以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
<画像形成装置>
図1は、本実施の形態における画像形成装置の概略図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態における画像形成装置1について説明する。なお、本実施の形態における画像形成装置1は、いわゆるデジタル複合機である。
図1に示すように、画像形成装置1は、画像読取部2と、画像処理部3と、画像形成部4と、用紙搬送部5と、定着装置6とを備えている。
画像読取部2は、自動原稿給紙装置2aと、原稿画像走査装置2b(スキャナー)とを有している。このうち、原稿画像走査装置2bには、コンタクトガラスと、各種のレンズ系と、CCDセンサ7とが設けられている。CCDセンサ7は、画像処理部3に接続されている。画像処理部3は、入力された画像に所定の画像処理を行なう。
画像形成部4は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット10(10Y,10M,10C,10K)を有している。これらについては、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略する。画像形成部4は、さらに、中間転写ユニット20および二次転写ユニット30を有している。
画像形成ユニット10は、露光装置11と、現像装置12と、感光体ドラム13と、帯電装置14と、ドラムクリーニング装置15とを有している。感光体ドラム13の表面は、光導電性を有しており、たとえば負帯電型の有機感光体である。感光体ドラム13は、トナー像を担持する像担持体である。
帯電装置14は、たとえばコロナ帯電器であるが、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体ドラム13に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置11は、たとえば半導体レーザーで構成される。
現像装置12は、たとえば二成分現像方式の現像装置であるが、キャリアを含まない一成分現像方式の現像装置であってもよい。
中間転写ユニット20は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を感光体ドラム13に圧接させる一次転写ローラー22と、対向ローラー24を含む複数の支持ローラー23と、ベルトクリーニング装置25とを有している。
中間転写ベルト21は、無端状の中間転写ベルトである。ここで、主として一次転写ローラー22により、感光体ドラム13に担持されたトナー像を中間転写ベルト21に転写する一次転写部が構成されることになる。
中間転写ベルト21は、複数の支持ローラー23によりループ状に張架され、移動可能となっている。複数の支持ローラー23のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト21は矢印A方向に一定速度で走行する。
二次転写ユニット30は、無端状の二次転写ベルト31と、二次転写ローラー33を含む複数の支持ローラー32とを有している。二次転写ローラー33は、対向ローラー24に対向している。二次転写ローラー33と対向ローラー24とにより、中間転写ベルト21に担持されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写部が構成されることになる。
二次転写ベルト31は、二次転写ローラー33および支持ローラー32によってループ状に張架される。複数の支持ローラー32のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、二次転写ベルト31は矢印B方向に走行する。なお、上述した駆動ローラーおよびこれを駆動させるための駆動源が、後述する搬送ベルト駆動機構39(図2参照)を構成することになる。
定着装置6は、記録媒体としての用紙に転写されたトナー像を用紙上に定着させるためのものであり、用紙上のトナー像を加熱および融解する定着ローラー6aと、用紙を定着ローラー6aに向けて押圧する加圧ローラー6bとを有している。
用紙搬送部5は、給紙部5aと、排紙部5bと、搬送経路部5cとを有している。給紙部5aを構成する給紙トレイユニット5a1〜5a3には、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部5cは、レジストローラー対5c1などの複数の搬送ローラー対を有している。排紙部5bは、排紙ローラー5b1によって構成されている。
搬送経路部5cにおける用紙の搬送速度は、後述するように、制御部8によって決定される。搬送経路部5cは、上述した二次転写ベルト31および複数の搬送ローラー対に加えて、モーター、モータードライバ、ギア等を含んでおり、このうちの二次転写ベルト31を駆動するための構成要素が、上述した搬送ベルト駆動機構39に該当する。これら複数の搬送ローラー対、モーター、モータードライバ、ギア等は、制御部8からの電気信号を受けて各種モーターを回転させることで、用紙を搬送する。
上述した各種モーターによって回転させられる部材には、たとえば現像装置12に含まれる現像ローラーや、感光体ドラム13、中間転写ベルト21、二次転写ローラー33、定着ローラー6a、上述した搬送ローラー対等があるが、これらの部材は、1個のモーターで一元的に駆動されてもよいし、複数のモーターで別々に駆動されてもよい。ただし、これら部材の外周面は、同じ線速度(この線速度は、一般にシステム速度と称される)で駆動されることが好ましい。なお、制御部8は、これら各種モーターの回転数やギアを切り替えることにより、システム速度を変更させることができる。
本実施の形態は、二次転写部と定着装置6との間において用紙を搬送する手段として、搬送ベルトおよびこれを駆動する搬送ベルト駆動機構39を用いた場合を例示するものであるが、当該手段は、用紙を二次転写部から定着装置6へと搬送できるものであればどのような手段にて構成されていてもよい。
たとえば、ベルトを使用せずに、用紙を搬送する搬送ローラー対と、これを駆動する搬送ローラー対駆動機構とによって、当該手段を構成してもよいし、二次転写ローラー33および対向ローラー24によって直接的に定着装置6へと用紙が搬送されるように、これら二次転写ローラー33および対向ローラー24と、これらを駆動するローラー駆動機構とによって、当該手段を構成してもよい。
図2は、図1に示す画像形成装置1の主要な機能ブロックの構成を示す図である。制御部8は、画像形成装置1の全体を制御する部位であり、図2に示すように、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)8a等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリー部8bを含んでいる。典型的には、CPU8aがメモリー部8bに格納されている各種プログラムを実行することで、画像形成装置1における画像形成に係る処理等が実行される。
図2に示すように、画像形成装置1は、上述した構成に加え、表示操作部9a、温湿度センサ9b、用紙センサ9c、押圧力調整機構70、および、ベルト搬送速度調整機構80をさらに備えている。
表示操作部9aは、制御部8の指令に基づいて画像形成装置1の状態等を使用者に対して表示したり、使用者による画像形成装置1に対する操作を受け付けて制御部8に入力したりするための部位である。
温湿度センサ9bは、画像形成装置1の内部もしくは周囲の温度および湿度を検知し、検出結果を制御部8に入力するためのものである。温湿度センサ9bは、定着装置6などの、画像形成装置1の構成上高温となり得る装置の周辺の温度、および当該画像形成装置1の排気の温度を検出しないように、構成されている。温湿度センサ9bは、最も好ましくは、中間転写ベルト21の温度を検出するように構成されている。
用紙センサ9cは、記録媒体種別を取得する記録媒体種別情報取得部であり、より具体的には、画像形成に使用される記録媒体種別が、平滑紙、厚紙、普通紙、または、エンボス紙であるかを識別して当該記録媒体種別を情報として取得する部位である。さらにエンボス紙である場合にどの程度の凹部深さを有するエンボス紙であるか等を識別して当該記録媒体種別を情報として取得する部位である。
当該用紙センサ9cは、たとえば給紙部5aに収納された用紙の表面の凹凸の大きさを検出することができる光学式センサにて構成される。その場合、当該用紙センサ9cは、可視光または赤外光を用紙の表面に対して斜めに照射する発光ダイオード等からなる発光素子と、用紙の表面からの反射光を受光するフォトダイオード等からなる受光素子とによって構成される。
当該用紙センサ9cは、用紙からの反射光の受光量に応じて凹部深さを検出し、その検出結果を制御部8に出力する。制御部8は、当該検出結果に基づいて上述した記録媒体種別の取得を行なう。
用紙センサ9cとしては、上述した光学式センサの使用に限られず、記録媒体種別の識別が可能な他の方式のセンサを使用することもできる。また、記録媒体種別情報取得部としては、上述した用紙センサ9cの使用に限られず、表示操作部9a等によって給紙部5aに収容される記録媒体種別が指定されることで制御部8がこれを取得してもよい。
押圧力調整機構70は、一次転写部において、一次転写ローラー22が感光体ドラム13を押圧する押圧力を調整する。押圧力調整機構70は、二次転写部において、二次転写ローラー33が対向ローラー24を押圧する押圧力を調整する。ベルト搬送速度調整機構80は、中間転写ユニット20において、後述するベルト搬送速度Vsysを調整する。
本実施の形態における画像形成装置1において、制御部8が、表示操作部9a等からの入力を受けて、押圧力調整機構70およびベルト搬送速度調整機構80を制御することができる。
次に、画像形成装置1による画像形成の処理について説明する。原稿画像走査装置2bは、コンタクトガラス上の原稿を光学的に走査して読み取る。原稿からの反射光は、CCDセンサ7により読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部3において所定の画像処理が施され、露光装置11に送られる。入力画像データは、外部パソコンやモバイル機器などから画像形成装置1に送付されたものであってもよい。
感光体ドラム13は、一定の周速度で回転する。帯電装置14は、感光体ドラム13の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置11は、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光を感光体ドラム13に照射し、感光体ドラム13の表面に静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面にトナーを付着させ、感光体ドラム13上の静電潜像を可視化させる。こうして感光体ドラム13の表面に静電潜像に応じたトナー像が形成される。
感光体ドラム13の表面のトナー像は、中間転写ユニット20によって中間転写ベルト21に転写される。転写後に感光体ドラム13の表面に残存する転写残トナーは、感光体ドラム13の表面に摺接するドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置15によって除去される。一次転写ローラー22によって中間転写ベルト21が感光体ドラム13に圧接されることにより、中間転写ベルト21に各色のトナー像が順次重なって転写される。
二次転写ローラー33は、中間転写ベルト21および二次転写ベルト31を介して、対向ローラー24に圧接される。これにより、転写ニップが形成される。用紙は、用紙搬送部5によって転写ニップへ搬送され、この転写ニップを通過する。用紙の傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対5c1が配設されたレジストローラー部により行われる。
転写ニップに用紙が搬送されると、二次転写ローラー33へ所定の電圧が印加される。この電圧の印加によって、中間転写ベルト21に担持されているトナー像は用紙に転写される。中間転写ベルト21の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト21の表面に摺接するベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置25によって除去される。ベルトクリーニング装置25については、中間転写ベルト21上の残留トナーを清掃するものであれば、ブラシによるクリーニング方式を採用したものであってもよい。また、転写率の高いトナー粒子を使用する場合には、クリーニング装置を使用しない態様もありえる。トナー像が転写された用紙は、二次転写ベルト31によって定着装置6に向けて搬送される。
二次転写ベルトを用いずに、二次転写ローラーが直接用紙と接する構成としてもよい。この場合、トナー像が転写された用紙は、二次転写ベルト31の回転によって定着装置6に向けて送出される。
定着装置6は、トナー像が転写されて搬送されてきた用紙をニップ部で加熱および加圧する。こうしてトナー像は用紙に定着する。トナー像が定着された用紙は、排紙ローラー5b1を備えた排紙部5bにより機外に排紙される。
トナー粒子は、バインダー樹脂中に着色剤や、必要に応じて荷電制御剤や離型剤等を含有させ、外添剤を処理させたものであり、一般に使用されている公知のトナー粒子を使用することができる。トナー粒子の体積平均粒径は、好ましくは2[μm]以上12[μm]以下の範囲の粒子であり、画質の点でより好ましくは、3[μm]以上9[μm]以下の範囲の粒子がよい。
トナー粒子の形状係数SF−1は、100から140であることが好ましいが、必ずしもこの範囲に限定されない。
形状係数SF−1は、走査型電子顕微鏡により、5000倍で撮影したトナーをランダムに100個、スキャナーで取り込み、画像処理解析装置「LuzexAP」(ニレコ社製)を用いて解析し、下記の式により導出される形状係数(SF−1)の平均値から求められる。
SF−1=〔{(粒子の絶対最大長)2/(粒子の投影面積)}×(π/4)〕×100
トナー粒子の外添剤は、シリカやチタニアといった金属酸化物の微粒子が使用され、大きさは30[nm]といった小粒径のものから、100[nm]といった比較的大きな粒径のものが使用される。粉体流動性や帯電制御等の目的で、平均1次粒径が40[nm]以下の無機微粒子を用いてもよい。
さらに、必要に応じて付着力低減のため、それより大径の無機あるいは有機微粒子を併用してもよい。無機微粒子としては、シリカやチタニアのほかに、アルミナ、メタチタン酸、酸化亜鉛、ジルコニア、マグネシア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。また、分散性や粉体流動性をあげるため、無機微粒子の表面を別途処理してもよい。
キャリアは、特に限定されず、一般に使用されている公知のキャリアを使用することができ、バインダー型キャリアやコート型キャリアなどが使用できる。キャリア粒径としてはこれに限定されるものではないが、15[μm]以上100[μm]以下が好ましい。
<中間転写ベルト21>
次に、図3を参照して、中間転写ベルト21の構成について説明する。図3は、図1に示す中間転写ベルト21の断面図である。
図3に示すように、中間転写ベルト21は、相対して位置する一対の露出主面である第1主面21s1および第2主面21s2を有する部材からなり、基層21aと、弾性層21bと、表層21cとを含んでいる。
弾性層21bは、基層21aを覆うように設けられており、表層21cは、弾性層21bを覆うように設けられている。これにより、上述した第1主面21s1は、表層21cによって規定されており、上述した第2主面21s2は、基層21aによって規定されている。
中間転写ベルト21は、上述したように担持したトナー像を用紙等の記録媒体に対して転写するためのものであり、トナー像は、上述した第1主面21s1上において担持される。
基層21aは、中間転写ベルト21全体としての機械的強度を向上させるための層であり、たとえば有機高分子化合物からなる層にて構成される。基層21aを構成する有機高分子化合物としては、たとえば、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、変性ポリカーボネート、およびそれらの混合物等が挙げられる。なお、基層21aは、材質の異なる複数の層にて構成されていてもよい。
基層21aには、抵抗値の調節のために導電剤が添加されていてもよい。この導電剤としては、一種類のみが添加されていてもよいし、複数種類が添加されていてもよい。基層21aにおける導電剤の含有量は、基層材料100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
弾性層21bは、中間転写ベルト21に弾性を付与するための層であり、たとえば粘弾性を呈する有機化合物からなる層にて構成される。弾性層21bを構成する有機化合物としては、たとえば、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)、およびそれらの混合物等が挙げられる。なお、弾性層21bは、材質の異なる複数の層にて構成されていてもよい。
弾性層21bには、導電性を発現するための導電剤が添加されていてもよい。導電剤としては、一種類のみが添加されていてもよいし、複数種類が添加されていてもよい。弾性層21bにおける導電剤の含有量は、弾性層材料100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。弾性層21bにおける導電剤の含有量は、その総量で、中間転写ベルト21の所望の体積抵抗率を実現する量であり、中間転写ベルト21の体積抵抗率は、たとえば1×108[Ω・cm]以上1×1012[Ω・cm]以下である。
上述した導電剤には、イオン導電剤および電子導電剤が含まれる。イオン導電剤には、ヨウ化銀、ヨウ化銅、過塩素酸リチウム、トリフロオロメタンスルホン酸リチウム、有機ホウ素錯体のリチウム塩、リチウムビスイミド((CF3SO2)2NLi)およびリチウムトリスメチド((CF3SO2)3CLi)が含まれる。電子導電剤には、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケルおよびステンレス鋼等の金属や、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブ等の炭素化合物が含まれる。
弾性層21bには、上述した導電剤に加えて、非繊維形状の樹脂や繊維形状の樹脂が含有されていてもよい。
非繊維形状の樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、反応性モノマー等の熱硬化性樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性ウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。弾性層21bにおける非繊維形状の樹脂の弾性層材料に対する含有量は、弾性層材料100重量部に対して20重量部以上60重量部以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
繊維形状の樹脂としては、たとえば、綿、麻、絹、レーヨン、アセテート、ナイロン、アクリル、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、アラミド等の樹脂系繊維が挙げられる。弾性層21bにおける繊維形状の樹脂の含有量は、弾性層材料100重量部に対して、10重量部以上40重量部以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
弾性層21bには、さらに慣用の添加剤、たとえば加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、共架橋剤、軟化剤、可塑剤等を含有させてもよい。これら添加剤は、単独で添加されていてもよいし、2種以上が組み合わされて添加されていてもよい。
ここで、加硫剤としては、たとえば硫黄や有機含硫黄化合物、有機過酸化物等が使用可能である。
また、共架橋剤としては、有機過酸化物による共架橋剤としての、エチレングリコール・ジメタクリレート、トリメチロールプロパン・トリメタクリレート、多官能性メタクリレートモノマー、トリアリルイソシアヌレート、含金属モノマー等が挙げられる。弾性層21bにおける共架橋剤の添加量は、弾性層材料100重量部に対して5重量部以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
表層21cは、その材料が特に制限されるものではないが、中間転写ベルト21へのトナーの付着力を小さくすることで転写性を高めるものであることが好ましい。当該観点から、表層21cとしては、たとえば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂またはそれらの混合物を母材として、当該母材にたとえばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、二酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体または粒子を1種類あるいは2種類以上分散させたものを使用することができる。なお、表層21cは、弾性層21bの表面を改質処理したものであってもよい。
ここで、これら粉体および粒子は、第1主面21s1の表面エネルギーを小さくして潤滑性を高めるための材料であり、これら粉体および粒子の粒径を異ならせたものを分散させて使用することもできる。また、フッ素系ゴム材料を用い、熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成させることにより、第1主面21s1の表面エネルギーを小さくさせてもよい。
ここで、基層21aの硬度は、弾性層21bの硬度よりも高い。弾性層21bよりも変形しにくい基層21aにより弾性層21bが支持されることで、弾性層21bは、第2主面21s2へ向かう側には変形しにくくなり、その分、第1主面21s1へ向かう側に変形しやすくなる。基層および弾性層の硬度は、マイクロゴム硬度計(例えば、高分子計器社製:MD−1)を用いて測定することができる。
表層21cの硬度は、弾性層21bの硬度よりも高い。弾性層21bよりも硬い表層21cは、光硬化性の樹脂を用いて、弾性層21bの表面に未硬化の樹脂を塗布し、紫外線によって樹脂を硬化することによって、形成することができる。または、弾性層21bの表面付近を硬化処理するなどの改質処理によって、弾性層21bよりも硬い表層21cを形成することもできる。
なお、表層21cは、必ずしもこれを設ける必要はなく、中間転写ベルト21を基層21aおよび弾性層21bのみにて構成することも可能である。また、基層21aを設けずに弾性層21bのみにて中間転写ベルト21を構成してもよい。さらには、上述した基層21a、弾性層21bおよび表層21cに加えて、さらに他の層を付加して中間転写ベルト21を4層以上に多層化することもできる。
中間転写ベルト21における第1主面21s1の十点平均表面粗さRzは、0.5[μm]以上9.0[μm]以下であることが好ましく、3.0[μm]以上6.0[μm]以下であることがなお好ましい。十点平均表面粗さRzが0.5[μm]未満であると、接触部材と密着する懸念があり、十点平均表面粗さRzが9.0[μm]よりも大きい場合には、凹凸部分にトナーおよび紙粉等が溜まり易くなり、画像品質が低下する場合がある。なお、十点平均表面粗さRzとは、JIS B0601(2001年)に規定された表面粗さのことである。
ここで、本実施の形態における中間転写ベルト21は、後述する変位量測定装置100を用いた評価方法に基づいて評価した場合に、その表面(すなわち第1主面21s1)の一部が所定の特徴的な挙動を示して変位するものであるが、その詳細についてはこれを後述することとする。
<二次転写部の構成>
図4は、図1に示す二次転写部の概略図である。次に、この図4を参照して、二次転写部の詳細な構成について説明する。なお、当該図4においては、二次転写ベルト31の図示は省略している。
図4に示すように、中間転写ベルト21は、画像形成装置1の二次転写部を通過するように配置される。
二次転写部は、互いに対向するように平行に配置された二次転写ローラー33および対向ローラー24を含んでいる。二次転写ローラー33と対向ローラー24との間には、二次転写ニップ部N2が形成されている。中間転写ベルト21は、この二次転写ニップ部N2を挿通するように配置されており、用紙等の記録媒体1000も同じくこの二次転写ニップ部N2を通過するように供給される。
二次転写ローラー33は、導電性の材料からなり、当該二次転写ローラー33には、二次転写電源33cが接続されている。対向ローラー24は、導電性の材料からなる芯金24aと、当該芯金24aの周面を覆う導電性の弾性部24bとを含んでおり、このうちの芯金24aは、接地されている。これにより、二次転写ニップ部N2には、二次転写ローラー33、対向ローラー24および二次転写電源33cによって所定の電界が形成されることになる。
中間転写ベルト21は、記録媒体1000よりも対向ローラー24側を挿通するように配置されており、記録媒体1000は、中間転写ベルト21よりも二次転写ローラー33側を通過するように供給される。なお、中間転写ベルト21は、その第1主面21s1が記録媒体1000側(すなわち二次転写ローラー33側)を向くとともに、その第2主面21s2が対向ローラー24側を向くように配置されている。これにより、中間転写ベルト21の第1主面21s1は、二次転写ニップ部N2において記録媒体1000の記録面1001に対面配置されることになる。
二次転写ローラー33は、図中に示す矢印AR1方向に回転駆動され、対向ローラー24は、図中に示す矢印AR2方向に回転駆動される。また、二次転写ローラー33は、トナー像の転写に際して図中に示す矢印AR3方向に向けて押圧され、これにより二次転写ローラー33と対向ローラー24とは、二次転写ベルト31(図1参照)、中間転写ベルト21および記録媒体1000を介して圧接することになる。
二次転写ローラー33の回転と対向ローラー24の回転とに基づき、中間転写ベルト21および記録媒体1000は、それぞれ図中に示す矢印AR4方向および矢印AR5方向に搬送される。その際、二次転写ニップ部N2を通過するに当たり、中間転写ベルト21および記録媒体1000が二次転写ローラー33と対向ローラー24とによって加圧された状態で挟み込まれて密着することになる。
また、その際、密着した部分の中間転写ベルト21および記録媒体1000には、上述した所定の電界が作用することになる。これにより、中間転写ベルト21の第1主面21s1に付着していたトナーが記録媒体1000の記録面1001に付着することになり、トナー像の転写が行なわれる。
ここで、二次転写ローラー33の表面の硬度が、対向ローラー24の表面の硬度よりも高い場合、これら二次転写ローラー33および対向ローラー24によって挟み込まれた部分の中間転写ベルト21および記録媒体1000は、二次転写ローラー33の表面に沿うように湾曲することになる。
そのため、中間転写ベルト21の第1主面21s1には、二次転写ローラー33の軸方向に沿って延在する凹条形状の湾曲面が形成されることになり、この部分においてトナー像の転写が行なわれることになる。二次転写ローラーおよび対向ローラーの表面の硬度は、マイクロゴム硬度計(例えば、高分子計器社製:MD−1)を用いて測定することができる。
中間転写ベルト21には、二次転写部、および上述した一次転写部で、圧力が作用する。圧力の作用によって中間転写ベルト21が変形すると、第1主面21s1とトナーとの接触面積が増加して、トナーと中間転写ベルト21との付着力が増大する。しかしながら、中間転写ベルト21が硬い表層21cを有し、中間転写ベルト21の第1主面21s1の硬度が高いことで、圧力が作用しても第1主面21s1が変形しにくくなり、または第1主面21s1が変形しても速く元に戻りやすくなる。
このため、第1主面21s1とトナーとの接触面積の増加が抑制され、トナーと中間転写ベルト21との付着力の増大が抑制されるので、トナー像の転写をより確実に行なうことが可能になっている。
本実施の形態における中間転写ベルト21は、上述した記録媒体1000として、その表面に特段の凹凸を有さない普通紙等を用いる場合に限られず、その表面に凹凸を有するエンボス紙等を用いる場合にも、良好な転写性を確保できるものであるが、そのメカニズム等について説明するに先立って、以下において、変位量測定装置100を用いた評価方法の詳細について説明する。
<変位量測定装置100>
図5は、上記変位量測定装置100の構成を示す概略図であり、図6は、図5に示す変位量測定装置100に具備される加圧機構の動作を示す概略図である。図7は、図5に示す変位量測定装置100の下側ブロックを上方から見た斜視図であり、図8は、図5に示す変位量測定装置100の上側ブロックを下方から見た斜視図である。
図5に示すように、変位量測定装置100は、下側ブロック110と、上側ブロック120と、加圧機構130と、張力付与機構140と、変位計150とを主として備えている。
図5および図7に示すように、下側ブロック110は、幅および奥行がいずれも50[mm]で高さが20[mm]のアルミブロックからなり、幅方向における上面111の中央部に幅が20[mm]の湾曲凸条面112を有している。湾曲凸条面112の曲率半径は、20[mm]である。
下側ブロック110の奥行方向に沿って位置する湾曲凸条面112の頂部のうち、当該奥行方向における中央部には、直径が1.25[mm](ただし、公差は±0.02[mm])の穴部113が設けられている。なお、当該穴部113の開口面から後退した位置には、変位計150のヘッド部151が配置されている。
図5および図8に示すように、上側ブロック120は、幅および奥行がいずれも50[mm]で高さが20[mm]のアルミブロックからなり、幅方向における下面121の中央部に幅が20[mm]の湾曲凹条面122を有している。湾曲凹条面122の曲率半径は、20.3[mm]である。
なお、下側ブロック110の上面111と湾曲凸条面112、上側ブロック120の下面121と湾曲凹条面122の表面の公差は、すべて0.02[mm]である。
図5に示すように、下側ブロック110の上面111と上側ブロック120の下面121とは、互いに対向するように配置されている。ここで、下側ブロック110と上側ブロック120とが位置決めして配置されることにより、上述した湾曲凸条面112と湾曲凹条面122とは、鉛直方向に沿って重なるように配置されている。
上側ブロック120の上方には、加圧機構130が配置されている。加圧機構130は、ブロック状の部材である加圧部材131と、当該加圧部材131と上側ブロック120との間に配置されたスプリング132と、加圧部材131の上面に接するように配置されたカム133と、カム133に連結されたシャフト134と、シャフト134を回転駆動する駆動モーター135とを含んでいる。
図6に示すように、駆動モーター135によってシャフト134が図中に示す矢印AR6方向に向けて回転駆動されることにより、シャフト134に連結されたカム133がシャフト134と共回りし、これに伴って加圧部材131が下方に向けて(図中に示す矢印AR7方向に向けて)押し下げられる。これにより、加圧部材131によって上側ブロック120がスプリング132を介して押し下げられることになり、上側ブロック120に鉛直下向きの荷重が付与されることになる。なお、当該荷重の大きさは、加圧部材131の押し下げ量dによって決まり、加圧部材131の押し下げ量dは、カム133の回転量によって調節できる。
図5に示すように、下側ブロック110と上側ブロック120との間には、評価対象であるベルトSが配置され、当該ベルトSの両端は、下側ブロック110と上側ブロック120との間から外側に向けて引き出される。このベルトSの両端には、張力付与機構140がそれぞれ接続される。
張力付与機構140は、フィルム141と、テープ142と、錘143とを含んでいる。フィルム141は、厚さ100[μm]のポリエチレンテレフタレート製のフィルムからなり、テープ142は、厚さ30[μm]のポリイミド製の粘着テープからなる。ベルトSの端部には、フィルム141の一端がテープ142によって貼り付けられ、フィルム141の他端には、錘143が取付けられる。ここで、錘143による引っ張り荷重は、44[N/m]に調節される。なお、評価するベルトSが十分な大きさを有している場合には、上述したフィルム141およびテープ142を用いずに、ベルトSの両端に直接的に錘143を取付けてもよい。
変位計150は、ベルトSの表面の変位を検出するためのものであり、上述したように変位計150のヘッド部151は、ベルトSに対向するように下側ブロック110の穴部113内に設置されている。ここで、変位計150としては、キーエンス社製のマイクロヘッド型分光干渉レーザー変位計(分光ユニット(型式:SI−F01U)、ヘッド部(型式:SI−F01))を用いる。
<評価方法>
図9は、図5に示す変位量測定装置100を用いたベルトの評価方法を説明するためのグラフである。また、図10は、図5に示す変位量測定装置100を用いてベルトを加圧した状態における下側ブロックの穴部近傍の拡大断面図である。
ベルトSの評価は、前述した図5に示す変位量測定装置100を用いて以下の手順にて行なう。なお、評価は、温度20[℃]、湿度50[%]の環境下にて行なう。
まず、ベルトSを変位量測定装置100にセットするに先立って、下側ブロック110の湾曲凸条面112と、上側ブロック120の湾曲凹条面122との接触部における圧力分布を測定する。圧力分布測定は、ニッタ社製のタクタイルセンサー(面圧力分布測定システムI−SCAN)を用いる。
具体的には、タクタイルセンサーの測定部を下側ブロック110と上側ブロック120との間に挿入し、加圧部材131を押し下げて30秒経過後の圧力分布を測定する。これを繰り返し、湾曲凸条面112と湾曲凹条面122との接触部およびその近傍における圧力が、200±40[kPa]に収まるように調整する。
ベルトSは、測定に先立って、温度20[℃]、湿度50[%]の環境下で6時間以上保管する。評価するベルトSの大きさは、下側ブロック110および上側ブロック120の幅方向に対応した長さを60[mm]とし、下側ブロック110および上側ブロック120の奥行方向に対応した長さを50[mm]とする。下側ブロック110および上側ブロック120の幅方向に対応した長さは、35[mm]以上300[mm]以下の大きさであればよく、下側ブロック110および上側ブロック120の奥行方向に対応した長さは、50[mm]以上150[mm]以下であればよい。下側ブロック110および上側ブロック120の幅方向に対応した長さに不足がある場合には、上述したフィルム141およびテープ142を用いてその両端に錘143を取付ければよい。
次に、タクタイルセンサーを取外し、下側ブロック110と上側ブロック120とが軽く接触した状態となるように加圧機構130にて上側ブロック120を下降させた後、当該状態を30秒間保持して接触状態を安定化させる。その後、加圧機構130を用いて上側ブロック120を下側ブロック110に向けて押し付ける。ここでの加圧条件は、後述するベルトSの加圧条件と同じとする(詳細は、後述のベルトSの加圧条件を参照のこと)。
次に、加圧開始時点から3秒間にわたり、下側ブロック110の穴部113に対向する部分の上側ブロック120の湾曲凹条面122の位置を変位計150を用いて測定し、これを後述するベルトSの変位量測定の基線に設定する。
次に、上側ブロック120を上昇させて下側ブロック110と上側ブロック120との接触を解除し、下側ブロック110の上面111上にベルトSを載置する。このとき、ベルトSの第1主面Saが下方(すなわち下側ブロック110側)を向くようにする。なお、当該ベルトSの載置に際しては、ベルトSと下側ブロック110との間およびベルトSと上側ブロック120との間に異物が混入しないように留意する。
次に、上側ブロック120とベルトSとが軽く接触した状態となるように加圧機構130にて上側ブロック120を下降させた後、当該状態を30秒間保持して接触状態を安定化させる。その後、加圧機構130を用いて上側ブロック120をベルトSに向けて押し付ける。
図9および図10に示すように、ベルトSへの加圧は、湾曲凸条面112と湾曲凹条面122とによって挟み込まれることとなるベルトSの被加圧領域PRが、予め定められた加圧速度[kPa/ms]で加圧力が増加するように加圧されることで200[kPa]の加圧力にまで到達した後、当該被加圧領域PRが、200[kPa]の加圧力で一定に加圧された状態が保持されるように行われる。
図9を参照して、被加圧領域PRに対する加圧が開始された時点から200[kPa]の加圧力に到達した時点までの時間をt0[s]と定義する。その後、加圧開始から3秒が経過した時点でベルトSへの加圧を解除する。なお、本実施の形態においては、t0=0.05[s](加圧速度4[kPa/ms])に設定した。
その際、加圧開始時点から加圧を解除するまでの3秒間にわたり、ベルトSの第1主面Saのうちの下側ブロック110の穴部113に対応する部分である測定領域MRの位置を変位計150を用いて測定する。その際、ベルトSの測定領域MRを含む部分は、当該部分の周囲に位置するベルトSの部位が下側ブロック110および上側ブロック120によって挟み込まれて圧縮されることで穴部113内に向けて膨らむように変形し、この変形に伴って測定領域MRの位置が変化する。
上述した基線の測定時および測定領域MRの位置の測定時においては、変位計150の出力を横河電機社製のデジタルオシロスコープDL1640によって取り込む。このときのサンプリング周期は、5[ms]とする。
次に、測定された測定領域MRの位置と上述した基線とをもとにこれらの差分を求めることにより、ベルトSの測定領域MRの変位を時系列データとして算出する。
なお、測定対象であるベルトSに対して、上述した測定領域MRの位置が異なることとなるように、下側ブロック110に対するベルトSの載置位置を変更して、合計で10回にわたって上述した測定を行なう。
<典型的な変位のパターン>
上述した変位量測定装置100を用いたベルトの評価方法を適用して弾性層を含む種々のベルトの評価を行なった場合には、ベルトの測定領域の変位の挙動を示すパターンとして、典型的に以下のパターンが確認できる。図11は、ベルトの測定領域の変位の挙動のパターンを示すグラフである。
図11に示すように、加圧開始後においてベルトSを加圧する加圧力の増加に伴ってベルトSの測定領域MRの変位量yが増加し、ベルトSを加圧する加圧力が200[kPa]に到達した時点(すなわちt0[s])付近においてベルトSの測定領域MRの変位に局所的なピークが発生する。その後ベルトSの測定領域MRの変位量yが減少に転じ、最終的には時間の経過とともに漸減して所定の変位量に収束する。すなわち、当該パターンは、ベルトSの測定領域MRの変位の推移にオーバーシュート部分を有するものと言える。
以下においては、当該パターンにおけるベルトSの測定領域MRの変位量yが増加する局面における変位を一次変位と称し、ベルトSの測定領域MRの変位量yが減少する局面における変位を二次変位と称する。
<中間転写ベルト21の変位のパターン>
上述した本実施の形態における中間転写ベルト21は、上記において詳細に述べた変位量測定装置100を用いたベルトの評価方法を適用して評価を行なった場合に、図11に示すパターン(すなわち、オーバーシュート部分を有するパターン)を呈するものである。
これは、本発明者が、ベルトを複数種類準備して、これらをそれぞれ画像形成装置1の中間転写ベルト21として使用してエンボス紙に画像形成を行なったところ、オーバーシュート部分を有しないベルトに比べて、オーバーシュート部分を有するベルトの方が飛躍的に転写性に優れたものとなることを知見したことに基づいている。
オーバーシュート部分を有するベルトにおいて高い転写性が確保できる理由は、基本的には中間転写ベルト21を裏面(すなわち第2主面21s2)側から加圧した場合にもその表面(すなわち第1主面21s1)が大きく揺れ動くことに起因する。したがって、エンボス紙等の記録面に凹凸を有する記録媒体に対して高い転写性が確保できる中間転写ベルト21を実現するためには、上述したオーバーシュート部分に着目するとよい。
図11を参照して、ベルトSの測定領域MRの変位の局所的なピークである変位量yの最大値をa[μm]と定義し、ベルトSの測定領域MRの変位が収束した後の変位量yである収束値をb[μm]と定義する。加圧開始時点から最大値a[μm]を観察した時点までの時間をt1[s]と定義し、加圧開始時点から最大値a[μm]が観察された後に再びベルトSの測定領域MRの変位量yが(a+b)/2に達した時点までの時間をt2[s]と定義する。
加えて、オーバーシュート部分を有する特徴的なベルトSの測定領域MRの変位の挙動を示すパラメータとして、オーバーシュート率E[−]と、一次変位率k1[μm/s]と、二次変位率k2[μm/s]とを定義する。
オーバーシュート率E[−]は、オーバーシュートの大きさを示すパラメータであり、E=(a−b)/bで算出される。
一次変位率k1[μm/s]は、上述した局所的なピークに達するまでの変位である一次変位の増加率(すなわち変位量の増加の割合)を示すパラメータであり、k1=a/t1で算出される。
二次変位率k2[μm/s]は、上述した局所的なピークに達した後の変位である二次変位の減少率(すなわち変位量の減少の割合)を示すパラメータであり、k2=(a−b)/{2×(t2−t1)}で算出される。
これらオーバーシュート率E[−]、一次変位率k1[μm/s]および二次変位率k2[μm/s]は、いずれも中間転写ベルト21が裏面(すなわち第2主面)側から加圧された場合に、その表面(すなわち第1主面)がどの程度揺れ動くかを表わすパラメータである。より大きな変化をもって中間転写ベルト21の表面が揺れ動くものほど、これらパラメータがより大きい値をとることになる。
より詳細には、オーバーシュート率E[−]が相対的に大きい値をとる場合には、中間転写ベルト21の表面がより大きく変位していることになる。一次変位率k1[μm/s]が相対的に大きい値をとる場合には、中間転写ベルト21の一次変位がより高速で生じていることになる。二次変位率k2[μm/s]が相対的に大きい値をとる場合には、中間転写ベルト21の二次変位がより高速で生じていることになる。
本実施の形態における中間転写ベルト21は、以下の第1ないし第3条件を満たしている。
第1条件は、上述したオーバーシュート率E[−]が、0.2≦E≦3を満たす条件である。当該第1条件を満たす中間転写ベルト21とすることにより、表面に凹凸を有する記録媒体に対しても高い転写性を実現することができ、また繰り返しの使用によっても画像品位が低下してしまうことが抑制できる。
オーバーシュート率E[−]がE<0.2である場合には、中間転写ベルト21を裏面側から加圧した場合にもその表面が余り大きくは揺れ動かないことになり、転写性の面で十分な効果が期待できない。一方、オーバーシュート率E[−]が3<Eである場合には、繰り返しの使用によって中間転写ベルト21に割れや摩耗等が早期に発生してしまうおそれがあり、画像品位の低下が懸念されることになる。
第2条件は、上述した一次変位率k1[μm/s]が、60≦k1≦320を満たす条件である。当該第2条件を満たす中間転写ベルト21とすることにより、表面に凹凸を有する記録媒体に対しても高い転写性を実現することができる。繰り返しの使用によっても画像品位が低下してしまうことが抑制できる。
一次変位率k1[μm/s]がk1<60である場合には、中間転写ベルト21を裏面側から加圧した場合にもその表面が余り大きくは揺れ動かないことになり、転写性の面で十分な効果が期待できない。一方、一次変位率k1[μm/s]が320<k1である場合には、繰り返しの使用によって中間転写ベルト21に割れや摩耗等が早期に発生してしまうおそれがあり、画像品位の低下が懸念されることになる。
第3条件は、上述した二次変位率k2[μm/s]が、6≦k2≦30を満たす条件である。当該第3条件を満たす中間転写ベルト21とすることにより、表面に凹凸を有する記録媒体に対しても高い転写性を実現することができる。繰り返しの使用によっても画像品位が低下してしまうことが抑制できる。
二次変位率k2[μm/s]がk2<6である場合には、中間転写ベルト21を裏面側から加圧した場合にもその表面が余り大きくは揺れ動かないことになり、転写性の面で十分な効果が期待できない。一方、二次変位率k2[μm/s]が30<k2である場合には、繰り返しの使用によって中間転写ベルト21に割れや摩耗等が早期に発生してしまうおそれがあり、画像品位の低下が懸念されることになる。
上述したオーバーシュート率E[−]、一次変位率k1[μm/s]および二次変位率k2[μm/s]は、上述した変位量測定装置100を用いた中間転写ベルト21の評価方法において、測定領域MRの位置を変更して得られた値である。合計で10個の時系列データからそれぞれ算出される値のうち、値がより大きい3個と値がより小さい3個とを除外した残る4個の値の平均値を算出することで求められる。
<変位のパターンと転写性との関係>
次に、オーバーシュート部分を有するパターンを呈するベルトを画像形成装置1の中間転写ベルト21として使用してエンボス紙に画像形成を行なった場合に、高い転写性が確保できる理由について詳細に説明する。
図12は、非弾性層のみからなる中間転写ベルト21Aを使用した場合の中間転写ベルト21Aからエンボス紙へのトナーの移動の様子を表わした概略図であり、図13は、その場合の印加電圧と転写効率との関係を示すグラフである。
図12に示すように、非弾性層のみからなる中間転写ベルト21Aを用いてエンボス紙1000へのトナー像の転写を行なう場合には、エンボス紙1000の凹部1002が位置しない部分(これを便宜上、以下において凸部1003と称する)の記録面1001と、中間転写ベルト21Aの第1主面21s1上に位置するトナーTとが接触した状態になる。一方、エンボス紙1000の凹部1002が位置する部分の記録面1001と、中間転写ベルト21Aの第1主面21s1上に位置するトナーTとは、非接触の状態になる。
そのため、エンボス紙1000の凹部1002の底面にトナーTを移動させるためには、トナーTを中間転写ベルト21Aから飛翔させる必要がある。トナーTを中間転写ベルト21Aから飛翔させるためには、トナーTが電界から受ける力が、トナーTの中間転写ベルト21Aに対する付着力に打ち勝つ必要がある。当該付着力は、非静電的付着力(ファンデルワールス力)と静電的付着力(帯電したトナーがもつ電荷と中間転写ベルト21に生じる鏡像電荷とによる静電的引力)の合計である。
トナーTが電界から受ける力Fは、トナーTの荷電量をqとし、エンボス紙1000と中間転写ベルト21Aとの間の電位差をdVとし、エンボス紙1000と中間転写ベルト21Aとの間の距離をdxとした場合に、F=q×dV/dxで表わされる。当該関係から理解されるように、上記力Fは、エンボス紙1000と中間転写ベルト21Aとの間の電位差dVに比例するため、距離dxが大きくなればなるほど、トナーTを飛翔させるために必要となる印加電圧は大きくなる。
したがって、図13に示すように、凹部1002において転写効率が最大になる印加電圧V1は、凸部1003において転写効率が最大になる印加電圧V0よりも高くなってしまう。なお、図13においては、印加電圧と凸部1003に対する転写効率との関係を示す曲線に符号c1003を付し、印加電圧と凹部1002に対する転写効率との関係を示す曲線に符号c1002(21A)を付している。
通常、画像形成装置1においては、上記印加電圧が凸部1003において転写効率が最大になる印加電圧V0付近に設定される。そのため、印加電圧V0付近において凹部1002における転写効率が高ければ高いほど、エンボス紙1000の凹部1002と凸部1003とにおける画像の濃度差が小さくなることになり、品位の高い画像が得られることになる。
図14は、弾性層を含む中間転写ベルト21Bを使用した場合の中間転写ベルト21Bからエンボス紙へのトナーの移動の様子を表わした概略図であり、図15は、その場合の印加電圧と転写効率との関係を示すグラフである。
図14に示すように、弾性層を含む中間転写ベルト21Bを用いた場合には、一般的に、エンボス紙1000の凹部1002内に中間転写ベルト21Bの第1主面21s1側の一部が入り込むように中間転写ベルト21Bが変形することになり、これによってエンボス紙1000の凹部1002の底面と中間転写ベルト21Bとの間の距離dxが縮まるようになる。そのため、凹部1002において転写効率が最大になる印加電圧が下がる効果が得られる。この効果は、従来から知られている効果であり、ここではこれを追従変形効果と称する。
一方で、当該弾性層を含む中間転写ベルト21Bが上述したオーバーシュート部分を有するパターンを呈するものである場合には、上述した中間転写ベルト21Bの変形の際に第1主面21s1が大きく揺れ動くことになり、当該第1主面21s1が伸縮変形することで中間転写ベルト21Bとこれに付着したトナーTとの位置関係(すなわちトナーTと第1主面21s1との間の距離やその接触面積等)が変わり、中間転写ベルト21Bに対するトナーTの付着力が低下することになる。そのため、凹部1002において転写効率が最大になる印加電圧がさらに下がる効果が得られる。この効果は、従前から知られているものではなく、本発明者が発見した効果であり、ここではこれを付着力低減効果と称する。
このような追従変形効果またはこれに加えて付着力低減効果が発揮されることにより、図15に示すように、凹部1002において転写効率が最大になる印加電圧V2は、上述した非弾性層のみからなる中間転写ベルト21Aを用いた場合に凹部1002において転写効率が最大になる印加電圧V1よりも小さくなる。なお、図15においては、印加電圧と凹部1002に対する転写効率との関係を示す曲線に符号c1002(21B)を付している。
したがって、上述した非弾性層のみからなる中間転写ベルト21Aを用いた場合に比べて、印加電圧V0付近において凹部1002における転写効率が高くなり、エンボス紙1000の凹部1002と凸部1003とにおける画像の濃度差が小さくなり、より品位の高い画像が得られることになる。
付着力低減効果は、変位量測定装置100を用いて測定した変位量の推移にオーバーシュート部分を有するパターンを呈する中間転写ベルト21において、特に顕著に得られる効果である。得られる効果の程度は、上述したパターンにおけるオーバーシュート部分に大きく関係する。
すなわち、上述した一次変位率k1[μm/s]が十分に大きい場合には、中間転写ベルト21がニップ部を通過する序盤において、中間転写ベルト21の第1主面が高速に一次変位することとなり、高い付着力低減効果が得られることになる。上述したオーバーシュート率E[−]が十分に大きい場合には、中間転写ベルト21がニップ部を通過する中盤において、中間転写ベルト21の第1主面に高速でかつ複雑な変形が生じることとなり、高い付着力低減効果が得られることになる。
上述した二次変位率k2[μm/s]が十分に大きい場合には、中間転写ベルト21がニップ部を通過する終盤において、中間転写ベルト21の第1主面が高速に二次変位することとなり、高い付着力低減効果が得られることになる。
ここで、図15を参照して、上述した印加電圧V1と印加電圧V2との差をΔVtotalとし、上述した追従変形効果による、凹部1002において転写効率が最大になる印加電圧の低減幅をΔVgapとし、上述した付着力低減効果による、凹部1002において転写効率が最大になる印加電圧の低減幅をΔVadhとした場合には、ΔVtotal=ΔVgap+ΔVadhの関係が成立する。
ΔVtotalは、上記のとおりV1−V2で表わされるため、ΔVadhは、V1−V2−ΔVgapで表わされることになる。V1およびV2は、いずれも中間転写ベルト21ごとに固有の値をとるが、実験によりその値を導くことが可能である。ΔVgapは、上述した変位量測定装置100を用いた中間転写ベルト21の評価方法において測定されたベルトSの測定領域MRの変位量yから実験的に導くことができる。したがって、これらの値から、ΔVadhを計算により算出することが可能である。
<オーバーシュート率E、一次変位率k1および二次変位率k2と、ΔVadhとの関係を確認した実験>
本発明者は、弾性層に含有される樹脂や添加剤、架橋剤等の種類や量を種々調製することで弾性層の組成が異なるベルトを多数製作し、これらを上述した変位量測定装置100を用いたベルトの評価方法に基づいてそれぞれ評価し、各ベルトのオーバーシュート率E、一次変位率k1および二次変位率k2を求めた。
これらの中から互いに異なるオーバーシュート率E、一次変位率k1および二次変位率k2を有する複数のベルトを選定し、選定した複数のベルトを用いて実験的にエンボス紙の凹部に対する転写効率を測定することにより、各ベルトのV2の値を求めた。ここで、当該V2の測定に際しては、図5に示す変位量測定装置100を用い、下側ブロック110と上側ブロック120との間に測定対象のベルトとエンボス紙とを挟んで配置し、下側ブロック110と上側ブロック120との間に電位差が生じるようにこれら下側ブロック110および上側ブロック120に電圧を印加した上で、当該印加電圧を種々変化させて最も転写効率がよくなった場合の電圧をV2とした。
また、非弾性ベルトを用いて同様の測定を行ない、V1の値を求めるとともに、変位量測定装置100を用いた中間転写ベルト21の評価方法において測定された各ベルトの測定領域MRの変位量からΔVgapを計算により算出した。
これら各ベルトのデータをもとに、オーバーシュート率E、一次変位率k1および二次変位率k2と、ΔVadhとの関係を整理した。図16は、オーバーシュート率EとΔVadhとの関係を示すグラフである。図17は、一次変位率k1とΔVadhとの関係を示すグラフである。図18は、二次変位率k2とΔVadhとの関係を示すグラフである。
図16から理解されるように、オーバーシュート率EとΔVadhとの関係においては、0≦E<0.2の範囲でΔVadhが50[V]未満であり、付着力低減効果がほぼ得られていないことが確認できた。一方で、0.2≦Eの範囲では、オーバーシュート率Eの値が大きくなるにつれてΔVadhが50[V]を超えて上昇する傾向にあり、高い付着力低減効果が得られることが確認できた。
図17から理解されるように、一次変位率k1とΔVadhとの関係においては、0≦k1<60の範囲でΔVadhが50[V]未満であり、付着力低減効果がほぼ得られていないことが確認できた。一方で、60≦k1の範囲では、一次変位率k1の値が大きくなるにつれてΔVadhが50[V]を超えて上昇する傾向にあり、高い付着力低減効果が得られることが確認できた。
図18から理解されるように、二次変位率k2とΔVadhとの関係においては、0≦k2<6の範囲でΔVadhが50[V]未満であり、付着力低減効果がほぼ得られていないことが確認できた。一方で、6≦k2の範囲では、二次変位率k2の値が大きくなるにつれてΔVadhが50[V]を超えて上昇する傾向にあり、高い付着力低減効果が得られることが確認できた。
以上の結果は、上述した第1ないし第3条件におけるオーバーシュート率E、一次変位率k1および二次変位率k2それぞれの下限値を定める根拠となるものであり、これら第1ないし第3条件のいずれかの下限値側の条件が満たされることにより、上述した追従変形効果に加えて十分な付着力低減効果が得られることを示すものである。
<中間転写ベルト21の曲げによる効果>
オーバーシュート部分を有するパターンを呈する中間転写ベルト21を用いて画像形成する際に、ニップ部で特定の向きに中間転写ベルト21が曲げられることで、オーバーシュートが発現しやすくなる。すなわち、中間転写ベルト21の曲げ状態によって転写性が大きく変わる。中間転写ベルト21の曲げ状態は、凹曲げ、凸曲げ、ストレートの3パターンがある。以下、中間転写ベルト21の曲げ状態の3パターンについて説明する。
(凹曲げ状態)
図19は、一次転写部における凹曲げ状態の中間転写ベルト21を示す図である。一次転写部おいて、感光体ドラム13および一次転写ローラー22により一次転写ニップ部N1が形成される。一次転写部における凹曲げ状態とは、一次転写ニップ部N1において、感光体ドラム13に近い側である第1主面21s1(トナー担持面)が収縮し、対向ローラー24に近い側である第2主面21s2が延びるように曲げられる状態のことである。
感光体ドラム13の表面の硬度が、一次転写ローラー22の表面の硬度よりも高い場合、感光体ドラム13および一次転写ローラー22によって挟み込まれた部分の中間転写ベルト21は、感光体ドラム13の表面に沿うように湾曲することになる。感光体ドラム13および一次転写ローラー22等の表面の硬度は、マイクロゴム硬度計(例えば、高分子計器社製:MD−1)を用いて測定することができる。
図20は、二次転写部における凹曲げ状態の中間転写ベルト21を示す図である。二次転写部において、二次転写ローラー33および対向ローラー24により二次転写ニップ部N2が形成される。二次転写部における凹曲げ状態とは、二次転写ニップ部N2において、二次転写ローラー33に近い側である第1主面21s1(トナー担持面)が収縮し、対向ローラー24に近い側である第2主面21s2が延びるように曲げられる状態のことである。
二次転写ローラー33は、記録媒体1000及び中間転写ベルト21を介して対向ローラー24に圧接される。外層に弾性部24bを有する対向ローラー24にむけて、二次転写ローラー33を押圧することによって、二次転写ローラー33の一部が記録媒体1000及び中間転写ベルト21を介して対向ローラー24に食い込むような形態となることがある。その結果、二次転写ニップ部N2における中間転写ベルト21は凹曲げ状態となる。
(凸曲げ状態)
以下、二次転写部における凸曲げ状態について説明する。一次転写部における凸曲げ状態についての説明は、二次転写部における凸曲げ状態と同様に説明できるため省略する。
図21は、二次転写部における凸曲げ状態の中間転写ベルト21を示す図である。凸曲げ状態とは、二次転写ニップ部N2において、二次転写ローラー33に近い側である第1主面21s1(トナー担持面)が延び、対向ローラー24に近い側である第2主面21s2が収縮するように曲げられる状態のことである。
二次転写ローラー33として外層に弾性部33bを有するようなローラーを用いた場合には、二次転写ローラー33を対向ローラー24に向けて押圧することによって、対向ローラー24の一部が中間転写ベルト21及び記録媒体1000を介して二次転写ローラー33に食い込むような形態となることがある。その結果、二次転写ニップ部N2における中間転写ベルト21は凸曲げ状態となる。
(ストレート状態)
図22は、二次転写部におけるストレート状態の中間転写ベルト21を示す図である。ストレート状態とは、二次転写ニップ部N2において、中間転写ベルト21が直線もしくは、ほぼ直線となった状態のことである。ストレート状態は、上記の凹曲げ状態と凸曲げ状態との間の状態である。
二次転写ローラー33および対向ローラー24がともに外層に弾性部を有するローラーであり、双方のローラーの径と硬さが概ね等しい場合には、二次転写ニップ部N2で中間転写ベルト21が直線もしくは、ほぼ直線となる。
二次転写ローラー33および対向ローラー24の硬さに差があったとしても、ストレート状態になることはある。例えば、二次転写ローラー33が剛体ローラーではあるが非常に径の大きいローラーであった場合、中間転写ベルト21は、二次転写ニップ部N2でほぼ直線に近い凹曲げ形状になるが、この場合も、ストレート状態とみなす。
<凹曲げの効果>
図23は、図20の二次転写ニップ部N2におけるXXIIIで囲われた領域の拡大図である。図中の第1主面21s1に沿う方向を面内方向DR1とする。凹曲げ状態になると、第1主面21s1と第2主面21s2との間の曲率差により、第1主面21s1が面内方向DR1において圧縮される向きに力がかかる。すなわち、第2主面21s2の長さ(図23中の両矢印A)はそのままで、第1主面21s1の長さ(図23中の両矢印B)が圧縮されるように力がかかる。
ゴムは一般的に非圧縮性の物体であるので、圧力を受けたときその容積を維持する方向に変形しようとする。そのため、凹曲げにより第1主面21s1が面内方向DR1において圧縮される向きに力を受けた際、記録媒体1000の表面に凹部があれば、その凹部に向かって弾性層21bが膨らむ方向(図23中の矢印C)に変形しやすい状態になる。
図24は、凹曲げ状態の中間転写ベルト21が加圧された状態を表す図である。二次転写ローラー33と対向ローラー24との圧接により、中間転写ベルト21が記録媒体1000に押し付けられるように圧力がかかり、凹凸を有する記録媒体1000の凸部1003に対向する弾性層21b(図24中の両矢印D)に強い圧力がかかる。
一方、凹凸を有する記録媒体1000の凹部1002に対向する弾性層21bは、直接圧力を受けないので、弾性層21bは記録媒体1000の凸部1003に対向する弾性層21bから凹部1002に対向する部分に向かって変形し(図24中の矢印E)、凹部1002に向かって弾性層21bが膨らむ結果となる(図24中の矢印F)。
したがって、凹曲げ状態で加圧されると、凹部1002に対向する第1主面21s1付近が変形しやすい状態で加圧されることとなり、内部応力によって瞬間的に大きな歪みが引き起こされて、凹部1002に対向する部分に向かって集中し、凹部1002に対向する弾性層21bが瞬間的に大きく膨らむこととなる。このように、凹曲げ状態で加圧されることで、オーバーシュートが発現しやすくなる。
<一次転写部におけるガサツキの抑制および二次転写部における良好な凹部転写性の両立>
二次転写部において、表面に凹凸を有するエンボス紙のような紙に対して、弾性層を有する中間転写ベルトの弾性層を紙の凹部に追随変形させることで、紙の凹部に対する転写性が高まる。表面に凹凸を有するエンボス紙のような紙に対して画像形成する際は、二次転写部において比較的高い圧力をかけて、弾性層を大きく変形させる必要がある。
一方、一次転写部において、弾性層を有する中間転写ベルトが一次転写ローラーによって感光体ドラムに圧接される際、感光体ドラムの表面は平滑であるため、二次転写部における紙の凹部のように、中間転写ベルトの弾性層の変形を吸収する空間はない。そのため、一次転写ローラーより圧力を受けたときの弾性層は、一次転写ニップ部前後の空間に向かって変形する。
中間転写ベルトの弾性層が過剰に変形することによって、中間転写ベルトに転写されるトナー像が乱れたり、トナーの荷電量が変化したりする。従って、一次転写部においては中間転写ベルトにかける圧力を比較的低くして、弾性層の変形を抑制するのが望ましい。
従来の中間転写ベルトを用いる場合は、表面に凹凸を有するエンボス紙のような紙の凹部に対する転写性とガサツキの抑制とを両立することが難しかった。この理由を以下に詳細に説明する。
<従来の弾性ベルト>
図25は、ベルトAおよびベルトBにおける印加圧力と変形量との関係を示すグラフである。ベルトAおよびベルトBは、弾性層の硬度が異なる。ベルトAの硬度は、ベルトBの硬度よりも大きい。ベルトAは、ベルトBよりも変形しにくい。
縦軸の変形量は、図5で説明した変位量測定装置100を用いた通常の変位量測定とは異なり、圧力を印加して十分時間が経ったあとに測定した変位量のことである。印加圧力を50kPa、100kPa、150kPa、200kPaと変化させていき、それぞれの印加圧力に対するベルトの変形量を記録した。
図25中の直線は、各印加圧力に対する変形量の測定プロットを、原点を通る直線にフィッティングさせたものである。変形量は、印加圧力に比例している。印加圧力の変化量に対する変形量の変化量(図25中の直線の傾き)は、柔らかいベルトであるベルトBの方が変形しやすいため、ベルトAよりも大きくなる。
(一次転写部における印加圧力とガサツキとの関係)
上記のベルトAおよびベルトBを中間転写ベルトとして用いて、画像形成装置の一次転写部における印加圧力を変更しながら、印加圧力とガサツキとの関係を調べた。
ガサツキの評価には、コニカミノルタ社製の画像形成装置(デジタル印刷機:bizhub PRESS C8000)を用い、これに具備されている中間転写ベルトを上述のベルトA、Bに付け替えて、一次転写部における印加圧力を変更して画像形成を実際に行なった。ベタ画像を印刷し、当該ベタ画像のガサツキ具合を観察した。
なお、二次転写部における条件(圧力やバイアス等)は、トナー像を乱さずに用紙上に転写できるような最適な条件とすることによって、一次転写部に起因するガサツキの評価を行った。
用紙は、王子製紙社製のコート紙、OKトップコート+を使用した。このコート紙の坪量は、104.7[g/m2]とした。
図26は、ベルトAおよびベルトBを画像形成装置の中間転写ベルトとして用いた場合において、一次転写部におけるそれぞれの印加圧力に対するガサツキの評価結果を示すグラフである。図25で説明したベルトAおよびベルトBにおける印加圧力と変形量との関係を示すグラフ上に、各印加圧力におけるガサツキの評価結果を、○(許容レベル以上)もしくは×(不可レベル)で示している。
例えば、ベルトAにおいて印加圧力が50[kPa]のとき、変位量測定装置100を用いて測定した変形量は約2[μm]である。一次転写部における印加圧力を50[kPa]に設定した画像形成装置の中間転写ベルトとしてベルトAを用いた場合、ガサツキの評価結果は許容レベル以上であった。この場合、図26中のx=50[kPa]、y=2[μm]の位置に○印を付けている。図26のガサツキの評価結果から、ガサツキを抑制するには、変形量を約5[μm]以下に抑える必要があると言える。
ガサツキを抑制するには、変形量をなるべく抑える方がよく、そのために印加圧力を小さく設定した方がよい。しかし、印加圧力を小さくすると、一次転写ニップ部において圧接状態が不安定になり、感光体ドラムの軸方向に画像ムラが発生しやすくなる。当該画像出力条件では、印加圧力が48[kPa]未満のときに、軸方向の画像ムラが発生しやすくなる。
図27は、軸方向の画像ムラの発生を抑制しながら、ガサツキを抑制できる印加圧力および変形量の範囲を示すグラフである。変形量が5[μm]以下であって、印加圧力が48[kPa]以上である、斜線部Uで示す範囲が好適な条件となる。
(二次転写部における印加圧力と凹部転写性との関係)
ベルトAおよびベルトBを中間転写ベルトとして用いて、画像形成装置の二次転写部における印加圧力を変更しながら、印加圧力と凹凸紙の凹部への転写性(凹部転写性)との関係を調べた。
図28は、ベルトAおよびベルトBを画像形成装置の中間転写ベルトとして用いた場合において、二次転写部におけるそれぞれの印加圧力に対する凹部転写性の評価結果を示すグラフである。図25で説明したベルトAおよびベルトBにおける印加圧力と変形量との関係を示すグラフ上に、各印加圧力における凹部転写性の評価結果を、○(許容レベル以上)もしくは×(不可レベル)で示している。
凹部転写性の評価には、コニカミノルタ社製の画像形成装置(デジタル印刷機:bizhub PRESS C8000)を用い、これに具備されている中間転写ベルトを上述のベルトA、Bに付け替えて、二次転写部における印加圧力を変更して画像形成を実際に行なった。
用紙は、特種東海製紙株式会社製のエンボス紙、商品名レザック66(レザックは登録商標)を使用した。このエンボス紙の坪量は、302[g/m2]とした。
この用紙上にベタ画像を印刷し、判定に際しては、マイクロデンシトメーターを用いてシャープで深さの深い凹部(溝部)の反射濃度と凸部の反射濃度とを測定し、これらの濃度差を算出した。濃度差が0.25未満である良好な場合には「良」と判定し、濃度差が0.25以上0.40未満の許容レベルである場合には「可」と判定し、濃度差が0.40以上の許容できないレベルである場合には「不可」と判定した。
なお、一次転写部における条件(圧力やバイアス等)は、トナー像を乱さずに中間転写ベルト上に転写できるような最適な条件とすることによって、二次転写部に起因する凹凸紙への転写性の評価を行った。
図28の凹部転写性の評価結果から、良好な凹部転写性を確保するには、変形量を約19[μm]以上にする必要があると言える。
良好な凹部転写性を確保するには、変形量をなるべく大きくする方がよく、そのためには印加圧力を大きくした方がよい。しかし、印加圧力を大きくすると、細線つぶれが発生しやすくなる。当該画像出力条件では、印加圧力が350[kPa]を超えたときに、細線つぶれが発生しやすくなる。
図29は、細線つぶれを抑制しながら良好な凹部転写性を確保できる印加圧力および変形量の範囲を示すグラフである。変形量19[μm]以上であって、印加圧力が350[kPa]以下である、図29の斜線部Vで示す範囲が好適な条件となる。
(画像形成に最適な条件の領域)
図30は、軸方向の画像ムラの発生および細線つぶれを抑制しながら、ガサツキを抑制できる範囲Xおよび良好な凹部転写性を確保できる範囲Yを示したグラフである。
一次転写部においてガサツキを抑制できる変形量の上限をεth1で示す。変形量がεth1以下であって、軸方向の画像ムラの発生を抑制するための下限の印加圧力と、細線つぶれを抑制するための上限の印加圧力とに囲まれた図30中の斜線部Xの領域が一次転写部の条件設定可能領域である。
二次転写において凹部転写性を確保できる変形量の下限をεth2で示す。変形量がεth2以上であって、軸方向の画像ムラの発生を抑制するための下限の印加圧力と、細線つぶれを抑制するための上限の印加圧力とに囲われた図30中の斜線部Yの領域が二次転写部の条件設定可能領域である。
比較的硬くて変形しにくいベルトAを用いると、Xの領域内に重なり部分W1があるため、ベルトAを用いてW1の範囲にて一次転写部における印加圧力の条件を設定することで、一次転写ニップ部における軸方向の画像ムラの発生を抑制しながら、ガサツキを抑制できる。
しかし、ベルトAを用いた場合、Yの領域内に重なり部分がない。そのため、二次転写部において、細線つぶれを抑制しながら凹部転写性は確保できるような印加圧力の条件に設定することができない。
一方、比較的柔らかくて変形しやすいベルトBを用いると、Y領域内に重なり部分W2があるため、ベルトBを用いてW2の範囲にて二次転写部における印加圧力を設定することで、細線つぶれを発生させることなく、良好な凹部転写性が確保できる。
しかし、ベルトBを用いた場合、Xの領域内に重なり部分がない。そのため、一次転写部において、一次転写ニップ部における軸方向の画像ムラの発生を抑制しながら、ガサツキを抑制できるような条件に設定することができない。
以上のように、従来の弾性ベルトであるベルトAおよびベルトBを用いた場合、良好な凹部転写性の確保およびガサツキの抑制のいずれか片方の条件を満たすことしかできず、双方の条件を満たすように設定することはできなかった。
<本発明におけるオーバーシュート変形を呈するベルト>
本発明者は、図11に示すオーバーシュート部分を有するパターンを呈する中間転写ベルト21の特有の性質を適切に利用することによって、一次転写部におけるガサツキの抑制および二次転写部における良好な凹部転写性の両立ができることを見出した。なお、以下の説明における「変位量」とは、変位量測定装置100を用いてベルトを測定したときの変位量をいう。
図31は、オーバーシュート変形を呈するベルトの測定領域における変位量の経時変化を示したグラフである。最大変位量δ[μm](図11の変位量測定装置100における変位測定の最大値a)は、過渡成分εt[μm]および定常成分εs[μm]の和として考えることができる。
定常成分εsは、図11の変位量測定装置100における変位測定の収束値bとして得ることができる。過渡成分εtは、図11の変位量測定装置100における変位測定の最大値aと収束値bとの差として得ることができる。
(過渡成分εt)
図32は、ベルトに印加する圧力の4つのパターンを簡易的に示したグラフである。最大圧力がp1[kPa]もしくはp2[kPa]であって、加圧速度(単位時間当たりの圧力の増加量)がs1[kPa/ms]もしくはs2[kPa/ms]である4つのパターンを印加した場合を考える。
基準となるのはパターン(1)であり、最大圧力がp1、加圧速度がs1である。パターン(2)は、加圧速度がパターン(1)と同じs1で、最大圧力がp2(p1の2倍)である。パターン(3)は、最大圧力はパターン(1)と同じp1であり、加圧速度はs2(s1の2倍)である。パターン(4)は、最大圧力がp2であり、加圧速度がs2である。
図33は、パターン(1)からパターン(4)の圧力を印加した場合のそれぞれの場合における過渡成分εtを示したグラフである。過渡成分εtは、最大圧力pに比例して増加する。パターン(2)は最大圧力がパターン(1)の2倍であるので、過渡成分εtもパターン(1)の2倍になる。パターン(4)は最大圧力がパターン(3)の2倍であるので、過渡成分εtもパターン(3)の2倍になる。
さらに、過渡成分εtは、加圧速度sに依存して増減する。パターン(1)およびパターン(2)と、パターン(3)およびパターン(4)とは、それぞれ加圧速度sがs1、s2である。パターン(1)およびパターン(2)の圧力を印加した場合よりも、加圧速度sが大きいパターン(3)およびパターン(4)の圧力を印加した方が、過渡成分εtは、大きくなる。過渡成分εtは、最大圧力pに比例して増減するとともに、加圧速度sに依存して増減する。
図34は、加圧速度sと、最大圧力pの増加量に対する過渡成分εtの増加量Δεt/Δp[μm/kPa](図33中の直線の傾き)との関係を示すグラフである。Δεt/Δpは、加圧速度sに比例して増減する。
図33に示すように、過渡成分εtが最大圧力pに比例するので過渡成分εtは式(1)のように表される。
εt=k×p(k:係数)・・・(1)
図34に示すように、Δεt/Δp(すなわち式(1)の係数k)が加圧速度sに比例するので、kは式(2)のように表される。
k=α×s(α:係数)・・・(2)
式(1)および式(2)をまとめると式(3)のように表される。
εt=α×s×p・・・(3)
過渡成分εtは、最大圧力pと加圧速度sとの積に比例する。従って、最大圧力pと加圧速度sの両方を大きくしていくと、εtは二次関数的に増加することになる。例えば、パターン(4)は、(1)に対して、最大圧力pを2倍、加圧速度sを2倍としたものであるため、パターン(4)の過渡成分εtは、パターン(1)の過渡成分εtの4倍となる。
(定常成分εs)
図35は、パターン(1)からパターン(4)の圧力を印加した場合のそれぞれの場合における定常成分εsを示したグラフである。定常成分εsも、過渡成分εtと同じく、最大圧力pに比例する。パターン(2)は最大圧力がパターン(1)の2倍であるので、定常成分εsもパターン(1)の2倍になる。パターン(4)は、最大圧力pがパターン(3)の2倍であるので、定常成分εsもパターン(3)の2倍になる。
定常成分εsは、加圧速度sに依存して増減しない。加圧速度sがs1、s2のいずれの場合であっても、最大圧力pに対する定常成分εsは、略同じである。
図36は、加圧速度sと、最大圧力pの増加量に対する定常成分εsの増加量Δεs/Δp[μm/kPa](図35中の直線の傾き)との関係を示すグラフである。定常成分εsは、最大圧力pに比例して増減するが、過渡成分εtの場合と異なり、加圧速度sに依存しない。
図35に示すように、定常成分εsは、最大圧力pに比例し加圧速度sに依存しないため、式(4)のように表される。
εs=β×p(β:係数)・・・(4)
式(3)および式(4)より、最大変位量δは式(5)のように表される。
δ=εt+εs
=α×s×p+β×p(α、β:ゴムの粘弾性や膜厚等で決まる係数)・・・(5)
最大変位量δは、過渡成分εtがpとsとの積に比例することから、二次関数的に増減することになる。最大圧力pと加圧速度sを調整し、最大変位量δを調整することで画像品質を良好に保つことができる。
(最大変位量δを調整するためのパラメータ(押圧力P、ローラー半径r))
図37は、一方のローラーが他方のローラーに押圧する様子を示した図である。画像形成装置1におけるパラメータとして、押圧力P[N]とローラー半径r[mm]との比(P/r)に着目した。Pはローラー間の押圧力で、rは硬い方のローラーの半径である。
一次転写部においては、一次転写ローラー22を感光体ドラム13に押圧するときの押圧力がPとなり、感光体ドラム13の半径がrとなる。二次転写部においては、二次転写ローラー33を対向ローラー24に押圧するときの押圧力がPとなり、二次転写ローラー33の半径がrとなる。
本発明者らは、画像形成装置1を好適に使用可能な範囲において、最大変位量δがP/rに対して二次関数的に増減する、ということを見出した。以下にその理由を説明する。
図38は、押圧力PをPR1およびPR2に設定した場合、ニップ部を通過する中間転写ベルト21が受ける圧力の時間変化を示すグラフである。押圧力PがPR1のときの最大圧力をp1として、押圧力PがPR2のときの最大圧力をp2とする。PR2は、PR1の2倍であり、p2は、p1の2倍である。ローラー半径rを固定して、押圧力Pを2倍(PR1からPR2)にすると、最大圧力pは約2倍(p1からp2)になる。そして加圧速度s(図38中の太線の傾き)も約2倍になる。なおこの場合の加圧速度は、最大圧力pの20%から最大圧力pに至るまでの間における加圧速度とする。最大圧力pと加圧速度sの両方が約2倍になるので、式(3)より過渡成分εtは約4倍になる。
図39は、押圧力Pと過渡成分εtとの関係を示すグラフである。過渡成分εtは、押圧力Pに対して二次関数的に増減することになる。押圧力Pが増減することで、最大圧力pおよび加圧速度sがともに増減するためである。
図40は、半径が比較的小さい一方のローラー(半径r2)を他方のローラーに押圧する様子を示す図である。図41は、図40に示すローラーの半径(r2)の2倍の半径を有する一方のローラー(半径r1)を他方のローラーに押圧する様子を示す図である。図42は、図40および図41のローラーを用いた場合、ニップ部を通過する中間転写ベルト21が受ける圧力の時間変化を示すグラフである。ローラー半径rがr1のときの最大圧力pをp1として、ローラー半径rがr2のときの最大圧力pをp2とする。r2は、r1の半分であり、p2は、p1の2倍である。
押圧力Pを固定して、ローラー半径rを半分(r1からr2)にすると、圧力が中央に集中するので、最大圧力pは約2倍となり、加圧速度sも約2倍になる。最大圧力pと加圧速度sの両方が約2倍になるので、式(3)より過渡成分εtは約4倍になる。
図43は、ローラー半径rの逆数1/r[mm−1]と過渡成分εtとの関係を示すグラフである。過渡成分εtは、ローラー半径rの逆数1/rに対して二次関数的に増減することになる。ローラー半径rが増減することで、最大圧力pおよび加圧速度sがともに増減するためである。
図44は、P/rと過渡成分εtとの関係を示したグラフである。ローラー半径rを固定したときに過渡成分εtは、押圧力Pの二乗に比例して増減し、押圧力Pを固定したときに、ローラー半径rの逆数1/rの二乗に比例して増減する。よって、過渡成分εtは、P/rの二乗に比例して増減する。
<オーバーシュート変形を呈するベルトと示さないベルトとの比較>
(オーバーシュート変形を呈さないベルト)
図45は、オーバーシュート変形を呈さないベルトA,Bおよびオーバーシュート変形を呈するベルトPにおける、P/rと最大変位量δとの関係を示すグラフである。ガサツキを抑制するための上限の最大変位量δをεth1、良好な凹部転写性を確保するための下限の最大変位量δをεth2とする。P1/r1は、軸方向の画像ムラを抑制するための下限値である。P2/r2は、細線つぶれを抑制するための上限値である。
オーバーシュート変形を示さないベルトにおいて、過渡成分εtは、ほぼ0である。そのため、式(5)より、最大変位量δは下記の式(6)のように定常成分εsだけで表される。
δ≒εs
=β×p・・・(6)
図25で説明したように、オーバーシュート変形を呈さないベルトA,Bの変形量(最大変位量δ)は、最大圧力pに比例する。図38および図42に示すように、最大圧力pは押圧力Pに略比例し、かつ、1/rに略比例するため、P/rに略比例する。オーバーシュート変形を呈さないベルトA,Bは、P/rにほぼ比例するように最大変位量δが変化する特性を示す。
図45に示すように、最大変位量δがεth1以下であって、P1/r1と、P2/r2とに囲まれた図45中の斜線部Xの領域が一次転写部における条件設定可能領域である。最大変位量δがεth2以上であって、P1/r1と、P2/r2とに囲まれた図45中の斜線部Yの領域が二次転写部における条件設定可能領域である。
図30において説明したように、オーバーシュート変形を示さないベルトA、Bにおいては、印加圧力に対する変形量(最大変位量δ)の関係において、ガサツキの抑制と良好な凹部転写性の確保を両立させるような適切な印加圧力に条件設定にすることができなかった。
同様に、P/rに対する最大変位量δの関係についても、ガサツキの抑制と良好な凹部転写性の確保を両立させるような適切な条件に設定することができない。
(オーバーシュート変形を呈するベルト)
オーバーシュート変形を呈するベルトPにおいては、図44に示すように、過渡成分εtは、P/rに対して、二次関数的に増減する。すなわち、最大変位量δ(=過渡成分εt+定常成分εs)も二次関数的に増減する。
図45に示すように、オーバーシュート変形を呈するベルトPは、P/rが小さい領域において、P/rの増加量に対する最大変位量δの増加量は小さく、P/rが大きい領域において、P/rの増加量に対する最大変位量δの増加量は大きいという非線形な特性を示す。
上記の特性により、軸方向の画像ムラを抑制できるようなP/rの条件でありながら、一次転写部において最大変位量δを十分抑えてガサツキを抑制できるようになる。また、細線つぶれを抑制できるようなP/rの条件でありながら、二次転写部において最大変位量δを大きくして良好な凹部転写性を確保できるようになる。
図14で説明したように、オーバーシュート変形を呈するベルトには付着力低減効果がある。ベルトがオーバーシュート変形を示すとき、ベルト表面が短時間に大きく伸縮するため、トナーの付着力が低減する。トナーの付着力が低減する結果、紙の凹部に対してトナーが移動されやすくなる。この効果により、従来のオーバーシュート変形を呈さないベルトに比べて、より小さい変形量で良好な凹部転写性を確保することが可能である。
図45に示すように、オーバーシュート変形を呈するベルトPを用いた場合は、上記で説明した付着力低減効果によって、良好な凹部転写性を確保するための下限の最大変位量δは、εth2よりも小さいεth2Aとなる。
よって、最大変位量δがεth2A以上εth2以下であって、P1/r1と、P2/r2とに囲まれた図45中の斜線部Zの領域においても良好な凹部転写性を確保するための条件設定が可能となり、二次転写部における良好な凹部転写性を確保するための条件設定可能領域が拡張される。
オーバーシュート変形を呈するベルトPを用いた場合、一次転写部及び二次転写部におけるP/rの値を、Xの領域内の重なり部分W1およびZの領域内に重なり部分W3の範囲内で設定することによって、ガサツキの抑制と良好な凹部転写性とを両立することができる。
(最大変位量δを調整するための画像形成装置1におけるパラメータ(線圧Px、ベルト搬送速度Vsys))
図46は、ローラー間を中間転写ベルト21が通過する様子を示した画像形成装置1の内部の模式図である。図47は、図46に示すニップ部Nにおける中間転写ベルト21の搬送方向DR2の線圧の圧力分布を示すグラフである。図48は、図46に示すニップ部Nを通過する中間転写ベルト21が受ける線圧の時間変化を示すグラフである。
図46に示すように、ローラーによってニップ部Nが形成されている。押圧力Pをニップ部Nのローラー軸方向DR3における長さL[mm]で割った値を線圧Px(=P/L)[N/mm]とする。図47および図48に示すように、ニップ部Nにおける最大線圧Pxの20%となる位置からニップ部Nにおける最大線圧Pxの位置までの距離をw[mm]とし、wの間を中間転写ベルト21が通過する時間をN[s]とする。また、中間転写ベルト21の搬送速度である、ベルト搬送速度をVsys[mm/s]とする。
線圧における加圧速度をsaとすると、線圧における加圧速度saは、以下の式(7)にて表される。
sa=(Px−0.2×Px)/N
=(0.8×Px)/(w/Vsys)・・・(7)
ここで、w∝rと見なすことができるので、sa∝Vsys×0.8×Px/rとなる。
また、sa∝sと見なすことができ、さらに、p∝Px/rなので、実機ニップ部での最大変位量δは、以下の式(8)で表される。
δ=εt+εs
=α×s×p+β×p
=α×c×Vsys×(Px/r)×(Px/r)+β×d×(Px/r)(c,d:係数)
=α×c×Vsys×γ2+β×d×γ・・・(8) (γ=Px/r)
式(8)のように、最大変位量δは、線圧Pxおよびローラー半径rからなるパラメータγ(=Px/r)およびベルト搬送速度Vsysの関数として表される。
(画像品質への影響度を表す指標値εc)
ここで、過渡成分εtと定常成分εsとの品質(ガサツキ、凹部転写性)への寄与度を加味した指標をδjとするとδjは式(9)で表される。
δj=α×c×e×Vsys×γ2+β×d×f×γ(e、f:それぞれ過渡成分εt、定常成分εsの寄与度を表す係数)・・・(9)
式(9)の両辺をβ×d×fで割り、係数をA(=α×c×e/(β×d×f))でまとめると、以下の式(10)のようになる。
δj/(β×d×f)=A×Vsys×γ2+γ
εc=A×Vsys×γ2+γ (εc=δj/(β×d×f))・・・(10)
式(10)の左辺εcは、画像品質(ガサツキおよび凹部転写性等)への影響度を表す指標値となる。一次転写部におけるガサツキの抑制に対して、εcの上限値が定まる。
一次転写ローラー22が感光体ドラム13を押圧する押圧力をP1、一次転写ニップ部N1のローラー軸方向DR3における長さをL1、感光体ドラム13の半径をr1とすると、εcの上限値は、係数A、ベルト搬送速度Vsys、一次転写部のγ1(=P1/(L1×r1))の関数となる。
なお、r1∝W1(W1:一次転写ニップ幅)なので、押圧力P1を長さL1と感光体ドラム13の半径r1との積で除したγ1は、一次転写ニップ部N1における面圧に相当する。
二次転写部における凹部転写性に対して、εcの下限値が定まる。二次転写ローラー33が対向ローラー24を押圧する押圧力をP2、二次転写ニップ部N2のローラー軸方向DR3における長さをL2、二次転写ローラー33の半径をr2とすると、εcの下限値は、係数A、ベルト搬送速度Vsys、二次転写部のγ2(=P2/(L2×r2))の関数となる。
なお、r2∝W2(W2:二次転写ニップ幅)なので、押圧力P2を長さL2と二次転写ローラー33の半径r2との積で除したγ2は、二次転写ニップ部N2における面圧に相当する。
上記の式(10)の右辺第1項は、過渡成分εtの品質(ガサツキおよび凹部転写性等)への影響度を表す量である。Aは過渡成分εtの品質への寄与度合(同じ変位量の定常成分εsに対して何倍影響しやすいか)を決定する係数である。Aは弾性ベルトの粘弾性や膜厚、表面の形状(表面粗さ)などが関係して決まると考えられる。
過渡成分εtの影響は、ベルト搬送速度Vsysに比例するとともに、γの2乗に比例する。これにより、小さいγでは過渡成分εtの影響は比較的小さくなり、γを大きくしていくとその2乗に比例して過渡成分εtの影響は二次関数的に大きくなっていく。このとき、Vsysが大きい方が、過渡成分εtの寄与が相対的に大きくなることも分かる。
右辺第2項は、変位量の定常成分εsの品質(ガサツキおよび凹部転写性等)への影響度を表す量である。ただし、係数で両辺を割って整理したので、右辺第2項はγそのものである。定常成分εsの影響は、押圧力Pに比例し、ニップ部Nのローラー軸方向DR3における長さL、およびローラー半径rに反比例する。
画像形成装置1にて、ベルト搬送速度Vsys、押圧力P等を変えながら、ガサツキおよび凹部転写性との関係を調べた。具体的には、コニカミノルタ社製の画像形成装置1(デジタル印刷機:bizhub PRESS C8000)を用い、これに具備されている中間転写ベルト21を、オーバーシュート部分を有するパターンを呈するベルトに付け替えて、画像形成を実際に行なった。
画像形成装置1の一次転写ローラー22は、直径12mmの芯金の周りにゴムからなる弾性層を設けた、直径24mmのローラーとした。マイクロゴム硬度計(高分子計器社製MD−1)で計測した弾性層の硬度は40度であった。一次転写圧接部の軸方向長さは335mmとした。
画像形成装置1の二次転写ローラー33は、金属(材質はSUS)の剛体ローラーとした。対向ローラー24は、直径24mmの芯金の周りにスポンジとゴムとからなる弾性層を設けた、直径40mmのローラーとした。マイクロゴム硬度計(高分子計器社製MD−1)で計測した弾性層の硬度は40度であった。二次転写圧接部の軸方向長さは340mmとした。
評価に使用する用紙は、特種東海製紙株式会社製のエンボス紙、商品名レザック66(レザックは登録商標)を使用した。このエンボス紙の坪量は、302[g/m2]とした。形成する画像は、ベタ画像とした。
(一次転写部に起因するガサツキ評価結果)
図49は、ベルト搬送速度Vsysおよび一次転写部における押圧力P1の各条件に対するガサツキの評価結果を示すグラフである。図26で説明した場合と同様に、二次転写部における条件(圧力やバイアス等)は、トナー像を乱さずに用紙上に転写できるような最適な条件とすることによって、一次転写部に起因するガサツキの評価を行った。
目視評価にて、ガサツキが良好レベルのとき○を、許容レベルのとき△を、不可レベルのとき×で示している。この結果より、ガサツキが○から△もしくは×に変わる境界を調べたところ、以下の式(11)に表される曲線を境にして、ガサツキが○から×に変わることが分かった。
2×Vsys×γ2+γ=0.0075・・・(11)
すなわち、ガサツキに対する過渡成分εtの寄与度合を決める係数AはA=2であり、このときの指標値εc1は、εc1=0.0075である。εc1=2×Vsys×γ2+γで表されるεc1が、以下の式(12)を満たすとき、ガサツキが抑制された良好な画質が得られる。
εc1≦0.0075・・・(12)
(二次転写部に起因する凹部転写性の評価結果)
図50は、ベルト搬送速度Vsysおよび二次転写部における押圧力P2の各条件に対する凹部転写性の評価結果を示すグラフである。図28で説明した場合と同様に、一次転写部における条件(圧力やバイアス等)は、トナー像を乱さずに用紙上に転写できるような最適な条件とすることによって、二次転写部に起因する凹部転写性の評価を行った。
目視評価にて、凹部転写性が良好レベルのとき○を、許容レベルのとき△を、不可レベルのとき×で示している。ベルト搬送速度Vsysと二次転写部押圧力P2とを変更しながら、凹部転写性を評価した。
この結果より、凹部転写性が○から△もしくは×に変わる境界を調べたところ、以下の式(13)に表される曲線を境にして、凹部転写性が○から×に変わることが分かった。
5×Vsys×γ2+γ=0.088・・・(13)
すなわち、凹部転写性に対する過渡成分εtの寄与度合を決める係数AはA=5であり、このときの指標値εc2は、εc2=0.088である。εc2=5×Vsys×γ2+γで表されるεc2が、以下の式(14)を満たすとき、凹部転写性が確保された良好な画質が得られることが分かった。
εc2≧0.088・・・(14)
以上をまとめると、以下の(15)式を満たすとき、一次転写部においてガサツキを抑制することができ、以下の(16)式を満たすとき、二次転写部において良好な凹部転写性を確保することができる。
2×Vsys×γ12+γ1≦0.0075・・・(15)(γ1=P1/(L1×r1))
5×Vsys×γ22+γ2≧0.088・・・(16)(γ2=P2/(L2×r2))
図51は、実施例1から実施例7、比較例1から比較例4、および従来例1から従来例4のベルトを用いた場合の各条件に対する画像評価結果を示すグラフである。目視評価にて、画像品質が良好レベル(良)、許容レベル(可)、不可レベル(不可)で示している。実施例1から実施例7および比較例1から比較例4ではベルトPを用いて、従来例1から4では、ベルトAおよびベルトBを用いて評価を実施した。
ベルト種Pは、本発明者が製作したものであり、基層の材質がポリイミドであり、弾性層の材質がニトリルゴムである。一方、ベルト種A、Bは、本発明者が製作したものではなく、市販の画像形成装置において用いられている中間転写ベルトである。ベルト種Aは、基層の材質がポリイミドであり、弾性層の材質がクロロプレンゴムである。ベルト種Bは、基層の材質がポリイミドであり、弾性層の材質がアクリルゴムである。
(実施例1から実施例7)
実施例1から実施例5は、いずれもE=1.0を示すベルトPを用いており、εc1およびεc2が式(12)と式(14)とを満たすように、押圧力P、ローラー半径r、およびベルト搬送速度Vsysを設定している。実施例1から実施例5のベルトPの画像評価結果は、ガサツキ、凹部転写性、軸方向の画像ムラ、および細線つぶれのいずれの項目においても「可」以上となっている。
実施例6に示すE=0.2を示すベルト、実施例7に示すE=3.0を示すベルトを用いて画像評価しても、実施例1から実施例5で示すE=1.0を示すベルトを用いた場合と同様にガサツキ、凹部転写性、軸方向の画像ムラ、および細線つぶれのいずれの項目においても「可」以上となっている。
E=0.2、E=3.0を示すベルトにおいても、εc1およびεc2が式(12)と式(14)とを満たすように、押圧力P、ローラー半径r、およびベルト搬送速度Vsysを設定することで、良好な画像品質を確保することができる。
一方、E=3.5を示すベルトを用いた場合、凹凸紙転写性には問題なかったものの、一万枚印刷後において画像ノイズが発生しやすくなっており、繰り返し使用時の耐久性に難があった。
0.2≦E≦3を満たすベルトを中間転写ベルト21とすることにより、良好な凹部転写性を確保しながら、繰り返しの使用によっても画像品位が低下してしまうことが抑制できる。
(比較例1から比較例4)
比較例1から比較例4からわかるように、オーバーシュート変形を呈するベルトPを用いた場合であっても、εc1またはεc2が適正範囲から外れると、ガサツキ、凹部転写性、軸方向の画像ムラ、および細線つぶれのいずれかで不可レベルとなり、高画質を実現することができなかった。
実施例4および比較例3の結果より、γ1が以下の(17)式を満たすとき、軸方向の画像ムラが抑制できることがわかる。
γ1≧0.00074・・・(17)
また、実施例5および比較例4の結果より、γ2が以下の(18)式を満たすとき、細線つぶれが抑制できることがわかる。
γ2≦0.028・・・(18)
(従来例1から従来例4)
オーバーシュート変形を呈さない、弾性層が比較的硬いベルトAを用い、従来例1のようにεc1およびεc2が式(12)と式(14)とをそれぞれ満たすような条件で画出ししたところ、良好な凹部転写性が確保できなかった。二次転写部における押圧力P2を増加させたが、P2=210[N]に至ったところで細線つぶれが発生した(従来例2)。このとき、凹部転写性も改善されなかった。
オーバーシュート変形を呈さない、弾性層が比較的柔らかいベルトBを用い、従来例3のようにεc1およびεc2が式(12)と式(14)とをそれぞれ満たすような条件で画出ししたところ、良好な凹部転写性は確保できたが、ガサツキが発生した。一次転写部における押圧力P1を低下させて画像評価を実施したが、P1=9[N]としたところで軸方向の画像ムラが発生した(従来例4)。このとき、ガサツキも改善されなかった。
このように、オーバーシュート変形を呈さないベルトAおよびベルトBを中間転写ベルトとして用いた場合は、ガサツキの抑制と良好な凹部転写性とを両立させることはできなかった。
さらに実験を繰り返し、ベルトAとベルトBとの中間の硬さを持つベルトを多数試作して検討したが、オーバーシュート変形を呈さないベルトにおいては、ガサツキ抑制と良好な凹部転写性とを両立させることはできなかった。
以上より、オーバーシュート変形を呈するベルトPを用いて、εc1およびεc2が適正になるように押圧力P、ローラー半径r、およびベルト搬送速度Vsysの設定をすることで、良好な凹部転写性とガサツキの抑制とを両立させることができる。すなわち、深い凹部を有する記録媒体に対して高い転写性を確保しながら、ガサツキを抑制し、良好な画像品質を確保できる画像形成装置を実現することができる。
以上において説明した本実施の形態においては、画像形成装置としていわゆるデジタル複合機やデジタル印刷機に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、その他の画像形成装置に本発明を適用することも当然に可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。