以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。下記の実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(実施形態)
本実施形態のアンテナ装置1について、図1〜8を参照して説明する。
本実施形態のアンテナ装置1は、図7、8に示すように移動体9に用いられる。本実施形態では、移動体9が車両90(自動車)である場合を例にして説明する。図7では、各構成の電気的な接続を行う電路を、太い実線で例示している。
車両90は、車体91と、制御装置92と、施錠装置93と、アンテナ装置1と、を有している。
アンテナ装置1は、車体91のドアハンドル941に設けられている。言い換えれば、ドアハンドル941は、アンテナ装置1を備えている。なお、アンテナ装置1は、車体91のドアハンドル941に設けられる構成だけに限られない。アンテナ装置1は、車体91のドア94、バンパ、センターコンソール、トランク、カーゴルームやダッシュボードなどに設けられてもよい。車体91には、1つ以上のアンテナ装置1が設けられていればよい。アンテナ装置1は、ユーザが携帯可能なリモコン装置900との間で、無線信号の送信及び受信ができるように構成されている。
制御装置92は、アンテナ装置1と電気的に接続されている。制御装置92は、施錠装置93と電気的に接続されている。制御装置92は、アンテナ装置1や施錠装置93と有線により電気的に接続される構成だけでなく、無線により接続される構成でもよい。制御装置92は、例えば、車体91に搭載されたECU(Electronic Control Unit)である。
施錠装置93は、ドア94に設けられている。施錠装置93は、ドア94の錠の施錠や解錠をアクチュエータで行うことができるように構成されている。
リモコン装置900は、受信部901と、記憶部902と、制御回路部903と、送信部904と、を備えている。リモコン装置900は、アンテナ装置1を介して車体91の制御装置92との間で、信号の送信及び受信ができるように構成されている。リモコン装置900は、ユーザが携帯することができるような電子キーの形態に形成されている。
車両90では、リモコン装置900と、制御装置92との間で信号の送信及び受信が行われることで、車体91におけるドア94の錠の施錠若しくは解錠が行われる。言い換えれば、
車両90は、リモコン装置900と、制御装置92との間で信号の送信及び受信が行われることで、車体91におけるエンジンやモータの駆動の開始若しくは停止を行える状態となるように構成されてもよい。車両90は、ユーザがリモコン装置900を携帯した状態で、車体91のドアハンドル941にユーザが触れるなどすると、自動的にドア94の錠の解錠を行うことに加え、エンジンの始動などができるように構成されていてもよい。
車両90では、車体91からリモコン装置900への信号を、制御装置92がアンテナ装置1から電波で送信させる。以下では、アンテナ装置1から送信される電波を、第1送信波S1とも称する。制御装置92は、例えば、車体91が駐車中の場合、アンテナ装置1から第1送信波S1を送信させる。第1送信波S1には、リモコン装置900からの応答を要求する要求信号が含まれている。アンテナ装置1は、例えば、LF(Low Frequency)帯の周波数の電波で、第1送信波S1を送信できるように構成されている。
リモコン装置900は、例えば、ユーザがリモコン装置900を携帯して第1送信波S1を受信可能な領域にいる場合、第1送信波S1を受信部901で受信する。リモコン装置900は、制御装置92からの要求信号に応じて、電波を送信できるように構成されている。以下では、リモコン装置900から送信される電波を、第2送信波S2とも称する。リモコン装置900の制御回路部903は、送信部904に第2送信波S2を送信させる。第2送信波S2は、制御装置92からの要求信号に応答する応答信号を含んでいる。応答信号には、予め記憶部902に記憶されている識別情報が含まれている。送信部904は、例えば、UHF(Ultra High Frequency)帯の周波数の電波で、第2送信波S2を送信できるように構成されている。
制御装置92は、例えば、リモコン装置900からの第2送信波S2を受信できるように、UHF受信機を備えている。制御装置92は、受信した第2送信波S2に含まれる識別情報と、制御装置92に内蔵された記憶装置921に予め記憶された識別情報とを比較する。制御装置92は、第2送信波S2に含まれる識別情報と、記憶装置921に記憶された識別情報とが一致すれば、ドア94の錠を解錠させるように施錠装置93を制御する。
本実施形態のアンテナ装置1は、LF帯の第1送信波S1を送信できるように構成されており、LF帯の電波の周波数がUHF帯と比べて低いため、電界強度の微調整を比較的容易に行うことができる。アンテナ装置1は、必ずしもLF帯の周波数の電波を送信する構成だけに限られず、他の周波数帯の電波を送信する構成でもよい。アンテナ装置1は、電波を送信するために用いられる場合だけに限られず、電波を受信するために用いられてもよい。アンテナ装置1は、電波を送信及び受信するために用いられてもよい。
なお、移動体9は、車両90(自動車)である場合に限らず、例えばバイク、電動カート等であってもよい。
以下に、アンテナ装置1の構成について図1〜6を参照して詳細に説明する。
アンテナ装置1は、磁心2と、ボビン3と、導線5と、端子6と、を備えている。アンテナ装置1は、バーアンテナであり、外部から入力された電気信号を、電波として送信することができるように構成されている。
ボビン3は、扁平な角筒状の外形形状をしている。ボビン3は、樹脂材料を用いて形成されている。ボビン3は、樹脂材料を用いる場合、樹脂材料中にガラス繊維を配合させることで機械的強度を高めてもよい。ボビン3は、例えば、樹脂材料中に30重量%のガラス繊維を配合した構成とすることができる。ガラス繊維の配合量は、30重量%に限らず、5重量%乃至50重量%の範囲内で適宜設定できる。ボビン3の樹脂材料としては、例えば、PBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂、PA(Poly Amide)樹脂、LCP(Liquid Crystal Plastic)樹脂、PET(Poly Ethylene Terephthalate)樹脂等を用いることができる。
ボビン3は、長尺の軸部30と、軸部30の長手方向である軸方向の第1端301側に設けられた第1鍔部31と、軸部30の軸方向における第1端301と反対側の第2端302側に設けられた第2鍔部32と、を有している。以降の説明では、軸部30の軸方向をX軸方向とし、X軸方向と直交する軸部30の短手方向をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向と直交する方向をZ軸方向とする。
軸部30は、内部に磁心2を挿入できるように中空状に形成されている。磁心2は、X軸方向を長手方向とする直方体状に形成されている。磁心2は、X軸方向の寸法が、軸部30のX軸方向の寸法よりも長く形成されている。磁心2は、例えば、フェライトコア等の磁性体である。磁心2は、ボビン3の軸部30に巻かれる導線5のインダクタンスを高めることができる。磁心2は、ボビン3の第2鍔部32に形成された開口部321から軸部30の内部に挿入され、接着剤でボビン3に固定される。磁心2は、例えば、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライトや銅亜鉛フェライトなどが用いられる。
軸部30は、Z軸方向に対向する第1主片33及び第2主片34と、Y軸方向に対向する第1側片35及び第2側片36と、を有する(図4,図5参照)。
第1主片33は、X軸方向に並んで形成されている矩形状の複数(本実施形態では3つ)の開口部331と、X軸方向に並ぶ開口部331間に形成された矩形平板状の複数(本実施形態では2つ)の連結片332と、を有する。第2主片34は、X軸方向に並んで形成されている矩形状の複数(本実施形態では4つ)の開口部341と、X軸方向に並ぶ開口部341間に形成された矩形平板状の複数(本実施形態では3つ)の連結片342と、を有する。第1主片33の複数の連結片332の各々と、第2主片34の複数の連結片342の各々とは、Z軸方向に対向しないように、X軸方向にずれて形成されている。第1側片35及び第2側片36は、矩形平板状に形成されている。
第1鍔部31及び第2鍔部32は、軸部30の外形よりも大きい枠状に形成されている。第1鍔部31及び第2鍔部32は、Y軸方向及びZ軸方向の寸法が、軸部30よりも大きく形成されている。第2鍔部32は、磁心2を挿入できるように、X軸方向の端部に開口部321が形成され、内部が中空状に形成されている。第1鍔部31は、第2鍔部32の開口部321を介して軸部30に挿入された磁心2を受け止め、磁心2を位置決めするように構成されている。
また、ボビン3は、一対の端子6がインサート成形されている。一対の端子6は、ボビン3における第1鍔部31の第1端301からX軸方向に突出しており、Y軸方向に離れて設けられている。端子6は、平板状の金属材で構成されている。端子6は、平板状の金属材に、打ち抜き加工、折り曲げ加工や押圧加工を施して形成することができる。端子6は、導電性の高い材料を用いることが好ましい。端子6の材料としては、例えば、表面をSnでめっきした黄銅を用いることができる。端子6の材料は、黄銅だけに限られない。端子6の材料は、リン青銅、鉄入り銅、真鍮や表面をAgでめっきした銅等でもよい。一対の端子6は、X軸方向に沿った軸を対称軸とした線対称形状である。Y軸方向に並ぶ一対の端子6を区別して説明する場合、第1側片35側(図3では下側)にある一方の端子6を第1端子601、第2側片36側(図3では上側)にある他方の端子6を第2端子602という。
一対の端子6の各々は、コネクタ等を介して制御装置92と電気的に接続される電線7の端部が固定される電線固定部61と、ボビン3に巻かれた導線5の端部が固定される導線固定部62と、一体に有しており、導線5と電線7とを電気的に接続する。
電線固定部61は、Z軸方向を厚み方向とする矩形平板状に形成されている。電線固定部61は、第1鍔部31の端部(第1端301)において、Y軸方向の両端よりも中央側からX軸方向に突出している。電線7は、芯線71と、絶縁被覆72と、を備えている。電線固定部61は、スポット溶接により、電線7の端部において絶縁被覆72から露出した芯線71と電気的及び機械的に接続される。
導線固定部62は、曲げ加工によりU字状の外形形状に形成されており、電線固定部61の端部からY軸方向に突出している。具体的には、Y軸方向に並んだ第1端子601と第2端子602のうち、Y軸方向の一方側にある第1端子601の電線固定部61から導線固定部62がY軸方向の一方側に突出している。また、Y軸方向の他方側にある第2端子602の電線固定部61から導線固定部62がY軸方向の他方側に突出している。
導線固定部62は、導線固定部62から突出した第1固定片63と、第1固定片63の固定面630と対向する第2固定片64と、第1固定片63と第2固定片64とを連結する屈曲部65と、を有している。屈曲部65は、U字状の外形形状に形成されており、導線固定部62の端部からY軸方向に突出した第1固定片63の先端部と、第2固定片64の端部とを連結する。導線固定部62は、ヒュージング(熱かしめ)により、導線5の端部を第1固定片63と第2固定片64とで挟み込んだ状態で固定する。これにより、導線固定部62と導線5とが電気的及び機械的に接続される。図1〜3では、導線固定部62は、ヒュージングにより導線5を固定する前の状態を示しており、第2固定片64が第1固定片63の固定面630から離れている。
導線5は、例えば、マグネットワイヤであり、金属線材と、電気絶縁性を有し金属線材を覆う絶縁部材とを有している。導線5は、軸部30に巻かれることによりアンテナコイルとして機能する。金属線材としては、例えば、銅線が挙げられる。絶縁部材としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂やポリイミド樹脂等が挙げられる。導線5は、軸部30に巻かれた巻線部51と、軸部30の軸方向(X軸方向)に沿った戻し線部52と、を有する。
巻線部51は、軸部30における第1鍔部31側から第2鍔部32側に向かって螺旋状に軸部30に巻かれている。巻線部51は、複数(本実施形態では6つ)の密巻部511と複数(本実施形態では5つ)の接続部512と、を有する(図2参照)。密巻部511と接続部512とは、巻密度が互いに異なる。「巻密度」とは、軸部30の軸方向(X軸方向)における単位長さ当たりの導線5の密度である。言い換えれば、「巻密度」は、軸部30の軸方向(X軸方向)における単位長さ当たりの導線5のターン数である。密巻部511は、巻密度が接続部512よりも高い。接続部512は、X軸方向に隣り合う2つの密巻部511を繋ぐ。本実施形態では、接続部512は、ターン数が1回に達しておらず軸部30の第2主片34に沿うように構成されているが、ターン数が1回以上となるように軸部30に巻かれていてもよい。
また、軸部30は、軸部30から突出した複数の第1リブ333及び複数の第2リブ343によって、軸方向(X軸方向)に並ぶ複数(本実施形態では6つ)の領域300に仕切られており、各領域300に1つの密巻部511が設けられている。
複数の第1リブ333は、軸部30の第1主片33からZ軸方向に突出している。複数の第1リブ333は、第1主片33におけるY軸方向の両端に沿って設けられている。本実施形態では、Y軸方向に並ぶ一対の第1リブ333の組が、X軸方向に所定の間隔で5組設けられている。
複数の第2リブ343は、軸部30の第2主片34からZ軸方向に突出している。第2リブ343は、Z軸方向において、第1リブ333とは反対向きに突出している。複数の第2リブ343は、第2主片34におけるY軸方向の両端に沿って設けられている。本実施形態では、Y軸方向に並ぶ一対の第2リブ343の組が、X軸方向に所定の間隔で5組設けられている。また、複数の第2リブ343は、Z軸方向において、複数の第1リブ333と重なるように設けられている。
軸部30は、X軸方向に並べて設けられた5組の第1リブ333及び5組の第2リブ343によって、X軸方向に並ぶ6つの領域300に仕切られている。6つの密巻部511は、6つの領域300と一対一に対応しており、1つの領域300に1つの密巻部511が設けられる。また、密巻部511は、領域300において、第1鍔部31側に寄せて設けられている。
また、ボビン3は、軸部30の第2側片36からY軸方向に突出した複数(本実施形態では5つ)の第3リブ361を有している(図4参照)。5つの第3リブ361は、X軸方向に所定の間隔で設けられている。第3リブ361は、第1リブ333及び第2リブ343と一体に形成されている。
また、ボビン3は、軸部30の第1側片35からY軸方向に突出した折返し片351を有している。折返し片351は、軸部30の6つの領域300のうち第2鍔部32側の領域300において、この領域300に設けられている密巻部511よりも第2鍔部32側に設けられている。折返し片351は、L字状の外形形状に形成されており、導線5を引っ掛けることができるように構成されている。導線5は、折返し片351に引っ掛けられることにより、導線5の沿う方向が切り替えられる。具体的には、導線5が折返し片351に引っ掛けられることにより、軸部30における第1鍔部31側から第2鍔部32側に向かって螺旋状に巻かれた導線5が、第1鍔部31へ向かうように折り返される。導線5において、折返し片351によって折り返されて第1鍔部31側へ戻される部分が戻し線部52である。つまり、戻し線部52は、導線5において、巻線部51の一端から延伸して巻線部51の他端側に戻る部分である。戻し線部52は、軸部30の第1側片35に沿って設けられている。
ボビン3は、軸部30の第1側片35から突出し戻し線部52を保持する複数(本実施形態では5つ)の保持部4を有している。複数の保持部4は、X軸方向に所定の間隔で設けられている。保持部4は、第1側片35からY軸方向に突出した突出部43と、突出部43の先端からZ軸方向に突出した爪部44とを有しており、軸部30の第1側片35と爪部44との間に戻し線部52を保持するように構成されている。
具体的には、5つの保持部4は、Y軸方向において、5つの第3リブ361と重なるように設けられている(図4,図5参照)。5つの保持部4は、2つの第1保持部41と、3つの第2保持部42とで構成されている。第1保持部41と第2保持部42とは、Z軸方向に反転した対称形状である。
第1保持部41は、突出部43としての第1突出部431と、爪部44としての第1爪部441とを有する。第1突出部431は、第1側片35における第1主片33側の端部からY軸方向に突出したリブであり、第1リブ333と一体に形成されている。第1爪部441は、第1突出部431の先端からZ軸方向における第2主片34側の向き(第1方向D1)に突出したリブである。第1爪部441は、Y軸方向において、軸部30の第1側片35から離れている。第1爪部441は、軸部30の第1側片35とY軸方向に対向する一面451が、第1突出部431から遠ざかるにつれて第1側片35との距離が大きくなるテーパ状に形成されている。第1保持部41は、第1突出部431の一面を底面とし第1側片35及び第1爪部441を一対の側壁とするX軸方向が開口した第1凹部461を形成し、この第1凹部461に戻し線部52を収容することにより、戻し線部52を保持する。
第2保持部42は、突出部43としての第2突出部432と、爪部44としての第2爪部442とを有する(図5参照)。第2突出部432は、第1側片35における第2主片34側の端部からY軸方向に突出したリブであり、第2リブ343と一体に形成されている。第2爪部442は、第2突出部432の先端からZ軸方向における第1主片33側の向き(第2方向D2)に突出したリブである。第2爪部442は、Y軸方向において、軸部30の第1側片35から離れている。第2爪部442は、軸部30の第1側片35とY軸方向に対向する一面452が、第2突出部432から遠ざかるにつれて第1側片35との距離が大きくなるテーパ状に形成されている。第2保持部42は、第2突出部432の一面を底面とし第1側片35及び第2爪部442を一対の側壁とするX軸方向が開口した第2凹部462を形成し、この第2凹部462に戻し線部52を収容することにより、戻し線部52を保持する。
Z軸方向において、第1凹部461の底面は、第2凹部462の底面よりも第2主片34側に位置している。つまり、X軸方向から見て、第1突出部431と第2突出部432の少なくとも一部同士が重なり合う。また、Z軸方向において、第1爪部441の先端は、第2爪部442の先端よりも第2主片34側に位置している。言い換えれば、Z軸方向において、第1爪部441の先端は、第2爪部442の先端よりも第1爪部441の突出方向側に位置している。
5つの保持部4は、X軸方向において、第2鍔部32側から第1保持部41、第1保持部41、第2保持部42、第2保持部42、第2保持部42の順に設けられている(図2参照)。つまり、複数の保持部4は、X軸方向において隣り合う第1保持部41と第2保持部42との組が含まれている。また、複数の保持部4は、X軸方向において隣り合う複数の第1保持部41が複数の連続保持部として含まれている。また、複数の保持部4は、X軸方向において隣り合う複数の第2保持部42が複数の連続保持部として含まれている。
ボビン3は、第1鍔部31の第1側壁311からY軸方向の一方側に突出した第1絡げ部371と、第1鍔部31の第2側壁312からY軸方向の他方側に突出した第2絡げ部372と、を有する。第1側壁311は、第1鍔部31おいてY軸方向と交差する面のうちY軸方向の一方側の面を形成する側壁である。第2側壁312は、第1鍔部31においてY軸方向と交差する面のうちY軸方向の他方側の面を形成する側壁である。第1絡げ部371と第2絡げ部372とは、X軸方向に沿った軸を対称軸とした線対称形状である。
第1絡げ部371は、T字状の外形形状に形成されており、導線5を絡げることができるように構成されている。第1絡げ部371は、X軸方向において、複数の保持部4に並んで設けられている。第1絡げ部371は、X軸方向において、複数の保持部4に対してボビン3の第1端301側に設けられている。また、第1絡げ部371は、Z軸方向において、X軸方向に隣り合う第2保持部42が形成する第2凹部462の底面に対して、第2主片34側(第1方向D1側)に設けられている。第1絡げ部371は、導線5における戻し線部52が絡げられている。本実施形態では、第1絡げ部371は、戻し線部52が1回巻きされている。導線5は、第1絡げ部371に絡げられることにより、導線5の緩みが抑制される。
第2絡げ部372は、T字状の外形形状に形成されており、導線5を絡げることができるように構成されている。第2絡げ部372は、導線5における、第2端子602の導線固定部62に固定される導線5の一端部と巻線部51との間の部分が絡げられている。本実施形態では、第2絡げ部372は、導線5が1回巻されている。導線5は、第2絡げ部372に絡げられることにより、導線5の緩みが抑制される。
また、ボビン3は、導線5を端子6の導線固定部62へガイドする第1ガイド部38及び第2ガイド部380を有する(図1〜図3参照)。第1ガイド部38と第2ガイド部380とは、X軸方向に沿った軸を対称軸とした線対称形状である。第1ガイド部38と第2ガイド部380とは、同様の構成であるので、ここでは、第1ガイド部38の構成のみ詳細に説明し、第2ガイド部380の説明を適宜省略する。
第1ガイド部38は、X軸方向において、導線固定部62と第1絡げ部371との間に設けられている。第1ガイド部38は、第1鍔部31の第1側片35からY軸方向に突出したガイド片381を有する。ガイド片381は、Y軸方向から見てL字状の外形形状に形成されている。ガイド片381においてZ軸方向と交差する面のうち、Z軸方向の一方側(第2方向D2側)の面がガイド面382として機能する。ガイド片381は、ガイド面382に沿った仮想の一平面と、第1端子601の導線固定部62における固定面630に沿った仮想の一平面とが、同一平面となるように設けられている。
また、ガイド片381は、Z軸方向において、第1絡げ部371に対して、第1絡げ部371とX軸方向に隣り合う保持部4(第2保持部42)における第2爪部442の突出方向側(第2方向D2側)にガイド面382が位置するように設けられている。つまり、ガイド面382は、Z軸方向において、第1絡げ部371よりも第2方向D2側に位置している。
また、第1ガイド部38は、導線5のY軸方向への移動を規制する規制部383を有する。本実施形態では、規制部383は、第1鍔部31と一体に構成されている。言い換えれば、第1鍔部31の第1側壁311は、規制部383としての機能を有する。規制部383(第1側壁311)は、第1端子601の導線固定部62よりもY軸方向の一方側に位置しており、導線5がY軸方向の他方側(第1端子601側)へ移動することを規制する。したがって、第1端子601の導線固定部62と第1絡げ部371との間において、導線5(戻し線部52)は、第1ガイド部38のガイド面382及び規制部383に沿って配置される。
また、本実施形態のアンテナ装置1は、図6に示すように、ケース8に収納され、磁心2とボビン3と導線5とを一体に封止する封止部材80を有する。
図6に示すように、ケース8は、アンテナ装置1の磁心2とボビン3と導線5とを一体に収納可能な長尺状に形成されている。ケース8は、樹脂材料の成形品である。ケース8は、例えば、熱可塑性の樹脂材料により形成することができる。ケース8は、樹脂材料の射出成形により形成することで、複雑な形状を比較的簡単に形成することができる。ケース8は、例えば、PBT樹脂を用いて形成することができる。ケース8は、ガラス繊維を含んだ構成とすることができる。ケース8は、例えば、樹脂材料中に30重量%のガラス繊維を含んだ構成とすることができる。ガラス繊維の配合量は、30重量%に限らず、5重量%乃至50重量%の範囲内で適宜設定できる。ケース8は、ガラス繊維を含んだ構成とすることで機械的強度を高めることができる。ケース8の材料としては、PBT樹脂だけに限られず、例えば、PA樹脂、LCP樹脂、PET樹脂、フェノール樹脂、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂やPP(polypropylene)樹脂などが用いられてもよい。
封止部材80は、ケース8に収納されたアンテナ装置1における少なくとも磁心2とボビン3と導線5とを一体に封止することができるように構成されている。封止部材80は、磁心2とボビン3と導線5とを一体に封止することで、アンテナ装置1の機械的な信頼性を高めることができる。アンテナ装置1では、ケース8内に封止部材80が設けられているので、外力や車両90の振動がアンテナ装置1に加わった場合でも、外力や振動による損傷を生じ難くできる。また、封止部材80は、アンテナ装置1の防水機能を確保し、ケース8に収納されたアンテナ装置1の電気絶縁性を高めることが可能となる。
封止部材80は、例えば、ケース8を収容する金型に、充填樹脂を射出させる射出成形を行うことで形成できる。封止部材80は、充填樹脂の射出成形により形成されるものだけに限られない。封止部材80は、充填樹脂のポッティング及び充填樹脂の硬化により形成できる。封止部材80は、例えば、ホットメルト材料であるエチレン酢酸ビニル樹脂を充填樹脂として用いることができる。封止部材80は、充填樹脂として、エチレン酢酸ビニル樹脂を用いる構成だけに限られず、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂材料が用いられてもよい。
<製造工程>
次に、本実施形態のアンテナ装置1の製造工程について説明する。
まず、ボビン3に導線5を取り付ける取付工程を行う。取付工程では、導線5の端部を第2端子602の導線固定部62の固定面630に配置し、第2ガイド部380に沿わせた導線5を、第2絡げ部372に絡げる。そして、軸部30の各領域300に1つの密巻部511が形成されるように、軸部30の第1鍔部31側から第2鍔部32側に向かって導線5を螺旋状に巻く。巻線部51の形成が完了すると、導線5を折返し片351に引っ掛けて導線5を折り返す。
導線5(戻し線部52)を、X軸方向に並んだ第1保持部41の第1凹部461、及び第2保持部42の第2凹部462それぞれに収容されるように軸部30に沿わせて、第1絡げ部371に絡げる。そして、導線5を、第1ガイド部38に沿わせて、導線5の端部を第1端子601の導線固定部62の固定面630に配置する。
ここで、第1保持部41において軸部30の第1側片35と対向する第1爪部441の一面451、及び第2保持部42において軸部30の第1側片35と対向する第2爪部442の一面452が、テーパ状に形成されている。したがって、導線5を導出するノズルの先端部を第1凹部461及び第2凹部462に通しやすくなり、作業効率が向上する。また、X軸方向において、2つの第1保持部41が隣接し、3つの第2保持部42が隣接しているので、ノズルをZ軸方向に移動させることなく2つの第1保持部41間、及び3つの第2保持部42間に導線5を設けることができ、作業効率が向上する。
また、X軸方向に隣接する第1保持部41と第2保持部42との間において、導線5にZ軸方向の張力が作用するので、導線5が第1凹部461及び第2凹部462の底面側に配置される。また、第1絡げ部371と、第1絡げ部371とX軸方向に隣接する第2保持部42との間において、導線5にZ軸方向の張力が作用するので、導線5が第2凹部462の底面側に配置される。また、Z軸方向において、第1爪部441の先端が第2爪部442の先端よりも第2主片34側(第1方向D1側)に位置しているので、導線5が第1凹部461及び第2凹部462から外れにくくなる。
また、第1ガイド部38のガイド面382と第1絡げ部371との間において、導線5にZ軸方向の張力が作用するので、導線5がガイド面382に沿って配置される。また、第1ガイド部38のガイド面382と第1端子601の導線固定部62の固定面630とが同一平面であるので、導線5が当該同一平面に沿って導線固定部62に導入される。また、第1ガイド部38の規制部383と第1端子601の導線固定部62の屈曲部65との間において、導線5にY軸方向に張力が作用するので、導線5が導線固定部62の屈曲部65側に配置される。
次に、導線固定部62の固定面630に配置された導線5の端部を、第1固定片63と第2固定片64とで挟み込んでヒュージング(熱かしめ)により端子6に固定する。また、電線7の端部を端子6の電線固定部61に配置し、スポット溶接により、電線7を端子6の電線固定部61に固定する。そして、ボビン3の軸部30に、磁心2を挿入する。
次に、アンテナ装置1をケース8に収納する。そして、ケース8に、封止部材80であるホットメルト材料をボビン3の第2端302側から注入し、磁心2、及び導線5を一体に封止する。
ここで、戻し線部52は、ボビン3の軸部30から突出した保持部4(第1保持部41、第2保持部42)により保持されている。したがって、戻し線部52が、注入された封止部材80で軸部80から離れるようにずれることが抑制される。また、密巻部511は、軸部30の領域300におけるボビン3の第1端301側に設けられているので、第1鍔部31、又は第1〜第3リブ361により、注入された封止部材80で密巻部511がずれることが抑制される。また、ボビン3の軸部30から突出した第1リブ333及び第2リブ343により、封止部材80がボビン3の周りに回り込みやすくなる。
<変形例>
次に、アンテナ装置1の変形例について説明する。
複数の保持部4は、図9に示すように、X軸方向において、第1保持部41と第2保持部42の順番が交互となるように設けられていてもよい。図9に示す例では、5つの保持部4は、X軸方向において、第2鍔部32側から第2保持部42、第1保持部41、第2保持部42、第1保持部41、第2保持部42の順に設けられている。X軸方向に隣接する第1保持部41と第2保持部42との間において、導線5にZ軸方向の張力が作用するので、導線5が第1凹部461及び第2凹部462の底面側に配置される。したがって、導線5が第1凹部461及び第2凹部462からより外れにくくなる。
また、第1保持部41及び第2保持部42は、X軸方向から見て、第1突出部431と第2突出部432の少なくとも一部同士が重なり合うように設けられているが、第1保持部41と第2保持部42の位置関係はこれに限らない。X軸方向に沿った仮想軸に対して、一方側に第1突出部431が設けられ、他方側に第2突出部432が設けられていてもよい。第1爪部441及び第2爪部442は、X軸方向から見て一部同士が重なり合うように設けられていてもよいし、Z軸方向にずれて設けられていてもよい。第1爪部441と第2爪部442とがZ軸方向にずれて設けられている場合、Z軸方向における第1爪部441の先端と第2爪部442との先端との間の寸法が、導線5の径よりも小さいことが好ましい。上記構成のいずれにおいても、第1保持部41及び第2保持部42から導線5が外れることが抑制される。
<まとめ>
第1態様に係るアンテナ装置1は、磁心2と、ボビン3と、導線5と、を備える。ボビン3は、磁心2を収容する軸部30を有する。導線5は、軸部30に巻かれた巻線部51、及び巻線部51の一端から延伸して巻線部51の他端側に戻る戻し線部52を有する。ボビン3は、軸部30から突出し戻し線部52を保持する少なくとも1つの保持部4を更に有する。
上記構成により、導線5の戻し線部52が保持部4で保持されるので、導線5のずれが抑制され、アンテナ特性の安定化を図ることができる。
第2態様に係るアンテナ装置1では、第1態様において、保持部4は、突出部43と、爪部44と、を有する。突出部43は、軸部30の軸方向(X軸方向)と交差する方向に軸部30から突出している。爪部44は、突出部43の先端から、軸方向(X軸方向)及び突出部43の突出方向と交差する第1方向D1又は第1方向D1と反対の第2方向D2に突出している。保持部4は、軸部30と爪部44との間に戻し線部52を保持する。
上記構成により、保持部4は、導線5の戻し線部52がボビン3の軸部30から離れないように保持することができ、アンテナ特性の安定化を図ることができる。
第3態様に係るアンテナ装置1では、第2態様において、爪部44における軸部30と対向する一面451,452が、突出部43から遠ざかるにつれて軸部30との距離が大きくなるテーパ状である。
上記構成により、アンテナ装置1を組み立てる際に、導線5を爪部44と軸部30との間に配置しやすくなり、作業効率の向上を図ることができる。
第4態様に係るアンテナ装置1では、第2又は第3態様において、ボビン3は、保持部4を複数有する。複数の保持部4は、軸方向(X軸方向)に離れて設けられており、少なくとも1つの第1保持部41と、少なくとも1つの第2保持部42と、を含む。第1保持部41は、突出部43及び当該突出部43の先端から第1方向D1に突出した第1爪部441を爪部44として有する。第2保持部42は、突出部43及び当該突出部43の先端から第2方向D2に突出した第2爪部442を爪部44として有する。
上記構成により、第1方向D1及び第2方向D2における導線5の戻し線部52のずれを抑制することができ、アンテナ特性の安定化を図ることができる。
第5態様に係るアンテナ装置1では、第4態様において、複数の保持部4は、第1保持部41と第2保持部42との少なくとも一方を連続保持部として複数有し、軸方向(X軸方向)において複数の連続保持部が隣り合う。
上記構成により、導線5を複数の連続保持部の各々の爪部44と軸部30との間に通す際に、導線5を導出するノズルを爪部44の突出方向に移動させなくてよいので、作業効率の向上を図ることができる。
第6態様に係るアンテナ装置1では、第4又は第5態様において、爪部44の突出方向における第1爪部441の先端と第2爪部442との先端との間の寸法が、導線5の径よりも小さい。
上記構成により、導線5の戻し線部52が第1爪部441及び第2爪部442から外れにくくなり、アンテナ性能の安定化を図ることができる。
第7態様に係るアンテナ装置1では、第6態様において、軸方向(X軸方向)から見て、第1爪部441と第2爪部442との少なくとも一部同士が重なり合う。
上記構成により、導線5の戻し線部52が第1爪部441及び第2爪部442から外れにくくなり、アンテナ性能の安定化を図ることができる。
第8態様に係るアンテナ装置1では、第4〜第7態様のいずれかにおいて、ボビン3は、戻し線部52が絡げられる第1絡げ部371(絡げ部)を更に有する。第1絡げ部371は、軸方向(X軸方向)において複数の保持部4と離れて設けられている。第1絡げ部371は、爪部44の突出方向において、複数の保持部4のうち軸方向(X軸方向)に隣り合う保持部4の突出部43に対して、当該突出部43から突出した爪部44の突出方向と反対方向に設けられている。
上記構成により、導線5の戻し線部52が第1絡げ部371と隣り合う保持部4から外れにくくなり、アンテナ性能の安定化を図ることができる。
第9態様に係るアンテナ装置1では、第8態様において、端子6と、第1ガイド部38(ガイド部)と、を更に備える。端子6は、軸方向(X軸方向)におけるボビン3の第1端301に設けられており、戻し線部52の端部が固定された導線固定部62(固定部)を有する。第1ガイド部38は、第1絡げ部371と導線固定部62との間に設けられており、戻し線部52を導線固定部62にガイドする。導線固定部62は、一平面に沿って形成されており前記戻し線部52が固定された固定面630を有する。第1ガイド部38は、一平面に沿って形成されたガイド面382を有する。
上記構成により、アンテナ装置1を組み立てる際に、導線5の戻し線部52を、ガイド面382に沿って、ガイド面382と同一平面の固定面630に導くことができ、導線5のずれを抑制することができる。
第10態様に係るアンテナ装置1では、第9態様において、端子6は、ボビン3の第1端301において軸方向(X軸方向)と交差する方向の両端よりも中央側に設けられている。第1ガイド部38は、戻し線部52が中央側へ移動することを規制する規制部383を更に有する。
上記構成により、導線5の戻し線部52を導線固定部62に引っ掛けることができ、導線5のずれを抑制することができる。
第11態様に係るアンテナ装置1では、第9又は第10態様において、第1ガイド部38のガイド面382は、第1絡げ部371に対して、複数の保持部4のうち第1絡げ部371に隣り合う保持部4における爪部44の突出方向側に位置している。
上記構成により、導線5の戻し線部52をガイド面382に沿って配置することができ、導線5のずれを抑制することができる。
第12態様に係るアンテナ装置1では、第1〜第11態様のいずれかにおいて、巻線部51は、複数の密巻部511と、接続部512と、を有する。複数の密巻部511は、軸部30の軸方向(X軸方向)において互いに離れている。接続部512は、複数の密巻部511のうち軸方向(X軸方向)に隣り合う2つの密巻部511を繋ぐ。複数の密巻部511の各々は、軸方向(X軸方向)における導線5の密度が接続部512よりも高い。
上記構成により、密巻部511同士を繋ぐ接続部512によって、密巻部511のずれを抑制することができる。
第13態様に係るアンテナ装置1では、第1〜第12態様のいずれかにおいて、ボビン3は、軸部30から突出した第1リブ333と、第1リブ333とは反対向きに軸部30から突出した第2リブ343と、を更に有する。
上記構成により、導線5における巻線部51のずれを抑制することができる。
第14態様に係るアンテナ装置1では、第1〜第13態様のいずれかにおいて、磁心2と、ボビン3と、導線5と、を一体に封止する封止部材80を更に備える。
上記構成により、封止部材80で磁心2とボビン3と導線5とを封止した後において、導線5のずれを抑制することができる。
第15態様に係るドアハンドル941は、第1〜第14態様のいずれかのアンテナ装置1と、アンテナ装置1を収納するケース8と、を備える。
上記構成により、アンテナ装置1において導線5の戻し線部52が保持部4で保持されるので導線5のずれが抑制され、アンテナ特性の安定化を図ることができる。
第16態様に係る移動体9は、第1〜第14態様のいずれかのアンテナ装置1と、アンテナ装置1が設けられた車体91と、を備える。
上記構成により、アンテナ装置1において導線5の戻し線部52が保持部4で保持されるので導線5のずれが抑制され、アンテナ特性の安定化を図ることができる。