JP2018139478A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ロータの回転角度検出器により検出された回転角度と実際の回転角度との乖離による影響を一層低減する。【解決手段】ロータの回転角度検出器により検出された回転角度の第1検出値に基づいてモータを回転駆動するモータ制御装置は、モータを回転駆動しないときに、ステータのコイルのうち2相に通電する通電モードを所定時間毎に切り替えて複数の励磁角度で順次励磁し、励磁毎に、回転角度検出器により検出された回転角度の第2検出値と当該第2検出値を検出したときの励磁による励磁角度との偏差を演算し、モータを回転駆動するときに、回転角度検出器により検出された回転角度の第1検出値を前記偏差に基づいて補正する。【選択図】図8

Description

本発明は、ロータの回転角度検出器により検出された回転角度の検出値に基づいてモータを回転駆動するモータ制御装置に関する。
従来、ロータの回転角度検出器により検出された回転角度の検出値に基づいてモータを回転駆動するモータ制御装置には、製造工程における回転角度検出器の取り付けばらつきにより、回転角度の検出値が実際の回転角度から乖離してモータトルクが低下することを抑制するために、モータの各相コイルに対して所定配分量でロック電流を供給し、かかるロック電流に対応する既知の励磁角度と、回転角度検出器により検出された回転角度の検出値と、の偏差を予め演算し、この偏差に応じた補正値によって回転角度の検出値を補正しつつモータを回転駆動するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−319680号公報
しかしながら、特許文献1では、励磁角度と回転角度の検出値との偏差がロータの磁極対間でばらつく可能性を考慮せずに、1つの励磁角度に対する回転角度の検出値の偏差により、回転角度検出器により検出された回転角度の検出値を全て一様に補正しているため、回転角度出器により検出された回転角度の検出値と実際の回転角度との乖離による影響を低減し難くなるおそれがある。
そこで、本発明は以上のような問題点に鑑み、ロータの回転角度検出器により検出された回転角度と実際の回転角度との乖離による影響を一層低減するモータ制御装置を提供することを目的とする。
このため、本発明に係るモータ制御装置は、ロータの回転角度検出器により検出された回転角度の第1検出値に基づいてモータを回転駆動するものであって、モータを回転駆動しないときに、ステータのコイルのうち2相に通電する通電モードを所定時間毎に切り替えて複数の励磁角度で順次励磁し、励磁毎に回転角度検出器により検出された回転角度の第2検出値と当該第2検出値を検出したときの励磁による励磁角度との偏差を演算し、モータを回転駆動するときに回転角度検出器により検出された回転角度の第1検出値を上記偏差に基づいて補正する。
本発明のモータ制御装置によれば、ロータの回転角度検出器により検出された回転角度の検出値と実際の回転角度との乖離による影響を一層低減することができる。
コントローラ及びブラシレスモータの一例を示す回路構成図である。 ブラシレスモータの構成の一例を概略的に示す模式図である。 レゾルバの構成の一例を概略的に示す模式図である。 制御ユニットの内部の一例を示す機能ブロック図である。 通電モードの切り替えを説明するタイムチャートである。 通電モードによるロータの理想回転角度を説明する説明図である。 回転角度補正量の演算処理の一例を示すフローチャートである。 回転角度補正量についての第1の演算方法を示す説明図である。 回転角度補正量についての第2の演算方法を示し、(a)は平均偏差を演算するためのデータテーブル、(b)は平均偏差の補間による回転角度補正量の設定を説明するための説明図である。 平均検出回転角度に対する検出回転角度のばらつきの一例を説明する説明図であり、(a)は製造規格範囲、(b)は検出回転角度及び平均検出回転角度を示す。 第1及び第2の演算方法の別例を示す説明図である。 通電モードにおけるデューティ設定可能範囲を説明する説明図である。
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、本発明に係るモータ制御装置の適用例を示した回路構成図である。ブラシレスモータ100及びレゾルバ200と接続されたコントローラ300は、レゾルバ200の出力信号に基づいてブラシレスモータ100を駆動するモータ制御装置をなす。
ブラシレスモータ100は、エンジンの冷却システムにおいて冷媒を圧送する電動ウォータポンプの駆動源や自動変速機用の油圧ポンプシステムに組み込まれた電動オイルポンプの駆動源等、様々な車載用アクチュエータの駆動源として適用可能である。
ブラシレスモータ100は、3相の直流同期電動機であり、3相コイル110U,110V,110Wを備えたステータ(固定子)110と、ステータ110に対して回転可能に支持されたロータ(永久磁石回転子)120と、を有している。ステータ110において、U相コイル110Uは、3つのコイル片U,U,Uが並列接続されて構成され、V相コイル110Vは、3つのコイル片V,V,Vが並列接続されて構成され、W相コイル110Wは、3つのコイル片W,W,Wが並列接続されて構成されている。U相コイル110Uの一端tua、V相コイル110Vの一端tva、及びW相コイル110Wの一端twaは、コントローラ300と接続され、U相コイル110Uの他端tub、V相コイル110Vの他端tvb、及びW相コイル110Wの他端twbは、中性点NでY結線されている。
図2を参照して、ブラシレスモータ100の具体的な構造について説明する。
ステータ110は、筒状の電機子鉄心111を有している。電機子鉄心111は、磁性鋼板から打ち抜かれた薄板を軸方向に複数積層して加締め結合することで形成され、その内周面側で周方向に等間隔に配列された複数の突極磁極112を有している。隣接する突極磁極112の間にはスロット113が形成され、突極磁極112にはスロット113を介して3相コイル110U,110V,110Wが巻回してある。本例では、突極磁極112が機械角40deg間隔で9つ形成され(従ってスロット113が9つ形成され)、9つの突極磁極112には、スロット113を介して、U相コイル110Uの3つのコイル片U,U,U、V相コイル110Vの3つのコイル片V,V,V、及びW相コイル110Wの3つのコイル片W,W,Wを、周方向でU→V→W→U→V→W→U→V→Wの順番で巻き回してある。
U相コイル110Uの3つのコイル片U,U,U、V相コイル110Vの3つのコイル片V,V,V、及びW相コイル110Wの3つのコイル片W,W,Wはステータ110の外側からみて同一方向に巻き回してある。3つのコイル片U,U,Uにおいて巻き始めが一端tuaに接続されるとともに巻き終わりが他端tubに接続され、3つのコイル片V,V,Vにおいて巻き始めが一端tvaに接続されるとともに巻き終わりが他端tvbに接続され、3つのコイル片W,W,Wにおいて巻き始めが一端twaに接続されるとともに巻き終わりが他端twbに接続される。突極磁極112と3相コイル110U,110V,110Wとの間は、例えば突極磁極112の樹脂モールドや3相コイル110U,110V,110Wの樹脂被覆等によって電気的に絶縁されている。
ロータ120は、筒状のステータ110の中央部空間においてステータ110と同一方向の軸を中心として回転可能に配置され、ステータ110に対するロータ120の回転軸となるシャフト121と、シャフト121の径方向周囲に固定された円筒状のヨーク122と、ヨーク122の外周に沿って固定された永久磁石123と、を有している。ヨーク122は、例えば磁性鋼板の薄板を軸方向に複数積層して結合される。永久磁石123は、ヨーク122の外周に沿ってシャフト121の軸中心に等角度に延びる複数の磁極が周方向に均等に配置されることで構成され、永久磁石123の隣接する磁極の極性は、相互に反対となるように着磁されている。ロータ120がステータ110に対して回転可能に支持されることで、永久磁石123と突極磁極112とがエアギャップ(空隙)を介して径方向で対向する。本実施形態では、永久磁石123は、6つの磁極(N極,S極,N極,S極,N極,S極)が機械角60degごとに配置され、第1磁極対(N極,S極)、第2磁極対(N極,S極)、第3磁極対(N極,S極)の3つの磁極対により構成されて極対数Pを3としている。したがって、ブラシレスモータ100は、6極9スロットで集中巻の3相ブラシレスモータを構成している。
図1において、レゾルバ200は、ロータ120の回転角度を検出する回転角度検出器であり、ひいてはロータ120における永久磁石123の磁極位置を検出する磁極位置検出器である。図3を参照すると、レゾルバ200は、ブラシレスモータ100におけるロータ120のシャフト121と同軸に取り付けられ、シャフト121と一体的に回転するレゾルバ回転子201と、から交流電圧の励磁信号が供給される励磁コイル202と、励磁信号が供給された励磁コイル202の磁力によりレゾルバ回転子201を介して誘起される交流起電圧をレゾルバ信号として出力する一対の検出コイル203,204と、を含む。一対の検出コイル203,204は、90°の位相差をもってレゾルバ回転子201の近傍に固定される。レゾルバ回転子201は、1回転したときに1回転分の出力信号が出力される(軸倍角が1Xとなる)ように、軸方向からみて略楕円形状に形成されている。レゾルバ回転子201が回転すると、検出コイル203からは、交流起電圧のピーク値が余弦関数状に変化するレゾルバ信号(COS)が出力され、検出コイル204からは、交流起電圧のピーク値が正弦関数状に変化するレゾルバ信号(SIN)が出力される。
再び図1を参照してコントローラ300について説明すると、コントローラ300は、インバータ310と、制御ユニット320と、を備えている。
インバータ310は、上アーム側のスイッチング素子311a及び下アーム側のスイッチング素子311bが直列に接続されたU相アームと、上アーム側のスイッチング素子311c及び下アーム側のスイッチング素子311dが直列に接続されたV相アームと、上アーム側のスイッチング素子311e及び下アーム側のスイッチング素子311fが直列に接続されたW相アームと、を備えている。インバータ310が備える各アームは、車載の直流電源PSの正極線L1と直流電源PSの負極線L2との間に並列に接続され、3相ブリッジ回路が形成されている。スイッチング素子311a〜311fは、それぞれ逆並列のダイオードDを含み、例えば、FET(Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等、パワー半導体素子で構成されている。
また、インバータ310は、相電流を検出するための電流検出手段を備えている。本例では、U相電流に相当する電流検出信号Iuを出力するシャント抵抗312uがU相アームのうち負極線L2側に介装され、V相電流に相当する電流検出信号Ivを出力するシャント抵抗312vがV相アームのうち負極線L2側に介装され、W相電流に相当する電流検出信号Iwを出力するシャント抵抗312wがW相アームの負極線L2側に介装されている。シャント抵抗312u,312v,312wは、それぞれ、その両端電位差を各相電流に相当する電流検出信号Iu,Iv,Iwとして制御ユニット320へ出力する。
制御ユニット320は、外部の制御装置との間でCAN(Controller Area Network)等を介して通信を行うように構成されるとともに、A/D(Analog/Digital)変換器、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能な記憶メモリ、ROM(Read Only Memory)等の読み出し専用の記憶メモリ等を有するマイクロコンピュータを備えている。制御ユニット320は、ロータ120の回転角度を検出するレゾルバ200から出力されたレゾルバ信号COS,SIN、シャント抵抗312u,312v,312wから出力された電流検出信号Iu,Iv,Iw、及び、外部の制御装置から送信された目標回転速度ωの信号を入力し、これらの入力信号に基づいて、インバータ310に制御信号を出力する。制御ユニット320により、ブラシレスモータ100は、矩形波駆動方式又は正弦波駆動方式のいずれでも回転駆動可能であるが、本実施形態では、正弦波駆動方式で回転駆動されるものとして説明する。
図4は、制御ユニット320の一例を示す機能ブロック図である。
制御ユニット320は、回転角度検出部320A、補正量記憶部320B、加算部320C、回転速度検出部320D、UVW/dq変換部320E、目標電流演算部320F、印加電圧演算部320G、dq/UVW変換部320H、PWM制御部320I、2相通電制御部320J、選択部320K、学習部320Lを有している。
回転角度検出部320Aは、レゾルバ200に対して励磁信号を出力すると共に、レゾルバ200から出力されるレゾルバ信号COS,SINに基づいて、ロータ120の回転角度を機械角で検出する。回転角度検出部320Aは、例えば、レゾルバ信号COS,SINのピーク(尖頭)値を用いて、ARCTAN(アークタンジェント)を演算することで、ロータ120の回転角度を機械角で検出する。回転角度検出部320Aで検出されたロータ120の回転角度を検出回転角度θというものとする。検出回転角度θは、後述するように、ブラシレスモータ100を回転駆動する際にロータ120の回転角度の第1検出値として用いられる他、ブラシレスモータ100を回転駆動しないときに回転角度補正量Δθを演算する際にロータ120の回転角度の第2検出値として用いられる。
補正量記憶部320Bは、書き込み可能なメモリで構成され、検出回転角度θを補正するための回転角度補正量Δθを記憶している。回転角度補正量Δθの演算方法については後述する。
加算部320Cは、回転角度検出部320Aで検出された第1検出値としての検出回転角度θと、補正量記憶部320Bに記憶された回転角度補正量Δθと、に基づいて加算値(θ+Δθ)を補正回転角度θaとして演算する、検出回転角度θの補正手段をなす。
回転速度検出部320Dは、加算部320Cで演算された補正回転角度θa(=θ+Δθ)の時間変化に基づいて、ロータ120の実際の回転速度ω(=dθa/dt)を検出する。例えば、回転速度検出部320Dは、加算部320Cで前回演算された補正回転角度θaと今回演算された補正回転角度θaとの変化量に基づいて、ロータ120の実際の回転速度ωを演算することができる。
UVW/dq変換部320Eは、加算部320Cで演算された補正回転角度θa(=θ+Δθ)に基づいて、シャント抵抗312u,312v,312wから出力された電流検出信号Iu,Iv,Iwに相当する各相の実際の電流値を、公知の演算式によって座標変換し、d軸の実際の電流値であるd軸実電流値Id及びq軸の実際の電流値であるq軸実電流値Iqを演算する。d軸は、ロータ120の永久磁石123がつくる磁束の方向であり、q軸は、d軸と直交するトルク生成方向である。
目標電流演算部320Fは、回転速度検出部320Dで検出された実際の回転速度ωと、外部の制御装置から送信された目標回転速度ω*と、に基づいて、d軸目標電流値Id*及びq軸目標電流値Iq*を演算する。目標電流演算部320Fは、具体的には、実際の回転速度ωと目標回転速度ω*との偏差に対して予めd軸目標電流値Id*及びq軸目標電流値Iq*を設定したデータテーブルを参照することでd軸目標電流値Id*及びq軸目標電流値Iq*を演算することや、あるいは、実際の回転速度ωと目標回転速度ω*との偏差に対して適宜設定された比例ゲイン及び積分ゲインを用いたPI制御等のフィードバック制御を行うことによってd軸目標電流値Id*及びq軸目標電流値Iq*を逐次演算したりしてもよい。
印加電圧演算部320Gは、UVW/dq変換部320Eで変換されたd軸実電流値Id及びq軸実電流値Iqと、目標電流演算部320Fで演算されたd軸目標電流値Id*及びq軸目標電流値Iq*と、に基づいて、ブラシレスモータ100に印加すべき端子電圧のd軸成分であるd軸印加電圧指令値Vd*及び当該端子電圧のq軸成分であるq軸印加電圧指令値Vq*を演算する。印加電圧演算部320Gは、具体的には、d軸実電流値Idとd軸目標電流値Id*との偏差、及びq軸実電流値Iqとq軸目標電流値Iq*との偏差に対して、PI制御等のフィードバック制御を行うことで、d軸印加電圧指令値Vd*及びq軸印加電圧指令値Vq*を演算する。
dq/UVW変換部320Hは、加算部320Cで演算された補正回転角度θa(=θ+Δθ)に基づいて、印加電圧演算部320Gで演算されたd軸印加電圧指令値Vd*及びq軸印加電圧指令値Vq*を公知の演算式によって座標変換し、U相コイル110Uに印加すべき端子電圧であるU相印加電圧指令値Vu*、V相コイル110Vに印加すべき端子電圧であるV相印加電圧指令値Vv*、及びW相コイル110Wに印加すべき端子電圧であるW相印加電圧指令値Vw*を演算する。
PWM制御部320Iは、スイッチング素子311a〜311fの制御端子に出力する制御信号として、スイッチング素子311a〜311fのPWM制御におけるオン・オフ比率であるデューティにより規定されたPWM信号を生成する。デューティは、PWM制御部320Iにおいて、dq/UVW変換部320Hで変換されたU相印加電圧指令値Vu*、V相印加電圧指令値Vv*及びW相印加電圧指令値Vw*に応じて演算される。PWM制御部320Iは、具体的には、U相印加電圧指令値Vu*及び直流電源PSの電源電圧値Eの比率からU相アームのスイッチング素子311a,311bのデューティを演算し、V相印加電圧指令値Vv*及び直流電源PSの電源電圧値Eの比率からV相アームのスイッチング素子311c,311dのデューティを演算し、W相印加電圧指令値Vw*及び直流電源PSの電源電圧値Eの比率からW相アームのスイッチング素子311e,311fのデューティを演算する。
2相通電制御部320Jは、学習部320Lからの指示に基づいて、スイッチング素子311a〜311fの制御端子に出力する制御信号を生成し、ステータ110の3相コイル110U,110V,110Wに対して2相通電を行って複数の励磁角度θexで順次励磁を行う2相励磁制御手段をなす。2相通電制御部320Jから出力される制御信号は、図5に示すように、ブラシレスモータ100のU相コイル110U、V相コイル110V、W相コイル110Wの3相のうち2相に通電して励磁する6通りの通電モード(1)〜(6)を所定時間T毎に順次切り替えるものである。所定時間Tは、実験又はシミュレーション等により、6通りの通電モード(1)〜(6)を順次切り替えたときにロータ120が静止するまでの時間として予め設定される。
選択部320Kは、後述する学習部320Lからの指示に基づいて、PWM制御部320Iで生成された制御信号と、2相通電制御部320Jで生成された制御信号と、のいずれかを選択して、インバータ310におけるスイッチング素子311a〜311fの制御端子へ出力するように構成されている。
図5を参照して、6通りの通電モード(1)〜(6)について詳述する。なお、ブラシレスモータ100の各相の端子電圧Vu,Vv,Vwは、厳密には各端子(例えばtua,tva,twa)とグランド(GND)との間の[端子−グランド]間電圧であるが、本実施形態では、中性点の電圧を別途検出し、この中性点の電圧と[端子−グランド]間電圧との電圧差を求めて、この電圧差を各相の端子電圧Vu,Vv,Vwとしている。
通電モード(1)〜(6)を1つの通電サイクルとして通電サイクルを繰り返すと、ステータ110の励磁角度θexは、1つの通電サイクル当たりで、電気角で1周期分すなわち360deg変化し、通電モードを切り替えるたびに電気角60degずつ増大する。通電モード(1)において、ステータ110の励磁角度θexが電気角60degであるものとすると、通電モード(2)では励磁角度θexが電気角120degとなり、通電モード(3)では励磁角度θexが電気角180degとなり、通電モード(4)では励磁角度θexが電気角240degとなり、通電モード(5)では励磁角度θexが電気角300degとなり、通電モード(6)では励磁角度θexが電気角360degとなる。
通電モード(1)では、2相通電制御部320Jが、スイッチング素子311a及びスイッチング素子311dをオン状態とし、他を全てオフ状態とする制御信号を生成することで、U相の端子電圧Vuとして電圧V(電源電圧値Eの半分に相当する電圧)を印加し、V相の端子電圧Vvとして電圧(−V)を印加し、U相からV相に向けて所定時間Tのロック電流を流す。これにより、ステータ110の励磁角度θexを電気角60degとしている。
通電モード(2)では、2相通電制御部320Jが、スイッチング素子311a及びスイッチング素子311fをオン状態とし、他を全てオフ状態とする制御信号を生成することで、U相の端子電圧Vuとして電圧Vを印加し、W相の端子電圧Vwとして電圧(−V)を印加し、U相からW相に向けて所定時間Tのロック電流を流す。これにより、ステータ110の励磁角度θexを電気角120degとしている。
通電モード(3)では、2相通電制御部320Jが、スイッチング素子311c及びスイッチング素子311fをオン状態とし、他を全てオフ状態とする制御信号を生成することで、V相の端子電圧Vvとして電圧Vを印加し、W相の端子電圧Vwとして電圧(−V)を印加し、V相からW相に向けて所定時間Tのロック電流を流す。これにより、ステータ110の励磁角度θexを電気角180degとしている。
通電モード(4)は、2相通電制御部320Jが、スイッチング素子311c及びスイッチング素子311bをオン状態とし、他を全てオフ状態とする制御信号を生成することで、V相の端子電圧Vwとして電圧Vを印加し、U相の端子電圧Vuとして電圧(−V)を印加し、V相からU相に向けて所定時間Tのロック電流を流す。これにより、ステータ110の励磁角度θexを電気角240degとしている。
通電モード(5)は、2相通電制御部320Jが、スイッチング素子311e及びスイッチング素子311bをオン状態とし、他を全てオフ状態とする制御信号を生成することで、W相の端子電圧Vwとして電圧Vを印加し、U相の端子電圧Vuとして電圧(−V)を印加し、W相からU相に向けて所定時間Tのロック電流を流す。これにより、ステータ110の励磁角度θexを電気角300degとしている。
通電モード(6)は、2相通電制御部320Jが、スイッチング素子311e及びスイッチング素子311dをオン状態とし、他を全てオフ状態とする制御信号を生成することで、W相の端子電圧Vwとして電圧Vを印加し、V相の端子電圧Vvとして電圧(−V)を印加し、W相からV相に向けて所定時間Tのロック電流を流す。これにより、ステータ110の励磁角度θexを電気角360degとしている。
図6は、6通りの通電モード(1)〜(6)で所定時間Tの通電を順次行ったときにおけるロータ120の理想回転角度θidealを示す。ここで、ロータ120の理想回転角度θidealは、ロータ120に対するレゾルバ200の取り付けばらつきや、ブラシレスモータ100のメカばらつきがないことを前提とした理論上の角度である。
図6(a)に示すように、通電モード(1)により所定時間Tの通電を行った場合、U相コイル110Uの3つのコイル片U,U,Uが配設された3つの突極磁極112がロック電流によりN極性を示すとすると、V相コイル110Vの3つのコイル片V,V,Vが配設された3つの突極磁極112はロック電流によりS極性を示す。コイル片Uの配設された突極磁極112の中心線の回転軸周りの角度(中心線角度)を0degとすると、通電モード(1)による通電を所定時間T保持した場合、永久磁石123の第3磁極対のS極と第1磁極対のN極との境界線(または中間線、以下同様)の回転軸周りの角度(境界線角度)が、コイル片Uの配設された突極磁極112とコイル片Vの配設された突極磁極112との中間線の回転軸周りの角度(中間線角度)である機械角20degに位置し、永久磁石123の第1磁極対のS極と第2磁極対のN極との境界線角度が、コイル片Uの配設された突極磁極112とコイル片Vの配設された突極磁極112との中間線角度である機械角140degに位置し、永久磁石123の第2磁極対のS極と第3磁極対のN極との境界線角度が、コイル片Uの配設された突極磁極112とコイル片Vの配設された突極磁極112との中間線角度である機械角260degに位置した状態で、ロータ120の回転角度が保持される。このとき、ロータ120の理想回転角度θidealを、第3磁極対のS極と第1磁極対のN極との境界線角度である機械角20degとすると、ステータ110の励磁角度θexを電気角60degとしたときに、ロータ120の理想回転角度θidealは機械角20degとなる。
図6(b)に示すように、通電モード(1)を通電モード(2)に切り替えて、通電モード(2)により所定時間Tの通電を行うと、U相コイル110Uの3つのコイル片U,U,Uが配設された3つの突極磁極112がロック電流によりN極性を維持した状態で、W相コイル110Wの3つのコイル片W,W,Wが配設された3つの突極磁極112が無極性からロック電流によりS極性に変化する。このため、コイル片Wにはこれに最も近いN極が引き寄せられ、コイル片Wにはこれに最も近いN極が引き寄せられ、コイル片Wにはこれに最も近いN極が引き寄せられる。そして、永久磁石123の第3磁極対のS極と第1磁極対のN極との境界線角度が、コイル片Vの中心線角度である機械角40degに位置し、永久磁石123の第1磁極対のS極と第2磁極対のN極との境界線角度が、コイル片Vの中心線角度である機械角160degに位置し、永久磁石123の第2磁極対のS極と第3磁極対のN極との境界線角度が、コイル片Vの中心線角度である機械角280degに位置した状態で、ロータ120の回転角度が保持される。したがって、ステータ110の励磁角度θexを電気角120degとしたときに、ロータ120の理想回転角度θidealは機械角40degとなる。
図6(c)に示すように、通電モード(2)を通電モード(3)に切り替えて、通電モード(3)により所定時間Tの通電を行うと、永久磁石123の第3磁極対のS極と第1磁極対のN極との境界線角度がコイル片Vの配設された突極磁極112とコイル片Wの配設された突極磁極112との中間線角度である機械角60degに位置した状態で、ロータ120の回転角度が保持される。したがって、ステータ110の励磁角度θexを電気角180degとしたときに、ロータ120の理想回転角度θidealは機械角60degとなる。
図6(d)に示すように、通電モード(3)を通電モード(4)に切り替えて、通電モード(4)により所定時間Tの通電を行うと、永久磁石123の第3磁極対のS極と第1磁極対のN極との境界線角度が、コイル片Wの中心線角度である機械角80degに位置した状態で、ロータ120の回転角度が保持される。したがって、ステータ110の励磁角度θexを電気角240degとしたときに、ロータ120の理想回転角度θidealは機械角80degとなる。
図6(e)に示すように、通電モード(4)を通電モード(5)に切り替えて、通電モード(5)により所定時間Tの通電を行うと、永久磁石123の第3磁極対のS極と第1磁極対のN極との境界線角度がコイル片Wの配設された突極磁極112とコイル片Uの配設された突極磁極112との中間線角度である機械角100degに位置した状態で、ロータ120の回転角度が保持される。したがって、ステータ110の励磁角度θexを電気角300degとしたときに、ロータ120の理想回転角度θidealは機械角100degとなる。
図6(f)に示すように、通電モード(5)を通電モード(6)に切り替えて、通電モード(6)により所定時間Tの通電を行うと、永久磁石123の第3磁極対のS極と第1磁極対のN極との境界線角度が、コイル片Uの中心線角度である機械角120degに位置した状態で、ロータ120の回転角度が保持される。したがって、ステータ110の励磁角度θexを電気角360degとしたときに、ロータ120の理想回転角度θidealは機械角120degとなる。
このような通電モード(1)〜(6)により、ステータ110の励磁角度θexが電気角60degずつ増大するに従って、ロータ120の理想回転角度θidealは機械角20degずつ増大する。前述のように通電モード(1)〜(6)を1つの通電サイクルとすると、通電サイクルを極対数Pに応じて3回繰り返すことで、ロータ120は略1回転する、すなわち機械角で略360deg回転する。
1回目の通電サイクル(第1通電サイクル)の終了後、2回目の通電サイクル(第2通電サイクル)を開始して、ステータ110の励磁角度θexを再び電気角60degとすると、ロータ120の理想回転角度θidealは機械角140degとなり、通電モードの順次切り替えによって励磁角度θexを電気角60degずつ増大させるに従って、理想回転角度θidealは機械角20degずつ増大する。第2通電サイクルの終了後、3回目の通電サイクル(第3通電サイクル)を開始して、ステータ110の励磁角度θexを再び電気角60degとすると、ロータ120の理想回転角度θidealは機械角260degとなり、通電モードの順次切り替えによって励磁角度θexを電気角60degずつ増大させるに従って、理想回転角度θidealは機械角20degずつ増大する。したがって、第1〜第3通電サイクルにおける同一の通電モードでは、ロータ120の理想回転角度θidealが異なっても、ステータ110の励磁角度θexは同一となる。
ここで、学習部(演算手段)320Lは、ROM等に記憶されたプログラムを読み出すことで、回転角度補正量Δθを演算するための演算処理を行う。回転角度補正量Δθの演算処理では、製造工程におけるロータ120に対するレゾルバ200の取り付けばらつきやブラシレスモータ100のメカばらつきにより、ロータ120の検出回転角度θが実際の回転角度から乖離してモータトルクが低下することを抑制するために、学習部320Lが、2相通電制御部320J及び選択部320Kを介して、図5の通電モード(1)〜(6)によるロック電流を3相コイル110U,110V,110Wに供給させて、ロータ120の回転角度を保持(静止)したときに、通電モードに応じて定まるステータ110の既知の励磁角度θexと、レゾルバ200により検出された第2検出値としての検出回転角度θと、の偏差に基づいて、ブラシレスモータ100を回転駆動する際に用いられる第1検出値としての検出回転角度θを補正するための回転角度補正量Δθを演算する。
図7は、学習部320Lが所定のタイミングで実行を開始する、回転角度補正量Δθの演算処理を示す。なお、所定のタイミングは、ブラシレスモータ100を回転駆動する必要がないときに、すなわち、ブラシレスモータ100によって駆動される駆動対象の動作に支障を与えないように適宜設定される。例えば、ブラシレスモータ100が電動ウォータポンプ26を駆動する場合、車両のイグニッションスイッチがオン状態となってから電動ウォータポンプを駆動する前に回転角度補正量Δθの演算処理を実行してもよい。
ステップS1(図中では「S1」と略記。以下同様である。)では、学習部320Lが、RAMに格納される変数m(=1,2,3)の値を1に設定する。変数mは、通電サイクルの繰り返し回数を示すものであり、例えばm=1である場合には、通電サイクルが第1通電サイクルであることを示す。
ステップS2では、学習部320Lが、RAMに格納される変数n(=1,2,…,6)の値を1に設定する。変数nは、通電モード(1)〜(6)のうちのいずれの通電モードが選択されているかを示すものであり、例えばn=1である場合には、通電モード(1)が選択されていることを示す。
ステップS3では、学習部320Lは、RAMに格納された変数nの値に基づいて通電モード(1)〜(6)のいずれか1つを選択して通電を行う。具体的には、学習部320Lは、選択部320Kに対して、2相通電制御部320Jで生成された制御信号を選択するように指示するとともに、2相通電制御部320Jに対して、選択した通電モードで通電を行うように指示する。例えば、ステップS2から直ちに本ステップを実行する場合には、変数nは1に設定された状態であるので、学習部320Lは、通電モード(1)を選択して、2相通電制御部320Jに通電モード(1)で通電を行わせる。
ステップS4では、学習部320Lは、前ステップのステップS3で選択した通電モードに切り替えてから所定時間Tが経過したか否かを判定する。そして、学習部320Lは、所定時間Tが経過したと判定した場合には(YES)、ロータ120が静止していると判断して、ステップS5へ処理を進める一方、所定時間Tが経過していないと判定した場合には(NO)、ロータ120は静止していないと判断して、再度ステップS4を行う。
ステップS5では、学習部320Lは、回転角度検出部320Aで検出されたロータ120の検出回転角度θを第2検出値として取得して、その時点における変数n及び変数mと関連付けたθ(n,m)としてRAM等の書き込み可能なメモリに記憶する。例えば、検出回転角度θ(3,2)であれば、第2通電サイクルにおける通電モード(3)によって通電されたときのロータ120の検出回転角度θであることを示している。
ステップS6では、学習部320Lは、変数nが6であるか否か、すなわち、現在の通電サイクルにおいて通電モード(6)まで終了したか否かを判定する。そして、学習部320Lは、変数nが6であると判定した場合には(YES)、次の通電サイクルに進むか否かを判定すべく、ステップS7へ処理を進める。一方、学習部320Lは、変数nが6ではないと判定した場合には(NO)、ステップS10へ処理を進めて変数nを1つ増加させ、次の通電モードによる通電を行うべくステップS3へ戻る。
ステップS7では、学習部320Lは、変数mが極対数Pと同一の値であるか否か、すなわち、本ステップの実行時に第3通電サイクルであるか否かを判定する。そして、学習部320Lは、変数mが極対数Pと同一の値であると判定した場合には(YES)、ロータ120が略1回転分(機械角360deg)回転したと判断して、ステップS8へ処理を進めて通電を停止する。一方、学習部320Lは、変数mが極対数Pの値より小さいと判定した場合には(NO)、次の通電サイクルに進むべく、ステップS11へ処理を進めて変数mを1つ増加させ、さらに、通電モード(1)による通電を開始すべくステップS2へ戻る。
ステップS9では、学習部320Lは、ステップS5において変数n及び変数mと関連付けて記憶した検出回転角度θ(n,m)に基づいて回転角度補正量Δθを演算し、これをRAM等の書き込み可能なメモリに記憶する。回転角度補正量Δθは、加算部320Cにおいて、機械角として検出される検出回転角度θを補正できるように、機械角に換算して記憶されてもよい。回転角度補正量Δθは、以下のように2つの演算方法のいずれか一方により演算可能である。
図8は、回転角度補正量Δθを演算するための第1の演算方法を示す。
先ず、学習部320Lは、各通電サイクルで検出・記憶された検出回転角度θ1,θ2,θ3を通電モード毎に平均して平均検出回転角度θaveを演算する。このとき、学習部320Lは、機械角で検出された検出回転角度θ1,θ2,θ3を、それぞれ電気角に換算する。検出回転角度θ1については、検出された機械角を3倍にし、検出回転角度θ2については、検出された機械角から120deg減算した減算値を3倍にし、検出回転角度θ3については、検出された機械角から240deg減算した減算値を3倍にすることで、検出回転角度θ1,θ2,θ3を電気角に換算する。例えば、通電モード(1)については、以下の式によって平均検出回転角度θaveを演算する。
θave=θ(1,1)+θ(1,2)−120+θ(1,3)−240
次に、学習部320Lは、通電モード毎に励磁角度θexと平均検出回転角度θaveとの偏差(θex−θave)である平均偏差Δθaveを演算する。そして、学習部320Lは、通電モード毎に演算された6つの平均偏差Δθaveを平均して回転角度補正量Δθを演算する。
第1の演算方法では、回転角度補正量Δθを演算するうえで、通電モード毎に第1〜第3通電サイクルの検出回転角度θ1,θ2,θ3の平均偏差Δθaveを演算しているので、理想回転角度θidealと検出回転角度θとの偏差がロータ120の磁極対間でばらつく可能性があることを考慮している。また、回転角度補正量Δθを1つの値として演算しているので、ブラシレスモータ100を回転駆動する際に用いられる第1検出値としての検出回転角度θの補正に係る処理負担が軽くなる点で有効である。
図9は、回転角度補正量Δθを演算するための第2の演算方法を示す。
平均検出回転角度θave及び平均偏差Δθaveの演算は、第1の演算方法と同様であるが、平均偏差Δθaveを、対応する平均検出回転角度θaveと同一の検出回転角度θに対する回転角度補正量Δθとするとともに、各平均検出回転角度θaveの間における検出回転角度θに対しては平均偏差Δθaveを、線形補間、放物線補間、最近傍補間等の様々な補間方法によって補間して回転角度補正量Δθとしている点で異なる。すなわち、第2の演算方法では、ロータ120の回転角度(検出回転角度θ)に応じた回転角度補正量Δθを演算している。
例えば、線形補間によって平均偏差Δθaveを補間する場合には、検出回転角度θが55〜123degの区間において、回転角度補正量Δθは、以下の式で示される。
Δθ=−(2/17)θ+(195/17)
第2の演算方法では、第1の演算方法と同様に、回転角度補正量Δθを演算するうえで、通電モード毎に第1〜第3通電サイクルで第2検出値として検出された検出回転角度θ1,θ2,θ3の平均偏差Δθaveを演算しているが、第1の演算方法と異なり、通電モード毎に演算された6つの平均偏差Δθaveの平均値を回転角度補正量Δθとせず、平均偏差Δθaveとその補間値を回転角度補正量Δθとしている。したがって、通電モード間における平均偏差Δθaveのばらつきを考慮しつつ、ブラシレスモータ100を回転駆動する際に用いられる第1検出値としての検出回転角度θを補正できる点で有効である。
上記の第1及び第2の演算方法における別例について説明する。
図10(a)は、第1〜第3通電サイクルの特定の通電モードによる励磁角度θexに対して、検出回転角度θの許容範囲を規定した製造規格範囲を示している。かかる製造規格範囲は、ロータ120を回転駆動させる際の異音やトルク変動が許容値未満となるように許容差を規定している。例えば、通電モード(2)での励磁角度θexは電気角120degであり、これに対し、検出回転角θの許容差は±6degで規定されている。
図10(b)に示すように、例えば、第1〜第3通電サイクルの通電モード(2)における検出回転角度θ1,θ2,θ3が、それぞれ、θ1=115deg,θ2=125deg,θ3=125degとして検出されると、平均検出回転角度θaveは約121.6degと演算され、これにより平均偏差Δθaveは−1.6degと演算される。
図10(a)を再び参照すると、平均検出回転角度θaveは、平均偏差Δθaveの分、理想回転角度θidealから乖離して、第1通電サイクルの検出回転角度θ1と平均検出回転角度θaveとの偏差が−6.6degとなり、製造規格範囲の許容差である±6degを超えてしまう。このような平均検出回転角度θaveから上記の第1又は第2の演算方法によって演算された回転角度補正量Δθを、ブラシレスモータ100を回転駆動する際に用いられる第1検出値としての検出回転角度θの補正に用いると、ロータ120を回転駆動させる際の異音やトルク変動が許容値以上となってしまうおそれがある。
そこで、各通電サイクルにおける同一の通電モードで第2検出値として検出された検出回転角度θ1,θ2,θ3とこれらに基づいて演算された平均検出回転角度θaveとの偏差が製造規格範囲の許容差を超えてしまう場合には、当該通電モードについての平均検出回転角度θaveを別方法で演算するか、あるいは、回転角度補正量Δθの演算処理を停止してもよい。
図11に示すように、第1及び第2の演算方法において、平均検出回転角度θaveを別方法で演算する場合には、当該通電モードで第2検出値として検出された検出回転角度θ1,θ2,θ3のうち最大値(θ2又はθ3=125deg)及び最小値(θ1=115deg)をそれぞれ1つずつ選択し、最大値と最小値との平均値(120deg)を平均検出回転角度θaveとしてもよい。
本実施形態に係るコントローラ300は、ブラシレスモータ100を回転駆動する際に、レゾルバ200により第1検出値として検出される検出回転角度θを補正する回転角度補正量Δθを演算するために、ブラシレスモータ100を回転駆動しない場合に、3相のうち2相に通電して励磁する通電モード(1)〜(6)を1つの通電サイクルとして、この通電サイクルを極対数Pに応じて3回繰り返して複数の励磁角度θexで順次励磁を行い、励磁毎にロータ120の回転角度を保持したときにレゾルバ200により第2検出値として検出回転角度θ1,θ2,θ3を検出している。そして、本実施形態に係るコントローラ300は、通電モード毎に、各通電サイクルで第2検出値として検出された検出回転角度θ1,θ2,θ3とその通電モードに対応する励磁角度θexとの偏差に基づいて回転角度補正量Δθを演算している。
したがって、本実施形態に係るコントローラ300によれば、回転角度補正量Δθは、ステータ110の励磁角度θexとそのときのロータ120の検出回転角度θとの偏差がロータ120の磁極対間においてばらつくことを考慮して演算されるので、1つの励磁角度θexに対する検出回転角度θの偏差に基づいて、レゾルバ200により第1検出値として検出される検出回転角度θを全て一様に補正する場合と比較すると、例えばモータトルクの低下等、検出回転角度θと実際の回転角度との乖離による影響を一層低減することができる。
なお、上記の実施形態において、2相通電制御部320Jは、スイッチング素子311a〜311fの通電モードに従ってオン状態とするもののオン・オフ比率であるデューティを変更することで、各通電モードによるロック電流の大きさを調整することができる。例えば、2相通電制御部320Jが、制御信号のデューティを100%に設定すると、通電される2相の両端子電圧間の電位差は電源電圧値Eに相当する電圧とすることができる一方、制御信号のデューティを50%に設定すると、通電される2相の両端子電圧間の電位差は電源電圧値Eの半分に相当する電圧とすることができる。
図12に示すように、2相通電制御部320Jの生成する制御信号のデューティに関して、ロータ120を励磁角度θexまで回転可能なデューティが、ブラシレスモータ100又はこれにより駆動される駆動対象の温度依存性により異なる場合には、温度に応じてデューティを設定することができる。例えば、ブラシレスモータ100がエンジンの冷却水を圧送する電動ウォータポンプを駆動する場合に、ロータ120を励磁角度θexまで回転可能なデューティは、曲線L1で示されるように、冷却水の水温がエンジンの通常運転時における通常温度TA[℃]であるときにD1[%]以上である一方、曲線L2で示されるように、冷却水の水温が比較的低いTB[℃]であるときにフリクションの増加によってD1[%]よりも高いD2[%]以上であるとすると、各通電モードにおけるデューティの設定可能範囲は、通常温度TA時にはD1〜100[%]である一方、低温TB時にはD2〜100[%]であり、水温TAとTBとの間では設定可能範囲を水温に応じて連続的又は段階的に変更して設定可能である。
上記の実施形態において、学習部320Lは、第1又は第2の演算方法のいずれか一方で回転角度補正量Δθを演算するものとして説明したが、これに代えて、通電モード間における平均偏差Δθaveのばらつきが所定値未満である場合には、第1の演算方法を選択して回転角度補正量Δθを補正する一方、所定値以上である場合には、第2の演算方法を選択して回転角度補正量Δθを演算してもよい。
上記の実施形態において、学習部320Lは、2相通電制御部320J及び選択部320Kを介して、第1〜第3通電サイクルの各通電サイクルにおいて、通電モード(1)〜(6)の6つの通電モードを順次切り替えていた。これに代えて、学習部320Lは、2相通電制御部320Jを介して、各通電サイクルにおいて、通電モード(1),(3),(5)の3つの通電モードを順次切り替える、あるいは、通電モード(2),(4),(6)の3つの通電モードを順次切り替えるようにしてもよい。要するに、学習部320Lは、2相通電制御部320Jを介して、ロータ120が1回転するように、通電モードを切り替えることができればよい。
上記の実施形態において、レゾルバ200の軸倍角を1Xとしていたが、これに限らず、他の軸倍角としてもよい。例えば、レゾルバ200の軸倍角を3Xとすれば、通電モードの切り替えによって、励磁角度θex及び理想回転角度θidealは同じ角度で変化するので、電気角から機械角へ又は機械角から電気角への換算が不要になる点で有効である。
上記の実施形態において、ロータ120の回転角度をレゾルバ200によって検出していたが、これに限らず、ホール素子、ホールIC、ロータリーエンコーダ、ポテンショメータ等の様々な回転角度検出器を用いてもよい。また、極対数Pを3としていたが、2又は4以上としてもよい。さらに、前述のように、ブラシレスモータ100の回転駆動は正弦波駆動方式に限らず、矩形波駆動方式であってもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を第1実施形態及び第2実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
100…ブラシレスモータ、110…ステータ、110U…U相コイル、110V…V相コイル、110W…W相コイル、120…ロータ、200…レゾルバ(回転角度検出器)、300…コントローラ、310…インバータ、320…制御ユニット、320A…回転角度検出部、320J…2相通電制御部、320L…学習部、320B…補正量記憶部、320C…加算部、θex…励磁角度、θ…検出回転角度(第1検出値、第2検出値)、θ1,θ2,θ3…各通電サイクルにおける検出回転角度、θave…平均検出回転角度、Δθave…平均偏差、Δθ…回転角度補正量

Claims (3)

  1. ロータの回転角度検出器により検出された回転角度の第1検出値に基づいてモータを回転駆動するモータ制御装置であって、
    前記モータを回転駆動しないときに、ステータのコイルのうち2相に通電する通電モードを所定時間毎に切り替えて複数の励磁角度で順次励磁を行う2相励磁制御手段と、
    前記2相励磁制御手段による励磁毎に前記回転角度検出器により検出された回転角度の第2検出値と当該第2検出値を検出したときの励磁による励磁角度との偏差を演算する演算手段と、
    前記モータを回転駆動するときに前記回転角度検出器により検出された前記回転角度の第1検出値を前記偏差に基づいて補正する補正手段と、
    を備えた、モータ制御装置。
  2. 前記2相励磁制御手段は、前記ロータが1回転するように前記2相通電を行う、請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記補正手段は、前記偏差から前記ロータの回転角度に応じた補正量を演算し、前記補正量によって前記回転角度の第1検出値を補正する、請求項1又は請求項2に記載のモータ制御装置。
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