JP2018141091A - 電離放射線重合性組成物、電離放射線硬化フィルム及びこの電離放射線硬化フィルムの製造方法 - Google Patents

電離放射線重合性組成物、電離放射線硬化フィルム及びこの電離放射線硬化フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乾燥状態において脆性と靭性をかねそろえ、表面のタック性が低く、かつ、水やアルコールに湿潤させることで膨潤し、柔軟性を有するゲル特性を示す電離放射性硬化フィルム及びその製造方法、並びに電離放射線硬化フィルム形成用の電離放射線重合性組成物を提供する。【解決手段】電離放射線硬化フィルムは、電離放射線重合性有機モノマーと、粘土鉱物と、電離放射線重合性有機樹脂とを含んだ電離放射線重合性組成物の塗液の硬化膜よりなり、電離放射線重合性有機モノマーが、(メタ)アクリルアミドであり、電離放射線重合性有機樹脂が、ウレタン骨格と1つ以上の(メタ)アクリロイル基とを含み、電離放射線重合性組成物100重量部のうち、電離放射線重合性有機樹脂が0.25重量部以上7.00重量部以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、乾燥状態で高い柔軟性と引張り強度を有し、水やアルコールに浸漬することで高い膨潤性を示し、乾燥させると元の形状に戻る可逆性を有する、連続成膜可能な電離放射線硬化フィルムとその製造方法に関する。また、本発明は、上記電離放射線硬化フィルム形成用の電離放射線重合性組成物に関する。
電離放射線硬化フィルムは、パソコンやスマートフォンなどのフラットパネルディスプレイの表面を保護するハードコートフィルムに代表されるエレクトロニクス分野をはじめ、エネルギー、医療、食品、建装材など様々な分野で活用されている。
電離放射線硬化フィルムは、複数の架橋点を一分子内に有する多官能分子を導入することで、フィルム内部で高分子鎖による三次元架橋構造を形成し、そのフィルムの強度や伸度といった靭性を制御できることがひとつの特徴である。
近年では、高分子の三次元架橋構造を利用し、高強度で高伸張な特性を示すヒドロゲルが研究されている(非特許文献1参照)。高強度高伸度を示すゲルには、水溶性有機高分子と水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物とからなる無機有機複合ヒドロゲルなども報告されており(特許文献1、非特許文献2)、二次電池用電解質ゲルや細胞培養基材、筋肉や関節をサポートする医療用圧力分散剤といった多様な用途に適用されている。
ヒドロゲルは多量な水分を高分子の三次元架橋構造内部に保持することで、高強度で高伸度な特性を発現しているが、乾燥が進行することでその特性は徐々に失われ、完全に乾燥すると柔軟性がなく、加工性に劣る性質を示すことが問題であった。そこで、特許文献2には、乾燥時でもフィルムの柔軟性を失わず、湿潤時には高伸度なゲル特性を示すポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含むラジカル重合性モノマーと水膨張性粘土鉱物とからなる無機有機複合体について開示されている。
特開2002−53629号公報 特開2010−254800号公報
J.P.Gong, Y.Katsuyama, T.Kurokawa, Y.Osada, Advanced Materials 2003,15,1155−1158 K.Haraguchi, T.Takehisa, Advanced Materials 2002,14,1120−1124
しかしながら、特許文献2に開示されている無機有機複合体のフィルムは、乾燥時の強度が10MPa未満であり、かつ、伸びが310%〜960%と高いことから、乾燥状態においてフィルム基材として活用するには脆性と靭性のバランスが悪いことが問題であった。また、この無機有機複合体の作製方法として、水溶媒中でラジカル重合性モノマーを重合し、その後、水分を乾燥工程により除去する工程が挙げられているが、重合により三次元架橋構造を形成した無機有機複合体には、その架橋構造内に水分子が保持されているため、乾燥には非常に大きなエネルギーと時間を必要とし、連続塗工によるフィルムの大量作製には不適であった。さらに、この無機有機複合体は、その高い柔軟性と高い吸湿性から、表面に多少の粘着性(タック性)を有しており、フィルムを連続巻取りによるロール形態で回収して保管した場合、フィルム同士が圧着され、使用時に剥離しづらいといった問題があった。
本発明は、乾燥状態において脆性と靭性をかねそろえ、表面のタック性が低く、かつ、水やアルコールに湿潤させることで膨潤し、柔軟性を有するゲル特性を示す電離放射性硬化フィルム及びその製造方法、並びに電離放射線硬化フィルム形成用の電離放射線重合性組成物を提供することを目的とする。
本発明は、電離放射線重合性有機モノマーと、粘土鉱物と、電離放射線重合性有機樹脂とを含んだ電離放射線重合性組成物であって、電離放射線重合性有機モノマーが、(メタ)アクリルアミドであり、電離放射線重合性有機樹脂が、ウレタン骨格と1つ以上の(メタ)アクリロイル基とを含み、電離放射線重合性組成物100重量部のうち、電離放射線重合性有機樹脂が0.25重量部以上7.00重量部以下である。
また、本発明は、電離放射線重合性有機モノマーと、粘土鉱物と、電離放射線重合性有機樹脂とを含んだ電離放射線重合性組成物の塗液の硬化膜よりなる電離放射線硬化フィルムであって、電離放射線重合性有機モノマーが、(メタ)アクリルアミドであり、電離放射線重合性有機樹脂が、ウレタン骨格と1つ以上の(メタ)アクリロイル基とを含み、電離放射線重合性組成物100重量部のうち、電離放射線重合性有機樹脂が0.25重量部以上7.00重量部以下である。
また、電離放射線硬化フィルムの引張試験における最大応力が10N/mm以上80N/mm以下であり、電離放射線硬化フィルムの下記式(I)で示される引張伸度が100%以上800%以下であってもよい。
引張伸度=(L1−L0)/L0…(I)
ここで、L0:引っ張り前のフィルムの長さであり、L1:破断時のフィルムの長さである。
また、電離放射線硬化フィルムが、水あるいはアルコールによって膨潤可能であり、電離放射線硬化フィルムの体積膨潤率が100%以上700%以下であり、電離放射線硬化フィルムの重量膨潤率が100%以上1200%以下であってもよい。
また、本発明は、電離放射線硬化フィルムの製造方法であって、電離放射線重合性有機モノマーと、粘土鉱物と、電離放射線重合性有機樹脂とを含む電離放射線重合性組成物の塗液を調製する塗液調整工程と、塗液を支持体上に塗布する塗布工程と、支持体上に塗布した塗液を熱処理して塗膜を形成する熱処理工程と、塗膜に電離放射線を照射して塗膜を硬化させて、支持体に支持された硬化膜を形成する電離放射線照射工程と、硬化膜を支持体から剥離する剥離工程とを備え、電離放射線重合性有機モノマーが、(メタ)アクリルアミドであり、電離放射線重合性有機樹脂が、ウレタン骨格と1つ以上の(メタ)アクリロイル基とを含み、電離放射線重合性組成物100重量部のうち、電離放射線重合性有機樹脂が0.25重量部以上7.00重量部以下であることを特徴とする。
本発明によれば、乾燥状態において脆性と靭性をかねそろえ、表面のタック性が低く、かつ、水やアルコールに湿潤させることで膨潤し、柔軟性を有するゲル特性を示す電離放射性硬化フィルム及びその製造方法、並びに電離放射線硬化フィルム形成用の電離放射線重合性組成物を実現できる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明で使用される電離放射線重合性有機モノマーおよび電離放射線重合性有機樹脂とは、紫外線や電子線といった活性エネルギー線の照射により架橋反応を経て硬化する物質のことをいう。また、電離放射線重合性有機樹脂には、モノマー、ポリマーおよびオリゴマーが含まれる。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの両方を指す。
本実施の形態に係る電離放射線硬化フィルムは、電離放射線重合性有機樹脂と、電離放射線重合性有機モノマーと、粘土鉱物とを含む電離放射線重合性組成物の塗液を硬化させることで作製される。
電離放射線重合性有機樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂より選択され、1分子中にウレタン骨格を有し、1つ以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を含むモノマーを使用する。アクリロイル基またはメタクリロイル基が1分子中に4つ以上である場合、硬化収縮が大きくなることでフィルムにカールが発生し、かつ、フィルムの引張伸度が著しく低下するため、アクリロイル基またはメタクリロイル基は1分子中に1〜3つ含むことが望ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、主に靭性の向上に寄与する。ウレタン骨格は水素結合などによる分子間結合を誘起することから電離放射線硬化フィルムの靭性を向上させることができる。したがって、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を単独で硬化させたフィルムの引張試験における最大応力が20N/mm以上であり、引張伸度が50%以上であることが望ましい。最大応力が20N/mm未満の場合、または、引張伸度が50%未満の場合には強度が弱く、脆い電離放射線硬化フィルムとなる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、水溶性であることが望まれる。非水溶性の樹脂を用いた場合、電離放射線硬化フィルムの湿潤性が低下し、十分な膨潤特性を得ることができない。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、UA−W2AやUA−7100(新中村化学工業社製)、ビームセットAQ−17(荒川化学工業社製)などが挙げられる。なお、これら樹脂骨格の一部をアルキル基ε―カプロラクトンで置換したウレタン(メタ)アクリレート樹脂なども使用することができ、特にその材料を限定しない。
また、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂には、水分散性エマルジョンなども使用することができ、例えば、ビームセットEM−90やEM−92(荒川化学工業社製)、アクリットWBR−829D(大成ファインケミカル社製)などが挙げられる。なお、これら樹脂骨格の一部をアルキル基ε―カプロラクトンで置換したウレタン(メタ)アクリレート樹脂なども使用することができ、特にその材料を限定しない。
電離放射線重合性有機モノマーは、(メタ)アクリルアミドより選択され、例えば、ジメチルアクリルアミドやアクリロイルモルフォリン、イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩(KJケミカルズ社製)などが挙げられるが、なかでもHEAAが望まれる。HEAAは末端に水酸基を有しており、重合してポリマー化した際に、分子間結合により電離放射線硬化フィルムの靭性を向上させることができる。なお、上記モノマーは一種類以上を混合して用いてもよい。
(メタ)アクリルアミドモノマーおよびその重合体は、アミド基が粘土鉱物の表面と静電相互作用や水素結合により相互作用することにより物理的架橋点を形成し、三次元架橋構造を構築する。この物理的架橋点を有する三次元架橋構造が、水やアルコールに対する膨潤収縮性と高強度で高伸度なゲル特性を発現させる。
本実施の形態に係る粘土鉱物は、水膨潤性の層状粘土鉱物であり、サポナイトやスティブンナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ルーセンタイト、ソマシフなどが挙げられる。層状粘土鉱物は、溶媒中および電離放射線重合性有機モノマー存在下で膨潤し、層状に剥離状態となることが望ましく、さらに、有機性修飾基などを添加して分散時に溶液の粘土を低下させられるものが望まれる。層状粘土鉱物は、溶液中で層状に剥離状態となるとカードハウス構造を形成し、その溶液は強いチキソトロピー性を示すことが知られている。チキソトロピー性は塗工工程おいて、膜厚の不均一化や面性の悪化を引き起こす要因となることから、抑制されることが望まれる。
本実施の形態に係る粘土鉱物としては、例えば、鉱物の端部がリン酸塩で修飾されたLAPONITE RDS(BYK社製)が挙げられる。
本実施の形態に係る電離放射線硬化フィルムには、電離放射線で硬化させるために、電離放射線重合開始剤を添加する。重合開始剤としては、主に紫外線照射によりラジカルが発生するものが使用でき、例えば、アセトフェノン類やベンゾイン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。具体的には、例えば、Irgacure2959やIrgacure184(BASF社製)などが挙げられる。なかでもIrgacure2959は水溶性を示し、塗液中に溶解させることができることからより好ましく用いられる。
本実施の形態に係る塗液の溶媒は、主として水を使用する。水は純水が最も望まれるが、それに限定されることはなく、水道水や超純水、あるいは、水に溶解可能な溶剤、たとえばアルコール類などとの混合溶媒も使用することができる。
次に、本実施の形態に係る電離放射線硬化フィルムの製造方法について説明する。
[塗液調製工程]
まず、電離放射線重合性組成物の塗液を調製する。電離放射線重合性樹脂と、電離放射線重合性有機モノマーと、粘土鉱物と、電離放射線重合開始剤と、溶媒とを含む電離放射線重合性組成物の塗液の組成は、電離放射線重合性組成物100重量部のうち、電離放射線重合性有機樹脂が0.25〜7重量部とし、電離放射線重合性有機モノマーが40〜50重量部とし、粘土鉱物が2〜4重量部とし、電離放射線重合開始剤が0.01〜1重量部とし、溶媒が40〜60重量部とすることが望まれる。電離放射線重合性樹脂は、0.25重量部未満ではフィルムの強度を向上させることができず、また7重量部を超えるとフィルムの脆性が高くなり、脆いフィルムとなる。また、電離放射線重合性有機モノマーは、40重量部未満では相対的に粘土鉱物の含有量が増加して3次元架橋構造が密になることで膨潤性が低くなり、また50重量部を超えるとフィルムの強度が低下する。粘土鉱物は、2重量部未満では三次元架橋密度の低下によりフィルム強度が低下し、4重量部を超えると塗液のチキソトロピー性が高くなり、塗工困難となる。電離放射線重合開始剤は、0.01重量部未満では開始剤が少なくフィルム形成が困難となり、1重量部を超えると重合開始剤の分解物によるフィルムからのアウトガスが発生し、臭気や面性悪化の要因となる。溶媒は、40重量部未満では塗液が高粘度化することで塗工困難となり、60重量部を超えると塗液の低粘度化により膜厚の不安定化や溶媒除去を行う乾燥工程への負荷が高くなる。
[塗布工程]
次に、塗液調整工程で調整した塗液を基材上に塗布する。塗布方法としては公知の方法を採用することができる。具体的には、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を利用することができる。
また、塗布方式としては、(1)枚葉状の基材に塗布する枚葉方式、(2)ロール状の基材を巻き出しながら基材に塗液を塗布し、製造された電離放射線硬化フィルムを巻き取るロール・ツー・ロール方式のいずれの塗布方式を採用してもよい。特に、ロール・ツー・ロール方式は電離放射線硬化フィルムを連続的に形成できるため、好ましい。例えば、ロール・ツー・ロール方式を採用する場合、基材に、巻き出し部と、塗布ユニットと、巻き取り部とをこの順で通過させ、連続走行させることにより連続的に電離放射線硬化フィルムを製造することができる。
ロール・ツー・ロール方式で製造する場合、基材の厚みは、10μm以上200μm以下程度であることが好ましく、50μm以上150μm以下程度であることがより好ましい。ただし、基材の厚みは上記範囲に限定されるものではない。
基材としては、ロール状の金属体やポリエチレンテレフタレート(PETフィルム)などを使用することができる。基材としては、塗液を塗布した後に行われる、熱処理工程、電離放射線照射工程等の工程において変形することなく、かつ、電離放射線照射工程で硬化した電離放射線硬化フィルムを容易に剥離することができれば、特に限定されるものではない。
[熱処理工程]
次に、基材上に塗布された塗液を熱処理により乾燥させて塗液内の溶媒を除去し、塗膜を形成する。熱処理は、適宜公知の乾燥手段を採用できる。例えば、乾燥手段として、加熱、送風、熱風などを利用することができる。
[電離放射線照射工程]
3次元架橋構造を有する硬化膜を得るために、熱処理工程の後に電離放射線照射工程を設ける。電離放射線照射工程は、塗膜に電離放射線を照射することにより、塗膜を硬化させる工程である。電離放射線を照射し、塗膜を硬化させることにより、脆性と靭性のバランスに優れた電離放射線硬化フィルムとすることができる。
電離放射線としては、紫外線、電子線などを採用できる。紫外線硬化の場合、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアークなどの光源を利用することができる。紫外線の照射条件としては、照射強度は100〜500mW/cmが適しており、照射量は200mJ/cm以上が望まれる。200mJ/cm未満では、硬化不十分となり、十分な強度を得ることが出来ない。さらに、紫外線照射時には酸素濃度が0.3%未満であることが望まれる。0.3%以上では、酸素によるラジカル反応阻害がおこり、表面が未硬化状態となる。
電子線硬化の場合、コックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型、などの各種電子線加速器から放出される電子線を利用することができる。電子線としては、50KeV以上1000KeV以下程度のエネルギーを有するのが好ましく、100KeV以上300KeV以下程度のエネルギーを有する電子線がより好ましい。
[剥離工程]
最後に、電離放射線照射工程にて硬化させて形成した硬化膜を基材から剥離することにより、電離放射線硬化フィルムを得ることができる。
上記の工程を経ることにより、一度の成膜プロセスで電離放射線硬化フィルムを製造することができるため、本発明によれば、簡便で低コストの電離放射線硬化フィルムの製造方法を実現することができる。
電離放射線硬化フィルムの引張試験における最大応力が10N/mm以上80N/mm以下であり、電離放射線硬化フィルムの上記式(I)で示される引張伸度が100%以上800%以下であることが望ましい。最大応力が10N/mm未満では強度が弱く、フィルム剥離あるいは自立フィルム化した後の取り回しする際にフィルムが破損しやすく取扱が困難となる。また、最大応力が80N/mmより大きい場合、フィルムとして靭性が生じ難く、脆いフィルムとなる。一方、引張伸度が100%未満では、フィルムの靭性が低く脆い状態となり、引張伸度が800%より大きい場合、フィルム表面にタック性が現れ、フィルムとしての取扱が困難となる。
また、電離放射線硬化フィルムの体積膨潤率が100%以上700%以下であり、電離放射線硬化フィルムの重量膨潤率が100%以上1200%以下であることが望ましい。体積膨潤率が100%未満あるいは重量膨潤率が100%未満では、フィルムの靭性が低く脆い状態となる。一方、体積膨潤率が700%より大きい場合、あるいは重量膨潤率が1200%より大きい場合、フィルムの剛性が低く、取扱が困難となる。
本発明によれば、乾燥状態において脆性と靭性をかねそろえ、かつ、水やアルコールに湿潤させることで膨潤し、柔軟性を有するゲル特性を示す電離放射性硬化フィルムを得ることができる。また、本発明に係る電離放射性硬化フィルムの製造方法によれば、熱処理時間が短いため、低エネルギーで電離放射性硬化フィルムを作製することができ、かつ、連続塗工プロセスを適用することができる。また、電離放射性硬化フィルム表面のタック性が低いことから電離放射性硬化フィルムをロール状態で保管可能となる。そのため、電離放射性硬化フィルムの大量生産が可能となる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[引張特性]
フィルムの引張特性は、以下の方法により調べた。先ず、基材を100mm×15mmの寸法に切り出して、短冊形状サンプルを得た。このサンプルについて、島津製作所社製小型卓上試験機EZ−L用いた測定を行った。ここでは、測定開始時のチャック間距離は50mmとし、引張速度は5mm/minとした。そして、引張伸度は、下記式(I)を用いて算出した。
引張伸度=(L1−L0)/L0…(I)
ここで、上記式(I)において、L0は引っ張り前のフィルムの長さを表し、L1は破断時のフィルムの長さを表している。
[膨潤特性]
フィルムの水湿潤時における体積膨潤率及び重量膨潤率は、以下の方法により調べた。まず、基材から剥離した自立フィルムを10mm×10mmの寸法に切り出してサンプルを得た。このサンプルを純水に浸漬して十分に膨潤させ、フィルム表面に付着した余分な水分を除去した後、その寸法および重量を測定し、膨潤前後の寸法および重量変化を測定した。
まず、電離放射線重合性組成物の塗液を調製した。以下に組成を示す。なお、以下、電離放射線重合性樹脂を化合物Aと記し、電離放射線重合性有機モノマーを化合物Bと記す。
[実施例1]
・化合物A:UA−W2A(新中村化学工業社製) 6.28重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 40.60重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.10重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
次に、調製した塗液を基材上に塗布した。基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)(ルミラーT60、厚さ75μm、東レ社製)とした。また、塗工はダイコーターの連続塗工機を使用して、塗工幅450mm、塗工長さが100mとなるように連続塗工した。塗液の塗布量は、乾燥膜厚が45μmとなるように設定した。
次に、基材に塗布された塗液を熱処理により乾燥させ、基材上に塗膜を形成した。熱処理条件は、100℃で3分間とした。
次に、基材上に形成した塗膜に電離放射線を照射し、塗膜を硬化させた。このとき、電離放射線として紫外線を照射した。また、紫外線の照射は、コンベア式紫外線硬化装置を用いて露光量400mJ/cmとした。
その後、硬化した塗膜を基材から剥離しながらロールに巻取り、実施例1の電離放射線硬化フィルムを得た。
[実施例2]
塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:UA−W2A(新中村化学工業社製) 4.84重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 41.92重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.22重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[実施例3]
塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:UA−W2A(新中村化学工業社製) 3.33重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 43.32重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.33重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[実施例4]
塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:UA−W2A(新中村化学工業社製) 1.89重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 44.66重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.44重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[実施例5]
塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:UA−W2A(新中村化学工業社製) 0.35重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 46.08重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.54重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[実施例6]
塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:UA−W2A(新中村化学工業社製) 0.25重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 46.18重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.55重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[実施例7]
化合物A及び塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:UA−7100(新中村化学工業社製) 6.28重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 40.60重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.10重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[実施例8]
化合物A及び塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:UA−7100(新中村化学工業社製) 3.33重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 43.32重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.33重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[実施例9]
化合物A及び塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:UA−7100(新中村化学工業社製) 0.25重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 46.18重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.55重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[比較例1]
塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:UA−W2A(新中村化学工業社製) 8.82重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 38.22重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 2.94重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[比較例2]
塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:UA−W2A(新中村化学工業社製) 0.11重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 46.31重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.56重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[比較例3]
化合物A及び塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:ライトアクリレート3EG−A(共栄社化学社製) 3.33重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 43.32重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.33重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[比較例4]
化合物A及び塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:ライトアクリレート9EG−A(共栄社化学社製) 3.33重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 43.32重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.33重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
[比較例5]
化合物A及び塗液の混合比を以下のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして電離放射線硬化フィルムを作製した。
・化合物A:ライトアクリレート14EG−A(共栄社化学社製) 3.33重量部
・化合物B:HEAA(KJケミカルズ社製) 43.32重量部
・粘土鉱物:LAPONITE RDS(BYK社製) 3.33重量部
・光重合開始剤:Irgacure2959(BASF社製) 0.02重量部
・溶媒:純水 50.00重量部
実施例1〜9および比較例1〜5で作製したフィルムの組成及び引張試験結果、膨潤試験結果を表1〜3に示す。
Figure 2018141091
実施例1〜6は、化合物Aとして2官能ウレタンアクリレート樹脂であるUA−W2Aを用いてその添加量を0.25〜7重量部の範囲で変更したところ、フィルムの表面タック性もなくフィルム同士の貼り付きがないことを確認した。また、引張特性も最大応力が10N/mm〜80N/mmであり、引張伸度が100%〜800%の間で制御されており、脆性及び靭性のバランスが取れたフィルムを得ることができた。また、フィルムの水湿潤時における体積膨潤率は100%以上700%以下であり、重量膨潤率は100%以上1200%以下であった。
一方、比較例1では化合物Aの添加量を7重量部を超えて添加し、比較例2では化合物Aの添加量を0.25重量部未満としてフィルム作製した結果を示すが、比較例1では硬くて脆い特性を示し、基材からの剥離時に割れが生じるフィルムとなった。また、比較例2では乾燥状態で非常に柔らかく、さらに表面タック性を示すフィルムとなった。
実施例7〜9では、化合物Aとして3官能ウレタンアクリレート樹脂であるUA−7100を用いて、その添加量を0.25〜7重量部の範囲で変更したフィルムを作製したが、いずれも脆性及び靭性のバランスが取れたフィルムを得ることができた。
比較例3〜5では、化合物Aとしてウレタン骨格を持たない分子量の異なるアクリレート樹脂を用いてフィルム作製を行ったが、いずれも硬くて脆い特性、あるいは、非常に柔軟性が高くタック性を示すフィルムが形成され、フィルムとしての取り回しが難しい特性を示した。
本発明は、エレクトロニクス分野をはじめ、エネルギー、医療、食品、建装材などの分野で用いられるフィルムなどに好適に利用することができる。

Claims (5)

  1. 電離放射線重合性有機モノマーと、粘土鉱物と、電離放射線重合性有機樹脂とを含んだ電離放射線重合性組成物であって、
    前記電離放射線重合性有機モノマーが、(メタ)アクリルアミドであり、
    前記電離放射線重合性有機樹脂が、ウレタン骨格と1つ以上の(メタ)アクリロイル基とを含み、
    前記電離放射線重合性組成物100重量部のうち、前記電離放射線重合性有機樹脂が0.25重量部以上7.00重量部以下である、電離放射線重合性組成物。
  2. 電離放射線重合性有機モノマーと、粘土鉱物と、電離放射線重合性有機樹脂とを含んだ電離放射線重合性組成物の塗液の硬化膜よりなる電離放射線硬化フィルムであって、
    前記電離放射線重合性有機モノマーが、(メタ)アクリルアミドであり、
    前記電離放射線重合性有機樹脂が、ウレタン骨格と1つ以上の(メタ)アクリロイル基とを含み、
    前記電離放射線重合性組成物100重量部のうち、前記電離放射線重合性有機樹脂が0.25重量部以上7.00重量部以下である、電離放射線硬化フィルム。
  3. 前記電離放射線硬化フィルムの引張試験における最大応力が10N/mm以上80N/mm以下であり、前記電離放射線硬化フィルムの下記式(I)で示される引張伸度が100%以上800%以下である、請求項2に記載の電離放射線硬化フィルム。
    引張伸度=(L1−L0)/L0…(I)
    ここで、L0:引っ張り前のフィルムの長さであり、L1:破断時のフィルムの長さである。
  4. 前記電離放射線硬化フィルムが、水あるいはアルコールによって膨潤可能であり、
    前記電離放射線硬化フィルムの体積膨潤率が100%以上700%以下であって、前記電離放射線硬化フィルムの重量膨潤率が100%以上1200%以下である、請求項2に記載の電離放射線硬化フィルム。
  5. 電離放射線硬化フィルムの製造方法であって、
    電離放射線重合性有機モノマーと、粘土鉱物と、電離放射線重合性有機樹脂とを含む電離放射線重合性組成物の塗液を調製する塗液調整工程と、
    前記塗液を支持体上に塗布する塗布工程と、
    前記支持体上に塗布した前記塗液を熱処理して塗膜を形成する熱処理工程と、
    前記塗膜に電離放射線を照射して前記塗膜を硬化させて、前記支持体に支持された硬化膜を形成する電離放射線照射工程と、
    前記硬化膜を前記支持体から剥離する剥離工程とを備え、
    前記電離放射線重合性有機モノマーが、(メタ)アクリルアミドであり、
    前記電離放射線重合性有機樹脂が、ウレタン骨格と1つ以上の(メタ)アクリロイル基とを含み、
    前記電離放射線重合性組成物100重量部のうち、前記電離放射線重合性有機樹脂が0.25重量部以上7.00重量部以下であることを特徴とする、電離放射線硬化フィルムの製造方法。
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