以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る画像形成装置の概略図である。図1を参照して、実施の形態1に係る画像形成装置1について説明する。
図1に示すように、画像形成装置1は、画像読取部2と、画像処理部3と、画像形成部4と、用紙搬送部5と、定着装置6とを備えている。
画像読取部2は、自動原稿給紙装置2aと、原稿画像走査装置2b(スキャナー)とを有している。このうち、原稿画像走査装置2bには、コンタクトガラスと、各種のレンズ系と、CCDセンサ7とが設けられている。CCDセンサ7は、画像処理部3に接続されている。画像処理部3は、入力された画像に所定の画像処理を行なう。
画像形成部4は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット10(10Y,10M,10C,10K)を有している。これらについては、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略する。画像形成部4は、さらに、中間転写ユニット20および二次転写ユニット30を有している。
画像形成ユニット10は、露光装置11と、現像装置12と、感光体ドラム13と、帯電装置14と、ドラムクリーニング装置15とを有している。感光体ドラム13の表面は、光導電性を有しており、たとえば負帯電型の有機感光体である。感光体ドラム13は、トナー像を担持する像担持体である。
帯電装置14は、たとえばコロナ帯電器であるが、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体ドラム13に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置11は、たとえば半導体レーザーで構成される。
現像装置12は、たとえば二成分現像方式の現像装置であるが、キャリアを含まない一成分現像方式の現像装置であってもよい。
中間転写ユニット20は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を感光体ドラム13に圧接させる一次転写ローラー22と、対向部材としての対向ローラー24を含む複数の支持ローラー23と、ベルトクリーニング装置25とを有している。中間転写ベルト21は、無端状の転写ベルトである。ここで、主として一次転写ローラー22により、感光体ドラム13に担持されたトナー像を中間転写ベルト21に転写する一次転写部が構成されることになる。
中間転写ベルト21は、複数の支持ローラー23によりループ状に張架され、移動可能となっている。複数の支持ローラー23のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト21は矢印A方向に一定速度で走行する。
転写部材として二次転写ユニット30は、二次転写ローラー33を含む。二次転写ローラー33、対向ローラー24、および後述するニップ部N(図3参照)により、中間転写ベルト21に担持されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写部が構成されることになる。
定着装置6は、記録媒体としての用紙に転写されたトナー像を用紙上に定着させるためのものであり、用紙上のトナーを加熱および融解する定着ローラー6aと、用紙を定着ローラー6aに向けて押圧する加圧ローラー6bとを有している。
用紙搬送部5は、給紙部5aと、排紙部5bと、搬送経路部5cとを有している。給紙部5aを構成する給紙トレイユニット5a1〜5a3には、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部5cは、レジストローラー対5c1などの複数の搬送ローラー対を有している。排紙部5bは、排紙ローラー5b1によって構成されている。
搬送経路部5cにおける用紙の搬送速度は、制御部8によって決定される。搬送経路部5cは、上述した複数の搬送ローラー対に加えて、モーター、モータードライバ、ギア等を含んでいる。これら複数の搬送ローラー対、モーター、モータードライバ、ギア等は、制御部8からの電気信号を受けて各種モーターを回転させることで、記録媒体としての用紙を搬送する。
上述した各種モーターによって回転させられる部材には、たとえば現像装置12に含まれる現像ローラーや、感光体ドラム13、中間転写ベルト21、二次転写ローラー33、定着ローラー6a、上述した搬送ローラー対等があるが、これらの部材は、1個のモーターで一元的に駆動されてもよいし、複数のモーターで別々に駆動されてもよい。ただし、これら部材の外周面は、同じ線速度(この線速度は、一般にシステム速度と称される)で駆動されることが好ましい。なお、制御部8は、これら各種モーターの回転数やギアを切り替えることにより、システム速度を変更させることができる。
次に、画像形成装置1による画像形成の処理について説明する。原稿画像走査装置2bは、コンタクトガラス上の原稿を光学的に走査して読み取る。原稿からの反射光は、CCDセンサ7により読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部3において所定の画像処理が施され、露光装置11に送られる。なお、入力画像データは、外部パソコンやモバイル機器などから画像形成装置1に送付されたものであってもよい。
感光体ドラム13は、一定の周速度で回転する。帯電装置14は、感光体ドラム13の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置11は、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光を感光体ドラム13に照射し、感光体ドラム13の表面に静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面にトナーを付着させ、感光体ドラム13上の静電潜像を可視化させる。こうして感光体ドラム13の表面に静電潜像に応じたトナー像が形成される。
感光体ドラム13の表面のトナー像は、中間転写ユニット20によって中間転写ベルト21に転写される。転写後に感光体ドラム13の表面に残存する転写残トナーは、感光体ドラム13の表面に摺接するドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置15によって除去される。一次転写ローラー22によって中間転写ベルト21が感光体ドラム13に圧接されることにより、中間転写ベルト21に各色のトナー像が順次重なって転写される。
二次転写ローラー33は、中間転写ベルト21を介して、対向ローラー24に圧接される。これにより、転写ニップ(ニップ部N)が形成される。用紙は、用紙搬送部5によって転写ニップへ搬送され、この転写ニップを通過する。用紙の傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対5c1が配設されたレジストローラー部により行われる。
転写ニップに用紙が搬送されると、二次転写ローラー33へ所定の電圧が印加される。この電圧の印加によって、中間転写ベルト21に担持されているトナー像は用紙に転写される。中間転写ベルト21の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト21の表面に摺接するベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置25によって除去される。ベルトクリーニング装置25については、中間転写ベルト21上の残留トナーを清掃するものであれば、ブラシによるクリーニング方式を採用したものであってもよい。また、転写率の高いトナーを使用する場合には、クリーニング装置を使用しない態様もありえる。トナー像が転写された用紙は、定着装置6に向けて搬送される。
定着装置6は、トナー像が転写されて搬送されてきた用紙を加熱および加圧する。こうしてトナー像は用紙に定着する。トナー像が定着された用紙は、排紙ローラー5b1を備えた排紙部5bにより機外に排紙される。
ここで、トナーは、バインダー樹脂中に着色剤や、必要に応じて荷電制御剤や離型剤等を含有させ、外添剤を処理させたものであり、一般に使用されている公知のトナーを使用することができる。トナーの体積平均粒径は、好ましくは2[μm]以上12[μm]以下の範囲の粒子であり、画質の点でより好ましくは、3[μm]以上9[μm]以下の範囲の粒子がよい。
トナーの形状係数SF−1は、100から140であることが好ましいが、必ずしもこの範囲に限定されない。
形状係数SF−1は、走査型電子顕微鏡により、5000倍で撮影したトナーをランダムに100個、スキャナーで取り込み、画像処理解析装置「LuzexAP」(ニレコ社製)を用いて解析し、下記の式により導出される形状係数(SF−1)の平均値から求められる。
SF−1=〔{(粒子の絶対最大長)2/(粒子の投影面積)}×(π/4)〕×100
トナーの外添剤は、シリカやチタニアといった金属酸化物の微粒子が使用され、大きさは30[nm]といった小粒径のものから、100[nm]といった比較的大きな粒径のものが使用される。粉体流動性や帯電制御等の目的で、平均1次粒径が40[nm]以下の無機微粒子を用いてもよい。さらに、必要に応じて付着力低減のため、それより大径の無機あるいは有機微粒子を併用してもよい。無機微粒子としては、シリカやチタニアのほかに、アルミナ、メタチタン酸、酸化亜鉛、ジルコニア、マグネシア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。また、分散性や粉体流動性をあげるため、無機微粒子の表面を別途処理してもよい。
キャリアは、特に限定されず、一般に使用されている公知のキャリアを使用することができ、バインダー型キャリアやコート型キャリアなどが使用できる。キャリア粒径としてはこれに限定されるものではないが、15[μm]以上100[μm]以下が好ましい。
<中間転写ベルト>
図2は、図1に示す中間転写ベルト21の断面図である。次に、この図2を参照して、中間転写ベルト21の構成について説明する。
図2に示すように、中間転写ベルト21は、相対して位置する一対の露出主面である第1主面21s1(おもて面)および第2主面21s2(裏面)を有する部材からなり、基層21aと、弾性層21bと、表層21cとを含んでいる。
弾性層21bは、基層21aを覆うように設けられており、表層21cは、弾性層21bを覆うように設けられている。これにより、上述した第1主面21s1は、表層21cによって規定されており、上述した第2主面21s2は、基層21aによって規定されている。
中間転写ベルト21は、上述したように担持したトナー像を用紙等の記録媒体に対して転写するためのものであり、トナー像は、上述した第1主面21s1上において担持される。
基層21aは、中間転写ベルト21全体としての機械的強度を向上させるための層であり、たとえば有機高分子化合物からなる層にて構成される。基層21aを構成する有機高分子化合物としては、たとえば、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、変性ポリカーボネート、およびそれらの混合物等が挙げられる。なお、基層21aは、材質の異なる複数の層にて構成されていてもよい。
基層21aには、抵抗値の調節のために導電剤が添加されていてもよい。この導電剤としては、一種類のみが添加されていてもよいし、複数種類が添加されていてもよい。基層21aにおける導電剤の含有量は、基層材料100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
弾性層21bは、中間転写ベルト21に弾性を付与するための層であり、たとえば粘弾性を呈する有機化合物からなる層にて構成される。弾性層21bを構成する有機化合物としては、たとえば、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリルブタジエンスチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)、およびそれらの混合物等が挙げられる。なお、弾性層21bは、材質の異なる複数の層にて構成されていてもよい。
弾性層21bには、導電性を発現するための導電剤が添加されていてもよい。導電剤としては、一種類のみが添加されていてもよいし、複数種類が添加されていてもよい。弾性層21bにおける導電剤の含有量は、弾性層材料100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。弾性層21bにおける導電剤の含有量は、その総量で、中間転写ベルト21の所望の体積抵抗率を実現する量であり、中間転写ベルト21の体積抵抗率は、たとえば108[Ω・cm]以上1012[Ω・cm]以下である。
上述した導電剤には、イオン導電剤および電子導電剤が含まれる。イオン導電剤には、ヨウ化銀、ヨウ化銅、過塩素酸リチウム、トリフロオロメタンスルホン酸リチウム、有機ホウ素錯体のリチウム塩、リチウムビスイミド((CF3SO2)2NLi)およびリチウムトリスメチド((CF3SO2)3CLi)が含まれる。電子導電剤には、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケルおよびステンレス鋼等の金属や、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブ等の炭素化合物が含まれる。
弾性層21bには、上述した導電剤に加えて、非繊維形状の樹脂や繊維形状の樹脂が含有されていてもよい。
非繊維形状の樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、反応性モノマー等の熱硬化性樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性ウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。弾性層21bにおける非繊維形状の樹脂の弾性層材料に対する含有量は、弾性層材料100重量部に対して20重量部以上60重量部以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
繊維形状の樹脂としては、たとえば、綿、麻、絹、レーヨン、アセテート、ナイロン、アクリル、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、アラミド等の樹脂系繊維が挙げられる。弾性層21bにおける繊維形状の樹脂の含有量は、弾性層材料100重量部に対して、10重量部以上40重量部以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
弾性層21bには、さらに慣用の添加剤、たとえば加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、共架橋剤、軟化剤、可塑剤等を含有させてもよい。これら添加剤は、単独で添加されていてもよいし、2種以上が組み合わされて添加されていてもよい。
ここで、加硫剤としては、たとえば硫黄や有機含硫黄化合物、有機過酸化物等が使用可能である。
また、共架橋剤としては、有機過酸化物による共架橋剤としての、エチレングリコール・ジメタクリレート、トリメチロールプロパン・トリメタクリレート、多官能性メタクリレートモノマー、トリアリルイソシアヌレート、含金属モノマー等が挙げられる。弾性層21bにおける共架橋剤の添加量は、弾性層材料100重量部に対して5重量部以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
表層21cは、その材料が特に制限されるものではないが、中間転写ベルト21へのトナーの付着力を小さくすることで転写性を高めるものであることが好ましい。当該観点から、表層21cとしては、たとえば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂またはそれらの混合物を母材として、当該母材にたとえばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、二酸化チタン、シリコーンカーバイド等の粉体または粒子を1種類あるいは2種類以上分散させたものを使用することができる。なお、表層21cは、弾性層21bの表面を改質処理したものであってもよい。
ここで、これら粉体および粒子は、第1主面21s1の表面エネルギーを小さくして潤滑性を高めるための材料であり、これら粉体および粒子の粒径を異ならせたものを分散させて使用することもできる。また、フッ素系ゴム材料を用い、熱処理を行うことで表面にフッ素リッチな層を形成させることにより、第1主面21s1の表面エネルギーを小さくさせてもよい。
ここで、基層21aの硬度は、弾性層21bの硬度よりも高い。弾性層21bよりも変形しにくい基層21aにより弾性層21bが支持されることで、弾性層21bは、第2主面21s2へ向かう側には変形しにくくなり、その分、第1主面21s1へ向かう側に変形しやすくなる。基層および弾性層の硬度は、マイクロゴム硬度計(例えば、高分子計器社製:MD−1)を用いて測定することができる。
表層21cの硬度は、弾性層21bの硬度よりも高い。弾性層21bよりも硬い表層21cは、光硬化性の樹脂を用いて、弾性層21bの表面に未硬化の樹脂を塗布し、紫外線によって樹脂を硬化することによって、形成することができる。または、弾性層21bの表面付近を硬化処理するなどの改質処理によって、弾性層21bよりも硬い表層21cを形成することもできる。
なお、表層21cは、必ずしもこれを設ける必要はなく、中間転写ベルト21を基層21aおよび弾性層21bのみにて構成することも可能である。また、基層21aを設けずに弾性層21bのみにて中間転写ベルト21を構成してもよい。さらには、上述した基層21a、弾性層21bおよび表層21cに加えて、さらに他の層を付加して中間転写ベルト21を4層以上に多層化することもできる。
中間転写ベルト21における第1主面21s1の十点平均表面粗さRzは、0.5[μm]以上9.0[μm]以下であることが好ましく、3.0[μm]以上6.0[μm]以下であることがなお好ましい。十点平均表面粗さRzが0.5[μm]未満であると、接触部材と密着する懸念があり、十点平均表面粗さRzが9.0[μm]よりも大きい場合には、凹凸部分にトナーおよび紙粉等が溜まり易くなり、画像品質が低下する場合がある。なお、十点平均表面粗さRzとは、JIS B0601(2001年)に規定された表面粗さのことである。
ここで、本実施の形態における中間転写ベルト21は、後述する変位量測定装置100を用いた評価方法に基づいて評価した場合に、その表面(すなわち第1主面21s1)の一部が所定の特徴的な挙動を示して変位するものであるが、その詳細については図13から図19を用いて後述する。
<二次転写部の構成>
図3は、図1に示す二次転写部の概略図である。次に、この図3を参照して、二次転写部の詳細な構成について説明する。
図3に示すように、中間転写ベルト21は、画像形成装置1の二次転写部を通過するように配置される。
二次転写部は、互いに対向するように平行に配置された二次転写ローラー33および対向ローラー24、ならびにニップ部Nを含んでいる。ニップ部Nは、二次転写ローラー33と対向ローラー24との間に形成されている。中間転写ベルト21は、このニップ部Nを挿通するように配置されており、用紙等の記録媒体1000も同じくこのニップ部Nを通過するように供給される。
二次転写ローラー33は、導電性の材料からなり、当該二次転写ローラー33には、二次転写電源33cが接続されている。対向ローラー24は、導電性の材料からなる芯金24aと、当該芯金24aの周面を覆う導電性の弾性部24bとを含んでおり、このうちの芯金24aは、接地されている。これにより、ニップ部Nには、二次転写ローラー33、対向ローラー24および二次転写電源33cによって所定の電界が形成されることになる。
中間転写ベルト21は、記録媒体1000よりも対向ローラー24側を挿通するように配置されており、記録媒体1000は、中間転写ベルト21よりも二次転写ローラー33側を通過するように供給される。なお、中間転写ベルト21は、その第1主面21s1が記録媒体1000側(すなわち二次転写ローラー33側)を向くとともに、その第2主面21s2が対向ローラー24側を向くように配置されている。これにより、中間転写ベルト21の第1主面21s1は、ニップ部Nにおいて記録媒体1000の記録面1001に対面配置されることになる。
二次転写ローラー33は、図中に示す矢印AR1方向に回転駆動され、対向ローラー24は、図中に示す矢印AR2方向に回転駆動される。また、二次転写ローラー33は、トナー像の転写に際して図中に示す矢印AR3方向に向けて図示しない押圧機構によって押圧され、これにより二次転写ローラー33と対向ローラー24とは、中間転写ベルト21および記録媒体1000を介して圧接することになる。
二次転写ローラー33の回転と対向ローラー24の回転とに基づき、中間転写ベルト21および記録媒体1000は、それぞれ図中に示す矢印AR4方向および矢印AR5方向に搬送される。その際、ニップ部Nを通過するに当たり、中間転写ベルト21および記録媒体1000が二次転写ローラー33と対向ローラー24とによって加圧された状態で挟み込まれて密着することになる。また、その際、密着した部分の中間転写ベルト21および記録媒体1000には、上述した所定の電界が作用することになる。これにより、中間転写ベルト21の第1主面21s1に付着していたトナーが記録媒体1000の記録面1001に付着することになり、トナー像の転写が行なわれる。
ここで、二次転写ローラー33の表面の硬度は、対向ローラー24の表面の硬度よりも高いため、これら二次転写ローラー33および対向ローラー24によって挟み込まれた部分の中間転写ベルト21および記録媒体1000は、二次転写ローラー33の表面に沿うように湾曲することになる。そのため、中間転写ベルト21の第1主面21s1には、二次転写ローラー33の軸方向に沿って延在する凹条形状の湾曲面が形成されることになり、この部分においてトナー像の転写が行なわれることになる。二次転写ローラーおよび対向ローラーの表面の硬度は、マイクロゴム硬度計(例えば、高分子計器社製:MD−1)を用いて測定することができる。
中間転写ベルト21には、二次転写部、および上述した一次転写部で、圧力が作用する。圧力の作用によって中間転写ベルト21が変形すると、第1主面21s1とトナーとの接触面積が増加して、トナーと中間転写ベルト21との付着力が増大する。しかしながら、中間転写ベルト21が硬い表層21cを有し、中間転写ベルト21の第1主面21s1の硬度が高いことで、圧力が作用しても第1主面21s1が変形しにくくなり、または第1主面21s1が変形しても速く元に戻りやすくなる。このため、第1主面21s1とトナーとの接触面積の増加が抑制され、トナーと中間転写ベルト21との付着力の増大が抑制されるので、トナー像の転写をより確実に行なうことが可能になっている。
<比較例における二次転写部>
図4は、比較例における二次転写部を示す図である。図4を参照して、比較例における二次転写部について説明する。
図4に示すように、比較例における二次転写部は、対向ローラー24X、二次転写ローラー33Xおよびニップ部Nを含む。
対向ローラー24Xは、芯金24aと当該芯金24aの周面を覆う弾性部24bと有する。弾性部24bとしては、たとえば、シリコーンゴムが用いられる。対向ローラー24Xは、二次転写ローラー33Xの回転に従動して回転するように設けられている。対向ローラー24Xには、外部から直接回転トルクは付与されない。
二次転写ローラー33Xは、芯金33aおよび弾性部33bを有する。弾性部33bとしては、たとえば、シリコーンゴムが用いられる。二次転写ローラー33Xは、AR1方向に回転駆動される。弾性部33bは、弾性部24bより固くなっている。このため、二次転写ローラー33Xと対向ローラー24Xとを圧接させた状態においては、二次転写ローラー33Xが対向ローラー24Xに食い込んだ状態となる。
なお、弾性部24bが弾性部33bよりも固くなっており、対向ローラー24Xが二次転写ローラー33Xに食い込んでいてもよい。
ニップ部の中心においては、食い込み量d0が最大となるとともに、対向ローラー24Xの芯金24aと二次転写ローラー33Xの芯金33aとの距離z0が最小となる。したがって、ニップ部の中心においては、中間転写ベルトへの印加圧力は最大となる。
一方、ニップ中心からベルト進行方向に沿ってdxだけ外れた地点における圧力を考える。対向ローラー24Xの中心および二次転写ローラー33Xの中心を結ぶ線に対して距離dxだけ離れた地点においては、対向ローラー24Xの芯金24aと二次転写ローラー33Xの芯金33aとの距離がz0よりも大きいz1となる。これとともに、食い込み量もd1となり、ニップ部の中心における食い込み量d0と比較して小さくなる。
このように、ニップ部の中心から転写ベルトの進行方向と平行な方向に沿って離れるにつれて、食い込み量が小さくなるとともに、対向ローラー24Xの芯金24aと二次転写ローラー33Xの芯金33aとの距離が大きくなる。
食い込み量が小さい場合には、対向ローラー24Xの芯金24aと二次転写ローラー33Xとが転写ベルトを挟持する力が弱くなる。また、対向ローラー24Xの芯金24aと二次転写ローラー33Xの芯金33aとの距離が大きい場合には、弾性部33bの食い込みによって発生する内部応力がより広い範囲に分散して吸収される。これら両方の効果により、ニップ部の中心からベルト進行方向に平行な方向に沿って離れるにつれて、中間転写ベルトに印加される圧力は急激に小さくなる(図5参照)。
なお比較例においては、一例として、二次転写ローラー33Xおよび対向ローラー24Xが金属の芯金の周囲に弾性部を設けた弾性ローラーである場合を例示して説明したが、二次転写ローラー33Xおよび対向ローラー24Xのいずれかが、弾性部を持たない金属から成る剛体ローラーであっても同様の圧力分布を有する。
<比較例における二次転写部にて中間転写ベルトを用いる場合に発生する問題>
一般的に、弾性層を有する中間転写ベルトを用いる場合、紙の凹部への転写性は向上する。弾性層を有する中間転写ベルトを用いると紙の凹凸に追随するようにベルト表面を変形させることができるためである。紙の凹凸に追随するように中間転写ベルトの表面を変形させるためには、中間転写ベルトの弾性層が柔らかくて厚い方が、中間転写ベルトの変形量が大きくなり、紙の凹部に中間転写ベルトの表面が入り込むように変形しやすくなるので、有利である。
しかしながら、柔らかくて厚い弾性層を有する中間転写ベルトを用いるシステムにおいても、弾性ベルトの凹凸に対する追随性能が十分に発揮されずに凹凸紙への転写性が悪化する場合があった。本発明者らは、この問題が弾性層の粘性に起因する変形の遅延のために起きていることを見出した。図5を用いて詳細に説明する。
図5は、比較例における二次転写部にて転写した際に、転写ベルトに印加される圧力に対して、転写ベルトの変形が遅延することを説明するための図である。図5を参照して、転写ベルトに印加される圧力に対して、転写ベルトの変形が遅延することを説明する。
図5における実線は、上記にて説明したように、中間転写ベルト上の任意の一点がベルトの移動に伴って、二次転写ローラー33Xと対向ローラー24Xとのニップ部を通過する際に、当該任意の一点に印加される圧力の時間変化(圧力分布)を示している。
圧力の増加はニップ部の入口付近では緩やかだが、ある地点から急激に立ち上がる。この立ち上がり始める点が、二次転写ローラー33Xと対向ローラー24Xとの圧接力が確実に作用する境界である。そして、圧力は急峻な傾きで増加し、ニップ部の中心(二次転写ローラー33Xの芯金33aと対向ローラー24Xの芯金24aとが最も近接する地点)でピーク値を取ったあと、再び急激に減少する。
上記圧力分布に合わせて、中間転写ベルトの表面の変位量の変化を図5に示している。ここで変位量とは、圧力を受けて弾性層が変形することにより中間転写ベルトの表面が紙の凹部に向かって変位する量である。このため、変位量が大きいと紙の凹部とベルト表面との距離がより縮まるので、変位量は大きい方が好ましい。
図5中破線にて示す変位量aは、中間転写ベルトが印加される圧力に比例して変化する変位量を示している。このようなベルトの変位は、弾性層の弾性変形に基づいて起こる。ゴムのような弾性層では、(弾性限界までは)歪みが応力に比例するので、この原理に基づけば、変位量aのように印加圧力に比例した変位量を示すことになる。
しかしながら、通常ゴムのような弾性層は粘性的性質を併せ持ち、この粘性の為に、圧力の変化に対して変位の変化が遅れることとなる。
図5中一点鎖線にて示す変位量bは、弾性層の粘性に起因する圧力に対する変位の遅れを加味した場合の変位量を示している。変位量bにおいては、圧力の増減に対して遅延時間dtだけ遅れて変位量が増減する。しかしながら、この変位量bは仮想の曲線であり、実際に変位量bのようにベルトが変位する訳ではない。これは、以下のような理由による。
上述のように、中間転写ベルトへの圧力はニップ中心を超えると急減に減少する。そして、これを受けて、中間転写ベルトの変位量も減少することとなる。このため、図5中二点鎖線にて示す変位量cのように、圧力が増加する局面では、中間転写ベルトの変位量は遅延時間dtだけ遅れて立ち上がり、圧力が減少する局面に入ると(より正確には圧力に対して多少の遅れを持って)変位量も減少する。これにより、中間転写ベルトの変位量の最大値は、中間転写ベルトの弾性のみで決まる本来の変形能力であるδ0よりも小さい値δ1となる。
このようにして、弾性層の粘性に起因する変位の遅延時間が大きいと、ニップ部での中間転写ベルトの変位量の最大値は、中間転写ベルト本来の変形能力で決まる量よりも小さくなる。このため、中間転写ベルトが紙の凹部を十分に埋めるように変形することができなくなり、凹凸紙に対する転写性が悪化する。
<実施の形態1に係る二次転写部の詳細>
本実施の形態に係る画像形成装置は、上記問題を解決するためのものであり、後述するように、二次転写ローラー33と対向ローラー24との圧接によって中間転写ベルト21に印加される圧力がピーク付近で略一定となる圧力フラット領域を有し、ベルト上の任意の一点が圧力フラット領域を通過する時間が、中間転写ベルトの変形の圧力に対する遅延時間よりも大きくなるように構成されている。
図6は、実施の形態1に係る二次転写部の圧接状態を示す概略図である。図6を参照して、実施の形態1に係る二次転写部の圧接状態について説明する。
図6に示すように、画像形成装置1は、対向ローラー24に回転トルクを付与する回転駆動部50を備える。回転駆動部50の動作は、制御部8によって制御される。回転駆動部50は、ニップ部での回転方向が、中間転写ベルトのニップ部Nにおける回転方向と同じ向きとなるように、対向ローラー24に回転トルクを付与する。
ここで、対向ローラー24に回転トルクを与えるとは、中間転写ベルト21を通じて対向ローラー24を間接的に回転させることではなく、これとは別に、対向ローラー24を回転させる方向に力を直接作用させることを意味する。すなわち、中間転写ベルト21を搬送駆動するのと同方向に対向ローラー24を回転させる力を作用させる。
なお、一般的な画像形成装置では、対向ローラーは、特別にこれを回転駆動させる手段を持たず、中間転写ベルトの裏面と対向ローラー外周面との摩擦力によって、中間転写ベルトに従動して回転する状態となっている。
制御部8は、記録媒体が凹凸紙である場合に、上記回転トルクが付与されるように回転駆動部50の動作を制御する。たとえば、画像形成装置1の搬送経路上には、記録媒体の光沢度を検知する光沢検知部(不図示)が設けられており、当該光沢検知部が搬送される記録媒体の光沢度を測定する。制御部8は、光沢検知部の検知結果に基づき、記録媒体が凹凸紙であるか否かを判断する。記録媒体の光沢度が所定の閾値よりも低い場合には、凹凸紙であると判断される。
なお、光沢検知部は必須の構成ではなく、画像形成装置の各種操作を行う操作パネル(不図示)を用いて、用紙情報を取得してもよい。この場合、ユーザが画像形成装置1の操作パネルから記録媒体の種類、厚み、光沢度の情報を入力することにより、制御部8は、入力情報に基づいて、記録媒体が凹凸紙であるか否かを判断することができる。
上述のように、対向ローラー24に回転トルクを付与した場合においても、対向ローラー24と二次転写ローラー33間のギャップは変わらない。ピーク位置(ニップ部の中心)においては、対向ローラー24の芯金24aと二次転写ローラー33との距離、二次転写ローラー33の食い込み量、および弾性部24bの硬度等で決まるピーク圧が中間転写ベルト21に印加されることとなる。
一方、対向ローラー24に回転トルクを付与した場合には、ピーク位置よりも記録媒体の搬送方向上流側において、対向ローラー24の弾性部24b(ゴム層)は、ニップ部Nの外側に向かって大きく膨らむこととなる。
対向ローラー24に回転トルクを付与した場合、対向ローラー24の弾性部24bをピーク位置に向けてより強く押し込むように力が作用する一方で、対向ローラー24と中間転写ベルト21の裏面との間の摩擦力により対向ローラー24の弾性部24bを押し戻す方向に力が作用する。
これらの力の作用により、対向ローラー24の弾性部24bはニップ部の中心よりも上流側に滞留しニップ部の外側に向けて大きく膨らむことになる。そして、この膨らんだ弾性部24bは、ニップ部の中心に向かって押し込まれる際に、中間転写ベルト21の裏面を二次転写ローラー33側に向けて強く押すことになる。このため、ニップ部の中心よりも上流側で、中間転写ベルト21の印加圧力が高くなる。
さらに、弾性部24bは、圧力の高い部分と低い部分とが混在すると、自ら変形して圧力を均すような作用がある。これにより、ピーク位置よりも上流側でピーク圧とほぼ等しくなる領域が形成される。
図7は、実施の形態1に係る二次転写部にて転写した際に、中間転写ベルトに印加される圧力と、中間転写ベルトの変位量を示す図である。図7を参照して、中間転写ベルト21に印加される圧力と、中間転写ベルト21の変位量について説明する。
上述のように、実施の形態1においては、ニップ部を通過する際に中間転写ベルトに印加される圧力分布において、ピーク位置よりも上流側でピーク圧とほぼ等しくなる領域が形成される。
このため、中間転写ベルト21上に位置する任意の一点がニップ部を通過する際に当該任意の一点に印加される圧力の圧力分布は、縦軸を圧力とし、横軸を時間とした場合に、図7中実線で示すように、時間が経過するにつれて圧力が増加する増加領域と、当該増加領域に連続し、時間の経過に対して圧力が一定となるフラット領域と、当該フラット領域に連続し、時間の経過に対して圧力が減少する減少領域と、を有することとなる。
なお、上記任意の一点が移動に伴ってフラット領域に滞在する時間(フラット領域を通過するのに掛かる時間)を、図7に示すように、ptで表している。
上記圧力分布に加えて、中間転写ベルトが圧力分布に基づく圧力を印加された際の中間転写ベルトの表面の変位量の変化を図7に示している。
図7中破線で示す変位量a’は、中間転写ベルト21が印加される圧力に比例して変化する変位量を示している。すなわち、中間転写ベルト21が印加される圧力に対する変位の遅延が無い状態を示している。
これに対して、図7中一点鎖線で示す変位量b’は、中間転写ベルト21の変位が圧力に対してdtだけ遅延して変化する変位量を示している。すなわち、実施の形態1における中間転写ベルト21の実際の変位を示している。
変位量b’は、変位量a’よりもdtだけ遅れて変位量の最大値に達する。変位量b’が最大値に達した時点において、中間転写ベルト21に印加される圧力はピーク値pとなっている。圧力分布において、中間転写ベルト21に印加される圧力が、減少し始めるのは、変位量b’が最大値に達した後である。このため、変位の遅延のある変位量b'の場合でも、変位の遅延のない変位量a'の場合と同じ最大値δ0を取ることができる。
このように、フラット領域に滞在する時間(フラット領域を通過する時間)ptと、中間転写ベルト21が圧力の変化に遅れて変形する遅延時間dtとの大小関係が、中間転写ベルト21の本来の変形能力を損なうことなく凹凸に対する追随性能が発揮されるか否かに大きく影響する。
pt≧dtの場合には、中間転写ベルト21の本来の変形能力が損なわれることなく発揮され、記録媒体の凹凸形状に十分に追従することができる。一方、pt<dtの場合には、中間転写ベルト21の本来の変形能力が十分に発揮されず、記録媒体の凹凸形状に十分に追従することができなくなる可能性が生じる。
以上のように、実施の形態1に係る画像形成装置1にあっては、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、中間転写ベルト21の本来の変形能力が損なわれることなく発揮され、記録媒体の凹凸形状に十分に追従することができる。この結果、高い凹凸性を有する記録媒体に対する良好な転写性を安定して実現することができる。
<フラット領域に滞在する滞在時間ptの算出方法1>
図8は、実施の形態1に係る二次転写部にて転写した際に、中間転写ベルトに印加される圧力を簡易的に表した図である。図9は、実施の形態1に係る二次転写部における転写条件を説明するための図である。図8および図9を参照して、中間転写ベルト21がニップ部を通過する際に任意の一点がフラット領域に滞在する滞在時間ptの算出方法について説明する。
図8に示すように、中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部を通過する際に当該任意の一点に印加される圧力の圧力分布は、対向ローラー24に回転トルクを付与しない状態において当該任意の一点がニップ部を通過する際に当該任意の一点に与えられる圧力の第1圧力分布PD1と、回転トルクが当該任意の一点に与える圧力の第2圧力分布PD2との和によって表されると想定することができる。
すなわち、図8に示すように、中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部を通過する際に当該任意の一点に印加される圧力の圧力分布は、ベルト進行方向に沿った圧力分布を上向きの三角形状に簡単化したものに、対向ローラー24に回転トルクを付与することにより発生する中間転写ベルト21への印加圧力を加えたものとすることができる。なお、回転トルクを付与することにより発生する中間転写ベルトへの印加圧力を図8中斜線部にて示している。
図8および図9に示すように、記録媒体の搬送速度をVsys[mm/sec]とし、第1圧力分布PD1において圧力がニップ部の入口で増加し始める位置から圧力が最大となる位置までの任意の一点の移動距離をw[mm]とし、対向ローラーに付与される回転トルクをT[N・m]とし、対向ローラーの半径をr[m]とし、上記転写ローラーの軸方向に平行な方向におけるニップ部の長さをL[m]とし、第1圧力分布PD1における圧力の最大値をp[kPa]とした場合に、上記任意の一点がフラット領域に滞在する時間pt[msec]が下記式(1)で表される。
上記式(1)は、以下のように算出することができる。対向ローラー24に回転トルクT[N・m]を付与することにより発生する中間転写ベルト21への押圧力Fa[N/m]は、対向ローラーの半径をr[m]とし、上記転写ローラーの軸方向に平行な方向におけるニップ部の長さをL[m]とした場合に、下記式(2)により表される。
Faは、図8の斜線部に示す三角形AEFの面積に相当する。
ここで、上記三角形AEFと、図8に示す三角形CBAとは、相似関係にあるため、中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部を通過する際に当該任意の一点に印加される圧力の圧力分布において、フラット領域の幅をd[mm]とし、第1圧力分布PD1において圧力がニップ部の入口で増加し始める位置から圧力が最大となる位置までの任意の一点の移動距離をw[mm]とし、第1圧力分布PD1における圧力の最大値をp[kPa]とした場合に、上記三角形AEFの高さp1は、下記式(3)により表される。
三角形AEFにおいて、底辺はdであり高さはp1であるため、三角形AEFの面積Sは、下記式(4)によって表される。
三角形AEFの面積Sは、上述のようにFaに相当するため、式(2)と式(4)との関係から以下の式(5)が得られる。
式(5)を変形して、圧力分布におけるフラット領域の幅dは、下記式(6)として表すことができる。
さらに、システム速度、すなわち記録媒体の搬送速度をVsys[mm/sec]とすると、任意の一点がフラット領域に滞在する時間pt[msec]は、下記式(7)で表される。
式(7)に式(6)を代入することにより、上記のように式(1)の関係が得られる。
上記式(1)によって、任意の一点がフラット領域に滞在する時間ptを算出することができるため、算出されたptに基づき、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtを容易に設定することができる。
<フラット領域に滞在する滞在時間ptの算出方法2>
図10は、実施の形態1に係る二次転写部にて転写した際に、中間転写ベルトに印加される圧力を測定する様子を示す図である。図11は、図10にて測定された圧力分布を示す図である。図10および図11を参照して、圧力分布の実測から算出されるフラット領域の滞在時間ptについて説明する。
図10に示すように、タクタイルセンサー60(例えば、ニッタ社製の面圧分布測定システムI-SCAN)を、対向ローラー24と二次転写ローラー33との間に挟み込む。より詳細には、タクタイルセンサー60を中間転写ベルト21と二次転写ローラー33との間に挟み込む。
このとき、中間転写ベルト21および二次転写ローラー33は静止状態とし、この状態で圧力分布を測定する。測定精度を上げるため、中間転写ベルト21の進行方向と中間転写ベルト21の幅方向とに沿って、二次元的に圧力分布を取り込み、幅方向に沿って平均化することにより、中間転写ベルト21の進行方向に沿った圧力分布を得ることが好ましい。
図11においては、対向ローラー24を回転させない場合にて測定された圧力分布を破線で示し、回転トルクを付与して対向ローラー24を回転させた場合にて測定された圧力分布を実線で示している。
実際の使用形態においては、中間転写ベルト21が搬送駆動され、二次転写ローラー33が回転する状況となるが、対向ローラーへの回転トルクによって発生する作用は、上記測定状態のように中間転写ベルト21が静止していても、中間転写ベルト21が移動している場合と同様である。このため、上記のように測定することで、実際の使用態様において、中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部を通過する際に当該任意の一点に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域の幅d[mm]を測定することができる。
システム速度、すなわち記録媒体の搬送速度をVsys[mm/sec]とした場合には、上記任意の一点がフラット領域に滞在する時間pt[msec]は、下記式(8)で表される。
上記式(8)によって、任意の一点がフラット領域に滞在する時間ptを算出することができるため、算出されたptに基づき、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtを容易に設定することができる。
<フラット領域に滞在する滞在時間ptの算出方法3>
図12は、実施の形態1に係る中間転写ベルトにおいて、動的粘弾性測定から算出される損失正接と、中間転写ベルトの変形の遅延時間との関係を示す図である。図12を参照して、中間転写ベルト21がニップ部を通過する際に任意の一点がフラット領域に滞在する滞在時間ptの算出方法について説明する。
中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部を通過する際に、任意の一点が圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtの指標として、動的粘弾性測定から求められる損失正接tanδが使用可能である。
動的粘弾性測定装置としては、例えば、エスアイアイ・ナノテクノジー株式会社製EXSTAR DMS7100が使用できる。
本測定装置を用いて、プログラム温度25℃、試料寸法・長さ20mmで幅10mm、引張力10gf(98mN)、測定周波数0.01〜100Hzの条件で、25℃における中間転写ベルト21の損失正接tanδが測定される。
損失正接tanδが大きいほど、応力に対応する歪みの位相遅れが大きくなる。このため、損失正接tanδが大きいほど、ニップ部での中間転写ベルト21の変形が、印加される圧力に対して遅れる。
損失正接tanδと遅延時間dtとの関係は、画像形成装置において好適に使用される範囲では、概ね直線関係と見なすことができる。このため、損失正接tanδと遅延時間dtとの関係は、aを係数として、下記式(9)で表すことができる。
上述のように、中間転写ベルト21の本来の変形能力を十分に発揮させるためには、上記滞在時間ptが遅延時間dt以上であればよく、上記式(9)を参照して、下記式(10)の関係が成り立てばよい。
なお、後述するように、係数aは、10.9とすることが好ましく、画像形成装置1においては、上記任意の一点がフラット領域に滞在する時間をpt[msec]とし、中間転写ベルト21の25℃における損失正接をtanδとした場合に、下記式(11)を満たすことが好ましい。
上記式(11)を用いることにより、損失正接tanδに基づいて滞在時間ptを容易に設定することができる。
<フラット領域に滞在する滞在時間ptの算出方法4>
中間転写ベルト21がニップ部を通過する際に任意の一点がフラット領域に滞在する滞在時間ptは、以下に説明する変位量測定装置100(図13参照)を用いて算出することができる。
<変位量測定装置>
図13(A)は、上記変位量測定装置100の構成を示す概略図であり、図13(B)および図13(C)は、当該変位量測定装置100に具備される加圧機構の動作を示す概略図である。図14(A)は、図13(A)に示す変位量測定装置100の下側ブロックを上方から見た斜視図であり、図14(B)は、図13(A)に示す変位量測定装置100の上側ブロックを下方から見た斜視図である。
図13(A)に示すように、変位量測定装置100は、下側ブロック110と、上側ブロック120と、加圧機構130と、張力付与機構140と、変位計150とを主として備えている。
図13(A)および図14(A)に示すように、下側ブロック110は、幅および奥行がいずれも50[mm]で高さが20[mm]のアルミブロックからなり、幅方向における上面111の中央部に幅が20[mm]の湾曲凸条面112を有している。湾曲凸条面112の曲率半径は、20[mm]である。
下側ブロック110の奥行方向に沿って位置する湾曲凸条面112の頂部のうち、当該奥行方向における中央部には、直径が1.25[mm](ただし、公差は±0.02[mm])の穴部113が設けられている。なお、当該穴部113の開口面から後退した位置には、変位計150のヘッド部151が配置されている。
図13(A)および図14(B)に示すように、上側ブロック120は、幅および奥行がいずれも50[mm]で高さが20[mm]のアルミブロックからなり、幅方向における下面121の中央部に幅が20[mm]の湾曲凹条面122を有している。湾曲凹条面122の曲率半径は、20.3[mm]である。
なお、下側ブロック110の上面111と湾曲凸条面112、上側ブロック120の下面121と湾曲凹条面122の表面の公差は、すべて0.02[mm]である。
図13(A)に示すように、下側ブロック110の上面111と上側ブロック120の下面121とは、互いに対向するように配置されている。ここで、下側ブロック110と上側ブロック120とが位置決めして配置されることにより、上述した湾曲凸条面112と湾曲凹条面122とは、鉛直方向に沿って重なるように配置されている。
上側ブロック120の上方には、加圧機構130が配置されている。加圧機構130は、ブロック状の部材である加圧部材131と、当該加圧部材131と上側ブロック120との間に配置されたスプリング132と、加圧部材131の上面に接するように配置されたカム133と、カム133に連結されたシャフト134と、シャフト134を回転駆動する駆動モーター135とを含んでいる。
図13(B)および図13(C)に示すように、駆動モーター135によってシャフト134が図中に示す矢印AR6方向に向けて回転駆動されることにより、シャフト134に連結されたカム133がシャフト134と共回りし、これに伴って加圧部材131が下方に向けて(図中に示す矢印AR7方向に向けて)押し下げられる。これにより、加圧部材131によって上側ブロック120がスプリング132を介して押し下げられることになり、上側ブロック120に鉛直下向きの荷重が付与されることになる。なお、当該荷重の大きさは、加圧部材131の押し下げ量dによって決まり、加圧部材131の押し下げ量dは、カム133の回転量によって調節できる。
図13(A)に示すように、下側ブロック110と上側ブロック120との間には、評価対象である中間転写ベルト21が配置され、当該中間転写ベルト21の両端は、下側ブロック110と上側ブロック120との間から外側に向けて引き出される。この中間転写ベルト21の両端には、張力付与機構140がそれぞれ接続される。
張力付与機構140は、フィルム141と、テープ142と、錘143とを含んでいる。フィルム141は、厚さ100[μm]のポリエチレンテレフタレート製のフィルムからなり、テープ142は、厚さ30[μm]のポリイミド製の粘着テープからなる。中間転写ベルト21の端部には、フィルム141の一端がテープ142によって貼り付けられ、フィルム141の他端には、錘143が取付けられる。ここで、錘143による引っ張り荷重は、44[N/m]に調節される。なお、評価する中間転写ベルト21が十分な大きさを有している場合には、上述したフィルム141およびテープ142を用いずに、中間転写ベルト21の両端に直接的に錘143を取付けてもよい。
変位計150は、中間転写ベルト21の表面の変位を検出するためのものであり、上述したように変位計150のヘッド部151は、中間転写ベルト21に対向するように下側ブロック110の穴部113内に設置されている。ここで、変位計150としては、キーエンス社製のマイクロヘッド型分光干渉レーザー変位計(分光ユニット(型式:SI−F01U)、ヘッド部(型式:SI−F01))を用いる。
<評価方法>
図15は、図13(A)に示す変位量測定装置100を用いたベルトの評価方法を説明するためのグラフである。また、図16は、図13(A)に示す変位量測定装置100を用いてベルトを加圧した状態における下側ブロックの穴部近傍の拡大断面図である。
中間転写ベルト21の評価は、前述した図13(A)に示す変位量測定装置100を用いて以下の手順にて行なう。なお、評価は、温度20[℃]、湿度50[%]の環境下にて行なう。
まず、中間転写ベルト21を変位量測定装置100にセットするに先立って、下側ブロック110の湾曲凸条面112と、上側ブロック120の湾曲凹条面122との接触部における圧力分布を測定する。圧力分布測定は、ニッタ社製のタクタイルセンサー(面圧力分布測定システムI−SCAN)を用いる。
具体的には、タクタイルセンサーの測定部を下側ブロック110と上側ブロック120との間に挿入し、加圧部材131を押し下げて30秒経過後の圧力分布を測定する。これを繰り返し、湾曲凸条面112と湾曲凹条面122との接触部およびその近傍における圧力が、200[kPa]±40[kPa]に収まるように調整する。
中間転写ベルト21は、測定に先立って、温度20[℃]、湿度50[%]の環境下で6時間以上保管する。評価する中間転写ベルト21の大きさは、下側ブロック110および上側ブロック120の幅方向に対応した長さを60[mm]とし、下側ブロック110および上側ブロック120の奥行方向に対応した長さを50[mm]とする。なお、下側ブロック110および上側ブロック120の幅方向に対応した長さは、35[mm]以上300[mm]以下の大きさであればよく、下側ブロック110および上側ブロック120の奥行方向に対応した長さは、50[mm]以上150[mm]以下であればよい。下側ブロック110および上側ブロック120の幅方向に対応した長さに不足がある場合には、上述したフィルム141およびテープ142を用いてその両端に錘143を取付ければよい。
次に、タクタイルセンサーを取外し、下側ブロック110と上側ブロック120とが軽く接触した状態となるように加圧機構130にて上側ブロック120を下降させた後、当該状態を30秒間保持して接触状態を安定化させる。その後、加圧機構130を用いて上側ブロック120を下側ブロック110に向けて押し付ける。ここでの加圧条件は、後述する中間転写ベルト21の加圧条件と同じとする(詳細は、後述の中間転写ベルト21の加圧条件を参照のこと)。
そして、加圧開始時点から3秒間にわたり、下側ブロック110の穴部113に対向する部分の上側ブロック120の湾曲凹条面122の位置を変位計150を用いて測定し、これを後述する中間転写ベルト21の変位量測定の基線に設定する。
次に、上側ブロック120を上昇させて下側ブロック110と上側ブロック120との接触を解除し、下側ブロック110の上面111上に中間転写ベルト21を載置する。このとき、中間転写ベルト21の第1主面21s1が下方(すなわち下側ブロック110側)を向くようにする。なお、当該中間転写ベルト21の載置に際しては、中間転写ベルト21と下側ブロック110との間および中間転写ベルト21と上側ブロック120との間に異物が混入しないように留意する。
次に、上側ブロック120と中間転写ベルト21とが軽く接触した状態となるように加圧機構130にて上側ブロック120を下降させた後、当該状態を30秒間保持して接触状態を安定化させる。その後、加圧機構130を用いて上側ブロック120を中間転写ベルト21に向けて押し付ける。
図15および図16に示すように、中間転写ベルト21への加圧は、湾曲凸条面112と湾曲凹条面122とによって挟み込まれることとなる中間転写ベルト21の被加圧領域PRが、たとえば加圧速度4[kPa/ms]で加圧力が増加するように加圧されることで200[kPa]の加圧力にまで到達した後、当該被加圧領域PRが、200[kPa]の加圧力で一定に加圧された状態が保持されるように行われる。図15を参照して、被加圧領域PRに対する加圧が開始された時点から200[kPa]の加圧力に到達した時点までの時間をt0[msec]と定義する。その後、加圧開始から3秒が経過した時点で中間転写ベルト21への加圧を解除する。
その際、加圧開始時点から加圧を解除するまでの3秒間にわたり、中間転写ベルト21の第1主面21S1のうちの下側ブロック110の穴部113に対応する部分である測定領域MRの位置を変位計150を用いて測定する。その際、中間転写ベルト21の測定領域MRを含む部分は、当該部分の周囲に位置する中間転写ベルト21の部位が下側ブロック110および上側ブロック120によって挟み込まれて圧縮されることで穴部113内に向けて膨らむように変形し、この変形に伴って測定領域MRの位置が変化する。
上述した基線の測定時および測定領域MRの位置の測定時においては、変位計150の出力を横河電機社製のデジタルオシロスコープDL1640によって取り込む。このときのサンプリング周期は、5[ms]とする。
次に、測定された測定領域MRの位置と上述した基線とをもとにこれらの差分を求めることにより、中間転写ベルト21の測定領域MRの変位を時系列データとして算出する。
なお、測定対象である中間転写ベルト21に対して、上述した測定領域MRの位置が異なることとなるように、下側ブロック110に対する中間転写ベルト21の載置位置を変更して、合計で10回にわたって上述した測定を行なう。
<典型的な変位のパターン>
上述した変位量測定装置100を用いた中間転写ベルトの評価方法を適用して弾性層を含む種々の中間転写ベルトの評価を行なった場合には、中間転写ベルトの測定領域の変位の挙動を示すパターンとして、典型的に以下のパターンが確認できる。図17は、実施の形態1に係る中間転写ベルトを図13に示す変位量測定装置にて評価した場合の、中間転写ベルトの変位量の変化を示す図である。
図17に示すように、加圧開始後において中間転写ベルト21を加圧する加圧力の増加に伴って中間転写ベルト21の測定領域MRの変位量が増加し、中間転写ベルト21を加圧する加圧力が200[kPa]に到達した時点(すなわちt0[msec])に遅延して中間転写ベルトの測定領域MRの変位に局所的なピークが発生する。その後、中間転写ベルトの測定領域MRの変位量が減少に転じ、最終的には時間の経過とともに漸減して所定の変位量に収束する。すなわち、当該パターンは、中間転写ベルト21の測定領域MRの変位の推移にオーバーシュート部分を有するものと言える。
<過渡変位の時定数τ>
一般的に、過渡現象の応答速度の指標として、時定数というものがある。ゴムのような弾性層の歪み変形について述べる場合、歪みの遅延時間、応力の緩和時間などを、時定数τと呼ぶことがある。時定数τが小さいほど、歪みの変形が速く、応力の緩和も速くなる。時定数τが大きいほど、歪みの変形が遅く、応力の緩和も遅くなる。時定数τは、変形の速さおよび変形からの戻りの速さを示す指標である。
(時定数τの測定方法)
時定数τは、中間転写ベルトによって大きく異なる。前述した変位量測定装置100を用いて測定する中間転写ベルトの変位量から、当該中間転写ベルトの時定数τを求めることができる。
図13,14を参照して説明した評価方法により、変位量測定装置100において加圧を開始してから最大圧に到達するまでの時間(すなわち、前述したt0)を変えながら変位量を測定し、変位量の最大値aおよび収束値bからオーバーシュート率Eを算出する。オーバーシュート率E[−]は、オーバーシュートの大きさを示すパラメータであり、E=(a−b)/bで算出される。このようにして得られた一連の測定結果を、横軸を加圧時間t0とし縦軸をオーバーシュート率Eとしてプロットする。
図18は、変位量測定装置100を用いて中間転写ベルトを加圧した場合における中間転写ベルト21の加圧時間t0とオーバーシュート率Eとの関係を示すグラフである。図18に示すように、加圧時間t0を長くしていったとき、すなわち加圧速度を小さくしていったとき、内部応力が相対的に早く緩和するようになる。したがって、内部応力の集中による過渡変位(オーバーシュート)がしにくくなって、オーバーシュート率Eが小さくなる。
図18に示すように、加圧時間t0を長くしていくとオーバーシュート率Eが指数関数的に減衰するように、一連の測定結果がプロットされる。これらのプロットを、時定数τと定数α[−]とを用いた次式のような指数関数にカーブフィッティングして、時定数τを求める。定数αとは、任意の係数である。
E=α×exp(−t0/τ)
再び図17に示すように、被加圧領域に対する加圧が開始された時点から圧力が最大値(200[kPa])に到達した時点までの第1時間(t0[msec])とし、被加圧領域に対する加圧が開始された時点から中間転写ベルト21の第1主面のうちの上記穴部113に対応する部分である測定領域の変位量が最大となるまでの第2時間をtx[msec]とした場合に、第2時間は、第1時間よりも大きくなっている。加えて、時定数tが大きい程、上記第2時間と第1時間の時間差であるΔt[msec]は、大きくなる。
具体的には、時定数が小さい中間転写ベルトを用いた場合における上記第2時間をt1とし、時定数が大きい中間転写ベルトを用いた場合における上記第2時間をt2とすると、t2は、t1よりも大きくなる。t1およびt2のいずれもt0よりも大きく、t1−t0をΔt1とし、t2−t0をΔt2とした場合には、Δt2>Δt1となる。
第2時間と第1時間との時間差であるΔtが大きくなるほど、ニップ部内での中間転写ベルト21の変形は、圧力に対して遅れる。
中間転写ベルト21上の任意の一点が圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtと上記Δtとの関係は、概ね直線関係となり、kを係数として、式(12)のように表すことができる。
上述のように、中間転写ベルト21の本来の変形能力を十分に発揮させるためには、上記滞在時間ptが遅延時間dt以上であればよく、上記式(12)を参照して、下記式(13)の関係が成り立てばよい。
なお、後述するように、係数kは、0.55とすることが好ましく、画像形成装置1においては、上記任意の一点がフラット領域に滞在する時間をpt[msec]とし、上記第2時間txと上記第1時間t0との差であるtx−t0をΔt[msec]とした場合に、下記式(14)を満たすことが好ましい。
上記式(14)を用いることにより、Δtに基づいて滞在時間ptを容易に設定することができる。
(実施の形態2)
図20は、実施の形態2に係る二次転写部の概略図である。図20を参照して、実施の形態2に係る二次転写部について説明する。
図20に示すように、実施の形態2に係る二次転写部は、実施の形態1に係る二次転写部と比較して、二次転写ローラー33が、導電性の材料から成る芯金33aと、当該芯金33aの周面を覆う導電性の弾性部33bとを含む点において相違する。
この場合においては、二次転写ローラー33は、対向ローラー24とほぼ同様に構成されるが、二次転写ローラー33の弾性部33bの硬度は、対向ローラー24の弾性部24bの硬度よりも大きくなっている。
このため、二次転写ローラー33と対向ローラー24とを圧接させた状態においては、二次転写ローラー33が対向ローラー24に食い込んだ状態となる。
この場合においても、ニップ部での回転方向が中間転写ベルト21のニップ部における回転方向と同じ向きとなるように、回転駆動部50が対向ローラー24に回転トルクを付与する。これにより、中間転写ベルト21に印加される圧力の圧力分布は、実施の形態1同様に、増加領域、フラット領域および減少領域を有することとなる。
実施の形態2に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態1に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態3)
図21は、実施の形態3に係る二次転写部の概略図である。図21を参照して、実施の形態3に係る二次転写部について説明する。
図21に示すように、実施の形態3に係る二次転写部は、実施の形態1に係る二次転写部と比較して、対向ローラー24が、導電性の材料から構成されており、転写ローラー33が、導電性の材料からなる芯金33aと、当該芯金33aの周面を覆う導電性の弾性部33bとを含んでいる点において相違する。
二次転写ローラー33と対向ローラー24とを圧接させた状態においては、対向ローラー24が二次転写ローラー33に食い込んだ状態となる。
この場合においては、ニップ部での回転方向が中間転写ベルト21のニップ部における回転方向と同じ向きとなるように、回転駆動部50が二次転写ローラー33に回転トルクを付与する。これにより、中間転写ベルト21に印加される圧力の圧力分布は、実施の形態1同様に、増加領域、フラット領域および減少領域を有することとなる。
実施の形態3に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態1に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
なお、実施の形態3においては、記録媒体を媒介して中間転写ベルト21に圧力が印加されることとなるため、中間転写ベルト21に印加される圧力が記録媒体によって若干分散されることなる。また、二次転写ローラー33の弾性部33bは、記録媒体の凹部を埋めるように変形するため、二次転写ローラー33から中間転写ベルト21に印加される圧力の一部が、記録媒体の凹凸形状に吸収されてしまう。
このため、実施の形態3においては、上記の圧力の分散および吸収を考慮して、実施の形態1よりも大きい回転トルクを二次転写ローラーに付与することが好ましい。
一方、実施の形態1のように、二次転写ローラー33が対向ローラー24に食い込むような場合には、以下に説明するように、凹凸紙の転写性を向上させるという本発明の作用効果が発揮されやすくなる。
実施の形態1においては、対向ローラー24が中間転写ベルト21の裏面を直接加圧するため、中間転写ベルトに圧力を十分伝えることができる。また、中間転写ベルトの裏面は、PI(ポリイミド)等の樹脂層で被覆されているため平滑である。このため、対向ローラー24の弾性部24bの変形が、記録媒体の凹凸に吸収されたりすることがない。
以上のような理由により、実施の形態1においては、実施の形態3と比較して、凹凸紙の転写性をより効果的に向上させることができる。
(実施の形態4)
図22は、実施の形態4に係る二次転写部の概略図である。図22を参照して、実施の形態4に係る二次転写部について説明する。
図22に示すように、実施の形態4に係る二次転写部は、実施の形態1に係る二次転写部と比較して、二次転写ローラー33および対向部材240Aの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
二次転写ローラー33は、導電性の材料からなる芯金33aと、当該芯金33aの周面を覆う導電性の弾性部33bとを含んでいる。二次転写ローラー33は、AR1方向に回転可能に構成されている。二次転写ローラー33は、AR3方向に押圧される。すなわち、二次転写ローラー33は、対向部材240Aに向けて押圧される。
対向部材240Aは、二次転写ローラー33に対向して配置されている。対向部材240Aは、パッド部材241と、保持部材242とを含む。保持部材242は、パッド部材241を保持する。
パッド部材241は、回転不能に構成されている。パッド部材241は、ブロック形状を有する。パッド部材241は、互いに相対する第1面241aおよび第2面241bを有する。第1面241aおよび第2面241bは、平面形状を有する。第1面241aは、中間転写ベルトに接触する。
パッド部材241は、中間転写ベルト21の裏面との間の摩擦力を抑制するために、低摩擦係数を有することが好ましい。また、パッド部材241は、二次転写ローラー33との間に所定の電界を発生させるための対向電極として、適度な電気抵抗を有することが好ましい。
パッド部材241としては、金属、樹脂、ゴムおよび発泡スポンジ等を採用することができる。
金属としては、SUS、およびアルミニウム合金等を用いることができる。樹脂としては、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂等を用いることができる。ゴムとしては、ポリウレタンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、シリコーンゴム等を用いることができる。
保持部材242は、パッド部材241の第2面241b側からパッド部材241を保持する。第2面241bに接触する保持部材242の当接面は、平面形状を有する。保持部材242は、二次転写ローラー33および対向部材240Aの圧接状態においても不動となるように画像形成装置1の筐体内に固定されている。保持部材242は、上記圧接状態において変形しないように構成されていることが好ましい。
二次転写ローラー33とパッド部材241の圧接状態においては、パッド部材241の第1面241aが平坦となっており、当該第1面241aに押圧されている部分の二次転写ローラー33の弾性部33bも平坦となっていることが好ましい。
二次転写ローラー33の弾性部33bの厚みを厚くすることにより、中間転写ベルト21に印加される圧力分布は、フラットに近づいていく。
対向部材240Aを上記のように構成した場合であっても、二次転写ローラー33の弾性部33bの硬度(弾性率)、二次転写ローラー33の外径、芯金径、弾性部33bの厚み、パッド部材241の形状を適切に選択することにより、中間転写ベルト21に印加される圧力の圧力分布は、実施の形態1同様に、ピーク圧付近で実質的にフラットになる。
このため、実施の形態4に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態1に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
なお、実施の形態4においては、パッド部材241の第1面241aが全体的に平坦であるため、パッド部材241と二次転写ローラーの圧接幅が、対向ローラー24を用いる場合と比較して、大きくなる。このため、中間転写ベルトに印加される圧力の圧力分布において、ピーク圧が低くなりやすい。
ピーク圧が不足する場合には、中間転写ベルトの変形が十分に引き起こされず、転写性が悪化することが懸念される。
このため、実施の形態4においては、ピーク圧が高くなるように、二次転写ローラー33をパッド部材241に向けて押圧する押圧力を高くすることが好ましい。
(実施の形態5)
図23は、実施の形態5に係る二次転写部の対向部材と二次転写ローラーとを分離して示す図である。図24は、実施の形態5に係る二次転写部の対向部材を示す図である。なお、図23および図24においては、便宜上のため対向部材に含まれる保持部材を省略している。図23および図24を参照して、実施の形態5に係る二次転写部について説明する。
図23および図24に示すように、実施の形態5に係る二次転写部は、実施の形態4と比較した場合に、パッド部材241Bの形状が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
パッド部材241Bは、ゴムおよびスポンジ等の弾性部材によって構成されている。パッド部材241Bは、二次転写ローラー33の軸方向に直交する断面形状が略台形形状となるように構成されている。パッド部材241Bは、互いに相対する第1面241aおよび第2面241bを有する。
第1面241aは、中央部に平坦な平坦面241a1、中央部の両端に傾斜する傾斜面241a2,241a3を有する。平坦面241a1は、ニップ部における記録媒体の搬送方向と略平行である。当該搬送方向に沿った平坦面241a1の幅は、fd1である。傾斜面241a2,241a3は、平坦面241a1から離れるにつれて、二次転写ローラー33から遠ざかるように傾斜する。
図25は、実施の形態5に係る二次転写部の対向部材と転写部材との圧接状態を示す図である。図25を参照して、対向部材と二次転写ローラー33との圧接状態について説明する。
図25に示すように、圧接状態においては、パッド部材241Bは、第1面241aが全体的に平坦となるように変形する。また、当該第1面241aに押圧されている部分の二次転写ローラー33の弾性部33bも平坦となっている。
ここで、上記圧接状態において、中間転写ベルト21に印加される圧力は、パッド部材241Bの圧縮変形量に応じて決定される。このため、圧縮変形量の大きい平坦面241a1において、中間転写ベルトに印加される圧力が高くなり、平坦面241a1から離れるにつれて、圧力が低くなる。平坦面241a1における変形量は、ほぼ一定であるため、中間転写ベルト21において平坦面241a1に対応する部分に印加される圧力は、ほぼ均一となる。
図26は、実施の形態5に係る二次転写部にて転写した際に、中間転写ベルトに印加される圧力分布を示す図である。図26に示すように、上記のようにパッド部材241Bが変形することにより、上記圧接状態において中間転写ベルト21に印加される圧力分布は、実施の形態1同様に、増加領域、フラット領域、減少領域を有することとなる。
そして、フラット領域の幅dは、上記平坦面241a1の幅fd1に応じて決定される。フラット領域の幅dは、上記幅fd1が大きくなるほど大きくなる。
実施の形態5に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態4に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
加えて、パッド部材241Bの第1面241aの形状を上記のようにすることにより、中間転写ベルト21に印加される圧力が、パッド部材241Bの圧縮変形量に応じて決定される。このため、実施の形態4のように、第1面241aが全体的に平坦であり、中間転写ベルトに印加される圧力分布が全体的にフラットとなる構成と比較して、実施の形態5では、上記圧力分布において、圧力がピークとなる幅dの領域以外は、圧力が低くなる。この結果、必要なピーク圧とフラット領域を確保しながら、中間転写ベルト21に印加される押圧力を全体的に抑制することができる。
これにより、パッド部材241Bと中間転写ベルト21との間の摩擦力を低減することができる。この結果、中間転写ベルト21をスムーズに搬送することができ、画像が乱れることを抑制することができる。また、パッド部材241Bの摩耗を抑制できるため、摩耗粉による画像ノイズの発生も抑制することができる。
(実施の形態6)
図27は、実施の形態6に係る二次転写部の概略図である。図28は、実施の形態6に係る二次転写部の対向部材を示す図である。図27および図28を参照して、実施の形態6に係る二次転写部について説明する。
図27および図28に示すように、実施の形態6に係る二次転写部は、実施の形態4に係る二次転写部と比較した場合に、対向部材240Cの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
対向部材240Cは、パッド部材241、保持部材242、および補強部材243を含む。
パッド部材241は、ブロック形状を有する。パッド部材241は、ゴムおよびスポンジ等の弾性部材によって構成されている。パッド部材241の硬度は、補強部材243の硬度よりも小さい。
保持部材242は、実施の形態1同様の構成を有する。補強部材243は、パッド部材241に埋設されている。補強部材243は、パッド部材241の第2面241b側に位置する。補強部材243は、二次転写ローラー33の軸方向と平行な方向に沿って延在する。補強部材243の幅は、fd2である。補強部材243は、パッド部材241よりも硬度が大きい金属、樹脂、およびゴム等によって構成されている。
二次転写ローラー33とパッド部材241の圧接状態においては、パッド部材241の第1面241aが平坦となっており、当該第1面241aに押圧されている部分の二次転写ローラー33の弾性部33bも平坦となっている。
ここで、上記のように、補強部材243の硬度は、パッド部材241の硬度よりも大きくなっている。このため、上記圧接状態においては、補強部材243に対応する位置において、中間転写ベルト21に印加される圧力が高くなり、その他の部分は、圧力が低くなる。これにより、上記圧接状態において中間転写ベルト21に印加される圧力分布は、実施の形態1同様に、増加領域、フラット領域、減少領域を有することとなる。
そして、フラット領域の幅は、上記補強部材243の幅fd2に応じて決定される。フラット領域の幅は、上記幅fd2が大きくなるほど大きくなる。
実施の形態6に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態4に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
加えて、実施の形態6では補強部材243を備えることにより、実施の形態4のように第1面241aが全体的に平坦であり中間転写ベルトに印加される圧力分布が全体的にフラットとなる構成と比較して、上記圧力分布において、圧力がピークとなる幅dの領域以外は、圧力が低くなる。この結果、必要なピーク圧とフラット領域を確保しながら、中間転写ベルト21に印加される押圧力を全体的に抑制することができる。
これにより、パッド部材241と中間転写ベルト21との間の摩擦力を低減することができる。この結果、中間転写ベルト21をスムーズに搬送することができ、画像が乱れることを抑制することができる。また、パッド部材241の摩耗を抑制できるため、摩耗粉による画像ノイズの発生も抑制することができる。
(実施の形態7)
図29は、実施の形態7に係る二次転写部の概略図である。図30は、実施の形態7に係る二次転写部の非圧接状態における対向部材を示す図である。図29および図30を参照して、実施の形態7に係る二次転写部について説明する。
図29に示すように、実施の形態7に係る二次転写部は、実施の形態4に係る二次転写部と比較した場合に、二次転写ローラー33および対向部材240Dの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
二次転写ローラー33は、導電性の材料によって構成されている。二次転写ローラー33は、SUS等の金属から成る剛体ローラーである。
対向部材240Dは、パッド部材241および保持部材242を含む。パッド部材241は、二次転写ローラー33およびパッド部材241が圧接されていない非圧接状態においては、二次転写ローラー33の周面を受入可能な湾曲形状を有する。
パッド部材241は、樹脂、およびゴム等の弾性部材によって構成されている。パッド部材241は、中間転写ベルト21との間の摩擦力を抑制するために、低摩擦係数の材料によって構成されていることが好ましい。保持部材242は、二次転写ローラー33の周面に対応した湾曲形状を有する。
二次転写ローラー33およびパッド部材241が圧接された圧接状態においては、パッド部材241の第1面241aは、二次転写ローラー33の周面に応じた湾曲形状となる。これにより、中間転写ベルト21が、二次転写ローラー33側を向く表面が凹となるように湾曲される。すなわち、中間転写ベルト21のトナー担持面が面内方向に圧縮される。この場合においても、中間転写ベルト21に印加される圧力の圧力分布は、実施の形態1同様に、増加領域、フラット領域、減少領域を有することとなる。
実施の形態7に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態4に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
また、上述のように、中間転写ベルト21のトナー担持面が面内方向に圧縮されることにより、圧縮された弾性層が記録媒体の凹部に向けて変形しやすくなる。これにより、記録媒体の凹部への転写性が更に向上する。
(変形例)
図31は、変形例に係る二次転写部の非圧接状態における対向部材を示す図である。図31を参照して、変形例に係る対向部材について説明する。
図31に示すように、変形例に係る対向部材のパッド部材241は、非圧接状態において、平板形状を有する。このパッド部材241は、二次転写ローラー33の周面に対応した湾曲形状を有する保持部材242によって変形が案内される。これにより、圧接状態においては、パッド部材241の第1面241aは、実施の形態7同様に、二次転写ローラー33の周面に応じて湾曲する。このようにパッド部材241が構成されてもよい。
(実施の形態8)
図32は、実施の形態8に係る二次転写部の概略図である。図32を参照して、実施の形態8に係る二次転写部について説明する。
図32に示すように、実施の形態8に係る二次転写部は、実施の形態7に係る二次転写部と比較した場合に、対向部材240Eの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
対向部材240Eは、パッド部材241、保持部材242、および補強部材243を含む。パッド部材241および保持部材242は、実施の形態7とほぼ同様に構成されている。
補強部材243は、パッド部材241に埋設されている。補強部材243は、パッド部材241の第2面241b側に位置する。補強部材243は、二次転写ローラー33の周面に対応して湾曲している。補強部材243は、二次転写ローラー33の軸方向と平行な方向に沿って延在する。補強部材243は、パッド部材241よりも硬度が大きい金属、樹脂、およびゴム等によって構成されている。
上記のように、補強部材243の硬度は、パッド部材241の硬度よりも大きくなっている。このため、上記圧接状態においては、補強部材243に対応する位置において、中間転写ベルト21に印加される圧力がより高くなり、その他の部分は、圧力が低くなる。これにより、上記圧接状態において中間転写ベルト21に印加される圧力分布は、実施の形態1同様に、増加領域、フラット領域、減少領域を有することとなる。
実施の形態8に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態7に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態9)
図33は、実施の形態9に係る二次転写部の概略図である。図33を参照して、実施の形態9に係る二次転写部について説明する。
図33に示すように、実施の形態9に係る二次転写部は、実施の形態4に係る二次転写部と比較した場合に、対向部材240Fの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
対向部材240Fにあっては、パッド部材241の第1面241aと中間転写ベルト21との間に低摩擦シート244が設けられている。
低摩擦シート244としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、およびPC(ポリカーボネート)等の樹脂で構成されるシート部材、ならびに、SUS等の金属で構成されるシート部材を用いることができる。シート部材の厚さは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。低摩擦シート244は、摩擦係数が小さく、柔軟性、および耐摩耗性が高いことが好ましい。
なお、低摩擦シートに代えて、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂で、パッド部材241の第1面241aを被覆してもよい。
以上のように構成される場合であっても、実施の形態9に係る画像形成装置は、実施の形態4に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態10)
図34は、実施の形態10に係る二次転写部の概略図である。図34を参照して、実施の形態10に係る二次転写部について説明する。
図34に示すように、実施の形態10に係る二次転写部は、実施の形態8に係る二次転写部と比較した場合に、対向部材240Gの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
対向部材240Gにあっては、パッド部材241の第1面241aと中間転写ベルト21との間に低摩擦シート244が設けられている。低摩擦シート244としては、実施の形態9に係る低摩擦シート244と同様のものを用いることができる。
なお、低摩擦シート244に代えて、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂で、パッド部材241の第1面241aを被覆してもよい。
以上のように構成される場合であっても、実施の形態10に係る画像形成装置は、実施の形態8に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態11)
図35は、実施の形態11に係る二次転写部の概略図である。図35を参照して、実施の形態11に係る二次転写部について説明する。
図35に示すように、実施の形態11に係る二次転写部は、実施の形態4に係る二次転写部と比較した場合に、対向部材240Hの構成が相違する。その他の構成についてはほぼ同様である。
実施の形態11においては、画像形成装置は、中間転写ベルト21が巻き掛けられる支持ローラー70を含み、支持ローラー70が回転駆動することにより、中間転写ベルト21が回転する。
二次転写ローラー33は、導電性の材料からなる芯金33aと、当該芯金33aの周面を覆う導電性の弾性部33bとを含んでいる。二次転写ローラー33は、AR1方向に回転可能に構成されている。二次転写ローラー33は、AR3方向に押圧される。すなわち、二次転写ローラー33は、対向部材240Hに向けて押圧される。
対向部材240Hは、二次転写ローラー33に対向して配置されている。対向部材240Hは、流体Lが封入された流体袋245と、流体袋245を保持する保持部材242とを含む。
流体袋245としては、袋状部材の材質としては、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の樹脂部材、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、クロロプレンゴム等のゴム材を用いることができる。
流体袋245は、柔軟性および耐摩耗性を有することが好ましい。流体袋245は、内部に封入する材料に対して耐性を有することが好ましい。流体袋245は、二次転写ローラー33との間に所定の電界を発生させるための対向電極として、適度な電気抵抗を有することが好ましい。流体Lが密閉された密閉状態において、流体袋245は、略直方体形状を有する。
流体袋245内に封入される流体Lとしては、気体および液体等を用いることができる。気体としては、通常の空気、窒素ガス、および二酸化炭素ガス等を用いることができる。液体としては、水、およびシリコーンオイル等の各種工業用オイルを用いることができる。
流体袋245の内圧は相当程度高くなっており、二次転写ローラー33と対向部材240Hとを圧接させた圧接状態においては、流体袋245が二次転写ローラー33に食い込む。これにより、流体袋245に押圧されている部分の二次転写ローラー33の弾性部33bが略平坦となる。
上記圧接状態において、流体袋245内の圧力は均一となる。このため、中間転写ベルト21に印加される圧力の圧力分布は、圧力のピーク付近で略一定となるフラット領域を確保しやすくなる。当該圧力分布は、実施の形態4同様に、増加領域、フラット領域、減少領域を有する。
実施の形態11に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態4に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態12)
図36は、実施の形態12に係る二次転写部の概略図である。図36を参照して、実施の形態12に係る二次転写部について説明する。
図36に示すように、実施の形態12に係る二次転写部は、実施の形態11に係る二次転写部と比較した場合に、二次転写ローラー33の構成が相違する。その他の構成は、ほぼ同様である。
二次転写ローラー33は、導電性の材料によって構成されている。二次転写ローラー33は、SUS等の金属から成る剛体ローラーである。
二次転写ローラー33と対向部材240Hとを圧接させた圧接状態においては、二次転写ローラー33が流体袋245に食い込む。これにより、流体袋245が、二次転写ローラー側を向く表面が凹となるように湾曲される。すなわち、中間転写ベルト21のトナー担持面が面内方向に圧縮される。この場合においても、中間転写ベルト21に印加される圧力の圧力分布は、実施の形態11同様に、増加領域、フラット領域、減少領域を有することとなる。
実施の形態12に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態11に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態13)
図37は、実施の形態13に係る二次転写部の概略図である。図37を参照して、実施の形態13に係る二次転写部について説明する。
図37に示すように、実施の形態13に係る二次転写部は、実施の形態11に係る二次転写部と比較した場合に、対向部材240Iの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
対向部材240Iは、流体Lが密封された流体袋245が略円柱形状を有しており、当該流体袋245を保持する保持部材242が湾曲形状を有する。
二次転写ローラー33と対向部材240Iとを圧接させた圧接状態においては、流体袋245および二次転写ローラー33の弾性部33bの当接部が互いに略平坦となる。
この場合においても、中間転写ベルト21に印加される圧力の圧力分布は、圧力のピーク付近で略一定となるフラット領域を確保しやすくなる。当該圧力分布は、実施の形態4同様に、増加領域、フラット領域、減少領域を有する。
実施の形態13に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態11に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
なお、実施の形態13においては、流体袋245の形状が略円柱形状である場合を例示して説明したが、これに限定されず、二次転写ローラー21の軸方向と直交する断面が多角形となる多角柱形状であってもよいし、当該断面が、楕円および卵型等のオーバル形状となる柱状形状であってもよい。
(実施の形態14)
図38は、実施の形態14に係る二次転写部の概略図である。図38を参照して、実施の形態14に係る二次転写部について説明する。
図38に示すように、実施の形態14に係る二次転写部は、実施の形態13に係る二次転写部と比較した場合に、二次転写ローラー33が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
二次転写ローラー33は、導電性の材料によって構成されている。二次転写ローラー33は、SUS等の金属から成る剛体ローラーである。
二次転写ローラー33と対向部材240Iとを圧接させた圧接状態においては、二次転写ローラー33が流体袋245に食い込む。これにより、流体袋245が、二次転写ローラー側を向く表面が凹となるように湾曲される。すなわち、中間転写ベルト21のトナー担持面が面内方向に圧縮される。この場合においても、中間転写ベルト21に印加される圧力の圧力分布は、実施の形態13同様に、増加領域、フラット領域、減少領域を有することとなる。
実施の形態14に係る画像形成装置においても、中間転写ベルト21の任意の一点がニップ部を通過する際に印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間ptが、上記任意の一点が上記圧力分布における増加領域とフラット領域との境界に到達した時間から、中間転写ベルト21の変形量がピークとなった時間までの遅延時間dtよりも長くすることにより、実施の形態13に係る画像形成装置とほぼ同様の効果が得られる。
(第1検証実験)
図39は、第1検証実験の条件および結果を示す図である。図39を参照して、第1検証実験について説明する。第1検証実験においては、中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部を通過する際に、上記任意の一点がフラット領域に滞在する時間pt[msec]と中間転写ベルト21の25℃における損失正接tanδとの関係を調べた。具体的には、図39中における実施例1〜8、比較例1〜6に示す条件にて、凹凸紙に印刷された画像の評価を行なった。なお、実施例1〜8、比較例1〜6の画像評価を行なうに際して、画像形成装置として、実施の形態1に係る画像形成装置の構成とほぼ同様の構成を有するものを用いた。
具体的には、中間転写ベルト21としては、基層の材質がポリイミドであり、弾性層の材質がニトリルゴムであるものを用いた。この際、基層の厚みは、80[μm]とし、弾性層の厚みを200[μm]とした。弾性層に含有される樹脂や添加剤、架橋剤等の種類や量を種々調整することで弾性層の組成が異なる中間転写ベルトを複数試作した。
試作したベルトを動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノジー株式会社製EXSTAR DMS7100)を用いて測定を行い、25℃におけるtanδを得た。tanδの測定は、プログラム温度25℃、試料寸法・長さ20mmで幅10mm、引張力10gf(98mN)、測定周波数0.01〜100Hzの条件で行った。
これらの各ベルトを中間転写ベルトとして適用した画像形成装置を用いて、温度20℃、湿度50%、二次転写ローラーおよび対向ローラーの外周面の線速度(システム速度)300[mm/sec]の条件のもとに、A4サイズの用紙への画出し評価を行なった。
画像形成装置の二次転写ローラーは、直径40mmの金属(材質はSUS)の剛体ローラーとした。対向ローラーは、芯金の周りにスポンジとゴムとからなる弾性層を設けた、弾性ローラーとした。マイクロゴム硬度計(高分子計器社製MD−1)で計測した対向ローラーの弾性層の硬度は40度であった。二次転写ローラーが剛体ローラーで、対向ローラーが弾性ローラーであるので、二次転写ローラーが対向ローラーに食い込むような関係である。二次転写部におけるピーク圧は200kPaであった。二次転写ローラーの軸方向に平行なニップ部の長さは、340mm(0.34m)であった。
転写性の良否の確認には、特種東海製紙株式会社製のエンボス紙、商品名レザック66(レザックは登録商標)を使用した。このエンボス紙の坪量は、302[g/m2]である。形成する画像は、ベタ画像とした。判定に際しては、マイクロデンシトメーターを用いてシャープで深さの深い凹部の反射濃度と凸部の反射濃度とを測定し、これらの濃度差を算出した。濃度差が0.40未満である場合には、「良」と判定し、濃度差が0.40以上である場合には、「不可」と判定した。
実施例1〜4、比較例1〜3においては、対向ローラー24として、半径10[mm](0.01m)のローラーを用いた。このときのニップ入口(ベルト搬送方向において圧力が増加し始める地点)から圧力が最大となる位置までの上記任意の一点の移動距離wは、2.2[mm]であった。対向ローラー24に付与する回転トルクは、図39の通り、中間転写ベルトの回転に伴って従動する状態における回転トルクを0[N・m]とし、0[N・m]から0.1[N・m]まで変化させた。
この際、上記任意の一点が、中間転写ベルトに印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間pt[msec]は、図39に記載の通りとなった。
なお、上記任意の一点がフラット領域に滞在する時間pt[msec]は、上述の実施の形態1に記載のように、記録媒体の搬送速度をVsys[mm/sec]とし、上記第1圧力分布PD1において圧力がニップ部の入口で増加し始める位置から圧力が最大となる位置までの任意の一点の移動距離をw[mm]とし、対向ローラーに付与される回転トルクをT[N・m]とし、対向ローラーの半径をr[m]とし、上記転写ローラーの軸方向に平行な方向におけるニップ部の長さをL[m]とし、第1圧力分布PD1における圧力の最大値をp[kPa]とした場合に、下記式(15)で表される。
対向ローラー24に付与する回転トルクを少しずつ増加させながら、画像評価を行ったところ、凹凸紙転写性が不良から良に変わるときの条件は、実施例3に示す条件であった。すなわち、実施例3の条件で、上記滞在時間ptと上記遅延時間dtとが釣り合っているということになる。ここで、上述のフラット領域に滞在する滞在時間ptの算出方法3にて記載したように、遅延時間dtと上記損失正接tanδとは、dt=a・tanδの関係が成立する。
実施例3における上記滞在時間ptは、1.20[msec]であり、損失正接tanδは、0.110であるため、上記係数aは、1.20/0.110=10.9とすることが適切であると判明した。
実施例1〜4においては、凹凸紙に対する転写性は良好であり、上記滞在時間ptと上記損失正接tanδの関係が、pt≧10.9×tanδの関係を満たしていた。
一方、比較例1〜3においては、凹凸紙に対する転写性は不良であり、上記滞在時間ptと上記損失正接tanδの関係は、pt<10.9×tanδとなっていた。
実施例5〜8、比較例4〜6においては、対向ローラー24として、半径14[mm](0.014m)のローラーを用いた。このときのニップ入口(ベルト搬送方向において圧力が増加し始める地点)から圧力が最大となる位置までの上記任意の一点の移動距離wは、2.4[mm]であった。対向ローラー24に付与する回転トルクは、図39の通り、中間転写ベルトの回転に伴って従動する状態における回転トルクを0[N・m]とし、0[N・m]から0.12[N・m]まで変化させた。
この場合においても、実施例5〜8においては、凹凸紙に対する転写性は良好であり、上記滞在時間ptと上記損失正接tanδの関係が、pt≧10.9×tanδの関係を満たしていた。
一方、比較例4〜6においては、凹凸紙に対する転写性は不良であり、上記滞在時間ptと上記損失正接tanδの関係は、pt<10.9×tanδとなっていた。
以上の結果より、pt≧10.9×tanδの関係を満たすことにより、凹凸紙に対して良好な転写性が得られることが実験的にも確認されたと言える。
(第2検証実験)
図40は、第2検証実験の条件および結果を示す図である。図40を参照して、第2検証実験について説明する。第2検証実験においては、上述の変位量測定装置100を用いて中間転写ベルトの変位量の変化を測定した。この際、被加圧領域に対する加圧が開始された時点から圧力が最大値(200[kPa])に到達した時点までの第1時間(t0[msec])とし、被加圧領域に対する加圧が開始された時点から中間転写ベルト21の第1主面のうちの上記穴部113に対応する部分である測定領域の変位量が最大となるまでの第2時間をtx[msec]とした場合に、上記第2時間と上記第1時間の時間差であるΔt[msec]と、中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部を通過する際に上記任意の一点がフラット領域に滞在する時間pt[msec]との関係を調べた。具体的には、図40中における実施例9〜14、比較例7〜12に示す条件にて、凹凸紙に印刷された画像の評価を行なった。なお、実施例9〜14、比較例7〜12の画像評価を行なうに際して、画像形成装置として、実施の形態1に係る画像形成装置の構成とほぼ同様の構成を有するものを用いた。
第2検証実験においても第1検証実験と同等の構成を有する中間転写ベルトを準備した。この際、弾性層に含有される樹脂や添加剤、架橋剤等の種類や量を種々調整することで弾性層の組成が異なる中間転写ベルトを複数試作した。
上述の変位量測定装置を用いて試作した各中間転写ベルトに対して評価を行ない、Δtを得た。
これらの各ベルトを中間転写ベルトとして適用した画像形成装置を用いて、温度20℃、湿度50%、二次転写ローラーおよび対向ローラーの外周面の線速度(システム速度)300[mm/sec]の条件のもとに、A4サイズの用紙への画出し評価を行なった。
なお、検証実験2においても、二次転写ローラーおよび対向ローラーとして第1検証実験と同等のものを用いた。転写性の良否の確認も第1検証実験同様に評価した。
実施例9〜11、比較例7〜9においては、対向ローラー24として、半径10[mm](0.01m)のローラーを用いた。このときのニップ入口(ベルト搬送方向において圧力が増加し始める地点)から圧力が最大となる位置までの上記任意の一点の移動距離wは、2.2[mm]であった。対向ローラー24に付与する回転トルクは、図40の通り、中間転写ベルトの回転に伴って従動する状態における回転トルクを0[N・m]とし、0[N・m]から0.2[N・m]まで変化させた。
この際、上記任意の一点が、中間転写ベルトに印加される圧力の圧力分布におけるフラット領域に滞在する時間pt[msec]は、図40に記載の通りとなった。
対向ローラー24に付与する回転トルクを少しずつ増加させながら、画像評価を行ったところ、凹凸紙転写性が不良から良に変わるときの条件は、比較例7と実施例10との間に位置することがわかった。この場合においては、上記滞在時間ptが少なくとも略3.30[msec]となる場合に、上記遅延時間dtと釣り合うとした。ここで、上述のフラット領域に滞在する滞在時間ptの算出方法4にて記載したように、遅延時間dtと上記Δtとは、dt=k・Δtの関係が成立する。
上記滞在時間ptが3.30[msec]の場合に、これと釣り合う上記遅延時間dtは、6.0[msec]であるため、上記係数kは、3.30/6.0=0.55とすることが適切であるとした。
実施例9〜11においては、凹凸紙に対する転写性は良好であり、上記滞在時間ptとΔtとの関係は、pt≧0.55×Δtの関係を満たしていた。
一方、比較例7〜9においては、凹凸紙に対する転写性は不良であり、上記滞在時間ptとΔtとの関係は、pt<0.55×Δtとなっていた。
実施例12〜14、比較例10〜12においては、対向ローラー24として、半径14[mm](0.014m)のローラーを用いた。このときのニップ入口(ベルト搬送方向において圧力が増加し始める地点)から圧力が最大となる位置までの上記任意の一点の移動距離wは、2.4[mm]であった。対向ローラー24に付与する回転トルクは、図39の通り、中間転写ベルトの回転に伴って従動する状態における回転トルクを0[N・m]とし、0[N・m]から0.24[N・m]まで変化させた。
この場合においても、実施例12〜14においては、凹凸紙に対する転写性は良好であり、上記滞在時間ptとΔtとの関係は、pt≧0.55×Δtの関係を満たしていた。
一方、比較例10〜12においては、凹凸紙に対する転写性は不良であり、上記滞在時間ptとΔtとの関係は、pt<0.55×Δtとなっていた。
以上の結果より、pt≧0.55×Δtの関係を満たすことにより、凹凸紙に対して良好な転写性が得られることが実験的にも確認されたと言える。
上述した実施の形態1から14においては、転写部材および対向部材の少なくとも一方が、ローラー形状を有し、回転可能に構成される場合を例示して説明したが、これに限定されない。ニップ部において中間転写ベルト21に印加される圧力の圧力分布が、ピーク位置でフラット領域を有する限り、転写部材および対向部材の双方が、非回転のパッド部材によって構成されていてもよい。
以上、今回発明された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。