本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の薬剤散布装置を備えた水田作業車としての田植機1の側面図である。なお、以下では、図1におけるF方向を前方向とし、前方向の進行方向に対して左右方向を規定して説明する。
図1に示すように、田植機1は、走行機体2と、該走行機体2の後部に昇降連結装置10を介して連結される植付部20と、植付部20の後部に取り付けられる薬剤散布装置100などを備える。
走行機体2は、車体フレーム3の前部上に動力源としてのエンジンが載置され、該エンジンはボンネット4により覆われている。エンジンの後方にはミッションケース5を備える。ミッションケース5の左右のそれぞれにフロントアクスルケースを介して前輪6・6を支持し、ミッションケース5の後方にはリアアクスルケース8を介して左右の後輪7・7が支持される。
前記ボンネット4の左右両側には、車体フレーム3に取り付けられる予備苗載台9・9が配置される。ボンネット4の後部にはダッシュボード14を設け、該ダッシュボード14の上部から上方へ操向ハンドル12が突設される。該操向ハンドル12の前部のダッシュボード14上に操作パネル19が配設される。ダッシュボード14の後方には所定の距離を隔てて運転席13が設けられている。
前記運転席13の後方の車体フレーム3上には施肥装置15が配置され、施肥装置15は、左右方向に複数の施肥ユニットから構成され、それぞれの施肥ユニットは、粒剤の肥料を収容するホッパ16と、ホッパ16から所定の量の粒剤を繰り出す繰出装置17と、繰出装置17の下部に連通されるホース(図示せず)を備え、各ホースの他端は植付部20の各条の植付位置の側方まで延設される。施肥ユニットの左右一側にはファン18が設けられ、該ファン18からの送風がホース内に送られ、その送風により繰出装置17より繰出された粒剤を圃場へ搬送して、植付位置の近傍に排出させる。
植付部20は、走行機体2に昇降連結装置10を介して連結されており、昇降連結装置10はトップリンク23及びロアリンク24等から構成され、走行機体2の後部に設けられた油圧シリンダを伸縮させることで植付部20を昇降可能としている。
植付部20は、苗マットが載置される苗載台21と、苗を圃場に植え付ける複数の植付装置22などを備える。本実施形態では植付部20は6条植えとしているが、条数は限定するものではない。苗載台21は、前高後低に傾斜して配置され、植付フレーム26上に横設した苗台レール上を左右摺動自在に配置される。
植付部20は、苗載台21の下方に、植付ミッションケースと該植付ミッションケースから後方へ延びる3つの植付伝動ケース28を備え、各植付伝動ケース28の後端部の左右には、それぞれ植付装置22が配設される。植付装置22はロータリケースの両側に植付爪25・25が配置されて、エンジンからの動力が植付ミッションケースや植付伝動ケース28等を介してロータリケースを回転させ、植付爪25・25を揺動させて、苗載台21から所定量の苗を掻き取って、下方へ搬送して圃場に植え付けるようにしている。
前記苗載台21は図1、図2、図3に示すように、各条を仕切るリブ21a・21a・・・が前後方向で苗載せ面より上方へ突設して設けられ、苗載台21の下部には、各条毎に苗送りベルト29が備えられる。苗載台21は横送り機構により苗台レール上を左右往復摺動され、また、前記苗送りベルト29は縦送り機構により苗載台21が左右両端位置まで移動されると駆動されて、苗送りベルト29が所定量回転される。つまり、苗載台21上に載置された苗マットは最下辺が左方または右方へ一定量ずつ掻き取られて植え付けられ、左端または右端に達すると、縦送り機構を作動させて苗送りベルト29を回動させて苗マットを一列分下降させる。次に、横送り機構を逆方向に作動させて、苗載台21を左右反対方向へ摺動させる。こうして、苗マットを下から順に掻き取って植え付けるのである。
次に、薬剤散布装置100について説明する。図1、図2、図3において、薬剤散布装置100は、苗載台21に載置された苗マットの苗の根元部分に上方から箱施用薬剤を散布するものである。この薬剤散布装置100の後方には、除草剤等の薬剤を圃場に散布する第二薬剤散布装置110が取り付けられる。該第二薬剤散布装置110は薬剤散布装置100と一体的に取り付けることも可能であり、また、別々に支持することも可能である。また、取り付けない構成とすることもできる。
薬剤散布装置100は、薬剤を散布する散布機34と、該散布機34を左右移動可能に支持する支持レール33からなる。支持レール33は苗載台21の左右両側のリブ21a・21aから上方向に立設される円柱状の支柱31・32の上部に横架される。薬剤散布装置100は左右の支柱31・32の一方を中心に(上下方向を回転軸心として)前後回動可能に取り付けられている。本実施形態では、右側の支柱32を中心に回動可能とする実施例について説明する。なお、薬剤散布装置100が支柱31・32に支持されている状態を作業位置とし、右側の支柱32を中心に後方へ回動して、散布機34が苗載台21から離間した状態をメンテナンス位置とする。
散布機34は、繰出ケース41の上部にホッパ42を配置して薬剤を収納できるようにし、図4に示すように、繰出ケース41内には繰出ロール43を回転自在に収納し、該繰出ロール43の繰出軸43aは電磁クラッチ40やチェーン等の動力伝達機構を介してモータ44の駆動軸と連動連結され、モータ44からの動力によって回転駆動される。該繰出ロール43は円筒状に構成され、外周上の所定角度毎に繰出凹部が形成され、繰出凹部は体積を変更可能とし、繰出量を変更できるようにしている。但し、薬剤の繰出構造はロール式に限定せず、目皿式等であってもよい。
また、前記繰出ケース41の後面(または前面)には、支持ローラ45・45・・・を上下左右に回転自在に配置し、該支持ローラ45・45・・・により支持レール33を上下で挟むように支持し、散布機34が支持レール33上を左右摺動自在となるようにしている。そして、支持レール33には長手方向にラック46が形成され、該ラック46に駆動ピニオン47が歯合され、該駆動ピニオン47は繰出ケース41に支持されるとともに、前記モータ44の駆動軸とチェーンまたは歯車等を介して連動連結される。こうして、モータ44の駆動により駆動ピニオン47を回転駆動することで、散布機34を左右方向へ移動可能としている。但し、散布機34を左右方向へ移動させる構成はラックとピニオンに限定されるものではなく、支持レール33内にチェーンを収納し、苗載台21の左右一側に配置したモータによりチェーンを回動駆動し、チェーンに固定した散布機34を左右へ移動させる構成とすることもできる。そして、チェーンに係合させたスプロケットにより散布機34の繰出軸を回動させてもよい。また、チェーンの代わりにワイヤーを用いてもよい。また、支持レール33と平行にネジ軸を横架し、該ネジ軸にナットを螺合し、該ナットに散布機34を固定し、ネジ軸をモータにより回転駆動することにより散布機34を左右摺動させる構成とすることも可能である。
前記繰出ケース41には位置センサ48が設けられ、該位置センサ48は制御部50と接続されている。位置センサ48は苗載台21上での散布機34の位置を検知するものであり、散布機34の停止位置や苗マットに薬剤を散布する位置を検知するものである。例えば、位置センサ48は駆動ピニオン47の回転を検知して、支持レール33上のどの位置にあるかを検知する。但し、散布機34の位置を検知する方法は限定するものではなく、支持レール33上の左端や右端や苗載台21のリブの位置にマークを付設して、このマークを読み取るように構成してもよく、または、左端や右端や苗載台21のリブにスイッチを設けてそのオン信号を検知してもよい。
また、前記制御部50は前記モータ44及び前記電磁クラッチ40と接続され、植付作業時にモータ44および電磁クラッチ40を作動させて、左右一側から左右他側へ移動させながら繰出軸43aを回転させて薬剤を散布させる。この移動時に、制御部50は、苗載台21のリブが位置する部分は電磁クラッチ40をオフとして散布させず、無駄な薬剤散布を防止することもできる。また、制御部50には条止めクラッチ51と接続され、条止めを操作したときには、制御部50は条止めした条へは散布機34を移動させず、植付作動させる条へのみ散布機34を移動させて散布するように制御している。
また、制御部50は散布機34が左右の端部に位置すると停止し、縦送り機構が所定回数駆動された後に左右移動を開始し、苗マットに重複散布しないようにしている。更に、作業が終了して、電源をオフとしたときには、制御部50は薬剤散布装置100のメンテナンス位置での回動中心側(本実施形態では右側端)へ移動させる。こうして、作業終了後に残った苗マットを取り出すために、薬剤散布装置100を後方へ回動するときに、散布機34が回動中心側に位置するため、支柱32に大きな負荷がかからず変形を防止することができる。
また、制御部50はホッパ42に設けた薬剤残量センサ49と運転席13近傍に設けた操作パネル19と接続され、薬剤残量センサ49はホッパ42の薬剤が所定量以下になったことを検知すると、制御部50にその信号を送信して、制御部50は操作パネル19において、薬剤が所定量以下となったことを表示するとともに、警報を発するようにしている。また、制御部50は後述するロック部70にロック検知センサを設けて、ロック部がロックされていないと、薬剤散布装置100が作業位置以外の状態であるとして、表示及び警報を発するように構成することもできる。
次に、薬剤散布装置100の支持レール33の支持構成について説明する。支持レール33の左右一側(右側)は回動支持部60により支持され、左右他側(左側)はロック部70により支持される。
回動支持部60は図5に示すように、支柱32の上部に回動支持部60が設けられ、支持レール33を回動したときに所定の角度で固定できるようにしている。回動支持部60は固定手段と支持ボス63からなり、支持ボス63は軸心を上下方向とした円筒状とし支持レール33の一端(右端)に固定され、支柱32の上部に外嵌して回転自在に支持される。
固定手段は回動規制板61と固定ピン64からなる。回動規制板61は支柱32の上部に固定され、回動規制板61上に支持ボス63が載置される。回動規制板61は平面視で半円または扇形に形成され、中心部が支柱32に固定される。回動規制板61の円周部には同心円上(支柱32の中心から同一半径上)の所定角度毎にピン孔61a・61a・・・が開口されている。また、回動規制板61の両端には上方へ突片を立設してストッパ62・62が形成されている。
前記支持レール33には固定ピン64が前記回動規制板61のピン孔61aに対応して挿抜可能に取り付けられている。即ち、固定ピン64は前記ピン孔61aに挿入自在の直径を有し、支持レール33を上下方向に貫通する長さとし、固定ピン64の上部には操作が容易にできるように把手64aを形成している。該固定ピン64は支持レール33に固定したブラケット65に上下摺動自在に支持され、ブラケット65内にバネ66を配置し、固定ピン64をブラケット65と支持レール33を貫通させて、バネ66により固定ピン64が回動規制板61側へ突出するように付勢している。なお、固定ピン64(把手64a)はブラケット65の側面より上方へ突設したプレートに乗り上げて保持可能とし、固定ピン64を固定解除位置で保持し、任意の回動位置まで回動してから把手64aを回動して固定ピン64を挿入できるように構成している。
このような構成において、薬剤散布装置100が作業位置のときには、支持レール33を左右方向となるように回動し、前側のストッパ62に当てた状態で固定ピン64を回動規制板61の前側に位置するピン孔61aに挿入して固定する。
そして、作業が終了して残った苗マットを取り出すときや、散布機34のメンテナンスを行うときには、バネ66の付勢力に抗して固定ピン64を上方へ持ち上げピン孔61aから抜いて、所望の位置まで後方へ回動し、固定ピン64を再びピン孔61aに挿入して固定し、メンテナンス位置とする。こうして、散布機34は苗載台21から離間した位置で固定され、薬剤散布装置100がふらつくことがなく容易にメンテナンスができる。なお、固定ピン64を解除して後方へ回動した時に勢いよく回動しても後方のストッパ62に支持レール33が当接するため、回り過ぎることがなく破損等を防止できる。但し、回動範囲は限定するものではない。
また、前記固定手段は、ピン孔61aの代わりに円弧状に開口した長孔に構成してもよく、また、支持レール33側に回動規制板61を設けて、支柱32側に固定ピン64を設ける構成であってもよい。また、固定手段は、前記回動規制板61と固定ピン64に限定するものではなく、ボルトにより固定してもよい。
また、図6に示すように、支柱32からステー67を突設し、該ステー67と支持レール33との間に所定長さで固定できるロッド(またはプレート)68で角度調整可能に固定する構成であってもよい。ロッド68はターンバックルとして長さ調節可能とすることもできる。プレートの場合には長手方向に固定孔を複数設ける構成とすることができる。
また、回動中心と反対側(左側)にロック部70を設けて、支柱31と支持レール33の左側をロックして、作業時に振動やズレが生じないようにすることもできる。つまり、ロック部70は図7に示すように、支柱31の上部に設ける受体71と支持レール33の左側に設けるロックレバー72と操作部材73(図5)からなる。受体71は板体を側面視L字状に折り曲げ、支柱31の上部に後方に向けて固定され、該受体71に支持レール33の左側が水平状態で載置できるようにする。該受体71の下板の後部は下方に斜めに折り曲げられて傾斜部が形成され、支持レール33が容易に受体71に乗り上げられるようにしている。
前記支持レール33の左側には、ロックレバー72が前記受体71に係合可能に配置される。該ロックレバー72は中途部が軸体74により支持レール33に回転自在に支持され、ロックレバー72の先端にフック部72aが形成され、前記受体71の縦板部に係合可能としている。該ロックレバー72にはバネ75の一端が係止されて、ロックレバー72がロックする方向に付勢されている。ロックレバー72の他端には操作部材73が連結される。操作部材73は支持レール33の左側に設けることもできるが、本実施形態では、図5に示すように、支持レール33の右側に設けて、前記固定手段と同じ側で操作できるようにしている。操作部材73はレバーとして下部を支持レール33に回動自在に支持し、該操作部材73と前記ロックレバー72をワイヤー76で連結している。
こうして、薬剤散布装置100が作業位置の状態で、ロックを解除する場合には、操作部材73を回動することにより、ワイヤー76を介してロックレバー72が回動され、フック部72aが受体71から外れて支持レール33を後方へ回動することができ、メンテナンス位置とすることができる。また、メンテナンス位置から作業位置とする場合には、支持レール33を前方へ回動して、支持レール33の左側を受体71に載せて押し込むだけで、ロックレバー72のフック部72aはバネ75の付勢力に抗して解除側へ回動して受体71に乗り上げて、受体71の後面と支持レール33の前面が当接したときにフック部72aが受体71に係合してロックすることができる。但し、ロック部70のロック構成は限定するものではなく、ボルトやピンやカム等で固定してもよい。
以上のように、苗マットを載置する苗載台21と、該苗載台21上の苗マットを掻き取って圃場に移植する植付装置22と、前記苗載台21上の苗マットに薬剤を散布する薬剤散布装置100とを備え、薬剤散布装置100は、植付部20の苗載台21の上方で薬剤を散布する作業位置と、苗載台21から離間したメンテナンス位置の2位置に回動可能に苗載台21に支持されるので、薬剤散布装置100をメンテナンス位置に回動することにより、苗載台21と薬剤散布装置100との間に作業者が入る空間を確保できるようになり、植付作業が終了して余った苗マットを苗載台21から容易に取り出すことができるようになる。また、薬剤散布装置100の前方が開放されるので、薬剤散布装置100の掃除や部品交換等のメンテナンスも容易にできるようになる。
また、前記薬剤散布装置100は機体の左右方向で右側が苗載台21に回動自在に支持されるので、車道や農道で田植機1を左側に停車して、薬剤散布装置100を右後方へ回動した状態で、苗マットの取出しやメンテナンスを行うことができ、このとき、薬剤散布装置100の左側が開放された状態で作業を行うため、対向する車や追い越す車等に邪魔にならない。
但し、薬剤散布装置100は左側を回動中心として、右側を開放するように、前記と左右逆に取り付ける構成とすることも可能である。この場合、格納時に左側に壁等が存在する時に、右側を開放して、メンテナンスが容易にできるようになる。
また、薬剤散布装置100をメンテナンス位置に回動したときには、片持ちの支持となるため、回動中心側の負荷が大きくなる。特に、薬剤散布装置100の後部に第二薬剤散布装置110を一体的に取り付けた場合には、重く負荷が大きくなり変形のおそれがある。そこで、図7に示すように、メンテナンス位置での回転中心と反対側(左側)にスタンド80を設けることも可能である。スタンド80は上端を支持レール33に枢支し、作業位置のときには、上端を支点に側方へ折り畳んで支持レール33の下面または側面に固定する。または、着脱式として走行機体2または植付部20に収納できるようにしてもよい。こうして、メンテナンス位置としたときには、スタンド80を立てることで、薬剤散布装置100が安定した状態でメンテナンスできるようになる。
また、田植機が、例えば、8条植えや10条植えなどの植付条数が多い場合には、薬剤散布装置100をメンテナンス位置に回動すると、支柱32の負荷が大きくなり、後方へ長く延びるので、左右に分割して二台で散布するようにも構成できる。この場合、薬剤散布装置100は右薬剤散布装置100Rと左薬剤散布装置100Lからなり、右薬剤散布装置100Rは前記薬剤散布装置100と略同じ構成であり、左薬剤散布装置100Lは右薬剤散布装置100Rと略左右逆に構成される。
つまり、8条植えの場合、図8に示すように、右薬剤散布装置100Rは、苗載台21の右側に円柱状の支柱32が上下方向に立設され、苗載台21の左右略中央のリブから上方に支柱36が立設され、支柱32・36の上部に右支持レール33Rが横架され、該右支持レール33Rに散布機34Rが左右移動可能に取り付けられる。右薬剤散布装置100Rは右の支柱32を中心に前後回動可能に取り付けられ、右側に回動支持部60が設けられ、左側にロック部70が設けられる。そして、作業位置からメンテナンス位置に回動するときには散布機34Rは右側に寄せられる。
左薬剤散布装置100Lは苗載台21の左側に円柱状の支柱31が上下方向に立設され、苗載台21の左右略中央のリブから上方に支柱37が立設され、支柱31・37の上部に左支持レール33Lが横架され、該左支持レール33Lに散布機34Lが左右移動可能に取り付けられる。左薬剤散布装置100Lは左の支柱31を中心に前後回動可能に取り付けられ、左側に回動支持部60が設けられ、右側にロック部70が設けられる。そして、作業位置からメンテナンス位置に回動するときには散布機34Lは左側に寄せられる。なお、支持レール33Lと支持レール33Rは前後または上下に位置をずらせて、左右中央に散布機34L・34Rが位置するときに干渉しないようにしている。また、10条植えの場合、2条ごとに条止めを行うため、薬剤散布装置100は4条散布用と6条散布用に分割される。
以上のように、薬剤散布装置100は、右薬剤散布装置100Rと左薬剤散布装置100Lとを備え、前記右薬剤散布装置100Rは、機体左右方向で苗載台21の右側に回動可能に支持され、前記左薬剤散布装置100Lは、機体左右方向で苗載台21の左側に回動可能に支持され、右薬剤散布装置100Rと左薬剤散布装置100Lはそれぞれ苗載台21の上方で薬剤を散布する作業位置と、苗載台21から離間したメンテナンス位置の2位置に回動可能に支持されるので、8条植えや10条植えでは、支持レール33が分割されて、長くならず大きなメンテナンス作業領域を確保する必要がなく、左右両側の支柱の支持荷重も軽減される。
第二薬剤散布装置110について説明する。図1において、第二薬剤散布装置110は、除草剤散布用として、薬剤散布装置100の後方に取り付けることができ、第二薬剤散布装置110を取り付けない構成とすることもできる。第二薬剤散布装置110は、ホッパ112と、繰出部113と、散布カバー114と、駆動部などを備える。ホッパ112の下部は、下方に向かって窄むロート状に形成されて、繰出部113の上部に連通される。繰出部113の下部は、散布カバー114の左右方向の中央の上部に接続される。繰出部113の内部は、前記散布機34の繰出部と略同様の構成であり、外周に繰出凹部を備える繰出ロールが回転可能に収容されている。散布カバー114の内部には、左右中央に電動モータにより駆動されるファンが備えられ、繰出部113から散布カバー114の内部に繰り出された薬剤を、案内板によって形成される流路へファン回転によって左右に分散させて圃場に散布できるように構成されている。第二薬剤散布装置110の繰出部113の前面が取付フレーム115を介して薬剤散布装置100の支持レール33に固定される。
次に、前述の散布機34を支持レール33上で左右移動させて散布する薬剤散布装置100の代わりに、支持レール33を用いることなく固定式の複数の薬剤散布装置120を用いて各条の苗マットに散布し、該薬剤散布装置120は植付部20から四節リンクを介して取り付ける構成とすることもできる。薬剤散布装置120の後部に第二薬剤散布装置110を取り付けて作業位置とメンテナンス位置とに回動可能とする構成について説明する。
まず、図9、図10に示すように、薬剤散布装置120は、6条植えとする場合、3つの散布ユニット86a・86b・86cを備える。各散布ユニットは同じ構成であるため、1つの散布ユニット86について説明する。散布ユニット86は、2条の苗マットに薬剤を散布できるようにしている。散布ユニット86は、ホッパ87と、2つの繰出部88・88と、2つの導出パイプ89・89と、繰出駆動軸90などを備える。ホッパ87は、内部に薬剤を収容する容器であり、ホッパ87の下部は、左右方向で二股に分かれて形成される。ホッパ87の左右に分かれた下部は、2つの繰出部88・88の上部に連通される。2つの繰出部88・88の下部には、それぞれ導出パイプ89・89の上端が接続される。繰出部88は前記と略同じ構成であるため説明は省略する。導出パイプ89・89の下端は、苗載台21の下部近傍の苗マットの根元部上方に延設される。
ここで、上述したように、散布ユニット86によって薬剤が散布される苗マットが載置される苗載台21には、苗掻き分け具85が取り付けられている。苗掻き分け具85は、図9に示されるように、導出パイプ89の下端近傍に位置するとともに、縦送り機構によって苗載台21の下方へ搬送される苗マットの苗の草丈中途部に当接するように構成されている。したがって、苗マットが下方へ搬送される際に、苗が苗掻き分け具85に当接して前方側へ傾倒され、苗掻き分け具85の後方側に苗マットの床土部が露出する空間が形成される。そして、散布ユニット86の導出パイプ89からこの苗掻き分け具85によって形成される空間へ向けて薬剤が放出されるように配置されている。
次に、植付部20の後部に、薬剤散布装置120と第二薬剤散布装置110を連結させる四節リンク機構150について説明する。図9、図10、図11に示すように、四節リンク機構150は、左右方向に延びるオープンフレーム127と、左右方向に延びる台座フレーム128と、2本のリンクアーム129a・129bとそれぞれを枢支する枢支軸141・142・143・144などを有する。リンクアーム129a・129bの一端(前端)は、植付部20に取り付けられる台座フレーム128の左右両側に、上下方向に延びる枢支軸141・142により回動可能に連結される。リンクアーム129a・129bの他端(後端)は、薬剤散布装置120及び第二薬剤散布装置110を取り付けるオープンフレーム127に所定間隔をあけて、上下方向に延びる枢支軸143・144により回動可能に連結される。
前記オープンフレーム127には、左右方向に延び薬剤散布装置120の散布ユニット86a・86b・86cを取り付けるフロントフレーム130と、左右方向に延び第二薬剤散布装置110を取り付けるリアフレーム131を連結する連結フレーム132・132・132が固定される。つまり、フロントフレーム130とリアフレーム131は前後平行に配置され、該フロントフレーム130とリアフレーム131の間に前後方向で左右平行に配置される連結フレーム132・132が架設されて、フロントフレーム130とリアフレーム131を連結している。フロントフレーム130に薬剤散布装置120の繰出部88・88・88が固定される。リアフレーム131に第二薬剤散布装置110の繰出部113と散布カバー114が取り付けられる。
前記台座フレーム128は、植付部20の右側に位置する2つの植付伝動ケース28・28の後部上に架設される。台座フレーム128の右端部には、上方へ突出する規制突起145が設けられ、該規制突起145は、リンクアーム129aが作業位置とメンテナンス位置に回動された際に、リンクアーム129aと当接してストッパとなり、その回動量を規制するものである。ただし、枢支軸141(または枢支142・143・144)の近傍に、図5や図6に示すような回動支持部60を設けて任意の回動位置で固定できるようにしてもよく、また、作業位置とメンテナンス位置で固定するために、図7に示すようなロック部70を設けてもよく、四節リンク機構126に設ける固定構成は限定するものではない。
リンクアーム129a・129bは同じ長さとし、左右一側(右側)から他側(左側)へ延設している。つまり、リンクアーム129aは右側に配置して、リンクアーム129aの前側は枢支軸141を介して台座フレーム128の右側に枢支し、後側は枢支軸143を介してオープンフレーム127の左右中央部に枢支する。リンクアーム129bは左側に配置して、リンクアーム129bの前側は枢支軸142を介して台座フレーム128の左側に枢支し、後側は枢支軸144を介してオープンフレーム127の左部に枢支する。こうして、四節リンク機構150は、図10に示すように、薬剤散布装置120と第二薬剤散布装置110が植付部20の後部上に位置させた作業位置から、図11に示すように、右後方へ水平に移動させたメンテナンス位置へと切り替えることができる。
また、四節リンク機構150は、図12に示すように、リンクアーム129aはリンクアーム129bよりも短く構成することで、薬剤散布装置120と第二薬剤散布装置110を右側への張り出し量を小さくして、後方へ大きく回動するように構成することもできる。また、リンクアーム129bの長さを調節可能とすることで、薬剤散布装置120と第二薬剤散布装置110の後方へ開く角度を変更可能とすることができる。そして、メンテナンス位置での薬剤散布装置120と第二薬剤散布装置110の前側の開かれた空間の大きさを調節することができて、メンテナンスが容易に行える位置に調節することができるようになる。
このように、四節リンク機構150を用いて薬剤散布装置120と第二薬剤散布装置110を支持することで、薬剤散布装置120と第二薬剤散布装置110を一本のレールで支持するよりも支持荷重を軽減することができ、メンテナンス位置への回動操作も容易に行えることができ、耐久性も向上させることができる。
また、四節リンク機構150は、植付部20の右側の後部に設けられているので、薬剤散布装置120及び第二薬剤散布装置110を植付部20から後方へ離間させた際に、2つのリンクアーム129a・129bは植付部20の右側に位置する。したがって、植付部20の後部のメンテナンスを行う際に、四節リンク機構150(リンクアーム129a・129b)が邪魔になりにくく、メンテナンスを容易に行える。なお、四節リンク機構150は、植付部20の左側の後部に設けることもできる。