールコールプロットして得られたインピーダンス軌跡の波形一例を示す図である。図2において、横軸はインピーダンスの実数成分(抵抗成分)を示し、縦軸はインピーダンスの虚数成分(容量成分)を示す。なお、図2には、交流電流信号の周波数fを、1000Hzから0.1Hzの範囲で変化させた場合のインピーダンス軌跡が示されている。
周波数fが比較的高い1000Hzから1Hzまでの範囲では、半円状の軌跡が現れる。この半円状の軌跡は、インピーダンス円とも呼ばれてる。
一方、周波数fが比較的低い1Hzから0.1Hzまでの範囲では、所定の傾きを持つ直線状の軌跡が現れる。この直線状の部分は、拡散律速領域特有の直流抵抗が現れる領域に含まれており、後述するようにIV試験法における計測領域に相当する。したがって、拡散律速領域(1Hzから0.1Hzまでの範囲)におけるインピーダンスの実数成分は、IV試験法によって計測される内部抵抗と相関がある。
この点に鑑み、本実施の形態においては、二次電池10に印加される交流電流信号の周波数fを、拡散律速領域(1Hz以下かつ0.1Hz以上の範囲)に含まれる単一の値に設定している。以下では、交流電流信号の周波数fを「0.1Hz」に設定する例について説明する。
図3は、本実施の形態による内部抵抗算出方法の一例を説明するための図である。図3(A)は、内部抵抗を算出するために二次電池10に印加される交流電流信号の波形、および交流電流信号に対する応答電圧信号の計測結果の波形の一例を示す。図3(B)は、印加された交流電流信号および計測された応答電圧信号から得られるインピーダンスの実数成分および虚数成分を複素平面上にコールコールプロットした図である。
図3(A)に示すように、演算装置29は、二次電池10の電極11,12間に交流電流信号を印加する。交流電流信号の周波数fは、上述のように、拡散律速領域に含まれる「0.1Hz」である。演算装置29は、二次電池10の電極11,12間の電圧波形(具体的には振幅ΔV、および交流電流信号に対する位相差θ)を、交流電流信号に対する応答電圧信号として計測する。
図3(B)に示すように、演算装置29は、交流電流信号の振幅ΔIの大きさに対する応答電圧信号の振幅ΔVの大きさの比(=|ΔV|/|ΔI|)を、インピーダンスZの大きさ(=|Z|)として算出する。そして、演算装置29は、複素平面上において、原点との距離が|Z|であり、横軸との角度が位相差θとなる点をプロットし、プロットされた点の実数成分を二次電池10の内部抵抗として算出する。
図4は、演算装置29が二次電池10の内部抵抗を算出する際に実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、ユーザが正極計測端子21,22を二次電池10の正極端子14に接触させ、かつ負極計測端子23,24を二次電池10の負極端子15に接触させた状態で、内部抵抗の算出処理を開始させるための操作を行なった場合に開始される。
ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10にて、演算装置29は、二次電池10の電極11,12間に交流電流信号を印加する。上述したように、交流電流信号の周波数fは、拡散律速領域に含まれる単一の値「0.1Hz」である。また、交流電流信号の振幅ΔIは、たとえば、予め定められた固定値である。
次いで、演算装置29は、二次電池10の電極11,12間の電圧波形(具体的には振幅ΔVおよび位相差θ)を、交流電流信号に対する応答電圧信号として計測する(S12)。
次いで、演算装置29は、交流電流信号の振幅ΔI、応答電圧信号の振幅ΔVおよび位相差θを用いて、二次電池10のインピーダンスの実数成分(コールコールプロットの横軸の値)を二次電池10の内部抵抗として算出する(S14)。
以上のように、本実施の形態による二次電池10の内部抵抗算出方法によれば、交流インピーダンス法によって得られるインピーダンスの実数成分が二次電池10の内部抵抗として算出される。この際、二次電池10に印加される交流電流信号の周波数fは、拡散律速領域(1Hz以下かつ0.1Hz以上の範囲)に含まれる単一の値に設定される。これにより、単一の周波数に対するインピーダンスの実数成分を算出する(コールコールプロットの横軸の値を算出する)という簡易な処理を行なうだけで、二次電池10の内部抵抗を短時間かつ適切に算出することができる。以下、この点について従来と比較しながら詳細に説明する。
従来、二次電池の内部抵抗(直流抵抗)を計測する方法としては、IV試験法と呼ばれる方法が用いられるのが主流であった。
図5は、従来のIV試験法による内部抵抗算出方法の一例を説明するための図である。図5(A)に示すように、IV試験法では、所定の時間幅Xを有する電流パルスを二次電池に印加した時の二次電池の電圧値を計測する処理が、所定の休止時間(たとえば10分程度)を挟みながら複数の電流値(図5に示される例では、I1、−I1、I2、−I2、I3、−I3…)において繰り返される。なお、各電流パルスの時間幅Xは、拡散律速領域における直流抵抗を計測するために、10秒程度の比較的長い時間に設定される。
そして、図5(B)に示すように、印加された複数の電流パルスの電流値(I1、−I1、I2、−I2、I3、−I3…)と計測された複数の電圧値(V1、V1’、V2、V2’、V3、V3’…)とをそれぞれ二次元座標の横軸および縦軸にプロットして得られる複数の点を近似する直線の傾きが最小2乗法などによって求められ、求められた直線の傾きが内部抵抗とされる。
しかしながら、IV試験法を用いて二次電池の内部抵抗を計測する場合には、電流値を切り替える毎に所定の休止時間(10分程度)が必要となるため、すべての電流値に対する電圧値の計測を完了するのに長時間を要するとの問題があった。
また、交流インピーダンス法によって得られるインピーダンスの実数成分は抵抗成分の値を示すことが一般的に知られているが、従来の交流インピーダンス法では複雑な処理が必要になる。すなわち、従来の交流インピーダンス法においては、上述の特許文献1にも示されているように、コールコールプロットによって得られるインピーダンス円から、二次電池の反応抵抗値等が算出される。このインピーダンス円を得るために、従来の交流インピーダンス法においては、二次電池に印加される交流信号の周波数が、インピーダンス円がプロットされると予測される比較的高い周波数範囲(たとえば1MHz程度から1Hz程度の範囲)に集中的に多く設定されており、すべての周波数に対してコールコールプロット処理を行ない、その結果を解析する必要がある。その分、複雑な処理が必要になり、ある程度の時間も掛かってしまう。
以上のような従来の課題に対し、本願の発明者等は、従来の交流インピーダンス法におけるコールコールプロットによって得られる二次電池の内部インピーダンスの波形には、交流電流信号の周波数が1Hz以下かつ0.1Hz以上の比較的低い範囲において、所定の傾きを持つ直線部分が現れるのが一般的であり、この直線部分は、拡散律速領域特有の直流抵抗が現れる領域に含まれており、従来のIV試験法における計測領域に相当することに着目した。すなわち、図5で示したように、従来のIV試験法における各電流パルスの時間幅Xを「10秒」程度に設定することは、交流インピーダンス法における交流信号の周波数に換算すると、拡散律速領域に含まれる「0.1Hz」程度に相当する。
この点に着眼し、本実施の形態による内部抵抗算出方法は、交流インピーダンス法における交流電流信号の周波数fを拡散律速領域に含まれる単一の値「0.1Hz」に設定し、この単一の周波数に対するコールコールプロットの実数成分を、二次電池10の内部抵抗として算出する。これにより、従来のIV試験法と同様に拡散律速領域における直流抵抗を適切に算出することができるとともに、従来のIV試験法のような休止時間が不要となるため、短時間で内部抵抗を算出することができる。また、インピーダンス円がプロットされると予測される範囲(拡散律速領域よりも高い範囲)に周波数fが集中的に多く設定される従来の交流インピーダンス法に比べても、簡易な処理で短時間で内部抵抗を算出することができる。その結果、二次電池10の内部抵抗を短時間かつ適切に算出することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。